(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051379
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ゴルフクラブのフィッティング装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157518
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 佑斗
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 弘祐
(72)【発明者】
【氏名】南家 健太
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(57)【要約】
【課題】 ドライバーによるスイング動作の計測により、ドライバーとは異なる種類のゴルフクラブのシャフトをフィッティングして表示可能なフィッティング装置等を提供する。
【解決手段】 ゴルフクラブのフィッティング装置である。この装置は、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作の計測値を取得する取得部と、スイング指標を算出する算出部と、第1のゴルフクラブのシャフトの第1の最適剛性指標を決定する決定部と、第1の最適剛性指標から、ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの第2の最適剛性指標33に変換する変換部と、第2のゴルフクラブの複数のシャフトの第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部と、第2の最適剛性指標33に近似したシャフトを選択する選択部と、第2の最適剛性指標33の第1モデル
図41、及び、選択されたシャフトの第2の剛性指標32の第2モデル
図42を同一画面内に表示させる表示部とを含む。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティング装置であって、
前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する取得部と、
前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する算出部と、
前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する決定部と、
前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する変換部と、
前記第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部と、
前記シャフト記憶部から前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する選択部と、
前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる表示部とを含む、
フィッティング装置。
【請求項2】
前記第2のゴルフクラブが、アイアンゴルフクラブである、請求項1に記載のフィッティング装置。
【請求項3】
前記第1モデル図は、前記シャフトの軸方向の位置と前記曲げ剛性との関係を示す折れ線グラフであり、
前記第1モデル図は、前記表示装置の第1表示エリアに表示され、
前記第1表示エリアは、縦軸に曲げ剛性を、横軸に前記シャフトの軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアである、請求項1又は2に記載のフィッティング装置。
【請求項4】
前記変換部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲を超えるときに、前記第1モデル図が前記第1表示エリア内に収まるように、前記第1モデル図を変形又は前記第1表示エリアに対して移動させる第1変形処理部を含む、請求項3に記載のフィッティング装置。
【請求項5】
前記第1変形処理部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記最大値及び前記最小値のうち、前記曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値を変更する、請求項4に記載のフィッティング装置。
【請求項6】
前記第1変形処理部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記第1の最適剛性指標の各曲げ剛性に係数を乗じる、請求項4に記載のフィッティング装置。
【請求項7】
前記変換部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内に対して予め定めた範囲で小さいときに、前記第1モデル図が前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内でより広い範囲に表示されるように、前記第1モデル図を変形させる第1変形処理部を含む、請求項3に記載のフィッティング装置。
【請求項8】
前記第2モデル図は、前記第2のゴルフクラブの前記シャフトの軸方向の位置と前記曲げ剛性との関係を示す折れ線グラフであり、
前記第2モデル図は、前記表示装置の第2表示エリアに表示され、
前記第2表示エリアは、縦軸に曲げ剛性を、横軸に前記シャフトの軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアである、請求項1又は2に記載のフィッティング装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲を超えるときに、前記第2モデル図が前記第2表示エリア内に収まるように、前記第2モデル図を変形又は前記第2表示エリアに対して移動させる第2変形処理部を含む、請求項8に記載のフィッティング装置。
【請求項10】
前記第2変形処理部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記最大値及び前記最小値のうち、前記曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値を変更する、請求項9に記載のフィッティング装置。
【請求項11】
前記第2変形処理部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記第2の剛性指標の各曲げ剛性に係数を乗じる、請求項9に記載のフィッティング装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内に対して予め定めた範囲で小さいときに、前記第2モデル図が前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内でより広い範囲に表示されるように、前記第2モデル図を変形させる第2変形処理部を含む、請求項8に記載のフィッティング装置。
【請求項13】
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティングシステムであって、 第1のゴルフクラブのスイング動作を計測する計測機器と、
請求項1又は2に記載のフィッティング装置と、
第2の最適剛性指標を表す第1モデル図及び第2の剛性指標を表す第2モデル図を表示する表示装置と、
を備えるフィッティングシステム。
【請求項14】
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティング方法であって、
前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する工程と、
前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する工程と、
前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する工程と、
前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する工程と、
前記第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部から、前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する工程と、
前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる工程とを含む、
フィッティング方法。
【請求項15】
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのコンピュータプログラムであって、 コンピュータを、
前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する手段と、
前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する手段と、
前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する手段と、
前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する手段と、
前記第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部から、前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する手段と、
前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる手段として機能させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブのフィッティング装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルファーによるテストクラブのスイング動作を計測機器により計測し、当該計測値に基づいて当該ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するフィッティング方法が種々提案されている。下記特許文献1には、ゴルファーによるドライバーのスイング動作の計測値に基づいて、ゴルファーに適したドライバーのシャフトが決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、ドライバーによるスイング動作の計測からフィッティングできるゴルフクラブシャフトは、ドライバー用に限定される。一方、フィッティング現場では、スイング動作の計測に十分な時間を費やせないこともある。したがって、ドライバーによるスイング動作の計測により、例えば、アイアンゴルフクラブといったドライバーとは異なるゴルフクラブのシャフトもフィッティングできれば非常に便利である。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、ドライバーによるスイング動作の計測により、ドライバーとは異なる種類のゴルフクラブのシャフトをフィッティングして表示可能なフィッティング装置等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティング装置であって、前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する取得部と、前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する算出部と、前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する決定部と、前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する変換部と、前記第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部と、前記シャフト記憶部から前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する選択部と、前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる表示部とを含む、フィッティング装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴルフクラブのフィッティング装置は、上記の構成を採用したことにより、ドライバーからなる第1のゴルフクラブによるスイング動作の計測により、ドライバーとは異なる種類のゴルフクラブのシャフトをフィッティングして表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のゴルフクラブのフィッティングシステムを示す全体構成図である。
【
図2】本実施形態のフィッティングシステムのブロック構成図である。
【
図4】本実施形態のフィッティング方法の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】(a)~(d)は、ゴルファーによる第1のゴルフクラブのスイング動作を示す図である。
【
図6】本実施形態の算出工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】スイング中のシャフトの撓みの挙動を説明する図である。
【
図8】スイングにおける時間経過とコック方向の角速度との関係を示すグラフである。
【
図9】本実施形態の決定工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】第1のゴルフクラブのシャフトの平面図である。
【
図11】各スイング特徴量と、それに適するシャフトの軸方向の各位置でのEI値との関係を示すグラフである。
【
図12】EI値-IFC変換表の一例が示されている。
【
図13】第1の最適剛性指標を表す第1モデル図である。
【
図14】第2のゴルフクラブのシャフトの重量を決定するためのマップである。
【
図15】本実施形態の変換工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図16】本実施形態の第1変形工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】(a)は、係数が乗じられる前の第1モデル図、(b)は、係数が乗じられた後の第1モデル図、(c)は、移動後の第1モデル図である。
【
図18】第1収納工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図19】(a)は、曲げ剛性の値が変更される前の第1モデル図、(b)は、曲げ剛性の値が変更された後の第1モデル図、(c)は、移動後の第1モデル図である。
【
図20】(a)は、曲げ剛性が調整される前の第1モデル図、(b)は、曲げ剛性が小さく調整された第1モデル図である。
【
図21】(a)は、曲げ剛性が調整される前の第1モデル図、(b)は、曲げ剛性が小さく調整された第1モデル図である。
【
図22】本実施形態の選択工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図23】シャフトの軸方向の位置と曲げ剛性(IFC)との関係を示すグラフ(折れ線グラフ)である。(a)は、理想シャフトの曲げ剛性の分布であり、(b)及び(c)は、候補シャフトの曲げ剛性の分布である。
【
図25】本実施形態の表示工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図26】本実施形態の第2変形工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図27】本実施形態の第2収納工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図28】本発明の他の実施形態の第1収納工程の処理手順を示すフローチャートである。
【
図29】(a)は、係数が乗じられる前の第1モデル図、(b)は、係数が乗じられた後の第1モデル図である。
【
図30】本発明の他の実施形態の第2収納工程の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
[ゴルフクラブのフィッティングシステム]
本実施形態のゴルフクラブのフィッティング装置及びフィッティングシステム(以下、これらを単に「フィッティング装置」及び「フィッティングシステム」ということがある。)は、ゴルファーに適したゴルフクラブの選定に用いられる。本実施形態では、フィッティングを希望するゴルファーについて、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作が計測される。そして、そのスイング動作の計測値に基づいて、ドライバー(第1のゴルフクラブ)及びドライバーとは異なる種類のゴルフクラブのシャフトの双方がフィッティングされ、それらを比較することが可能とされる。
