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特開2024-51375ポリアリーレンスルフィド繊維およびそれからなる不織布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051375
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィド繊維およびそれからなる不織布
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/76 20060101AFI20240404BHJP
   D04H 1/4326 20120101ALI20240404BHJP
【FI】
D01F6/76 D
D04H1/4326
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157513
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小澤 樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 匠平
(72)【発明者】
【氏名】勝田 大士
(72)【発明者】
【氏名】前川 茂俊
【テーマコード(参考)】
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB89
4L035BB91
4L035DD20
4L035EE01
4L035EE20
4L035FF05
4L035GG06
4L047AA26
4L047AA28
4L047AB08
4L047BA09
4L047BA21
4L047BB08
4L047CA19
4L047CB01
4L047CB05
(57)【要約】
【課題】優れた水系媒体中への分散性および接着性を有するポリアリーレンスルフィド繊維を提供する。
【解決手段】示差走査熱量計(DSC)の測定において融解熱量が15J/g以上であって、酸素含有基を有し、該酸素含有量がSEM-EDXで測定して求められるモル比O/Sの値が0.2~1.5であり、繊維径3μm以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド繊維。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が3.0μm以下であり、示差走査熱量計(DSC)の測定において融解熱量が15J/g以上であって、酸素含有基を有し、SEM-EDXで測定して求められるモル比O/Sの値が0.2~1.5であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド繊維。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド繊維を含む不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系媒体中への優れた分散性を有するポリアリーレンスルフィド繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)は高い耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、難燃性を有することに加えて、優れた力学物性や成型加工性を有していることから、金属代替材料や極限環境下に耐え得る材料として広く使用されている。またPPSを酸化して得られるポリフェニレンスルホン(PPSO)はPPSと比較して耐熱性、耐薬品性、耐酸性に優れ、さらには熱溶融しないという特性を有している。上記樹脂を繊維化したポリアリーレンスルフィド繊維については、上記の特性を活かし、バグフィルター、抄紙カンバス、電気絶縁紙、電池セパレーターおよび各種隔膜などの用途に使用されている。特にPPSやPPSOが有する耐熱性や高濃度アルカリ溶液等に対する耐薬品性等の特徴と、不織布材料が有するイオン透過性やガス分離性を組み合わせ、水素製造装置隔膜や燃料電池隔膜、およびこれら隔膜補強材向けに、ポリアリーレンスルフィド繊維からなる湿式不織布が展開されている。
【0003】
近年、上記用途に使用される不織布は、装置の小型軽量化・高性能化を目的に不織布の薄地化や低目付化が求められている。薄地、低目付を達成するためには繊維の細繊度化が有効な方法である。しかし細繊度化により短繊維のアスペクト比が高くなり、繊維同士の絡まりが起きやすくなるため、湿式不織布を作製する際の水系媒体中への分散工程において分散性不良となり、均一性の高い不織布を得ることができないといった問題がある。そのため、繊維径の細い繊維であっても均一性の高い不織布を得るための様々な検討がなされている。
【0004】
一方、ポリアリーレンスルフィド繊維からなる不織布は、主として、骨格繊維とバインダー繊維とから構成されている。骨格繊維は耐熱性に優れたポリアリーレンスルフィド延伸繊維であることが好ましく、バインダー繊維は熱融着性に優れたポリアリーレンスルフィド未延伸繊維であることが好ましい。
【0005】
