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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051342
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エアマットレス
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/057 20060101AFI20240404BHJP
   A47C 27/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61G7/057
A47C27/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157463
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 真季
【テーマコード(参考)】
3B096
4C040
【Fターム(参考)】
3B096AB05
3B096AC11
3B096AD07
4C040AA01
4C040AA03
4C040BB06
4C040CC03
4C040EE05
(57)【要約】
【課題】 体位変換機能を作動させた場合であっても安楽な状態であると使用者が感じることのできるエアマットレスを提供する。
【解決手段】 主マットレス15と、主マットレス15よりも下側に配置される左右一対の体位変換エアセル4a,4bとを備え、体位変換エアセル4a,4bのそれぞれに対して独立に給排気可能に構成されたエアマットレス1であって、体位変換エアセル4a,4bは、主マットレス15の長手方向に延びる外長手セル部17と、主マットレス15の横外側から内側に向けて延びる横内セル部18とを接合した形状を有しており、横内セル部18は使用者の臀部よりも大腿部側に配置され、外長手セル部17はマットレスの横外側位置において使用者の頭部側に延びるように配置されることを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主マットレスと、前記主マットレスよりも下側に配置される左右一対の体位変換エアセルとを備え、前記体位変換エアセルのそれぞれに対して独立に給排気可能に構成されたエアマットレスであって、
前記体位変換エアセルは、
前記主マットレスの長手方向に延びる外長手セル部と、
前記主マットレスの横外側から内側に向けて延びる横内セル部とを接合した形状を有しており、
前記横内セル部は使用者の臀部よりも大腿部側に配置され、
前記外長手セル部は前記主マットレスの横外側位置において前記使用者の頭部側に延びるように配置されることを特徴とする、エアマットレス。
【請求項2】
前記体位変換エアセルの形状は、L字形又はJ字形のような形状であることを特徴とする請求項1に記載のエアマットレス。
【請求項3】
前記外長手セル部は、前記横内セル部がある前記大腿部側から前記頭部側に行くに従って横幅が狭くなる先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアマットレス。
【請求項4】
前記外長手セル部は、前記横内セル部がある前記大腿部側から前記頭部側に行くに従って上下方向の高さが低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアマットレス。
【請求項5】
前記外長手セル部は、前記使用者の腰、腹、及び胸の横外側位置に臨んで配設されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアマットレス。
【請求項6】
前記主マットレスはエアマットレスを含んでおり、前記左右一対の前記体位変換エアセル間を繋ぐ接続部を有していることを特徴とする請求項1に記載のエアマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体位変換機能を備えたエアマットレスに関する。本発明は、寝返り等の自分で体位を変化させることができない使用者が使用するエアマットレス等に好適に使用できる技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、体位変換機能を有するマットレスの構成が各種提案されている。