【0011】
第2のゴルフクラブは、ドライバーと異なるものであれば、特に限定されるわけではなく、一例として、アイアンゴルフクラブ、ユーティリティ、及び、フェアウエイウッドが挙げられる。本実施形態では、第2のゴルフクラブとして、アイアンゴルフクラブである場合が例示される。
【0012】
図1は、本実施形態のゴルフクラブのフィッティングシステム1を示す全体構成図である。
図2は、本実施形態のフィッティングシステム1のブロック構成図である。本実施形態のフィッティングシステム1は、計測機器2と、フィッティング装置3と、表示装置4とを含んで構成されている。フィッティングシステム1(フィッティング装置3)は、ゴルファー5に適したゴルフクラブを選定するためのフィッティング方法の実行に用いられる。
【0013】
[計測機器]
計測機器2は、
図1に示したゴルファー5による第1のゴルフクラブ6のスイング動作を計測して、その計測値を取得するためのものである。本実施形態の計測機器2は、第1のゴルフクラブ6に取り付けられたスイングセンサ2Aとして構成されている。第1のゴルフクラブ6は、例えば、グリップ8、シャフト9及びヘッド10を含み、一般的なドライバーとして構成されている。
【0014】
本実施形態のスイングセンサ2Aは、例えば、第1のゴルフクラブ6のグリップ8又はシャフト9に着脱自在とされている。スイングセンサ2Aは、ゴルファー5のスイング動作を妨げないように、小型かつ軽量に構成されるのが望ましい。
【0015】
本実施形態のスイングセンサ2Aは、スイング動作中の第1のゴルフクラブ6から、所定の物理量(計測値)の計測が可能とされている。
図2に示されるように、本実施形態のスイングセンサ2Aには、角速度計測部2aと、加速度計測部2bと、地磁気計測部2cとが含まれている。これにより、スイングセンサ2Aは、上記の特許文献1と同様に、スイング中の第1のゴルフクラブ6のグリップ角速度、グリップ加速度、及び、グリップ地磁気の計測が可能となる。なお、スイングセンサ2Aは、これらの物理量以外に、他の物理量が計測可能とされていてもよい。
【0016】
本実施形態のスイングセンサ2Aでは、
図1に示した第1のゴルフクラブ6に関連付けられた3次元の局所座標系の少なくとも1軸回りにおいて、グリップ角速度、グリップ加速度及びグリップ地磁気が計測される。局所座標系のx軸は、ヘッド10のトウ・ヒール方向に設定されている。局所座標系のy軸は、フェース面の法線方向に設定されている。局所座標系のz軸は、第1のゴルフクラブ6のシャフト9の軸方向に設定されている。本実施形態では、スイング動作中において、上記の3軸それぞれの周りのグリップ角速度、グリップ加速度、及び、グリップ地磁気が、所定のサンプリング周期(例えば、1ミリ秒)で計測されうる。
【0017】
図2に示されるように、本実施形態のスイングセンサ2Aには、フィッティング装置3に、計測値を送信するための通信部2dが含まれている。本実施形態では、1回のスイング動作(1球打つ)ごとに、計測値が送信可能とされている。
【0018】
通信部2dは、スイング動作の妨げないように、無線方式が好ましい。他の態様では、通信部2dは、有線方式であっても良い。また、スイングセンサ2Aは、取り外し可能な記憶媒体(図示省略)が含まれていてもよい。このような記憶媒体により、スイング動作の計測値が記憶され、かつ、その記憶された計測値がフィッティング装置3に取り込まれうる。
【0019】
[フィッティング装置]
フィッティング装置3は、例えば、コンピュータ12によって構成される。コンピュータ12の一例には、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、及び、クラウドサーバ等が挙げられる。本実施形態のコンピュータ12には、デスクトップ型コンピュータが採用される。
【0020】
図2に示されるように、本実施形態のフィッティング装置3は、例えば、入力装置13と、通信装置14と、演算処理装置15とを含んで構成されている。
【0021】
入力装置13には、例えば、
図1に示したキーボード13aやマウス13b等が用いられる。このような入力装置13により、
図2に示した演算処理装置15に、フィッティング方法の実行に必要な命令等が入力されうる。
【0022】
[通信装置]
図2に示されるように、本実施形態の通信装置14は、スイングセンサ2Aの通信部2dと、通信可能に接続されている。このような通信装置14により、スイングセンサ2Aで取得された計測値を受信して、受信した計測値がフィッティング装置3に取り込まれうる。なお、上述の記憶媒体(図示省略)を介して、フィッティング装置3に計測値が取り込まれる場合には、その記憶媒体に記憶された計測値を読み取り可能な装置(図示省略)が、フィッティング装置3に設けられてもよい。
【0023】
[演算処理装置]
本実施形態の演算処理装置15は、例えば、各種の演算を行う演算部(CPU)16、データやプログラム等が記憶される記憶部17、及び、作業用メモリ18を含んで構成されている。
【0024】
[記憶部]
記憶部17は、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。本実施形態の記憶部17には、データ部19及びプログラム部20が含まれる。
【0025】
[データ部]
データ部19は、ゴルフクラブの選定に必要なデータ(情報)や、算出結果等を記憶するためのものである。本実施形態のデータ部19には、計測値入力部19a、第1変換値入力部19b、第2変換値入力部19c、及び、肩挙動入力部19dが含まれる。さらに、データ部19には、スイング指標入力部19e、最適指標入力部19f、選択シャフト入力部19g、データ入力部19h及びシャフト記憶部19iが含まれる。なお、データ部19は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、その他のデータを記憶するためのものが含まれてもよい。これらのデータ部19に入力されるデータの詳細は、以下のシャフト記憶部19iを除いて後述される。
【0026】
シャフト記憶部19iには、第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布(以下、単に「曲げ剛性の分布」ということがある。)を示す第2の剛性指標が記憶されている。複数のシャフトの本数は、適宜設定されうる。ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフトを確実に選択するために、例えば、50~150本分のシャフトの第2の剛性指標が記憶されているのが好ましい。
【0027】
第2の剛性指標は、曲げ剛性の分布を示すものであれば、特に限定されない。本実施形態の第2の剛性指標には、IFC(International Flex Code)が用いられる。IFCは、第2のゴルフクラブのシャフトの軸方向の各位置でのEI値(理想的な曲げ剛性値)の範囲を特定するための指標である。IFCは、本出願人により広く提案されているシャフトの特性を示す公知の指標である。このようなIFCは、例えば、上記の特許文献1や、特許文献(特許第6087132号公報)をはじめとして、既に様々な文献で詳しく説明されている。
【0028】
シャフト記憶部19iには、第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれの重量がさらに記憶されていてもよい。これにより、例えば、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯が決定されることで、その重量帯に合致するシャフトの選択が可能となる。
【0029】
[プログラム部]
プログラム部20は、ゴルフクラブの選定に必要なプログラム(コンピュータプログラム)である。このプログラム部(プログラム)20が、演算部16によって実行されることにより、コンピュータ12を、特定の手段として機能させることができる。
【0030】
本実施形態のプログラム部20には、取得部20a、第1変換部20b、第2変換部20c、肩挙動導出部20d、算出部20e、決定部20f、選択部20g、表示部20h及び変換部20iが含まれる。
【0031】
図3は、本実施形態の変換部20i及び表示部20hのブロック図である。本実施形態の変換部20iには、第1変形処理部25が含まれる。一方、表示部20hには、第2変形処理部26が含まれる。
【0032】
プログラム部20は、
図2及び
図3に示した態様に限定されるわけではなく、例えば、これらの一部が省略されてもよいし、その他の機能を有するプログラム部(図示省略)が含まれてもよい。これらのプログラム部20の機能の詳細は、後述される。
【0033】
[表示装置]
表示装置4は、後述の第1モデル図及び第2モデル図を表示するためのものである。本実施形態の表示装置4は、ディスプレイ装置で構成されているが、例えば、プリンタ装置等で構成されてもよい。
【0034】
[フィッティング方法]
次に、本実施形態のフィッティング方法が説明される。
図4は、本実施形態のフィッティング方法の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態のフィッティング方法の各工程は、
図1~
図3に示したフィッティング装置3(コンピュータ12)によって実行される。
【0035】
[第1のゴルフクラブのスイング動作の計測値を取得]
本実施形態のフィッティング方法では、先ず、
図1に示したゴルファー5による第1のゴルフクラブ6のスイング動作を計測した計測値が取得される(工程S1)。本実施形態では、第1のゴルフクラブ6に取り付けられた計測機器2(スイングセンサ2A)によって、スイング動作が計測(計測値が取得)される。
【0036】
本実施形態の工程S1では、先ず、
図2に示したプログラム部20に含まれる取得部20aが、作業用メモリ18に読み込まれる。取得部20aは、第1のゴルフクラブ6のスイング動作の計測値を取得するためのプログラムである。この取得部20aが、演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、スイング動作の計測値を取得するための手段として機能させることができる。
【0037】
本実施形態の工程S1では、
図1に示したスイングセンサ2Aが取り付けられた第1のゴルフクラブ6が、フィッティングを希望するゴルファー5によって把持される。第1のゴルフクラブ6は、ドライバーであれば、特に限定されない。第1のゴルフクラブ6は、特許文献1と同様に、例えば、プロ仕様のプロモデルクラブ、アベレージユーザーに適したアベレージモデルクラブ、及び、ゴルファー5が所有するマイクラブ等のうち、ゴルファー5の好みや経験等に基づいて適宜選択されてもよい。
【0038】
次に、本実施形態の工程S1では、第1のゴルフクラブ6を把持したゴルファー5により、スイング動作が行われる。スイング動作には、例えば、ゴルフボール21の打撃動作が含まれる。これにより、スイング動作中の計測値が、スイングセンサ2Aによって計測される。本実施形態では、xyz局所座標系において、グリップ加速度ax、ay、az、グリップ角速度ωx、ωy、ωz、及び、グリップ地磁気mx、my、mzが、それぞれ計測される。
【0039】
スイングセンサ2Aによって計測された計測値は、
図2に示した通信部2dを介して、フィッティング装置3の通信装置14に送信される。これにより、計測値が通信装置14によって受信され、受信された計測値が、取得部20aによって、データ部19の計測値入力部19aに記憶される。本実施形態では、1回のスイング動作(1球打つ)ごとに、スイングセンサ2Aから通信装置14に計測値に送信され、かつ、その計測値が計測値入力部19aに記憶される。
【0040】
図5(a)~(d)には、ゴルファー5による第1のゴルフクラブ6のスイング動作が示されている。本実施形態では、スイング動作のうち、
図5(a)に示したアドレスから、
図5(b)に示したトップを経て、
図5(c)に示したインパクトまでの時系列の計測値が取得されるのが好ましい。なお、計測値は、
図5(a)に示したアドレス時から、
図5(d)に示したフィニッシュまで取得されてもよい。また、スイング動作の回数は、特に限定されないが、例えば、2回以上、好ましくは3回以上、さらに好ましくは5回以上が望ましい。この場合、複数回取得されたスイング動作の計測値が平均され、その平均値が以降の演算に使用されうる。また、上記特許文献1と同様に、ミスショットや計測ミス等による異常値が取り除かれるのが好ましい。
【0041】
[計測データを全体座標系の値に変換]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、計測データの局所座標系の値が、全体座標系の値に変換される(工程S2)。
【0042】
本実施形態の工程S2では、先ず、
図2に示す計測値入力部19aに入力された計測値が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、プログラム部20に含まれる第1変換部20bが、作業用メモリ18に読み込まれる。この第1変換部20bは、計測データの局所座標系の値を、全体座標系の値に変換するためのプログラムである。この第1変換部20bが演算部16によって実行されることで、計測データの局所座標系の値を、全体座標系の値に変換するための手段として、コンピュータ12を機能させることができる。
【0043】
本実施形態の全体座標系は、
図1に示した3軸直交座標系として定義される。X軸は、ゴルファー5の奥行方向(腹から背に向かう方向)である。Y軸は、地平面に平行でボールの打球地点から目標地点に向かう方向(飛球線方向)である。Z軸は、鉛直下方から上方に向かう方向(高さ方向)である。
【0044】
本実施形態の工程S2では、局所座標系で計測されたグリップ加速度ax、ay、azが、全体座標系でのグリップ加速度aX、aY、aZに変換される。さらに、局所座標系で計測されたグリップ角速度ωx、ωy、ωzが、全体座標系でのグリップ角速度ωX、ωY、ωZに変換される。
【0045】
本実施形態の工程S2では、全体座標系に変換されたグリップ加速度a
X、a
Y、a
Zの時系列データ(
図5(a)~(c)に示したアドレスからインパクトまでの時系列データ)が積分される。これにより、アドレスからインパクトまでの全体座標系でのグリップ速度v
X、v
Y、v
Zが導出される。この導出されたグリップ速度v
X、v
Y、v
Zと、上述の変換されたグリップ角速度ω
X、ω
Y、ω
Zとが、全体座標系でのグリップ8の挙動として扱われる。
【0046】
本実施形態において、全体座標系への変換、及び、グリップ速度v
X、v
Y、v
Zの導出は、例えば、上記特許文献1の第1変換工程に記載の手順に基づいて実施されうる。全体座標系でのグリップ加速度a
X、a
Y、a
Z、グリップ角速度ω
X、ω
Y、ω
Z、及び、グリップ速度v
X、v
Y、v
Zは、第1変換値入力部19b(
図2に示す)に記憶される。
【0047】
[スイング平面内でのグリップの挙動に変換]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、全体座標系でのグリップ8の挙動(グリップ角速度ω
X、ω
Y、ω
Z、及び、グリップ速度v
X、v
Y、v
Z)が、スイング平面22(
図1に示す)内でのグリップ8の挙動に変換される(工程S3)。
【0048】
本実施形態の工程S3では、先ず、
図2に示す第1変換値入力部19bに入力された全体座標系でのグリップ角速度ω
X、ω
Y、ω
Z、及び、グリップ速度v
X、v
Y、v
Zが、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、プログラム部20に含まれる第2変換部20cが、作業用メモリ18に読み込まれる。この第2変換部20cは、
図1に示した全体座標系でのグリップ8の挙動を、スイング平面22内でのグリップ8の挙動へと変換するためのプログラムである。この第2変換部20cが演算部16によって実行されることで、全体座標系でのグリップ8の挙動を、スイング平面22内でのグリップ8の挙動へと変換するための手段として、コンピュータ12を機能させることができる。
【0049】
スイング平面22(
図1に示す)は、上記特許文献1と同様に、全体座標系の原点を含み、Y軸及びインパクト時のシャフト9と平行な面として定義される。本実施形態の工程S3では、全体座標系でのグリップ速度v
X、v
Y、v
Z及びグリップ角速度ω
X、ω
Y、ω
Zが、スイング平面22内に射影される。これにより、スイング平面22内でのグリップ8の挙動(グリップ速度v
pX、v
pY、v
pZ及びグリップ角速度ω
pX、ω
pY、ω
pZ)が算出(変換)されうる。
