(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051381
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】衣類ハンガー
(51)【国際特許分類】
A47F 7/19 20060101AFI20240404BHJP
G07G 1/01 20060101ALI20240404BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A47F7/19 A
G07G1/01 301D
A47F5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157520
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】596116846
【氏名又は名称】濱田プレス工藝株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 恵
(72)【発明者】
【氏名】田島 祐治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真治
【テーマコード(参考)】
3B118
3E142
【Fターム(参考)】
3B118FA01
3B118FA11
3E142GA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ディスプレイを備えた機能機構を内蔵した基幹部材を有効に利用できる、衣類ハンガーを提供する。
【解決手段】衣類ハンガーは本体を含み、この本体は、基幹部材100と肩部材102を含む。基幹部材には、少なくともディスプレイ14を含む機能機構が内蔵される。基幹部材の第1取付け面部104に第1嵌合部としてのだるま穴106を形成し、肩部材の第2取付け面部108に第2嵌合部としての嵌合フック110を形成する。基幹部材に対して肩部材を着脱する、嵌合フックをだるま穴へ係脱させればよい。つまり、基幹部材に対して肩部材が着脱自在とされる。異なる複数種類の肩部材を用意しておけば、掛ける衣類の種類等に適した種類の肩部材を選択的に基幹部材に装着することができ、少ない数の基幹部材で多種類の衣類に適合する衣類ハンガーを得ることができる。つまり、基幹部材を有効に利用することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともディスプレイを含む機能機構を内蔵した基幹部材、
前記基幹部材とは別体の肩部材、
前記基幹部材の第1取付け面部に設けられる第1嵌合部、および
前記第1取付け面部に対応する前記肩部材の第2取付け面部に設けられ、前記第1嵌合部に着脱自在に嵌合する第2嵌合部を備え、
前記第1嵌合部を、別の肩部材の第2嵌合部にも共通に対応可能に構成した、衣類ハンガー。
【請求項2】
前記第1取付け面部および前記第2取付け面部は対応する方向に傾斜した傾斜面である、請求項1記載の衣類ハンガー。
【請求項3】
前記基幹部材に、装着される肩部材を認識する認識手段、および
前記認識手段による認識結果を示す識別メッセージを前記ディスプレイに表示させる表示手段をさらに備える、請求項1または2記載の衣類ハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衣類ハンガーに関し、特にたとえば、少なくともディスプレイを含む機能機構を本体に設けた、新規な衣類ハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハンガーに、アイシーチップなどの情報回路を組み込み、また、表面にはキューアールコードやバーコードあるいは動画や広告を表示可能とした表示板を、一体または着脱自在にとりつけた、情報機能付き衣類ハンガーが開示されている。具体的には、特許文献1では、表示板として支柱(6)に取り付けたタグ形式のものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2は、連結部材とそれに分離できる多種類の肩掛部材とから成るハンガーを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-42511号公報
【特許文献2】特開平9-289941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の先行技術では、衣類ハンガーと表示板とが別体構成であるため、表示板の表示状態が見にくかったり、取り扱い方によっては、破損したり、ハンガーから離脱したりしてしまう可能性がある。