このような背景から、PPS不織布におけるバインダー繊維として、水分散性が良好な未延伸PPS繊維を得ることを目的に、溶融紡糸により製造されたPPS未延伸繊維を70℃以上の温水中を通過させて熱処理した後、70~90℃の乾熱域を弛緩状態で通過させて5~60分間の弛緩熱処理をすることを特徴とする抄紙用PPS繊維の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、PPSよりも耐熱性、耐薬品性、耐酸性に優れるPPSOを用い、薄地化を意図した技術として、単糸繊度が1dtex以下、引張強力が2.0cN/dtex以上のPPSO繊維及び未延伸PPS繊維からなることを特徴とする耐熱性湿式不織布の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
また、同じくPPSOを用いた技術として、繊維径が0.0001μm以上0.3μm以下であり、かつ、示差走査熱量計(DSC)の測定において融解ピークが実質的に認められないことを特徴とするPPSOナノファイバーおよびこのPPSOナノファイバーを含有することを特徴とするペーパーの製造方法も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-174400号公報
【特許文献2】特開2007-39840号公報
【特許文献3】特開2007―2373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術は、溶融紡糸法により製造されたPPS未延伸繊維を、製造工程内で弛緩熱処理して収縮させることにより、熱収縮率の小さいPPS繊維を得ることができる。しかしながら、該方法にて得られるPPS未延伸繊維は、実質的に繊維径が太いため、薄地や低目付の不織布を得ることが困難である。
【0010】
一方、特許文献2の技術は繊度が1dtex以下のPPSO繊維とバインダー繊維に未延伸PPS繊維を用いた湿式不織布に関するものである。該技術によれば従来のPPS不織布に比べて耐熱性や耐薬品性などの高度化を達成することが可能となるものの、例示されている短繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は低いため水への分散は容易で、繊維径が太いため薄地や低目付の不織布を得ることは困難である。
また、特許文献3の技術は、繊維径は0.0001μm以上0.3μm以下と小さいが、分散性に劣るため得られる不織布は厚く、また引張強力も低く、不十分なものである。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、優れたおよび分散性および接着性を維持したポリアリーレンスルフィド繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を達成するため、鋭意検討した結果、PPS繊維を酸化処理して繊維にスルホン基を導入することで、繊維径を細くした場合であっても水系媒体中への分散性が良好であり、抄紙に好適な優れた分散性およびバインダー性能を両立するポリアリーレンスルフィド繊維となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は上記の課題を解決せんとするものであり、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、繊維径が3.0μm以下であり、示差走査熱量測定にて算出される融解熱量が15J/g以上であって、酸素含有基を有し、酸素含有量がSEM-EDX(Scanning Electron Microscope Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で測定して求められるモル比O/Sの値が0.2~1.5である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、繊維径が細くても優れた水系媒体中への分散性およびバインダー性能を有するポリアリーレンスルフィド繊維を得ることができる。そして、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維によれば、バインダー繊維の分散性が高く高品質な不織布を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、繊維径が3.0μm以下であり、示差走査熱量測定にて算出される融解熱量が15J/g以上であって、酸素含有基を有し、SEM-EDXで測定して求められるモル比O/Sの値が0.2~1.5である。
【0016】
以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0017】
なお、本発明に用いるポリアリーレンスルフィドとは、-(Ar-S)-の繰り返し単位を有するホモポリマ-あるいはコポリマ-である。Arとしては下記の式(1)~(12)などで表される構成単位などが挙げられる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
