(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005137
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】産業用装置
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240110BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H04Q9/00 311L
H04Q9/00 301B
G05B9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105190
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 星弥
(72)【発明者】
【氏名】苗村 万紀子
(72)【発明者】
【氏名】三田地 瑛太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 健史
【テーマコード(参考)】
5H209
5K048
【Fターム(参考)】
5H209AA20
5H209BB15
5H209CC11
5H209DD05
5H209FF06
5H209GG08
5H209HH30
5H209JJ01
5H209JJ09
5K048AA09
5K048BA21
5K048EB02
5K048EB12
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】
【課題】
遠隔で装置の動作変更を行っても担当者が装置に立ち会っていることを担保することができる産業用装置を提供する。
【解決手段】
産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、動作に関する設定およびガイダンス表示のための表示設定部と、通信機器を備えた産業用装置であって、制御部は、表示設定部の操作による設定により動作変更認証状態に切替え、動作変更認証状態において、第1認証コードを生成し、第1認証コードを表示設定部に表示し、通信機器を介して入力された第2認証コードと第1認証コードを比較して一致した場合、動作変更許可状態に切替え、動作変更許可状態において、通信機器を介して入力された遠隔操作による動作変更指令に基づき産業用装置の動作を変更する構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、動作に関する設定およびガイダンス表示のための表示設定部と、通信機器を備えた産業用装置であって、
前記制御部は、
前記表示設定部の操作による設定により動作変更認証状態に切替え、
前記動作変更認証状態において、第1認証コードを生成し、該第1認証コードを前記表示設定部に表示し、前記通信機器を介して入力された第2認証コードと前記第1認証コードを比較して一致した場合、動作変更許可状態に切替え、
前記動作変更許可状態において、前記通信機器を介して入力された遠隔操作による動作変更指令に基づき前記産業用装置の動作を変更することを特徴とする産業用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記制御部は、前記動作変更認証状態と前記動作変更許可状態の間は、前記産業用装置の動作制御を停止することを特徴とする産業用装置。
【請求項3】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記制御部は、前記動作変更許可状態において、前記通信機器を介して入力された遠隔操作による動作変更許可状態終了指令に基づき待機状態に切替えることを特徴とする産業用装置。
【請求項4】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記動作変更認証状態に切替えるための前記表示設定部の操作による設定は、パスワードによって表示設定部の操作が制限されていることを特徴とする産業用装置。
【請求項5】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記第1認証コードの生成は、前記動作変更認証状態への切替えに伴って、もしくは、前記表示設定部の操作に従って生成することを特徴とする産業用装置。
【請求項6】
産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、動作に関する設定およびガイダンス表示のための表示設定部と、通信機器を備えた産業用装置であって、
前記制御部は、
前記表示設定部の操作による設定により動作変更許可状態に切替え、
前記動作変更許可状態において、前記通信機器を介して入力された遠隔操作による動作変更指令に基づき前記産業用装置の動作を変更し、
前記動作変更許可状態に切替えるための前記表示設定部の操作による設定は、パスワードによって表示設定部の操作が制限されていることを特徴とする産業用装置。
【請求項7】
請求項6に記載の産業用装置において、
前記制御部は、前記動作変更許可状態の間は、前記産業用装置の動作制御を停止することを特徴とする産業用装置。
