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特開2024-51376ポリアミドマルチフィラメントおよびポリアミド仮撚り加工糸
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  • 特開-ポリアミドマルチフィラメントおよびポリアミド仮撚り加工糸 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051376
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ポリアミドマルチフィラメントおよびポリアミド仮撚り加工糸
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20240404BHJP
   D02G 1/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
D01F6/60 311Z
D01F6/60 301D
D02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157514
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勇太
(72)【発明者】
【氏名】坊野 嗣宜
(72)【発明者】
【氏名】高木 健太郎
【テーマコード(参考)】
4L035
4L036
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035EE20
4L035FF08
4L036MA06
4L036PA05
4L036PA07
(57)【要約】
【課題】 単糸繊度1.0detx以下の極細繊維で、衣料用途として使用した場合、ソフト感を発現させるとともに、適度な剛直性を付与することで、生地が擦れて発する衣ズレ音を低減し、染色での染め斑が少なく品位に優れる、ポリアミドマルチフィラメントを提供する。
【解決手段】 単糸繊度が0.2~1.0dtex、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上、15%伸長応力バラツキが2.9%以下、伸度が40~70%であるポリアミドマルチフィラメント。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が0.2~1.0dtex、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上、15%伸長応力バラツキが2.9%以下、伸度が40~70%であるポリアミドマルチフィラメント。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミドマルチフィラメントからなる仮撚り加工糸であって、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.65以上であるポリアミド仮撚り加工糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛とした際に衣ズレ音の発生が少ない、単糸繊度1.0dtex以下のポリアミドマルチフィラメントおよびその仮撚り加工糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成繊維であるポリアミド繊維やポリエステル繊維は、機械的・化学的性質において優れた特性を有することから衣料用途や産業用途などで幅広く利用されている。特に、ポリアミド繊維は、強度や耐摩耗性、肌触り、光沢性において優れた特性を有することから一般衣料製品等に広く使用されており、その耐摩耗性や高強度といった特性を活かして、スポーツ衣料やアウトドア衣料に向けて、盛んに利用されている。
【0003】
これらスポーツ衣料、アウトドア衣料分野においては、さらなる機能性の付与、着用快適性向上などが求められており、ハンティングなどの屋外アクティビティやゴルフ、ランニングなどのスポーツ時に着用するウェアでは、特有のニーズとして、シャカシャカ音(衣ズレ音)の抑制が求められている。
【0004】
衣ズレ音を抑制する主な方法として、生地を構成する糸条のズレを抑制し、衣ズレ音自体を抑制する方法(衣ズレ低減型)や、発生した衣ズレ音を当該生地が速やかに吸音し、周囲への拡散を防ぐ方法(吸音型)がある。
【0005】
衣ズレ低減型の抑制法は、生地を構成する糸条に剛直性の高い糸条を使用することで、生地が擦過された場合でも、生地を構成する糸条同士の交点が強固に固定されており、糸条のズレによる衣ズレ音の発生そのものを抑制する方法である。
【0006】
次に、吸音型の抑制法のメカニズムを説明する。織り編み物などの多孔質材料において、音波ができる貫通構造を持ち、内部に多数の微細空間を有する多孔質材料に音が入射すると、その空気振動(圧力変動)が直接材料内部のすきまに存在する空気に伝わる。ここで、繊維表面での空気の粘性摩擦が生じ、音のエネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、吸音作用を生じる。
【0007】
この吸音型衣ズレ音抑制技術に関して、例えば特許文献1には、単糸0.1~0.6デニールのポリアミド系マルチフィラメント糸を用いた、衣ズレ音の少ない透湿防水布が提案されている。特許文献1に記載の透湿防水布は、表面積の大きい単糸細繊度糸を用いた微細空隙の多い生地により、発生した衣ズレ音の吸収を図るものである。