(式(1)~式(10)において、R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位は上記式(1)または上記式(2)をArとするp-アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとしてポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、ポリマーの主要構成単位として下記構造式(13)で示されるp-フェニレン単位を好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上含む樹脂とすることにより、耐熱性に優れた性質を持つ。また、繊維および不織布として加工した際に、優れた強度を有する。
【0031】
【化13】
【0032】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は酸素含有基を有していることが特徴である。酸素原子をもつ官能基としてスルホン基、エーテル基、スルホン酸基、カルボニル基などが例示され、これらを共重合によって導入していてもよい。代表的なものとして、 ポリアリーレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。これらをあらかじめ重合して上記のPPSと混合して使用してもよい。また、PPS繊維を後述する方法で変性して酸素含有基を導入することでもよい。
【0033】
本発明に係るポリアリーレンスルフィド繊維には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化チタン、シリカ、酸化バリウム、炭酸カルシウムなどの無機物、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、単成分繊維はもとより、2種類以上の樹脂を複合した複合繊維であってもよい。前記のポリアリーレンスルフィド繊維が複合繊維の場合において、その複合形態は本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではなく、芯鞘型や海島型、サイドバイサイド型、偏心芯鞘型、ブレンド型などから適宜選択することができる。
【0035】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維の横断面形状は、何ら制限されるものではなく、丸断面はもとより、三角断面等の多葉断面、扁平断面、S字断面、十字断面、中空断面などの任意の形状とすることができる。
【0036】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、示差走査熱量測定にて算出される融解熱量が15J/g以上である。融解熱量を15J/g以上、好ましくは20J/g以上とすることにより、バインダー繊維に好適な、接着性に優れた繊維となる。また、融解熱量を42J/g以下、好ましくは40J/g以下、より好ましくは30J/g以下にすることにより水系媒体中への分散性に優れたポリアリーレンスルフィド繊維を得ることができる。
【0037】
ここで言う、繊維の融解熱量(J/g)とは、以下のようにして求めるものである。
(1)電子天秤を用いて繊維を約5mg量り取った後、示差走査熱量計に繊維をセットし、窒素下、昇温速度16℃/分、測定温度範囲50~300℃の条件で示差走査熱量測定を実施する。
(2)得られた測定結果(DSC曲線)における吸熱ピークの面積より結晶融解熱量ΔHm(J/g)を算出する。なお吸熱ピークが複数見られた場合、すべてのピークの面積を合算した値よりΔHmを算出し、吸熱ピークが見られない場合は0(J/g)とする。
(3)1水準につき測定位置を変更して3回測定を行い、単純な数平均値を求め融解熱量(J/g)とする。
【0038】
融解熱量(J/g)を上記範囲とする方法としては、例えば、繊維を構成するポリアリーレンスルフィドにおいて結晶性PPSの含有量を35%以上とすることで達成できる。
【0039】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は酸素含有基を有し、SEM-EDXで測定して求められるモル比O/Sの値が0.2~1.5である。繊維の一部に親水性基である酸素含有基を有し、モル比O/Sの値を0.2~1.5とすることで水系媒体中への分散性に優れたものとすることができる。本発明のポリアリーレンスルフィド繊維においては、モル比O/Sは0.4以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上とすることにより、水系媒体中への分散性により優れたポリアリーレンスルフィド繊維となる。また、モル比O/Sは1.3以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以下とすることにより、バインダー繊維に好適な接着性に優れたポリアリーレンスルフィド繊維を得ることができる。
【0040】
