(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051362
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240404BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240404BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20240404BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240404BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240404BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240404BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240404BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/118
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157493
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間島 淳史
(72)【発明者】
【氏名】足立 康平
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 直樹
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213AC04
4F213AM10
4F213AP03
4F213AP10
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】ノズルからの可塑化材料の吐出量を低減させた後に吐出量を増加させても、三次元造形物の造形精度に与える影響を小さくできる三次元造形装置を提供する。
【解決手段】三次元造形装置は、可塑化部及び吐出部と、テーブルと、位置変更部と、吐出調整部と、可塑化部、位置変更部および吐出調整部を制御して、テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備える。制御部は、三次元造形物を造形する期間内において、ノズルからの可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2つ以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、前記ノズルの進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形した後に、流路内の可塑化材料を造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、及び、ノズル開口を有し前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、
前記ノズルから吐出された前記可塑化材料が堆積されるテーブルと、
前記ノズルと前記テーブルとの相対的な位置を変更する位置変更部と、
前記ノズル開口に連通し、前記可塑化材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を調整することで前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出量を調整する吐出調整部と、
前記可塑化部、前記位置変更部および前記吐出調整部を制御して、前記テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2つ以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、前記ノズルの進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形した後に、前記流路内の前記可塑化材料を前記造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第1部分造形物の造形において、前記ノズルから前記可塑化材料を吐出している期間が前記ノズルから前記可塑化材料を吐出していない期間よりも短い場合に、前記パージ処理を実行する、
三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記吐出調整部よりも上流の前記流路に設けられ、前記流路内の前記可塑化材料の圧力を測定する圧力測定部を備え、
前記制御部は、前記第1部分造形物を造形している期間において、前記圧力測定部で測定された圧力が予め定められた値を超えた場合に、前記第1部分造形物の造形を中断して前記パージ処理を実行する、
三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記ノズルをクリーニングするクリーニングユニットを備え、
前記クリーニングユニットは、
前記ノズルから排出された前記可塑化材料を回収する回収部を有し、
前記ノズルの前記テーブルに対する相対的な移動と連動して、前記テーブルに対して相対的に移動するように構成されている、
三次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の三次元造形装置であって、
前記吐出部は、第1吐出部と、第2吐出部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1吐出部の前記ノズルと前記第2吐出部の前記ノズルのうち一方が、前記三次元造形物を造形する造形ノズルとなり、他方が、前記三次元造形物を造形せず待機している待機ノズルとなるように、切り替えて前記三次元造形物を造形し、
前記造形ノズルを前記クリーニングユニットの下方に位置させ、前記待機ノズルを前記回収部の上方に位置させ、前記造形ノズルが前記三次元造形物を造形している期間に、前記待機ノズルから前記回収部に前記可塑化材料を排出させる、
三次元造形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記吐出部は、前記吐出調整部よりも上流の前記流路に設けられ前記流路内の前記可塑化材料の圧力を測定する圧力測定部を備え、
前記制御部は、前記待機ノズルとなる前記吐出部が備える前記圧力測定部によって測定された圧力が予め定められた値を超えた場合に、前記待機ノズルから前記回収部に前記可塑化材料を排出させる、
三次元造形装置。
【請求項7】
請求項5に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記待機ノズルとなる前記吐出部に前記可塑化材料を供給する前記可塑化部が有するスクリューの回転を停止させる、
三次元造形装置。
【請求項8】
材料を可塑化して可塑化材料を生成する第1工程と、
ノズルから前記可塑化材料をテーブルに向かって吐出して、三次元造形物を造形する第2工程と、を有し、
前記第2工程は、