【0050】
全体座標系からスイング平面22内へのグリップ8の挙動への変換は、例えば、上記特許文献1の第2変換工程に記載の手順に基づいて実施されうる。これらのスイング平面22内でのグリップ8の挙動は、第2変換値入力部19c(
図2に示す)に記憶される。
【0051】
[肩の挙動を導出]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、
図1に示したスイング平面22内でのグリップ8の挙動(グリップ速度v
pX、v
pY、v
pZ及びグリップ角速度ω
pX、ω
pY、ω
pZ)に基づいて、スイング平面22内の肩の挙動が導出される(工程S4)。
【0052】
本実施形態の工程S4では、先ず、
図2に示す第2変換値入力部19cに入力されたスイング平面22内でのグリップの挙動(グリップ速度v
pX、v
pY、v
pZ及びグリップ角速度ω
pX、ω
pY、ω
pZ)が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、プログラム部20に含まれる肩挙動導出部20dが、作業用メモリ18に読み込まれる。この肩挙動導出部20dは、スイング平面22内でのグリップの挙動に基づいて、スイング平面22内の肩の挙動を導出するためのプログラムである。この肩挙動導出部20dが演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、スイング平面22内の肩の挙動を導出するための手段として機能させることができる。
【0053】
本実施形態の工程S4では、スイング平面22内の肩の挙動として、スイング平面22内でのトップからインパクトまでの肩周りの角速度(腕の角速度)ω
1が導出される。肩周りの角速度ω
1の導出は、例えば、上記特許文献1の肩挙動導出工程に記載の手順に基づいて導出されうる。肩周りの角速度ω
1は、スイング平面22内の肩の挙動として、肩挙動入力部19d(
図2に示す)に記憶される。
【0054】
[スイング指標を算出(算出工程)]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、第1のゴルフクラブ6のスイング動作計測値に基づいて、スイング動作に関するスイング指標が算出される(算出工程S5)。本実施形態では、スイング指標の算出に、スイング動作の計測値から変換されたスイング平面22内でのグリップの挙動と、スイング平面22内の肩の挙動とが用いられる。
【0055】
本実施形態の算出工程S5では、先ず、
図2に示した第2変換値入力部19cに入力されたスイング平面22内でのグリップの挙動(グリップ速度v
pX、v
pY、v
pZ及びグリップ角速度ω
pX、ω
pY、ω
pZ)が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、肩挙動入力部19dに入力されたスイング平面22内の肩の挙動(肩周りの角速度ω
1)が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、プログラム部20に含まれる算出部20eが、作業用メモリ18に読み込まれる。この算出部20eは、スイング動作の計測値に基づいて、スイング指標を算出するためのプログラムである。この算出部20eが、演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、スイング指標を算出するための手段として機能させることができる。
【0056】
スイング指標は、スイング動作に関するものであれば、適宜設定されうる。本実施形態のスイング指標には、後述の第1スイング指標及び第2スイング指標が含まれる。
図6は、本実施形態の算出工程S5の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
[第1スイング指標を算出]
本実施形態の算出工程S5では、先ず、第1スイング指標が算出される(工程S51)。本実施形態の第1スイング指標には、上記特許文献1で既に詳述されている第1スイング指標が用いられる。すなわち、第1スイング指標には、平均腕出力パワー(コックを開放する力)P1_AVE、平均クラブ入力パワー(コックを溜める力)P2_AVE、及び、ヘッド速度Vhが算出される。なお、第1スイング指標には、必要に応じて、他の指標が含まれてもよいし、これらの指標の一部が省略されてもよい。以下、第1スイング指標が簡単に説明される。
【0058】
平均腕出力パワーP
1_AVEは、スイング動作中の平均的な腕出力パワーP
1を示す指標である。この平均腕出力パワーP
1_AVEは、
図5(b)に示したトップの時刻t
tから腕出力パワーP
1が最大値をとる時刻t
mまでの積分区間において、腕出力パワーP
1が積分され、この積分値D1が積分区間で除算されることで算出されうる。
【0059】
腕出力パワーP
1は、第1のゴルフクラブ6のスイング動作時(
図5(a)~(c)に示したトップからインパクトまで)において、ゴルファー5の腕から出力されるパワーを示す指標である。このような腕出力パワーP
1は、ゴルファー5の腕の加速具合(コックを開放する力)を置き換えたものとして扱われる。本実施形態の腕出力パワーP
1は、肩周りの角速度(腕の角速度)ω
1と、腕の重心周りのトルクT
g1と、第1のゴルフクラブ6の重心周りのトルクT
g2とを用いて算出される。これらの腕出力パワーP
1、及び、平均腕出力パワーP
1_AVEは、例えば、上記特許文献1の第1指標算出工程に記載の手順に基づいて算出されうる。
【0060】
平均クラブ入力パワーP2_AVEは、スイング動作中の平均的なクラブ入力パワーP2を示す指標である。この平均クラブ入力パワーP2_AVEは、トップの時刻ttからクラブ入力パワーP2が最大値をとる時刻tnまでの積分区間において、クラブ入力パワーP2が積分され、この積分値が積分区間で除算されることで算出されうる。
【0061】
クラブ入力パワーP
2は、第1のゴルフクラブ6のスイング動作時において、第1のゴルフクラブ6に入力されるパワーを示す指標である。このようなクラブ入力パワーP
2は、第1のゴルフクラブ6に与える勢い(コックを溜める力)を置き換えたものとして扱われる。本実施形態のクラブ入力パワーP
2は、
図5(a)~(c)に示したトップからインパクトまでのグリップ8に発生する拘束力R
2と、グリップ8の速度ベクトルv
gとを用いて算出される。これらのクラブ入力パワーP
2、及び、平均クラブ入力パワーP
2_AVEは、例えば、上記特許文献1の第1指標算出工程に記載の手順に基づいて算出されうる。
【0062】
ヘッド速度V
hは、ゴルファー5による第1のゴルフクラブ6のスイング動作時において、
図5(c)に示したインパクト時のヘッド速度である。このようなヘッド速度V
hは、例えば、上記特許文献1の第1指標算出工程に記載の手順に基づいて、コック解放タイミングt
rと、腕エネルギーE
AVEとに基づいて算出されうる。これらの第1スイング指標は、スイング指標入力部19e(
図2に示す)に記憶される。
【0063】
[第2スイング指標を算出]
次に、本実施形態の算出工程S5では、第2スイング指標が算出される(工程S52)。本実施形態の第2スイング指標には、ゴルファー5による第1のゴルフクラブ6のスイング動作を特徴付ける特徴量が用いられる。特徴量は、スイング動作を特徴付けることが可能なものであれば、特に限定されない。本実施形態では、上記特許文献1で既に詳述されている特徴量が用いられる。すなわち、特徴量(第2スイング指標)は、スイング動作時の第1のゴルフクラブ6のコック方向の角速度に関する指標である。以下、特徴量が簡単に説明される。
【0064】
一般に、ゴルファー5のスイング動作は、
図5(a)に示したアドレスから、
図5(b)に示したトップを経て、
図5(c)に示したインパクトへと推移する。その際に、ヘッド10の慣性によって、第1のゴルフクラブ6のシャフト9に曲げが生じる。この曲げは、スイング動作の過程において、トップからインパクトに向けてシャフト9の手元側から先端側へと伝わっていく。
図7には、スイング動作の過程において、テイクバック(トップ)からインパクトまでのゴルファー5の手とシャフト9の一部が示される。
図7では、シャフト9の曲げの大きな箇所が仮想線で囲まれている。
【0065】
図7において、スイングのトップに至った時点1では、シャフト9の手元付近に、曲げが生じる。次に、切り返しからダウンスイング初期の時点2に至ると、曲げは、シャフト9の先端側にやや移動する。さらに、ゴルファー5の腕が水平になる時点3では、曲げはシャフト9の中央よりも先端側に移動する。さらに、インパクト直前の時点4では、曲げはシャフト9の先端付近まで移動する。
【0066】
上述のようなスイング動作中のシャフト9の曲げの位置の変化を考慮して、本実施形態では、スイング動作の特徴として、トップ付近からインパクトに至るダウンスイング中のコック方向の角速度ωyが着目される。具体的には、スイング動作の時間経過にしたがって、いくつかの時点での角速度ωyが着目される。ここで、スイングの「トップ付近」とは、トップ直前の所定時間及びトップ直後の所定時間を含む時間帯を意味しており、具体的には、例えばトップ-50msから、トップ+50msまでの100msの時間帯を意味する。
【0067】
図8は、あるスイング動作についてアドレスからインパクトまでの時間(s)と、スイング動作中の第1のゴルフクラブ6のコック方向の角速度ω
y(deg/s)との関係を示している。本実施形態では、
図8に示されるように、スイング特徴量として、次の4つのスイング特徴量F1~F4が定義される。
【0068】
スイング特徴量F1は、トップ付近のコック方向の角速度ωyの傾きである。このスイング特徴量F1は、例えば、トップから50ms前の角速度ωyを角速度ωy_beforeとし、トップから50ms後の角速度ωyを角速度ωy_afterとしたときに、-ωy_before + ωy_afterで算出されうる。
【0069】
スイング特徴量F2は、トップから、角速度ωyが最大となる時点までの当該角速度ωyの平均値である。このスイング特徴量F2は、トップからインパクトまでの角速度ωyにおける最大値を求め、トップから、この最大値となる時点までの角速度ωyの累積値を、トップから、前記最大値となる時点までの時間で除することによって算出されうる。
【0070】
スイング特徴量F3は、角速度ωyが最大となる時点からインパクトまでの当該角速度ωyの平均値である。このスイング特徴量F3は、前記最大値となる時点からインパクトまでの角速度ωyの累積値を、前記最大値となる時点からインパクトまでの時間で除することによって算出されうる。
【0071】
スイング特徴量F4は、トップからインパクトまでの角速度ωyの平均値である。このスイング特徴量F4は、トップからインパクトまでの角速度ωyの累積値を、トップからインパクトまでの時間で除することによって算出されうる。
【0072】
本実施形態では、計測値を取得する上述の工程S1において、スイング動作が複数回実施された場合、これらのスイング動作のスイング特徴量F1~F4の平均値がそれぞれ算出されてもよい。スイング特徴量F1~F4(第2スイング指標)は、スイング指標入力部19e(
図2に示す)に記憶される。なお、本実施形態では、第2スイング指標として、スイング動作時の第1のゴルフクラブ6のコック方向(y軸方向)の角速度に関する指標である場合が例示されたが、このような態様に限定されない。第2スイング指標は、例えば、スイング動作時の第1のゴルフクラブ6のトウ・ヒール方向(x軸方向)周りの角速度に関する指標や、シャフト軸(z軸方向)周りの角速度に関する指標であってもよい。
【0073】
[最適指標を決定(決定工程)]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、
図5に示した第1のゴルフクラブ6のスイング動作に関するスイング指標に基づいて、第1の最適剛性指標が決定される(決定工程S6)。本実施形態の決定工程S6では、第1の最適剛性指標とともに、第2の最適特性指標が決定される。
【0074】
第1の最適剛性指標は、ゴルファー5に適した第1のゴルフクラブ6のシャフト9の曲げ剛性の分布を示したものである。一方、第2の最適特性指標は、第2のゴルフクラブ(図示省略)のシャフトの特性を示したものである。
【0075】
本実施形態の決定工程S6では、先ず、
図2に示すスイング指標入力部19eに入力されたスイング指標(本例では、第1スイング指標及び第2スイング指標)が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、プログラム部20に含まれる決定部20fが、作業用メモリ18に読み込まれる。この決定部20fは、スイング指標に基づいて、第1の最適剛性指標(本例では、第2の最適特性指標を含む)を決定するためのプログラムである。この決定部20fが、演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、第1の最適剛性指標を決定する手段として機能させることができる。
図9は、本実施形態の決定工程S6の処理手順を示すフローチャートである。
【0076】
[第1の最適剛性指標を決定]
本実施形態の決定工程S6では、先ず、第1の最適剛性指標が決定される(工程S61)。第1の最適剛性指標は、
図1に示したゴルファー5に適した第1のゴルフクラブ6の曲げ剛性の分布を示すものであれば、特に限定されない。本実施形態の第1の最適剛性指標には、IFC(International Flex Code)が用いられる。IFCは、第1のゴルフクラブ6のシャフト9の軸方向の各位置でのEI値(理想的な曲げ剛性値)の範囲を特定するための指標である。
【0077】
第1の最適剛性指標(IFC)は、第2スイング指標(スイング特徴量F1~F4)に基づいて決定される。特許文献(特許第6087132号公報)等に記載されるように、多数の打撃試験の結果を回帰分析等することで、スイング特徴量F1~F4と、それに適したシャフト9の軸方向のEI値の分布との関係が、予め特定されうる。
【0078】
図10は、第1のゴルフクラブ6のシャフト9の平面図である。
図10に示されるように、シャフト9のEI値の軸方向の分布は、シャフト9を4つの領域a~dに仮想区分し、各領域a~dの代表的なEI値として特定される。具体的には、領域aないしdのEI値は、それぞれ、シャフト9のチップ端(先端)9aから軸方向に36インチ、26インチ、16インチ及び6インチの位置P1~P4で測定される。これらの各位置P1~P4でのEI値は、それぞれスイング特徴量F1~F4と相関関係がある。なお、測定点である位置P1~P4は、上記の態様に限定されるわけではなく、例えば、上記の位置を基準に±2インチ程度で変更されても良い。なお、各位置での曲げ剛性は、上記特許文献1や、特許文献(特許第6087132号公報)等に記載された方法で測定される。
【0079】
図11は、各スイング特徴量F1~F4と、それに適するシャフト9の軸方向の各位置P1~P4でのEI値との関係を示すグラフである。これらのグラフは、フィッティング方法の実行に先立ち、例えば、回帰分析によって取得されており、データ入力部19h(
図2に示す)に記憶されている。
【0080】
一般に、スイング特徴量F1~F4が大きくなると、それに適する各位置P1(36インチ)~P4(6インチ)でのEI値も大きくなる(シャフトが硬くなる)関係がある。なお、
図11の「HS」は、ヘッドスピード(ヘッド速度)である。スイング特徴量F1~F4とEI値との関係は、ヘッドスピード毎に決定されている。なお、フィッティング対象のゴルファー5のヘッドスピードは、事前に測定されているものとする。
【0081】
本実施形態の工程S61では、先ず、第2スイング指標(スイング特徴量F1~F4)に基づいて、それに適したシャフト9の軸方向の各位置P1~P4でのEI値が決定される。
【0082】
次に、本実施形態の工程S61では、決定されたEI値に基づいて、IFC(
図10に示したシャフト9の軸方向の各位置P1~P4でのEI値の範囲を特定するための指標)が決定される。EI値からIFCの値への変換には、EI値-IFC変換表が用いられる。
図12には、EI値-IFC変換表24の一例が示されている。
【0083】
第1のゴルフクラブ6のシャフト9の各位置P1~P4でのEI値は、EI値-IFC変換表24によって、IFCの値(0~9の整数)へと変換される。これにより、各領域aないしdのIFCの値を4つ順番に並べた4桁の数字(例えば、「5、5、7、6」等)に基づいて、シャフト9の複数の位置の曲げ剛性の分布を有するシャフト9を特定可能なIFC(第1の最適剛性指標)が決定される。
【0084】
図13は、第1の最適剛性指標31を表す第1モデル
図41である。この第1モデル
図41は、第1のゴルフクラブ6のシャフト9の軸方向の位置と、曲げ剛性(IFC)との関係を示す折れ線グラフとして構成されている。決定された第1の最適剛性指標は、最適指標入力部19f(
