(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051334
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】走査信号線駆動回路およびそれを備えた表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240404BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240404BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240404BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240404BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240404BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240404BHJP
G11C 19/28 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G09G3/20 622E
G09G3/20 691D
G09G3/20 612K
G09G3/20 622D
G09G3/20 621A
G09G3/20 621M
G09G3/20 680G
G09G3/20 670E
G09G3/20 670J
G09G3/20 670M
G09G3/20 611A
G09G3/20 611J
G09G3/36
G02F1/1368
G02F1/133 550
G02F1/1333
G06F3/041 412
G06F3/041 510
G11C19/28 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157445
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳
(72)【発明者】
【氏名】原 健吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 洋平
(72)【発明者】
【氏名】原 義仁
(72)【発明者】
【氏名】大東 徹
【テーマコード(参考)】
2H189
2H192
2H193
5B074
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H189HA16
2H189LA08
2H189LA10
2H189LA28
2H189LA31
2H192AA24
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2H192CB35
2H192CB37
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2H192FB03
2H192FB27
2H192GB33
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2H193ZA04
2H193ZA07
2H193ZJ02
5B074AA02
5B074CA01
5B074DA01
5C006AA16
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5C006BB16
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5C006BC12
5C006BC20
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5C006BC24
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5C006BF04
5C006BF34
5C006BF36
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5C006BF44
5C006EB05
5C006EC05
5C006FA15
5C006FA16
5C006FA26
5C006FA33
5C006FA36
5C006FA42
5C006FA47
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD03
5C080DD09
5C080DD19
5C080DD23
5C080DD25
5C080DD26
5C080DD29
5C080EE29
5C080FF03
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
(57)【要約】
【課題】タッチパネルを備える表示装置においてGDM回路内のトランジスタのデプレ化を抑えつつスキャン途中休止によりタッチ位置検出に十分な休止期間を設ける。
【解決手段】表示装置のゲートドライバにおける単位回路UC内のセット回路201は、セット用トランジスタM1と第1補助トランジスタM1Bと第2補助トランジスタM1Cを含む。セット用トランジスタM1は、ソース端子を内部ノードNAに接続され、ゲート端子をセット入力端子22に接続され、ドレイン端子を、第1補助トランジスタM1Bを介してセット入力端子22に接続されると共にダイオード接続形態の第2補助トランジスタM1Cを介して入力端子26に接続される。トランジスタM1B,M1Cは、入力端子26,27に与えられる制御信号VTPB、VTPにより、通常駆動中はそれぞれオン状態、オフ状態に制御され、休止期間ではそれぞれオフ状態、オン状態に制御される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを備えた表示装置の表示部に配設された複数の走査信号線を駆動する走査信号線駆動回路であって、
互いに縦続接続され多相クロック信号に基づきシフトレジスタとして動作する複数の単位回路を備え、
前記多相クロック信号は、前記複数の単位回路に循環的に対応する複数のクロック信号から構成され、
前記タッチパネルにおけるタッチ位置を検出するためにフレーム期間内に設けられた休止期間中は、前記複数のクロック信号のクロック動作が停止し、
前記複数の単位回路は、前記複数の走査信号線にそれぞれ対応し、
各単位回路は、入力信号として与えられるセット信号およびリセット信号に基づき当該各単位回路の状態を決定する双安定回路であって、
当該各単位回路の状態を示す第1および第2の論理レベルの電圧を選択的に保持する内部ノードと、
前記セット信号を受け取るためのセット入力端子と、
前記セット信号がアクティブのときに前記第1の論理レベルの電圧を前記内部ノードに与えるセット回路と、
前記内部ノードに前記第1の論理レベルの電圧が保持されているときに、対応するクロック信号に応じて前記対応する走査信号線を選択状態とする走査信号を出力し、前記内部ノードに前記第2の論理レベルの電圧が保持されているときに、前記対応するクロック信号に応じて前記対応する走査信号線を非選択状態とする走査信号を出力する出力回路とを含み、
前記セット回路は、
ドレイン端子と前記内部ノードに接続されたソース端子と前記セット入力端子に接続されたゲート端子とを有するセット用トランジスタを含み、
前記休止期間中は前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子に前記第1の論理レベルの電圧が与えられ、前記休止期間以外において前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子が前記セット用トランジスタの前記ゲート端子に接続されるように構成されている、走査信号線駆動回路。
【請求項2】
各単位回路は、
前記休止期間中はアクティブであり前記休止期間以外の期間は非アクティブである休止状態信号を受け取るための第1制御入力端子と、
前記休止期間以外において前記複数の走査信号が駆動される期間である通常駆動期間中はアクティブであり当該通常駆動期間以外の期間は非アクティブである駆動状態信号を受け取るための第2制御入力端子とを更に含み、
前記セット回路は、
前記セット入力端子に接続されたドレイン端子、前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子に接続されたソース端子、および、前記第2制御入力端子に接続されたゲート端子を有する第1補助トランジスタと、
前記第1制御入力端子に接続されたドレイン端子、前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子に接続されたソース端子、および、前記第1制御入力端子に接続されたゲート端子を有する第2補助トランジスタとを更に含む、請求項1に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項3】
各単位回路は、
前記リセット信号を受け取るためのリセット入力端子と、
前記リセット信号がアクティブのときに前記第2の論理レベルの電圧を前記内部ノードに与えるリセット回路とを更に含み、
前記リセット回路は、前記内部ノードに接続されたドレイン端子、前記第1制御入力端子に接続されたソース端子、および、前記リセット入力端子に接続されたゲート端子を有するリセット用トランジスタを含み、
前記休止状態信号は、アクティブのときは前記第1の論理レベルの電圧を有し非アクティブのときは前記第2の論理レベルの電圧を有する信号である、請求項2に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項4】
各単位回路は、前記内部ノードとは異なるノードであって前記第1および第2の論理レベルの電圧を選択的に保持する安定化ノードを含む安定化回路を更に含み、
前記安定化回路は、
前記内部ノードに前記第2の論理レベルの電圧が保持されているときに前記安定化ノードに前記第1の論理レベルの電圧を与える第1トランジスタと、
前記内部ノードに前記第1の論理レベルの電圧が保持されているときに前記安定化ノードに前記第2の論理レベルの電圧を与える第2トランジスタと、
前記安定化ノードに前記第1の論理レベルの電圧が保持されているときに前記内部ノードに前記第2の論理レベルの電圧を与える第3トランジスタとを含む、請求項3に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項5】
前記第1トランジスタは、前記第2制御入力端子に接続されたドレイン端子と、前記安定化ノードに接続されたソース端子と、前記第1トランジスタのオン電圧に相当する電源電圧を与えられるゲート端子とを有し、
前記第2トランジスタは、前記安定化ノードに接続されたドレイン端子と、前記第2の論理レベルの電圧に相当する基準電圧を与えられるソース端子と、前記内部ノードに接続されたゲート端子とを有し、
前記第3トランジスタは、前記内部ノードに接続されたドレイン端子と、前記第1制御入力端子に接続されたソース端子と、前記安定化ノードに接続されたゲート端子とを有し、
前記駆動状態信号は、アクティブのときは前記第1の論理レベルの電圧を有し非アクティブのときは前記第2の論理レベルの電圧を有する信号である、請求項4に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項6】
前記複数のクロック信号のそれぞれは、クロック動作中は、アクティブ状態に相当するレベルと非アクティブ状態に相当するレベルとを交互に繰り返す信号であり、
前記第1トランジスタは、前記第2制御入力端子に接続されたドレイン端子と、前記安定化ノードに接続されたソース端子と、前記複数のクロック信号のうちいずれか1つのクロック信号を与えられるゲート端子とを有し、
前記第2トランジスタは、前記安定化ノードに接続されたドレイン端子と、前記第2の論理レベルの電圧に相当する基準電圧を与えられるソース端子と、前記内部ノードに接続されたゲート端子とを有し、
前記第3トランジスタは、前記内部ノードに接続されたドレイン端子と、前記第1制御入力端子に接続されたソース端子と、前記安定化ノードに接続されたゲート端子とを有している、請求項4に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項7】
前記安定化回路は、前記セット信号がアクティブのときに前記安定化ノードに前記第2の論理レベルの電圧を与える第4トランジスタを更に含む、請求項4に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項8】
各単位回路に含まれるトランジスタは、酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタである、請求項1から7のいずれか1項に記載の走査信号線駆動回路。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の走査信号線駆動回路を備える、表示装置。
【請求項10】
前記走査信号線駆動回路と前記表示部とは同一基板上に一体的に形成されている、請求項9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、表示装置に関し、更に詳しくは、表示装置の表示部に配設された走査信号線を駆動するための走査信号線駆動回路に関し、特に、タッチパネルを備えた表示装置に設けられる走査信号線駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のデータ信号線(「データライン」とも呼ばれる)と、当該複数のデータ信号線に交差する複数の走査信号線(「ゲートライン」とも呼ばれる)と、当該複数のデータ信号線および当該複数の走査信号線に沿ってマトリクス状に配置された複数の画素形成部とを含む表示部を備えたアクティブマトリクス型の表示装置が知られている。このようなアクティブマトリクス型の表示装置は、当該複数のデータ信号線を駆動するためのデータ信号線駆動回路(「データドライバ」または「ソースドライバ」とも呼ばれる)および当該複数の走査信号線を駆動するための走査信号線駆動回路(「ゲートドライバ」とも呼ばれる)を備えている。走査信号線駆動回路は、各フレーム期間において当該複数の走査信号線が順次選択されるように複数の走査信号を当該複数の走査信号線にそれぞれ印加し、データ信号線駆動回路は、このような当該複数の走査信号線の順次的な選択に連動して、表示すべき画像信号を表す複数のデータ信号を当該複数のデータ信号線に印加する。これにより、表示すべき画像を表す画像データを構成する複数の画素データが上記複数の画素形成部にそれぞれ与えられる。
【0003】