【0008】
また同様に、特許文献2には単糸繊度0.3~1.0dtexのポリアミド繊維が、特許文献3には単糸繊度1.2dtex以下の仮撚り用ポリアミド繊維が記載されているが、特許文献1同様に、剛性の低い単糸細繊度に関する技術であり、生地の吸音効果により、一定の衣ズレ音抑制効果は認められる。
【0009】
さらに特許文献4には、単糸繊度0.1~0.5dtexのポリアミド極細繊維が記載されている。特許文献4では、単糸細繊度に起因する吸音効果を示し、紡糸後に2段給油を施すことで、糸揺れ抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5-338069号公報
【特許文献2】特開2021-25140号公報
【特許文献3】特開2009-84749号公報
【特許文献4】WO2012/073737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1~3記載では、生地を構成する糸条が柔らかく剛直性が低すぎるため、生地が強く擦れた際に生地中で糸条が動き易く、衣ズレ音の発生量が大きくなった。
【0012】
また、特許文献4記載では、2段給油を施すため、紡糸直後の糸条が完全に冷却される前に1段目の給油を施すものであり、糸条の急冷で剛直性が高まるので、生地が強く擦れた場合にも糸条の動きが小さく、衣ズレそのものを低減することで衣ズレ音が小さいと考えられる。
しかしながら、溶融紡糸ポリマが完全に冷え固まる前に低温の油剤を付与することから、糸条の長手方向や単糸間で冷却斑が生じ易く、繊維構造のバラツキが多い糸となり、染色時に染め斑など生地品位が低下する。
【0013】
本発明は、単糸繊度1.0detx以下の極細繊維に適度な剛直性を付与することで、衣料用途として使用した場合に、生地が擦れて発する衣ズレ音を抑制し、また染色での染め斑が少なく品位に優れる、ポリアミドマルチフィラメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、次の構成を有する。
(1)単糸繊度が0.2~1.0dtex、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上、15%伸長応力バラツキが2.9%以下、伸度が40~70%であるポリアミドマルチフィラメント。
(2)(1)に記載のポリアミドマルチフィラメントからなる仮撚り加工糸であって、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.65以上であるポリアミド仮撚り加工糸。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、単糸繊度0.2~1.0dtexの極細繊維でありながら適度な剛性を保持し、繊維構造のバラツキが小さい、衣料品として使用した際に、生地が擦れて発する衣ズレ音を低減し、また染色での染め斑が少なく品位に優れる、ポリアミドマルチフィラメント、ならびにポリアミド仮撚り加工糸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明のポリアミドマルチフィラメントの製造に用いる装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリアミドマルチフィラメントを構成するポリアミドは、ポリアミドのホモポリマーまたはコポリマーであり、これらのポリアミドは、ラクタム、アミノカルボン酸あるいはジアミンとジカルボン酸との塩から形成されるアミド結合を有する溶融成形可能な重合体である。
【0018】
ポリアミドとしては、種々のポリアミドを使用することができ特に限定されないが、繊維形成能および力学的特性の点で、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)が好ましい。
【0019】
これらナイロン6,ナイロン66などのポリアミドのコポリマーとしては、全単量体単位に対し20モル%以下の割合で他のアミノカプロン酸、ラクタムなどを共重合したものが使用できる。
【0020】
また、前記ポリアミドの硫酸相対粘度は、製糸安定性の観点から2.0~3.5であることが好ましく、より好ましくは2.4~3.0、さらに好ましくは2.5~2.7である。
【0021】
前記ポリアミドには各種の添加剤、たとえば、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを必要に応じて混合してもよい。
酸化チタンを0.02重量%~2.0重量%含有することで、紡糸や後加工での工程通過性向上、生地のギラつき低減が可能となり好ましい。
【0022】
本発明のポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度は0.2dtex~1.0dtexであり、好ましくは0.4dtex~0.8dtexである。単糸繊度が細いほど、衣料品とした際の、生地が擦れて発する衣ズレ音の低減効果は大きい。
単糸繊度を1.0dtex以下とすることで、繊維の表面積が大きくなり、織り編み物とした際に生地内部に多数の微細空間を形成し、発生した衣ズレ音を吸音することで、衣ズレ音を抑制する。
一方、紡糸時の生産安定性の観点から、単糸繊度の下限は0.2dtexである。
また、単糸繊度が1.0dtexを超えると、衣料品としてその織り編み物を使用した際の衣ズレ音は大きくなる。
【0023】
本発明のポリアミドマルチフィラメントの伸度は40%~70%であり、好ましくは60%以下である。