図2に示す)に記憶される。
【0085】
[第2の最適特性指標を決定]
次に、本実施形態の決定工程S6では、第2の最適特性指標が決定される(工程S62)。第2の最適特性指標は、第2のゴルフクラブ(図示省略)のシャフトの特性を示すものであれば、特に限定されない。本実施形態の第2の最適特性指標は、第2のゴルフクラブのシャフトの重量、又は、その最適範囲である重量帯を含んでいる。このような第2の最適特性指標は、第1スイング指標の大きさに基づいて決定される。
【0086】
本実施形態の工程S62では、第1スイング指標(平均腕出力パワーP1_AVE、及び、平均クラブ入力パワーP2_AVE)の大きさに基づいて、第2のゴルフクラブのシャフトの重量、又は、その最適範囲である重量帯(第2の最適特性指標)が決定される。このようなシャフトの重量又は重量帯は、適宜決定することができ、例えば、上記特許文献1と同様に、最適スイングMIの計算結果に基づいて決定されてもよい。本実施形態では、平均腕出力パワーP1_AVEと、平均クラブ入力パワーP2_AVEとの関係を示す空間を区分した領域に基づいて、第2のゴルフクラブのシャフトの重量又は重量帯が決定される。
【0087】
図14は、第2のゴルフクラブのシャフトの重量を決定するためのマップである。
図14では、平均腕出力パワー(コックを開放する力)P
1_AVEと、平均クラブ入力パワー(コックを溜める力)P
2_AVEとの関係を示す空間において、第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯に対応する領域T1~T5が区分されている。このマップは、フィッティング方法の実行に先立ち、例えば、データ入力部19h(
図2に示す)に記憶されており、作業用メモリ18(
図2に示す)に読み込まれているのが好ましい。
【0088】
図14では、4つの境界線L1~L4によって、5つの領域T1~T5に区分される。領域T1は、60~80gのシャフトの重量帯を示している。領域T2は、70~90gのシャフトの重量帯を示している。領域T3は、90~100gのシャフトの重量帯を示している。領域T4は、100~120gのシャフトの重量帯を示している。領域T5は、120gのシャフトの重量帯を示している。
【0089】
本実施形態の工程S61では、第1スイング指標として算出された平均腕出力パワーP1_AVE、及び、平均クラブ入力パワーP2_AVEが、領域T1~T5のうちどの領域に属するか否かが判断されることで、第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯が決定されうる。
【0090】
境界線L1~L4(領域T1~T5)は、適宜決定されうる。発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、第1のゴルフクラブ6の第1スイング指標(平均腕出力パワーP1_AVE、及び、平均クラブ入力パワーP2_AVE)と、第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯(第2の最適特性指標)との間に相関関係があることを知見した。このような知見に基づいて、境界線L1~L4(領域T1~T5)が、例えば、以下の手順に基づいて特定されうる。
【0091】
本実施形態では、先ず、複数のゴルファーを対象に、第1のゴルフクラブ6(例えば、SRIXON(登録商標)Z-745、番手W#1)によるスイング動作の計測値が取得される。そして、第1スイング指標(平均腕出力パワーP1_AVE、及び、平均クラブ入力パワーP2_AVE)が算出される。次に、第2のゴルフクラブ(例えば、SRIXON(登録商標)ZX5、番手:I#7)に様々な重量のシャフトが取り付けられ、先ほどの複数のゴルファーに試打させる。次に、各ゴルファーにおいて、試打したゴルフボールの弾道が最も安定するシャフトの重量が、第2のゴルフクラブのシャフトの最適重量として特定される。そして、各ゴルファーについて、第1のゴルフクラブ6の第1スイング指標と、第2のゴルフクラブのシャフトの最適重量とに基づいて、境界線L1~L4(領域T1~T5)が特定されうる。
【0092】
また、発明者らは、上記のゴルファーとは異なる61名のテスターについて、第1のゴルフクラブ6のスイング動作を計測して、
図14のマップの精度が確認された。本実施形態では、第2のゴルフクラブに様々な重量のシャフトを取り付け、これらのゴルフクラブが61名のテスターによって試打された。そして、各テスターについて、試打したゴルフボールの弾道が最も安定するシャフトの重量が、第2のゴルフクラブのシャフトの最適重量として特定された。次に、61名のテスターを対象に、第1のゴルフクラブ6によるスイング動作の計測値が取得され、第1スイング指標(P
1_AVE及びP
2_AVE)が取得された。
【0093】
図14では、試打によって特定された最適重量ごとに、プロットの形状が互いに異なっている。実験の結果、61名中57名において、特定された最適重量が、その最適重量に対応する重量帯の領域T1~T5に属する結果となった。すなわち、
図14のマップでは、第2のゴルフクラブのシャフトの最適な重量帯を、約93%の正答率で決定できることが確認された。
【0094】
本実施形態の工程S62では、
図14に示したマップに基づいて、第1スイング指標として算出された平均腕出力パワーP
1_AVE、及び、平均クラブ入力パワーP
2_AVEから、第2の最適特性指標(第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯)が精度良く決定される。決定された第2の最適特性指標は、最適指標入力部19f(
図2に示す)に記憶される。
【0095】
[第1の最適剛性指標を第2の最適剛性指標に変換(変換工程)]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、第1の最適剛性指標31(
図13に示す)から第2の最適剛性指標に変換される(変換工程S7)。
【0096】
上述したように、
図13に示した第1モデル
図41は、第1の最適剛性指標31を表したものである。この第1モデル
図41は、
図2に示した表示装置4の予め定められた第1表示エリア43に表示されることが予定されている。第1表示エリア43は、縦軸にシャフト9の曲げ剛性を、横軸にシャフト9の軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアとして定義されている。
【0097】
第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1が狭くなると、第1モデル
図41で表される第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の最大値と最小値との差(以下、単に「第1曲げ剛性差」ということがある。)D1が、その表示可能範囲R1を超える場合がある。この場合、第1表示エリア43内に、第1モデル
図41が収まらないおそれがある。本実施形態の各表示可能範囲R1は、縦軸の曲げ剛性(IFCの値)の下限値が「3」に設定され、上限値が「7」に設定されている。これらの下限値及び上限値は、例えば、第2のゴルフクラブのシャフトの平均的な曲げ剛性に基づいて設定されてもよい。
【0098】
一方、第1モデル
図41の第1曲げ剛性差D1が小さいと、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内に対して、第1モデル
図41が表示される範囲が狭くなる。このように、第1モデル
図41が表示される範囲が狭くなると、第1モデル
図41の形状が略直線状となり、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状の違い(折れ線グラフの形状の違い)を一見して比較することが困難となる。
【0099】
本実施形態の変換工程S7では、上記のような問題を解決するために、第1の最適剛性指標31(
図13に示す)から第2の最適剛性指標に変換して、第1モデル
図41を変形又は第1表示エリア43に対して移動させる。
【0100】
本実施形態の変換工程S7では、先ず、
図2に示す最適指標入力部19fに入力された第1の最適剛性指標が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、プログラム部20に含まれる変換部20iが、作業用メモリ18に読み込まれる。この変換部20iは、第1の最適剛性指標31(
図13に示す)から第2の最適剛性指標に変換するためのプログラムである。この変換部20iが、演算部16によって実行させることで、コンピュータ12を、第1の最適剛性指標31から第2の最適剛性指標に変換するための手段として機能させることができる。
図15は、本実施形態の変換工程S7の処理手順を示すフローチャートである。
【0101】
[第1変形工程(第1実施形態)]
本実施形態の変換工程S7では、第1モデル
図41(
図13に示す)が、変形又は第1表示エリア43に対して移動させられる(第1変形工程S81)。本実施形態の第1変形工程S81では、
図3に示した変換部20iに含まれる第1変形処理部25が、
図2に示した作業用メモリ18に読み込まれる。第1変形処理部25は、第1モデル
図41を変形又は第1表示エリア43に対して移動させるためのプログラムである。この第1変形処理部25が、演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、第1モデル
図41を変形等させるための手段として機能させることができる。
図16は、本実施形態の第1変形工程S81の処理手順を示すフローチャートである。
【0102】
[第1曲げ剛性差が表示可能範囲内に対して小さいか判断]
本実施形態の第1変形工程S81では、先ず、
図13に示した第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差D1)が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内に対して予め定めた範囲で小さいか判断される(工程S91)。
【0103】
本実施形態では、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の分布のうち、最大値と最小値とが特定され、それらの最大値と最小値との差である第1曲げ剛性差D1が求められる。そして、第1曲げ剛性差D1が予め定められた第1閾値以下である場合に、その第1曲げ剛性差D1(第1モデル
図41が表示される範囲)が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内に対して予め定めた範囲で小さいと判断される。
【0104】
第1閾値は、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内に対して、第1モデル
図41が表示される範囲(第1曲げ剛性差D1)が狭いか否かを判断するためのものであり、適宜設定されうる。上述したように、第1モデル
図41が表示される範囲が狭いと、その第1モデル
図41の形状が略直線状となり、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の形状の違い(曲げ剛性の増減の傾向等)を比較することが困難となる。このような観点より、本実施形態の第1閾値は、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の30%以下の大きさ(本例では「1」)に設定される。
【0105】
工程S91において、第1曲げ剛性差D1が表示可能範囲R1内に対して予め定めた範囲で小さいと判断された場合(工程S91で「Yes」)、第1モデル
図41が表示可能範囲R1内でより広い範囲に表示されるのが好ましい。この場合、次の第1モデル
図41を変形させる工程S92が実施される。
【0106】
一方、工程S91において、第1曲げ剛性差D1が、表示可能範囲R1内に対して予め定めた範囲で小さくないと判断された場合(工程S91で「No」)、第1モデル
図41を表示可能範囲R1内でより広い範囲に表示させる必要がない。この場合、次の第1収納工程S93が実施される。
【0107】
[第1モデル図を広い範囲に表示]
次に、本実施形態の第1変形工程S81では、第1モデル
図41が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内でより広い範囲に表示されるように、第1モデル
図41が変形される(工程S92)。第1モデル
図41の変形は、第1モデル
図41が表示可能範囲R1内でより広い範囲に表示されれば、適宜実施されうる。本実施形態では、第1モデル
図41で表される第1の最適剛性指標31の複数の位置P1~P4の各曲げ剛性(以下、単に「第1モデル
図41の各曲げ剛性」ということがある。)に、予め定められた係数がそれぞれ乗じられる。
【0108】
係数は、第1モデル
図41を表示可能範囲R1内でより広い範囲に表示させるために、1よりも大きい値が設定される。第1モデル
図41を広い範囲に表示させるために、係数が、2以上(本例では、「2」)に設定されるのが好ましい。
図17(a)は、係数が乗じられる前の第1モデル
図41である。
図17(b)は、係数が乗じられた後の第1モデル
図41である。
図17(a)、(b)において、第1表示エリア43の表示可能範囲R1の最小値及び最大値が二点鎖線で示されている。
図17では、シャフトの各位置P1~P4について、チップ端(先端)から軸方向のインチが、第2のゴルフクラブのシャフトの各位置P1~P4のインチ(28インチ、20.5インチ、13.5インチ及び5.5インチ)に変換されている。
【0109】
図17(a)に示されるように、係数が乗じられる前の第1モデル
図41では、第1の最適剛性指標31の複数の位置P1~P4の各曲げ剛性が「5、6、6、5」となっており、その第1曲げ剛性差D1が「1」である。このような第1モデル
図41の各曲げ剛性に、係数(本例では「2」)が乗じられることで、
図17(b)に示されるように、各曲げ剛性が「10、12、12、10」となる第2の最適剛性指標33に変換され、第1モデル
図41に変形される。この変形後の第1モデル
図41の第1曲げ剛性差D1は、「2」である。
【0110】
このように、本実施形態の工程S92では、第1モデル
図41(第1の最適剛性指標31の各曲げ剛性)に係数が乗じられることで、第1モデル
図41をより広い範囲に表示することが可能となる。これにより、第1モデル
図41で表される第1の最適剛性指標31の曲げ剛性分布の形状の変化(曲げ剛性の増減)を大きくすることができる。
【0111】
上述のように、第1モデル
図41(第1の最適剛性指標31の各曲げ剛性)の各曲げ剛性に係数が乗じられると、変形後の第1モデル
図41が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1からはみ出す場合がある。このため、本実施形態の工程S92では、変形後の第1モデル
図41が第1表示エリア43内に収まるように、変形後の第1モデル
図41が移動させられるのが好ましい。
【0112】
図17(c)は、移動後の第1モデル
図41である。本実施形態では、変形後の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性(
図17(b)に示す)が、予め定められた第1移動量M1で移動される。第1移動量M1は、変形後の第1モデル
図41が、第1表示エリア43内に収まれば、適宜実施される。
【0113】
本実施形態では、先ず、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(以下、単に「表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値」ということがある。)が取得される。本実施形態のように、表示可能範囲R1の曲げ剛性の最小値が「3」かつ最大値が「7」である場合には、その曲げ剛性の平均値として「5」が取得される。
【0114】
次に、
図17(b)に示した変形後の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性の平均値が取得される。本実施形態のように、各曲げ剛性が「10、12、12、10」である場合には、その平均値として「11」が取得される。そして、各曲げ剛性の平均値(本例では「11」)と、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)との差の絶対値が、
図17(c)に示した第1移動量M1(本例では「6」)として求められる。
【0115】
例えば、変形後の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性の平均値(本例では「11」)が、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)以上である場合、各曲げ剛性が、第1移動量M1(本例では「6」)で減じられる。これにより、第1移動量M1に基づいて、変形後の第1モデル