【0006】
特許文献2は、ハンガーを構成する素材の再生活用を図ることを目的とするものである。
【0007】
特許文献1の問題を解決するために基幹部分に価格表示などの機能機構を内蔵すると、離脱や破損を防ぐことができるが、そのような基幹部分は高価になってしまう。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、衣類ハンガーを提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、上述の機能機構を内蔵するなどして高価な基幹部材を有効に利用できる、衣類ハンガーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明等は、この発明の理解を助けるために記述する実施形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0011】
第1の実施例は、少なくともディスプレイを含む機能機構を内蔵した基幹部材、基幹部材とは別体の肩部材、基幹部材の第1取付け面部に設けられる第1嵌合部、および第1取付け面部に対応する肩部材の第2取付け面部に設けられ、第1嵌合部に着脱自在に嵌合する第2嵌合部を備え、第1嵌合部を、別の肩部材の第2嵌合部にも共通に対応可能に構成した、衣類ハンガーである。
【0012】
第1の実施例では、衣類ハンガー(10:実施例において対応する部分を例示する、限定を意図しない参照符号。以下同様。)は、本体(12)を含み、この本体(12)は、基幹部材(100、100A)と、この基幹部材とは別体の肩部材(102、102A、102B、102C)を含む。基幹部材には、少なくともディスプレイ(14)を含む機能機構(15)が内蔵される。基幹部材の第1取付け面部に第1嵌合部の一例であるだるま穴(106)を形成し、肩部材の第2取付け面部(108)に第2嵌合部の一例である嵌合フック(110)を形成する。基幹部材に対して肩部材を取付ける場合、たとえば、嵌合フック(110)をだるま穴(106)へ通す。肩部材を基幹部材から取り外す場合、たとえば、嵌合フック(110)をだるま穴(106)から離脱させればよい。このようにして、少なくともディスプレイを含む機能機構を内蔵する基幹部材に対して肩部材が着脱自在とされる。たとえば、第1嵌合部の一例であるだるま穴を、別の肩部材の第2嵌合部の一例である嵌合フックにも共通に対応可能に構成する。
【0013】
第1の実施例によれば、たとえば異なる複数種類の肩部材を用意しておき、掛ける衣類の種類に適した肩部材を選択的に基幹部材に装着することができ、少ない数の基幹部材で多種類の衣類に適合する衣類ハンガーを得ることができる。つまり、基幹部材を有効に利用することができる。
【0014】
第2の実施例は、第1の実施例に従属する衣類ハンガーであつて、第1取付け面部および第2取付け面部は対応する方向に傾斜した傾斜面である。
【0015】
第2の実施例によれば、第2取付け面部が第1取付け面部に接合するように肩部材を基幹部材に取付けたとき、肩部材の先端側(肩先部分)が下がったハンガー形状を自然に再現できる。
【0016】
第3の実施例は、第1または第2の実施例に従属する衣類ハンガーであつて、基幹部材に、装着される肩部材を認識する認識手段、および認識手段による認識結果を示す識別メッセージをディスプレイに表示させる表示手段をさらに備える。
【0017】
第3の実施例では、基幹部材には、識別手段の一例として、識別タグ(112)およびタグリーダ(114)を設け、タグリーダが読み取った識別データに従って、表示手段として機能するマイコン(48)が、ディスプレイに識別メッセージ(116)を表示させる。
【0018】
第3の実施例によれば、識別メッセージをディスプレイに表示することによって、取付けようとしている肩部材の選択が正しいか、間違いかを事前に確認できるという利点がある。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、基幹部材および肩部材を第1嵌合部および第2嵌合部によって着脱可能にし、さらに基幹部材の第1嵌合部を異なる肩部材の第2嵌合部に共通に対応できる構成としたので、肩部材だけを変えることができ、少ない数の基幹部材で多種類の衣類に適合する衣類ハンガーを得ることができる。つまり、基幹部材を有効に利用することができる。
【0020】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1はこの発明の一実施例の衣類ハンガーを示す図解図であり、
