(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051370
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】半導体装置製造方法および太陽電池製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240404BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/308 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157501
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真悟
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA02
5F043AA31
5F043BB22
5F043DD10
5F043FF10
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】異物の付着による効率低下を抑制できる半導体装置製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置製造方法は、半導体基板を、アルカリ液に浸漬する工程と、前記半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが4未満である酸性酸化液に浸漬する工程と、前記半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが6以上8以下である中性酸化液に浸漬する工程と、前記半導体基板を、酸化膜除去液に浸漬する工程と、をこの順番に備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を、アルカリ液に浸漬する工程と、
前記半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが4未満である酸性酸化液に浸漬する工程と、
前記半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが6以上8以下である中性酸化液に浸漬する工程と、
前記半導体基板を、酸化膜除去液に浸漬する工程と、
をこの順番に備える、半導体装置製造方法。
【請求項2】
前記酸性酸化液は、塩酸オゾン水、硫酸オゾン水、塩酸過酸化水素水、硫酸過酸化水素水または硝酸である、請求項1に記載の半導体装置製造方法。
【請求項3】
前記酸性酸化液は、10ppm以上120ppm以下のオゾンを含有する、請求項1に記載の半導体装置製造方法。
【請求項4】
前記中性酸化液は、オゾン水または過酸化水素水のいずれかである、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項5】
前記中性酸化液は、10ppm以上120ppm以下のオゾンを含有する、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ液は、無機アルカリ水溶液である、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項7】
前記酸化膜除去液は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウムまたはそれらの混合物である、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項8】
前記酸化膜除去液は、濃度0.5%以上10%以下のフッ化水素酸である、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の半導体装置製造方法により前記半導体基板にラミッド状の凹凸を有するテクスチャを形成する工程と、
前記半導体基板に光電変換構造を形成する工程と、を備える、太陽電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造方法および太陽電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いる太陽電池等の半導体装置を製造する過程において、半導体基板の内部への光の入射率を向上するために半導体基板の表面全体にピラミッド状の凹凸を形成する異方性エッチングなど、半導体基板をアルカリ液に浸漬する処理が行われる。このようなアルカリ処理の後には、酸化剤を含む酸化液に浸漬して半導体基板の表面を酸化し、酸化膜除去液により酸化膜を除去することで、半導体基板の表面を清浄化することが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板を酸化液に浸漬する際、pHが低い酸性の酸化液を用いることにより、金属元素をイオン化し、半導体基板の表面の金属を除去できることが知られている。また、酸性の酸化液を用いることで、半導体基板の表面に残留しているアルカリ液を中和し、アルカリ液に起因する酸化膜の形成不良を防止する効果も得られるとされている。しかしながら、酸性の酸化液を用いると、半導体基板の表面に異物粒子が付着し、太陽電池の効率を低下させる場合があることが確認された。
【0005】
