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  • 特開-穀物・乾物用防虫剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051356
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】穀物・乾物用防虫剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/44 20090101AFI20240404BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240404BHJP
   A01N 65/24 20090101ALI20240404BHJP
   A01N 65/36 20090101ALI20240404BHJP
   A01N 65/34 20090101ALI20240404BHJP
   A01N 65/48 20090101ALI20240404BHJP
   A01N 65/06 20090101ALI20240404BHJP
   A01N 65/38 20090101ALI20240404BHJP
   A01N 35/04 20060101ALI20240404BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A01N65/44
A01P17/00
A01N65/24
A01N65/36
A01N65/34
A01N65/48
A01N65/06
A01N65/38
A01N35/04
A01M1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157485
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田澤 寿明
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CC02
2B121EA09
2B121EA10
2B121FA15
4H011AC06
4H011BB05
4H011BB22
4H011BC19
4H011DH10
4H011DH14
(57)【要約】
【課題】本発明は、一般家庭でも使用でき、安全であり、しかも穀物類害虫に対して十分な防虫効力を有する穀物・乾物害虫用防虫剤を提供する。
【解決手段】イネ科オキナワミチシバ属、クスノキ科クリプトカリア属、クスノキ科ニッケイ属、ミカン科サンショウ属、ミカン科ミカン属、バラ科リンゴ属、ショウガ科ハナミョウガ属およびマツ科モミ属の植物の抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物害虫用防虫剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科オキナワミチシバ属、クスノキ科クリプトカリア属、クスノキ科ニッケイ属、ミカン科サンショウ属、ミカン科ミカン属、バラ科リンゴ属、ショウガ科ハナミョウガ属およびマツ科モミ属の植物の抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物害虫用防虫剤。
【請求項2】
植物の抽出物が、ベチバー油、ラベンサラ精油、ラヴィンサラ精油、サンショウオイル、スイートオレンジオイル、月桃精油、リンゴ果実エキス、ウンシュウミカン果実水およびトドマツ精油から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の穀物・乾物害虫用防虫剤。
【請求項3】
ゲル化剤によりゲル化したことを特徴とする請求項1記載の穀物・乾物害虫用防虫剤。
【請求項4】
ゲル化剤がヒドロキシプロピル化グアーガムおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項3記載の穀物・乾物用防虫剤。
【請求項5】
更に、他の穀物害虫防除成分を配合した請求項1記載の穀物・乾物害虫用防虫剤。
【請求項6】
穀物・乾物に、請求項1~5の何れか1項記載の穀物・乾物害虫用防虫剤を適用することを特徴とする穀物・乾物害虫の防虫方法。
【請求項7】
穀物・乾物が保存容器内に入れられたものである請求項6記載の食品害虫の防虫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の穀物や乾物の貯蔵の際に用いられる穀物・乾物用防虫剤に関し、詳しくは、一般家庭においても手軽に使用できるとともに、においが弱く、かつ人体に安全である、穀物・乾物用防虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、米、小麦、大麦、豆類等の穀物あるいは、パスタ、煮干し、鰹節、ふ、かんぴょう等の乾物(以下「穀物類」という)にはコクゾウ、ココクゾウ、コナマダラメイガ等の害虫が繁殖し、穀物類に被害を及ぼすという問題点があった。
【0003】
近年では、一般家庭でも簡単に穀物類害虫の被害を防止できる防虫剤が種々提案されている。たとえば、わさび、カラシ、ショウガ、トウガラシ、ニンニク等を使用した米用の防虫剤が市販されている。
【0004】