かかる範囲とすることで、製糸工程での操業性に優れ、巻き取り後の膨潤などの発生もなく、後工程では、仮撚り加工工程や製織、編み立て工程での張力が安定し、品位に優れた織り編み物を得ることができる。
【0024】
本発明のポリアミドマルチフィラメントは、応力-歪み曲線(S-Sカーブ)を描いた際の最大伸長応力(破断応力)と15%伸長応力の比が0.40以上であり、好ましくは0.65未満である。
最大伸長応力と15%伸長応力の比を0.40以上とすることで、糸条に適度な剛直性を持たせ、生地が擦れた際の糸条の動きを抑制し、生地が擦れて発する衣ズレ音が低減する。
最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40未満であると、糸条の剛直性が低く、生地中で糸条同士が重なり合う交点の固定が不十分となり、生地中で糸条が動き易くなることで衣ズレ音が増長する。
【0025】
本発明のポリアミドマルチフィラメントは、15%伸長応力のバラツキ(CV%)が2.9%以下であり、好ましくは2.6%以下である。15%伸長応力のバラツキを2.9%以下とすることで、染色での染め斑が少なく品位に優れる。15%伸長応力のバラツキが2.9%より大きいと、繊維構造バラツキに起因する染め斑が発生し、生地品位が低下する。
【0026】
本発明のポリアミドマルチフィラメント、ポリアミド仮撚り糸の総繊度は、15dtex~235dtexが好ましく、さらに好ましくは20dtex~92dtexである。
【0027】
本発明のポリアミドマルチフィラメント、ポリアミド仮撚り糸のフィラメント数は、単糸繊度が1.0dtex以下であれば任意に設定できる。フィラメント数は15本~235本が好ましく、さらに好ましくは24本~136本である。
【0028】
本発明のポリアミドマルチフィラメントの単糸断面形状は特に限定されるものではなく、例えば,丸断面の他、偏平断面、レンズ型断面、三葉断面、マルチローバル断面、3~8ヶの凸部と同数の凹部を有する異形断面、中空断面その他公知の異形断面でもよい。
【0029】
本発明のポリアミド仮撚り加工糸は、応力-歪み曲線(S-Sカーブ)を描いた際の最大伸長応力(破断応力)と15%伸長応力の比が0.65以上である。
最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.65未満であると、糸条の剛直性が低く、生地中で糸条同士が重なり合う交点の固定が不十分となり、生地中で糸条が動き易くなることで衣ズレ音を増長する。
【0030】
本発明のポリアミドマルチフィラメント、ポリアミド仮撚り糸の製造方法について説明する。
【0031】
本発明のポリアミドマルチフィラメントの製造方法について、好ましい一例を図1に示す。
ポリアミドを溶融し、
紡糸口金(1)の口金面に円周状に配された吐出孔から吐出し、
紡糸口金の下部にある、吐出された溶融紡糸糸条の外周方向に冷却風を吹き付ける外吹き環状冷却装置(2)を用いて、溶融紡糸糸条を均一に急冷するように1段目の冷却を施し、
次いで環状ガイド(3)にて糸条を規制した後、
一方向全面冷却装置(4)を用いて2段目の冷却を施し、
次いで集束ガイド型給油装置(6)にてフィラメント群(5)を集束させるとともに1段目の給油を行ない、
次いで交絡付与装置(7)にてインターレースを付与した後、
再度集束ガイド型給油装置(8)を用いて2段目の給油を行い、
ゴデッドローラー(9)(10)を介して、巻取装置(11)にて繊維製品パッケージ(12)に巻き取る1工程法が好ましい。なお、環状冷却装置としては、外吹きタイプと内吹きタイプに大別されるが、冷却効率やモノマー、オリゴマー吸引装置が取り付け可能などの条件から、外吹きタイプが好ましい。
【0032】
環状冷却装置は紡糸口金(1)の下方に配され、多数の吐出孔が環状に配列された口金面の中心から口金面の外周方向に向けて放射状に冷却された気流を送出、または、口金面の外周から中心方向に向けて冷却された気流を送出して、溶融紡糸された糸条を冷却する装置である。
かかる環状冷却装置を用いることで、溶融紡糸された糸条を均一かつ効率的に冷却することができ、紡糸口金から第一ゴデットローラー(1GR)までの糸条にかかる応力(紡糸張力)を高めることができ、繊維の配向性をコントロールして最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得ることができる。また、繊度変動(ウースター斑)も低減させることができる。
【0033】
また、冷却開始点距離、すなわち口金面から環状冷却装置における冷却風吹き出し部の上端までの距離は10mm~70mmであることが好ましく、さらに好ましくは10mm~50mmである。
冷却開始点距離を10mm以上とすることで、環状冷却装置から吹き出される冷却風が口金面にあたり口金面温度が低下することを防ぎ、繊維長手方向の吐出斑による15%伸長応力バラツキを抑制できる。さらに、紡糸糸切れや毛羽の発生も低減する。
また冷却開始点距離を70mm以下とすることで、溶融紡糸された糸条を冷却風により均一かつ急速に冷却することができ、紡糸口金から1GRまでの応力(紡糸張力)を高めて糸条の走行が安定化するとともに、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。
また、糸条間、繊維長手方向での繊維構造のバラツキを低減することができ、15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。さらに、ウースター斑も低減して織り編み物にしたときの品位に優れる。