ところで、アクティブマトリクス型の表示装置では、走査信号線駆動回路は、従来、上記のような表示部を含む表示パネルを構成する基板の周辺部にIC(Integrated Circuit)チップとして搭載されることが多かった。しかしながら、近年、基板上に直接的に走査信号線駆動回路を形成することが多くなされている。このような走査信号線駆動回路は「モノリシックゲートドライバ」または「GDM回路」等と呼ばれ、このような走査信号線駆動回路を含む表示パネルは「ゲートドライバモノリシックパネル」または「GDMパネル」と呼ばれている。GDMパネルでは、その額縁領域に形成された走査信号線駆動回路としてのゲートドライバから表示領域としての表示部に向かって走査信号が入力される。このようなGDMパネルによれば、例えばIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)等の酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタ(以下「TFT」と略記する)を用いることにより、ゲートドライバを小面積でガラス上に形成し狭額縁化を図ることができる。
【0004】
一方、アクティブマトリクス型の表示装置において、近年、指やペンなどによるタッチ位置を検出するタッチパネルが搭載されることが多くなっている。このようなアクティブマトリクス型の表示装置に搭載されるタッチパネルとして、近年、共通電極をタッチ位置検出用の電極として利用するインセル型のタッチパネルが盛んに開発されている。このようなインセル型のタッチパネルを備えたアクティブマトリクス型の表示装置では、表示パネルにおける共通電極がタッチ位置検出用の電極として利用されるので、ゲートラインのスキャンが行われていない時にタッチ位置検出処理を行う必要がある。このため、充分な応答性能を確保するためには、1フレーム期間(1垂直走査期間)内で当該スキャンの途中休止を行ってタッチ位置検出のための休止期間を複数設ける必要がある。すなわち、スキャンの休止・再開を1フレーム期間中に複数回繰り返す必要がある。なお、ここで、1行目のゲートラインから最終行目のゲートラインまでを1本ずつ順次に選択することを単に「スキャン」といい、1行目から最終行目までの途中でスキャンを休止することを「スキャンの途中休止」という。さらに、スキャンが休止されている期間のことを「休止期間」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0096353号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】In June Kim, Seok Noh,Myung Ho Ban, Ki Min Son, In Hyo Han, Hun Ki Shin, Kil Hwan Oh,Bum Sik Kim, "Integrated Gate Driver Circuit Technology with IGZO TFT for Sensing Operation", SID Digest, pp.196-198 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のモノリシックゲートドライバ(GDM回路)は、表示パネルを構成する基板上に、IGZO等の酸化物半導体からなるチャネル層を有する薄膜トランジスタ(以下「TFT」と略記する)を用いて形成されることがある。このようなGDM回路では、一部の薄膜トランジスタのゲート端子にそのトランジスタをオフさせる方向の電圧が負電圧ストレスとして長時間印加され当該トランジスタの閾値がシフトすることがある。このようにして閾値シフトが進むと、当該薄膜トランジスタは、本来エンハンスメント型として動作すべきであるにも関わらず、デプレション型として動作するようになることがある(以下この現象を「デプレ化」という)。このようにして当該薄膜トランジスタがデプレ化すると、GDM回路を構成するシフトレジスタの多くの段で常時貫通電流が流れ、消費電力が著しく増大する。
【0008】
これに対し、GDM回路において上記のような閾値シフトが生じる可能性のあるトランジスタをダイオード接続形態とすることで、当該トランジスタの閾値シフトを抑制することが考えられる。しかし、インセル型のタッチパネルを備えたアクティブマトリクス型表示装置において、このようなGDM回路が使用される場合、当該トランジスタをダイオード接続の形態とすると、当該トランジスタがオフ状態のときにリーク電流が生じることから、タッチ位置検出に十分な長さの休止期間を設けることができない。
【0009】
そこで、インセル型のタッチパネルを備えるアクティブマトリクス型表示装置において、GDM回路におけるトランジスタのデプレ化を回避しつつ、スキャンの途中休止によりタッチ位置検出に十分な長さの休止期間を設けることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、タッチパネルを備えた表示装置の表示部に配設された複数の走査信号線を駆動する走査信号線駆動回路であって、
互いに縦続接続され多相クロック信号に基づきシフトレジスタとして動作する複数の単位回路を備え、
前記多相クロック信号は、前記複数の単位回路に循環的に対応する複数のクロック信号から構成され、
前記タッチパネルにおけるタッチ位置を検出するためにフレーム期間内に設けられた休止期間中は、前記複数のクロック信号のクロック動作が停止し、
前記複数の単位回路は、前記複数の走査信号線にそれぞれ対応し、
各単位回路は、入力信号として与えられるセット信号およびリセット信号に基づき当該各単位回路の状態を決定する双安定回路であって、
当該各単位回路の状態を示す第1および第2の論理レベルの電圧を選択的に保持する内部ノードと、
前記セット信号を受け取るためのセット入力端子と、
前記セット信号がアクティブのときに前記第1の論理レベルの電圧を前記内部ノードに与えるセット回路と、
前記内部ノードに前記第1の論理レベルの電圧が保持されているときに、対応するクロック信号に応じて前記対応する走査信号線を選択状態とする走査信号を出力し、前記内部ノードに前記第2の論理レベルの電圧が保持されているときに、前記対応するクロック信号に応じて前記対応する走査信号線を非選択状態とする走査信号を出力する出力回路とを含み、
前記セット回路は、
ドレイン端子と前記内部ノードに接続されたソース端子と前記セット入力端子に接続されたゲート端子とを有するセット用トランジスタを含み、
前記休止期間中は前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子に前記第1の論理レベルの電圧が与えられ、前記休止期間以外において前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子が前記セット用トランジスタの前記ゲート端子に接続されるように構成されている。
【0011】
(2)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(1)の構成を含み、
各単位回路は、
前記休止期間中はアクティブであり前記休止期間以外の期間は非アクティブである休止状態信号を受け取るための第1制御入力端子と、
前記休止期間以外において前記複数の走査信号が駆動される期間である通常駆動期間中はアクティブであり当該通常駆動期間以外の期間は非アクティブである駆動状態信号を受け取るための第2制御入力端子とを更に含み、
前記セット回路は、
前記セット入力端子に接続されたドレイン端子、前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子に接続されたソース端子、および、前記第2制御入力端子に接続されたゲート端子を有する第1補助トランジスタと、
前記第1制御入力端子に接続されたドレイン端子、前記セット用トランジスタの前記ドレイン端子に接続されたソース端子、および、前記第1制御入力端子に接続されたゲート端子を有する第2補助トランジスタとを更に含む。
【0012】
(3)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(2)の構成を含み、
各単位回路は、
前記リセット信号を受け取るためのリセット入力端子と、
前記リセット信号がアクティブのときに前記第2の論理レベルの電圧を前記内部ノードに与えるリセット回路とを更に含み、
前記リセット回路は、前記内部ノードに接続されたドレイン端子、前記第1制御入力端子に接続されたソース端子、および、前記リセット入力端子に接続されたゲート端子を有するリセット用トランジスタを含み、
前記休止状態信号は、アクティブのときは前記第1の論理レベルの電圧を有し非アクティブのときは前記第2の論理レベルの電圧を有する信号である。
【0013】
(4)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(3)の構成を含み、
各単位回路は、前記内部ノードとは異なるノードであって前記第1および第2の論理レベルの電圧を選択的に保持する安定化ノードを含む安定化回路を更に含み、
前記安定化回路は、
前記内部ノードに前記第2の論理レベルの電圧が保持されているときに前記安定化ノードに前記第1の論理レベルの電圧を与える第1トランジスタと、
前記内部ノードに前記第1の論理レベルの電圧が保持されているときに前記安定化ノードに前記第2の論理レベルの電圧を与える第2トランジスタと、
前記安定化ノードに前記第1の論理レベルの電圧が保持されているときに前記内部ノードに前記第2の論理レベルの電圧を与える第3トランジスタとを含む。
【0014】
(5)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(4)の構成を含み、
前記第1トランジスタは、前記第2制御入力端子に接続されたドレイン端子と、前記安定化ノードに接続されたソース端子と、前記第1トランジスタのオン電圧に相当する電源電圧を与えられるゲート端子とを有し、
前記第2トランジスタは、前記安定化ノードに接続されたドレイン端子と、前記第2の論理レベルの電圧に相当する基準電圧を与えられるソース端子と、前記内部ノードに接続されたゲート端子とを有し、
前記第3トランジスタは、前記内部ノードに接続されたドレイン端子と、前記第1制御入力端子に接続されたソース端子と、前記安定化ノードに接続されたゲート端子とを有し、
前記駆動状態信号は、アクティブのときは前記第1の論理レベルの電圧を有し非アクティブのときは前記第2の論理レベルの電圧を有する信号である。
【0015】
(6)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(4)の構成を含み、
前記複数のクロック信号のそれぞれは、クロック動作中は、アクティブ状態に相当するレベルと非アクティブ状態に相当するレベルとを交互に繰り返す信号であり、
前記第1トランジスタは、前記第2制御入力端子に接続されたドレイン端子と、前記安定化ノードに接続されたソース端子と、前記複数のクロック信号のうちいずれか1つのクロック信号を与えられるゲート端子とを有している。
【0016】
(7)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(4)から(6)のいずれかの構成を含み、
前記安定化回路は、前記セット信号がアクティブのときに前記安定化ノードに前記第2の論理レベルの電圧を与える第4トランジスタを更に含む。
【0017】
(8)また、本発明の幾つかの実施形態による走査信号線駆動回路は、上記(1)から(7)のいずれかの構成を含み、
各単位回路に含まれるトランジスタは、酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタである。
【0018】
(9)また、本発明の幾つかの実施形態による表示装置は、上記(1)から(8)のいずれかの構成を有する走査信号線駆動回路を備える。
【0019】
(10)また、本発明の幾つかの実施形態による表示装置は、上記(9)の構成を含み、
前記走査信号線駆動回路と前記表示部とは同一基板上に一体的に形成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記幾つかの実施形態では、タッチパネルを備えた表示装置の表示部に配設された複数の走査信号線を駆動する走査信号線駆動回路において、互いに縦続接続された複数の単位回路により、多相クロック信号に基づき動作するシフトレジスタが構成されており、タッチパネルにおけるタッチ位置を検出するためにフレーム期間内に設けられたスキャンの休止期間中は、上記複数のクロック信号のクロック動作が停止する。各単位回路は、入力信号として与えられるセット信号およびリセット信号に基づき当該各単位回路の状態を決定する双安定回路であって、当該各単位回路の状態を示す第1および第2の論理レベルの電圧を選択的に保持する内部ノードと、セット信号を受け取るためのセット入力端子と、セット入力端子に与えられるセット信号がアクティブのときに第1の論理レベルの電圧を内部ノードに与えるセット回路とを含んでいる。このセット回路は、ソース端子を内部ノードに接続されゲート端子を上記セット入力端子に接続されたセット用トランジスを含み、上記休止期間中はセット用トランジスタのドレイン端子に第1の論理レベルの電圧が与えられ、前記休止期間以外においてセット用トランジスタがそのドレイン端子をそのゲート端子に接続されてダイオード接続形態となるように構成されている。このような構成によれば、通常駆動中は、セット用トランジスタは、ダイオード接続構成となるので負電圧バイアス状態にはならない。したがって、セット用トランジスタが閾値シフトによってデプレ化することはない。一方、タッチ位置検出のためのスキャンの休止期間では、セット用トランジスタは、ダイオード接続構成ではなく、そのドレイン端子に第1の論理レベルの電圧を与えられる構成となるので、オフ状態のセット用トランジスタにはリーク電流が殆ど生じない。このため、タッチ位置検出のために十分な長さの休止期間を設けることができる。なお、この休止期間では、セット用トランジスタは、負電圧バイアス状態になるので、閾値シフトによってデプレ化する可能性がある。しかし、負電圧バイアス状態となるセット用トランジスタを含む単位回路は、全ての単位回路のごく一部であるので、デプレ化が生じても消費電流の増大が問題になることはない。
【0021】
したがって、上記幾つかの実施形態によれば、タッチパネルを備えた表示装置において、各単位回路内のセット用トランジスタのデプレ化による消費電流の増大を抑制しつつスキャンの途中休止によりタッチ位置検出のために十分な長さの休止期間を設けることができる。
【0022】
なお、上記幾つかの実施形態において、各単位回路に含まれるトランジスタとして、酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタ(酸化物TFT)を使用するのが好ましい(上記(8)の構成参照)。酸化物TFTは、オフ時のリーク電流が小さいので、タッチ位置検出に十分な長さのスキャンの休止期間を設けるうえで有効である。一方、上記のように、通常駆動中はセット用トランジスタはダイオード接続形態に代えてドレイン端子に第1の論理レベルの電圧が与えられる構成(後述のVDD接続構成に相当する構成)となるので、セット用トランジスタとしての酸化物TFTのデプレ化による消費電力の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る表示装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】上記第1の実施形態における画素形成部の電気的構成を示す回路図である。