例えば、本出願人も特許文献1において、褥瘡の起こりにくい体位変換マットレスを提案している。この特許文献1に係る構成のマットレスであれば、左右肩用エアセルと左右膝用エアセルの間に使用者の尻及び腰を取り込むように離れた構成になっているので、褥瘡の発生しやすい臀部(仙骨部を含む)に圧力がかかりにくいという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-046042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の体位変換機能を備えたエアマットレスにおいて、例えば、体位変換機能を作動させた場合に、使用者の体が左右に傾くことで不安感や違和感を感じて、安楽な状態であると使用者が感じることができない課題があった。
【0005】
本発明は、上記各課題を解決するためになされたものである。
本発明の目的は、体位変換機能を作動させた場合であっても安楽な状態であると使用者が感じることのできるエアマットレスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るエアマットレスは、
主マットレスと、前記主マットレスよりも下側に配置される左右一対の体位変換エアセルとを備え、前記体位変換エアセルのそれぞれに対して独立に給排気可能に構成されたエアマットレスであって、
前記体位変換エアセルは、
前記主マットレスの長手方向に延びる外長手セル部と、
前記主マットレスの横外側から内側に向けて延びる横内セル部とを接合した形状を有しており、
前記横内セル部は使用者の臀部よりも大腿部側に配置され、
前記外長手セル部は前記主マットレスの横外側位置において前記使用者の頭部側に延びるように配置されることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2態様は、前記第1態様に記載のエアマットレスであって、前記体位変換エアセルの形状は、L字形又はJ字形のような形状であることを特徴とする。
本発明の第3態様は、前記第1態様又は前記第2態様に記載のエアマットレスであって、前記外長手セル部は、前記横内セル部がある前記大腿部側から前記頭部側に行くに従って横幅が狭くなる先細り形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の第4態様は、前記第1態様又は前記第2態様に記載のエアマットレスであって、前記外長手セル部は、前記横内セル部がある前記大腿部側から前記頭部側に行くに従って上下方向の高さが低くなるように形成されていることを特徴とする。
本発明の第5態様は、前記第1態様又は前記第2態様に記載のエアマットレスであって、前記外長手セル部は、前記使用者の腰、腹、及び胸の横外側位置に臨んで配設されることを特徴とする。
本発明の第6態様は、前記第1態様に記載のエアマットレスであって、前記主マットレスはエアマットレスを含んでおり、前記左右一対の前記体位変換エアセル間を繋ぐ接続部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明であれば、体位変換機能を作動させた場合であっても安楽な状態であると使用者が感じることのできるエアマットレスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るエアマットレスをアウターカバーで覆った状態において、横側上方位置から見た斜視図である。
図2】本実施形態に係るエアマットレスにおいて、アウターカバー及び上部層部を一部めくった状態で、上側マットレスを横側上方位置から見た斜視図である。
図3】本実施形態に係るエアマットレスにおいて、上側マットレスを外した状態で、下側マットレスを横側上方位置から見た斜視図である。
図4】本実施形態に係るエアマットレスにおいて、下側マットレスを外した状態で、下側マットレスの下側に配設される体位変換エアセルを横側上方位置から見た斜視図である。
図5】本実施形態に係るエアマットレスにおいて、左右の体位変換エアセルの配設位置を模式的に示した図である。
図6】本実施形態に係るエアマットレスにおいて、左側の体位変換エアセルの構成を説明するための拡大平面図である。
図7】(a)(b)はそれぞれ、各体位変換エアセルの構成の一例を示した平面図である。