【0034】
また、環状冷却装置から送出する冷却風温度は20℃以下が好ましく、さらに好ましくは15℃以下である。冷却風温度を20℃以下とすることで、紡糸張力が高まり糸条の走行が安定化するとともに、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。
また、15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。さらに、フィラメント群の冷却が効率的に行えるため、ウースター斑も低減して織り編み物にしたときの品位に優れる。
【0035】
環状冷却装置から送出する冷却風速は0.1m/秒~1.0m/秒が好ましく、さらに好ましくは0.2m/秒~0.8m/秒である。冷却風速を0.1m/秒以上とすることで、紡糸口金から1GRまでの応力(紡糸張力)を高めて糸条の走行が安定化するとともに、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。さらに、フィラメント群が十分に冷却されるため、集束ガイド型給油装置での擦過や給油での糸の急冷が生じにくく擦過による糸切れや、糸条間、繊維長手方向での繊維構造のバラツキを低減することができ、15%伸長応力バラツキ、ウースター斑が小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。さらに、冷却風速を1.0m/秒以下とすることで、糸揺れによる糸条干渉を抑制し、また、各フィラメントに過大な紡糸張力がかかることを防ぎ、集束ガイドでの擦過抵抗を低減して紡糸時の糸切れの少ない安定製糸が可能となる。さらに、ウースター斑を低減して織り編み物にしたときの品位に優れる。
【0036】
環状冷却装置から送出する冷却風によってフィラメント群が冷却される時間は0.001秒~0.01秒が好ましく、さらに好ましくは0.006秒以下である。
冷却時間の制御には、フィラメント群の通過速度を変化させる方法と冷却長を変化させる方法があり、いずれの方法でも冷却される時間が0.001秒以上とすることで、糸条の冷却固化を促進して紡糸口金から1GRまでの糸条にかかる応力(紡糸張力)を高めることができ、繊維の配向性をコントロールして最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。冷却時間が0.01秒以下となるようにフィラメント群の通過速度、冷却長を調整することで、効率良く生産できるとともに、糸揺れを低減して糸条干渉による糸切れ増加を防ぎ、ウースター斑増加を防ぐこともできる。
【0037】
環状冷却装置として外吹き環状冷却装置を使用する際は、環状冷却装置の下方に環状ガイド(3)を設置し、糸道を規制することが好ましい。
【0038】
口金面から環状ガイドまでの距離は、400mm~600mmであることが好ましい。環状ガイドの径サイズは、口金面の中心から、口金面に円周状に配置された吐出孔のうち、最内周に位置する吐出孔の中心までの距離を2倍した値(L)より5mm~15mm小径であることが好ましい。かかる範囲とすることで、糸条の適切な規制により環状冷却装置での冷却が効率的かつ均一に行えるため、糸条間、繊維長手方向での繊維構造のバラツキが小さくなり15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。さらに、糸条への過度な擦過を生じさせず、糸道を適正な状態に規制して糸条干渉による糸切れやウースター斑増加を防ぐこともできる。
【0039】
環状ガイドの材質は、フィラメント群の走行時に過度な抵抗を与えない限り限定されないが、セラミック製または梨地加工を施した金属製が好ましい。環状ガイドはセラミック製または梨地金属製とすることで、フィラメント群への擦過によるダメージが抑制できるため紡糸の操業性が安定する。また、環状ガイドでのフィラメント群のスティックスリップが生じづらく、繊維長手方向での繊維構造のバラツキが小さくなり15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。
【0040】
また、環状ガイドの表面は、乾燥状態であることが好ましい。表面を乾燥状態とすることで、フィラメント群が環状ガイドに接触した際、油分や水分によるフィラメント群の急冷が生じることもなく、繊維長手方向での繊維構造のバラツキが小さくなり15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。
【0041】
次に、環状冷却装置によって冷却固化されたフィラメント群を、さらに一方向全面冷却装置(4)から送出される冷却風によって冷却することが好ましい。
【0042】
一方向全面冷却装置は環状冷却装置の下方に配され、糸道に対して垂直方向全面に冷却された気流を送出して、フィラメント群を冷却する装置である。
環状冷却装置の下方に配することで、環状冷却によってフィラメント群の周りに発生した高温の随伴気流を垂直方向からの冷却風によって放出しながら効率的に冷却することができる。
【0043】
溶融紡糸されたフィラメント群は、集束ガイド型給油装置(6)での給油までに冷却固化され表面形態が安定した状態になるまで冷却することが望ましく、上記2段冷却の構成とすることで、糸条間、繊維長手方向での繊維構造バラツキが小さくなり、15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。