図1(A)は前方から見た図であり、
図1(B)は後方から見た図である。
【
図2】
図2は
図1実施例のハンガーに衣類を掛けた状態を示す図解図である。
【
図3】
図3は
図1実施例のハンガーの吊下げフックの一例を取り出して示す図解図である。
【
図4】
図4は
図3に示す吊下げフックを本体に取り付けた状態を示す図解図である。
【
図5】
図5は
図1実施例の本体の内部構造および電気的接続状態を概略的に示す図解図である。
【
図6】
図6は
図1実施例のハンガーを掛けるハンガーラックの一例を示図解図である。
【
図7】
図7は実施例の電子回路の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8はこの発明の他の実施例の衣類ハンガーを示す図解図であり、
図8(A)は前方から見た図であり、
図8(B)は後方から見た図である。ただし、吊下げフックは省略している。
【
図9】
図9は
図8実施例のハンガーにおける肩部材の基幹部材への着脱構造の一例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、この発明の一実施例の衣類ハンガー(単に、「ハンガー」ということがある)10は本体12を含む。本体12は、たとえばプラスチックで形成され、上方および後方へそれぞれ緩やかに湾曲した周知の形状を有し、基幹部分13から肩先へ延びる肩を有する周知の形状を有する本体12を含む。この本体12は、この実施例では、2つ割りのプラスチック成形品からなる前部分12aおよび後部分12bを有し、前部分12aおよび後部分12bは、たとえば
図1(B)で示す複数のビスで一体化されている。本体12は、中空状に形成される。これは、後述するように、本体12内に電子回路15などを収容するためである。
【0023】
ただし、本体12の前部分12aおよび後部分12bは、ビスではなく凹凸の嵌め合い構造として、接着するなどの方法で一体化するようにしてもよい。つまり、2つ割りの前部分12aおよび後部分12bを一体化する方法は任意に設計することができる。
【0024】
この本体12には、表示面が前面中央またはほぼ中央の「顔」とも呼ばれる基幹部分13に位置するように、たとえば液晶または有機ELのような薄型のディスプレイ14が設けられる。このディスプレイ14は、電子値札あるいは電子棚札などとして機能し、売り場において、たとえばバーコードやQRコード(商品名)を用いて、ハンガー10に掛けられた衣類の値段等を電子的に表示する。
【0025】
なお、ディスプレイ14は、基本的には、本体12の基幹部分13に固定的に設けられる。ただし、故障などによる交換等の必要から、ディスプレイ14は、取り外し可能とされる。
【0026】
なお、
図1では点線で示すディスプレイ14を制御する電子回路15(
図7)は、基幹部分13の内部に設けられる。そのため、基幹部分13の前部分および/または後部分には、図示しないが、その電子回路15を内部に固定するための固定部または収容部が形成される。
【0027】
ハンガー10の本体12は、
図1に示すような前部分12aと後部分12bとを合体させる構成に限らず、樹脂あるいは重厚性を持たすために樹木などで一体的な構成とし、基幹部分13をくり抜いて収納部を設け、そこに電子回路15などを収納するようにしてもよい。
【0028】
本体12の上端面(頭面)には吊下げフック16が取り付けられ、本体12の底面にはメディアポート18が設けられる。
【0029】
吊下げフック16は、
図6に示すハンガーラック(ないしハンガーポール)32へハンガー12を掛けるために使用されるが、後述するように、そのハンガーラックないしハンガーポール32から供給を受ける電力(たとえば、直流5ボルト)を上述のディスプレイ14および電子回路15に供給する受電手段としても機能する。
【0030】
メディアポート18は、記憶媒体(メディア)、たとえばSDカードを利用可能にする。メディア50(
図7)は、ディスプレイ14の電子回路15へ、たとえば価格のデータや、商品説明や販売促進のためのデータ(静止画または動画)を供給する。
【0031】
この実施例のハンガー10によれば、
図2に示すように本体12に衣類17を掛けても、ディスプレイ14の画面は基幹部分13に設けられているため、その衣類17によって遮蔽されることなく、人は常に、ディスプレイ14に表示される価格などを目視確認することができる。
【0032】
図3はハンガー12の吊下げフック16を取り出して詳細に示す斜視図である。ここで、主として
図3-