図8】(a)は使用者がマットレス上に寝た状態の骨格レベルを考慮した平面図、(b)はその側面図、(c)は体位変換エアセルの一方が膨らんだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る一実施形態であるエアマットレスについて説明する。本発明は、後述する個々の体位変換エアセルに独立してエアーを給排気できるエアマットレス(エアマットレスを構成するユニットを含む)であれば、広範囲に採用可能な技術である。
【0012】
本明細書において、マットレスの長手方向、即ち、頭から足に向かう方向を長手方向(図1においてX方向で示す)と称し、その長手方向と直交する短手方向を横方向又は左右方向(図1においてY方向で示す)と称し、前後方向と横方向の両方に直交する方向を上下方向(図1においてZ方向で示す)と称する。
また、マットレス又はベッドの横側両端部からそれぞれ中心に向かう方向を内側(内方)と称する。なお、左右の方向は、ベッドの足側から見た方向で記載している。
【0013】
図1はマットレスをアウターカバーで覆った状態の使用可能状態を示す斜視図、図2はアウターカバー及び上部層部を一部めくって上側マットレスを露出させた状態を示す斜視図、図3は上側マットレスを外して下側マットレスを露出させた状態を示す斜視図、図4は下側マットレスを外した状態で、左右一対の体位変換エアセルを露出させた状態を示す斜視図、図5はマットレスの全体における左右一対の体位変換エアセルの位置を模式的に示した図、図6は一つの体位変換エアセルの構成を説明するための平面図、図7(a)(b)はそれぞれ体位変換エアセルの構成の変形例を示した平面図、図8は使用者の骨格レベルで本実施形態の利点を説明するための図である。
【0014】
本実施形態においては、体位変換エアセル4を有したマットレス1を介護ベッド2のマットレス支持面3に載置した構成が示してある。図1図4に示す介護ベッド2の構成は、背上げ、足上げ機能等を有するベッドであり、背上げ部5、臀部対応部6、膝上げ部7、足上げ部8の4個の部分に区分された構成が示してある。
【0015】
図4に示すように、通常、体位変換エアセル4はマットレスユニットの下部位置に設けられている構成が採用されている。但し、本発明において、マットレス支持面3の上にマットレスとは別体の体位変換エアセル4を設ける構成も必要な場合は、採用することができる。また、マットレスユニットの下部位置に設ける構成でも、体位変換エアセル4を袋内に収容する構成又はマットレスの大きさのシート状物に体位変換エアセル4を形成して、そのシート状物をマットレスユニットの下部位置に付設する構成なども採用できる。但し、一般的な利用形態としては、後述する各部材4,10,11,12などは、マットレスを覆う袋状の収容部材内に収容され、給排気構成も含めて一体的に持ち運びができるように構成してある。つまり、本発明におけるマットレス1とは上記各種の形態で実施可能なものである。
【0016】
本実施形態では、図1図4に示すように、介護ベッド2のマットレス支持面3から見て下側から上側に向けて順に、体位変換エアセル4、下側マットレス10、上側マットレス11、上部層部12、アウターカバー13の順に積み重ねることでマットレスユニットを構成した例が示してある。
【0017】
図3に示すように、下側マットレス10はウレタンフォームなどの合成樹脂製発泡体等で構成される弾性体で構成されている。具体的には、下側マットレス10は、図3に示すように、左右両端部に位置して長手方向に延びる一対の支え部31と、支え部31間に挿入固定される長手方向に延びる長四角形のマット面部32と、支え部31とマット面部32を下側から支える下部支持部33とを有している。マット面部32の上面に横方向には延びる溝部34と平面部35とを有している。下部支持部33の下面には所定箇所に横方向に延びる溝部37が形成されている。
【0018】
図3に示す構成では、下側マットレス10の頭側端部の第1平面部35a、介護ベッド2の背上げ部5と臀部対応部6との境近傍に設けられる第2平面部35b、足上げ部8に対応して設けられる第3平面部35c、マットレスの足側端部に設けられる第4平面部35dを備えた構成が示してある。なお、これらの平面部35a,35b,35c,35dは介護ベッド2が有する背上げ動作、足上げ動作の駆動面の各種パターンに応じて設けられるものである。また、マット面部32に設けられる溝部34は前記各平面部35の間に設けられている。
【0019】