また、紡糸口金から1GRまでの糸条にかかる応力(紡糸張力)を高めることができ、繊維の配向性をコントロールして最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。繊維に適度な剛直性を付与することで、織り編み物に加工した際に糸条同士の拘束点が強固となり、衣料品に使用した際に衣ズレ音の発生を抑制することができる。
【0044】
一方向全面冷却装置から送出する冷却風温度は20℃以下が好ましく、さらに好ましくは15℃以下である。冷却風温度を20℃以下とすることで、紡糸張力を高めて糸条の走行が安定化するとともに、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。また、15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。さらに、フィラメント群の冷却が効率的に行えるため、ウースター斑も低減して織り編み物にしたときの品位に優れる。
【0045】
一方向全面冷却装置から送出する冷却風速は0.3m/秒~2.0m/秒が好ましく、さらに好ましくは1.5m/秒以下である。冷却風速を0.3m/秒以上とすることで、紡糸口金から1GRまでの応力(紡糸張力)を高めて糸条の走行が安定化するとともに、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。さらに、フィラメント群が十分に冷却されるため、集束ガイド型給油装置での擦過や給油での糸の急冷が生じにくく、擦過による糸切れや、糸条間、繊維長手方向での繊維構造のバラツキを低減することができ、15%伸長応力バラツキ、ウースター斑が小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。冷却風速を2.0m/秒以下とすることで、各フィラメントに過大な紡糸張力がかかることを防ぎ、集束ガイドでの擦過抵抗を低減して紡糸時の糸切れの少ない安定製糸も可能となる。
【0046】
一方向全面冷却装置から送出する冷却風によってフィラメント群が冷却される時間は好ましくは0.008秒~0.03秒であり、さらに好ましくは0.01秒~0.02秒である。環状冷却装置と同様に、フィラメント群の通過速度を変化させる方法と冷却長を変化させる方法にて冷却される時間を制御できる。いずれの方法でも、冷却される時間が0.008秒以上であることで、紡糸口金から1GRまでの応力(紡糸張力)を高めて糸条の走行が安定化するとともに、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブを描くマルチフィラメントが得られる。さらに、フィラメント群が十分に冷却されるため、集束ガイド型給油装置での擦過や給油での糸の急冷が生じにくく、擦過による糸切れや、糸条間、繊維長手方向での繊維構造のバラツキを低減することができて15%伸長応力バラツキの小さい、織り編み物へ加工した際に染め斑がなく品位に優れるマルチフィラメントが得られる。冷却される時間が0.03秒以下となるように1GR速度、冷却長を調整することで、効率良く生産できるとともに、糸揺れを低減して糸条干渉による糸切れ増加を防ぎ、ウースター斑増加も防ぐことができる。
【0047】
環状冷却装置、一方向全面冷却装置それぞれの冷却風温度、冷却風速、冷却時間を上記範囲とすることで、溶融紡糸されたフィラメント群の冷却固化が均一かつ適切に進み、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブが得られ、適度な剛直性を有し、織り編み物として衣料品に使用した際に衣ズレ音の発生を抑制することができるポリアミドマルチフィラメントが得られる。
【0048】
本発明のポリアミドマルチフィラメントの製造方法において、一方向全面冷却装置(4)から送出する冷却風によって冷却されたフィラメント群に、集束ガイド型給油装置(6)(8)から吐出される油剤を付与する。特に給油の回数は限定されないが、油分、水分の均一付加のため、1段目の給油の後、交絡を付与した後に2段目の給油を行うことが好ましい。
【0049】
本発明のポリアミドマルチフィラメントの製造方法において、給油した後の紡糸張力、引き取り速度、延伸倍率などの条件を適宜組み合わせることにより、伸度40~70%、最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブが得られるポリアミドマルチフィラメントが得られる。
【0050】
巻取装置(11)は、公知の装置を用いることができる。例えば、1GRにて2200m/分~5000m/分(紡糸張力、引き取り速度)で引き取り、次の第二ゴデットローラー(2GR)にて1.0倍~2.0倍(延伸倍率)に引き伸ばし、3000m/分以上、好ましくは3200m/分~5000m/分で巻き取ることで製造することができる。
【0051】
引取工程において、紡糸張力を0.4cN/dtex~0.8cN/dtexで1GRに引き取ることが好ましい。さらに好ましくは、0.5cN/dtex~0.8cN/dtexである。ここでいう紡糸張力とは、冷却装置後の1段目の集束ガイド型給油装置(6)から1GR(9)までの間で測定する値であり、通常は、1段目の集束ガイド型給油装置(6)から交絡付与装置(7)までの間で測定する値である。0.4cN/dtex以上とすることで、繊維の配向性をコントロールして最大伸長応力と15%伸長応力の比が0.40以上となるS-Sカーブが得られる。繊維に適度な剛直性を付与することで、織り編み物に加工した際に糸条同士の拘束点が強固となり、衣料品に使用した際に衣ズレ音の発生を抑制することができる。0.8cN/dtex以下とすることにより、過大なドラフト延伸を抑えることができ安定製糸が可能となる。この紡糸張力は引き取り速度、冷却風速・冷却風温度、給油位置の組み合わせによって調整することができる。
