(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051340
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】移乗補助装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/14 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61G7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157461
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 龍雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040GG14
4C040JJ08
(57)【要約】
【課題】本発明は、台座を回転させることで利用者を移乗する移乗補助装置において、装置をコンパクトにしつつ、安定した利用者の移乗を可能にする所定の移動量を確保できる、移乗補助装置の提供を目的とする。
【解決手段】移乗補助装置は、基部2と、回転軸Xまわりに回転可能であり、利用者の足を載置可能な台座3と、利用者を台座3上で支持する支持部とを有し、台座3は、第1載置領域31aと第2載置領域32bとを有し、台座3の周縁は、一対の側縁部E1、E2と、前端部E3と、後端部E4とを備え、回転軸Xから、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側部分を結ぶ線LN2までの長さL1が、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2よりも長い。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を所定の第1位置から第2位置へと移動することを補助する移乗補助装置であって、前記移乗補助装置は、
設置面に設置される基部と、
前記基部に対して鉛直方向の回転軸まわりに回転可能であり、前記利用者の足を載置可能な台座と、
前記台座に設けられ、前記利用者を前記台座上で支持する支持部と
を有し、
前記台座は、前記利用者の両足のそれぞれが載置される第1載置領域と第2載置領域とを有し、
前記台座の周縁は、前記第1載置領域と前記第2載置領域とを繋ぐ第1方向に対して垂直な第2方向に沿って延びる、一対の側縁部と、前記第2方向の前方側で前記一対の側縁部を繋ぐ前端部と、前記第2方向の後方側で前記一対の側縁部を繋ぐ後端部とを備え、
前記回転軸から、前記後端部のうち、前記第1載置領域および前記第2載置領域の前記第2方向で後方側部分を結ぶ線までの長さL1が、前記回転軸から前記側縁部までの長さL2よりも長い、
移乗補助装置。
【請求項2】
前記回転軸は、前記回転軸から前記後端部のうち最も後方に位置する部分までの第2方向での長さL3が、前記回転軸から前記前端部のうち最も前方に位置する部分までの第2方向での長さL4よりも長くなる位置に設けられている、請求項1に記載の移乗補助装置。
【請求項3】
前記台座は、前記利用者の足が載置される載置面に対して反対側となる裏面のうち、前記第2方向で後方側となる後端領域に、前記台座の回転を抑制する滑り止め部を有し、
前記滑り止め部は、前記台座に加わる荷重によって、前記設置面または前記基部に押し付けられることで前記台座の回転を抑制する、請求項2に記載の移乗補助装置。
【請求項4】
前記基部の、前記第2方向の後端は、前記台座の後端部よりも、前記第2方向で前記回転軸に近い位置に位置し、
前記台座および前記基部は、前記台座に加わる荷重によって、前記基部の後端を支点として、前記台座の後端部が前記設置面に近付くように傾斜するように構成され、
前記台座および前記基部が傾斜したときに、前記滑り止め部が前記設置面に押し付けられる、請求項3に記載の移乗補助装置。
【請求項5】
前記台座に前記利用者が載っていない無負荷状態において、前記滑り止め部は、前記設置面から離間するように設けられ、
前記第1載置領域および前記第2載置領域に前記利用者の足が載せられたときに、前記台座および前記基部が傾斜して、前記滑り止め部が前記設置面に接触し、
前記利用者が前記台座上で前傾姿勢になったときに、前記台座および前記基部が前記設置面に対して略平行な状態となって、前記滑り止め部が、前記設置面から離間するように、前記移乗補助装置が構成されている、
請求項4に記載の移乗補助装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記利用者の脛と当接して前記脛を支持する支持面を有し、
前記支持面は、前記設置面に対して所定の傾斜角で傾斜した傾斜状態で保持されるように構成され、
前記支持面は、前記利用者が、前記利用者の膝および足首を結ぶ線と、前記台座とのなす角が鋭角となる前傾姿勢となったときに、前記傾斜状態の前記支持面に前記利用者の脛が当接することで、前記利用者の前傾姿勢を維持できるように構成されている、
請求項1に記載の移乗補助装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記台座に対して、前記傾斜状態から、前記支持部の前記設置面に対する角度が大きくなる第1揺動方向へと、前記台座に対して平行に延びる第1揺動軸まわりに揺動可能に構成され、
前記移乗補助装置は、前記支持部に対して、前記第1揺動方向とは反対側となる第2揺動方向側に、前記利用者を補助する補助者によって押圧される押圧部を有している、請求項6に記載の移乗補助装置。
【請求項8】
前記台座は、前記第1載置領域および第2載置領域の第2方向で後方側に、前記台座の載置面から突出した突出部を有している、請求項1に記載の移乗補助装置。
【請求項9】
前記台座の基準面から前記滑り止め部の先端までの、前記回転軸の延在方向での距離が、前記台座の基準面から、前記基部のうち、前記設置面に接触する下面までの、前記回転軸の延在方向での距離よりも短い、請求項3に記載の移乗補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移乗補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢や疾病により自力で立ち上がることが困難な人(以下、被介護者という)を、車椅子、ベッド、トイレの便座、浴室でのシャワーチェアや入浴支援装置の座面、ソファー、車両のシートなどの間で相互に移動(以下、移乗という)させるために、様々な移乗補助装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、利用者が載った台座を回転させることで、利用者を移乗前の位置から移乗先の位置へと利用者を移乗させることができる、回転式移乗補助具が開示されている。この回転式移乗補助具は、円形のベース部材に対して、リング形状の回転枠を有する円形の回転盤(台座)が回転することによって、円形の回転盤の中心を回転軸として、利用者を移乗させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置において、装置全体の回転半径を大きくすれば、移乗先で装置の回転中心に対してより遠くの位置に移動させることができるが、その場合、装置全体が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、台座を回転させることで利用者を移乗させる移乗補助装置において、装置をコンパクトにしつつ、安定した利用者の移乗を可能にする所定の移動量を確保できる、移乗補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移乗補助装置は、利用者を所定の第1位置から第2位置へと移動することを補助する移乗補助装置であって、前記移乗補助装置は、設置面に設置される基部と、前記基部に対して鉛直方向の回転軸まわりに回転可能であり、前記利用者の足を載置可能な台座と、前記台座に設けられ、前記利用者を前記台座上で支持する支持部とを有し、前記台座は、前記利用者の両足のそれぞれが載置される第1載置領域と第2載置領域とを有し、前記台座の周縁は、前記第1載置領域と前記第2載置領域とを繋ぐ第1方向に対して垂直な第2方向に沿って延びる、一対の側縁部と、前記第2方向の前方側で前記一対の側縁部を繋ぐ前端部と、前記第2方向の後方側で前記一対の側縁部を繋ぐ後端部とを備え、前記回転軸から、前記後端部のうち、前記第1載置領域および前記第2載置領域の前記第2方向で後方側部分を結ぶ線までの長さL1が、前記回転軸から前記側縁部までの長さL2よりも長い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、台座を回転させることで利用者を移乗させる移乗補助装置において、装置をコンパクトにしつつ、安定した利用者の移乗を可能にする所定の移動量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の移乗補助装置を用いて補助者によって移乗される利用者が、浴室内の椅子に着座した状態を示す概略図である。
【
図2】
図1に示される状態から、本発明の一実施形態の移乗補助装置を用いて補助者によって利用者が、浴槽に設けられた入浴支援装置の座面に移乗された状態を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態の移乗補助装置の斜視図である。
【
図4】
図3の移乗補助装置を別の角度から見た斜視図である。
【
図10】
図3の移乗補助装置から支持体および押圧部を取り除いた、台座の上面図である。
【
図12】利用者が移乗補助装置上で前傾姿勢になった状態を示す概略図である。
【
図13】移乗補助装置の変形例を示す斜視図である。
【
図14】利用者が移乗補助装置上で前傾姿勢になる前の状態を示す概略図である。
【
図15】利用者が移乗補助装置上で前傾姿勢となった状態を示す概略図である。
【
図16】利用者が入浴支援装置の座面へと移動する過程を示す概略図である。
【
図17】本実施形態の移乗補助装置において、利用者が第1位置に位置するときの、台座の位置および利用者の腰部の位置を示す概略図である。
【
図18】
図17に示される状態から、利用者が第2位置に向かって回転したときの、台座の位置および利用者の腰部の位置を示す概略図である。
【
図19】参考例の移乗補助装置において、利用者が第1位置に位置するときの、台座の位置および利用者の腰部の位置を示す概略図である。
【
図20】
図19に示される状態から、利用者が第2位置に向かって回転したときの、台座の位置および利用者の腰部の位置を示す概略図である。
【
図21】別の参考例の移乗補助装置において、利用者が第1位置に位置するときの、台座の位置および利用者の腰部の位置を示す概略図である。