モル比O/Sを上記範囲とする方法としては、芯鞘繊維として鞘成分にO原子を含む成分(酸素含有基)を共重合したポリアリーレンスルフィドを使用する方法、繊維をプラズマ処理、コロナ処理、酸化処理、UV処理等して酸素含有基を導入する(PPSをPPSO化する)方法等がある。
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維の繊維径は、3.0μm以下である。繊維径を3.0μm以下、好ましくは2.0μm以下とすることにより、同一繊度や同一目付における繊維の構成本数が増加するため、バインダーとして使用した際の接着点が増加し、優れた強度を有する不織布となる。また、繊維径が0.3μmより大きいことが好ましく、より好ましくは0.5μmより大きくすることにより分散性に優れたポリアリーレンスルフィド繊維を得ることができる。
【0041】
ここで言う、繊維の繊維径(μm)とは、以下のようにして求めるものである。
(1)繊維の横断面を、走査型電子顕微鏡で1本の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。
(2)撮影した画像を用い、画像解析ソフトを用いて、単繊維の横断面輪郭が形成する面積Af(μm2)を計測し、この面積Afと同一の面積となる真円の直径を算出する。
(3)これを任意に抽出した繊維100本について測定し、単純な数平均を求め平均繊維径(μm)を算出し、小数点第2位を四捨五入する。
【0042】
繊維径を上記範囲とする方法としては後述する方法により達成できるが、本発明の目的を阻害しない範囲で他の方法用いることは差し支えない。
【0043】
本発明の不織布は本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を含んだ不織布である。本発明の不織布において、不織布の種類は特に限定されず、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、抄紙不織布等が例示できるが、中でも抄紙不織布が低目付、薄地としやすく、好ましい。
【0044】
次に、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を製造する好ましい態様を具体的に説明する。
【0045】
原料として使用するポリアリーレンスルフィドは、水分混入防止やオリゴマー除去を目的に、溶融紡糸に供する前に乾燥することが好ましい。乾燥によって製糸性を高めることができる。乾燥条件としては、100~200℃にて、1~24時間の真空乾燥が通常用いられる。
【0046】
溶融紡糸では、プレッシャーメルタ型、単軸や2軸エクストルーダー型などの押出機を用いた溶融紡糸手法を適用することができる。押し出されたポリアリーレンスルフィドは、配管を経由し、ギアーポンプなどの計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、紡糸口金へと導かれる。このとき、ポリマー配管から紡糸口金までの温度(紡糸温度)は、流動性を高めるために290℃以上が好ましく、ポリマーの熱分解を抑制するために380℃以下とすることが好ましい。
【0047】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、島成分にポリアリーレンスルフィドを配した海島型複合断面を有した海島型複合繊維から得ることができる。
【0048】
上記の海島型複合繊維の海成分には、易溶解性ポリマーが好適に用いられる。ここで言う、易溶解性ポリマーとは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーおよびそれらの共重合体から選択される。
【0049】
本発明の製造に用いられる海島型複合繊維は、島成分であるポリアリーレンスルフィド(例えばPPS)と海成分ポリマーをそれぞれ別に溶融させた後、ポリマー配管を経由しギアーポンプなど公知の計量装置により計量し、異物除去のためのフィルターを通過した後、それぞれ紡糸口金へ導く。紡糸口金へ導いたそれぞれのポリマーは、紡糸口金内で任意の複合形態に形状規制して合流させ、海島型複合繊維として口金孔より吐出する。
【0050】
吐出に使用される紡糸口金は、口金孔の孔径Dを0.1mm以上0.6mm以下とすることが好ましく、また、口金孔のランド長L(口金孔の孔径と同一の直管部の長さ)を孔径で除した商で定義されるL/Dは、1以上10以下であることが好ましい。
【0051】
海島型複合繊維における島成分の形状および断面積は、繊維形状および平均繊維径から算出される繊維横断面の面積と同一とすればよい。例えば、島成分であるポリアリーレンスルフィドの直径を2.0μmとすることで、平均繊維径2.0μmの丸断面繊維を製造することができる。
【0052】
海島型複合繊維における島成分の数は、特に限定されるものではないが、20以上2000以下が好ましい。島成分の数を好ましくは20以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上とすることにより、島成分の直径を小さくすることができるため、ポリアリーレンスルフィド繊維の繊維径を細くすることが可能となる。また、島成分の数を好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下とすることにより、繊維断面形成性が良好となるため、繊維径のバラツキが小さい繊維を得ることができる。