このような構成であれば、平面部35は、溝部34が設けられた箇所の柔軟な変形可能構成とは対照的に各平面部35が設けられた位置において変形しにくい構成を達成でき、メリハリのある所望の変形動作を実現できる。
このような下側マットレス10であれば、背上げ動作、足上げ動作を行う場合に良好にマットレスを変形できるとともに、褥瘡の防止の自動体位変換動作を行った場合でも、変動させたくない箇所は変動せず、変動して欲しい箇所は変動するというようなマットレスの柔軟な変形を可能にして、自動体位変換動作における体感的な圧迫、突っ張り、突出などのマットレスの部分的な違和感をやわらげることができる。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、上側マットレス11はエアマットレスで構成してある。エアマットレスの構成としてはマットレスの横方向とほぼ平行に延びる単位エアセル14を複数個、長手方向に配列したエアマットレスを採用することが好ましい。個々の単位エアセル14に対する空気の給排気制御を行うことで、使用者の寝心地等を改善できる。この単位エアセル14の給排気制御については公知の構成を採用できるので説明は省略する。
【0021】
上部層部12もウレタンフォームなどの合成樹脂製発泡体等で構成される弾性体で構成される。図2では簡便のために省略しているが、変形・追従性を良くするために上部層部12にはマットレスの横方向と平行に延びる多数の溝部が形成されることが好ましい。
アウターカバー13は袋状などの通常のシーツ等で構成される。なお、図1において示す符号25はエアマットレスのコントローラ、図3に示す符号26は背上げ動作、足上げ動作、体位変換動作等を行う制御装置である。
【0022】
なお、本明細書における「主マットレス」とはマットレス構造において主な役割を担うマットレスを言う。本発明において適用できる主マットレス15は各種マットレスの構成を採用することができる。
例えば、主マットレス15は、上側マットレス11のようなエアマットレスだけで構成される場合と、下側マットレス10のように合成樹脂製等の弾性体によって形成されたマットレスだけで構成される場合と、本実施形態のようにエアマットレスと弾性体のマットレスとを組み合わせて構成される場合などがある。
【0023】
<給気排気構成>
複数の単位エアセル14は、給気排気機構のエアーポンプ(図示せず)からエアーチューブ16を経由して給気又は排気されて膨張又は収縮する。
一方、体位変換エアセル4の右エアセル4a又は左エアセル4bは、体位変換時、制御部26内にある通路切換機構(図示せず)の通路切換動作によりエアーポンプ(図示せず)からエアーチューブ27a,27bを経由して給気又は排気されて膨張又は収縮する。
【0024】
<体位変換エアセル>
図4図8に示すように、左右の体位変換エアセル4a,4bは、それぞれマットレスの長手方向に延びるような外長手セル部17とマットレスの横方向外側から内方に向けて延びるような横内セル部18とを接合した形状を有している。接合とは2つのセル領域を繋いた構成であり、外長手セル部17と横内セル部18とは空気の通路において一つの袋のように連通された構成になっている。
外長手セル部17の構成は大腿部側から頭部側に向けて、徐々に横幅が小さくなるように先細り形状に形成してある。
なお、本実施形態において、「横幅が小さくなる」構成は徐々に横幅が小さくなるように直線が傾いた構成に限定されない。例えば、階段形に横幅が小さくなる構成を除外するものではない。
【0025】
図5に示すように、各体位変換エアセル4a,4bはマットレスの横幅を2分する中心線に対してほぼ左右対称に配置される。つまり、横内セル部18の内側端部が互いに向かい合う状態で配置される。
左右の体位変換エアセル4a,4bの各横内セル部18の内側端部には、接続帯や接続紐などの接続部19が設けられ、左右の体位変換エアセル4a,4bを一体として持ち運び、マットレス内に収容する場合も位置決めが行いやすいように構成してある。この場合、左右の体位変換エアセル4a,4b間が接続されることになる。
【0026】
また、図5に示すように、使用者の臀部相当位置に対応して臀部センサ29が配設されている。
臀部センサ29を用いて、着床又は離床の判別と、臀部荷重を判定して、制御部26にフィードバックすることもできる。なお、離床判別では、安全のために体位変換モードにならない臀部荷重に応じて、エアセル内の内圧を制御する制御手段(制御プログラム)が制御部26に設けられている。