【
図3】上記第1の実施形態におけるタッチパネルの構成例を説明するための模式図である。
【
図4】上記第1の実施形態におけるタッチパネルの概略動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】片側入力片側配置方式のゲートドライバを説明するための模式図(A)、両側入力両側配置方式のゲートドライバを説明するための模式図(B)、および、片側入力両側配置方式のゲートドライバを説明するための模式図(C)である。
【
図6】上記第1の実施形態におけるゲートドライバの構成を示す回路図である。
【
図7】
図6に示すゲートドライバで使用可能な第1比較例としての単位回路の構成を示す回路図である。
【
図8】
図6に示すゲートドライバで使用可能な第2比較例としての単位回路の構成を示す回路図である。
【
図9】上記第1の実施形態におけるゲートドライバで使用される単位回路の構成を示す回路図である。
【
図10】上記第1の実施形態におけるゲートドライバの動作を説明するための信号波形図である。
【
図11】上記第1の実施形態の作用および効果を第1および第2比較例と比較しつつ説明するための図である。
【
図12】第2の実施形態におけるゲートドライバを構成する単位回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しつつ実施形態について説明する。なお、以下で言及する各トランジスタにおいて、ゲート端子は制御端子に相当し、ドレイン端子およびソース端子の一方は第1導通端子に相当し、他方は第2導通端子に相当する。また、本実施形態におけるトランジスタはすべてNチャネル型であるが、本発明はこれに限定されない。なお、Nチャネル型トランジスタでは、2つの導通端子のうち電位の高い方がドレイン端子であり低い方がソース端子であるが、本明細書では、動作中に当該2つの導通端子の電位の高低が反転する場合であっても、当該2つの導通端子のうち一方を固定的に「ドレイン端子」と呼び他方を「ソース端子」と呼ぶものとする。また、本明細書における「接続」とは、特に断らない限り「電気的接続」を意味し、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、直接的な接続を意味する場合のみならず、他の素子を介した間接的な接続を意味する場合も含むものとする。
【0025】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成および動作概要>
図1は、第1の実施形態に係る表示装置の全体構成を示すブロック図である。この表示装置は、アクティブマトリクス型の液晶表示装置であって、
図1に示すように、表示制御回路100と、走査信号線駆動回路としてのゲートドライバ200と、データ信号線駆動回路としてのデータドライバ300と、液晶パネルを構成する表示部400とを備えている。本実施形態では、ゲートドライバ200と表示部400とは同一基板上(液晶パネルに含まれる2枚の基板のうちの一方の基板であるアクティブマトリクス基板上)に形成されている。すなわち、ゲートドライバ200は、モノリシックゲートドライバ(GDM回路)である。また、表示部400として機能する液晶パネルはタッチパネルと一体化している。すなわち、本実施形態に係る表示装置は、インセル型のタッチパネルを備えた液晶表示装置である。タッチパネルの構成については、公知または周知の構成を採用できる。
【0026】
図1に示すように表示部400には、複数本のデータライン(データ信号線)DLと、当該複数本のデータラインDLに交差する複数本のゲートライン(走査信号線)GLとが配設されている。また、表示部400には、当該複数のデータラインDLおよび当該複数のゲートラインGLに沿ってマトリクス状に配置された複数個の画素形成部4が設けられており、各画素形成部4は、当該複数のデータラインDLのいずれか1つに対応するとともに、当該複数のゲートラインGLのいずれか1つに対応する。
【0027】
図2は、1つの画素形成部4の電気的構成を示す回路図である。画素形成部4には、対応する交差点を通過するゲートラインGLにゲート端子が接続されると共に当該交差点を通過するデータラインDLにソース端子が接続されたスイッチング素子である画素TFT(薄膜トランジスタ)40と、画素TFT40のドレイン端子に接続された画素電極41と、表示部400内に形成されている複数個の画素形成部4に共通的に設けられた共通電極44および補助容量電極45と、画素電極41と共通電極44とによって形成される液晶容量42と、画素電極41と補助容量電極45とによって形成される補助容量43とが含まれている。液晶容量42と補助容量43とによって画素容量46が構成されている。なお、画素形成部4の構成は
図2に示す構成には限定されず、例えば、補助容量43および補助容量電極45が設けられていない構成を採用することもできる。また、共通電極44は、タッチ位置検出用の電極としても利用される。このため、共通電極44は、セグメント状に複数の電極に分割されている(後述の
図3参照)。
【0028】
画素TFT40としては、半導体層にアモルファスシリコンを用いた薄膜トランジスタ(a-Si TFT),半導体層に微結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタ,半導体層に酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタ(酸化物TFT),半導体層に低温ポリシリコンを用いた薄膜トランジスタ(LTPS-TFT)等を採用することができる。酸化物TFTとしては、例えば、In-Ga-Zn-O系の半導体(例えば酸化インジウムガリウム亜鉛)を含む酸化物半導体層を有する薄膜トランジスタを採用することができる。これらの点については、ゲートドライバ200内の薄膜トランジスタについても同様である。本実施形態では、画素TFT40としての薄膜トランジスタおよびゲートドライバ200内の薄膜トランジスタのいずれについても、酸化物TFTが使用されるものとする。なお、酸化物TFTを採用することによりオフリークを低減することが可能となる。
【0029】
以下、
図1に示すように構成された本実施形態に係る表示装置の動作概要について説明する。表示制御回路100は、外部から送られる画像信号DATとタイミング制御信号TGとを受け取り、デジタル映像信号DVと、ゲートドライバ200の動作を制御するための走査側制御信号GCTLと、データドライバ300の動作を制御するためのデータ側制御信号DCTLとを出力する。走査側制御信号GCTLには、ゲートスタートパルス信号や、ゲートクロック信号、後述のスキャンの途中休止のための途中休止用制御信号VTP,VTPB等が含まれている。データ側制御信号DCTLには、データスタートパルス信号,データクロック信号,およびラッチストローブ信号が含まれている。なお、ゲートクロック信号は、後述のスキャンの途中休止のためにクロック動作が停止する期間を除き、アクティブ状態に相当するHレベルと非アクティブ状態に相当するLレベルとを交互に繰り返す信号である。
【0030】
ゲートドライバ200は、表示制御回路100から送られる走査側制御信号GCTLに基づいて、アクティブな走査信号の各ゲートラインGLへの印加を1フレーム期間(1垂直走査期間)を周期として繰り返す。すなわち、ゲートドライバ200は、ゲートラインGLのスキャンを行う。ただし、タッチ位置検出処理が行われる際にスキャンの途中休止が行われる。
【0031】
データドライバ300は、表示制御回路100から送られるデジタル映像信号DVとデータ側制御信号DCTLとに基づいて、データラインDLに駆動用映像信号としてのデータ信号を印加する。このとき、データドライバ300では、データクロック信号のパルスが発生するタイミングで、各データラインDLに印加すべき電圧を示すデジタル映像信号DVが順次に保持される。そして、ラッチストローブ信号のパルスが発生するタイミングで、保持された1画素行分のデジタル映像信号DVがアナログ電圧に変換される。その変換されたアナログ電圧は、1画素行分のデータ信号として全てのデータラインDLに一斉に印加される。
【0032】
以上のようにして、ゲートラインGLに走査信号が印加され、データラインDLにデータ信号が印加されることにより、外部から送られる画像信号DATに応じた画像が表示部400に表示される。
【0033】
<1.2 タッチパネルの構成および動作>
図3は、本実施形態におけるタッチパネルの構成例を説明するための模式図である。本実施形態における表示部400として機能する液晶パネルは、画素形成部4や、複数(m本)のデータラインDL(1)~DL(m)、当該複数のデータラインDL(1)~DL(m)と交差する複数(n本)のゲートラインGL(1)~GL(n)、ゲートドライバ200等が形成されたアクティブマトリクス基板610を含んでおり、このアクティブマトリクス基板610上に、複数の矩形状の共通電極要素50がマトリクス状に配置されている。1つの共通電極要素50は、例えば1辺が数mmの略正方形であり、画素電極よりも大きい。
【0034】
アクティブマトリクス基板610における額縁領域にデータドライバIC(「ソースドラバイIC」とも呼ばれる)310が実装されており、このデータドライバIC310は、本実施形態におけるデータドライバ300として機能するだけでなく、タッチパネルの機能を実現するためのセンサ駆動・読取回路を含んでいる。アクティブマトリクス基板610には、上記複数の共通電極要素50と1対1に対応しデータラインDLに並行に延びる複数のセンサ信号線51も配設されている。各共通電極要素50は、それに対応するセンサ信号線51と数個のコンタクトホール53によって電気的に接続され、かつ、当該対応するセンサ信号線51でデータドライバIC310に接続されている。各共通電極要素50は、画素電極との間に画像表示のための電圧を印加するために使用されるとともに、タッチ位置を検出するための容量形成にも使用される。なお、上記複数の共通電極要素50は、
図2に示される共通電極44に相当する。
【0035】
図4は、本実施形態におけるタッチパネルの概略動作を説明するためのタイミングチャートである。本実施形態に係る表示装置は、
図7に示すように、1フレーム期間(1垂直走査期間)において、液晶パネルに画像表示のためのデータ書込を行う画像書込期間Tvideoと、液晶パネルを構成する表示部400におけるタッチ位置を検出するためのスキャンの休止期間Tsensとが交互に現れるように構成されている。
【0036】
データドライバIC310は、画像書込期間Tvideoでは、各共通電極要素50にセンサ信号線51によって直流電圧が共通電圧Vcomとして供給された状態で、ゲートドライバによるゲートラインGL(1)~GL(n)の駆動と連動してデータラインDL(1)~DL(m)を駆動することにより、表示画像を表す各画素データをデータ電圧として対応する画素形成部4に書き込む。
【0037】
一方、タッチ位置検出のための休止期間Tsensでは、データドライバIC310は、ゲートラインGL(1)~GL(n)およびソースバスラインDL(1)~DL(m)の駆動が停止した状態で、一定の振幅を有する交流信号をセンサ信号線51によって各共通電極要素50に供給する。人の指等が液晶パネルにおける表示領域500に触れると、触れた位置の共通電極要素50と人の指等との間に容量が形成される。データドライバIC310は、当該触れた位置(タッチ位置)の共通電極要素50における容量変化を上記交流信号に基づき検出する。このようにしてタッチ位置の共通電極要素50における容量変化を検出することでタッチパネルの機能が実現される。
【0038】
<1.3 ゲートドライバの構成>
既述のように、ゲートドライバ200は、表示部400における各ゲートラインGL(i)に走査信号を与える(i=1~n)。一般に、ゲートドライバから各ゲートラインに走査信号を与える方式として、
図5に示す3つの方式が知られている。なお、
図5では、便宜上、表示部に配設されたゲートラインは4本であり、ゲートドライバは、それら4本ゲートラインに接続される4個の単位回路をUC(1)~UC(4)を縦続接続したシフトレジスタにより構成されているものとする。
【0039】
図5(A)は、上記3つの方式のうちの第1の方式である片側入力片側配置方式を示す模式図である。この第1の方式では、表示部の片側にゲートドライバが配置され、各ゲートラインの一端にのみゲートドライバから走査信号が印加される。
図5(B)は、上記3つの方式のうちの第2の方式である両側入力両側配置方式を示す模式図である。この第2の方式では、4個の単位回路UC(1)~UC(4)を含む第1および第2ゲートドライバが表示部の一端側および他端側にそれぞれ配置され、各ゲートラインの一端および他端に第1および第2ゲートドライバから走査信号が印加される。
図5(C)は、上記3つの方式のうちの第3の方式である片側入力両側配置方式を示す模式図である。この第3の方式では、奇数番目の単位回路UC(1),UC(3)を含む第1ゲートドライバおよび偶数番目の単位回路UC(2),UC(4)を含む第2ゲートドライバが、表示部の一端側および他端側にそれぞれ配置され、各ゲートラインの一端および他端に第1および第2ゲートドライバから走査信号がそれぞれ印加される。本実施形態では、上記3つの方式のいずれの方式も採用することができるが、以下では、
図5(A)に示す片側入力片側配置方式を採用するものとして本実施形態におけるゲートドライバ40について説明する。なお、既述のように、表示部400にn本(nは2以上の整数)のゲートラインGL(1)~GL(n)が配設されている。
【0040】
図6は、本実施形態におけるゲートドライバ200の構成を示す回路図である。このゲートドライバ200は、表示部400におけるn本のゲートラインGL(1)~GL(n)にそれぞれ対応するn個の単位回路UC(1)~UC(n)を含み、各単位回路UC(i)は双安定回路として機能する。これらn個の単位回路UC(1)~UC(n)は、
図6に示すように縦続接続されてn段のシフトレジスタとして動作する。なお以下では、これらn個の単位回路UC(1)~UC(n)を区別しない場合は、当該シフトレジスタに含まれる単位回路を符号“UC”で示すものとする。
【0041】
図6に示すように、ゲートドライバ200には、走査側制御信号GCTLとして、ゲートスタートパルス信号GSP1,GSP2と、クリア信号CLR,CLR1~CLR3と、ゲートクロック信号CKA,CKB,CKC,CKDと、途中休止用制御信号VTP,VTPBとが与えられる。また、ゲートドライバ200には、ハイレベル電源電圧VDDおよびローレベル電源電圧VSSも与えられる。ゲートクロック信号CKA,CKB,CKC,CKDは4相のクロック信号である。なお、途中休止用制御信号VTP,VTPBのうち、信号VTPは、スキャンの休止期間中はアクティブであって休止期間以外の期間は非アクティブである信号(以下「休止状態信号」という)であり、信号VTPBは、当該休止期間以外においてスキャンが実施されている期間である通常駆動期間中はアクティブであって通常駆動期間以外は非アクティブである信号(以下「駆動状態信号」という)である。