【0053】
口金孔から吐出した海島型複合繊維は、冷却風(空気)を吹き付けることにより冷却固化される。冷却風の温度は、冷却効率の観点から冷却風速とのバランスで決定することができるが、30℃以下であることが好ましい態様である。冷却風の温度を好ましくは30℃以下とすることにより、冷却による固化挙動が安定し、繊維径均一性の高い繊維となる。
【0054】
また、冷却風は、口金から吐出された未延伸繊維に、繊維軸とほぼ垂直方向に流すことが好ましい。その際、冷却風の速度は、冷却効率および繊度の均一性の観点から、10m/分以上であることが好ましく、製糸安定性の点から100m/分以下であることが好ましい。
【0055】
冷却固化された未延伸繊維は、一定速度で回転するローラー(ゴデットローラー)により引き取られる。引取速度は線形均一性、生産性向上のため、300m/分以上が好ましく、分子鎖の配向を進めないために1500m/分以下が好ましい。
【0056】
このようにして得られた未延伸繊維は、未延伸繊維のまま次工程に供されてもよいし、延伸させてもよい。
【0057】
得られた繊維には、必要に応じてクリンパーによる捲縮の付与、および70℃以下の温度でセッターによる形状固定を行っても良い。捲縮の付与により、繊維同士が絡合することで繊維同士の接着面積が増加し、力学的強度に優れた不織布を得ることができる。
【0058】
上記の捲縮における捲縮数としては、2山/25mm以上15山/25mm以下であることが好ましい。捲縮数を好ましくは2山/25mm以上とすることにより、繊維同士が絡合しやすくなり、力学的強度に優れた不織布となる。また、捲縮数を好ましくは15山/25mm以下とすることにより、分散液中での繊維の分散性が向上し、均質な不織布となる。
【0059】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を得るためには、海成分を溶解可能な溶剤などに、上記の海島型複合繊維を浸漬して、易溶解ポリマーを除去すればよい。易溶解ポリマーが、共重合ポリエチレンテレフタレートの場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を溶剤として用いることができる。この際、海島型複合繊維とアルカリ水溶液の浴比(海島型複合繊維質量(g)/アルカリ水溶液質量(g))は1/10000以上1/5以下であることが好ましく、1/5000以上1/10以下であることがより好ましい。該範囲内とすることで、海成分の溶解時に不要に繊維同士が絡み合うことを抑制することができるのである。
【0060】
この際、アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。係る範囲内とすることで、海成分の溶解を短時間で完了させることができる。
【0061】
さらに、上記のアルカリ水溶液中に海成分の溶解促進剤として界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられるが、易溶解性ポリマーにポリエステルを用いた場合、カチオン系界面活性剤が好適に用いられる。また、アルカリ溶液中の界面活性剤濃度は、溶出前の繊維の重さに対して1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、上記の通りに溶融紡糸にて得られた繊維に酸素含有基を導入する処理、好ましくは有機過酸化物で酸化処理することにより得ることができる。ここで使用される有機過酸化物としては、例えば過蟻酸、過酢酸、過安息香酸、過プロピオン酸、過酪酸、メタクロル過安息香酸、過トリクロル酢酸、過トリフロル酢酸、過フタル酸などが挙げられる。中でも反応速度の速さ、取り扱いの容易さから過酢酸が好ましい。ポリアリーレンスルフィド繊維への酸素含有基の導入は、ポリアリーレンスルフィド繊維を有機過酸化物溶液中に浸漬することによって達成される。処理条件は繊維の繊度または比表面積、あるいは使用する有機過酸化物の反応速度等によって異なるが、例えば繊維径3.0μm以下の細繊維に過酢酸を用いる場合、室温下でもモル比O/Sを0.2~1.5とすることができる。
【0063】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、長繊維として使用することもできるが、不織布などに加工する前に一定の長さで繊維をカットして、短繊維とすることもできる。
【0064】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を短繊維とする場合、平均繊維長は、0.1mm以上10.0mm以下が好ましい。平均繊維長を好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上とすることにより、不織布への加工工程において繊維が脱落しにくくなる。また、平均繊維長を好ましくは10.0mm以下、より好ましくは7.0mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下とすることにより、繊維同士が絡みにくくなり繊維の分散性が向上するため、不織布とした際に目付の均一性が向上する。