図5に示すように、必要により体動センサ28を付設することもできる。体動センサ28は、使用者の必要な部位の圧接状態を検出して使用者の体位と位置、その状態を把握するためのものである。図5においては臀部から下半身側に体動センサ28を設けた構成が示してあるが、臀部から上半身側に体動センサ28を必要により設けることもできる。
【0027】
前記したように、接合した各体位変換エアセル4a,4bの形状は、長手方向に延びる外長手セル部17と、マットレスの横外側から内側に向けて延びる横内セル部18とを接合した形状となる。
そのような形状としては、図7(a)に示すような長手方向に延びる長手直線帯部20に短手方向に延びる短手直線帯部21を結合させた形状や、図7(b)に示すような長手方向に延びる長手直線帯部20に内方に延びる曲線帯部22を結合させた形状等が例示できる。曲線帯部22としては円形、楕円形の一部分などが例示できる。例えば図7(b)に示す構成では、略1/4円形状の曲線帯部22を長手直線帯部20に接合した構成が例示してある。
【0028】
また、図6に示すような本実施形態の体位変換エアセル4の形状は、横内セル部18の部分を、複数の直線形の帯体で連結した形状で構成してある。
具体的には、本実施形態の横内セル部18は、マットレスの内方に向かうように延びる第1傾斜帯部23と、第2傾斜帯部24とから構成してある。傾斜帯部23,24は所定角度で傾斜して設けられた部分であり、第1傾斜帯部23と第2傾斜帯部24を繋ぐように接続することで横内セル部18を構成している。
このような各種の帯体形状を採用した場合、1個の体位変換エアセルは、全体形状としてL字形又はJ字形のような形状になるとも言える。
【0029】
なお、本明細書において「L字形」とは、マットレスの長手方向に延びる直線部分と横方向外側から内側に向けて延びる直線部分を接続した構成を言う。
また、本明細書において「J字形」とは、マットレスの長手方向に延びる長手部分と横方向外側から内側に向けて延びる傾斜帯部又は曲線帯部等の短手部分を接続した構成を言う。
【0030】
本実施形態に示す図6の構成は「J字形」の一例とも言え、複数の傾斜帯部を連結した形状となり、横内セル部18は曲がった折れ帯形になっている。
この他にも、外長手セル部17の形状は、使用者の胸、腹、腰及び臀部の範囲において人間の側方ラインに臨む(沿う)ように曲線化(曲帯化)されていてもよい。
つまり、外長手セル部17の形状は長手方向に延びる曲線形の構成も含まれる。
【0031】
以下、図6を参照しつつ、本実施形態に係る体位変換エアセル4a,4bの具体的な構成について説明する。
ベットの大きさにも左右されるが、体位変換エアセル4a,4bの長手方向の長さXは450mm~1500mmの範囲が好ましい。また、横内セル部18の長さY(外長手セル部17の外縁部から内方に延びる長さ)は、250mm~900mmの範囲が好ましい。
また、横内セル部18の長さYを1.0としたときの体位変換エアセル4の長さXの比率(X/Y)は、0.5~6の範囲が好ましい。
外長手セル部17の先細りの程度としては、横内セル部18が接続する外長手セル部17の横幅Dを1.0としたときの使用者の肩付近位置の横幅Eの比率(E/D)は、0.2~0.8の範囲が好ましい。
【0032】
上記のように構成されているので、横内セル部18に圧縮空気が供給されて膨らんだ高さと外長手セル部17の長手方向の各部分における膨らんだ高さとは違いが出る。具体的には、横内セル部18及び外長手セル部17の大腿部側の部分から外長手セル部17の頭側の部分に行くにしたがって、徐々に膨らむ高さが小さくなる。
【0033】
なお、外長手セル部17の横幅を先細形状にする構成以外にも、直接的に、横内セル部18がある大腿部側から頭部側に行くに従って上下方向の高さが低くなるようにエアセルの形状を設定することもできる。
この構成を採用する場合は、図8(c)に示す横内セル部18側(大腿部側)の高さHに対する肩部付近の位置の高さKにおいて、その比率(K/H)は、0.2~0.8の範囲に設定することが好ましい。また、Hの高さは50mm~200mmの範囲に設定することが好ましい。
【0034】
次に、主マットレス15に対する左右の体位変換エアセル4a,4bの配設位置について説明する。