【
図22】
図21に示される状態から、利用者が第2位置に向かって回転したときの、台座の位置および利用者の腰部の位置を示す概略図である。
【
図23】台座および基部が傾斜して、滑り止め部が設置面に接触した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の移乗補助装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の移乗補助装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0012】
本実施形態の移乗補助装置1は、
図1および
図2に示されるように、利用者Uを所定の第1位置P1から第2位置P2へと移動することを補助するために用いられる。本実施形態では、利用者Uは、補助者Aによって、移乗補助装置1を用いて第1位置P1から第2位置P2へと移動される。なお、利用者Uは、補助者Aによらずに、例えば、浴槽BTの縁や、壁面に設けられた手摺などを利用して、利用者U自身で第1位置P1から第2位置P2に移動してもよい。本実施形態では、後述するように、移乗補助装置1と、補助者Aによって利用者Uを持ち上げるための支持ベルトB(
図11参照)と(移乗補助装置1と支持ベルトBとを備えたセットを移乗補助具T(
図14~
図16参照)と呼ぶ)を用いて、利用者Uが移乗される。なお、後述する支持ベルトBは必ずしも用いられる必要はない。したがって、利用者Uが移乗される際に、後述する構造とは異なる構造を有する支持ベルトや、他の支持具が用いられてもよい。
【0013】
本明細書において、「利用者」とは、移乗補助装置1によって第1位置P1から第2位置P2へと移動される移動対象者である。利用者は、特に限定されないが、例えば、高齢、疾病、一時的な怪我などにより自力で立ち上がることが困難な人(被介助者)である。また、本明細書において、「補助者」とは、移乗補助装置1によって利用者Uが第1位置P1から第2位置P2へと移動するのを補助する者である。補助者は、特に限定されないが、例えば、被介助者を介助する介助者とすることができる。
【0014】
また、本明細書において、「第1位置」は、利用者Uを移動させるべき目的位置(第2位置)に利用者Uが移動する前の位置であり、かつ、移乗補助装置1を用いる前の移乗の準備段階での位置である。また、「第2位置」は、移乗補助装置1を用いて利用者Uを移動させるべき目的位置である。第1位置は、特に限定されないが、例えば、第2位置の近傍に位置した、車椅子、椅子の座面など、利用者Uが着座可能な位置とすることができる。また、第2位置は、特に限定されないが、例えば、浴室に設置された入浴支援装置、浴室内のシャワーチェア、トイレの便座、ベッド、ソファー、車両のシートなど、利用者Uが着座可能な位置とすることができる。なお、第1位置および第2位置は、利用者Uの移乗前の位置と移乗後の位置であればよく、例えば、浴室内に設置された椅子と浴槽BT内に設けられた入浴支援装置BS(
図16参照)との間で利用者Uを移動させる場合、
図1および
図2に示されるように、第1位置P1を、浴室に設置された椅子の座面とし、第2位置P2を入浴支援装置BSの座面とすることもできるし、第1位置を入浴支援装置BSの座面とし、第2位置を浴室内に設置された椅子の座面とすることもできる。
【0015】
後述するように、利用者Uが第1位置P1から第2位置P2へと移動する際に、利用者Uは、
図1に示される第1位置P1から、移乗補助装置1の台座3上の第1回転位置(
図1に示される台座3の回転位置において、利用者Uが台座3に載ったときの位置)へと移動する。次に、利用者Uは、第1回転位置から台座3が回転することで第2位置P2に対応した位置まで回転した第2回転位置(
図2に示される台座3の回転位置において、利用者Uが台座3に載っているときの位置)まで移動する。その後、利用者Uは、第2回転位置から第2位置P2へと移動する(
図2参照)。
【0016】
以下、第1位置P1が浴室内(浴槽BT外)に設置された椅子の座面であり、第2位置P2が入浴支援装置BSの座面である例を用いて、移乗補助装置1を説明する。しかし、移乗補助装置1は、以下の説明によって限定されるものではない。なお、入浴支援装置BSは、
図16に簡略化して示されているが、浴槽BTの内部で昇降する座面と、座面を昇降させる駆動部(
図16では蛇腹部)とを有する装置であり、その構造は特に限定されない。
【0017】
図3~
図5に示されるように、移乗補助装置1は、設置面FLに設置される基部2(
図5参照)と、基部2に対して鉛直方向D3の回転軸Xまわりに回転可能であり、利用者Uの足を載置可能な台座3と、台座3に設けられ、利用者Uを台座3上で支持する支持部4とを有している。
【0018】
なお、本明細書において、「鉛直方向D3」は、基部2の延在方向(本実施形態では、設置面FLに平行な方向)に対して垂直な方向をいう。言い換えると、鉛直方向D3は、台座3の載置部31(
図3~
図5参照)に対して垂直な方向であり、本実施形態では、設置面FLに対して垂直な方向でもある。また、鉛直方向D3のうち、台座3に対して基部2側を下、下側または下方と呼び、台座3に対して基部2とは反対側を、上、上側または上方と呼ぶ。また、水平方向(鉛直方向D3に垂直な方向)のうち、後述する第1載置領域31aと第2載置領域31b(
図10参照)とを繋ぐ方向を第1方向D1と呼ぶ。第1方向D1は、本実施形態では、通常の使用方法で利用者Uが移乗補助装置1を利用した場合の、利用者Uの左右方向であり、第1方向D1は、移乗補助装置1の幅方向または左右方向と言い換えることもできる。また、水平方向のうち、第1方向D1に垂直な方向を第2方向D2と呼ぶ。第2方向D2は、本実施形態では、通常の使用方法で利用者Uが移乗補助装置1を利用した場合の、利用者Uの前方および後方を結ぶ方向であり、第2方向D2は、移乗補助装置1の前後方向と言い換えることもできる。第2方向D2のうち、利用者Uの正面側、すなわち利用者Uから利用者Uに正対する補助者Aに向かう方向を前方と呼び、利用者Uに正対する補助者Aから利用者Uに向かう方向を後方と呼ぶ。なお、第1方向D1および第2方向D2は、移乗補助装置1の台座3における方向であり、本明細書においては、台座3の所定の位置に対する相対的な方向である。また、本実施形態では、後述するように、支持部4は、
図5に示されるように、台座3に対して平行(本実施形態では、載置部31または設置面FLにも平行)に延びる第1揺動軸Ax1まわりに揺動可能に構成されている。この支持部4の揺動方向のうち、台座3に対して、後述する支持面411の傾斜状態(
図5の実線参照)から、支持部4の設置面FLに対する角度θ(
図5参照)が大きくなる方向を第1揺動方向D41と呼ぶ。本実施形態では、第1揺動方向D41は、支持部4が利用者Uに近付く方向である。また、支持部4の揺動方向のうち、第1揺動方向D41とは反対側の方向を、第2揺動方向D42と呼ぶ。第2揺動方向D42は、支持部4が利用者Uから離れる方向である。なお、本実施形態では、支持部4の設置面FLに対する角度θは、
図5に示されるように、支持部4の支持面411を設置面FLに向かって延長した面と設置面FLとがなす角度である。
【0019】
基部2は、
図5、
図7~
図9に示されるように、移乗補助装置1のうち、設置面FL(本実施形態では、浴室の床面)に設置される土台部分であり、台座3を回転可能に支持する部分である。基部2には台座3が鉛直方向D3に延びる回転軸Xまわりに回転可能に取り付けられる。基部2は、設置面FLに対して安定して保持されることが好ましく、基部2は、設置面FLとの接触部分に、例えばゴム等によって構成された滑り防止部(図示せず)を有していてもよい。基部2の形状および構造は、設置面FLに設置され、台座3を回転軸Xまわりに回転可能に取り付けることができれば、特に限定されない。本実施形態では、基部2は、台座3の下側に配置された板状の部材である。具体的には、基部2は、
図7に示されるように、回転軸Xを中心とした円板状に形成されている。なお、本実施形態では、基部2は、台座3の裏面(下面)3bから鉛直方向D3で離間して設けられているが、例えば、台座3の裏面3bに基部2を収容可能な大きさの円板形状の凹部が設けられ、当該凹部内に基部2が収容されてもよい。
【0020】
台座3は、基部2に対して直接または間接的に取り付けられ、基部2に対して鉛直方向D3の回転軸Xまわりに相対回転する部分である。台座3は、利用者Uの足が載置される載置部31を有し、載置部31に利用者Uの足が載置された状態で利用者Uを支持できるように構成されている。台座3と基部2との間の接続構造は、台座3が基部2に対して回転することができ、台座3に利用者Uが載ったときに利用者Uの体重による負荷を支持することができれば、特に限定されない。例えば、台座3と基部2との間は、ベアリング等の軸受部材(図示せず)が設けられ、台座3が基部2に対して円滑に回転できるように構成されている。
【0021】
載置部31は、利用者Uの足(踵からつま先までの部分)の少なくとも一部(好ましくは全部)が載置されるように構成されている。本実施形態では、載置部31は、
図10に示されるように、利用者Uの両足のそれぞれが載置される第1載置領域31aと第2載置領域31bとを有している。第1載置領域31aおよび第2載置領域31bは、
図10に示されるように、利用者Uの右足および左足のそれぞれが載置できるように、台座3の上面において第1方向(幅方向)D1に離間して設けられている。
【0022】
また、載置部31は、
図10に示されるように、第1方向D1で第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの間に設けられ、補助者Aの一方の足が載置される補助者用足載置領域31cを備えている。補助者用足載置領域31cは、補助者Aの一方の足が載置され、他方の足が設置面FLに載置されることで、補助者Aが台座3の回転を止めたり、台座3の回転速度が速くなり過ぎないように補助者Aによって台座3の回転速度を制御することが可能となる。また、補助者用足載置領域31cに補助者Aの足が載置されて荷重が加えられることで、後述するように、基部2および台座3が設置面FLに対して傾いた状態から、設置面FLに対して略平行な状態へと、基部2および台座3の姿勢を変化させることもできる(
図14および
図15参照)。
【0023】
本実施形態では、補助者用足載置領域31cは、