【0042】
ゲートドライバ200において、各単位回路UC(i)には次のような信号が与えられる(
図6参照)。単位回路UC(1)にはゲートクロック信号CKAが入力クロック信号CKとして与えられ、単位回路UC(2)にはゲートクロック信号CKCが入力クロック信号CKとして与えられ、単位回路UC(3)にはゲートクロック信号CKBが入力クロック信号CKとして与えられ、単位回路UC(4)にはゲートクロック信号CKDが入力クロック信号CKとして与えられる。単位回路UC(i)へのゲートクロック信号の入力については、このような構成が繰り返される。すなわち、ゲートドライバ200に含まれる単位回路UC(1)~UC(n)には、4つのゲートクロック信号CKA,CKC,CKB,CKDが循環的に対応し、各単位回路UC(i)には、対応するゲートクロック信号CKX(XはA,B,C,Dのいずれか)が入力される。
【0043】
また、pを3≦p≦nなる整数としたとき、p段目の単位回路UC(p)にはp-2段目の単位回路UC(p-2)の出力信号Qがセット信号Sとして与えられ、qを1≦q≦n-3なる整数としたとき、q段目の単位回路UC(q)にはq+3段目の単位回路UC(q+3)の出力信号Qがリセット信号Rとして与えられる。なお、単位回路UC(1)には第1ゲートスタートパルス信号GSP1がセット信号Sとして与えられ、単位回路UC(2)には第2ゲートスタートパルス信号GSP2がセット信号Sとして与えられ、単位回路UC(n-2)には第1クリア信号CLR1がリセット信号Rとして与えられ、単位回路UC(n-1)には第2クリア信号CLR2がリセット信号Rとして与えられ、単位回路UC(n)には第3クリア信号CLR3がリセット信号Rとして与えられる。また、全ての単位回路に共通的に、ローレベル電源電圧VSS,ハイレベル電源電圧VDD,途中休止用制御信号VTP,VTPB、および、クリア信号CLRが与えられる。ここで、第1から第3クリア信号CLR1~CLR3は、ゲートドライバ200がn+3段のシフトレジスタとして動作すると仮定した場合におけるn+1段目、n+2段目、n+3段目の単位回路の出力信号Qにそれぞれ相当する信号であり、クリア信号CLRは、各フレーム期間でのスキャンの終了後、次のフレーム期間でのスキャンの開始前に所定期間だけアクティブ(Hレベル)となる信号である。
【0044】
<1.4 単位回路の構成>
<1.4.1 第1比較例としての単位回路の構成>
本実施形態におけるゲートドライバ200に含まれる単位回路UCの構成を説明する前に、当該ゲートドライバ200において使用可能な比較例としての単位回路の構成について説明する。
図7は、第1比較例としての単位回路UCaの構成を示す回路図である。この単位回路UCaは、本実施形態における単位回路UCにおける特徴的構成(後述の
図9参照)を使用せずに従来技術に基づき構成された単位回路である。なお、特に断らない限り、単位回路UCaに含まれるトランジスタは、いずれもエンハンスメント型の酸化物TFTである。この点は、後述の第2比較例としての単位回路UCbおよび本実施形態における単位回路UCにおいても同様である(
図9、
図10参照)。
【0045】
図7に示すように、単位回路UCaは、入力端子21~23,25~27と出力端子29と電源端子24とを備え、12個のトランジスタM1~M3,M5,M6,M6+,M8~M10,M12,M14,M21と1個のキャパシタC1とを含んでいる。入力端子21は、クロック信号CK(以下「入力クロック信号CK」ともいう)を受け取るためのクロック入力端子であり、入力端子22は、セット信号を受け取るためのセット入力端子であり、入力端子23は、リセット信号を受け取るためのリセット入力端子であり、入力端子25は、クリア信号CLRを受け取るためのクリア入力端子であり、入力端子26は、途中休止用制御信号としての休止状態信号VTPを受け取るための第1制御入力端子であり、入力端子27は、途中休止用制御信号としての駆動状態信号VTPBを受け取るための第2制御入力端子であり、出力端子29は、この単位回路UCaの出力信号Qを走査信号として出力するための端子であり、電源端子24は、ハイレベル電源電圧VDDを受け取るためのハイレベル電源端子である。なお、ゲートドライバ200には、全ての単位回路UCaに基準電圧としてのローレベル電源電圧VSSを供給するための基準電源線(ローレベル電源電圧と同じ符号“VSS”で示すものとする)が配設されており、
図7に示すように、各単位回路UCaに含まれる幾つかのトランジスタは基準電源線VSSに接続されている。
【0046】
第1比較例としての単位回路UCaは、表示部400に配設されたn本のゲートラインGL(1)~GL(n)のいずれか1つ(
図7の例ではk番目のゲートラインGL(k))に対応する双安定回路であって、入力信号として与えられるセット信号Sおよびリセット信号Rに基づき当該各単位回路の状態を決定し、当該各単位回路の状態に応じて対応するゲートラインGL(k)を選択状態または非選択状態とする出力信号Qを、当該ゲートラインGL(k)に印加すべき走査信号G(k)として出力する。
【0047】
図7に示すように、単位回路UCaは、当該単位回路の状態を示す第1の論理レベルとしてのハイレベル(Hレベル)および第2の論理レベルとしてのローレベル(Lレベル)の電圧を選択的に保持する内部ノードNAを備える。この内部ノードNAは、セット回路201aを構成するスイッチング素子としてのトランジスタM1を介してハイレベル電源端子24に接続されるとともに、リセット回路202を構成するスイッチング素子としてのリセット用トランジスタM9を介して、休止状態信号VTPが与えられる第1制御入力端子26に接続されている。すなわち、セット用トランジスタM1のドレイン端子およびソース端子はハイレベル電源端子24および内部ノードNAにそれぞれ接続され、リセット用トランジスタM9のドレイン端子およびソース端子は内部ノードNAおよび第1制御入力端子にそれぞれ接続されている。トランジスタM1のゲート端子はセット入力端子22に、トランジスタM9のゲート端子はリセット入力端子23にそれぞれ接続されている。また、トランジスタM10とキャパシタC1とは出力回路203を構成する。トランジスタM10は、そのドレイン端子をクロック入力端子21に接続され、そのソース端子を出力端子29に接続され、そのゲート端子を内部ノードNAに接続されており、キャパシタC1の第1および第2端子は、トランジスタM10のゲート端子およびソース端子にそれぞれ接続されている。
【0048】
単位回路UCaにおいて、トランジスタM5,M6,M6+,M8,M14は、安定化回路204を構成する。この安定化回路204は、出力回路のトランジスタM10をオフ状態とすべき期間において当該トランジスタM10が確実にオフ状態に維持されるように内部ノードNAの電圧変動を防止し出力信号Qを安定化するために設けられたものであり、安定化ノードNBを有している。
図7に示すように、この安定化回路において、スイッチング素子としてのトランジスタM5は、そのドレイン端子を第2制御入力端子27に接続され、そのソース端子を安定化ノードNBに接続され、そのゲート端子をハイレベル電源端子24に接続されている。第2制御入力端子27には、途中休止用制御信号VTP,VTPBのうち駆動状態信号VTPBが与えられ、ハイレベル電源端子24には、トランジスタM5をオンさせるオン電圧に相当するハイレベル電源電圧VDDが与えられている。安定化ノードNBは、スイッチング素子としてのトランジスタM6を介して基準電源線VSSに接続され、トランジスタM6のゲート端子は内部ノードNAに接続されている。また、内部ノードNAは、スイッチング素子としてのトランジスタM8を介して第1制御入力端子26に接続され、トランジスタM8のゲート端子は安定化ノードNBに接続されている。第1制御入力端子26には、途中休止用制御信号VTP,VTPBのうち休止状態信号VTPが与えられる。出力端子29は、スイッチング素子としてのトランジスタM14を介して基準電源線VSSに接続されており、トランジスタM14のゲート端子は安定化ノードNBに接続されている。
【0049】
また、単位回路UCaにおいて、スイッチング素子としてのトランジスタM2,M3,M12のゲート端子はクリア入力端子25に接続されている。内部ノードNAは、トランジスタM2を介して第1制御入力端子26に接続され、安定化ノードNBおよび出力端子29は、トランジスタM3,M12をそれぞれを介して基準電源線VSSに接続されている。
【0050】
さらに、単位回路UCaにおいて、スイッチング素子としてのトランジスタM21のゲート端子は、休止状態信号VTPを受け取るための第1制御入力端子26に接続されており、出力端子29は、トランジスタM21を介して基準電源線VSSに接続されている。
【0051】
<1.4.2 第2比較例としての単位回路の構成>
上記第1比較例では、単位回路UCaにおいて内部ノードNAにHレベル電圧が保持されているときにセット信号SとしてLレベル電圧が入力されると、
図7に示す構成からわかるように、セット入力端子22にゲート端子が接続されたセット用トランジスタM1では、ソース端子およびドレイン端子にHレベル電圧が与えられ、ゲート端子にLレベル電圧が与えられるので、セット用トランジスタM1に負電圧ストレスが印加されることになり、セット用トランジスタM1において閾値を低下させる方向の閾値シフトが生じる。このような閾値シフトを避けるために、セット回路201aを構成するセット用トランジスタM1をダイオード接続形態とすることが考えられる。以下、このような単位回路を第2比較例として説明する。
【0052】
図8は、
図6に示すゲートドライバ200で使用可能な第2比較例としての単位回路UCbの構成を示す回路図である。この単位回路UCbは、
図7に示す第1比較例としての単位回路UCaにおけるセット回路201aの構成(以下「VDD接続構成」という)を、
図8に示す単位回路UCbにおけるセット回路201bの構成(以下「ダイオード接続構成」という)に変更したものである。第2比較例としての単位回路UCbの構成は、セット回路201bの構成を除き、第1比較例としての単位回路UCaの構成と同じである。そこで、単位回路UCbにおけるセット回路201b以外の構成については、同一または対応する部分に同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0053】
<1.4.3 本実施形態における単位回路の構成>
上記のように第2比較例としての単位回路UCbでは、セット回路201bにおけるセット用トランジスタM1の閾値シフトを回避できる。しかし、当該単位回路UCbでは、
図8に示すようにセット用トランジスタM1がダイオード接続形態となっていることから、インセル型のタッチパネルを備えた表示装置のゲートドライバにおいて当該単位回路UCbを使用すると、当該トランジスタM1がオフ状態のときにリーク電流が生じる。このため、タッチ位置検出に十分な長さの休止期間を設けることができない。そこで、本実施形態における単位回路UCは、第1比較例におけるセット用トランジスタM1の閾値シフトの問題を回避しつつタッチ位置検出に十分な長さの休止期間を確保すべく、下記のように構成されている。
【0054】
図9は、本実施形態におけるゲートドライバ200で使用される単位回路UCの構成を示す回路図である。この単位回路UCは、
図7に示す第1比較例としての単位回路UCaにおいてセット回路201aを
図9に示すセット回路201に置き換えたものである。本実施形態における単位回路UCの構成は、セット回路201を除き、第1比較例としての単位回路UCaの構成と同じである。そこで、単位回路UCにおけるセット回路201以外の構成については同一または対応する部分に同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0055】
本実施形態における単位回路UCのセット回路201は、第1比較例としての単位回路UCaのセット回路201aおよび第2比較例としての単位回路UCbのセット回路201bとは異なり、セット用トランジスタM1に加えてトランジスタM1B,M1Cを含んでいる。以下では、トランジスタM1B,M1cを、それぞれ、「第1補助トランジスタM1B」、「第2補助トランジスタM1C」と呼ぶものとする。
図9に示すように、セット用トランジスタM1は、そのソース端子を内部ノードNAに接続され、そのゲート端子をセット入力端子22に接続されている。第1補助トランジスタM1Bは、そのドレイン端子をセット入力端子22に接続され、そのソース端子をセット用トランジスタM1のドレイン端子に接続され、そのゲート端子を第2制御入力端子27に接続されている。第2制御入力端子27には駆動状態信号VTPBが与えられる。第2補助トランジスタM1Cは、そのドレイン端子およびゲート端子を第1制御入力端子26に接続され、そのソース端子をセット用トランジスタM1のドレイン端子に接続されていて、ダイオード接続形態となっている。第1制御入力端子26には休止状態信号VTPが与えられる。
【0056】
このような構成のセット回路201によれば、休止状態信号VTPがLレベルで駆動状態信号VTPBがHレベルであるときには、第1補助トランジスタM1Bがオン状態となることで、セット用トランジスタM1はドレイン端子とゲート端子とが接続された形態すなわちダイオード接続構成となっている。一方、休止状態信号VTPがHレベルで駆動状態信号VTPBがLレベルであるときには、第1補助トランジスタM1Bがオフ状態であり、セット用トランジスタM1のドレイン端子にはHレベルの電圧が第2補助トランジスタM1Cから与えられる。したがって、休止状態信号VTPがLレベルで駆動状態信号VTPBがHレベルであるときセット回路201はダイオード接続構成であり、休止状態信号VTPがHレベルで駆動状態信号VTPBがLレベルであるときセット回路201はVDD接続構成である、とみなすことができる。なお、休止状態信号VTPおよび駆動状態信号VTPBが共にHレベルとなることはない。
【0057】
<1.5 ゲートドライバの動作>
次に、ゲートドライバ200の動作について説明する。
図10は、このゲートドライバ200の動作を説明するための信号波形図である。以下では、まず、スキャンの途中休止が行われないときの動作すなわち通常駆動における動作について説明し、その後、スキャンの途中休止が行われるときの動作(途中休止前後の動作)について説明する。
【0058】
<1.5.1 通常駆動における動作>
まず、
図10を
図7、
図8、および
図9とともに参照して、ゲートドライバ200の通常駆動における動作につき、第1比較例としての単位回路UCa(
図7)、第2比較例としての単位回路UCb(
図8)、および、本実施形態における単位回路UC(
図9)のそれぞれを使用した場合を考慮して説明する。通常駆動が行われている間、休止状態信号VTPはLレベルに維持され、駆動状態信号VTPBはHレベルに維持される。ここでは、ゲートドライバ200を構成するシフトレジスタにおけるk段目の単位回路に着目し、