【0065】
ここで言う、繊維の平均繊維長とは、JIS L1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」の「8.4.1.平均繊維長(c直接法)」に基づき求めるものである。
【0066】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を短繊維とする場合、繊維径に対する繊維長(L)のアスペクト比(L/D)が5000以下であることが好ましい。アスペクト比は好ましくは3000以下、より好ましくは1000以下とすることにより、繊維同士が絡みにくくなり繊維の分散性が向上するため、不織布とした際に目付の均一性が向上する。
【0067】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は、長期耐熱性に優れるだけでなく、耐薬品性、機械的特性、電気絶縁性、難燃性を有していることから、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を含む不織布はこれらの特徴を活かして、水素製造装置隔膜、電池隔膜、電極用隔膜、およびこれら隔膜補強材などの隔膜用途、バグフィルター、薬液フィルター、食品用フィルター、ケミカルフィルター、オイルフィルター、エンジンオイルフィルター、空気清浄フィルターなどのフィルター用途、電気絶縁紙などの紙用途、消防服などの耐熱作業服用途、安全衣服、実験作業着、保温衣料、難燃衣料、抄紙用フェルト、耐熱性フェルト、離形材、抄紙ドライヤーカンバス、心臓パッチ、人工皮膚、プリント基板基材、コピーローリングクリーナー、イオン交換基材、オイル保持材、断熱材、クッション材、ネットコンベアーなどの各種用途に好適に使用することができ、特に薄地化や低目付化が求められている隔膜用途や紙用途として好ましく使用することができるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0068】
次に、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を含む不織布を製造する好ましい態様を具体的に説明する。
【0069】
上記のように得られたポリアリーレンスルフィド繊維からなる短繊維をバインダー繊維として用い、骨格繊維とともに水中に分散させることにより、抄紙液を調合する。なお、ポリアリーレンスルフィド湿式不織布において通常は骨格繊維として、ポリアリーレンスルフィド延伸繊維が用いられる。特にPPS延伸繊維が好ましい。
【0070】
本発明の骨格繊維の繊維径は、20.0μm以下が好ましい。また繊維径を好ましくは15.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下とすることにより、同一繊度や同一目付における繊維の構成本数が増加するため、優れた強度を有する不織布となり、骨格繊維の繊維径を細くすることによりより薄地の不織布を得ることができる。
【0071】
本発明の骨格繊維の繊維長は7mm以下3mm以上が好ましい。骨格繊維の繊維長を3mm以上、より好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上とすることにより、繊維同士の絡み合いが増加し、優れた強度を有する不織布となる。
【0072】
抄紙液中の骨格繊維に対するバインダー繊維の割合は、10質量%以上80質量%以下が好ましい。また、骨格繊維に対するバインダー繊維の割合を好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下とすることにより、適度な通気性や柔軟性を有した不織布となる。本発明のポリアリーレンスルフィド繊維は酸素含有基を有し、SEM-EDXで測定して求められるモル比O/Sの値が0.2~1.5であることから、水系媒体中への分散性に優れ、抄紙液中において均一に分散し、効率的に骨格繊維の間に入り込むことができる。
【0073】
上記の抄紙液を抄紙機に供給することにより、不織布を得ることができる。なお、供給する抄紙液の繊維濃度を調整することにより、得られる不織布の目付を変更することができる。
【0074】
上記のように得られた不織布は、水分を除去するために乾燥することが好ましい。乾燥温度としては、非晶部の結晶化による融着性の低下が起こらないように、70℃以下であることが好ましい。
【0075】
このようにして得られた不織布は、平板加熱プレス機もしくはカレンダーロールにて熱圧着することにより、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維により骨格繊維間の融着が生じ、力学特性に優れた不織布となる。熱圧着温度としては170℃以上250℃以下が好ましく、圧着時間は10分以内とすることが好ましい。熱圧着温度を好ましくは170℃以上とすることにより、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維の融着により、力学特性に優れた不織布となる。また、熱圧着温度を250℃以下とすることにより、熱圧着時の不織布の熱収縮によるシワの発生を抑制することができる。さらに、時間を10分以内とすることにより、過度な結晶化による不織布の柔軟性が低下するのを抑制することができる。