前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、前記ノズルの進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記ノズルから前記可塑化材料を前記テーブルの造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する第4工程と、を有する、
三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ノズルからの溶融材料の吐出量を調節する流量調節機構としてバタフライバルブを備える三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バタフライバルブのような流量調節機構によってノズルからの可塑化材料の吐出量を低減させた場合、時間経過と共に流量調節機構よりも上流側の可塑化材料の流路の圧力が上昇する。ノズルからの可塑化材料の吐出量を低減させた後に吐出量を増加させる場合、流量調節機構よりも上流側の流路の圧力によってノズルからの可塑化材料の吐出量が想定値を超え、三次元造形物の造形精度に影響を与える場合があるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、及び、ノズル開口を有し前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、前記ノズルから吐出された前記可塑化材料が堆積されるテーブルと、前記ノズルと前記テーブルとの相対的な位置を変更する位置変更部と、前記ノズル開口に連通し、前記可塑化材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を調整することで前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出量を調整する吐出調整部と、前記可塑化部、前記位置変更部および前記吐出調整部を制御して、前記テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2つ以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、前記ノズルの進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形した後に、前記流路内の前記可塑化材料を前記造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する第1工程と、ノズルから前記可塑化材料をテーブルに向かって吐出して、三次元造形物を造形する第2工程と、を有し、前記第2工程は、前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、前記ノズルの進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形する第3工程と、前記第3工程の後に、前記ノズルから前記可塑化材料を前記テーブルの造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する第4工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図7】三次元造形装置において三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す説明図である。
【
図8】制御部が実行する三次元造形物の造形処理の工程図である。
【
図14】造形ノズルとクリーニングユニットの位置関係を示す側面図である。
【
図15】造形側の圧力測定部で測定された圧力の時間変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1および
図2は、本実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。
図1および
図2には、互いに直交するX,Y,Z方向を表す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向である。Z方向は、鉛直方向に平行な方向である。
図1および
図2におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を指し示している。向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。
【0009】
三次元造形装置100は、造形部10と、テーブル20と、位置変更部30と、加熱部40と、ノズル移動部50と、クリーニング機構60と、制御部70と、を備える。
【0010】
制御部70は、三次元造形装置全体の動作を制御する制御装置である。制御部70は、1つまたは複数のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。制御部70は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する機能等、種々の機能を発揮する。なお、制御部70は、コンピューターによって構成される代わりに、各機能の少なくとも一部を実現するための複数の回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0011】
造形部10は、制御部70の制御下において、固体状態の材料を可塑化させてペースト状にした可塑化材料を、三次元造形物の基台となるテーブル20上に吐出する。造形部10は、材料供給部11と、可塑化部12と、吐出部13と、を備える。造形部10をヘッドとも呼ぶ。
【0012】
三次元造形装置100は、造形部10として、第1造形部10aと、第2造形部10bと、を備える。第1造形部10aは、材料供給部11として第1材料供給部11aを備え、可塑化部12として第1可塑化部12aを備え、吐出部13として第1吐出部13aを備える。第2造形部10bは、材料供給部11として第2材料供給部11bを備え、可塑化部12として第2可塑化部12bを備え、吐出部13として第2吐出部13bを備える。第1造形部10aと第2造形部10bは、Y方向における位置が一致するようにX方向に並んで配置されている。第2造形部10bは、第1造形部10aの+X方向の位置に配置されている。第1造形部10aの構成と第2造形部10bの構成とは同様であるため、以下では、両者を特に区別しない場合、両者を単に造形部10と呼ぶこともある。また、両者の構成部材を区別する場合、第1造形部10aの構成部材には、符号「a」を付し、第2造形部10bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0013】
材料供給部11は、可塑化材料を生成するための材料を可塑化部12に供給する。材料供給部11は、例えば、ホッパーによって構成される。材料供給部11には、ペレット状や粉末状の材料が収容されている。材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)などの熱可塑性樹脂が用いられる。材料供給部11の下方には、材料供給部11と可塑化部12を接続する連通路15が設けられている。材料供給部11は、連通路15を介して、可塑化部12に材料を供給する。