図41を表示可能範囲R1内に移動させることができる。移動後の第1モデル
図41では、各曲げ剛性が「4、6、6、4」となり、その曲げ剛性の平均値が「5」となる。したがって、曲げ剛性の平均値は、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)と同一となっている。
【0116】
一方、変形後の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性の平均値が、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)未満である場合には、各曲げ剛性に、第1移動量M1がそれぞれ加算される。これにより、第1移動量M1に基づいて、変形後の第1モデル
図41を表示可能範囲R1内に移動させることができる。移動後の第1モデル
図41の曲げ剛性の平均値は、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値と同一となる。
【0117】
このように、第1移動量M1に基づいて、変形後の第1モデル
図41を移動させることで、第1モデル
図41が第1表示エリア43内に収められ、かつ、第1モデル
図41が第1表示エリア43の縦軸の中央に寄せられる(センタリングされる)。さらに、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が、第1移動量M1で加減算されるため、曲げ剛性の分布の形状(第1曲げ剛性差D1)が維持される。このような第1モデル
図41により、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状の違い(折れ線グラフの形状の違い)についての比較が容易となる。
【0118】
移動後の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性は、小数点以下が切り捨てられるのが好ましい。これにより、各曲げ剛性が整数に変換されるため、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状の違い(折れ線グラフの形状の違い)についての比較が容易となる。
【0119】
[第1モデルを第1表示エリアに収納(第1収納工程)]
次に、本実施形態の第1変形工程S81では、第1モデル
図41が第1表示エリア43内に収まるように、第1モデル
図41を変形又は第1表示エリア43に対して移動させる(第1収納工程S93)。本実施形態において、第1モデル
図41の変形又は移動は、第1モデル
図41を第1表示エリア43内に収めることができれば、適宜実施される。
図18は、第1収納工程S93の処理手順を示すフローチャートである。
【0120】
[第1曲げ剛性差が表示可能範囲を超えるか判断]
本実施形態の第1収納工程S93では、先ず、
図13に示した第1モデル
図41(第1の最適剛性指標31)の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差)D1が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1を超えるか否かが判断される(工程S11)。本実施形態では、第1曲げ剛性差D1が、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)よりも大である場合に、第1モデル
図41が表示される範囲が、表示可能範囲R1を超えると判断される。
【0121】
本実施形態の工程S11において、第1曲げ剛性差D1が表示可能範囲R1を超えると判断された場合(工程S11で「Yes」)、例えば、第1モデル
図41を第1表示エリア43の縦軸の中央に寄せたとしても、第1表示エリア43内に収まらない。この場合、次の工程S12が実施される。
【0122】
一方、工程S11において、第1曲げ剛性差D1が、表示可能範囲R1を超えないと判断された場合(工程S11で「No」)、第1モデル
図41を変形等しなくても、第1モデル
図41が第1表示エリア43内に収まる可能性がある。この場合、次の工程S13が実施される。
【0123】
[第1モデルの曲げ剛性の最大値又は最小値を変更]
次に、本実施形態の第1収納工程S93では、第1の最適剛性指標31(第1モデル
図41)の曲げ剛性の最大値及び最小値のうち、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値が変更される(工程S12)。本実施形態の工程S12では、曲げ剛性の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差)D1が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内に収まるように、上述の曲げ剛性の値が変更される。
図19(a)は、曲げ剛性の値が変更される前の第1モデル
図41である。
図19(b)は、曲げ剛性の値が変更された後の第1モデル
図41である。
図19では、シャフトの各位置P1~P4について、チップ端(先端)から軸方向のインチが、第2のゴルフクラブのシャフトの各位置P1~P4のインチ(28インチ、20.5インチ、13.5インチ及び5.5インチ)に変換されている。
【0124】
図19(a)に示した第1の最適剛性指標31(第1モデル
図41)の各曲げ剛性(IFCの値)は、「8、9、7、4」である。この曲げ剛性の最大値は「9」であり、最小値は「4」である。これらの最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差)D1は「5」であり、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)よりも大となっている。したがって、第1モデル
図41は、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1に収まらない。
【0125】
第1の最適剛性指標31(第1モデル
図41)の曲げ剛性の最大値「9」及び最小値「4」のうち、その曲げ剛性の平均値「7」からの乖離が大きい曲げ剛性は、最小値「4」である。したがって、本実施形態では、その最小値「4」が変更される。
【0126】
曲げ剛性の変更は、適宜実施されうる。本実施形態では、先ず、変更前の第1モデル
図41の第1曲げ剛性差D1(本例では「5」)から、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)が減じられる。これにより、曲げ剛性の変更量C1(本例では「1」)が求められる。そして、変更量C1に基づいて、曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値(最大値又は最小値)が変更される。本実施形態のように、曲げ剛性の最小値が変更される場合には、その最小値(本例では「4」)に変更量C1が加算される。一方、最大値が変更される場合には、その最大値から変更量C1が減じられる。
【0127】
図19(a)に示した変更前の第1の最適剛性指標31(第1モデル
図41)において、曲げ剛性の最小値「4」に、変更量C1(本例では「1」)が加算されることで、
図19(b)に示されるように、最小値が「5」に変更された第2の最適剛性指標33に変換される。これにより、各曲げ剛性(IFCの値)が「8、9、7、5」となる第1モデル
図41に変形される。
【0128】
変形後の第1モデル
図41において、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差)D1が「4」となり、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)以下となる。このように、本実施形態では、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の最大値及び最小値のうち、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値のみが変更されることで、第1モデル
図41の変形を最小限に抑えることができる。そして、変形後の第1モデル
図41を移動させれば、第1表示エリア43内に収めることが可能となる。
【0129】
[第1モデル図を第1表示エリアの中央に移動]
次に、本実施形態の第1収納工程S93では、第1モデル
図41が、第1表示エリア43の縦軸の中央に移動される(工程S13)。本実施形態の工程S13では、第1モデル
図41(第1の最適剛性指標31又は第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性の平均値が、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値と同一となるように、第1モデル
図41の移動が計算される。本実施形態では、第1モデル
図41の各曲げ剛性が、予め定められた第2移動量で移動される。
図19(c)は、移動後の第1モデル
図41である。
【0130】
本実施形態の工程S13では、先ず、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値が取得される。本実施形態のように、表示可能範囲R1の曲げ剛性の最小値が「3」かつ最大値が「7」である場合、その曲げ剛性の平均値として「5」が取得される。
【0131】
次に、本実施形態の工程S13では、調整対象の第1モデル
図41(例えば、
図19(b)に示す)について、第2の最適剛性指標33の各曲げ剛性の平均値が取得される。本実施形態のように、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が「8、9、7、5」である場合には、その平均値として「7.25」が取得される。そして、第1モデル
図41の各曲げ剛性の平均値(本例では「7.25」)と、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)との差の絶対値が、
図19(c)に示した第2移動量M2(本例では「2.25」)として求められる。
【0132】
例えば、調整対象の第1モデル
図41の各曲げ剛性の平均値(本例では「7.25」)が、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)以上である場合には、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が、第2移動量M2(本例では「2.25」)で減じられる。これにより、第2移動量M2で移動した第1モデル
図41が作成される。移動後の第1モデル
図41では、第2の最適剛性指標33の各曲げ剛性が「5.75、6.75、4.75、2.75」となり、その曲げ剛性の平均値が「5」となる。したがって、この曲げ剛性の平均値は、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)と同一となっている。
【0133】
一方、調整対象の第1モデル
図41の各曲げ剛性の平均値が、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値(本例では「5」)未満である場合には、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性に、第2移動量M2がそれぞれ加算される。これにより、第2移動量M2で移動した第1モデル
図41が作成される。移動後の第1モデル
図41の曲げ剛性の平均値は、表示可能範囲R1の曲げ剛性の平均値と同一となる。
【0134】
このように、第2移動量M2に基づいて、調整対象の第1モデル
図41が移動されることで、第1表示エリア43の縦軸の中央に寄せられた(センタリングされた)第1モデル
図41が作成される。さらに、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が、第2移動量M2で加減算されるため、
図19(b)に示した第1モデル
図41の曲げ剛性の分布の形状が維持される。このような第1モデル
図41により、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状の違い(折れ線グラフの形状の違い)についての比較が容易となる。
【0135】
移動後の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性は、小数点以下が切り捨てられるのが好ましい。この場合、第1モデル
図41の各曲げ剛性が「5、6、4、2」となる。このような第1モデル
図41の各曲げ剛性が整数に変換されるため、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状の違い(折れ線グラフの形状の違い)についての比較がさらに容易となる。
【0136】
なお、上述の工程S13において、調整対象の第1モデル
図41が、第1表示エリア43の縦軸の中央に寄せられる(センタリングされる)と、第1モデル
図41の一部が、表示可能範囲R1からはみ出る場合がある。例えば、
図19(c)に示した第1モデル
図41において、曲げ剛性の最小値「2.75」が、表示可能範囲R1の下限値(本例では、「3」)よりも小さくなっており、その最小値が、第1表示エリア43(表示可能範囲R1)からはみ出している。このため、
図18に示した第1収納工程S93の工程S14~工程S17において、第1表示エリア43からはみ出た第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性が調整されるのが好ましい。
【0137】
[第1モデル図の最大値が上限値よりも大かを判断]
次に、本実施形態の第1収納工程S93では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性の最大値が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の上限値(本例では「7」)よりも大きい否かが判断される(工程S14)。
【0138】
図20(a)は、曲げ剛性が調整される前の第1モデル
図41である。
図20(a)では、シャフトの各位置P1~P4について、チップ端(先端)から軸方向のインチが、第2のゴルフクラブのシャフトの各位置P1~P4のインチ(28インチ、20.5インチ、13.5インチ及び5.5インチ)に変換されている。調整前の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)では、各曲げ剛性が「7、8、6、5」となっている。この第1モデル
図41では、その曲げ剛性の最大値「8」が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の上限値(本例では「7」)よりも大きくなっている。
【0139】
工程S14において、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性の最大値が、第1表示エリア43の上限値よりも大きいと判断された場合(工程S14で「Yes」)、第1モデル
図41の曲げ剛性の最大値が、第1表示エリア43からはみ出している。このため、第1モデル
図41の曲げ剛性を小さく調整する工程S15が実施される。一方、工程S14において、第1モデル
図41の曲げ剛性の最大値が、第1表示エリア43の上限値以下と判断された場合(工程S14で「No」)、第1モデル
図41の曲げ剛性を小さく調整する必要がないため、次の工程S16が実施される。
【0140】
[第1モデル図の曲げ剛性を小さく調整]
次に、本実施形態の第1収納工程S93では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性が小さく調整される(工程S15)。第1モデル
図41の曲げ剛性の調整は、適宜実施されうる。本実施形態では、第1モデル
図41の曲げ剛性の最大値が、表示可能範囲R1の上限値となるように、第1モデル
図41が調整される。
【0141】
本実施形態では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が、予め定められた第3移動量で移動される。
図20(b)は、曲げ剛性が小さく調整された第1モデル
図41である。本実施形態では、第1モデル
図41の最大値(本例では「8」)と、第1表示エリア43の上限値(本例では「7」)との差が、第3移動量M3(本例では「1」)として求められる。
【0142】
本実施形態では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が、第3移動量M3(本例では「1」)でそれぞれ減じられる。これにより、第3移動量M3に基づいて、曲げ剛性が小さく調整された第1モデル