図7は第1比較例としてのk段目の単位回路UCa(k)を、
図8は第2比較例としてのk段目の単位回路UCb(k)を、
図9は本実施形態におけるk段目の単位回路UC(k)を、それぞれ示すものとする。また、ゲートドライバ200においてこれらの単位回路UCa,UCb,UCのいずれを使用する場合においても、k段目の単位回路UCa(k),UCb(k),UC(k)のクロック入力端子21には、入力クロック信号CKとしてゲートクロック信号CKAが与えられるものとする(
図6参照)。なお以下において、第1比較例としての単位回路UCaと第2比較例としての単位回路UCbと本実施形態における単位回路UCとを区別しない場合には、「単位回路UCx」や「k段目の単位回路UCx(k)」等と表記するものとする。
【0059】
このようなk段目の単位回路UCx(k)のセット入力端子22には、2段前の単位回路すなわちk-2段目の単位回路UCx(k-2)の出力信号Qが入力される(
図6参照)。ただし、k<3のときには、単位回路UCx(k)(k=1,2)の2段前の単位回路の出力信号に相当する第1および第2ゲートスタートパルス信号GSP1,GSP2がそれぞれセット入力端子22に与えられる。また、このようなk段目の単位回路UCx(k)のリセット入力端子23には、3段後の単位回路すなわちk+3段目の単位回路UCx(k+3)の出力信号Qが入力される(
図6参照)。ただし、k>n-3のときには、単位回路UCx(k)(k=n-2,n-1,n)の3段後の単位回路の出力信号に相当する第1から第3クリア信号CLR1,CLR2,CLR3がそれぞれリセット入力端子23に与えられる。以下では、説明の便宜上、3≦k≦n-3であるものとする。
【0060】
単位回路UCx(k)において、
図10に示すように、時刻t1よりも前であって、セット入力端子22およびリセット入力端子23にそれぞれ与えられるセット信号Sおよびリセット信号Rが共にLレベルである期間では、トランジスタM1,M9は共にオフ状態である。このとき安定化回路204では、トランジスタM6+がオフ状態であり、トランジスタM5がオン状態であるので、安定化ノードNBには第1の論理レベルとしてのHレベルの電圧が保持されている。このため、トランジスタM8,M14はオン状態であり、これにより、内部ノードNAの電圧および出力端子29の電圧は、それぞれ、ローレベル電源電圧VSSおよび休止状態信号VTPの電圧であり、共にLレベルとなっている。
【0061】
図10に示すように、セット入力端子22に与えられるセット信号Sとしての2段前の単位回路の出力信号すなわちk-2段目の単位回路UCx(k-2)の出力信号Qが、時刻t1でLレベルからHレベルへと立ち上がり、その後、時刻t2でLレベルへと立ち下がる。
【0062】
図7に示す第1比較例としての単位回路UCa(k)では、このセット信号SがHレベルのとき、ハイレベル電源電圧VDDがオン状態のトランジスタM1を介して内部ノードNAに与えられて内部ノードNAが充電される。
図8に示す第2比較例としての単位回路UCb(k)では、セット信号SがHレベルのとき、セット信号Sがダイオード接続形態のトランジスタM1を介して内部ノードNAに与えられて内部ノードNAが充電される。
図9に示す本実施形態における単位回路UC(k)では、通常駆動の間はセット回路201において第1補助トランジスタM1Bはオン状態であり第2補助トランジスタM1Cはオフ状態であるので、セット信号SがHレベルのとき、セット信号Sがダイオード接続状態のトランジスタM1を介して内部ノードNAに与えられて内部ノードNAが充電される。このようにして、第1比較例としての単位回路UCa(k)、第2比較例としての単位回路UCb(k)、および、本実施形態における単位回路UC(k)のいずれにおいても、セット信号SがHレベルのとき内部ノードNAがHレベルへと充電される。より正確には、内部ノードNAは、通常のHレベルすなわちハイレベル電源電圧VDDのレベルよりもトランジスタM1の閾値電圧だけ低いレベルへと充電される。
【0063】
このようにして内部ノードNAの電圧がHレベルになると、出力回路203のトランジスタM10がオン状態となる。トランジスタM10がオン状態になると、クロック入力端子21に入力クロック信号CKとして与えられるゲートクロック信号CKA(以下「入力クロック信号CKA」ともいう)が出力端子29から出力信号Qとして出力され、この出力信号Qが走査信号G(k)としてゲートラインGL(k)に与えられる。入力クロック信号CKAは、時刻t2でLレベルからHレベルに変化し、これにより、キャパシタC1を介して内部ノードNAの電圧が押し上げられて通常のHレベルよりも高い電圧となる。その結果、トランジスタM10が完全にオン状態となり、ゲートラインGL(k)に出力される走査信号G(k)の電圧が完全にHレベルとなる。
【0064】
安定化回路204では、時刻t1でセット信号SがHレベルになるとトランジスタM6+がオン状態となり、また、上記のようにして内部ノードNAの電圧がHレベルとなるとトランジスタM6もオン状態となる。このときトランジスタM5はオン状態であり、駆動状態信号VTPBはHレベルであるが、トランジスタM5のオン抵抗がトランジスタM6,M6+のオン抵抗に比べ十分に高くなるようにトランジスタM5,M6,M6+のチャネルサイズが設定されている。したがって、トランジスタM6,M6+のオン状態への変化によって安定化ノードNBの電圧が第1の論理レベルとしてのHレベルから第2の論理レベルとしてのLレベルと変化し、トランジスタM8がオフ状態となる。
【0065】
その後、時刻t3において、入力クロック信号CKAがHレベルからLレベルへと変化し、これにより出力端子29からゲートラインGL(k)に出力される走査信号G(k)がHレベルからLレベルへと変化する。また、入力クロック信号CKAのHレベルからLレベルへの変化に応じて内部ノードNAの電位が低下する。
【0066】
その後の時刻t4において、単位回路UCx(k)のリセット入力端子23に与えられるリセット信号Rとしてのk+3段目の単位回路UCx(k+3)の出力信号QがLレベルからHレベルに変化する。これにより、リセット回路202のトランジスタM9がオン状態となってLレベルの休止状態信号VTPが内部ノードNAに与えられ、内部ノードNAの電圧が第2の論理レベルとしてのLレベルとなる。
【0067】
時刻t4で内部ノードNAの電圧がHレベルからLレベルへと変化すると、安定化回路204ではトランジスタM6がオフ状態となる。時刻t2においてセット信号SがHレベルからLレベルへと変化しているので、トランジスタM6+は既にオフ状態なっている。したがって、安定化ノードNBは、トランジスタM5を介してHレベルの駆動状態信号VTPBを与えられ、Hレベルの電圧を保持する状態となる。これにより、トランジスタM8はオン状態となり、内部ノードNAの電圧が安定的にLレベルに維持される。安定化ノードNBの電圧がHレベルになると、トランジスタM14がオン状態となるので、出力端子29に接続されるゲートラインGL(k)の電圧もLレベルに安定的に維持される。このようにして安定化回路204は、ゲートラインGL(k)を非選択状態とすべき期間において、出力回路203のトランジスタM10が確実にオフ状態に維持されるように内部ノードNAの電圧変動を防止し出力信号Q(走査信号G(k))を安定化するように機能する。
【0068】
上記のような単位回路UCx(k)の動作により、ゲートラインGL(k)は、時刻t2において非選択状態(Lレベル)から選択状態(Hレベル)へと変化し、時刻t2から時刻t3まで選択状態(Hレベル)を維持し、時刻t3において選択状態(Hレベル)から非選択状態(Lレベル)へと変化する。
【0069】
ゲートドライバ200における他の単位回路UCx(i)(i≠k,1≦i≦n)のそれぞれも、そのセット入力端子22、リセット入力端子23、および、クロック入力端子21にそれぞれ入力される信号S,R,CKに応じて同様に動作する。その結果、ゲートドライバ200において、第1および第2ゲートスタートパルス信号GSP1,GSP2によって与えられるパルスが、ゲートドライバ200を構成するシフトレジスタによって順次転送され、これにより、表示部400におけるゲートラインGL(1)~GL(n)が順次、所定期間ずつ選択される。
【0070】
なお、通常駆動の間は、第1制御入力端子26に与えられる休止状態信号VTPはLレベルであるので、トランジスタM21はオフ状態である。また、クリア入力端子25に与えられるクリア信号CLRは、ゲートラインGLのスキャン中はLレベルに維持され、各フレーム期間において全てのゲートラインGLのスキャンの終了後、次のフレーム期間でのスキャンの開始前に、所定期間だけHレベルとなる。このため、ゲートラインGLのスキャン中はトランジスタM2,M3,M12はオフ状態であり、全てのゲートラインGLのスキャンの終了後にクリア信号CLRがHレベルになると、これらのトランジスタM2,M3,M12がオン状態となり、内部ノードNA、安定化ノードNB、および、出力端子29に接続されるゲートラインGL(k)の電圧がLレベルとされる。このようなクリア信号CLRの働きにより、内部ノードNA等に蓄積される残留電荷による後続フレームの表示への影響が抑えられる。
【0071】
<1.5.2 通常駆動におけるセット用トランジスタへの電圧ストレス>
上記のように動作するゲートドライバ200に含まれる単位回路UCx(k)において、セット用トランジスタM1に加わる電圧ストレス、すなわちセット用トランジスタM1におけるゲート・ソース間電圧Vgsについて以下に説明する。
図10には、第1比較例、第2比較例、および、本実施形態につき、セット用トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsの波形が示されている。すなわち、
図10において、“M1_ref”は、第1比較例としての単位回路UCa(k)におけるセット回路201a(VDD接続構成)のトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsの波形を示し、“M1_dio”は、第2比較例としての単位回路UCb(k)におけるセット回路201b(ダイオード接続構成)のトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsの波形を示し、“M1”は、本実施形態における単位回路UC(k)におけるセット回路201のトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsの波形を示している。ここで、トランジスタM1は、Nチャネル型であるので、そのゲート・ソース間電圧Vgsは、トランジスタM1における2つの導通端子の電圧のうち低い方の電圧を基準とするゲート端子の電圧である。なお
図10には、本実施形態におけるセット回路201に含まれる第1補助トランジスタM1Bおよび第2補助トランジスタM1Cのゲート・ソース間電圧の波形も示されている。
【0072】
図10に示すように、第1比較例としての単位回路UCa(k)、第2比較例としての単位回路UCb(k)、および、本実施形態における単位回路UC(k)のいずれにおいても、時刻t1よりも前の期間では、セット信号Sとリセット信号RはいずれもLレベルであり、内部ノードNAの電圧もLレベルであるので、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは0Vである。
【0073】
第1比較例としての単位回路UCa(
図7)では、
図10において“通常駆動”での“M1_ref”の電圧波形で示されるように、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、時刻t1でセット信号SがLレベルからHレベルへと立ち上がると、Hレベルへと変化するが、内部ノードNAの充電にしたがって0Vに向かって低下し、0Vに達するとセット信号SがHレベルの間は0Vを維持する。その後、時刻t2でセット信号SがHレベルからLレベルへと変化すると、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは負値となる。すなわち、トランジスタM1は、負の電圧バイアスが印加された状態(以下「負電圧バイアス状態」という)となる。この負電圧バイアス状態は、時刻t4でリセット信号RがLレベルからHレベルへと変化するまで継続する。時刻t4でリセット信号RがHレベルへと変化すると、Lレベルの休止状態信号VTPが内部ノードNAに与えられて内部ノードNAの電圧がLレベルとなる。これにより、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは0Vとなり、トランジスタM1は電圧ストレスが印加されない状態となる。
【0074】
第2比較例としての単位回路UCb(
図8)では、
図10において“通常駆動”での“M1_dio”の電圧波形で示されるように、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、第1の比較例と同様、時刻t1でセット信号SがLレベルからHレベルへと立ち上がると、Hレベルへと変化するが、内部ノードNAの充電にしたがって0Vに向かって低下し、0Vに達するとセット信号SがHレベルの間は0Vを維持する。その後、時刻t2でセット信号SがHレベルからLレベルへと変化するが、トランジスタM1がダイオード接続構成であるので、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、内部ノードNAの電圧がHレベルである間、0Vを維持する。この間の時刻t2でセット信号Sは、Lレベルへと変化する。その後、時刻t4でリセット信号RがLレベルからHレベルへと変化すると、内部ノードNAの電圧がLレベルとなる。この時点では、セット信号Sは既にLレベルであるので、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、その後も0Vを維持し、トランジスタM1に電圧ストレスが印加されない状態が継続する。
【0075】
本実施形態における単位回路UC(
図9)では、
図10において“M1”の電圧波形で示されるように、通常駆動期間中は、休止状態信号VTPはLレベルで駆動状態信号VTPBはHレベルであるので、トランジスタM1はダイオード接続形態となっている。したがって、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、第2比較例におけるトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsと同様に変化する(
図10における“M_dio”の電圧波形参照)。したがって本実施形態では、時刻t1から若干の間、トランジスタM1に正の電圧バイアスが印加されるが、それ以外の期間ではトランジスタM1に電圧ストレスが印加されない。
【0076】
なお、本実施形態におけるセット回路201では、