【0076】
本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を含む不織布は、上記の通り、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維が偏在化せず、均一に分散した抄紙液から得たものであるため、骨格繊維間の融着も均一になされていることから、力学特性が良好かつ均一となる。
【実施例0077】
次に、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前述の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0078】
(1)繊維径
走査型電子顕微鏡として株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S-5500」、画像解析ソフトとして三谷商事株式会社製「WinROOF2015」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0079】
(2)平均繊維長
JIS L1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」の「8.4.1.平均繊維長(c直接法)」に基づき、測定を行った。
【0080】
(3)融解熱量
TA Instruments社製の示差走査熱量計「DSC Q2000」を用い、前述のとおり測定を行った。
【0081】
(4)硫黄原子1モルに対する酸素原子のモル比(モル比O/S)
各実施例・比較例で作製したポリアリーレンスルフィド繊維を装置:Scanning Electron Microscope Energy Dispersive X-ray Spectroscopy(SEM-EDX)日立ハイテク走査型電子顕微鏡(SU1510)を用いて、加速電圧:15kVの条件で硫黄原子1モルに対する酸素原子のモル比を測定し、3回の測定値の単純な数平均を求め、小数点第3位を四捨五入した値を算出した。
【0082】
(5)厚み
ダイヤルシックネスゲージ(TECLOCK社 SM-114 測定子形状10mmφ、目量0.01mm、測定力2.5N以下)を用いてmm単位で測定し、湿式不織布シートの厚みを測定した。測定は1サンプルにつき任意の5ヶ所で行い、その平均の小数点第2位を四捨五入して小数点第1位まで求めた値を湿式不織布シートの厚みとした。
【0083】
(6)不織布の強度
各実施例・比較例で作製した不織布を、テンシロン(オリエンテック社製UTM-III-100)を用いて、試料幅15mm、初期長20mm、引張速度20mm/分の条件で最大点荷重の値を測定し、5回の測定値の単純な数平均を求め不織布の強度(N/25mm)を算出し、小数点第1位を四捨五入した。
【0084】
(7)目付
各実施例・比較例で作製した不織布を250mm×250mm角に切り出して重量を秤量し、単位面積(1m)当たりの重量に換算した値の小数点第1位を四捨五入して整数値としたものを湿式不織布シートの目付とした。
【0085】
(8)通気度
各実施例・比較例で作製した不織布について、JIS L1096:1990 6.27.1A法に規定されるフラジール法に基づいて測定した。25cm×25cmの試験片を3枚採取し、標準状態(20℃、65%相対湿度) に調湿後、5箇所選んで測定した平均の有効数字4桁目を四捨五入して有効数字3桁までとした値を通気度とした。試験圧力は125Pa、口径は50mmとした。
【0086】
(9)不織布の均一性指標
各実施例・比較例で得られた不織布に関し、(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX-2000にて透過照明のもと倍率100倍で画像を撮影した。この画像を、画像処理ソフト(WINROOF)を用いてモノクロ画像に変換し、級数を256とした輝度ヒストグラム(縦軸:頻度(画素の個数)、横軸:輝度)を得ることで、標準偏差を得た。同じ操作を10画像について行い、これらの単純な数平均値の小数点第2位を四捨五入した値を分散指標とし、以下の指標で評価した。
「20以下」:分散性良好、繊維束はほぼ無く一様に分散している状態。
「20より大きく26以下」:一部繊維束が残存しているが、ある程度分散している状態
「26より大きい」:分散性不良、繊維束が多く残存しており分散性が悪い状態。
【0087】
[参考例1]