図5及び図8に示すように、使用者が寝た場合に、横内セル部18は使用者の臀部よりも大腿部側に位置するように主マットレス15に対して位置決めされて設けられる。この配設状態において、左側,右側の横内セル部18が交互に膨らむと使用者の臀部より頭側が低くなる。所定時間間隔で自動的に、使用者に負担をかけない程度に交互に左右の体位変換エアセル4a,4bを空気を給排気すると、褥瘡を抑制することができる。
【0035】
また、この配設位置の場合、体位変換エアセル4a,4bの外長手セル部17は使用者の身体の横外側位置に臨んで配設されることになる。
本明細書において「臨んで配設」するとは、「腰、腹及び胸」などの使用者の身体の横外側において、使用者と外長手セル部17が接する状態と、使用者と外長手セル部17が少しだけ離れて配設される状態の2つの状態を含んでいる。
【0036】
<実施形態の作用と利点>
「姿勢が安楽でない」の詳細については、使用者の感じ方によって多岐に及ぶものであるが、本出願人が報告を受けた具体的な使用者の不満を列挙すれば、以下の通りである。
(1)「傾きによって身体が流れて姿勢が崩れる」
(2)「睡眠時の変換で目が覚める」
(3)「胸の圧迫で呼吸がしずらい」
【0037】
本実施形態の構成であれば、図8に示すように、上記課題に対する基本的な作用として、以下の利点(A)を有する。
(A)自然に安楽姿勢(軽く股関節とひざ関節を曲げる)ことのできる体位変換エアセルを構成できる。
体位変換エアセルが「L字形又はJ字形のような形状」のような形状にすることによって、外長手セル部17だけでなく横内セル部18も有することになり、大腿部を上方に上げながら、臀部、上体部を安定して傾けることができる。大腿部を支えて上げることで、使用者41の股関節とひざ関節を曲がり、安定した姿勢保持と自然な姿勢変化による安心感を得ることができる。
【0038】
また、使用者41の体部と臀部の傾き角度を変える構成において、体位変換エアセルの高さを、肩付近から大腿部にかけて、徐々に高く形成する構成を採用した場合は、以下の利点を有する。
(B)上体の傾きよりも臀部の傾きを大きくできるために、使用者が不満を訴えることの多い、「胸の圧迫で呼吸がしずらい」「睡眠時に体位変換動作を行うことで目が覚める」「左右の大きな傾きによって姿勢が崩れて違和感を感じる」の不快な動作を抑えつつ、褥瘡等を防止するように、臀部を確実に傾けることができる。
【0039】
また、本実施形態では、横内セル部18の帯幅が広く、外長手セル部17が頭側に向かうにつれて横幅が狭くなる構成を採用しているので、肩付近から大腿部にかけて、徐々に高く形成する構成する場合に、簡単かつ自然な形で確実な傾斜を達成できる。
外長手セル部17は腰、腹、胸等の外側方に位置するので、使用者41の体の動きにおいて、負担の少ない体位変換動作を行うことができる。
【0040】
なお、外長手セル部17はマットレスの長手方向に平行でなくても、機能を損なわない程度に、長手方向に対して少しだけ角度を傾けて延びる構成であってもよい。
本実施形態に係るエアマットレス1は、背上げ、足上げ機能等を備えた介護ベッド2(図1参照)に採用されることが多い。但し、背上げ、足上げ機能等を備えていない各種ベッドにおいても、本実施形態に係る体位変換構造を採用することで褥瘡を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る体位変換システムの構成として、30゜(degree)以上の背上げ時は、体位変換エアセル4を自動的に収縮する構成を採用することもできる。その目的は背上げ時に、過度な左右の傾きによって使用者がマットレスから転落することを防止するためである。
【0042】
以上、実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の構成には限定されない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて判断されるべきであり、その範囲内であれば、多様な変形や構成の追加、又は改良が行えることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
1:エアマットレス
4,4a,4b:体位変換エアセル
10:下側マットレス(主マットレスの一例)
11:上側マットレス(主マットレスの一例)
15:主マットレス
17:外長手セル部
18:横内セル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8