図10において“M1B”の電圧波形で示されるように、第1補助トランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vgs1は、時刻t1よりも前の期間では正の電圧バイアスが印加されている。時刻t1でセット信号SがLレベルからHレベルへと立ち上がると、第1補助トランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vgs1は、内部ノードNAの充電にしたがって0Vに向かって低下し、0Vに達するとセット信号SがHレベルの間は0Vを維持する。その後、時刻t2でセット信号SがHレベルからLレベルへと変化すると、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgs1は正値となる。すなわち、トランジスタM1は、正の電圧バイアスが印加された状態となる。一方、通常駆動中は休止状態信号VTPはLレベルに維持されるので、第2補助トランジスタM1Cのゲート・ソース間電圧Vgs2は0Vに維持される(
図10における“M1C”の電圧波形参照)。
【0077】
図11は、第1比較例におけるセット回路201a、第2比較例におけるセット回路201b、および、本実施形態におけるセット回路201のそれぞれに含まれるトランジスタの4つの動作期間1~4における電圧印加状態を示している。
図11では、セット回路201a,201b,201におけるトランジスタM1,M1B,M1Cの端子またはノードに付された“L”および“H”は、当該端子または当該ノードの電圧がLレベルおよびHレベルであることをそれぞれ示している。
【0078】
図10を参照した上記説明からわかるように、第1比較例としての単位回路UCa(k)に含まれるVDD接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、第2比較例としての単位回路UCb(k)に含まれるダイオード接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、および、本実施形態における単位回路UC(k)に含まれるトランジスタM1,M1B,M1Cにおける電圧印加状態は、通常駆動中において当該単位回路UCx(k)に接続されるゲートラインGL(k)が非選択状態(内部ノードNAの電圧がLレベル)であるときには、
図11において[動作期間1]でのVDD接続構成のトランジスタM1の回路図、ダイオード接続構成のトランジスタM1の回路図、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cの回路図(セット回路201の回路図)に示すような状態となっている。
【0079】
図10に示す“通常駆動”での“M1_ref”、“M1_dio”、および“M1”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間1]でのVDD接続構成のトランジスタM1、ダイオード接続構成のトランジスタM1、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cにおける電圧印加状態からわかるように、通常駆動中において非選択状態のゲートラインが接続された単位回路UCx(k)では、VDD接続構成のトランジスタM1、ダイオード接続構成のトランジスタM1、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cのいずれについても負電圧バイアス状態にはなっていない。
【0080】
また、VDD接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、ダイオード接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cにおける電圧印加状態は、通常駆動中において当該単位回路UCx(k)に接続されるゲートラインGL(k)が選択状態(内部ノードNAの電圧がHレベル)であるときには、
図11において[動作期間2]でのVDD接続構成のトランジスタM1の回路図、ダイオード接続構成のトランジスタM1の回路図、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cの回路図(セット回路201の回路図)に示すような状態となっている。
【0081】
図10に示す“通常駆動”での“M1_ref”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間2]でのVDD接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態からわかるように、通常駆動中において選択状態のゲートラインが接続された単位回路UCa(k)では、トランジスタM1は負電圧バイアス状態となっている(
図11において太い実線の矢印は電圧バイアスを示している)。通常駆動では、全てのゲートラインGL(1)~GL(n)が順次選択される動作(ゲートラインGLのスキャン)が繰り返されるので、全ての単位回路UCa(1)~UCa(n)においてトランジスタM1が繰り返し負電圧バイアス状態となり、トランジスタM1の閾値が負方向にシフトする。したがって、通常駆動が長時間継続すると、多数の単位回路UCaにおいてトランジスタM1がデプレ化することがある。多数の単位回路UCaにおいてトランジスタM1のデプレ化が生じると、GDM回路としてのゲートドライバ200における消費電力が著しく増大する。
【0082】
図10に示す“通常駆動”での“M1_dio”および“M1”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間2]でのダイオード接続構成のトランジスタM1および第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1cにおける電圧印加状態からわかるように、通常駆動中において選択状態のゲートラインが接続された単位回路UCx(k)では、ダイオード接続構成のトランジスタM1および第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cのいずれについても負電圧バイアス状態とはなっていない。
【0083】
<1.5.3 途中休止前後における動作>
本実施形態に係る表示装置は、インセル型のタッチパネルを備えており(
図3参照)、各フレーム期間においてスキャンの途中休止を行ってタッチ位置検出のための休止期間が複数設けられる(
図4参照)。以下、
図10を
図7、
図8、および
図9とともに参照して、ゲートドライバ200のスキャンの途中休止の前後における動作につき、第1比較例としての単位回路UCa(
図7)、第2比較例としての単位回路UCb(
図8)、および、本実施形態における単位回路UC(
図9)のそれぞれを使用した場合を考慮して説明する。スキャンの途中休止を行う場合、タッチ位置検出のための休止期間Tsensを含む所定期間は全てのゲートクロック信号CKA~CKDが停止してLレベル(非アクティブ状態)を維持するように、表示制御回路100においてゲートクロック信号CKA~CKDの生成が制御される(以下、全てのゲートクロック信号CKA~CKDが停止する当該所定期間を「駆動停止期間TP」という)。
図10に示すように、駆動状態信号VTPBは、駆動停止期間TP以外ではHレベルであり、駆動停止期間TPの開始後、休止期間Tsensの開始前に、Lレベルへと変化し、休止期間Tsens中はLレベルを維持し、休止期間Tsensの終了後、駆動停止期間TPの終了前に、Hレベルへと変化する。
【0084】
また以下では、通常駆動における動作についての上記説明と同様、ゲートドライバ200を構成するシフトレジスタにおけるk段目の単位回路UCx(k)に着目し、ゲートドライバ200において第1比較例としての単位回路UCa、第2比較例としての単位回路UCb、および、本実施形態における単位回路UCのいずれを使用する場合においても、k段目の単位回路UCa(k),UCb(k),UC(k)のクロック入力端子21には、入力クロック信号CKとしてゲートクロック信号CKAが与えられるものとする(
図6参照)。なお、ここでは、
図10に示すように、k段目の単位回路UCx(k)において、セット信号Sが入力された後であって出力信号QがLレベルからHレベルへと変化する前に駆動停止期間TPが開始する場合につき、ゲートドライバ200のスキャンの途中休止前後における動作を説明し、他の場合におけるスキャンの途中休止前後における動作については、以下の説明および通常駆動中の動作に関する既述の説明から明らかであるので説明を省略する。
【0085】
図10に示す例では、時刻t13~t18が駆動停止期間TPであって、時刻t15~t16がタッチ位置検出のためのスキャンの休止期間Tsensであり、駆動状態信号VTPBは、時刻t14にHレベルからLレベルへと変化し、時刻t14から時刻t17までLレベルを維持し、時刻t17にHレベルへと変化する。
【0086】
図10に示すように、セット入力端子22に与えられるセット信号Sとしての2段前の単位回路UCx(k-2)の出力信号Qは、駆動停止期間TPよりも前の時刻t11でLレベルからHレベルへと立ち上がり、Hレベルを維持した後、時刻t12でLレベルへと立ち下がる。
【0087】
セット信号SがHレベルのとき(時刻t11~t12において)、第1比較例としての単位回路UCa(
図7)、第2比較例としての単位回路UCb(
図8)、および、本実施形態における単位回路UC(
図9)のいずれにおいても、内部ノードNAがHレベルへと充電され、これにより、出力回路203のトランジスタM10がオン状態となる。クロック入力端子21に与えられる入力クロック信号としてのゲートクロック信号CKAは、このトランジスタM10のドレイン端子に与えられる。しかし、既述のように駆動停止期間TP(時刻t13~t18)では全てのゲートクロック信号CKA~CKDが停止するようにゲートクロック信号CKA~CKDの生成が制御されることから、入力クロック信号CKAは、時刻t11からt18までLレベルとなっている。このため、出力信号Qは、時刻t18までLレベルに維持される。
【0088】
また安定化回路204では、時刻t11でセット信号SがHレベルになるとトランジスタM6+がオン状態となり、上記のようにして内部ノードNAの電圧がHレベルとなるとトランジスタM6もオン状態となる。その結果、安定化ノードNBの電圧がHレベルからLレベルと変化し、トランジスタM8がオフ状態となる。
【0089】
セット信号SがLレベルへと変化した後、時刻t14において駆動状態信号VTPBがHレベルからLレベルへと変化する。これにより、駆動状態信号VTPBとしてのLレベルの電圧がトランジスタM5を介して安定化ノードNBに与えられる。駆動状態信号VTPBがHレベルのときには、安定化ノードNBの電圧がLレベルであれば、第2制御入力端子27からトランジスタM5,M6を介して基準電源線VSSへと電流が流れるが、時刻t14において駆動状態信号VTPBがLレベルとなることにより、当該電流が抑制される。
【0090】
その後、時刻t15で休止状態信号VTPがLレベルからHレベルへと変化してタッチ位置検出のための休止期間Tsensが開始される。この休止期間Tsens(t15~t16)では、トランジスタM5がオン状態であって駆動状態信号VTPBがLレベルであることから、安定化ノードNBがLレベルに維持され、休止状態信号VTPがHレベルであることから、内部ノードNAの電圧がHレベルに安定的に維持されるとともに、トランジスタM21がオン状態となっている。安定化ノードNBがLレベルに維持されている間はトランジスタM8はオフ状態(内部ノードNAに接続される他のトランジスタM1,M2,M9もオフ状態)であり、時刻t11でHレベルとなった内部ノードNAの電圧は、休止期間TsensにおいてもHレベルを維持する。なお、安定化ノードNBがLレベルに維持されている間はトランジスタM14もオフ状態である。
【0091】
時刻t16で休止状態信号VTPがLレベルへと変化すると、トランジスタM21がオフ状態となるが、入力クロック信号CKAを含む全てのクロック信号CKA~CKDは停止状態であってLレベルであるので、出力端子29に接続されるゲートラインGL(k)の電圧はLレベルに維持される。
【0092】
その後、時刻t17で駆動状態信号VTPBがHレベルへと変化すると、第2制御入力端子27からトランジスタM5,M6を介して基準電源線VSSへと電流が流れるが、安定化ノードNBの電圧はLレベルに維持され、内部ノードNAの電圧はHレベルに維持される。
【0093】
その後、時刻t18で駆動停止期間TPが終了し、入力クロック信号CKAがLレベルからHレベルへと立ち上がる。これにより、キャパシタC1を介して内部ノードNAの電圧が押し上げられてHレベルよりも高い電圧となる。その結果、トランジスタM10が完全にオン状態となり、そのトランジスタM10を介してHレベルの入力クロック信号CKAが出力信号Qとして出力される。この出力信号Qは、走査信号G(k)としてゲートラインGL(k)に印加される。
【0094】
その後、時刻t19において、入力クロック信号CKAがHレベルからLレベルへと変化し、これにより出力端子29からゲートラインGL(k)に印加される走査信号G(k)がHレベルからLレベルへと変化する。また、入力クロック信号CKAのHレベルからLレベルへの変化に応じて内部ノードNAの電位が低下する。
【0095】
その後、時刻t20において、単位回路UCx(k)のリセット入力端子23に与えられるリセット信号Rとしてのk+3段目の単位回路UCx(k+3)の出力信号Qが、LレベルからHレベルに変化する。これにより、リセット回路202のトランジスタM9がオン状態となって、内部ノードNAにLレベルの休止状態信号VTPが与えられることで、内部ノードNAの電圧が放電されてLレベルとなる。
【0096】
安定化回路204では、時刻t20において、内部ノードNAの電圧がHレベルからLレベルへと変化すると、トランジスタM6がオフ状態となる。また、セット信号Sが時刻t12でHレベルからLレベルへと変化しているので、トランジスタM6+は既にオフ状態なっている。したがって、安定化ノードNBは、トランジスタM5を介してHレベルの駆動状態信号VTPBを与えられ、Hレベルの電圧を保持する状態となる。これにより、トランジスタM8,M14はオン状態となる。その結果、内部ノードNAの電圧が安定的にLレベルに維持されるとともに、出力端子29に接続されるゲートラインGL(k)の電圧もLレベルに安定的に維持される。
【0097】
上記のような単位回路UCx(k)の動作により、駆動停止期間TP(時刻t13~t18)の間はゲートラインGLの駆動が停止され、その駆動停止期間TP内において、駆動状態信号VTPBをLレベルとすることで、安定化ノードNBの電圧がLレベルに安定的に維持され、休止状態信号VTPをHレベルとすることで、内部ノードNAの電圧がHレベルに安定的に維持されるとともに、出力端子29に接続されるゲートラインGL(k)の電圧がLレベルに安定的に維持される。
【0098】