p-フェニレンスルフィド単位のみからなるPPSを、150℃で12時間真空乾燥した後、紡糸温度330℃で溶融紡糸した。溶融紡糸においては、PPSを二軸エクストルーダーによって溶融押出しし、ギアーポンプで計量しつつ紡糸パックにPPSを供給した。その後、吐出孔を36孔有する口金より、単孔吐出量0.2g/分の条件でPPSを吐出させた。口金孔の直上に位置する導入孔はストレート孔とし、導入孔と口金孔の接続部分はテーパーとした紡糸口金を用いた。口金より吐出されたPPSは50mmの保温領域を通過させた後、ユニフロー型冷却装置を用いて温度25℃、風速18m/分の条件で1.0mに渡って空冷した。その後、油剤を付与し、36フィラメントともに1000m/分の第1ゴデットローラーおよび第2ゴデットローラーを介して、36フィラメントをワインダーにて巻き取り、未延伸繊維を得た。
【0088】
次いで、得られた未延伸繊維を、90℃に熱したローラー間で3.0倍に延伸した後、200℃に熱したローラーにて熱セットし、繊維径9μmのPPS延伸繊維を得た。
【0089】
その後、得られたPPS延伸繊維をカッターにて切断し、平均繊維長6.0mmの短繊維とした。
【0090】
[実施例1]
p-フェニレンスルフィド単位のみからなるPPSを島成分、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が5.0mol%共重合されたポリエチレンテレフタレートを海成分とし、島成分の形状が丸である海島型複合口金(島数1000)を用いて、海/島成分の複合比率を40/60として溶融吐出した糸条を冷却固化した後、油剤を付与し、紡糸速度1000m/minで巻き取ることで海島型複合断面を有した未延伸繊維を得た(単孔吐出量:2.6g/min)。
【0091】
次いで、得られた海島型複合繊維をカッターにて切断し、平均繊維長2.0mmの短繊維を得た。その後、得られた短繊維を、65℃に加熱した3質量%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1/100)にて溶解処理することで海成分を溶出させ、PPS繊維を得た。なお、水酸化ナトリウム水溶液中に、溶解促進剤としてライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製「DY-1125K(第四級アンモニウム塩)」を繊維質量に対して5質量%添加して処理を行った。
得られたPPS繊維を市販の過酢酸を使用した25℃の過酢酸水溶液(酢酸中9%過酢酸含有)中に繊維と過酢酸水溶液の浴比(繊維質量(g)/過酢酸水溶液質量(g))1/300で3分間浸漬した後、水洗、中和、水洗の各処理を施し、本発明のポリアリーレンスルフィド繊維を得た。
【0092】
バインダー繊維として上記のポリアリーレンスルフィド繊維を40質量%、骨格繊維として参考例1にて得られたPPS延伸繊維を60質量%の割合で水系媒体に混合し、繊維濃度が0.4質量%となるように調合した。この抄紙液を簡易抄紙機に供給し、目付20g/mの湿式不織布を得た。さらに、上記湿式不織布を120℃の熱風乾燥機内に投入して3分間乾燥処理し、次に空冷した後に220℃の平板加熱プレス機を用いて、プレス圧10MPaで3分間熱圧着を行った。
【0093】
本実施例で得られた繊維、および不織布の評価結果を表1に示す。
【0094】
[実施例2]
分散液中の繊維量(繊維濃度)を変更し、目付5g/mに変更した以外は、実施例1と同じ方法で不織布を得た。得られた繊維、および不織布の評価結果を表1に示す。
【0095】
[比較例1]
過酢酸水溶液に浸漬させる時間を300分に変更した以外は、実施例1と同じ方法で不織布を得た。得られた繊維、および不織布の評価結果を表1に示す。過酢酸水溶液への浸漬時間が長時間のため、PPS繊維が完全にPPSO化してPPSO繊維となっていた。
【0096】
[比較例2]
過酢酸水溶液への浸漬工程を行わない以外は、実施例1と同じ方法で不織布を得た。得られた繊維、および不織布の評価結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1で得られたポリアリーレンスルフィド不織布は骨材繊維にPPS延伸繊維、バインダー繊維に本発明のポリアリーレンスルフィド繊維の構成である。高いアスペクト比のバインダー繊維であっても繊維の一部が酸化処理により変性され酸素含有基が付与されているため分散液とした際の分散性がよく、その結果、バインダー繊維の分散性が高く高品質な不織布を提供している。
実施例2で得られたポリアリーレンスルフィド不織布は、実施例1より低目付の構成であるが、実施例1と同様に高いアスペクト比のバインダー繊維であっても分散性が高く高品質な不織布を提供している。
【0099】
比較例1で得られたポリアリーレンスルフィド不織布は、骨材繊維にPPS延伸繊維、バインダー繊維にPPSO繊維の構成であるが、バインダー繊維の全体がPPSO化しているため、不溶融性となり、バインダー繊維として機能していないため、十分な引張強度を有する不織布は得ることができなった。
【0100】
比較例2で得られたポリアリーレンスルフィド不織布は、骨材繊維とバインダー繊維ともにPPS繊維の構成である。バインダー繊維は高アスペクト比のため、繊維束が多く確認され、分散液中での分散性が悪かったため、実施例1と比較して分散指標が大きく、ムラが大きいものであった。そのため、高品質の不織布を得ることはできなかった。