図10に示されるように、第1方向D1で第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの間に設けられている。これにより、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの間のスペースが有効活用され、台座3を(第2方向D2に)大きくすることなく、利用者Uと補助者Aの足を台座3に載せることができる。したがって、移乗補助装置1を小型化することができる。また、台座3に利用者Uおよび補助者Aの足が載ったときに、台座3に加わる荷重がバランス良く加わる。なお、台座3の載置部31は、利用者Uの足を載置することができればよく、必ずしも補助者用足載置領域31cを有していなくてもよい。
【0024】
また、本実施形態では、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bと、補助者用足載置領域31cとは、
図10に示されるように、後述する支柱部42によって、第1方向D1で少なくとも部分的に仕切られている(
図4参照)。これにより、利用者Uおよび補助者Aの足が載置部31に載置されたときに、利用者Uの足と補助者Aの足とが干渉することが抑制され、踏みつけによる怪我などが抑制される。台座3の詳細な構成については、後述する。
【0025】
支持部4は、利用者Uを台座3上で支持する。支持部4の形状および構造は、利用者Uを台座3上で支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、支持部4は、後述するように、利用者Uの脛と当接して脛を支持する支持面411を有し、支持面411は、設置面FLに対して所定の角度で傾斜した傾斜状態で保持されるように構成されている。利用者Uの脛と当接することで、利用者Uを台座3に載せた状態で、前傾姿勢(
図12参照)で支持するように構成されている。本実施形態では、支持部4は、
図3~
図6に示されるように、支持体41および支柱部42を有している。また、本実施形態では、支持部4は、利用者Uによって掴むことが可能なグリップ部43を有している。
【0026】
支柱部42は、後述するように、支持面411が傾斜状態で保持されるように、支持体41を支持する部位である。支柱部42は、支持体41に対して利用者Uの体重による負荷が加わったときに、利用者Uを所定の前傾姿勢で保持できるように支持体41を支持する。支柱部42の形状および構造は、支持体41を支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、支柱部42は、
図5に示されるように、台座3の載置部31のうち第2方向D2で前方側の端部領域から、鉛直方向D3で上に延びるにつれて後方に向かうように傾斜して延びている。また、支柱部42は、
図4に示されるように、第1方向D1に離間して一対設けられている。本実施形態では、後述するように、支持体41が揺動するように構成されており、支持体41が所定の位置まで揺動したときに、
図4および
図5に示されるように、一対の支柱部42の自由端(上端)がストッパとして機能して、支持体41を所定の位置で保持するように構成されている。一対の支柱部42は、第1方向D1で、後述する第1支持面411aおよび第2支持面411bに対応した位置に設けられ、第1支持面411aおよび第2支持面411bを介して加わる利用者Uの体重による負荷をより確実に支持する。
【0027】
また、一対の支柱部42は、第1方向D1で、上述した補助者用足載置領域31cの両側から延びている。したがって、一対の支柱部42は、上述したように、補助者用足載置領域31cと、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bとを第1方向D1で仕切る仕切り部としても機能している。これにより、利用者Uや補助者Aが台座3に足を載置したときに、踏みつけによる事故が抑制される。
【0028】
グリップ部43は、利用者Uが台座3に載るときに掴むことで、台座3が回転するときに利用者Uの姿勢が崩れたり、利用者Uが転倒したりすることを抑制する。グリップ部43の形状および構造は、台座3が回転するときに利用者Uの姿勢が崩れたり、利用者Uが転倒したりすることを抑制できるように利用者Uによって掴むことができれば、特に限定されない。本実施形態では、グリップ部43は、
図3~
図6に示されるように、第2方向D2で支持体41の前方側において支持体41に接続された接続部44から第1方向D1に突出した一対の棒状部材によって構成されている。本実施形態では、グリップ部43は、支持体41と共に揺動するように構成されている。この場合、グリップ部43と支持体41とが一体となって移動するので、支持体41が揺動する際に、支持体41とグリップ部43との間に、利用者Uや補助者Aの身体の一部が挟み込まれることが抑制される。なお、グリップ部43は、支持体41とは別に、例えば、支柱部42に設けられてもよいし、台座3のうち、支持体41や支柱部42以外の部分に設けられていてもよい。
【0029】
支持体41は、支持部4のうち、利用者Uの脛を支持する部位である支持面411を有している。支持体41の形状および構造は、利用者Uの脛を支持する支持面411を有していれば、特に限定されない。本実施形態では、支持体41は、
図3~
図5に示されるように、第1揺動方向D41側となる一方の面41aおよび第2揺動方向D42側となる他方の面41bを有する板状に形成されている。
【0030】
支持面411は、
図5に示されるように、設置面FLに対して所定の傾斜角で傾斜した傾斜状態(実線部分参照)で保持されるように構成されている。これにより、支持面411は、
図12に示されるように、利用者Uが、利用者Uの膝および足首を結ぶ線LN1と、台座3(載置面3aのうち、載置面3aと線LN1とが交わった部分よりも第2方向D2で前方側の面)とのなす角が鋭角となる前傾姿勢となったときに、傾斜状態の支持面411に利用者Uの脛が当接することで、利用者Uの前傾姿勢を維持できるように構成されている。
【0031】
「前傾姿勢」は、図示する利用者Uの姿勢に限定されないが、一例として、傾斜状態で保持された支持面411に利用者Uの脛が接触した状態で、利用者Uの頭部が腰部に対して前方に出るように、利用者Uが屈んだ状態とすることができる。また、支持面411の「傾斜状態」は、上述した利用者の前傾姿勢が維持されるように傾斜していれば特に限定されないが、例えば、第1方向D1で見たときに、支持面411と設置面FLとのなす角度θ(
図5参照)が50°~70°、好ましくは55°~65°とすることができる。
【0032】
上述したように、支持面411が、設置面FLに対して所定の傾斜角で傾斜した傾斜状態で保持され、利用者Uが前傾姿勢となったときに、傾斜状態の支持面411に利用者Uの脛が当接することで、
図12に示されるように、利用者Uの前傾姿勢が維持される。したがって、詳細は後述するが、台座3を鉛直方向D3に延びる回転軸Xまわりに回転させることで利用者Uが第1位置P1から第2位置P2に移動する際に、利用者Uは前方に体重をかけた状態で安定して回転可能となる。したがって、シンプルな構成で、安定して利用者Uを移乗させることが可能となる。
【0033】
なお、支持面411の形状および構造は、利用者Uの前傾姿勢を維持できるように利用者Uの脛と当接することができれば、特に限定されない。本実施形態では、支持面411は、
図3、
図6および
図8に示されるように、利用者Uの脛が延びる方向で、利用者Uの脛と所定の長さに亘って接触する1つの連続した面として構成されている。この場合、支持面411と利用者Uの脛との接触面積が大きくなる。したがって、支持面411から利用者Uの脛に加わる反力が分散され、利用者Uが支持面411に体重をかけたときに、利用者Uの脛に加わる負荷が低減される。また、本実施形態では、支持面411は、
図3および
図6に示されるように、柔軟な材料によって形成されたクッション部Cを有し、支持面411と利用者Uの脛との間の衝撃や圧力をより低減している。なお、支持面は、利用者Uの脛が延びる方向で連続せずに複数の部分に分割されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、板状の支持体41は、
図3、
図6および
図8に示されるように、一方の面41aに、利用者Uの一方の脛を支持する第1支持面411aと、利用者Uの他方の脛と当接する第2支持面411bとを有している。本実施形態では、支持体41は1枚の板状体によって構成されており、第1支持面411aおよび第2支持面411bは、第1方向D1の中間部412を介して第1方向D1に繋がっている。なお、第1支持面および第2支持面は、第1方向D1で分断された別々の板状体によって構成されていてもよい。
【0035】
本実施形態では、支持体41は、
図6に示されるように、第1支持面411aおよび第2支持面411bの領域において、第2揺動方向D42側に突出し、第1支持面411aと第2支持面411bとの間の領域(中間部412)において、第1揺動方向D41側に突出している。これにより、板状の支持体41は、
図6に示されるように、支持体41の他方の面41bにおいて、一対の山部Mと、一対の山部Mの間に設けられた谷部Vとが形成されている。
【0036】
一対の山部Mが形成された部位における、支持体41の反対側の面(一方の面41a)においては、
図6に示されるように、一対の凹部が形成され、この一対の凹部に第1支持面411aおよび第2支持面411bが形成されている。本実施形態では、第1支持面411aおよび第2支持面411bは、脛まわりの湾曲形状に沿って湾曲しており、利用者Uの脛の前部の一部を包み込むようにホールドする。これにより、利用者Uの脛に加わる負荷が低減されるとともに、利用者Uが前傾姿勢になったときに第1方向D1に利用者Uの脛がずれることが抑制される。したがって、台座3が回転するときなどに、利用者Uの脛が支持体41に対して第1方向D1にずれて、利用者Uが台座3から転落することを抑制することができる。
【0037】
本実施形態では、上述したように、支持部4は、
図5に示されるように、台座3に対して、傾斜状態から、支持部4の設置面FLに対する角度θが大きくなる第1揺動方向D41へと、台座3に対して平行に延びる第1揺動軸Ax1まわりに揺動可能に構成されている。
【0038】
第1揺動軸Ax1は、台座3に対して平行な一の方向に延びており、本実施形態では、載置部31の表面に対して平行、または設置面FLに対して平行な一の方向に延びている。本実施形態では、第1揺動軸Ax1は、第2方向D2に垂直な方向、すなわち第1方向D1に延びている。第1揺動軸Ax1は、本実施形態では、台座3に設けられた軸支部32に対して回転可能な軸部材によって構成されている。また、本実施形態では、支持体41は、
図5に示されるように、軸支部32に対して軸部材を介して回転可能に接続された揺動アーム45を介して揺動するように構成されている。本実施形態では、支持体41が、第2揺動方向D42に揺動して傾斜状態まで移動すると、