【0014】
可塑化部12は、材料供給部11から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の可塑化材料を生成し、吐出部13へと導く。ここで、「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。可塑化部12は、スクリュー110と、スクリューケース120と、駆動モーター130と、バレル140と、を備える。
【0015】
スクリュー110は、スクリューケース120内に収納されている。スクリュー110の上面側は、駆動モーター130に連結されている。スクリュー110は、駆動モーター130が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース120内で回転する。スクリュー110の回転軸RXの軸線方向は、Z方向に沿う方向である。スクリュー110の回転速度は、制御部70が駆動モーター130の回転速度を制御することによって制御される。なお、スクリュー110は、減速機を介して駆動モーター130によって駆動されてもよい。スクリュー110は、ローター、あるいは、フラットスクリューとも呼ばれる。
【0016】
バレル140は、スクリュー110の-Z方向側に設置されている。バレル140の上面である対向面141は、スクリュー110の下面である溝形成面111に対向している。バレル140の中心には、吐出部13の流路153に連通する連通孔142が形成されている。バレル140の内部には、可塑化ヒーター144が設けられている。可塑化ヒーター144の温度は、制御部70によって制御される。
【0017】
図3は、スクリュー110の概略構成を示す斜視図である。スクリュー110は、回転軸RXに沿った方向における長さが回転軸RXに垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。溝形成面111には、中央部112を中心に、渦状の溝113が形成されている。溝113は、スクリュー110の側面に形成された材料投入口114に連通している。材料供給部11から供給される材料は、材料投入口114を通じて溝113に供給される。溝113は、凸条部115によって隔てられることにより形成されている。
図3には、溝113が3本形成されている例を示しているが、溝113の数は、1本でもよいし、2本以上であってもよい。なお、溝113は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部112から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0018】
図4は、バレル140の概略平面図である。対向面141における連通孔142の回りには、複数の案内溝143が形成されている。それぞれの案内溝143は、その一端が連通孔142に接続され、連通孔142から対向面141の外周に向かって渦状に延びている。なお、案内溝143の一端は連通孔142に接続されていなくてもよい。また、バレル140には案内溝143が形成されていなくてもよい。
【0019】
スクリュー110の溝113に供給された材料は、スクリュー110の回転と可塑化ヒーター144の加熱によって、溝113内において可塑化されながら、溝113に沿って流動し、可塑化材料としてスクリュー110の中央部112へ導かれる。中央部112に流入した流動性を発現しているペースト状の可塑化材料は、連通孔142を介して吐出部13に供給される。なお、可塑化部12では、可塑化材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。可塑化材料は、可塑化材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0020】
吐出部13は、可塑化材料を吐出する。吐出部13は、ノズル151と、流路153と、吐出調整部154と、圧力測定部155と、吸引部156と、を備える。
【0021】
ノズル151は、流路153を通じて、バレル140の連通孔142に接続されている。ノズル151は、可塑化部12において生成された可塑化材料を、ノズル151の先端のノズル開口152からテーブル20に向かって吐出する。ノズル151の周囲には、テーブル20上に吐出された可塑化材料の温度低下を抑制するヒーターが配置されてもよい。
【0022】
吐出調整部154は、流路153の開口面積を調整する。本実施形態では、吐出調整部154は、バタフライバルブによって構成されている。バタフライバルブは、バルブとも呼ばれる。バタフライバルブは、一部が加工された駆動軸の、加工された部分に設けられる。駆動軸は、バタフライバルブが、駆動軸と流路153とが交わる位置に位置するように備えられる。バタフライバルブは、流路153内において回転可能に配される。バタフライバルブの形状は、流路153内で回転することによって流路153の開口面積を調整するものであればよく、例えば、板形状、または、半球形状であってもよい。吐出調整部154は、制御部70によって制御される。制御部70は、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部12からノズル151に流れる可塑化材料の流量、つまり、ノズル151から吐出される可塑化材料の流量を調整する。吐出調整部154は、可塑化材料の流量を調整するとともに、可塑化材料の流出のオン/オフを制御する。
【0023】
圧力測定部155は、流路153内の可塑化材料の圧力を測定する。圧力測定部155は、吐出調整部154よりも上流の流路153に設けられている。圧力測定部155は、例えば、圧力センサーである。
【0024】
吸引部156は、流路153において吐出調整部154とノズル開口152の間に接続されている。吸引部156は、ノズル151からの可塑化材料の吐出停止時に、流路153内の可塑化材料を一時的に吸引することによって、可塑化材料がノズル開口152から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。吸引部156は、プランジャーにより構成されている。吸引部156は、制御部70によって制御される。
【0025】
テーブル20は、ノズル151のノズル開口152に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル151からテーブル20の上面である造形面21に可塑化材料を吐出させて造形層を積層することによって三次元造形物を造形する。造形面21上の三次元造形物が造形される領域を造形領域とも呼ぶ。
【0026】
位置変更部30は、ノズル151とテーブル20との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、位置変更部30は、造形部10を積層方向に沿って移動させ、テーブル20を積層方向と交差する方向に移動させることによって、ノズル151とテーブル20との相対的な位置を変化させる。具体的には、本実施形態の位置変更部30は、造形部10をZ方向に沿って移動させることによって、Z方向におけるノズル151とテーブル20との相対的な位置を変化させ、テーブル20をX方向およびY方向に移動させることによって、X方向およびY方向におけるノズル151とテーブル20との相対的な位置を変化させる。