【0052】
本発明のポリアミド仮撚り加工糸は、本発明のポリアミドマルチフィラメントを用いて、通常の方法で仮撚り加工を施して得る。すなわちポリアミドマルチフィラメントパッケージから300m/分~800m/分で糸条を引き出し、150℃~200℃のヒーターにて0.05秒~0.50秒加熱され、1.1倍~1.3倍に延伸を行いながら延伸同時仮撚り加工を行う。この際、摩擦仮撚り具などを用いて延伸同時仮撚り加工を行う。その後、仮撚り加工糸の重量に対して1.0重量%~3.0重量%の油剤を付与する。また、油剤付与の前後で加工糸の収束性を向上する目的でインターレースを付与しても良い。
【実施例0053】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の各測定値は次の方法に従った。
【0054】
A.硫酸相対粘度
ポリアミドペレットを秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解し、該溶液についてオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。さらに試料を溶解していない98重量%濃硫酸について、同様に25℃での落下秒数(T2)を測定した後、試料の相対粘度(ηr)を下式により算出する。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000-C)}。
【0055】
B.総繊度および単糸繊度
1.0m/周の検尺器に繊維試料をセットし、500回転させて、ループ状かせを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃×60分)、天秤にてかせ質量を量り、公定水分率を乗じた値から総繊度を算出した。また、得られた総繊度をフィラメント数で割り返した値を単糸繊度とした。なお、実施例中で使用したナイロン66の公定水分率は、4.5%とした。
【0056】
C.15%伸長応力
繊維試料を、ORIENTEC社製TENSIRON RPC-1210Aを使用し、つかみ間隔50cmで把持し、50cm/分の引っ張り速度で伸長させ、57.5cmまで伸長させたときの応力を測定した。測定は3回実施し、その平均値を15%伸長応力とした。
【0057】
D.15%伸長応力のバラツキ
15%伸長応力を前記C.項の測定方法にて繊維試料1個につき3回測定し、その平均値とした。同様の測定を繊維試料50個について実施し、平均値(X)と標準偏差(σ)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散からなる算出されるものとしている。そして、CV(%)=σ/X×100(%)の関係式からCV(%)を算出した。算出した結果より2.9%以下を合格とした。
【0058】
E.伸度および強度、最大伸長応力
繊維試料を、ORIENTEC社製TENSIRON RPC-1210Aを使用し、つかみ間隔50cmで把持し、50cm/分の引っ張り速度で伸張させ、糸が破断した際の応力を最大伸長応力とした。また、最大伸長時の引っ張り長を50cmで割り、100を掛けた値を伸度とした。また、強度は糸が破断するまでの最大伸長応力を繊度で除した値とした。いずれも3回測定し、その平均値とした。
【0059】
F.15%伸長応力と最大伸長応力の比
前記C.項、E.項で得られた15%伸長応力ならびに最大伸長応力より、最大伸長応力に対する15%伸長応力の比(15%伸長応力/最大伸長応力)より算出する。
【0060】
G.環状冷却装置の冷却風速
風速は、KANOMAX社製クリモマスター風速計にて、以下測定条件で測定した。
環状冷却装置の上端から10mmの位置で、水平方向において90°間隔で4点の風速を測定し、その平均値とした。
【0061】
H.一方向全面冷却装置の冷却風速
風速は、KANOMAX社製クリモマスター風速計にて、以下測定条件で測定した。
環状冷却装置の上端から50mm、200mm、400mm、600mmの位置の4点で、吹き出し面に対して垂直方向の風速を測定し、4点の平均値とした。
【0062】
I.筒編み地作製・染色
筒編機へ繊維試料を給糸し、筒編機にて度目が50となるように調整して筒編み地を作製した。
得られた筒編み地1gに対し、ノニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ノイゲンSS)0.1g/l水溶液を100ml用意し、60℃にて15分洗浄した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
その後、以下の含金染料及び染色助剤を用いて染色した。
含金染料:BASF社製パラチンファストブラック
染色助剤:酢酸 1.5%
酸性染料、染色助剤を含む染色浴に[常圧、90℃]の設定で45分間染色した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
【0063】
J.染め差バラツキ
測色計(スガ試験機株式会社製SM-P)を用いて、前記I.項で作製した染色筒編み地のL値を測定した。染色筒編み地の任意の50点を測定し、平均値(X)、標準偏差(σ)を算出した。なお、標準偏差は不偏分散からなる算出されるものとしている。そして、CV(%)=σ/X×100(%)の関係式からCV(%)を算出した。算出した結果より1.9%以下を合格とした。