図5に示されるように、支持体41に設けられた当接部413が、ストッパ部42aと当接することで、傾斜状態に保持される。なお、本実施形態では、支持体41の他方の面41bに当接部413が設けられ、支柱部42の上端にストッパ部42aが設けられている。しかし、当接部およびストッパ部は、支持体41が第2揺動方向D42に揺動したときに互いに当接して、支持体41を傾斜状態で保持することができれば、他の部位に設けられてもよい。
【0039】
本実施形態では、揺動アーム45は、
図3、
図6および
図8に示されるように、第1方向D1で第1支持面411aと第2支持面411bとの間に延びて、中間部412に接続されている。この場合、第1支持面411aと第2支持面411bとに利用者Uの脛を当接させる際に、揺動アーム45が邪魔になることがない。また、揺動アーム45は、第1支持面411aと第2支持面411bとの間に設けられており、支持体41において、第1方向D1で、後述する押圧部5が設けられた位置に対応した位置で接続されている。したがって、後述するように、支持体41が押圧部5によって押圧されたときに、支持体41を円滑に揺動させることができる。なお、揺動アーム45と台座3との間の接続箇所(軸支部32)の位置は特に限定されないが、本実施形態では、載置面3aのうち、利用者U側(第2方向D2で後方側)の端部領域に位置している。
【0040】
本実施形態では、
図4~
図6および
図9に示されるように、移乗補助装置1は、支持部4に対して、第2揺動方向D42側(本実施形態では、支持体41の他方の面41b側)に、補助者Aによって押圧される押圧部5を有している。詳細は後述するが、押圧部5が補助者Aによって押圧されることで、支持部4が傾斜状態から第1揺動方向D41に揺動する方向に力を受ける。したがって、支持部4に接触した利用者Uの脛が、支持部4によって第1揺動方向D41側(第2方向D2で後方側)に押圧されて、利用者Uの脛は、足首を支点として支持部4とともに第1揺動方向D41に揺動する。これにより、補助者Aが利用者Uを移乗補助装置1から第2位置P2で降ろすときに、支持部4によって、利用者Uの膝の位置を第2方向D2で後方側へとシフトさせることができる。したがって、利用者Uは移乗先となる第2位置P2で深く腰掛けることができる。
【0041】
押圧部5は、支持部4を第1揺動方向D41に向かって揺動させるように補助者Aにより押圧される部位である。特に、押圧部5は、補助者Aによって利用者Uを第1位置P1から第2位置P2へ移動させる際に、利用者Uが上述した第2回転位置に到達したあと、利用者Uを第2回転位置から第2位置P2へと移動させるときに押圧される。押圧部5が押圧されることによって、支持部4は、所定の傾斜状態から支持部4の設置面FLに対する角度θが大きくなるように揺動する(
図16参照)。これにより、支持部4によって利用者Uの脛が押圧されて、利用者Uの膝の位置が、第2方向D2で後方側へ所定量シフトすることで、利用者Uは第2位置P2で深く腰掛けることができる。支持部4の傾斜状態から第1揺動方向D41への回転量(回転角度)は、利用者Uの膝の位置が、第2方向D2で後方側へ所定量シフトするように構成されていれば特に限定されない。例えば、支持部4の傾斜状態から第1揺動方向D41への回転角度は、20°~60°、好ましくは30°~45°とすることができる。
【0042】
なお、押圧部5は、利用者Uが第1位置P1において座った状態から
図12に示される前傾姿勢になる際に、支持部4が傾斜状態よりも利用者U側に揺動して、第1位置P1で座っている利用者Uの脛に当接した状態(例えば、
図14に示される台座3に対して垂直な状態)から、傾斜状態に向かって第2揺動方向D42へ揺動するとき(
図15参照)に補助者Aによって押圧されてもよい。これにより、支持部4が急激に揺動することを防ぐことができるため、安全に前傾姿勢となることができる。
【0043】
押圧部5が設けられる位置は、支持部4を第1揺動方向D41に向かって揺動させることができるように押圧可能な位置であれば、特に限定されない。本実施形態では、押圧部5は、
図6および
図9に示されるように、一対の山部Mの間に設けられた谷部Vに配置されている。これにより、支持部4を1カ所で押圧しても、利用者Uの左右の脛に対して均等に力を加えることができる。また、第1方向D1で一対の山部Mの間の谷部Vの部分に押圧部5が設けられていることによって、押圧部5を山部Mに対して第2方向D2でより前方側(利用者Uに対して遠くなる側)に配置する必要がない。したがって、第2方向D2のスペースが節約され、より移乗補助装置1を小型化することができる。
【0044】
また、本実施形態では、押圧部5は、
図4~
図6および
図9に示されるように、補助者Aの膝または脛と当接する当接体51を有している。
図14~
図16に示されるように、支持部4が第1揺動軸Ax1まわりに揺動する際に、当接体51に当接する補助者Aの膝または脛の姿勢は変化する。本実施形態では、当接体51は、この姿勢の変化に応じて、当接体51の傾斜角を変化させるために、台座3に対して平行に延びる第2揺動軸Ax2まわりに、支持部4(支持体41)に対して揺動するように構成されている(
図5の矢印AR参照)。これにより、支持部4と当接体51とが互いに対して独立して揺動することができる。したがって、当接体51は補助者Aの膝または脛の姿勢の変化に応じて傾斜角を変化させることができる。これにより、補助者Aの膝または脛と当接体51との好適な接触状態が維持され、補助者Aは押圧部5に力を加えやすくなるとともに、補助者Aの脛に加わる負荷を分散することができる。
【0045】
なお、第2揺動軸Ax2は、台座3に対して平行な一の方向に延びており、本実施形態では、載置部31の表面に対して平行、または設置面FLに対して平行な一の方向に延びている。本実施形態では、第2揺動軸Ax2は、第2方向D2に垂直な方向、すなわち第1方向D1に延びており、第1揺動軸Ax1に対して平行な方向に延びている。なお、当接体51は、第2揺動軸Ax2まわりに支持部4に対して揺動可能に構成されていれば、支持部4との接続構造は特に限定されない。本実施形態では、押圧部5は、
図5に示されるように、支持体41(谷部V)に固定される固定部52と、固定部52の上端から当接体51に向かって延び、固定部52と一体に形成された延設部53と、固定部52の下端側において固定部52と当接体51との間に延びる弾性変形可能な付勢部54とを有している。本実施形態では、固定部52と延設部53とが交差する部位が、第2回転軸Ax2を構成している。固定部52と延設部53とが交差する部位が、所定の剛性を有するとともに弾性変形可能なヒンジ状の部位となり、当接体51に力が加わったときに、延設部53が固定部52に対する角度を変化させるように撓むことで、延設部53が固定部52に対して第2回転軸Ax2まわりに揺動可能となっている。補助者Aから当接体51に力が加わり、当接体51の下端が支持体41に近付くように揺動すると、付勢部54は弾性変形し、補助者Aから当接体51への力が解除されると、付勢部54の付勢力によって、当接体51は元の位置に戻ることができる。なお、当接体51は、例えば、接続部44から第1方向D1に延びる軸部材によって揺動可能に支持されていてもよい。この場合は、第1方向D1に延びる軸部材が第2揺動軸Ax2となる。
【0046】
当接体51の形状および構造は、補助者Aの膝または脛の姿勢の変化に応じて、第2揺動軸Ax2まわりに、支持部4に対して揺動するように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、当接体51は、
図4および
図9に示されるように、第2揺動軸Ax2に対して垂直な方向に(谷部Vの底部の延在方向に沿って)所定の長さで延びており、補助者Aの脛に、脛の延在方向に沿って所定の長さで接触できるように構成されている。これにより、補助者Aが脛によって当接体51を押圧するときの、当接体51から補助者Aの脛に加わる反力が分散され、補助者Aの脛に加わる負荷が低減される。なお、当接体51は、柔軟な材料によって形成されたクッション部を有していてもよく、クッション部によって当接体51と補助者Aの脛との間の衝撃や圧力がより低減される。
【0047】
第2揺動軸Ax2の位置は、補助者Aの膝または脛の姿勢の変化に応じて、当接体51が支持部4に対して揺動することができれば、特に限定されない。本実施形態では、第2揺動軸Ax2は、
図5に示されるように、支持体41の上端近傍に設けられている。当接体51は、当接体51が補助者Aによって押圧されたときに、谷部Vによって形成された凹部に、当接体51の上端側が入り込むように第2揺動軸Ax2まわりに揺動可能となっている。
【0048】
なお、押圧部5は、上述した当接体51に代えて、
図13に示されるように、補助者Aの膝または脛と当接するローラ55を備えていてもよい。ローラ55は、支持部4が第1揺動軸Ax1まわりに揺動する際に、ローラ55に当接する補助者Aの膝または脛の姿勢の変化に応じて、水平方向に延びる第2揺動軸Ax2まわりに回転するように構成されている。これにより、補助者Aによってローラ55が押圧されたときに、ローラ55が第2揺動軸Ax2まわりに回転することによって、補助者Aの膝または脛の姿勢が変化したときに、その姿勢の変化に応じて、ローラ55が第2揺動軸Ax2まわりに回転しながら補助者Aの膝または脛との接触を維持することができる。これにより、補助者Aの膝または脛とローラ55との好適な接触状態が維持され、補助者Aは押圧部5に力を加えやすくなる。
【0049】
ローラ55は、
図13に示される変形例では、ローラ55の軸方向で中央部が凹み、軸方向の両端に向かって外径が大きくなるように湾曲した凹部を有している。これにより、補助者Aの膝または脛との接触面積が増えて、補助者Aの脛に加わる負荷が低減される。なお、ローラ55の表面に、柔軟な材料によって形成されたクッション部を有していてもよい。この場合、ローラ55と補助者Aの脛との間の衝撃や圧力がより低減される。
【0050】
また、補助者Aが利用者Uを第1位置P1から第2位置P2に移動させる際に、利用者Uを一時的に持ち上げる際の補助として、
図11、
図14~
図16に示される支持ベルトBが用いられてもよい。なお、支持ベルトBはあくまで利用者Uの移動を補助する部材であり、必ずしも用いられる必要はない。
【0051】
図11に示されるように、支持ベルトBは、利用者Uの腰部に掛け回される腰部支持部B1と、腰部支持部B1の両端に設けられ、補助者Aによって把持される把持部B2とを有している。
【0052】
腰部支持部B1は、
図14~
図16に示されるように、利用者Uの腰部(臀部を含む)に掛け回される部分である。腰部支持部B1の形状、構造および材料は、利用者Uの腰部を引き上げる力を伝えることができれば、特に限定されない。腰部支持部B1は、本実施形態では、
図11に示されるように、帯状に構成されているが、他の形状および構造を有していてもよい。腰部支持部B1は、布製であってよいし、ゴム等の弾性材料によって構成されていてもよい。