また、本出願人は、穀物類害虫の忌避剤としてカリオフィレン、オイゲノール、メチルチャビコール、メチルシンナメート、p-サイメンから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物用防虫剤(特許文献1)、テルペン系化合物の1種又は2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物用防虫剤(特許文献2)、セージ、ローズマリー、バジル、キャラウェー、ユーカリ、シトロネラ、アニス、オレンジまたはラベンダーから得られる精油の一種又は二種以上を有効成分として含有する穀物・乾物用防虫剤(特許文献3)、炭素数1~10のアルコールの一種又は二種以上を有効成分として含有することを特徴とする穀物・乾物用防虫剤(特許文献4)、ナツメグ、アニススター、シナモン、レモングラス、クミンの抽出物若しくは精油又はクミンアルデヒド若しくは1,8-シネオールの1種もしくは2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物害虫用防虫剤(特許文献5)、青唐辛子を有効成分として含有する穀物・乾物害虫用防虫剤(特許文献6)ゴボウの根部又はその加工物を有効成分として含有することを特徴とする穀物・乾物害虫用防虫剤(特許文献7)等を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-97165号
【特許文献2】特開2005-82502号
【特許文献3】特開2004-182704号
【特許文献4】特開2004-175745号
【特許文献5】特開2012-31105号
【特許文献6】特開2013-249271号
【特許文献7】特開2016-108311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、一般家庭でも使用でき、安全であり、しかも穀物類害虫に対して十分な防虫効力を有する穀物・乾物害虫用防虫剤の開発を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記問題点を解決するために、鋭意研究を行ったところ、特定の植物の抽出物が優れた防虫効力を有することを見いだし、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明はイネ科オキナワミチシバ属、クスノキ科クリプトカリア属、クスノキ科ニッケイ属、ミカン科サンショウ属、ミカン科ミカン属、バラ科リンゴ属、ショウガ科ハナミョウガ属およびマツ科モミ属の植物の抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物害虫用防虫剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、穀物・乾物に、本発明の穀物・乾物害虫用防虫剤を適用することを特徴とする穀物・乾物害虫の防虫方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、穀物類に繁殖する害虫の成虫に対して忌避効果を有することで防虫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】防虫試験に使用された試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の穀物・乾物害虫用防虫剤(以下、「本発明の防虫剤」という)は、イネ科オキナワミチシバ属、クスノキ科クリプトカリア属、クスノキ科ニッケイ属 、ミカン科サンショウ属、ミカン科ミカン属、バラ科リンゴ属、ショウガ科ハナミョウガ属およびマツ科モミ属の植物の抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分とするものである。
【0013】
本発明の防虫剤に用いられるイネ科オキナワミチシバ属の植物としては、例えば、ベチバー(カスカスガヤ)やオキナワミチシバ等が挙げられる。これらのイネ科オキナワミチシバ属の植物の中でもベチバー(学名Chrysopogon zizanioides)が好ましい。
【0014】
本発明の防虫剤に用いられるクスノキ科クリプトカリア属の植物としては、例えば、ラベンサラ、クローブ・ナツメグ、イエローローレル等が挙げられる。これらのクスノキ科クリプトカリア属の植物の中でもラベンサラが好ましい。
【0015】
本発明の防虫剤に用いられるクスノキ科ニッケイ属の植物としては、例えば、クスノキ、ホウショウ、シナニッケイ、マルバニッケイ、シバニッケイ、ケシバニッケイ、ヤブニッケイ、オガサワラヤブニッケイ、ニッケイ、シノニム、シバヤブニッケイ、シバニッケイ、セイロンニッケイ、ラヴィンサラ等が挙げられる。これらのクスノキ科クリプトカリア属の植物の中でもラヴィンサラが好ましい。
【0016】
本発明の防虫剤に用いられるミカン科サンショウ属の植物としては、例えば、アサクラザンショウヤマアサクラザンショウ、リュウジンザンショウ、ブドウザンショウ、タカハラサンショウ、カラスザンショウ、アマミザンショウ、トウフユザンショウ、フユザンショウ、イワザンショウ、オーストラリアサティンウッド、カホクザンショウ、ヒメハゼザンショウ、コカラスザンショウ、ウエストインディアンサティンウッド、オロンボゴ、オロン、ネワタノキ、チェンクリン、テリハザンショウ、サンショウ、ハンタールドゥリ、ツルザンショウ、イヌザンショウ、トウザンショウ、ヤクシマカラスザンショウ等が挙げられる。これらのミカン科サンショウ属の植物の中でもブドウザンショウが好ましい。
【0017】
本発明の防虫剤に用いられるミカン科ミカン属の植物としては、例えば、ダイダイ、アマダイダイ、デコポン、ユズ、ウンシュウミカン等が挙げられる。これらのミカン科ミカン属の植物の中でもウンシュウミカン、アマダイダイが好ましい。
【0018】
本発明の防虫剤に用いられるバラ科リンゴ属の植物としては、例えば、セイヨウリンゴ、エゾノコリンゴ、カイドウズミ、ハナカイドウ、イヌリンゴ、マルバカイドウ、ノカイドウ、ズミ(コリンゴ、コナシ)オオウラジロノキ、ワリンゴ、ツクシカイドウ、ホンカイドウ、ミカイドウ等が挙げられる。これらのバラ科リンゴ属の植物の中でもセイヨウリンゴが好ましい。