【0064】
K.布帛作製
経糸および緯糸に、同一の繊維試料を用いて、打ち込み長180cmの平織物を作製した。作成した平織物の布帛を、精練(90℃×20分)、染色(酸性染料、Mitsui Nylon Black GL)、熱セット(160℃×60秒)を実施し、評価用布帛とした。
【0065】
L.衣ズレ音
前記K.項で作製した布帛を、布帛の表面同士が重なるように両手で挟み、親指を除く4本の指先を当てて、1方向に2往復/秒の速度で10秒間こすった。この際の音量を集音計(リオン(株)社製騒音計NL-42)を用いて、経糸方向、緯糸方向、それぞれ測定した。
周囲のノイズが少ないチャンバー内で、無作為に選ばれた被験者5名が実施して、測定した5データ/1方向の平均値を衣ズレ音とした。
測定した結果より、経糸方向4.5dB以下、緯糸方向3.5dB以下を合格とした。
【0066】
[実施例1]
98%硫酸相対粘度が2.6で酸化チタンを0.3重量%含有したナイロン66を、紡糸温度294℃で溶融した後、口金面の中心から、口金面に円周状に配置された吐出孔のうち最内周に位置する吐出孔の中心までの距離を2倍した値(L)が78mmである、丸形吐出孔を環状に98個配列した紡糸口金から吐出させ(吐出量:20.775g/分)、
外吹き環状冷却装置を用いて、15℃の冷却風を風速0.5m/秒で、走行糸に対して垂直に当てて0.005秒冷却し、口金面から鉛直下方510mmの位置に設置したφ69mmのセラミック製環状ガイドにて糸道規制した後、
一方向全面冷却装置を用いて、15℃の冷却風を風速0.8m/秒で、走行糸に対して垂直に当てて0.014秒冷却し、
1段目の集束ガイド型給油装置によりエマルジョン油剤を付与した。
【0067】
次いで、交絡圧空圧0.25MPaにて交絡を付与し、
2段目の集束ガイド型給油装置にて再びエマルジョン油剤を付与した後、
第一ゴデットローラーに片掛けして3971m/分で引き取り(紡糸張力0.66cN/dtex)、巻き取ること無く、周速4050m/分の第二ゴデットローラーに片掛けして、第一と第二ゴデットローラー間で1.02倍に延伸、巻取速度3900m/分で巻き取り、55.4dtex、98フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0068】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを3軸摩擦型フリクションディスクタイプの延伸摩擦仮撚装置にて仮撚加工を行った。
得られたナイロン66マルチフィラメントを、周速460m/分の供給ローラーから、180℃に加熱された接触型仮撚ヒーターに供給し、1.18倍に延伸、D/Y比1.55にて延伸同時仮撚り加工を行い、46.4dtex、98フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。
【0069】
得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2]
丸形吐出孔を環状に136個配列した紡糸口金から吐出させ、表1の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、56.3dtex、136フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0071】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.17倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、46.8dtex、136フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例3]
1GRに片掛けして3580m/分で引き取り、巻き取ること無く、170℃で加熱している周速4094m/分の2GRに片掛けして、1GR,2GR間で1.14倍に延伸、熱セットした後、巻取速度3900m/分で巻き取り、表1の通り製糸条件を調整した以外は、実施例1と同様の製造方法で54.3dtex、98フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。得られたナイロン66マルチフィラメントの特性評価、および布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例4]
98%硫酸相対粘度が2.7で酸化チタンを含まないナイロン6を紡糸温度282℃で溶融し、内吹き環状冷却装置を用いて冷却し、表1の通り製糸条件を調整した以外は、実施例1と同様の製造方法で16.1dtex、24フィラメントのナイロン6マルチフィラメントを得た。得られたナイロン6マルチフィラメントの特性評価、および布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例5]
ナイロン66の吐出量を調整し、表1の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、22.8dtex、98フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0075】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.14倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、20.0dtex、98フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例6]