【請求項8】
請求項6に記載の産業用装置において、
前記制御部は、前記動作変更許可状態において、前記通信機器を介して入力された遠隔操作による動作変更許可状態終了指令に基づき待機状態に切替えることを特徴とする産業用装置。
【請求項9】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記産業用装置はエアシャワー装置であって、
入場者に対しエアジェットを噴射するエアジェット機構を備えたエアシャワー室を有し、
前記制御部は、前記エアジェットを作動する制御を行ない、前記動作変更認証状態と前記動作変更許可状態の間は、前記エアジェットの動作制御を停止することを特徴とする産業用装置。
【請求項10】
請求項9に記載の産業用装置において、
前記エアシャワー室は、前室側扉と清浄室側扉と両側の側壁を有し、前記エアジェット機構は前記側壁に設置されており、
前記制御部は、前記動作変更認証状態と前記動作変更許可状態の間は、前記前室側扉を常時開放し、前記清浄室側扉を常時閉鎖とすることを特徴とする産業用装置。
【請求項11】
請求項6に記載の産業用装置において、
前記産業用装置はエアシャワー装置であって、
入場者に対しエアジェットを噴射するエアジェット機構を備えたエアシャワー室を有し、
前記制御部は、前記エアジェットを作動する制御を行ない、前記動作変更許可状態の間は、前記エアジェットの動作制御を停止することを特徴とする産業用装置。
【請求項12】
請求項11に記載の産業用装置において、
前記エアシャワー室は、前室側扉と清浄室側扉と両側の側壁を有し、前記エアジェット機構は前記側壁に設置されており、
前記制御部は、前記動作変更許可状態の間は、前記前室側扉を常時開放し、前記清浄室側扉を常時閉鎖とすることを特徴とする産業用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用装置に係わり、特に産業用装置の遠隔操作による動作変更に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用装置をインターネットに接続しインターネット上から遠隔監視や遠隔操作するシステムが種々提案されている。産業用装置には予め複数の動作が行えるプログラムがインストールされており、装置上の操作盤を操作することで装置の動作を変更することができる。ただし、実際に装置を使用する使用者に動作変更の権限を与えることは、装置の不正使用や動作異常に繋がるため好ましくない。また、装置の管理者が動作を変更するため装置の操作盤を操作することは手間がかかってしまう。そのため、動作をネットワーク上から遠隔で変更することが検討されている。
【0003】
産業用装置として、例えばエアシャワー装置がある。エアシャワー装置は、半導体や精密機械等の製造や、食品の加工などを行う清浄室の出入口に設置され、使用者に付着した塵埃や花粉などをエアジェットで除去する装置である。エアシャワー装置は、使用者が装置内部や周辺に存在することがあり、その状態で装置内部や周辺の状況を確認しないまま遠隔で動作変更を行うことは使用者が装置内部に閉じ込められるなど危険が伴う。そのため、遠隔で動作を変更する場合は、装置内部や周辺に使用者が存在しておらず、尚且つ動作変更作業中は設備担当者が装置の傍で変更作業に立ち会っていることを担保する必要があった。
【0004】
本技術分野における背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、機器の動作変更が機器周辺に存在する使用者に悪影響を与えないよう、予め定められた操作許可条件をセンサによる監視結果が満たした場合に遠隔操作を許可する制御を備える遠隔機器操作装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の制御方法では、センサが使用者を完全に検知することは難しく、正確に検知させようと検知精度を高めると装置のコスト上昇につながってしまう課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、遠隔で装置の動作変更を行っても担当者が装置に立ち会っていることを担保することができる産業用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げるならば、産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、動作に関する設定およびガイダンス表示のための表示設定部と、通信機器を備えた産業用装置であって、制御部は、表示設定部の操作による設定により動作変更認証状態に切替え、動作変更認証状態において、第1認証コードを生成し、第1認証コードを表示設定部に表示し、通信機器を介して入力された第2認証コードと第1認証コードを比較して一致した場合、動作変更許可状態に切替え、動作変更許可状態において、通信機器を介して入力された遠隔操作による動作変更指令に基づき産業用装置の動作を変更する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、担当者が装置に立ち会っていることを担保することができるので遠隔での動作変更作業中に使用者の安全を確保する産業用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1におけるエアシャワー装置の断面平面図である。