図5を参照して吊下げフック16と、その吊下げフック16を本体12に取り付ける構造を説明する。
【0033】
この実施例では、吊下げフック16は、本体12と同様に、2つ割りのプラスチック成形品である右部分16aおよび左部分16bをたとえば接着によって一体化して、1つの中空状の吊下げフックとして形成される。これは、この吊下げフック16の中を給電線30aおよび30bを通すためである。
【0034】
吊下げフック16は適宜の曲率を有する円弧状の湾曲管部20と、その湾曲管部20の一端から延びる直管部22を有する。この吊下げフック16は、周知のように、その湾曲管部20でハンガーラック32(
図6)にハンガー10を掛ける役目をする。直管部22の下端部には取付け具24が装着される。
【0035】
取付け具24は、プラスチックの薄板からなる短筒状のプラスチック成形品であり、たとえば押出し成形した短筒の後加工によって形成される。取付け具24は、その上端において本体12の上端面から露出する径方向に膨出加工された上リング部24aおよび下端において本体12の内部に収容される径方向に膨出加工された下リング部24bを含む。上リング部24aと下リング部24bとの間には凹部24cが形成される。
【0036】
図5からよくわかるように、凹部24cがたとえば直管部22の外周面に密に嵌合する内周面を有する。
図4および
図5に示すように、本体12の右部分12aおよび左部分12bのそれぞれの上端の板状部12aaおよび12baがこの凹部24cに入り込んで、取付け具24を両側から挟むことによって、吊下げフック16が本体12から脱落するのが防止される。ただし、凹部24cの内周面と直管部22の外周面とを接着することが考えられてもよい。
【0037】
さらに、下端のリング24bの外周面には回転止め突起24dが設けられる。この回転止め突起24dは、この吊下げフック16を上述のようにして取付け具24によって本体12に取り付けたとき、たとえば
図4および
図5に示す本体12の前部分12aの内側に形成されている突起26に当たることによって、吊下げフック16が本体12に対して自由に回転するのを防止する。このように、吊下げフック16の回転を止めるのは、吊下げフック16に設けた受電端子28aおよび28bの位置を固定するためである。
【0038】
ただし、回転止めの構造はここで説明した構造以外の構造であってもよい。
【0039】
また、実施例において取付け具24は、プラスチックの薄板で形成したが、これと同じような寸法形状を有する、中実のプラスチックの成形品であってもよい。
【0040】
受電部として機能する受電端子28aおよび28bは、
図3-
図5に示すように、吊下げフック16の湾曲管部20の下側外周面において露出するように、吊下げフック16の右部分16aおよび左部分16bによって固定的に保持される。そして、受電端子28aおよび28bには、吊下げフック16の内部において、受電線30aおよび30bがそれぞれ個別的に接続される。受電線30aおよび30bは吊下げフック16の直管部22の下端から引き出されて、ディスプレイ14のための電子回路15に接続される。したがって、電子回路15(およびディスプレイ14)にはこの受電線30aおよび30bから給電される。
【0041】
図6にはこのようなハンガー10に好適するハンガーラック32を示す。ハンガーラック32は、ベース34、ベース34から立ち上がる両端の縦杆36および縦杆36の上端に差し渡される横杆38を有する。横杆38の上端には、横杆38の長手方向に間隔を隔てて、複数の切込み40が形成される。
【0042】
なお、ハンガーラック32は全体としてプラスチック成形品で構成されてもよいが、安定性を確保するために、好ましくは、少なくともベース34は金属で形成される。
【0043】
また、縦杆36および横杆38は中実または中空に形成されるが、電源線42aおよび42bが、縦杆36の内部または外部を通って、横杆38まで引き込まれる。横杆38は絶縁性素材で構成されこの実施例では断面矩形であり、
図5に示すように、切込み40の位置において、他の部分より細くされている。そして、その切込み40の位置において、上端面の前後方向(奥行方向)両端の角には、給電部として機能する給電端子44aおよび44bが露出するように、形成されている。
【0044】