図41が作成される。調整後の第1モデル
図41では、各曲げ剛性が「6、7、5、4」となり、その曲げ剛性の最大値「7」が、第1表示エリア43の上限値(本例では「7」)と同一となる。したがって、第1モデル
図41は、第1表示エリア43内に収まりうる。
【0143】
本実施形態では、第1モデル
図41の各曲げ剛性が、第3移動量M3で減じられるため、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性の分布の形状を維持しつつ、第1モデル
図41を第1表示エリア43内に収めることができる。
【0144】
[第1モデル図の最小値が下限値よりも小かを判断]
次に、本実施形態の第1収納工程S93では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性の最小値が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の下限値(本例では「3」)よりも小さいか否かが判断される(工程S16)。
【0145】
図21(a)は、曲げ剛性が調整される前の第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)である。
図21(a)では、シャフトの各位置P1~P4について、チップ端(先端)から軸方向のインチが、第2のゴルフクラブのシャフトの各位置P1~P4のインチ(28インチ、20.5インチ、13.5インチ及び5.5インチ)に変換されている。調整前の第1モデル
図41では、各曲げ剛性が「5、6、4、2」となっている。この第1モデル
図41では、その曲げ剛性の最小値「2」が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の下限値(本例では「3」)よりも小さくなっている。
【0146】
工程S16において、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性の最小値が、第1表示エリア43の下限値よりも小さいと判断された場合(工程S16で「Yes」)、第1モデル
図41の曲げ剛性の最小値が、第1表示エリア43からはみ出している。このため、第1モデル
図41の曲げ剛性を大きく調整する工程S17が実施される。一方、工程S16において、第1モデル
図41の曲げ剛性の最小値が、第1表示エリア43の下限値以上と判断された場合(工程S16で「No」)、第1モデル
図41の曲げ剛性を大きく調整する必要がない。このため、第1収納工程S93及び第1変形工程S81の一連の処理が終了する。
【0147】
[第1モデル図の曲げ剛性を大きく調整]
次に、本実施形態の第1収納工程S93では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の曲げ剛性が大きく調整される(工程S17)。第1モデル
図41の曲げ剛性の調整は、適宜実施されうる。本実施形態では、第1モデル
図41の曲げ剛性の最小値が、表示可能範囲R1の下限値となるように、第1モデル
図41が調整される。
【0148】
本実施形態では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性が、予め定められた第4移動量で移動される。
図21(b)は、曲げ剛性が小さく調整された第1モデル
図41である。本実施形態では、第1表示エリア43の下限値(本例では「3」)と、第1モデル
図41の最小値(本例では「2」)との差が、第4移動量M4(本例では「1」)として求められる。
【0149】
本実施形態では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性に、第4移動量M4(本例では「1」)がそれぞれ加算される。これにより、第4移動量M4に基づいて、曲げ剛性が大きく調整された第1モデル
図41が作成される。調整後の第1モデル
図41では、各曲げ剛性が「6、7、5、3」となり、その曲げ剛性の最小値「3」が、第1表示エリア43の下限値(本例では「3」)と同一となる。したがって、第1モデル
図41は、第1表示エリア43内に収まりうる。
【0150】
本実施形態では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)の各曲げ剛性に、第4移動量M4がそれぞれ加算されるため、第1モデル
図41の曲げ剛性の分布の形状を維持しつつ、第1モデル
図41を第1表示エリア43内に収めることができる。
【0151】
このように、本実施形態の第1変形工程S81では、第1モデル
図41(第2の最適剛性指標33)を第1表示エリア43内に収めつつ、第1モデル
図41を第1表示エリア43内で広い範囲に表示させることができる。
【0152】
本実施形態の変換工程S7において、第1の最適剛性指標31から変換された第2の最適剛性指標33は、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布として扱われる。これは、発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ゴルファー5にとって理想的なシャフトの曲げ剛性の分布の形状が、第1のゴルフクラブ6と第2のゴルフクラブとの間で共通するとの知見を得たことに基づいている。曲げ剛性の分布の形状とは、曲げ剛性の値を無視した折れ線グラフの形状(シャフトの位置P1~P4のうち隣接する曲げ剛性の増減の傾向)を意味している。変換された第2の最適剛性指標33は、最適指標入力部19f(
図2に示す)に記憶される。
【0153】
[第2のゴルフクラブのシャフトを選択(選択工程)]
次に、本実施形態のフィッティング方法では、
図2に示したシャフト記憶部19iから、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本の第2のゴルフクラブ(図示省略)のシャフトが選択される(選択工程S8)。シャフト記憶部19iには、第2のゴルフクラブの複数のシャフトの曲げ剛性分布を示す第2の剛性指標が記憶されている。本実施形態の選択工程S8では、これらの第2のゴルフクラブの複数のシャフトから、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有するシャフトが選択される。
【0154】
本実施形態の選択工程S8では、上述の曲げ剛性分布の形状を有するシャフトの選択に先立ち、第2の最適特性指標(シャフトの重量帯)に合致する第2のゴルフクラブのシャフトが選択される。そして、その選択されたシャフトの中から、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有するシャフトが選択される。なお、このような態様に限定されるわけではなく、上述の近似した曲げ剛性分布の形状を有する第2のゴルフクラブのシャフトが選択されてもよい。
【0155】
本実施形態の選択工程S8では、先ず、
図2に示す最適指標入力部19fに入力された第2の最適剛性指標33及び第2の最適特性指標が、作業用メモリ18に読み込まれる。さらに、シャフト記憶部19iに入力された複数の第2のゴルフクラブのシャフトの第2の剛性指標及び重量帯が、作業用メモリ18にそれぞれ読み込まれる。
【0156】
次に、本実施形態の選択工程S8では、プログラム部20に含まれる選択部20gが、作業用メモリ18に読み込まれる。この選択部20gは、シャフト記憶部19i(複数の第2のゴルフクラブのシャフト)から、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択するためのプログラムである。この選択部20gが、演算部16によって実行させることで、コンピュータ12を、前記少なくとも1本のシャフトを選択するための手段として機能させることができる。
図22は、本実施形態の選択工程S8の処理手順を示すフローチャートである。
【0157】
[第2の最適特性指標に合致するシャフトを選択]
本実施形態の選択工程S8では、先ず、第2の最適特性指標に合致する第2のゴルフクラブのシャフトが少なくとも選択される(工程S71)。本実施形態の工程S71では、シャフト記憶部に記憶されている第2のゴルフクラブの複数のシャフトのうち、第2の最適特性指標に合致する(第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯に含まれる)シャフトが選択される(絞り込まれる)。
【0158】
本実施形態の工程S71において、重量帯に合致するシャフトが少なくとも1つ選択された場合、次の工程S72が実施される。一方、重量帯に合致するシャフトが選択されなかった場合には、重量帯に合致するシャフトが存在しないことを伝えるメッセージ等が、表示装置4(
図1及び
図2に示す)に表示されてもよい。この場合、フィッティング方法の一連の処理が終了されてもよい。
【0159】
[第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布に近似するシャフトを選択]
次に、本実施形態の選択工程S8では、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトが選択される(工程S72)。本実施形態では、第2の最適特性指標に合致するものとして選択された第2のゴルフクラブのシャフトの中から、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似する少なくとも1本のシャフトが選択される。
【0160】
図23は、シャフトの軸方向の位置と曲げ剛性(IFC)との関係を示すグラフ(折れ線グラフ)である。
図23(a)は、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフト(以下、単に「理想シャフト」ということがある。)の曲げ剛性の分布である。
図23(b)、(c)は、第2の最適特性指標に合致するものとして選択された第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布(第2の剛性指標32)の一例である。
図23(b)、(c)では、第2の剛性指標32、32が互いに異なる候補シャフト1、2が、代表して示されている。
【0161】
工程S72では、例えば、
図23(a)に示した理想シャフトの曲げ剛性の分布(第2の最適剛性指標33)の形状と、複数の候補シャフト(
図23(b)、(c)に示す)の曲げ剛性の分布(第2の剛性指標32)の形状とがそれぞれ比較される。そして、複数の候補シャフトのうち、理想シャフトの形状に近似する候補シャフトが選択される。
【0162】
曲げ剛性の分布の形状は、適宜比較されうる。本実施形態では、下記の式(1)に基づいて、曲げ剛性の分布の形状が比較される。
F=F1+F2 … (1)
F1=|A28-B28|+|A20.5-B20.5|+|A13.5-B13.5|
F2=|(A28-A20.5)-(B28-B20.5)|+|(A20.5-A13.5)-(B20.5-B13.5)|
ここで、
A28:理想シャフトの位置P1でのIFC
A20.5:理想シャフトの位置P2でのIFC
A13.5:理想シャフトの位置P3でのIFC
B28:候補シャフトの位置P1でのIFC
B20.5:候補シャフトの位置P2でのIFC
B13.5:候補シャフトの位置P3でのIFC
【0163】
上記の式(1)の値F1は、シャフトの軸方向の各位置P1~P3において、理想シャフトと候補シャフトとのIFCの差を示している。この値F1が小さいほど、理想シャフトの曲げ剛性と、候補シャフトの曲げ剛性とが近似していることを示している。
【0164】
上記の式(1)の値F2は、シャフトの軸方向で隣接する位置について、理想シャフトのIFCの差(隣接するIFCを結ぶ直線の傾き)から、候補シャフトのIFCの差(隣接するIFCを結ぶ直線の傾き)を減じた値を示している。この値F2が小さいほど、シャフトの軸方向において、シャフトの曲げ剛性の増減の傾向が、理想シャフトと候補シャフトとで近似していることを示している。
【0165】
そして、これらの値F
1と値F
2とが足し合わされることで、値Fが求められる。この値Fが小さいほど、理想シャフトの曲げ剛性の分布の形状(
図23(a)に示す)と、候補シャフト1、2の曲げ剛性の分布の形状(
図23(b)、(c)に示す)とが近似している。なお、上記の式(1)では、シャフトの軸方向の位置P4のIFCが考慮されていない。これは、第2のゴルフクラブにおいて、シャフトの軸方向の位置P1~P4のうち、手元側の位置P1、P2及びP3のIFCを着目することが重要である点を、発明者らが知見したためである。
【0166】
このように、本実施形態の工程S72では、上記のような式(1)が用いられることで、理想シャフトの曲げ剛性の分布の形状と、複数の候補シャフトの曲げ剛性の分布の形状とを、容易かつ確実に比較することができる。
図23(a)に示した理想シャフトと、
図23(b)に示した候補シャフト1との値Fは、「8」となる。一方、
図23(a)に示した理想シャフトと、
図23(c)に示した候補シャフト2との値Fは、「7」となる。この場合、候補シャフト2は、候補シャフト1に比べて、理想シャフトの曲げ剛性の分布の形状に近似している。
【0167】
本実施形態の工程S72では、第2の最適特性指標に合致するものとして選択された第2のゴルフクラブのシャフトの中から、上記の式(1)で算出される値Fが小さい順に複数のシャフト(例えば、3本のシャフト)が選択される。これにより、本実施形態の選択工程S8では、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の分布の形状に近似した曲げ剛性の分布の形状を有する第2のゴルフクラブのシャフトを選択することが可能となる。選択された第2のゴルフクラブのシャフトの第2の剛性指標32は、選択シャフト入力部19g(
図2に示す)に記憶される。
【0168】
[第1モデル図及び第2モデル図を表示(表示工程)]
次に、本実施形態では、第1モデル図及び第2モデル図が、
図1及び
図2に示した表示装置4の同一画面内に表示される(表示工程S9)。第1モデル図は、第2の最適剛性指標33(例えば、
図23(a)に示す)を表したものである。一方、第2モデル図は、選択工程S8で選択された第2のゴルフクラブのシャフトの第2の剛性指標32(例えば、
図23(b)、(c)に示す)を表したものである。
【0169】
本実施形態の表示工程S9では、先ず、
図2に示した最適指標入力部19fに入力された第2の最適剛性指標33、及び、選択シャフト入力部19gに入力された第2の剛性指標32が、作業用メモリに読み込まれる。さらに、表示工程S9では、プログラム部20に含まれる表示部20hが、作業用メモリ18に読み込まれる。この表示部20hは、第1モデル図及び第2モデル図を、表示装置4の同一画面内に表示させるためのプログラムである。この表示部20hが、演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、第1モデル図及び第2モデル図を表示させるための手段として機能させることができる。
【0170】
図24は、表示装置4の画面4Sを示す図である。本実施形態の表示工程S9では、第1モデル
図41及び第2モデル
図42が、表示装置4の同一の画面4Sに表示されている。
【0171】
本実施形態の第1モデル
図41は、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフト(理想シャフト)について、軸方向の位置と曲げ剛性(IFC)との関係を示す折れ線グラフとして構成されている。この第1モデル
図41は、表示装置4の予め定められた第1表示エリア43に表示されている。
【0172】
第1表示エリア43は、縦軸にシャフト9の曲げ剛性を、横軸にシャフト9の軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアとして定義されている。この第1表示エリア43では、
図23(a)に示したシャフトの手元側から先端側に沿った各位置P1~P4において、曲げ剛性(IFC)がプロットされており、これらのプロットが直線で連結されている。これにより、折れ線グラフとして構成された第1モデル
図41が表示されうる。このような第1モデル
図41により、4桁の数字からなる第2の最適剛性指標33(
図23(a)に示す)が、折れ線グラフとして視覚的に表されうる。
【0173】
本実施形態の第2モデル
図42は、第2のゴルフクラブのシャフトの軸方向の位置と曲げ剛性との関係を示す折れ線グラフとして構成されている。本実施形態では、3つの第2モデル
図42が表示されているが、このような態様に限定されない。これらの第2モデル
図42は、表示装置4の予め定められた第2表示エリア44にそれぞれ表示されている。
【0174】