図1に示すように、位置変更部30は、テーブル20をX方向に沿って移動させる第1電動アクチュエーター31と、テーブル20と第1電動アクチュエーター31とをY方向に沿って移動させる第2電動アクチュエーター32と、造形部10をZ方向に沿って移動させる第3電動アクチュエーター33とによって構成されている。第3電動アクチュエーター33は、第1造形部10aおよび第2造形部10bが固定された可動部41をZ方向に沿って移動させることによって、第1造形部10aおよび第2造形部10bをZ方向に沿って移動させる。なお、
図2では、第3電動アクチュエーター33および可動部41は省略されている。
【0027】
上述した第1電動アクチュエーター31と、第2電動アクチュエーター32と、第3電動アクチュエーター33は、制御部70の制御下で駆動される。なお、位置変更部30は、例えば、テーブル20をZ方向に移動させ、造形部10をX方向およびY方向に沿って移動させてもよいし、造形部10を移動させずにテーブル20をX方向、Y方向およびZ方向に移動させてもよいし、テーブル20を移動させずに造形部10をX方向、Y方向およびZ方向に移動させてもよい。
【0028】
加熱部40は、テーブル20に積層された可塑化材料を加熱する。加熱部40は、ヒーターを有する板形状であり、可動部41に固定されている。加熱部40は、造形部10とともに、第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。加熱部40には、
図2に示すように、Z方向に貫く開口42が設けられている。ノズル151は、可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形しているとき、開口42内に位置し、ノズル151の先端はZ方向において加熱部40とテーブル20との間に配置される。
【0029】
ノズル移動部50は、ノズル151と加熱部40との相対的な位置を変化させる。ノズル移動部50は、可動部41に固定されており、加熱部40と共に第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。ノズル移動部50は、例えば電動アクチュエーターから構成され、制御部70の制御下で駆動される。ノズル移動部50は、造形部10をZ方向に移動させることにより、ノズル151と加熱部40との相対的な位置を変化させる。なお、ノズル移動部50は、造形部10全体ではなく、吐出部13のみをZ方向に移動させてもよい。
【0030】
図5は、クリーニング機構60の斜視図である。クリーニング機構60は、加熱部40に固定されており、加熱部40と共に第3電動アクチュエーター33によってZ方向に移動される。クリーニング機構60は、クリーニング移動部210と、クリーニングユニット220と、廃棄材料収容部230と、を備える。本実施形態では、クリーニング機構60は、第1クリーニング機構60aと、第2クリーニング機構60bと、を備える。第1クリーニング機構60aは、クリーニング移動部210として第1クリーニング移動部210aを備え、クリーニングユニット220として第1クリーニングユニット220aを備え、廃棄材料収容部230として第1廃棄材料収容部230aを備える。第2クリーニング機構60bは、クリーニング移動部210として第2クリーニング移動部210bを備え、クリーニングユニット220として第2クリーニングユニット220bを備え、廃棄材料収容部230として第2廃棄材料収容部230bを備える。第1クリーニング機構60aは、第1吐出部13aのノズル151aのクリーニングを行い、第2クリーニング機構60bは、第2吐出部13bのノズル151bのクリーニングを行う。第1クリーニング機構60aと第2クリーニング機構60bの構成は同様である。両者の構成部材を区別する場合、第1クリーニング機構60aの構成部材には、符号「a」を付し、第2クリーニング機構60bの構成部材には、符号「b」を付して表記する。
【0031】
クリーニング移動部210は、クリーニングユニット220をテーブル20に対して相対的に移動させる。クリーニング移動部210は、加熱部40の上面に固定されている。クリーニング移動部210は、ガイドフレーム211と、駆動ベルト212と、第1リール213と、第2リール214と、ベルト駆動部215と、を備える。ガイドフレーム211は、Y方向に沿って設けられている。第1リール213は、ガイドフレーム211の-Y方向側の端部に設けられている。第2リール214は、ガイドフレーム211の+Y方向側の端部に設けられている。駆動ベルト212は、第1リール213および第2リール214間に架けられており、その一端が第1リール213に巻き回され、その他端が第2リール214に巻き回されている。ベルト駆動部215は、第1リール213および第2リール214を回転駆動させることで、駆動ベルト212の巻き取りまたは巻き出しを行う。ベルト駆動部215は、例えば、モーターである。ベルト駆動部215は、制御部70によって制御される。
【0032】
図6は、クリーニングユニット220の斜視図である。クリーニングユニット220は、ノズル151のテーブル20に対する相対的な移動と連動して、テーブル20に対して相対的に移動するように構成されている。クリーニングユニット220は、ブラシ部221と、回収部224と、連結部225と、を備える。
【0033】
ブラシ部221は、クリーニングボックス222と、ブラシ223と、を備える。クリーニングボックス222の形状は、上部に開口を有する箱形状である。ブラシ223は、毛先が+Z方向を向くようにクリーニングボックス222内の底面に固定されている。
【0034】
回収部224は、ブラシ部221に隣接して設けられている。回収部224の形状は、上部に開口を有する箱形状である。回収部224は、後述するパージ処理によってノズル151から排出された可塑化材料を回収する。回収部224の底面は開閉可能に設けられている。
【0035】
連結部225は、クリーニングユニット220をクリーニング移動部210に連結する。具体的には、連結部225は、駆動ベルト212を挟んで固定することで、クリーニングユニット220を駆動ベルト212に固定する。また、連結部225は、クリーニングユニット220がY方向に移動可能となるように、ガイドフレーム211に取り付けられる。そのため、クリーニングユニット220は、駆動ベルト212が第1リール213および第2リール214に巻き取りまたは巻き出しされることによって、ガイドフレーム211に沿ってY方向に移動する。
【0036】
図5に示す廃棄材料収容部230は、ノズル151から回収部224に排出された可塑化材料を収容する。廃棄材料収容部230は、加熱部40の-Y方向側の端部に着脱可能に取り付けられている。廃棄材料収容部230は、上部が開口した箱形状である。回収部224から廃棄材料収容部230に可塑化材料が回収される場合は、まず、クリーニング移動部210によって回収部224が廃棄材料収容部230の上方の位置まで移動される。そして、制御部70によって回収部224の底面が開かれることで、回収部224内の可塑化材料が廃棄材料収容部230に落下する。