そこで、本発明は、異物の付着による効率低下を抑制できる半導体装置製造方法および太陽電池製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置製造方法は、半導体基板を、アルカリ液に浸漬する工程と、前記半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが4未満である酸性酸化液に浸漬する工程と、前記半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが6以上8以下である中性酸化液に浸漬する工程と、前記半導体基板を、酸化膜除去液に浸漬する工程と、をこの順番に備える。
【0007】
上述の半導体装置製造方法において、前記酸性酸化液は、塩酸オゾン水、硫酸オゾン水、塩酸過酸化水素水、硫酸過酸化水素水または硝酸であってもよい。
【0008】
上述の半導体装置製造方法において、前記酸性酸化液は、10ppm以上120ppm以下のオゾンを含有してもよい。
【0009】
上述の半導体装置製造方法において、前記中性酸化液は、オゾン水または過酸化水素水のいずれかであってもよい。
【0010】
上述の半導体装置製造方法において、前記中性酸化液は、10ppm以上120ppm以下のオゾンを含有してもよい。
【0011】
上述の半導体装置製造方法において、前記アルカリ液は、無機アルカリ水溶液であってもよい。
【0012】
上述の半導体装置製造方法において、前記酸化膜除去液は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウムまたはそれらの混合物であってもよい。
【0013】
上述の半導体装置製造方法において、前記酸化膜除去液は、濃度0.5%以上10%以下のフッ化水素酸であってもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る太陽電池製造方法は、上述の半導体装置製造方法により前記半導体基板にラミッド状の凹凸を有するテクスチャを形成する工程と、前記半導体基板に光電変換構造を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る半導体装置製造方法および太陽電池製造方法によれば、異物子の付着による効率低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図2】
図1のテクスチャ形成工程の詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る半導体装置製造方法は、半導体基板に光電変換構造を形成した太陽電池を製造する太陽電池製造方法である。
【0018】
本実施形態の太陽電池製造方法は、半導体基板の表面にピラミッド状の凹凸を有するテクスチャを形成する工程(ステップS1:テクスチャ形成工程)と、半導体基板に光電変換構造を形成する工程(ステップS2:光電変換構造形成工程)と、光電変換構造から電力を取り出す電極を形成する工程(ステップS3:電極構造形成工程)と、を備える。
【0019】
図1のステップS1の異方性エッチング工程は、
図2に示すように、アルカリ液浸漬工程(ステップS11)と、酸性酸化液浸漬工程(ステップS12)と、中性酸化液浸漬工程(ステップS13)と、酸化膜除去液浸漬工程(ステップS14)と、をこの順番に備える。
【0020】
ステップS11のアルカリ液浸漬工程では、半導体基板をアルカリ液に浸漬することにより、半導体基板を異方性エッチングして半導体基板の表面全体に多数のピラミッド状の凹凸を形成する。アルカリ液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の、半導体基板上に残留しにくい無機アルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ液のpHは、処理の目的、半導体基板の性質等に応じて技術常識に基づいて選択され得る。
【0021】
ステップS12の酸性酸化液浸漬工程では、半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが4未満である酸性酸化液に浸漬することにより、半導体基板の表面に酸化膜を形成する。酸性酸化液が酸性であることによって、半導体基板上に残留するアルカリ液を中和することで、アルカリ液による酸化膜形成の阻害を防止できるとともに、金属元素をイオン化して析出した金極が半導体基板に付着することを防止できる。
【0022】
酸性酸化液としては、塩酸オゾン水、硫酸オゾン水、塩酸過酸化水素水、硫酸過酸化水素水および硝酸が好ましく、中でも塩酸オゾン水が特に好ましい。また、酸性酸化液は、10ppm以上120ppm以下のオゾンを含有することが好ましい。このような酸性酸化液を用いることによって、半導体基板の表面を適切に酸化できるとともに、半導体基板への異物の付着を効果的に抑制できる。
【0023】
ステップS13の中性酸化液浸漬工程では、半導体基板を、酸化剤を含有し、pHが6以上8以下である中性酸化液に浸漬することにより、酸性酸化液により形成される正の電位を有する酸化膜に付着し得る電位を有する樹脂の微粒子等の付着物を除去する。中性酸化液のpHが6以上であることによって、酸化膜の電位を負の値に低下させられる。また、中性酸化液のpHが8以下であることによって、半導体基板を浸食することなく酸化膜の電位を調整できる。