ゲートドライバ200における他の単位回路UCx(i)(i≠k,1≦i≦n,)のそれぞれも、そのクロック入力端子21、セット入力端子22、リセット入力端子23、第1制御入力端子26、および、第2制御入力端子27にそれぞれ入力される信号S,R,CK,VTP,VTPBに応じて同様に動作する。その結果、ゲートドライバ200において、第1および第2ゲートスタートパルス信号GSP1,GSP2によって与えられるパルスが、ゲートドライバ200を構成するシフトレジスタによって順次転送され、これにより、表示部400におけるゲートラインGL(1)~GL(n)が順次、所定期間ずつ選択されることで、ゲートラインGLのスキャンが行われる。また、このスキャンの途中で、駆動停止期間TPを設け、休止状態信号VTPおよび駆動状態信号VTPBのレベルを制御することで、タッチ検出のための休止期間Tsensが駆動停止期間TP内に設けられる。
【0099】
なお、非選択状態のゲートラインGL(i)が出力端子29に接続された単位回路UCx(i)では、内部ノードNAの電圧はLレベルに維持され、安定化ノードNBの電圧はHレベルに維持される。ただし、駆動停止期間TPにおいて、駆動状態信号VTPBがLレベルであるときには、第2制御入力端子27からLレベルの電圧がトランジスタM5を介して安定化ノードNBに与えられ、これによりトランジスタM8がオフ状態となる。しかし、休止期間Tsensにおいて、ゲートクロック信号CKA~CKDは停止しており、休止状態信号VTPがHレベルであることによりトランジスタM21がオン状態であるので、出力端子29に接続されるゲートラインGL(i)の電圧はLレベルに安定的に維持される。
【0100】
<1.5.4 途中休止前後におけるセット回路内のトランジスタへの電圧ストレス>
スキャンの途中休止前後において上記のように動作するゲートドライバ200に含まれる単位回路UCx(k)において、セット用トランジスタM1に加わる電圧ストレス、すなわちセット用トランジスタM1におけるゲート・ソース間電圧Vgsについて以下に説明する。
【0101】
図10に示すように、第1比較例としての単位回路UCa(k)、第2比較例としての単位回路UCb(k)、および、本実施形態における単位回路UC(k)のいずれにおいても、時刻t11よりも前の期間では、セット信号Sとリセット信号RはいずれもLレベルであり、内部ノードNAの電圧もLレベルであるので、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは0Vである。
【0102】
第1比較例としての単位回路UCa(
図7)では、
図10において“途中休止前後”での“M1_ref”の電圧波形で示されるように、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、時刻t11~t12の間は、通常駆動におけるトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsの時刻t1~t2での変化と同様に変化し、時刻t12におけるセット信号SのHレベルからLレベルへの変化により、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは負値となる。すなわち、トランジスタM1は負電圧バイアス状態となる。この負電圧バイアス状態は、駆動停止期間TPを経て時刻t20でリセット信号RがLレベルからHレベルへと変化するまで継続する。リセット信号RがLレベルからHレベルへと変化すると、内部ノードNAの電圧がLレベルとなり、以後、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは0Vであり、トランジスタM1には電圧ストレスが印加されない状態となる。
【0103】
第2比較例としての単位回路UCb(
図8)では、
図10において“途中休止前後”での“M1_dio”の電圧波形で示されるように、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、時刻t11~t12の間は、通常駆動におけるトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsの時刻t1~t2での変化と同様に変化し、時刻t12で0Vである。時刻t12でセット信号SがHレベルからLレベルへと変化するが、トランジスタM1がダイオード接続構成であるので、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、内部ノードNAの電圧がHレベルである間、0Vを維持する。駆動停止期間TP後の時刻t20において、リセット信号RがLレベルからHレベルへと変化し、これにより内部ノードNAの電圧がLレベルとなる。 セット信号Sは、時刻t12以降、Lレベルを維持しているので、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、時刻t20の後も0Vを維持し、トランジスタM1に電圧ストレスが印加されない状態が継続する。
【0104】
本実施形態における単位回路UC(
図9)では、時刻t14まで休止状態信号VTPはLレベルで駆動状態信号VTPBはHレベルであるので、トランジスタM1はダイオード接続形態となっている。したがって、
図10において“途中休止前後”での“M1”の電圧波形で示されるように、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは、時刻t14までは、第2比較例におけるトランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsと同様に変化する。時刻t14で駆動状態信号VTPBがLレベルへと変化し、時刻t14~t15の間は、休止状態信号VTPおよび駆動状態信号VTPBが共にLレベルであってトランジスタM1B,M1Cはオフ状態であり、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは0Vに維持される。その後、時刻t15で休止状態信号VTPがHレベルへと変化し、これにより、Hレベルの休止状態信号VTPがトランジスタM1Cを介してトランジスタM1のドレイン端子に与えられる。その結果、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsが負値となる。すなわち、トランジスタM1は負電圧バイアス状態となる。この負電圧バイアス状態は、休止期間Tsensの間、継続する。時刻t16で休止状態信号VTPがLレベルへと変化するが、トランジスタM1Cがダイオード接続形態であることから、この負電圧バイアス状態は時刻t16後も継続する。その後、時刻t17で駆動状態信号VTPBがHレベルへと変化し、トランジスタM1Bがオン状態となる。これにより、トランジスタM1のゲート・ソース間電圧Vgsは0Vへと変化し、以後、0Vに維持される。
【0105】
なお、本実施形態におけるセット回路201において、時刻t14まで休止状態信号VTPはLレベルで駆動状態信号VTPBはHレベルであるので、第1補助トランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vgs1は、時刻t14までは、通常駆動におけるトランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vgsの時刻t3までの変化と同様に変化する。途中休止前後の動作では、駆動状態信号VTPBは、時刻t14でLレベルへと変化し、時刻t14~t17の間はLレベルに維持される。これにより、トランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vgs1は、時刻t14で0Vとなる。休止期間(時刻t15~t16)Tsensでは、休止状態信号VTPがHレベルであり、このHレベルの電圧がトランジスタM1Cを介してトランジスタM1のドレイン端子に与えられる。しかし、トランジスタM1Bのドレイン端子に与えられるセット信号Sが時刻t12以降はLレベルに維持されているので、トランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vg1は、休止期間Tsens後の時刻t17まで0Vに維持される。時刻t17では、駆動状態信号VTPBがHレベルへと変化することにより、トランジスタM1Bのゲート・ソース間電圧Vg1は正値となる。このようにしてトランジスタM1Bは、時刻t17以後、正の電圧バイアスが印加された状態(正電圧バイアス状態)となる。
【0106】
一方、第2補助トランジスタM1Cは、ダイオード接続形態であって、そのゲート・ソース間電圧Vgs2は、休止期間(時刻t15~t16)Tsens以外では、休止状態信号VTPがLレベルであることから、0Vとなる。休止期間Tsensの開始時点t15において、休止状態信号VTPがHレベルへと変化し、これによりトランジスタM1Cのゲート・ソース間電圧Vgs2は正値となる。しかし、トランジスタM1Cのソース端子の接続されたノードがHレベルの休止状態信号VTPにより充電されるので、トランジスタM1Cのゲート・ソース間電圧Vgs2は0Vに向かって低下し、0Vに達すると、以後0Vに維持される。
【0107】
図10を参照した上記説明からわかるように、第1比較例としての単位回路UCa(k)に含まれるVDD接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、第2比較例としての単位回路UCb(k)に含まれるダイオード接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、および、本実施形態における単位回路UC(k)に含まれるトランジスタM1,M1B,M1Cにおける電圧印加状態は、休止期間Tsensにおいて当該単位回路UCx(k)に接続されるゲートラインGL(k)が非選択状態(内部ノードNAの電圧がLレベル)であるときには、
図11において[動作期間3]でのVDD接続構成のトランジスタM1の回路図、ダイオード接続構成のトランジスタM1の回路図、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cの回路図(セット回路201の回路図)に示すような状態となっている。
【0108】
図10に示す“途中休止前後”での“M1_ref”、“M1_dio”、および“M1”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間3]でのVDD接続構成のトランジスタM1、ダイオード接続構成のトランジスタM1、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cにおける電圧印加状態からわかるように、休止期間Tsensにおいて非選択状態のゲートラインが接続された単位回路UCx(k)では、VDD接続構成のトランジスタM1、ダイオード接続構成のトランジスタM1、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cのいずれについても負電圧バイアス状態にはなっていない。なお、
図11において1点鎖線の矢印および点線の矢印は、オフ状態のトランジスタにおいて生じるリーク電流を示している。
【0109】
また、VDD接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、ダイオード接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cにおける電圧印加状態は、休止期間Tsensにおいて当該単位回路UCx(k)に接続されるゲートラインGL(k)が選択状態(内部ノードNAの電圧がHレベル)であるときには、
図11において[動作期間4]でのVDD接続構成のトランジスタM1の回路図、ダイオード接続構成のトランジスタM1の回路図、および、第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cの回路図(セット回路201の回路図)に示すような状態となっている。
【0110】
図10に示す“途中休止前後”での“M1_ref”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間4]でのVDD接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態からわかるように、休止期間Tsensにおいて選択状態のゲートラインが接続された単位回路UCa(k)では、トランジスタM1は負電圧バイアス状態となっている。
【0111】
図10に示す“途中休止前後”での“M1_dio”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間4]でのダイオード接続構成のトランジスタM1における電圧印加状態からわかるように、休止期間Tsensにおいて選択状態のゲートラインが接続された単位回路UCb(k)では、ダイオード接続構成のトランジスタM1は負電圧バイアス状態とはなっていない。しかし、休止期間Tsensにおいて、ダイオード接続構成のトランジスタM1にリーク電流が生じ、内部ノードNAの電圧が低下する。
【0112】
図10に示す“途中休止前後”での“M1”の電圧波形や、
図11に示す[動作期間4]での第1の実施形態のトランジスタM1における電圧印加状態からわかるように、休止期間Tsensにおいて選択状態のゲートラインが接続された単位回路UC(k)では、トランジスタM1は負電圧バイアス状態となっている。これにより、トランジスタM1の閾値がシフトする可能性がある。このように本実施形態では、スキャンの途中休止時に内部ノードNAがHレベルである単位回路UC(k)、すなわち、ゲートドライバ200を構成するn段のシフトレジスタのうちスキャンの途中休止時に選択状態とすべきゲートラインに接続された段(以下「途中休止段」という)の単位回路UC(k)では、セット回路201のトランジスタM1は、休止期間Tsensにおいて負電圧バイアス状態となっている。
【0113】
なお、第1の実施形態における各単位回路UC(k)のセット回路201では、休止期間Tsensにおいて第1補助トランジスタM1Bにリーク電流が生じる(
図11に示す[動作期間4]での第1の実施形態のトランジスタM1,M1B,M1Cを含むセット回路201参照)。しかし、休止期間Tsensにおいて途中休止段の単位回路UC(k)におけるセット用トランジスタM1にはリーク電流がほとんど生じないので、タッチ位置検出に十分な長さの休止期間Tsensを設けることができる。
【0114】
<1.6 第1の実施形態の効果>
上記のように本実施形態によれば、インセル型のタッチパネルを備えたアクティブマトリクス型の表示装置に設けられたゲートドライバ200の各単位回路UCにおいて、セット信号Sを受け取るセット用トランジスタM1が、スキャンの途中休止ための制御信号としての休止状態信号VTPおよび駆動状態信号VTPBに基づき、通常駆動中はダイオード接続構成とされ、タッチ位置検出のためにスキャンの途中休止により設けられる休止期間TsensではVDD接続構成に相当する構成とされる(