【0037】
図7は、三次元造形装置100において三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、可塑化部12において、回転しているスクリュー110の溝113に供給された固体状態の材料が可塑化されて可塑化材料MMが生成される。制御部70は、テーブル20上の造形面21とノズル151との距離を保持したまま、位置変更部30を制御してテーブル20の造形面21に沿った方向に、テーブル20に対するノズル151の位置を変えながら、ノズル151から可塑化材料MMを吐出させる。ノズル151から吐出された可塑化材料MMは、ノズル151の移動方向に連続して堆積されていき、層MLが形成される。制御部70は、1つの層MLを形成した後、テーブル20を下降させて、テーブル20に対するノズル151の位置を相対的に+Z方向に移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、更に層MLを積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。
【0038】
制御部70は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル151のZ方向への移動や、各層MLで独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル151からの可塑化材料MMの吐出を一時的に中断させることがある。この場合、制御部70は、吐出調整部154によって流路153を閉塞させて、ノズル開口152からの可塑化材料MMの吐出を停止させ、吸引部156によってノズル151内の可塑化材料MMを一時的に吸引する。制御部70は、ノズル151の位置を変更した後、吸引部156内の可塑化材料MMを排出しつつ吐出調整部154によって流路153を開くことによって、変更後のノズル151の位置から可塑化材料MMの堆積を再開させる。
【0039】
三次元造形装置100が三次元造形物を造形する場合、第1吐出部13aと第2吐出部13bのうち一方が可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形し、他方は可塑化材料を吐出せず、三次元造形物を造形しない。本明細書では、三次元造形物を造形する吐出部13が有するノズル151を造形ノズル、三次元造形物を造形しない吐出部13が有するノズル151を待機ノズルと呼ぶ。本実施形態では、第1吐出部13aが可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形し、第2吐出部13bは可塑化材料を吐出せず、三次元造形物を造形しない。すなわち、本実施形態では、第1吐出部13aのノズル151が造形ノズル、第2吐出部13bのノズル151が待機ノズルである。また、造形ノズルを有する第1造形部10aの構成部材を造形側の構成部材、待機ノズルを有する第2造形部10bの構成部材を待機側の構成部材とも呼ぶ。
【0040】
図8は、制御部70が実行する三次元造形物の造形処理の工程図である。この造形処理は、三次元造形物の製造方法を実現するための処理である。
【0041】
まず、ステップS10において、制御部70は、三次元造形物を造形するための造形データを取得する。造形データは、ノズル151のテーブル20に対する相対的な移動の経路を表す造形パスデータと、造形パスデータに関連付けられた、ノズル151からの可塑化材料の吐出量を表す吐出量データと、を含む。制御部70は、外部のコンピューターや記録媒体などから造形データを取得する。
【0042】
次に、ステップS20において、制御部70は、可塑化部12を制御することで、材料供給部11から可塑化部12に供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、可塑化材料を生成する。ステップS20を第1工程とも呼ぶ。
【0043】
次に、ステップS30において、制御部70が待機側のスクリュー110、すなわち、待機ノズルとなる吐出部13bに可塑化材料を供給する第2可塑化部12bが有するスクリュー110bの回転を停止する。なお、ステップS30は省略されてもよい。
【0044】
次に、ステップS40において、制御部70は、次に実行する造形処理が部分造形か否かを判定する。ここで、部分造形とは、三次元造形物を造形する期間内において、第1部分造形物91または第2部分造形物92を造形する造形処理である。
【0045】
図9は、第1部分造形物91の例を示す図である。
図10および
図11は、第2部分造形物92の例を示す図である。
図9から
図11では、白抜きの矢印は、造形が進む方向、すなわちノズル151の進行方向を示している。本明細書において、第1部分造形物91は、ノズル151からの可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2つ以上の線状の造形物から構成される造形物である。また、第2部分造形物92は、ノズル151の進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である。第2部分造形物92は、
図10に示すように、一定の線幅での造形の途中で線幅が狭くなる形状でもよいし、
図11に示すように、造形が進むと共に線幅が徐々に狭くなる形状でもよい。線状の造形物の線幅は、流路153の開口面積が狭くなるように吐出調整部154を制御することで狭められる。
【0046】
ステップS40で次に実行する造形処理が部分造形であると判定された場合は、ステップS50において、制御部70が部分造形を実行する。次に、ステップS60において、制御部70は造形ノズルのパージ処理を実行する。部分造形の造形処理およびパージ処理の詳細については後述する。ステップS50を第3工程、ステップS60を第4工程とも呼ぶ。
【0047】
ステップS40で次に実行する造形が部分造形でないと判定された場合は、ステップS70において、制御部70は通常の造形を実行する。通常の造形とは、三次元造形物の造形において、第1部分造形物91または第2部分造形物92ではない造形物を造形する造形処理である。
【0048】
最後に、ステップS80において、制御部70は、三次元造形物の造形が完了したか否かを判定する。制御部70は、三次元造形物の造形が完了していないと判定した場合、ステップS40に処理を戻し、三次元造形物の造形処理を続行する。制御部70は、三次元造形物の造形が完了したと判定した場合、三次元造形物の造形処理を終了する。ステップS40からステップS80を第2工程とも呼ぶ。
【0049】
図12は、部分造形処理の工程図である。部分造形では、まず、ステップS110において、制御部70が、吐出調整部154aを制御して造形ノズルから可塑化材料を吐出させる。
【0050】
次に、ステップS120において、待機ノズルのパージ処理が実行される。待機ノズルのパージ処理は、造形ノズルが可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形している期間に実行される。
【0051】