【0024】
中性酸化液としては、オゾン水および過酸化水素水が好ましく、中でもオゾン水が特に好ましい。また、中性酸化液は、10ppm以上120ppm以下のオゾンを含有することが好ましい。このような中性酸化液を用いることによって、半導体基板の表面の異物を低減できる。
【0025】
ステップS14の酸化膜除去液浸漬工程では、半導体基板を、酸化膜除去液に浸漬することにより、半導体基板の表面の酸化膜を除去する。これにより、表面に酸化膜のない清浄な半導体基板が得られる。酸化膜除去液としては、フッ化水素酸、フッ化アンモニウムまたはそれらの混合物が好適に用いられる。
【0026】
フッ化水素酸の濃度としては、0.5%以上10%以下が好ましく、2%以上8%以下がより好ましい。このような濃度のフッ化水素酸を酸化膜除去液として用いることによって、半導体基板を浸食することなく、酸化膜を確実に除去できる。
【0027】
このように、テクスチャ形成工程では、アルカリ液による異方性エッチングの後に、金属汚染を抑制できる酸性酸化液によって半導体基板に酸化膜を形成してから、中性酸化液によって半導体基板から樹脂等の付着物を除去するので、異物の付着が少ないテクスチャ基板を形成し、異物の付着による太陽電池の効率低下を抑制できる。
【0028】
ステップS2の光電変換構造形成工程では、半導体基板に導電型の異なる半導体層を積層することにより、光電変換構造を形成する。この光電変換構造形成工程において、例えばレジストパターンの剥離等の目的で半導体基板をアルカリ液に浸漬する場合、ステップS1の異方性エッチング工程と同様に、アルカリ液に浸漬した後、半導体基板を酸性酸化液、中性酸化液および酸化膜除去液に順番に浸漬してもよい。
【0029】
ステップS3の電極構造形成工程では、光電変換構造から電力を取り出すための電極を形成する。電極は、導電性ペーストの印刷によって形成できる他、主面全体に金属を積層し、金属をエッチングによってパターニングすることによっても形成できる。この電極構造形成工程においても、半導体基板をアルカリ液、酸性酸化液、中性酸化液および酸化膜除去液に順番に浸漬してもよい。
【0030】
上述のように、本実施形態の太陽電池製造方法では、半導体基板をアルカリ液、酸性酸化液、中性酸化液および酸化膜除去液に順番に浸漬することにより、異物の付着を抑制し、光電変換効率の高い太陽電池(半導体装置)を製造できる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。本発明に係る半導体装置製造方法は、半導体基板をアルカリ液、酸性酸化液、中性酸化液および酸化膜除去液に順番に浸漬する工程を備えていればよく、アルカリ液への浸漬が異方性エッチング以外の目的で行われてもよく、太陽電池以外の半導体装置の製造に適用されてもよい。また、本発明に係る半導体装置製造方法において、半導体基板のアルカリ液、酸性酸化液、中性酸化液および酸化膜除去液への浸漬の間に純水で洗浄する工程を設けてもよい。
【実施例0032】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
シリコン半導体基板をアルカリ液、酸性酸化液および酸化膜除去液にこの順番に浸漬してテクスチャを形成して製造したヘテロ接合バックコンタクト型太陽電池の比較例と、シリコン半導体基板を酸性酸化液への浸漬と酸化膜除去液への浸漬の間に中性酸化液への浸漬を追加した以外は同じ条件で製造した太陽電池の実施例について、光電変換効率、短絡電流、開放電圧、形状因子、直列抵抗、並列抵抗およびpHを測定した。pHの測定にはエー・アンド・ディー製AP-20のpHメータを用いた。アルカリ液浸漬工程では、濃度1%、温度30℃の水酸化カリウム水溶液に100秒浸漬した。酸性酸化液浸漬工程では、オゾン濃度50ppm、pH2.6、温度22℃の塩酸オゾン水に600秒浸漬した。中性酸化液浸漬工程では、オゾン濃度20ppm、pH7.0、温度21℃のオゾン水に600秒浸漬した。酸化膜除去液浸漬工程では、濃度2%、温度23℃のフッ化水素酸に24秒浸漬した。
【0034】
比較例(サンプル数802)の各測定値の平均値は、光電変換効率(Eff)19.37%、短絡電流(Isc)3.62A、開放電圧(Voc)0.71V、形状因子(FF)0.73、直列抵抗(Rs)11.79mΩ、並列抵抗(Rsh)38.89Ωであった。一方、実施例(サンプル数399)の各測定値の平均値は、光電変換効率20.80%、短絡電流3.78A、開放電圧0.72V、形状因子0.74、直列抵抗11.88mΩ、並列抵抗61.74Ωであった。
【0035】
以上より、酸性酸化液浸漬工程と酸化膜除去液浸漬工程の間に中性酸化液浸漬工程を追加することにより、光電変換効率を向上できることが確認された。
【0036】
さらに、次の表1に示すように、上記実施例から酸性酸化液および中性酸化液のpHだけを変更した条件1~9で太陽電池を製造し、得られる太陽電池の性能に与える影響を確認した。なお、酸性および中性の範囲を逸脱する場合も便宜的に酸性酸化液および中性酸化液の欄に記載している。
【0037】
【0038】
この結果から、pHが4未満である酸性酸化液と、pHが6以上8以下である中性酸化液とを用いることにより、半導体基板への異物の付着による効率低下を抑制し、光電変換効率に優れる太陽電池を製造できることが確認された。