【0019】
本発明の防虫剤に用いられるショウガ科ハナミョウガ属の植物としては、例えば、チクリンカ、シマクマタケラン、イリオモテクマタケラン、クマタケラン、アオノクマタケラン、ハナミョウガ、イオウクマタケラン、ゲットウ等が挙げられる。これらのショウガ科ハナミョウガ属の植物の中でもゲットウが好ましい。
【0020】
本発明の防虫剤に用いられるマツ科モミ属の植物としては、例えば、トドマツ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、シラベ、バルサムファー、ミツミネモミ、ホワイトファー、アマビリスファー、アオトドマツ、カリフォルニアレッドファー、グランドファー、ノーブルファー等が挙げられる。これらのマツ科モミ属の植物の中でもトドマツが好ましい。
【0021】
上記した植物から抽出物を得る部位としては、特に限定されず、枝、葉、花、実、果皮、種子、茎、根等を用いることができる。
【0022】
上記した植物から抽出物を得る方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、常圧蒸留法、減圧蒸留法、水蒸気蒸留法、直接蒸留法、減圧水蒸気蒸留法等の蒸留法、圧搾法、窒素抽出法、二酸化炭素抽出、溶剤抽出等の抽出法、油脂吸着法等、溶媒抽出法等の従来公知の抽出法が挙げられる。これらの抽出方法の中でも圧搾法、直接蒸留法、水蒸気蒸留法、減圧水蒸気蒸留が好ましい。なお、トドマツ精油については、公知の方法で得られるものの中でも、国際公開WO2010/098439号の実施例1に示す方法により得たものが好ましい。
【0023】
上記した植物の抽出物としては、特に限定されないが、上記の方法で得られる、油(オイル)、精油、エキス、果実水、果実エキス等が挙げられる。
【0024】
本発明の防虫剤に用いられる植物の抽出物の好ましいものとしては、例えば、ベチバー油、ラベンサラ精油、ラヴィンサラ精油、サンショウオイル、スイートオレンジオイル、月桃精油、リンゴ果実エキス、ウンシュウミカン果実水、トドマツ精油等が挙げられる。これらの中でもウンシュウミカン果実水、トドマツ精油が好ましい。これらも1種または2種以上を組み合わせることができる。また、これら上記の植物からの抽出物は、市販されているものもあり、これらを使用することもできる。
【0025】
本発明の防虫剤は、上記植物の抽出物(以下、「防虫成分」という)を有効成分として含有してればよく、防虫剤における含有量は特に限定されないが、例えば、抽出物として0.1質量%(以下、単に「%」という)以上、好ましくは0.5~10%、より好ましくは1~5%である。
【0026】
本発明の防虫剤には、更に、他の穀物害虫防除成分を配合することが効果の点から好ましい。このような穀物害虫防除成分としては、例えば、トウガラシエキス、ワサビエキス、シソエキス、アリシン、カプサイシン、ペリラアルデヒド、タイム、カルダモン、ナツメグ、クローブ、コリアンダー、ナツメグ、アニススター、シナモン、レモングラス、クミン、唐辛子、クミンアルデヒド、カリオフィレン、オイゲノール、メチルチャビコール、メチルシンナメート、p-サイメン、セージ、ローズマリー、バジル、キャラウェー、ユーカリ、シトロネラ、アニス、オレンジ、炭素数1~10のアルコールゲラニオール、シトロネロール、テルピネオール、ネロール、フェンキルアルコール、ボルネオール、リナロール、シトロネラール、シネオール、酢酸フェンキル、テルピニルアセテート、ボニルアセテート、リナリルアセテート、カンファー、α-テルピネン、オシメン、カンフェン、テルピノレン、ミルセン、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、1,8-シネオールの等のテルペン系化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0027】
本発明の防虫剤には、他の穀物害虫防除成分以外にも、他の任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、例えば、香料、消臭剤、防かび剤、色素、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。これら任意成分は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0028】
本発明の防虫剤は、必要により適当な担体と組み合わせ、常法により製剤化して調製することができる。
【0029】
本発明の防虫剤を調製するにあたり、防虫成分は、そのまま使用しても良く、また、溶媒や界面活性剤を適宜使用して溶解させたものを使用しても良い。また、本発明の防虫剤を調製するにあたり、防虫成分は、適当な担体に担持させても良い。
【0030】