【
図2】実施例1におけるエアシャワー装置の遠隔操作を説明する概略構成図である。
【
図3】実施例1におけるエアシャワー装置の遠隔操作による動作変更の処理フローチャートである。
【
図4】実施例2におけるエアシャワー装置の遠隔操作による動作変更の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本実施例は、産業用装置の一例としてエアシャワー装置を用いて説明する。
【実施例0012】
図1は、本実施例におけるエアシャワー装置の断面平面図である。
図1において、エアシャワー装置1は、エアシャワー室10を備え、前室側扉2、清浄室側扉3、両側の側壁11および12と天井(図示せず)などにより構成される。エアシャワー室10の側壁11および12には、エアジェット機構11aおよび12aがそれぞれ設置され、制御部5によりエアジェット機構が駆動制御されエアジェットを噴射する。
【0013】
制御部5は、エアシャワー装置全体を制御するために設けられ、前室側扉2、清浄室側扉3の扉スイッチ、人検知用センサおよびドアロック解除スイッチ4の検知信号を入力し、エアジェット機構を駆動制御し、エアジェットを作動させるものである。制御部5は通信機器6によりネットワーク(図示せず)と接続される。本実施例では、制御部5および通信機器6は、全体をコンパクト化するために側壁11内に設けた例を示しているが、他の側壁12側に設けても、あるいは外部に設けても良い。また、制御部5は、PLCや、マイクロプロセッサなどで実現することができ、予め複数の動作が行えるプログラムがインストールされている。
【0014】
表示設定部7は、側壁11に設置されており、エアシャワー装置の動作に関する設定を行なうこと、および使用者に対する注意事項(ガイダンス)などを表示すること、などのために設けられている。ネットワークはクラウドのようなもので、同一のネットワークに接続されたパソコンなどから遠隔でエアシャワー装置の状態を確認したり動作を変更したりするものである。
【0015】
図2は、本実施例におけるエアシャワー装置の遠隔操作を説明する概略構成図である。
図2において、
図1と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図2において、15は、エアシャワー装置のエアジェット機構やドアロック制御装置などの制御部5が制御する制御対象機器である。20は、制御部5の通信機器6と接続されるクラウドなどのネットワークである。また、使用者100は、エアシャワー装置1を実際に使用して前室側と清浄室側を行き来する人を示し、担当者101は、エアシャワー装置1を点検や維持管理する人を示し、管理者102は、エアシャワー装置1を含めた建屋全体の稼働状況を管理しエアシャワー装置を使用者に最適に使用させようとする人、およびエアシャワー装置メーカーの保守担当者を示す。
【0016】
本実施例においては、担当者101がエアシャワー装置1に立ち会っている状態で、管理者102が遠隔操作によりエアシャワー装置1の動作を制御する。以下、その動作の詳細について
図2を参照しながら
図3を用いて説明する。
【0017】
図3は、本実施例におけるエアシャワー装置の遠隔操作による動作変更の処理フローチャートである。
図3において、まずステップS11において、担当者101は、管理者102へ動作変更したい旨の依頼を事前にしておく。そして、ステップS12において、担当者101がエアシャワー装置1(以降、単に装置と称する)の表示設定部7を操作し、装置を動作変更認証状態に変更するように設定する。動作変更認証状態への変更操作は担当者101以上の権限者のみが行えるようにし、使用者100は変更を行えないようにする。そのために、例えば、担当者101以上の権限者のみが知るパスワードによって表示設定部7の操作を制限するようにする。担当者101は使用者100に装置の動作変更を実施する旨を事前に周知し、担当者101が変更作業中に立ち会うことで使用者の安全を確保することができる。
【0018】
制御部5は、ステップS13において、担当者101の動作変更認証状態への切替え操作を受けて装置を動作変更認証状態へ切替え、動作変更認証状態と後述する動作変更許可状態の間はエアジェットを作動させないように装置の動作制御を停止する。そして、エアシャワーのドアの前室側を常時開放、清浄室側を常時閉鎖とさせる。これにより清浄室側への塵埃の流出を防止しながらエアシャワー室10の内部に人が閉じ込められることなく変更作業を行うことができるようになる。なお、この場合でもエアシャワー装置に備えられたドアロック解除スイッチ4の押下により両側のドアは開くことができるので、清浄室側に閉じ込められることはない。
【0019】