次に、ステップS130において、制御部70は、造形側の圧力測定部155aで測定された圧力が第1閾値を超えているか否かを判定する。ここで、第1閾値は、予め定められた値であり、造形側の吐出調整部154aより上流側の流路153aの圧力の上限値である。圧力が第1閾値を超えたと判定された場合、ステップS140において、造形ノズルのパージ処理が実行される。造形ノズルのパージ処理は、造形ノズルから可塑化材料が連続して吐出されることで造形される造形物の造形が終了した直後に実行される。
【0052】
ステップS140の後、または、ステップS130で造形側の圧力が第1閾値を超えていないと判定された場合は、ステップS150が実行される。ステップS150では、制御部70は、部分造形において、造形ノズルから可塑化材料が吐出されている期間が、造形ノズルから可塑化材料が吐出されていない期間よりも短いか否かを判定する。造形ノズルから可塑化材料が吐出されている期間の方が短いと判定された場合は、ステップS160において、造形ノズルのパージ処理が実行される。なお、ステップS150およびステップS160は省略されてもよい。
【0053】
ステップS160の後、または、ステップS150で造形ノズルから可塑化材料が吐出されていない期間の方が短いと判定された場合は、ステップS170において、制御部70は、待機側の圧力測定部155bで測定された圧力が第2閾値を超えているか否かを判定する。ここで、第2閾値は、予め定められた値であり、待機側の吐出調整部154bより上流側の流路153bの圧力の上限値である。圧力が第2閾値を超えていると判定された場合、ステップS180において、待機ノズルのパージ処理が実行される。なお、ステップS170およびステップS180は省略されてもよい。
【0054】
ステップS180の後、または、ステップS170において圧力が第2閾値を超えていないと判定された場合は、ステップS190において、制御部70は、吐出調整部154aを制御して、造形ノズルからの可塑化材料の吐出を停止させる。
【0055】
次に、ステップS200において、制御部70は、部分造形が完了したか否かを判定する。制御部70は、部分造形が完了していないと判定した場合は、ステップS110に処理を戻し、部分造形を続行する。制御部70は、部分造形が完了したと判定した場合は、部分造形処理を終了する。
【0056】
図13は、造形ノズルのパージ処理の工程図である。造形ノズルのパージ処理では、まず、ステップS210において、制御部70が、造形側の吐出調整部154aを制御して造形側の流路153aを閉塞させ、造形ノズルからの可塑化材料の吐出を停止させる。
【0057】
次に、ステップS220において、制御部70は、造形ノズルおよび第1クリーニングユニット220aを
図5に示すクリーニングポジションPaに移動させる。
図5に示すクリーニングポジションPaは、第1吐出部13aのノズル151aのクリーニングが行われる位置である。また、
図5に示すクリーニングポジションPbは、第2吐出部13bのノズル151bのクリーニングが行われる位置である。両者を特に区別しない場合、両者を単にクリーニングポジションPとも呼ぶ。クリーニングポジションPは、加熱部40の開口42の+Z方向側に位置する。
【0058】
図14は、パージ処理が実行される際の、造形ノズルと第1クリーニングユニット220aの位置関係を示す側面図である。制御部70は、ノズル移動部50を制御して第1吐出部13aを+Z方向に移動させることで、造形ノズルを第1クリーニングユニット220aの下方の位置からクリーニングポジションPaまで移動させる。また、制御部70は、第1クリーニング移動部210aを制御することで、回収部224aが造形ノズルの真下に位置するように、第1クリーニングユニット220aを移動させる。
【0059】
次に、
図13のステップS230において、制御部70は、造形側の吐出調整部154aを制御して造形側の流路153aを開き、吐出調整部154aよりも上流側の流路153a内に貯留されている可塑化材料を造形ノズルから回収部224aに排出させる。
【0060】
図15は、三次元造形物の造形における、造形側の圧力測定部155aで測定された圧力の時間変化の例を示す図である。
図15には、3つの線状の造形物から構成される第1部分造形物91が造形された際の圧力変化が示されている。
図15に示すグラフの横軸は経過時間を、縦軸は圧力測定部155aで測定された圧力を示している。
図15に示す「開」は造形側の吐出調整部154aのバタフライバルブが開かれて流路153aが開放されたことを、「閉」は吐出調整部154aのバタフライバルブが閉じられて流路153aが閉塞されたことを意味する。
図15に示すように、流路153aが閉塞されている期間は時間経過とともに圧力が上昇し、流路153aが開放されると可塑化材料が吐出されることで圧力が低下する。流路153aが開放されている期間が短い場合、流路153aが開放されている間に圧力が目標値まで低下せず、流路153aの開放と閉塞が繰り返されることで圧力が上昇する。
【0061】
図15において最後に流路153aが開放された後の期間が、
図13のステップS230に該当する。ステップS230では、圧力が目標値を下回るまで流路153aが開放される。制御部70は、造形側の圧力測定部155aで測定された圧力が目標値を下回った場合、吐出調整部154aを制御して流路153aを閉塞させる。
【0062】
次に、
図13のステップS240において、制御部70は、第1クリーニングユニット220aが有するブラシ223aが造形ノズルに擦り付けられるように、第1クリーニングユニット220aを移動させる。これにより、造形ノズルのノズル開口152aに付着した可塑化材料が除去され、造形ノズルのクリーニングが行われる。造形ノズルから取り除かれた可塑化材料は、クリーニングボックス222aに回収される。なお、ステップS240は省略されてもよい。
【0063】
次に、ステップS250において、制御部70は、造形ノズルおよび第1クリーニングユニット220aを元の位置に移動させる。具体的には、制御部70は、造形ノズルが加熱部40の開口42に位置するように第1吐出部13aを移動させ、第1クリーニングユニット220aを加熱部40の開口42から離れた位置に移動させる。制御部70は、第1クリーニングユニット220aを第1廃棄材料収容部230aの上方に移動させて、回収部224aに排出された可塑化材料を第1廃棄材料収容部230aに排出させてもよい。
【0064】
最後に、ステップS260において、制御部70は、造形側の吐出調整部154aを制御して造形側の流路153aを開放する。
【0065】
図16は、待機ノズルのパージ処理の工程図である。まず、ステップS310において、制御部70は、待機ノズルおよび第2クリーニングユニット220bを
図5に示すクリーニングポジションPbに移動させる。具体的には、回収部224bが待機ノズルの真下に位置するように、第2吐出部13bおよび第2クリーニングユニット220bを移動させる。なお、待機ノズルおよび第2クリーニングユニット220bが最初からクリーニングポジションPbに位置している場合は、ステップS310は省略されてもよい。
【0066】