防虫成分を溶解させるのに使用する溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、パラフィン等の直鎖炭化水素系化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、シメン、スチレン等の芳香族炭化水素系化合物、リモネン、メンタン、ピネン、ジペンテン等のテルペン系炭化水素系化合物、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等の炭化水素系アルコールや、cis-3-ヘキセノール、トランス-3-ヘキセノール、リナロール、ゲラニオール等のテルペンアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、オイゲノール等の芳香族アルコール、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、臭化エチル、臭化プロピル、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系化合物、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ジベンジルエーテル、ジオキサン、トリオキサン、フラン、シネオール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アセタール等のエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、オレイン酸、無水酢酸等の脂肪酸系化合物、蟻酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ヘプチル酸エステル、ヘプテンカルボン酸エステル、オクテンカルボン酸エステル、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、桂皮酸エステル、フタル酸エステル、サリチル酸エステル、アニス酸エステル、アンスラニル酸エステル、メチルアンスラニル酸エステル、菊酸エステル等のエステル系化合物、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、メチルアミン、ジメチルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、トルイジン、ピリジン、キノリン、エチレンジアミン、ホルムアミド、ピロリドン、ε-カプロラクタム等の窒素化合物、二硫化炭素、硫化ジメチル、チオフェン等の硫黄化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系化合物、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-フェノキシエタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系化合物、ごま油、リノール油、サラダ油等が挙げられる。これら溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0031】
防虫成分を溶解させるのに使用する界面活性剤としては、例えば、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の従来公知の界面活性剤が挙げられる。これら界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0032】
防虫成分を担持させる担体としては、特に限定されないが、例えば、木、紙、布、不織布、シリカ、タルク、活性炭、ゲル、ゼオライト、セルロースビーズ、活性炭、セラミック等を挙げることができる。これら担体の中でもゲルが好ましい。
【0033】
本発明の防虫剤の好ましい態様としては、防虫成分を適当なゲル化剤を利用してゲル化させたものを挙げることができる。ゲル化剤を利用した防虫剤であれば、ゲルの減少を目視することにより、効果の確認及び有効期間の終了時期を判断することができる。
【0034】
ゲル化剤としては従来公知のものを使用でき、例えば、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸ソーダ、アクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ヒドロキシプロピル化グアーガム等のヒドロキシアルキル化多糖類、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース誘導体等を挙げることができる。これらゲル化剤は1種または2種以上を組み合わせて使用しても良いが、ヒドロキシプロピル化グアーガムおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用することが好ましい。
【0035】
本発明の防虫剤のより好ましい態様としては、以下の組成のものが挙げられる。
防虫成分 0.5~10%、好ましくは1~5%
必要により他の食品害虫防除成分 0.5~10%、好ましくは1~5%
ゲル化剤 0.1~20%、好ましくは1~10%
必要により界面活性剤 0.1~5%、好ましくは0.5~3%
必要により色素 0.0001~0.1%、好ましくは0.001~0.01%
溶媒 50~99%、好ましくは80~95%
【0036】
上記したようなゲル化剤を使用した本発明の防虫剤は、常法に従って各成分を適宜混合することにより調製することができる。例えば、溶媒として水と有機溶媒を用いる場合には、ゲル化剤と有機溶媒の一部を混合したものに、防虫成分、水、有機溶媒の残り、必要によりその他の成分を入れて混合して、静置等することにより調製することができる。
【0037】
斯くして得られる本発明の防虫剤は、そのままあるいは適当な容器に入れて、穀物・乾物害虫用の防虫剤として使用できる。ここで穀物・乾物害虫としては、例えば、鞘翅目オサゾウムシ科:コクゾウムシ、ココクゾウムシ、鱗翅目キバガ科:バクガ、鱗翅目メイガ科:ノシメマダラメイガ、ガイマイツヅリガ、スジマダラメイガ、鞘翅目ヒラタムシ科:カクムネチビヒラタムシ、鞘翅目ゴミムシダマシ科:コクヌストモドキ、鞘翅目コクヌスト科:オオコクヌスト、鞘翅目ホソヒラタムシ科:ノコギリヒラタムシ等が挙げられる。
【0038】
なお、ここで防虫とは、穀物・乾物に繁殖する害虫の幼虫および成虫に対して忌避効果を有することをいう。