次にステップS14において、制御部5は、動作変更認証状態への切替えに伴って、もしくは、担当者101の表示設定部7の操作に従って、認証コードを生成する。そして、制御部5は、生成した認証コードを表示設定部7に表示する。なお、制御部5が生成する認証コードは複数の数字や文字列などで構成されるパスワードのようなものであるが、これに限るものではなく、認証の難易度が同様であれば他の構成でもよい。
【0020】
次に、ステップS15において、担当者101は、
図2に示すように、表示設定部7に表示された認証コードを確認して、管理者102へ認証コードを伝達する。伝達方法は電話により口頭で伝えてもよいし、メールなどで伝えてもよい、さらには装置の通信機器6を介して送信してもよい。次にステップS16において、管理者102は認証コードを受け取り、ステップS17において、管理者102は、受け取った認証コードをネットワーク20上から装置の通信機器6を介して制御部5に送信する。なお、ネットワーク20がクラウドの場合、管理者102は受け取った認証コードをクラウドに入力し、クラウドのプログラムが装置の通信機器6を介して制御部5に送信する。ステップS18において、制御部5は認証コードを受信し、ステップS19において、制御部5は受信した認証コードと生成した認証コードを比較し、それが一致していた場合、ステップS20において、制御部5は動作変更許可状態に切替え、管理者102からの動作変更指令を受付け可能な状態とする。
【0021】
ここで、同じ箇所にエアシャワー装置が複数台設置されている場合、動作を同時に変更させようとすると担当者101と管理者102との間で対象となる装置の認識相違が発生する可能性がある。そこで、認証コードを設けることで、担当者101が認証コードを伝達間違えしたり、管理者102が認証コードを誤った装置に入力したりしたとしても認証することができないため、認識相違が発生した装置の動作変更許可状態への移行を防ぐことができる。
【0022】
ステップS21において、管理者102はネットワーク20から装置の制御部5へ、遠隔操作による動作変更指令を送信する。ステップS22において、制御部5は動作変更指令を受信する。ステップS23において、制御部5は、動作変更許可状態であるので、受信した動作変更指令により、制御部5内の予めインストールされている複数のプログラムの内の1つに変更し、装置の動作を変更する。ステップS24において、管理者102は、装置の動作をモニタしており、動作の変更が終了したことを確認してネットワーク20上から遠隔操作による動作変更許可状態の終了指令を送信する。ステップS25において、制御部5は動作変更許可状態終了指令を受信し、ステップS26において、制御部5は装置を待機状態に変更する。なお、担当者101が表示設定部7を操作したりドアロック解除スイッチ4を押下したりしたときにも動作変更認証状態と動作変更許可状態は終了できるようにする。
【0023】
以上説明した本実施例によれば、遠隔操作において、担当者が装置に立ち会っていることを担保することができ、遠隔操作中に使用者の安全を確保できる産業用装置を提供することができる。また、認証コードの利用により複数台操作時の操作対象誤りを防ぐことができる。
以降は、ステップS21からステップS26において、管理者102の遠隔操作による動作変更を実行し、その後、動作変更許可状態を終了して装置を待機状態に変更する。
なお、ステップS21の管理者102の遠隔操作による動作変更指令の送信のタイミングは、ステップS11において、担当者101は管理者102へ動作変更したい旨の依頼を事前にしておくので、その時に取り決めた時刻に送信してもよいし、ステップS32の動作変更許可状態への切替えを受けて、制御部5から通信機器6を介して管理者102へ動作変更許可状態になったことを送信することで、それをトリガーとしてもよい。
このように、本実施例では、遠隔操作において、担当者が装置に立ち会っていることを担保することができ、遠隔操作中に使用者の安全を確保できる産業用装置を提供することができる。なお、実施例1のように、同じ箇所に装置が複数台設置されている場合、複数台操作時の操作対象誤りを防ぐことはできないが、同じ箇所に装置が複数台設置されることがない場合は、担当者や管理者の作業手順が簡略化できるという効果がある。
以上、本発明による実施例を示したが、本発明は、遠隔操作中に使用者の安全を確保できる産業用装置を提供できる。そのため、産業用装置の動作変更を安全に遠隔操作することができ効率が上がり、人材コスト削減の効果がある。従って、本発明は、SDGs(Sustainable Development Goals)を実現するための特に項目8の“働きがいも経済成長も”における、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成することに貢献する。
また、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、エアシャワー装置を例にして説明したが、これに限定されるものではなく、空気圧縮機やインクジェットプリンタ等の産業用装置に適用できる。また、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。