図9に示す単位回路UCにおけるセット回路201、
図10に示す“VTP”と“VTPB”の電圧波形、および、
図11に示す第1の実施形態のセット回路201を参照されたい)。これにより、通常駆動中は、セット回路201内のセット用トランジスタM1は、負電圧バイアス状態にならないので、閾値シフトによってデプレ化することはない(
図10に示す“通常駆動”での“M1”の電圧波形、および、
図11に示す[動作期間1]と[動作期間2]における第1の実施形態のセット回路201を参照されたい)。
【0115】
一方、タッチ位置検出のための休止期間Tsensでは、内部ノードNAがHレベルである単位回路UC(k)すなわち途中休止段の単位回路UC(k)において、セット回路201内のセット用トランジスタM1が負電圧バイアス状態となっているので(
図10に示す“途中休止前後”での“M1”の電圧波形参照)、当該トランジスタM1は、閾値シフトによってデプレ化する可能性がある。しかし、負電圧バイアス状態となるトランジスタM1を含む単位回路は、途中休止段の単位回路UC(k)のみであって(
図11に示す[動作期間1]~[動作期間4]の第1の実施形態におけるセット回路201参照)、全ての単位回路UC(1)~UC(n)の1~2%程度に過ぎない。このため、本実施形態におけるゲートドライバ200では、途中休止段の単位回路UC(k)内のトランジスタM1がデプレ化しても、通常駆動においてトランジスタM1がデプレ化する可能性がある第1比較例としての
図7の単位回路UCa(
図11に示す[動作期間2]でのVDD接続構成のトランジスタM1の参照)を使用する場合とは異なり、消費電流の増大が問題になることはない。
【0116】
また、本実施形態における単位回路UC(k)では、休止期間Tsensにおいてダイオード接続構成のトランジスタM1にリーク電流が生じる第2比較例としての
図8の単位回路UCb(
図11に示す[動作期間4]でのダイオード接続構成のトランジスタM1参照)とは異なり、休止期間Tsensにおいて途中休止段の単位回路UC(k)におけるトランジスタM1にはリーク電流が殆ど生じない(
図11に示す[動作期間4]の第1の実施形態におけるセット回路201参照)。このため、タッチ位置検出のために十分な長さの休止期間Tsensを設けることができる。
【0117】
したがって、上記のような本実施形態によれば、インセル型のタッチパネルを備えた表示装置において、ゲートドライバ200における単位回路UC内のトランジスタM1のデプレ化による消費電流の増大を抑制しつつスキャンの途中休止によりタッチ位置検出に十分な長さの休止期間Tsensを設けることができる。
【0118】
<2.第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る表示装置について説明する。本実施形態に係る表示装置も、インセル型のタッチパネルを備えたアクティブマトリクス型の液晶表示装置であって、全体的な構成は、上記第1の実施形態と同様、
図1に示す通りであり、上記第1の実施形態と同一または対応する部分には同一の参照符号を付すものとする。また、本実施形態においても、ゲートドライバ200はモノリシックドライバ(GDM回路)であり、本実施形態に係る表示装置は、ゲートドライバ200における単位回路UC以外については上記第1の実施形態に係る表示装置と同一の構成を有している(
図1~
図5参照)。以下では、本実施形態におけるゲートドライバを構成する単位回路UCについて説明し、他の部分の詳しい説明は省略する。
【0119】
<2.1 単位回路の構成>
図12は、本実施形態における単位回路UCの構成を示す回路図である。この単位回路UCは、上記第1の実施形態における単位回路UC(
図9)と同様、12個のトランジスタM1~M3,M5,M6,M6+,M8~M10,M12,M14,M21と1個のキャパシタC1とを含み、入力端子21~23,25~27と出力端子29とを備えている。しかし、本実施形態における単位回路US(
図12)は、上記第1の実施形態における単位回路UC(
図9)と異なり、ハイレベル電源電圧VDDを受け取るための電源端子24に代えて、新たなクロック入力端子として入力端子31を備えている。
【0120】
図12に示すように、入力端子21は、第1入力クロック信号CK1を受け取るための第1クロック入力端子であり、入力端子31は、第2入力クロック信号CK2を受け取るための第2クロック入力端子であり、入力端子22は、セット信号Sを受け取るためのセット入力端子であり、入力端子23は、リセット信号Rを受け取るためのリセット入力端子であり、入力端子25は、クリア信号CLRを受け取るためのクリア入力端子であり、入力端子26は、途中休止用制御信号としての休止状態信号VTPを受け取るための第1制御入力端子であり、第2制御入力端子27は、途中休止用制御信号としての駆動状態信号VTPBを受け取るための第2制御入力端子であり、出力端子29は、この単位回路UCの出力信号Qを走査信号G(k)として出力するための端子である。なお、本実施形態においても、ゲートドライバ200には、全ての単位回路UCに基準電圧としてのローレベル電源電圧VSSを供給するための基準電源線VSSが配設されており、
図12に示すように、各単位回路UCに含まれる幾つかのトランジスタは基準電源線VSSに接続されている。
【0121】
本実施形態における単位回路UCの内部構成は、トランジスタM5のゲート端子が、電源端子24に代えてクロック入力端子としての入力端子31に接続されている点を除き、上記第1の実施形態における単位回路(
図9)と同じである。本実施形態における単位回路UC(
図12)に含まれるトランジスタM1~M3,M5,M6,M6+,M8~M10,M12,M14,M21も、上記第1の実施形態における単位回路UC(
図9)と同様、Nチャネル型かつエンハンスメント型の酸化物TFTである。
【0122】
このような本実施形態における単位回路UC(k)において、第1クロック入力端子21には、表示制御回路100からゲートドライバ200に供給される走査側制御信号GCTLに含まれるゲートクロック信号CKA~CKDのうち、いずれかのゲートクロック信号が第1入力クロック信号CK1として与えられる。この第1入力クロック信号CK1は、
図6に示される単位回路UC(i)(i=1~n)の入力クロック信号CKに相当し、内部ノードNAがHレベルのときに第1入力クロック信号CK1が出力信号Qとして出力される。リセット入力端子23には、当該単位回路UC(k)の3段後の単位回路UC(k+3)の出力信号Qがリセット信号Rとして与えられる。第2クロック入力端子31には、ゲートクロック信号CKA~CKDのうち、このリセット信号Rを出力信号Qとして出力する段(3段後の単位回路UC(k+3))における第1入力クロック信号CK1であるゲートクロック信号が、第2入力クロック信号CK2として入力される。ただし、これに限らず状況に応じて他のクロック信号を第2入力クロック信号CK2として用いる場合もある。
【0123】
例えば、ゲートクロック信号CKA~CKDが通常駆動において
図10に示すような波形であって、或る単位回路UC(k)の第1クロック入力端子21にゲートクロック信号CKAが第1入力クロック信号CK1として与えられる場合、当該単位回路UC(k)の第2クロック入力端子31にはゲートクロック信号CKDが第2入力クロック信号CK2として与えられる。このような第2入力クロック信号CKDが第2クロック入力端子31に与えられると、セット信号Sの立ち上がり時点ではトランジスタM5がオフ状態である。このため、セット信号SがLレベルからHレベルへと立ち上がることにより、内部ノードNAの電圧がHレベルになるとともに、安定化ノードNBの電圧がLレベルとなり、トランジスタM8がオフレベルとなる。なお、上記第1の実施形態における単位回路UC(
図9)とは異なり、このときトランジスタM5はオフ状態であるので、第2制御入力端子27からトランジスタM5,M6+を介して基準電源線にVSSに電流が流れることはない。
【0124】
<2.2 ゲートドライバの動作>
次に、本実施形態におけるゲートドライバ200の動作、すなわち、
図12に示すように構成された単位回路UCを使用したゲートドライバ200の動作について説明する。ここでは、ゲートドライバ200を構成するシフトレジスタにおけるk段目の単位回路UC(k)に着目し、
図12は本実施形態におけるk段目の単位回路UC(k)を示すものとする。また、このk段目の単位回路UC(k)では、第1クロック入力端子21には、第1入力クロック信号CK1としてゲートクロック信号CKAが与えられ、第2クロック入力端子31には、第2入力クロック信号CK2としてゲートクロック信号CKDが与えられるものとする。
【0125】
通常駆動の期間において、本実施形態における単位回路UC(k)は、上記第1の実施形態における単位回路UC(k)と同様、
図10に示すゲートクロック信号CKA~CKDや、途中休止用制御信号としての休止状態信号VTPおよび駆動状態信号VTPB、セット信号S、リセット信号R等に基づき、
図10に示す“通常駆動”における“NA”、“NB”、“Q”、“M1”等の波形で示されるように動作する。また、途中休止前後の期間においても、本実施形態における単位回路UC(k)は、
図10に示すゲートクロック信号CKA~CKDや、途中休止用制御信号としての休止状態信号VTPおよび駆動状態信号VTPB、セット信号S、リセット信号R等に基づき、
図10に示す“途中休止前後”における“NA”、“NB”、“Q”、“M1”等の波形で示されるように動作する。
【0126】
上記のような単位回路UC(k)の動作に基づき、本実施形態におけるゲートドライバ200は、通常駆動の期間および途中休止前後の期間の双方において、上記第1の実施形態におけるゲートドライバ200と同様に動作する。
【0127】
<2.3 第2の実施形態における効果>
上記より、本実施形態におけるゲートドライバ200においても、通常駆動の期間では、単位回路UCにおけるセット回路201内のトランジスタM1は、負電圧バイアス状態にならないので、閾値シフトによってデプレ化することはない。また、ゲートドライバ200において、途中休止段の単位回路UC(k)内のトランジスタM1がデプレ化しても、途中休止段の単位回路UC(k)の割合は極めて小さいので、消費電流の増大が問題になることはない。さらに、単位回路UC(k)では、休止期間Tsensにおいて途中休止段の単位回路UC(k)におけるトランジスタM1にはリーク電流が殆ど生じないので、タッチ位置検出に十分な長さの休止期間Tsensを設けることができる。したがって、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様、インセル型のタッチパネルを備えた表示装置において、ゲートドライバ200における単位回路UC内のトランジスタM1のデプレ化による消費電流の増大を抑制しつつスキャンの途中休止によりタッチ位置検出に十分に長い休止期間Tsensを設けることができる。
【0128】
また、本実施形態では、
図12からわかるように、上記第1の実施形態における単位回路UC(
図9)とは異なり、単位回路UCへのハイレベル電源電圧VDDの供給が不要となる。このため、ゲートドライバ200を構成するシフトレジスタにおいてハイレベル電源電圧VDDのための電源線を削減することができる。
【0129】
<3.変形例>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を施すことができる。
【0130】
上記実施形態では、ゲートクロック信号として4相のクロック信号CKA~CKDが使用され、ゲートドライバ200は
図6に示すように構成され、ゲートドライバ200における単位回路UCは
図9に示すように構成されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ゲートドライバ200が
図6および
図9に示す構成とは異なる構成であって4相以外の相数のゲートクロック信号に基づき動作するものであってもよい。
【0131】
以上では、実施形態として液晶表示装置を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、タッチパネルを備えタッチ位置検出のためにスキャンの途中休止を行うように構成されたアクティブマトリクス型の表示装置であれば、有機EL(Electroluminescenece)表示装置等の他の種類の表示装置にも適用可能である。上記実施形態に係る表示装置がアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である場合、
図2に示す画素形成部4は、画素スイッチング素子としてのTFT40および液晶容量42等に代えて、有機EL素子(有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode: OLED)とも呼ばれる)、保持キャパシタ、駆動トランジスタとしてのTFT、および、書込制御スイッチング素子としてのTFT等を含むことになる。この場合、データラインDL(j)の電圧すなわちデータ信号D(j)の電圧が,ゲートラインGL(i)によってオン/オフされる書込制御スイッチング素子を介して保持キャパシタに書き込まれて保持され、駆動トランジスタは、保持キャパシタに保持された電圧に応じた電流を有機EL素子に供給する。これにより有機EL素子は、保持キャパシタに書き込まれた電圧に応じた輝度で発光する。
【符号の説明】
【0132】
21 …入力端子(クロック入力端子、第1クロック入力端子)
22 …入力端子(セット入力端子)
23 …入力端子(リセット入力端子)
26 …入力端子(第1制御入力端子)
27 …入力端子(第2制御入力端子)
29 …出力端子
31 …入力端子(第2クロック入力端子)
100 …表示制御回路
200 …ゲートドライバ(走査信号線駆動回路)
300 …データドライバ(データ信号線駆動回路)
400 …表示部
201 …セット回路
202 …リセット回路
203 …出力回路
204 …安定化回路
M1 …セット用トランジスタ
M1B …第1補助トランジスタ
M1C …第2補助トランジスタ
M5 …第1トランジスタ
M6 …第2トランジスタ
M8 …第3トランジスタ
M6+ …第4トランジスタ
M9 …リセット用トランジスタ
NA …内部ノード
NB …安定化ノード
UC …単位回路
UC(i)…単位回路(i=1~n)
DL …データライン(データ信号線)
GL …ゲートライン(走査信号線)
GL(i)…ゲートライン(走査信号線)(i=1~n)
G(i) …走査信号(i=1~n)
VSS …ローレベル電源電圧、基準電源線
VDD …ハイレベル電源電圧
GSP1 …第1ゲートスタートパルス信号
GSP2 …第2ゲートスタートパルス信号
VTP …休止状態信号(途中休止用制御信号)
VTPB …駆動状態信号(途中休止用制御信号)
CKA~CKD…ゲートクロック信号CKx
CK …入力クロック信号
CK1 …第1入力クロック信号
CK2 …第2入力クロック信号
S …セット信号
R …リセット信号