次に、ステップS320において、制御部70は、待機側の吐出調整部154bを制御して待機側の流路153bを開放し、吐出調整部154bよりも上流側の流路153b内に貯留されている可塑化材料を、待機ノズルから、待機ノズルの下方に位置している回収部224bに排出させる。制御部70は、待機側の圧力測定部155bで測定された圧力が目標値を下回った場合、吐出調整部154bを制御して流路153bを閉塞させる。
【0067】
最後に、ステップS330において、待機ノズルのクリーニングが行われる。待機ノズルのクリーニングは、
図13のステップS240で行われた造形ノズルのクリーニングと同様である。なお、ステップS330は省略されてもよい。
【0068】
以上で説明した第1実施形態における三次元造形装置100によれば、第1部分造形物91または第2部分造形物92を造形する部分造形が実行された後に造形ノズルのパージ処理が実行されるため、部分造形によって上昇した造形側の吐出調整部154aより上流の流路153aの圧力を低下させることができる。そのため、部分造形の直後の造形において造形ノズルから可塑化材料を吐出した場合に、可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制できる。したがって、三次元造形物の造形精度が悪化することを抑制できる。
【0069】
また、本実施形態では、造形側の圧力測定部155aで測定された流路153aの圧力が第1閾値を超えた場合に造形ノズルのパージ処理が実行されるため、流路153aの圧力が高い状態で造形ノズルから可塑化材料を吐出することを抑制できる。結果として、造形ノズルからの可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制できる。
【0070】
第1部分造形物91が2つ以上の短い線状の造形物から構成され、線状の造形物同士の間隔が線状の造形物の長さよりも長い場合は、造形ノズルから可塑化材料が吐出されている期間が、造形ノズルから可塑化材料が吐出されていない期間よりも短くなる。この場合、造形ノズルから可塑化材料が吐出される期間に、造形側の吐出調整部154aより上流の流路153aの圧力が十分に低下せず、第1部分造形物91の造形が進むと共に流路153aの圧力が上昇する。本実施形態では、第1部分造形物91の造形において、造形ノズルから可塑化材料が吐出されている期間が、造形ノズルから可塑化材料が吐出されていない期間よりも短い場合に、造形ノズルのパージ処理が実行されるため、造形ノズルから可塑化材料が吐出されていない期間に上昇した流路153aの圧力を低下させることができる。したがって、第1部分造形物91の造形の直後の造形において、造形ノズルからの可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制できる。
【0071】
また、本実施形態では、待機側の圧力測定部155bで測定された流路153bの圧力が第2閾値を超えた場合に待機ノズルのパージ処理が実行されるため、流路153b内の可塑化材料の圧力によって、第2吐出部13bから可塑化材料が漏れ出すことを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態では、待機ノズルの下方に回収部224bが位置するため、流路153bの圧力が上昇することで第2吐出部13bから可塑化材料が漏れ出したとしても、回収部224bによって回収される。そのため、漏れ出した可塑化材料がテーブル20に落下して、三次元造形物の造形不良を引き起こすことを抑制できる。
【0073】
B.他の実施形態:
(B-1)上記実施形態では、吐出調整部154は、バタフライバルブである。これに対して、吐出調整部154は、流路153に交差する方向に移動して流路153の開口面積を変化させるシャッターを有するシャッター機構であってもよい。また、吐出調整部154は、ピストンが流路153に沿って流路153内を移動することでノズル開口152付近の流路153の開口面積を変化させる構成であってもよい。
【0074】
(B-2)上記実施形態では、クリーニングユニット220は、Y方向に移動可能に設けられている。これに対して、クリーニングユニット220は、X方向またはZ方向に移動可能に設けられていてもよいし、X方向、Y方向およびZ方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0075】
(B-3)上記実施形態では、クリーニング機構60は、第1クリーニング機構60aと、第2クリーニング機構60bと、を備える。これに対して、クリーニング機構60は1つでもよい。この場合、クリーニング機構60は造形ノズルおよび待機ノズルによって共用される。
【0076】
(B-4)上記実施形態では、三次元造形装置100が三次元造形物を造形する場合、第1吐出部13aが可塑化材料を吐出して三次元造形物を造形し、第2吐出部13bは可塑化材料を吐出せず、三次元造形物を造形しない。これに対して、三次元造形装置100が三次元造形物を造形する期間において、第1吐出部13aが三次元造形物を造形し、第2吐出部13bが三次元造形物を造形しない期間と、第2吐出部13bが三次元造形物を造形し、第1吐出部13aが三次元造形物を造形しない期間があってもよい。すなわち、三次元造形装置100が三次元造形物を造形する期間において、造形ノズルと待機ノズルが切り替えられてもよい。
【0077】
(B-5)上記実施形態では、パージ処理において、ノズル151から回収部224に可塑化材料が排出される。これに対して、三次元造形装置100は、回収部224を備えなくてもよい。三次元造形装置100が回収部224を備えない場合、パージ処理では、テーブル20の造形領域と異なる領域にノズル151から可塑化材料が排出されてもよい。
【0078】
(B-6)上記実施形態では、
図12のステップS120に示すように、部分造形処理において待機ノズルのパージ処理が実行される。これに対して、部分造形処理ではなく、
図8のステップS70に示す通常の造形において待機ノズルのパージ処理が実行されてもよい。
【0079】
(B-7)上記実施形態では、吐出部13は、圧力測定部155を有する。これに対して、吐出部13は、圧力測定部155を有さなくてもよい。吐出部13が圧力測定部155を有さない場合、
図12に示すステップS130およびステップS140と、ステップS170およびステップS180は、実行されなくてもよい。
【0080】
(B-8)上記実施形態では、三次元造形装置100は、造形部10として、第1造形部10aと、第2造形部10bと、を備える。これに対して、三次元造形装置100が備える造形部10は1つでもよい。
【0081】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0082】