【0039】
本発明の防虫剤は穀物・乾物に適用することにより防虫をすることができる。本発明の防虫剤を穀物・乾物に適用する方法は特に限定されないが、例えば、穀物・乾物が保存されている倉庫内、穀物・乾物が保存されている保存容器内等に設置し、自然に、あるいは強制的に揮散、燻蒸させる方法、食品を保存するための容器や袋の材料に、練り込み、含浸、担持させる方法等を挙げることができる。本発明の防虫剤はこれらの中でも穀物・乾物が保存容器内に入れられたものに適用することが好ましい。
【0040】
また、穀物・乾物の種類としては、特に限定されないが、例えば、米、小麦、大麦、豆類等の穀物、パスタ、煮干し、鰹節、ふ、かんぴょう、寒天、ひじき、干ししいたけ、切干し大根、高野豆腐、のり、ワカメ、煮干し、桜エビ等の乾物が挙げられる。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら制限されるものではない。
【0042】
実 施 例 1
植物の抽出物の防虫試験:
図1に示した試験装置を用いて評価した。すなわち試験装置は、図1の2で示される試験区と3で示される対照区(両方とも、サイズが内径約90mm×深さ110mmで、容量570mlのポリプロピレン製円筒容器)を、通路パイプ4(サイズ:内径20mm×長さ450mm、厚さ3mm)で連通されており、試験害虫が2つの区を自由に行き来できるようになっている。またこの試験装置の試験区2内には、直径4.6cmのシャーレ5が、対照区3には、試験区2内に設置されたものと同形のシャーレ5がそれぞれ設置されている。更に、試験装置の通路パイプ4上部には、サイズ450mm×20mmの空気孔9(ナイロンメッシュで覆われており、試験害虫の通り抜けはできない)が形成し、試験区2で揮散した本発明の防虫剤が通路パイプ4を伝わって対照区3に移動することがないようにしている。
【0043】
<防虫試験方法>
上記した試験装置を用いる防虫試験は、まず試験区2及び対照区3のそれぞれの蓋8を開け、それぞれのシャーレ5の端に穀物として玄米6を2g入れ、図1に示す位置に設置した。次に、試験区2のシャーレ5の玄米6とは反対の端に表1に示す各本発明品を0.1gを0.7cm×2cmのろ紙に含侵させ入れた。なお、比較品は7に本発明品をいれないものとした。そして、対象害虫であるコクゾウムシの成虫を試験区2と対照区3にそれぞれ10匹ずつ計20匹入れた。
【0044】
【表1】
【0045】
その後、両区の蓋8を閉め、試験装置を25℃で静置し、設置60分後、120分後、180分後後の、試験区2及び対照区3にいる幼虫の数をそれぞれ数え、全投入幼虫数に対する対照区3内に存在する幼虫の割合(忌避率)を下記の式(1)にしたがって算出した。
【0046】
【数1】
【0047】
【表2】
【0048】
この結果、本発明品1~9の植物の抽出物はいずれも穀物・乾物害虫の成虫を忌避していることが分かった。
【0049】
実 施 例 2
ゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤:
下記の処方にて、下記製法に従い、ゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤を得、本発明品10および11とした。
【0050】
(製法)
溶媒であるエタノールの一部とゲル化剤を混合した液中に、撹拌しながら残りの防虫成分、他の害虫防除成分、界面活性剤、色素、水、溶媒を加えて容器に入れて静置してゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤を製造した。
【0051】
【表3】
【0052】
得られた、本発明品10および11のゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤について、それぞれ50gを上面開口の筒状容器(直径40mm高さ80mm)に入れ米20kgの入った容量約22リットル(240mm×410mm×225mm)の米保存容器内に設置した。この結果、筒状容器内で4ヶ月間防虫効力を発揮した。また、ゲル状食品害虫用防虫剤は時間の経過と共に小さく収縮していった。
【0053】
実 施 例 3
ゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤:
下記の処方にて、実施例2と同様の製法でゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤を得、本発明品12および13とした。
【0054】
【表4】
【0055】
得られた、本発明品12および13のゲル状穀物・乾物害虫用防虫剤について、それぞれ50gを上面開口の筒状容器(直径40mm高さ80mm)に入れ米20kgの入った容量約22リットル(240mm×410mm×225mm)の米保存容器内に設置した。この結果、筒状容器内で4ヶ月間防虫効力を発揮した。また、ゲル状食品害虫用防虫剤は時間の経過と共に小さく収縮していった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、穀物・乾物に繁殖する害虫を忌避することで、穀物・乾物に対する害虫を防虫することができる穀物・乾物防虫剤を得ることができる。
【0057】
そして、このものは、人体に安全で、一般家庭においても手軽に使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・・試験装置
2・・・・試験区
3・・・・対照区
4・・・・通路パイプ
5・・・・シャーレ
6・・・・玄米
7・・・・本発明品
8・・・・蓋
9・・・・空気孔
図1