【0053】
把持部B2は、利用者Uの腰部に掛け回された腰部支持部B1を引っ張るために把持される部分である。把持部B2の形状および構造は、補助者Aによって把持することができ、利用者Uの腰部を引き上げることができるように、腰部支持部B1を引っ張ることができれば、特に限定されない。
【0054】
上述した支持ベルトBを用いる場合、
図14~
図16に示されるように、補助者Aは自身が後に倒れる力を利用して利用者Uを椅子などの座面からわずかに持ち上げることができる。したがって、補助者Aは、
図14~
図16に示されるように、補助者Aの上半身が前かがみになることが抑制された状態(鉛直方向D3に近い状態)で、利用者Uを移動させる際の力を加えることができる。したがって、補助者Aの腰への負荷が緩和され、容易に利用者Uを第1位置P1から第2位置P2へと移動させることができる。
【0055】
つぎに、台座3の詳細について説明する。上述したように、台座3は、基部2に対して回転軸Xまわりに回転可能であり、利用者Uの足が載置されて、利用者Uを支持できるように構成されている。本実施形態では、台座3は、
図3~
図5に示されるように、鉛直方向D3で上側に載置面(上面)3aを有し、載置面3aに第1載置領域31aおよび第2載置領域31bが設けられている(
図10参照)。台座3の載置面3aに対して反対側となる裏面(下面)3bは、
図5に示されるように、設置面FLに離間した状態で対向する。台座3の形状および構造は、基部2に対して回転軸Xまわりに回転可能であり、利用者Uを支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、台座3は板状に形成されているが、例えば、内部に中空部を有する扁平な筒状体であってもよい。
【0056】
本実施形態では、台座3は、
図3~
図6に示されるように、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側に、台座3の載置面3aから突出した突出部33を有している。突出部33は、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bにおいて、利用者Uの足の踵部分が載置される部分である。突出部33は、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに利用者Uの足が載置されたときに、利用者Uの足の踵側が高くなり、つま先側が低くなるように所定の高さで突出している(
図12参照)。この場合、利用者Uが第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに足を載置したときに、つま先に対して踵側が高くなることで、利用者Uは、
図12に示される前傾姿勢となりやすくなる。そのため、利用者Uが台座3上でバランスを崩して後方側に倒れることが抑制される。
【0057】
突出部33の形状および構造は、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに利用者Uの足が載置されたときに、利用者Uの足の踵側が高くなり、つま先側が低くなるように所定の高さで突出していれば、特に限定されない。本実施形態では、突出部33は、第1方向D1および第2方向D2に所定の幅を有する柱状に形成されている。本実施形態では、
図5に示されるように、突出部33は、第2方向D2で突出部33の前方側に第2方向D2で前方に向かうにつれて高さが低くなる傾斜面33aを有している。突出部33が傾斜面33aを有している場合、利用者Uの足が傾斜面33aに沿ってつま先側が低くなるように傾斜しやすくなり、利用者Uがより前傾姿勢になりやすくなる。なお、突出部は、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で全体に亘って、第2方向D2の後方から前方に向かって徐々に高さが低くなるように傾斜して設けられていてもよい。
【0058】
また、台座3は、
図3~
図5に示されるように、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で前方側に、載置面3aから鉛直方向D3で上側に延びる壁部34を有している。壁部34は、第1方向D1に所定の幅を有しており、利用者Uの足のつま先に当接可能となっており、利用者Uの足が前方にずれることを抑制している。これにより、利用者Uの足が前方にずれて姿勢が崩れることが抑制され、利用者Uを第1位置P1から第2位置P2へと安定して移乗させることができる。なお、本実施形態では、壁部34は、台座3に対して着脱可能であり、利用者Uの足の大きさに応じて第2方向D2での位置を変更することができる。
【0059】
さらに、台座3は、
図3~
図5に示されるように、補助者用足載置領域31cの第2方向D2で後方側に、補助者用突出部35を有している。これにより、補助者Aが補助者用足載置領域31cに足を置いたときに、補助者Aの足のつま先側が補助者用突出部35に載り、補助者Aのつま先側が高くなり、踵側が低くなる(
図14~
図16参照)。この場合、補助者Aの足の踵側に体重がかかりやすく、利用者Aを持ち上げやすくなる。
【0060】
本実施形態では、台座3の周縁は、
図10に示されるように、第2方向D2に沿って延びる、一対の側縁部E1、E2と、第2方向D2の前方側で一対の側縁部E1、E2を繋ぐ前端部E3と、第2方向D2の後方側で一対の側縁部E1、E2を繋ぐ後端部E4とを備えている。
【0061】
側縁部E1、E2は、台座3のうち、第1方向D1の両端において第2方向D2に沿って延びるエッジ部分である。本実施形態では、側縁部(第1側縁部)E1に沿って、第1載置領域31aが第2方向D2に延びており、側縁部(第2側縁部)E2に沿って、第2載置領域31bが第2方向D2に延びている。本実施形態では、側縁部E1、E2は、第2方向D2に沿って直線状に延びているが、側縁部E1、E2は湾曲していてもよいし、部分的に他の部分よりも内側に凹んだ切り欠き等を有していてもよい。
【0062】
前端部E3は、台座3のうち、第2方向D2の前方側で、一対の側縁部E1、E2を第1方向D1で繋ぐように延びるエッジ部分である。前端部E3は、本実施形態では、台座3のうち補助者A側の端部であり、前端部E3からは、後端部E4に向かって補助者用足載置領域31cが延びている(
図10参照)。本実施形態では、前端部E3は、第1方向D1に直線状に延びる部分を有しているが、前端部E3は全体的または部分的に湾曲していてもよいし、部分的に他の部分よりも内側に凹んだ切り欠き等を有していてもよい。なお、本実施形態では、前端部E3は、
図10に示されるように、側縁部E1、E2の前方の端部から、第1方向D1で前端部E3の中心側に近付くにつれて前方に向かうように湾曲して延びる一対の傾斜部(湾曲部)E31と、一対の傾斜部E31を繋ぐ、第1方向D1に直線的に延びる直線部E32とを有している。直線部E32は、本実施形態では、側縁部E1、E2に対して垂直に延びている。
【0063】
後端部E4は、台座3のうち、第2方向D2の後方側で、一対の側縁部E1、E2を第1方向D1で繋ぐように延びるエッジ部分である。後端部E4は、本実施形態では、台座3のうち、利用者U側の端部である。本実施形態では、後端部E4は、第1方向D1に沿って湾曲して延びているが、後端部E4は直線状に設けられていてもよいし、部分的に他の部分よりも内側に凹んだ切り欠き等を有していてもよい。
【0064】
本実施形態では、
図10に示されるように、回転軸Xから、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側部分を結ぶ線LN2までの長さL1が、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2よりも長い(L1>L2)。ここで、「後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側部分」は、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに対応する部分(側縁部E1、E2から後端部E4の中央に向かう所定の部分)のうち、第2方向D2で最も後方に位置する部分とすることができる。すなわち、「後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側部分」は、後端部E4のうち、台座3に載置された利用者Uの足の踵の後方側となる部分となる。なお、後端部E4のうち、第1載置領域31aに対応する部分は、例えば、後端部E4のうち、一方の側縁部E1の後端から、側縁部E1、E2間の第1方向D1の距離の20~40%までの領域とすることができる。また、後端部E4のうち、第2載置領域31bに対応する部分は、例えば、後端部E4のうち、他方の側縁部E2の後端から、側縁部E1、E2間の第1方向D1の距離の20~40%までの領域とすることができる。また、「回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2」は、本実施形態では、回転軸Xから、第2方向D2に直線状に延びる側縁部E1、E2までの距離である。なお、例えば、側縁部E1、E2が直線状でない場合(例えば湾曲していたり、波状に延びている場合)は、「回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2」は、回転軸Xを通る第2方向D2に延びる線LN3(
図10参照)と、側縁部E1、E2のうち、回転軸Xを通る第2方向D2に延びる線LN3から最も遠い部分との間の第1方向D1の長さとなる。
【0065】
上述したように、本実施形態では、回転軸Xから、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側部分を結ぶ線LN2までの長さL1が、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2よりも長い(L1>L2)。これにより、移乗補助装置1をコンパクトにしつつ、安定した利用者Uの移乗を可能にする所定の移動量を確保することができる。以下、この点について、
図17~
図22を用いて詳細に説明する。なお、
図17~
図22は、いずれも利用者Uが第1位置P1の座面から、第2位置P2の座面へと移乗する場合を例に挙げて説明する。なお、
図17~
図22においては、利用者Uの腰部(または臀部)UWの位置を二点鎖線で示し、利用者Uの腰部UW以外の部位は省略している。
【0066】
まず、