第2表示エリア44は、第1表示エリア43と同様に、縦軸に曲げ剛性を、横軸にシャフトの軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアとして定義されている。この第2表示エリア44では、例えば、
図23(b)、(c)に示されるように、第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った各位置P1~P4において、曲げ剛性(IFC)がプロットされており、これらのプロットが直線で連結されている。これにより、折れ線グラフとして構成された第2モデル
図42が表示されうる。このような第2モデル
図42により、
図23(b)、(c)に示した4桁の数字からなる第2の剛性指標32が、折れ線グラフとして視覚的に表されうる。
【0175】
このように、本実施形態の表示工程S9では、表示装置4の同一画面内に、第1モデル
図41及び第2モデル
図42が表示される。これにより、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフト(理想シャフト)の曲げ剛性の分布の形状(第2の最適剛性指標33)と、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状に近似する第2のゴルフクラブ(アイアンゴルフクラブ)のシャフトの曲げ剛性の分布の形状(第2の剛性指標32)とが比較されうる。したがって、本実施形態のフィッティング方法(フィッティング装置3)は、ドライバーによるスイング動作の計測により、ドライバーとは異なる種類のゴルフクラブ(アイアンゴルフクラブ)のシャフトをフィッティングして表示することができる。
【0176】
本実施形態の第1モデル
図41及び第2モデル
図42は、シャフトの軸方向の位置と曲げ剛性との関係を示す折れ線グラフとして構成されている。これにより、例えば、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の増減の傾向と、第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の増減の傾向とが、容易に比較されうる。
【0177】
本実施形態では、第2の最適剛性指標33に近似するものとして選択された複数の第2のゴルフクラブの複数のシャフトについて、それらのシャフトの第2の剛性指標32を示す複数の第2モデル
図42が、同一の画面4Sに表示されている。これにより、複数の第2モデル
図42を比較して、ゴルファー5に最も適した第2のゴルフクラブのシャフトの選択(フィッティング)が可能となる。このような選択をさらに容易とするために、各第2モデル
図42には、例えば、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性分布の形状の近似度(例えば、上記の式(1)の値F)や、近似する順位が表示されてもよい。
【0178】
本実施形態では、選択されたシャフトがゴルファ-5に提案され、そのシャフトが取り付けられた第2のゴルフクラブ(本例では、アイアンゴルフクラブ)の試打等が行われる。これにより、ゴルファー5にとって満足度の高い第2のゴルフクラブのフィッティングが可能となる。
【0179】
本実施形態では、変換工程S7において、第1の最適剛性指標31が第2の最適剛性指標33に変換されることで、第1モデル
図41を第1表示エリア43に収めつつ、表示可能範囲R1内でより広い範囲に表示させることができる。これにより、第1モデル
図41及び第2モデル
図42とを確実に比較することができ、第2のゴルフクラブのシャフトの選択(フィッティング)が可能となる。
【0180】
本実施形態では、表示装置4の画面4Sにおいて、複数の第2モデル
図42が横に並べて表示されているが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、画面4Sのアスペクト比に応じて、複数の第2モデル
図42が縦に並べて表示されてもよい。
【0181】
上述したように、ゴルファー5にとって理想的なシャフトの曲げ剛性の分布の形状(変化の形状)は、第1のゴルフクラブ6と第2のゴルフクラブとの間で共通しているものの、第2の最適剛性指標33と第2の剛性指標32とで曲げ剛性の値(IFCの値)を必ずしも一致させる必要はない。このため、第1表示エリア43及び第2表示エリア44において、縦軸の曲げ剛性の値(IFCの値)が省略されるのが好ましい。これにより、第1モデル
図41及び第2モデル
図42基づいて、第2のゴルフクラブのシャフトをフィッティングする上で、最も重要な曲げ剛性の分布の形状に着目させることが可能となる。
【0182】
本実施形態の表示装置4の画面4Sには、第2の最適特性指標(第2のゴルフクラブのシャフトの重量帯)28や、第2モデル
図42で第2の剛性指標32が表された第2のゴルフクラブのシャフトの画像29が表示されてもよい。これにより、選択された第2のゴルフクラブの実際のシャフトと、そのシャフトの重量帯とを、ゴルファー5やオペレータに知らせることが可能となる。さらに、第2のゴルフクラブのシャフトのフィッティングに関するアドバイス30がさらに表示されてもよい。
【0183】
ところで、表示装置4の同一の画面4S内において、第1モデル
図41と第2モデル
図42とを表示させると、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2が狭くなる場合がある。とりわけ、本実施形態のように第1モデル
図41と、第2モデル
図42とが縦に並べて表示される場合には、表示可能範囲R2が狭くなる。本実施形態の各表示可能範囲R2は、縦軸の曲げ剛性(IFCの値)の下限値が「3」に設定され、上限値が「7」に設定されている。
【0184】
このように、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2が狭くなると、第2モデル
図42で表される第2の剛性指標32の曲げ剛性の最大値と最小値との差(以下、単に「第2曲げ剛性差」ということがある。)D2が、その表示可能範囲R2を超える場合があり、その第2表示エリア44に、第2モデル
図42が収まらないおそれがある。この場合、第1モデル
図41の第2の最適剛性指標33と、第2モデル
図42の第2の剛性指標とを比較することが困難となる。
【0185】
一方、第2モデル
図42の第2曲げ剛性差D2が小さいと、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2内に対して、第2モデル
図42が表示される範囲が小さくなる。このように、第2モデル
図42が表示される範囲が小さくなると、第2モデル
図42の形状が略直線状となり、それらの形状の違い(折れ線グラフの形状の違い)を一見して比較することが困難となる。
【0186】
本実施形態の表示工程S9では、上記のような問題を解決するために、第2モデル
図42を変形又は第2表示エリア44に対して移動させる第2変形工程が実施される。
図25は、本実施形態の表示工程S9の処理手順を示すフローチャートである。
【0187】
[第2モデル図を変形(第2変形工程)]
本実施形態の表示工程S9では、先ず、
図24に示した第2モデル
図42が、変形又は第2表示エリア44に対して移動させられる(第2変形工程S82)。本実施形態の第2変形工程S82では、
図3に示した表示部20hに含まれる第2変形処理部26が、
図2に示した作業用メモリ18に読み込まれる。第2変形処理部26は、第2モデル
図42を変形又は第1表示エリア43に対して移動させるためのプログラムである。この第2変形処理部26が、演算部16によって実行されることで、コンピュータ12を、第2モデル
図42を変形等させるための手段として機能させることができる。
図26は、本実施形態の第2変形工程S82の処理手順を示すフローチャートである。
【0188】
[第2曲げ剛性差が表示可能範囲内に対して小さいか判断]
本実施形態の第2変形工程S82では、先ず、
図24に示した第2の剛性指標32の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第2曲げ剛性差)D2が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2内に対して予め定めた範囲で小さいか判断される(工程S94)。
【0189】
本実施形態の工程S94は、第1変形工程S81の工程S91(
図16に示す)と同様の手順に基づいて実施される。すなわち、第2曲げ剛性差D2が予め定められた第3閾値以下である場合に、その第2曲げ剛性差D2(第2モデル
図42が表示される範囲)が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2内に対して予め定めた範囲で小さいと判断される。第3閾値は、工程S91の第1閾値と同様の観点で設定される。
【0190】
工程S94において、第2曲げ剛性差D2が、表示可能範囲R2内に対して予め定めた範囲で小さいと判断された場合(工程S94で「Yes」)、第2モデル
図42が表示可能範囲R2内でより広い範囲に表示されるのが好ましい。この場合、第2モデル
図42を変形させる工程S95が実施される。
【0191】
一方、工程S94において、第2曲げ剛性差D2が、表示可能範囲R2内に対して予め定めた範囲で小さくないと判断された場合(工程S94で「No」)、第2モデル
図42を表示可能範囲R2内でより広い範囲に表示させる必要がない。この場合、次の第2収納工程S96が実施される。
【0192】
[第2モデル図を広い範囲に表示]
次に、本実施形態の第2変形工程S82では、第2モデル
図42が表示可能範囲R2内でより広い範囲に表示されるように、第2モデル
図42が変形される(工程S95)。本実施形態の工程S95は、第1変形工程S81の工程S92と同様の手順(
図17(b)に示す)に基づいて実施されうる。したがって、第2モデル
図42で表される第2の剛性指標32の複数の位置P1~P4の各曲げ剛性(以下、単に「第2モデル
図42の各曲げ剛性」ということがある。)に、予め定められた係数がそれぞれ乗じられる。
【0193】
このように、本実施形態の工程S95では、第2モデル
図42に係数が乗じられることで、第2モデル
図42をより広い範囲に表示することが可能となる。これにより、第2モデル
図42で表される第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性分布の形状の変化(曲げ剛性の増減)を大きくすることができ、第1モデル
図41との比較が容易となる。
【0194】
工程S95では、第1変形工程S81の工程S92と同様の手順(
図17(c)に示す)に基づき、変形後の第2モデル
図42が第1表示エリア43内に収まるように、変形後の第2モデル
図42が、第2表示エリア44に対して移動させられるのが好ましい。
【0195】
[第2モデルを第1表示エリアに収納(第2収納工程)]
次に、本実施形態の第2変形工程S82では、
図24に示した第2モデル
図42が第2表示エリア44内に収まるように、第2モデル
図42を変形又は第2表示エリア44に対して移動させる(第2収納工程S96)。
図27は、本実施形態の第2収納工程S96の処理手順を示すフローチャートである。
【0196】
本実施形態の第2収納工程S96では、先ず、
図24に示した第2モデル
図42の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第2曲げ剛性差)D2が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2を超えるか否かが判断される(工程S21)。工程S21は、第1収納工程S93の工程S11(
図18に示す)と同様の手順に基づいて実施されうる。したがって、第2曲げ剛性差D2が、表示可能範囲R2の上限値と下限値との差よりも大である場合に、第2モデル
図42が表示される範囲が、表示可能範囲R2を超えると判断される。
【0197】
本実施形態の工程S21において、第2曲げ剛性差D2が表示可能範囲R2を超えると判断された場合(工程S21で「Yes」)、第2モデル
図42を第2表示エリア44内に収めることができないため、次の工程S22が実施される。一方、工程S21において、第2曲げ剛性差D2が、表示可能範囲R2を超えないと判断された場合(工程S21で「No」)、第2モデル
図42を変形等しなくても、第2モデル
図42が第2表示エリア44内に収まる可能性がある。この場合、次の工程S23が実施される。
【0198】
[第2モデルの曲げ剛性の最大値又は最小値を変更]
次に、本実施形態の第2収納工程S96では、第2モデル
図42の最大値及び最小値のうち、第2モデル
図42の曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値が変更される(工程S22)。本実施形態では、第2モデル
図42の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第2曲げ剛性差)D2が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2内に収まるように、曲げ剛性の値が変更される。
【0199】
本実施形態の工程S22では、第1収納工程S93の工程S12と同様の手順(
図19(b)に示す)に基づき、曲げ剛性の変更量(図示省略)に基づいて、曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値(最大値又は最小値)が変更される。これにより、第1モデル
図41の変形を最小限に抑えつつ、変形後の第2モデル
図42を、第2表示エリア44内に収めることが可能となる。
【0200】
[第2モデル図を第2表示エリアの中央に移動]
次に、本実施形態の第2収納工程S96では、第2モデル
図42が、第2表示エリア44の縦軸の中央に移動される(工程S23)。本実施形態の工程S23は、第1収納工程S93の工程S13と同様の手順(
図19(c)に示す)に基づいて実施されうる。したがって、第2モデル
図42の各曲げ剛性の平均値が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2の曲げ剛性の平均値(以下、単に「表示可能範囲R2の曲げ剛性の平均値」ということがある。)となるように、第2モデル
図42の移動が計算される。
【0201】
本実施形態の工程S23では、調整対象の第2モデル
図42が、第2表示エリア44内に収められ、かつ、第2表示エリア44の縦軸の中央に寄せられた(センタリングされた)第2モデル
図42が作成される。さらに、第2モデル
図42の曲げ剛性の分布の形状が維持される。このような第2モデル
図42により、第1モデル
図41で表される第2の最適剛性指標33との比較が容易となる。
【0202】
[第2モデル図の最大値が上限値よりも大かを判断]
次に、本実施形態の第2収納工程S96では、
図24に示した第2モデル
図42の曲げ剛性の最大値が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2の上限値(本例では「7」)よりも大きい否かが判断される(工程S24)。
【0203】
工程S24において、第2モデル
図42の最大値が、第2表示エリア44の上限値よりも大きいと判断された場合(工程S24で「Yes」)、第2モデル
図42の最大値が、第2表示エリア44からはみ出している。このため、第2モデル
図42の曲げ剛性を小さく調整する工程S25が実施される。一方、工程S24において、第2モデル
図42の最大値が、第2表示エリア44の上限値以下と判断された場合(工程S24で「No」)、第2モデル
図42の曲げ剛性を小さく調整する必要がないため、次の工程S26が実施される。
【0204】
[第2モデル図の曲げ剛性を小さく調整]
次に、本実施形態の第2収納工程S96では、第2モデル
図42の曲げ剛性が小さく調整される(工程S25)。第2モデル
図42の曲げ剛性の調整は、第1収納工程S93の工程S15と同様の手順(
図20(b)に示す)に基づいて、第2モデル
図42の曲げ剛性の最大値が、表示可能範囲R2の上限値となるように、第2モデル
図42が調整される。これにより、第2モデル
図42の曲げ剛性の分布の形状を維持しつつ、第2モデル
図42を第2表示エリア44内に収めることができる。
【0205】
[第2モデル図の最小値が下限値よりも小かを判断]
次に、本実施形態の第2収納工程S96では、
図24に示した第2モデル
図42の曲げ剛性の最小値が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2の下限値(本例では「3」)よりも小さいか否かが判断される(工程S26)。
【0206】
工程S26において、第2モデル
図42の最小値が、第2表示エリア44の下限値よりも小さいと判断された場合(工程S26で「Yes」)、第2モデル