丸形吐出孔を環状に136個配列した紡糸口金から吐出させ、吐出量を調整し、表1の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、92.1dtex、136フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0077】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.22倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、75.5dtex、136フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例7]
丸形吐出孔を環状に68個配列した紡糸口金から吐出させ、吐出量を調整し、表1の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、66.0dtex、68フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0079】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.19倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、55.5dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
[比較例1]
冷却装置を外吹き環状冷却装置のみとし、表2の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、54.6dtex、98フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0082】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを実施例1と同様の加工方法で、46.3dtex、98フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66原糸およびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表2に示す。衣ズレ音は合格レベルとなったが、原糸の15%バラツキが大きく、染め差バラツキが不合格となった。
【0083】
[比較例2]
丸形の吐出孔を40個有する紡糸口金から吐出させ、一方向全面冷却装置のみの1段冷却にて冷却し、表2の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、55.6dtex、40フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0084】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.20倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、47.4dtex、40フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表2に示す。染め差バラツキは合格となったが、衣ズレ音が大きく不合格となった。
【0085】
[比較例3]
冷却装置を外吹き環状冷却装置のみとし、環状冷却装置下の環状ガイドからフィラメント群へ給油を行い、表2の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、54.8dtex、98フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0086】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを実施例1と同様の加工方法で、46.4dtex、98フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表2に示す。衣ズレ音は合格レベルとなったが、冷却過程での油剤付与による急冷によって、原糸の15%バラツキが大きく、染め差バラツキが不合格となった。
【0087】
[比較例4]
丸形吐出孔を環状に68個配列した紡糸口金から吐出させ、吐出量を調整し、表2の通り製糸条件を調整した以外は実施例1と同様の製造方法で、82.8dtex、98フィラメントのナイロン66マルチフィラメントを得た。
【0088】
次いで、得られたナイロン66マルチフィラメントを1.21倍に延伸した以外は実施例1と同様の加工方法で、68.4dtex、68フィラメントのナイロン66仮撚り加工糸を得た。得られたナイロン66マルチフィラメントおよびナイロン66仮撚り加工糸の特性評価、ならびに得られた布帛の衣ズレ音評価を実施した。結果を表2に示す。染め差バラツキは合格となったが、衣ズレ音が大きく不合格となった。
【0089】
【表2】
【符号の説明】
【0090】
1:紡糸口金
2:外吹き環状冷却装置(1段目冷却)
3:環状ガイド
4:一方向全面冷却装置(2段目冷却)
5:フィラメント群
6:集束ガイド型給油装置(1段目給油)
7:交絡付与装置
8:集束ガイド型給油装置(2段目給油)
9:第一ゴデットローラー
10:第二ゴデットローラー
11:巻取装置
12:繊維製品パッケージ
図1