図17に示されるように、利用者Uを第1位置P1の座面から第2位置P2の座面に移乗させる際に、例えば、第2位置P2(例えば、浴槽BTの壁部分や、椅子の脚部など)と移乗補助装置1との間に、利用者Uの足を置くスペースSPを確保した状態で、移乗補助装置1が設置面FLに設置される場合がある。このスペースSPは、移乗補助装置1を第1位置P1に位置する利用者Uに近付けて配置する際に、利用者Uの足と移乗補助装置1とが干渉しないように、利用者Uの両足を広げたときに利用者Uの足を一時的に置くスペースである。このスペースSPを設ける場合、
図17に示されるように、移乗補助装置1は、必要なスペースSPの分だけ第2位置P2から離れた位置に設置される。
【0067】
このように、移乗補助装置と第2位置P2との間にスペースが設けられた場合において、
図19および
図20に示される参考例の移乗補助装置10が用いられる場合について検討する。
図19および
図20に示される参考例の移乗補助装置10は、本実施形態の移乗補助装置1とは異なり、中心に回転軸を有する円形の台座30を有している(なお、参考例の台座30は、第1方向D1および第2方向D2の寸法が同じ台座の一例として示しており、円形以外の形状であってもよい)。移乗補助装置10が第1位置P1から第2位置P2に向かって回転軸Xまわりに回転すると、利用者Uの踵の位置は、
図20に示されるように、第2位置P2に対してスペースSPの分だけ離れたままとなっている。そのため、
図20において二点鎖線で示す利用者Uの腰部UWの位置は、第2位置P2の座面に完全には届かない位置となる(第2位置P2の座面との重なりが小さくなる)場合がある。この場合、利用者Uを第2位置P2に移乗させるには、さらに第2方向D2で後方側(
図20において左側)に移動させる必要がある。したがって、利用者Uが自ら第2方向D2に移動するか、補助者Aの補助が必要となり、利用者Uまたは補助者Aの労力が増えてしまう。一方、
図21および
図22に示される別の参考例に示されるように、移乗補助装置100の台座300の半径を大きくすれば、台座300の回転半径が大きくなり、利用者Uの腰部UWは、
図22に示されるように、第2位置P2において深く腰掛けることはできるが、移乗補助装置100が大型化してしまい、
図21に示されるように、利用者Uの足を置くスペースSPを確保することができない。
図21および
図22に示される移乗補助装置100において、
図19のように利用者Uの足を置くスペースSPを確保すると、利用者Uの腰部UWは、
図20に示された状態と同様に、第2位置P2の座面との重なりが小さくなり、利用者Uまたは補助者Aの労力が増えてしまう。
【0068】
一方、本実施形態では、上述したように、回転軸Xから、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの後方側部分を結ぶ線LN2までの長さL1が、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2よりも長い(L1>L2)。したがって、第1位置P1から第2位置P2に向かって台座3が回転軸Xまわりに回転すると、利用者Uの踵(第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの後方側部分)は、
図18に示されるように第2位置P2に近い位置に位置付けられる。そのため、利用者Uの腰部UWは、
図18に示されるように(
図19に示される参考例と比較して)、第2位置P2の座面との重なりが大きくなる。したがって、利用者Uを第2位置P2の座面において、第2位置P2の座面に奥深く移乗させることが容易になる。したがって、第2位置P2の座面に対する利用者Uの移動量が小さくなって、利用者Uが第2位置P2の座面に浅く腰かけることで(
図20参照)不安定な移乗となって転倒してしまうリスクを低減させることができる。これにより、利用者Uが第2位置P2の座面において移動する移動量を減らすことができるので、利用者Uまたは補助者Aの労力を低減させることができる。そして、本実施形態では、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2を短くすることができるので、移乗補助装置1を第1方向D1でコンパクトにすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、
図10に示されるように、回転軸Xは、回転軸Xから後端部E4のうち最も後方に位置する部分(
図10における左側の端部)までの第2方向D2での長さL3が、回転軸Xから前端部E3のうち最も前方に位置する部分(
図10における右側の端部)までの第2方向D2での長さL4よりも長くなる位置に設けられている。すなわち、回転軸Xが、台座3において、台座3の第2方向D2での中心部分にあるのではなく、第2方向D2での中心部分から第2方向D2で前方側に偏心した位置に設けられている。この場合、回転軸Xの位置が偏心していない同程度の大きさの台座を有する移乗補助装置(例えば、
図19の移乗補助装置10)と比較して、台座3の回転半径が大きくなり、利用者Uを第2位置P2においてより奥深くまで移動させることができる。また、台座3の回転半径を大きくしても、回転軸Xから前端部E3までの長さL4が短くなり、第2方向D2での台座3の全長は大きくならないので、利用者Uの移動量を確保しつつ、移乗補助装置1の小型化が可能となる。第2方向D2における回転軸Xの位置、すなわち、長さL3および長さL4は特に限定されないが、回転軸Xは、例えば、長さL3が台座3の第2方向D2の全長(長さL3+長さL4)の60~90%、好ましくは70~80%となる位置に設けられていることが好ましい。
【0070】
なお、「後端部E4のうち最も後方に位置する部分」は、本実施形態では、第1方向D1で後端部E4の中央部分であるが、例えば、後端部E4の第1方向D1での中央部が、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの後方側部分(
図10における線LN2)よりも第2方向D2で前方側となるように、回転軸Xに向かって凹んでいる場合には、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの第2方向D2で後方側部分が、後端部E4のうち最も後方に位置する部分となり得る。また、「前端部E3のうち最も前方に位置する部分」は、本実施形態では、第1方向D1で前端部E3の中央部分(第1方向D1に直線状に延びる直線部E32)であるが、例えば、前端部E3の中央部分が他の部分に対して回転軸Xに向かって凹んでいる場合には、前端部E3の中央部分ではなく、前端部E3の第1方向D1の両端側の部分(例えば、
図10における傾斜部E31に対応する部分)となり得る。
【0071】
本実施形態では、回転軸Xから後端部E4のうち最も後方に位置する部分までの第2方向D2での長さL3は、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2と、第1載置領域31aまたは第2載置領域31bの第1方向D1の幅L5との和の80~120%(L3=(L2+L5)×80~120%)、好ましくは、90~110%となるように構成されている。第1載置領域31aまたは第2載置領域31bの幅L5は、
図17に示されるスペースSPの幅と同程度であり、幅L5はスペースSPの幅とも言える(
図10参照)。この場合、
図17および
図18に示されるように、台座3の回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2と、スペースSPの幅L5の合計長さが、回転軸Xから後端部E4の最も後方に位置する部分までの長さL3と同程度となる。そのため、利用者Uの足を載置するスペースSPを考慮して設置された移乗補助装置1において、台座3が第1位置P1から第2位置P2まで回転すると、台座3の後端部E4と第2位置P2との間の隙間が小さくなる。したがって、利用者Uの足を載置する最低限のスペースSPを確保しつつ、移乗補助装置1をコンパクトにし、台座3の後端部E4を第2位置P2に近付けて、利用者Uを奥深く座らせることができる。なお、第1載置領域31aまたは第2載置領域31bの幅(スペースSPの幅)L5は、利用者Uの平均的な足幅に応じた大きさとすることができ、特に限定されない。例えば、第1載置領域31aまたは第2載置領域31bの幅(スペースSPの幅)L5は、70~120mm、好ましくは80~100mmとすることができる。
【0072】
また、台座3は、利用者Uの足が載置される載置面3aに対して反対側となる裏面3bのうち、第2方向D2で後方側となる後端領域3c(
図7参照)に、台座3の回転を抑制する滑り止め部36を有している(
図5、
図7、
図8、
図23参照)。滑り止め部36は、台座3に加わる荷重によって、設置面FLまたは基部2に押し付けられることで台座3の回転を抑制する。これにより、利用者Uや補助者A等によって台座3に荷重が加わったときに、滑り止め部36によって台座3の回転が抑制されるので、利用者Uは安心して台座3に載ることができる。なお、後端領域3cは、台座3の裏面3bのうち、第2方向D2で中央から後方の領域であればよく、例えば、後端部E4から第2方向D2で所定の範囲内(例えば、台座3の第2方向D2の全長の1/3以内、好ましくは1/5以内)とすることができる。
【0073】
滑り止め部36の形状および構造は、設置面FLまたは基部2に押し付けられることで台座3の回転を抑制することができれば、特に限定されない。滑り止め部36は、設置面FLまたは基部2との接触部分が例えば、ゴム等の滑りを防止できる材料によって構成されている。本実施形態では、滑り止め部36は、
図5、
図8および
図23に示されるように、台座3の裏面3bから突出する軸部36aと、設置面FLに当接可能な当接部36bとを備えている。また、滑り止め部36の数は特に限定されないが、本実施形態では、滑り止め部36は、
図7に示されるように、後端部E4に沿って複数設けられている。具体的には、滑り止め部36は、第1載置領域31aの後端側に(2つ)設けられており、第2載置領域31bの後端側に(2つ)設けられている。これにより、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに足が載置されたときに、台座3の回転が抑制されやすくなる。なお、滑り止め部36は、本実施形態では台座3とは別体として設けられているが、例えば、台座3の後端領域を部分的または全体的に厚くすることによって、台座3と一体に設けられていてもよい。
【0074】
本実施形態では、
図7に示されるように、基部2の、第2方向D2の後端21は、台座3の後端部E4よりも、第2方向D2で回転軸Xに近い位置に位置している。台座3および基部2は、(利用者Uまたは補助者A等による)台座3に加わる荷重によって、基部2の後端21を支点として、台座3の後端部E4が設置面FLに近付くように傾斜するように構成されている(
図14および