図42の最小値が、第2表示エリア44からはみ出している。このため、第2モデル
図42の曲げ剛性を大きく調整する工程S27が実施される。一方、工程S26において、第2モデル
図42の最小値が、第2表示エリア44の下限値以上と判断された場合(工程S26で「No」)、第2モデル
図42の曲げ剛性を大きく調整する必要がない。このため、第2収納工程S96及び第2変形工程S82の一連の処理が終了する。
【0207】
[第2モデル図の曲げ剛性を大きく調整]
次に、本実施形態の第2収納工程S96では、第2モデル
図42の曲げ剛性が大きく調整される(工程S27)。第2モデル
図42の曲げ剛性の調整は、第1収納工程S93の工程S17と同様の手順(
図21(b)に示す)に基づいて、第2モデル
図42の曲げ剛性の最小値が、表示可能範囲R2の下限値となるように、第2モデル
図42が調整される。これにより、第2モデル
図42の曲げ剛性の分布の形状を維持しつつ、第2モデル
図42を第2表示エリア44内に収めることができる。
【0208】
このように、本実施形態の第2変形工程S82では、
図24に示した第2モデル
図42を第2表示エリア44内に収めつつ、第2モデル
図42を第2表示エリア44内で広い範囲に表示させることができる。
【0209】
[第1モデル図及び第2モデル図を表示]
次に、本実施形態の表示工程S9では、
図24に示されるように、第1モデル
図41及び第2モデル
図42が、表示装置4の同一画面内に表示される(工程S83)。工程S83では、第1変形工程S81で変形又は移動された第1モデル
図41、及び、第2変形工程S82で変形又は移動された第2モデル
図42が、表示装置4の同一の画面4S内に表示される。
【0210】
本実施形態の表示工程S9では、第1モデル
図41及び第2モデル
図42を、第1表示エリア43及び第2表示エリア44内にそれぞれ収めつつ、それらを、第1表示エリア43及び第2表示エリア44内で広い範囲に表示させることができる。したがって、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状に基づいて、第2のゴルフクラブのシャフトを容易にフィッティングして比較することが可能となる。
【0211】
[第1収納工程(第2実施形態)]
これまでの実施形態では、
図18に示した第1収納工程S93において、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の最大値及び最小値のうち、その曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値が変更されたが(工程S12)、このような態様に限定されない。
図28は、本発明の他の実施形態の第1収納工程S93の処理手順を示すフローチャートである。
【0212】
[第1の最適剛性指標に係数を乗じる]
この実施形態の第1収納工程S93では、第1の最適剛性指標31の各曲げ剛性に係数が乗じられる(工程S18)。工程S18では、第1の最適剛性指標31の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差)D1が、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1内になるように、上述の係数が乗じられる。係数は、第1モデル
図41が表示可能範囲R1内になるように、1よりも小さい値が設定される。
【0213】
係数は、1よりも小さい値であれば、適宜設定されうる。この実施形態では、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)を、第1曲げ剛性差D1で除算した値が、係数として設定される。
図29(a)は、係数が乗じられる前の第1モデル
図41である。
図29(b)は、係数が乗じられた後の第1モデル
図41である。
【0214】
図29(a)に示されるように、係数が乗じられる前の第1の最適剛性指標31の各曲げ剛性(IFCの値)は、「8、9、7、4」である。この第1の最適剛性指標31の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差)D1は「5」である。この第1曲げ剛性差D1は、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)よりも大となっているため、第1の最適剛性指標31で表される第1モデル
図41は、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1に収まらない。
【0215】
本実施形態では、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)を、第1曲げ剛性差D1(本例では「5」)で除算することで、係数(本例では「0.8」)が求められる。この係数が、第1の最適剛性指標31の各曲げ剛性に乗じられる。これにより、
図28(b)に示されるように、各曲げ剛性が「6.4、7.2、5.6、3.2」となる第1モデル
図41に変形(第2の最適剛性指標33に変換)される。
【0216】
変形後の第1モデル
図41において、第2の最適剛性指標33の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第1曲げ剛性差D1)が「4」となり、表示可能範囲R1の上限値と下限値との差(本例では「4」)以下となる。これにより、変形後の第1モデル
図41を移動させれば、第1表示エリア43の縦軸の表示可能範囲R1に収めることが可能となる。
【0217】
変形後の第1モデル
図41は、これまでの実施形態と同様に、工程S13において、第1表示エリア43の縦軸の中央に移動される(例えば、
図19(c)に示す)。さらに、工程S14~S17において、表示可能範囲R1からはみ出た第1モデル
図41の曲げ剛性が調整される(例えば、
図20(b)に示す)。これにより、この実施形態の本実施形態の第1変形工程S81では、これまでの実施形態と同様に、第1モデル
図41を第1表示エリア43内に収めつつ、第1モデル
図41を第1表示エリア43内で広い範囲に表示させることができる。
【0218】
[第2収納工程(第2実施形態)]
これまでの実施形態では、
図27に示した第2収納工程S96において、第2の剛性指標32の曲げ剛性の最大値及び最小値のうち、その曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値が変更されたが(工程S22)、このような態様に限定されない。
図30は、本発明の他の実施形態の第2収納工程S96の処理手順を示すフローチャートである。
【0219】
[第2の剛性指標に係数を乗じる]
この実施形態の第2収納工程S96では、
図24に示した第2の剛性指標32の各曲げ剛性に係数が乗じられる(工程S28)。工程S28では、第2の剛性指標32の曲げ剛性の最大値と最小値との差(第2曲げ剛性差)D2が、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2内になるように、上述の係数が乗じられる。係数は、第1収納工程S93の工程S18と同様の手順(
図29(b)に示す)に基づいて求められる。
【0220】
この実施形態の工程S28では、第2の剛性指標32の各曲げ剛性に係数が乗じられることで、第2モデル
図42が変形され、第2表示エリア44の縦軸の表示可能範囲R2に収めることが可能となる。
【0221】
変形後の第2モデル
図42は、これまでの実施形態と同様に、工程S23において、第2表示エリア44の縦軸の中央に移動される(例えば、
図19(c)に示す)。さらに、工程S24~S27において、表示可能範囲R2からはみ出た第2モデル
図42の曲げ剛性が調整される(例えば、
図20(b)に示す)。これにより、この実施形態の本実施形態の第2変形工程S82では、これまでの実施形態と同様に、第2モデル
図42を第2表示エリア44内に収めつつ、第2モデル
図42を第2表示エリア44内で広い範囲に表示させることができる。
【0222】
この実施形態では、これまでの実施形態と同様に、ゴルファー5に適した第2のゴルフクラブのシャフトの曲げ剛性の分布の形状に基づいて、第2のゴルフクラブのシャフトを容易にフィッティングして比較することが可能となる。
【0223】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0224】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0225】
[本発明1]
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティング装置であって、
前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する取得部と、
前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する算出部と、
前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する決定部と、
前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する変換部と、
前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部と、
前記シャフト記憶部から前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する選択部と、
前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる表示部とを含む、
フィッティング装置。
[本発明2]
前記第2のゴルフクラブが、アイアンゴルフクラブである、本発明1に記載のフィッティング装置。
[本発明3]
前記第1モデル図は、前記シャフトの軸方向の位置と前記曲げ剛性との関係を示す折れ線グラフであり、
前記第1モデル図は、前記表示装置の第1表示エリアに表示され、
前記第1表示エリアは、縦軸に曲げ剛性を、横軸に前記シャフトの軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアである、本発明1又は2に記載のフィッティング装置。
[本発明4]
前記変換部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲を超えるときに、前記第1モデル図が前記第1表示エリア内に収まるように、前記第1モデル図を変形又は前記第1表示エリアに対して移動させる第1変形処理部を含む、本発明3に記載のフィッティング装置。
[本発明5]
前記第1変形処理部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記最大値及び前記最小値のうち、前記曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値を変更する、本発明4に記載のフィッティング装置。
[本発明6]
前記第1変形処理部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記第1の最適剛性指標の各曲げ剛性に係数を乗じる、本発明4に記載のフィッティング装置。
[本発明7]
前記変換部は、前記第1の最適剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内に対して予め定めた範囲で小さいときに、前記第1モデル図が前記第1表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内でより広い範囲に表示されるように、前記第1モデル図を変形させる第1変形処理部を含む、本発明3に記載のフィッティング装置。
[本発明8]
前記第2モデル図は、前記第2のゴルフクラブの前記シャフトの軸方向の位置と前記曲げ剛性との関係を示す折れ線グラフであり、
前記第2モデル図は、前記表示装置の第2表示エリアに表示され、
前記第2表示エリアは、縦軸に曲げ剛性を、横軸に前記シャフトの軸方向の位置をそれぞれ定義したグラフエリアである、本発明1ないし7のいずれかに記載のフィッティング装置。
[本発明9]
前記表示部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲を超えるときに、前記第2モデル図が前記第2表示エリア内に収まるように、前記第2モデル図を変形又は前記第2表示エリアに対して移動させる第2変形処理部を含む、本発明8に記載のフィッティング装置。
[本発明10]
前記第2変形処理部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記最大値及び前記最小値のうち、前記曲げ剛性の平均値からの乖離が大きい方の値を変更する、本発明9に記載のフィッティング装置。
[本発明11]
前記第2変形処理部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内になるように、前記第2の剛性指標の各曲げ剛性に係数を乗じる、本発明9に記載のフィッティング装置。
[本発明12]
前記表示部は、前記第2の剛性指標の曲げ剛性の最大値と最小値との差が、前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内に対して予め定めた範囲で小さいときに、前記第2モデル図が前記第2表示エリアの前記縦軸の表示可能範囲内でより広い範囲に表示されるように、前記第2モデル図を変形させる第2変形処理部を含む、本発明8に記載のフィッティング装置。
[本発明13]
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティングシステムであって、 第1のゴルフクラブのスイング動作を計測する計測機器と、
本発明1ないし12のいずれかに記載のフィッティング装置と、
第2の最適剛性指標を表す第1モデル図及び第2の剛性指標を表す第2モデル図を表示する表示装置と、
を備えるフィッティングシステム。
[本発明14]
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのフィッティング方法であって、
前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する工程と、
前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する工程と、
前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する工程と、
前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する工程と、
前記第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部から、前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する工程と、
前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる工程とを含む、
フィッティング方法。
[本発明15]
ゴルファーに適したゴルフクラブを選定するためのコンピュータプログラムであって、 コンピュータを、
前記ゴルファーによる、ドライバーからなる第1のゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測値を取得する手段と、
前記計測値に基づいて、前記スイング動作に関するスイング指標を算出する手段と、
前記スイング指標に基づいて、前記ゴルファーに適した前記第1のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第1の最適剛性指標を決定する手段と、
前記第1の最適剛性指標から、前記ドライバーとは異なる第2のゴルフクラブのシャフトの手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の最適剛性指標に変換する手段と、
前記第2のゴルフクラブの複数のシャフトのそれぞれについて、手元側から先端側に沿った複数の位置の曲げ剛性の分布を示す第2の剛性指標を記憶したシャフト記憶部から、前記第2の最適剛性指標の曲げ剛性分布の形状に近似した曲げ剛性分布の形状を有する少なくとも1本のシャフトを選択する手段と、
前記第2の最適剛性指標を表す第1モデル図、及び、前記選択されたシャフトの前記第2の剛性指標である第2の剛性指標を表す第2モデル図を、表示装置の同一画面内に表示させる手段として機能させる、
コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0226】
33 第2の最適剛性指標
32 第2の剛性指標
41 第1モデル図
42 第2モデル図