(1)本開示の一形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する可塑化部、及び、ノズル開口を有し前記可塑化材料を吐出するノズルを有する吐出部と、前記ノズルから吐出された前記可塑化材料が堆積されるテーブルと、前記ノズルと前記テーブルとの相対的な位置を変更する位置変更部と、前記ノズル開口に連通し、前記可塑化材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を調整することで前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出量を調整する吐出調整部と、前記可塑化部、前記位置変更部および前記吐出調整部を制御して、前記テーブルの造形領域に三次元造形物を造形する制御部と、を備え、前記制御部は、前記三次元造形物を造形する期間内において、前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2つ以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、先端よりも後端の方が線幅の狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形した後に、前記流路内の前記可塑化材料を前記造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する。
このような形態によれば、パージ処理を実行することによって、部分造形で上昇した流路の圧力を低下させることができるため、部分造形の直後の造形においてノズルから可塑化材料を吐出した場合に、可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制でき、三次元造形物の造形精度が悪化することを抑制できる。
【0083】
(2)上記形態において、前記制御部は、前記第1部分造形物の造形において、前記ノズルから前記可塑化材料を吐出している期間が前記ノズルから前記可塑化材料を吐出していない期間よりも短い場合に、前記パージ処理を実行してもよい。このような形態によれば、2つ以上の短い線状の造形物から構成され、線状の造形物同士の間隔が線状の造形物の長さよりも長い第1部分造形物の造形の直後の造形において、造形ノズルからの可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制できる。
【0084】
(3)上記形態において、前記吐出調整部よりも上流の前記流路に設けられ、前記流路内の前記可塑化材料の圧力を測定する圧力測定部を備え、前記制御部は、前記第1造形物を造形している期間において、前記圧力測定部で測定された圧力が予め定められた値を超えた場合に、前記第1部分造形物の造形を中断して前記パージ処理を実行してもよい。このような形態によれば、流路の圧力が高い状態でノズルから可塑化材料を吐出することを抑制できるため、ノズルから可塑化材料を吐出した場合に、可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制できる。
【0085】
(4)上記形態において、前記ノズルをクリーニングするクリーニングユニットを備え、前記クリーニングユニットは、前記ノズルから排出された前記可塑化材料を回収する回収部を有し、前記ノズルの前記テーブルに対する相対的な移動と連動して、前記テーブルに対して相対的に移動するように構成されていてもよい。このような形態によれば、ノズルから排出された可塑化材料を回収しやすくできる。
【0086】
(5)上記形態において、前記吐出部は、第1吐出部と、第2吐出部と、を有し、前記制御部は、前記第1吐出部の前記ノズルと前記第2吐出部の前記ノズルのうち一方が、前記三次元造形物を造形する造形ノズルとなり、他方が、前記三次元造形物を造形せず待機している待機ノズルとなるように、切り替えて前記三次元造形物を造形し、前記造形ノズルを前記クリーニングユニットの下方に位置させ、前記待機ノズルを前記回収部の上方に位置させ、前記造形ノズルが前記三次元造形物を造形している期間に、前記待機ノズルから前記回収部に前記可塑化材料を排出させてもよい。このような形態によれば、造形ノズルと待機ノズルを切り替えた場合に、切り替えた後の造形ノズルから可塑化材料を吐出しても、可塑化材料の吐出量が予想値を超えることを抑制できる。また、ノズルの切り替えによる時間ロスを短縮できる。
【0087】
(6)上記形態において、前記吐出部は、前記吐出調整部よりも上流の前記流路に設けられ前記流路内の前記可塑化材料の圧力を測定する圧力測定部を備え、前記制御部は、前記待機ノズルとなる前記吐出部が備える前記圧力測定部によって測定された圧力が予め定められた値を超えた場合に、前記待機ノズルから前記回収部に前記可塑化材料を排出させてもよい。このような形態によれば、待機ノズルを有する吐出部の流路内の可塑化材料の圧力によって、待機ノズルを有する吐出部から可塑化材料が漏れ出すことを抑制できる。
【0088】
(7)上記形態において、前記可塑化部は、スクリューを有し、前記制御部は、前記待機ノズルに前記可塑化材料を供給する前記可塑化部が有する前記スクリューの回転を停止させてもよい。
【0089】
(8)本開示の第2の形態によれば、三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、材料を可塑化して可塑化材料を生成する第1工程と、ノズルから前記可塑化材料をテーブルに向かって吐出して、三次元造形物を造形する第2工程と、を有し、前記第2工程は、前記ノズルからの前記可塑化材料の吐出の停止および再開を繰り返し行って造形された2以上の線状の造形物から構成される第1部分造形物、または、前記ノズルの進行方向において、先に造形される部分よりも後に造形される部分の線幅が狭い線状の造形物である第2部分造形物を造形する第3工程と、前記第3工程の後に、前記ノズルから前記可塑化材料を前記テーブルの造形領域とは異なる領域に排出するパージ処理を実行する第4工程と、を有する。
【符号の説明】
【0090】
10…造形部、10a…第1造形部、10b…第2造形部、11…材料供給部、11a…第1材料供給部、11b…第2材料供給部、12…可塑化部、12a…第1可塑化部、12b…第2可塑化部、13…吐出部、13a…第1吐出部、13b…第2吐出部、15…連通路、20…テーブル、21…造形面、30…位置変更部、31…第1電動アクチュエーター、32…第2電動アクチュエーター、33…第3電動アクチュエーター、40…加熱部、41…可動部、42…開口、50…ノズル移動部、60…クリーニング機構、60a…第1クリーニング機構、60b…第2クリーニング機構、70…制御部、91…第1部分造形物、92…第2部分造形物、100…三次元造形装置、110…スクリュー、111…溝形成面、112…中央部、113…溝、114…材料投入口、115…凸条部、120…スクリューケース、130…駆動モーター、140…バレル、141…対向面、142…連通孔、143…案内溝、144…可塑化ヒーター、151…ノズル、152…ノズル開口、153…流路、154…吐出調整部、155…圧力測定部、156…吸引部、210…クリーニング移動部、210a…第1クリーニング移動部、210b…第2クリーニング移動部、211…ガイドフレーム、212…駆動ベルト、213…第1リール、214…第2リール、215…ベルト駆動部、220…クリーニングユニット、220a…第1クリーニングユニット、220b…第2クリーニングユニット、221…ブラシ部、222…クリーニングボックス、223…ブラシ、224…回収部、225…連結部、230…廃棄材料収容部、230a…第1廃棄材料収容部、230b…第2廃棄材料収容部、ML…層、MM…可塑化材料、P…クリーニングポジション、RX…回転軸