図23参照)。このように、台座3および基部2が傾斜したときに、滑り止め部36は設置面FLに押し付けられる。これにより、例えば、利用者Uが足のみを台座3に載せた後、利用者Uが第1位置P1の座面から台座3に載る際など、台座3が回転すると利用者Uが不安な状況において、利用者Uや補助者Aが特段の操作をせずとも、台座3の回転を抑制することができる。したがって、補助者Aがいない場合や、補助者Aが回転を防ぐ動作を忘れていたとしても、台座3の回転が滑り止め部36によって抑制される。したがって、利用者Uは安心して台座3に載ることができる。なお、本実施形態では、滑り止め部36は、台座3が基部2とともに傾いて、設置面FLに接触するように構成されているが、例えば、台座3が基部2に対して傾くように構成されており、台座3に荷重が加わったときに、台座3が基部2に対して傾くことで、滑り止め部が基部2の上面に押し付けられて、台座3の回転が抑制されてもよい。
【0075】
本実施形態では、台座3に利用者Uが載っていない無負荷状態において、滑り止め部36は、
図5に示されるように、設置面FLから離間するように設けられている。具体的には、
図5に示されるように、台座3の基準面(例えば、台座3の裏面3b)から滑り止め部36の先端(下端)までの、回転軸Xの延在方向(本実施形態では、鉛直方向D3)での距離が、台座3の基準面(例えば、台座3の裏面3b)から、基部2のうち、設置面FLに接触する下面までの、回転軸Xの延在方向での距離よりも短い。これにより、台座3の無負荷状態においては、滑り止め部36は設置面FLに接触せず、台座3にブレーキがかからない。したがって、利用者Uが台座3に足を載せる前に、移乗補助装置1を設置面FLに設置して台座3の回転位置を調整する際など、台座3を容易に回転させることができる。そして、台座3の回転位置を調整した後は、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに利用者Uの足が載せられたときに、
図23に示されるように、台座3および基部2が傾斜して、滑り止め部36が設置面FLに接触し、台座3の回転を抑制することができる。なお、台座3の「基準面」は、例えば、台座3の載置面3a(上面)や、台座3の裏面3b(下面)とすることができる。なお、台座3の載置面3aや裏面3bが平坦面を有していない場合には、載置面3aまたは裏面3bのうち、一点を通る回転軸Xに垂直な仮想面とすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、
図12および
図15に示されるように、利用者Uが台座3上で前傾姿勢になったときに、台座3および基部2が設置面FLに対して略平行な状態となって、滑り止め部36が、設置面FLから離間するように、移乗補助装置1が構成されている。このように、利用者Uが前傾姿勢となり、台座3の回転準備が完了した状態で、滑り止め部36による台座3の回転に対するブレーキが解除される。したがって、利用者Uが台座3上で前傾姿勢となった後、台座3を第1位置P1から第2位置P2へと円滑に回転させることができる。特に、本実施形態では、上述したように、支持部4の支持面411は、設置面FLに対して所定の傾斜角で傾斜した傾斜状態で保持されるように構成され、支持面411は、利用者Uが、利用者Uの膝および足首を結ぶ線LN1と、載置部31とのなす角が鋭角となる前傾姿勢となったときに、傾斜状態の支持面411に利用者Uの脛が当接することで、利用者Uの前傾姿勢を維持できるように構成されている。このように、支持部4の支持面411によって利用者Uが前傾姿勢となることで、利用者Uの重心が、第2方向D2で後方側から前方側に移動して回転軸Xに近い位置となる。これにより、台座3および基部2が傾斜した状態(
図14参照)から設置面FLに対して略平行な状態(
図15参照)へとなりやすく、容易に滑り止め部36によるブレーキの解除が可能となる。
【0077】
また、本実施形態では、上述したように、回転軸Xは、
図10に示されるように長さL3が、長さL4よりも長くなる位置に設けられている。また、基部2の後端21は、台座3の後端部E4よりも、回転軸Xに近い位置に位置し、台座3および基部2は、台座3に加わる荷重によって、基部2の後端21を支点として、台座3の後端部E4が設置面FLに近付くように傾斜するように構成されている。このように、回転軸Xが第2方向D2で前方側に偏心した位置に設けられ、台座3の後端部E4側が、基部2に対して第2方向D2で後方側に張り出していることによって(
図7の後端領域3c参照)、
図23に示されるように、利用者Uが台座3に足を載せたときに、台座3が、基部2の後端21を支点として傾きやすくなる。そのため、利用者Uが全体重をかけなくても、足を台座3に載せるだけで、台座3および基部2が傾いて、滑り止め部36によって容易に台座3の回転を抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、滑り止め部36は、台座3の無負荷状態において、設置面FLから離間しているが、滑り止め部は、無負荷状態において設置面FLまたは基部2に接触し、台座3に荷重が加えられたときに、滑り止め部が設置面FLまたは基部2に押し付けられることで、ブレーキ力が強まることで、台座3の回転を抑制するように構成されていてもよい。
【0079】
つぎに、図面を参照して、本実施形態の移乗補助装置1の使用方法について、浴室内の椅子から入浴支援装置BSの座面へと移乗する場合を例に挙げて説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、移乗補助装置1は以下の説明によって限定されるものではない。また、以下の説明において、補助者Aが行う行為は、利用者Uによって行うことが可能であれば、利用者Uによって行われてもよい。
【0080】
まず、被介助者(利用者U。以下、被介助者Uとも呼ぶ)を浴室内の椅子(第1位置P1。以下、椅子P1とも呼ぶ)から入浴支援装置BSの座面(第2位置P2。以下、座面P2とも呼ぶ)へ移乗させるために、介助者(補助者A。以下、介助者Aとも呼ぶ)は、被介助者Uが着座した椅子P1の前(浴室の床面)に、移乗補助装置1を配置する(
図1参照)。具体的には、
図1に示されるように、移乗補助装置1の支持面411が被介助者Uを向くように、移乗補助装置1が配置される。このとき、移乗補助装置1と第2位置P2との間に、被介助者Uの足を置くスペースSP(
図17参照)を確保するために、移乗補助装置1は、浴槽BTの壁面からわずかに離して設置される。なお、本実施形態では、入浴支援装置BSの座面P2は、浴室内の椅子P1に対して、移乗補助装置1によって鉛直方向D3の回転軸Xまわりに約90°回転した位置とされているが、第1位置P1と第2位置P2との間の角度は回転軸Xまわりの任意の角度とすることができる。
【0081】
移乗補助装置1が設置される際に、被介助者Uの両足は、台座3の第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの側方のスペースSPに置かれており、その後、被介助者Uの足を第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに載せる(なお、被介助者Uの足をスペースSPに移動させずに直接第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに載せても構わない)。次に、介助者Aは、被介助者Uを前傾姿勢にさせるために、被介助者Uの両足が第1載置領域31aおよび第2載置領域31bに載った状態で、支持ベルトBを用いて被介助者Uを手前に引き上げる(
図14および
図15参照)。この前傾姿勢になる過程において、被介助者Uの足による荷重によって、台座3および基部2は
図14に示されるように、設置面FLに対して傾斜しており、滑り止め部36が設置面FLに接触している。これにより、被介助者Uは安定して前傾姿勢へと姿勢を変えることができる。なお、被介助者Uが前傾姿勢になる際に、介助者Aは、介助者Aの踵部分を浴室の床面(設置面FL)に接触させてブレーキをかけることで、台座3の回転をさらに抑制することで、さらに台座3を安定させてもよい。介助者Aが支持ベルトBを用いて被介助者Uを引き上げるとともに、被介助者Uが上半身を前方に移動させることで(または介助者Aが被介助者Uの上半身を前方に動かすことで)被介助者Uは
図12に示される前傾姿勢となる。より具体的には、被介助者Uを前傾姿勢とする際、介助者Aは、
図14に示されるように、被介助者Uの脛に支持部4の支持面411を接触させるとともに、押圧部5に介助者Aの膝または脛を押し当てる。この状態で介助者Aは、被介助者Uの腰部に掛け回された支持ベルトBを引っ張りながら介助者Aの後方に体重をかけることで、介助者Aの腰を屈めることなく、被介助者Uを持ち上げることができる。なお、
図12に示されるように、被介助者Uが自力で椅子P1から台座3に移動できる場合には、被介助者U自身によって台座3に移動して前傾姿勢となってもよい。
【0082】
また、被介助者Uを前傾姿勢とする際に、支持面411と接触する被介助者Uの脛は、支持面411と設置面FLとのなす角度θが小さくなるように傾斜していく。このときに、介助者Aが押圧部5を被介助者U側に向かって力を加えて、支持体41の傾斜速度を調整しながら徐々に支持体41を傾斜させていくことで、支持体41が傾斜状態に向かって急激に揺動することを抑制することができる。
【0083】
支持体41が第2揺動方向D42に所定量揺動すると、
図12に示されるように、支持体41の当接部413と、支柱部42のストッパ部42aとが当接することで、支持体41が傾斜状態で停止して保持される。これにより、支持体41の支持面411に当接する被介助者Uの脛も所定の傾斜状態で保持される。被介助者Uは、両手でグリップ部43を把持するとともに、頭部が前方となるように上半身を移動させることで、
図12に示される前傾姿勢となる。このように、被介助者Uが支持部4の支持面411によって前傾姿勢で保持されることによって、被介助者Uは、台座3を回転させる前に安定して前傾姿勢を維持することができ、台座3を回転させる際にも安定して前傾姿勢を維持することができる。また、被介助者Uが前傾姿勢で維持されることによって、被介助者Uの重心が台座3の回転中心(回転軸X)に近付く。これにより、台座3の回転軸Xまわりの回転が安定し、台座3を円滑に回転させることができる。また、移乗補助装置1は、支持体41(または押圧部5)よりも鉛直方向D3で上方に他の部材を有していないので、被介助者Uが前傾姿勢となる際に邪魔な部材が膝よりも上に存在しない。したがって、本実施形態の移乗補助装置1は、被介助者Uを容易に前傾姿勢とさせることができ、鉛直方向D3でコンパクトな構成とすることができる。更に、被介助者Uの重心が台座3に近づくことで、介助者Aの体重を被介助者Uの脛で支えることが可能となる。さらに被介助者Aの膝関節を軸に腰部支持部B1を引くことができ、てこの原理により椅子P1の座面から引き上げる際の荷重が減少するため、介助者Aが被介助者Uを容易に引き上げることができる。したがって、介助者Aの負担を軽減することができる。被介助者Uが前傾姿勢になると、
図15に示されるように、台座3および基部2が設置面FLに対して略平行となり、滑り止め部36が設置面FLから離間して、台座3のブレーキが解除される。
【0084】
次に、被介助者Uが前傾姿勢となった状態で台座3を鉛直方向D3の回転軸Xまわりに回転させる。より具体的には、介助者Aは、台座3の補助者用足載置領域31c(
図10参照)に片足を載せ、他方の足を浴室の床面に置いた状態(
図15参照)で台座3を回転軸Xまわりに回転させる。介助者Aが台座3を、椅子P1の位置に対応した第1回転位置から、入浴支援装置BSの座面P2の位置に対応する第2回転位置まで回転させると、介助者Aは、台座3の外側に露出した踵部分を浴室の床面(設置面FL)に接触させて、台座3の回転にブレーキをかけて、台座3を停止させる。
【0085】
介助者Aが台座3を第2回転位置まで回転させた後、介助者Aは、被介助者Uを入浴支援装置BSの座面P2に向かって移動させる。なお、被介助者Uが自力で台座3から座面P2に移動できる場合には、被介助者U自身によって座面P2に移動してもよい。介助者Aによって被介助者Uを台座3から座面P2に移動させる場合、支持ベルトBを用いて被介助者Uを持ち上げ、入浴支援装置BSの座面P2へと下ろす。本実施形態では、上述したように、回転軸Xから、後端部E4のうち、第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの後方側部分を結ぶ線LN2までの長さL1が、回転軸Xから側縁部E1、E2までの長さL2よりも長い(L1>L2)。したがって、座面P1から座面P2に向かって台座3が回転軸Xまわりに回転すると、被介助者Uの踵の位置(第1載置領域31aおよび第2載置領域31bの後方側部分の位置)は、
図18に示されるように座面P2に近い位置に位置付けられる。そのため、被介助者Uの腰部UWは、
図18に示されるように、座面P2との重なりが大きく、被介助者Uを座面P2に奥深く移乗させることが容易になる。また、被介助者Uが台座3から座面P2に移乗する際には、前傾姿勢にある被介助者Uの重心が後方へ移動するため、台座3の後端側に加わる荷重が増加する。これにより、滑り止め部36は設置面FLまたは基部2に押し付けられ、台座3の回転を抑制することができる。そのため、被介助者Uは安定した状態で座面P2の座面に移乗することができる。
【0086】
図16の二点鎖線に示される状態から被介助者Uをさらに被介助者Uの後方へと移動させるために、介助者Aの膝または脛によって押圧部5が、被介助者U側(第1揺動方向D41)に向かって押圧される。押圧部5が被介助者U側(第1揺動方向D41)に向かって押圧されると、
図16に示されるように、支持体41が第1揺動軸Ax1まわりに回転して、第1揺動方向D41に揺動する。支持体41が所定の角度、第1揺動方向D41に揺動すると、
図16に示されるように、被介助者Uの膝から下の部分が支持体41によって押圧されて、被介助者Uの足首を支点として回転する。これにより、被介助者Uの膝の位置は、
図16において二点鎖線に示される位置から実線で示される位置へと、被介助者Uの後方側(
図16において左側)へと所定量シフトする。被介助者Uの膝の位置が後方にシフトすると、それに伴って、被介助者Uの腰部(臀部)の位置も後方にシフトする。したがって、被介助者Uは、入浴支援装置BSの座面P2にさらに奥深く腰掛けることが可能となる。なお、このとき、支持ベルトBを用いて、被介助者Uの腰部を座面P2から持ち上げながら、支持体41を第1揺動方向D41へと揺動させると、押圧部5へ加える力が小さくても支持体41を揺動させることが可能となり、より容易に被介助者Uを深く腰掛けさせることができる。
【0087】
また、本実施形態では、介助者Aの膝や脛の動作によって、被介助者Uを奥深く腰掛けさせることができるので、介助者Aは腰を曲げた状態で被介助者Uを上方に向かって持ち上げる必要がない。具体的には、介助者Aは、
図16に示されるように、上半身が鉛直方向D3に延びた状態で、台座3に載せた脚の膝を曲げる動作を行うことで、押圧部5を押圧し、支持体41を第1揺動方向D41に揺動させて、被介助者Uを深く腰掛けさせることができる。したがって、介助者Aの腰への負担が大きく軽減される。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0089】
(1)利用者を所定の第1位置から第2位置へと移動することを補助する移乗補助装置であって、前記移乗補助装置は、
設置面に設置される基部と、
前記基部に対して鉛直方向の回転軸まわりに回転可能であり、前記利用者の足を載置可能な台座と、
前記台座に設けられ、前記利用者を前記台座上で支持する支持部と
を有し、
前記台座は、前記利用者の両足のそれぞれが載置される第1載置領域と第2載置領域とを有し、
前記台座の周縁は、前記第1載置領域と前記第2載置領域とを繋ぐ第1方向に対して垂直な第2方向に沿って延びる、一対の側縁部と、前記第2方向の前方側で前記一対の側縁部を繋ぐ前端部と、前記第2方向の後方側で前記一対の側縁部を繋ぐ後端部とを備え、
前記回転軸から、前記後端部のうち、前記第1載置領域および前記第2載置領域の前記第2方向で後方側部分を結ぶ線までの長さL1が、前記回転軸から前記側縁部までの長さL2よりも長い、
移乗補助装置。
【0090】
(2)前記回転軸は、前記回転軸から前記後端部のうち最も後方に位置する部分までの第2方向での長さL3が、前記回転軸から前記前端部のうち最も前方に位置する部分までの第2方向での長さL4よりも長くなる位置に設けられている、(1)に記載の移乗補助装置。
【0091】
(3)前記台座は、前記利用者の足が載置される載置面に対して反対側となる裏面のうち、前記第2方向で後方側となる後端領域に、前記台座の回転を抑制する滑り止め部を有し、
前記滑り止め部は、前記台座に加わる荷重によって、前記設置面または前記基部に押し付けられることで前記台座の回転を抑制する、(1)または(2)に記載の移乗補助装置。
【0092】
(4)前記基部の、前記第2方向の後端は、前記台座の後端部よりも、前記第2方向で前記回転軸に近い位置に位置し、
前記台座および前記基部は、前記台座に加わる荷重によって、前記基部の後端を支点として、前記台座の後端部が前記設置面に近付くように傾斜するように構成され、
前記台座および前記基部が傾斜したときに、前記滑り止め部が前記設置面に押し付けられる、(1)~(3)のいずれか1つに記載の移乗補助装置。
【0093】
(5)前記台座に前記利用者が載っていない無負荷状態において、前記滑り止め部は、前記設置面から離間するように設けられ、
前記第1載置領域および前記第2載置領域に前記利用者の足が載せられたときに、前記台座および前記基部が傾斜して、前記滑り止め部が前記設置面に接触し、
前記利用者が前記台座上で前傾姿勢になったときに、前記台座および前記基部が前記設置面に対して略平行な状態となって、前記滑り止め部が、前記設置面から離間するように、前記移乗補助装置が構成されている、
(1)~(4)のいずれか1つに記載の移乗補助装置。
【0094】
(6)前記支持部は、前記利用者の脛と当接して前記脛を支持する支持面を有し、
前記支持面は、前記設置面に対して所定の傾斜角で傾斜した傾斜状態で保持されるように構成され、
前記支持面は、前記利用者が、前記利用者の膝および足首を結ぶ線と、前記台座とのなす角が鋭角となる前傾姿勢となったときに、前記傾斜状態の前記支持面に前記利用者の脛が当接することで、前記利用者の前傾姿勢を維持できるように構成されている、
(1)~(5)のいずれか1つに記載の移乗補助装置。
【0095】
(7)前記支持部は、前記台座に対して、前記傾斜状態から、前記支持部の前記設置面に対する角度が大きくなる第1揺動方向へと、前記台座に対して平行に延びる第1揺動軸まわりに揺動可能に構成され、
前記移乗補助装置は、前記支持部に対して、前記第1揺動方向とは反対側となる第2揺動方向側に、前記利用者を補助する補助者によって押圧される押圧部を有している、(1)~(6)のいずれか1つに記載の移乗補助装置。
【0096】
(8)前記台座は、前記第1載置領域および第2載置領域の第2方向で後方側に、前記台座の載置面から突出した突出部を有している、(1)~(7)のいずれか1つに記載の移乗補助装置。
【0097】
(9)前記台座の基準面から前記滑り止め部の先端までの、前記回転軸の延在方向での距離が、前記台座の基準面から、前記基部のうち、前記設置面に接触する下面までの、前記回転軸の延在方向での距離よりも短い、(1)~(8)のいずれか1つに記載の移乗補助装置。
【符号の説明】
【0098】
1、10、100 移乗補助装置
2 基部
21 後端
3、30、300 台座
3a 載置面
3b 裏面
3c 後端領域
31 載置部
31a 第1載置領域
31b 第2載置領域
31c 補助者用足載置領域
32 軸支部
33 突出部
33a 傾斜面
34 壁部
35 補助者用突出部
36 滑り止め部
36a 軸部
36b 当接部
4 支持部
41 支持体
41a 一方の面
41b 他方の面
411 支持面
411a 第1支持面
411b 第2支持面
412 中間部
413 当接部
42 支柱部
42a ストッパ部
43 グリップ部
44 接続部
45 揺動アーム
5 押圧部
51 当接体
52 固定部
53 延設部
54 付勢部
55 ローラ
A 補助者(介助者)
Ax1 第1揺動軸
Ax2 第2揺動軸
B 支持ベルト
B1 腰部支持部
B2 把持部
BS 入浴支援装置
BT 浴槽
C クッション部
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 鉛直方向
D41 第1揺動方向
D42 第2揺動方向
E1、E2 側縁部
E3 前端部
E31 傾斜部
E32 直線部
E4 後端部
FL 設置面
L1 回転軸から、後端部のうち、第1載置領域および第2載置領域の第2方向で後方側部分を結ぶ線までの長さ
L2 回転軸から側縁部までの長さ
L3 回転軸から後端部のうち最も後方に位置する部分までの第2方向での長さ
L4 回転軸から前端部のうち最も前方に位置する部分までの第2方向での長さ
L5 第1載置領域または第2載置領域の第1方向の幅(スペースの幅)
LN1 利用者の膝および足首を結ぶ線
LN2 第1載置領域および第2載置領域の第2方向で後方側部分を結ぶ線
LN3 回転軸を通る第2方向に延びる線
M 山部
T 移乗補助具
U 利用者(被介助者)
UW 利用者の腰部
P1 第1位置(椅子)
P2 第2位置(座面)
SP 利用者の足を置くスペース
V 谷部
X 回転軸
θ 支持部の設置面に対する角度