吊下げフック16をこのハンガーラック32の横杆38の切込み40に掛けることによって、ハンガー10をハンガーラック32に掛ける。このとき、吊下げフック16の受電端子28aおよび28bが給電端子44aおよび44bにそれぞれ接触するので、給電線42aおよび42bによって供給される、たとえば直流5ボルトの電力は、受電端子28aおよび28bを経て、受電線30aおよび30bから電子回路15に供給される。つまり、電子回路15すなわちディスプレイ14は、この実施例では、ハンガーラック32から吊下げフック16へ供給される電力によって動作する。この実施例では、電子回路15を本体12内に設けたので、ディスプレイ14を含めて、安定した動作が期待できる。
【0045】
基本的には、給電線42aおよび42bからは、常時給電されるが、ディスプレイ14によって何か表示する必要があるときだけ給電するようにしてもよい。
【0046】
このように、ハンガーラック32にハンガー10を吊るすという自然な状態でハンガー10のディスプレイ14への電力が供給されるので、ハンガー10およびディスプレイ14の維持管理、特に電気的な面でのメンテナンスが容易である。
【0047】
なお、
図6に示すようなハンガーラック32の切込み40において横杆38に吊下げフック16を掛ける場合は特に、回転止め突起24dと突起26とによる回転止めの構造は、吊下げフック16が本体12に対して回転するのを完全に防止するのではなく、ハンガー10による衣類の展示方向の自由度を増すために、ある程度の自由度、たとえば90°程度の回転を許容するものであってよい。
【0048】
電子回路15の一例が
図7に示される。この実施例では、受電線30aが直流の正極で受電線30bが負極に接続される。正極と負極との間に、電池部46およびマイコン48が接続される。電池部46は、いずれも詳細は図示しないが、適宜の電池、たとえばリチウムイオン電池46aを含むとともに、その電池46aへの充電(や放電)を制御する充電制御回路46bを含む。つまり、充電制御回路46bは、電圧と46aが満充電に達したら充電経路を遮断するなどの制御を実行する。
【0049】
図7の実施例では、受電線30aおよび30bと電子回路15との間に、ダイオードD1、D2、D3およびD4からなる両波整流回路30cを挿入する。このような両波整流回路30cを挿入することによって、ハンガー10をハンガーラック32の横杆38に掛けるとき、正(+)負(-)の方向性を考慮する必要がなくなる。
【0050】
受電線30aおよび30bを直接電子回路15に接続して、受電線30aを(+)に設定し、受電線30bを(-)に設定した場合、電子回路15に正しく給電するためには、吊下げフック16の受電端子28aを給電端子44aに接続させ、受電端子28bを給電端子44bに接続させる必要がある。つまり、吊下げフック16を横杆38に掛けるとき、正負の極性を確認する必要がある。
【0051】
これに対して、両波整流回路30cを介在させた場合には、電線30aを(+)に設定し、受電線30bを(-)に設定した場合、受電線30aは、ダイオードD1を通して電子回路15の(+)側に接続され、受電線30bは、ダイオードD2を通して電子回路15の(-)側に接続され、電子回路15に正しく給電することができる。
【0052】
また、電線30aを(-)に設定し、受電線30bを(+)に設定した場合、受電線30aは、ダイオードD3を通して電子回路15の(-)側に接続され、受電線30bは、ダイオードD4を通して電子回路15の(+)側に接続され、電子回路15に正しく給電することができる。
【0053】
つまり、両波整流器30cを介在させることによってハンガー10をラック32に掛ける際に、(+、-)の方向性を考える必要がなくなるので、使い勝手がよい。
【0054】
マイコン48は、たとえば汎用のマイコンであり、情報処理装置として機能する。マイコン48は、たとえばメディアポート18(
図1)へ装着されたメディア50からケーブル49を介して伝送されるデータ(表示データ)に従って、ディスプレイ14へ、ケーブル51を介してデータ送り、たとえば
図2に示すようにこのハンガー10に掛けられた衣類の価格の画像や、それに関連する商品説明やその他の販売促進のため静止画または動画を表示させる。ただし、情報処理装置としては、上述のマイコン48のほか、専用のICチップなどが利用可能である。
【0055】
なお、電池46aは、受電がない状態で1日(24時間)程度、上述のようにしてマイコン48がディスプレイ14に画像ないし映像を表示できる容量があればよい。
【0056】
このように、電子回路15は、ディスプレイ14とともに、少なくともディスプレイを含む機能機構の一部を構成する。
【0057】
この実施例によれば、ハンガーラック32の横杆38の切込み40の位置でのみ、給電端子44aおよび44bが露出するので、換言すれば、切込み40以外の場所では給電端子44aおよび44bが露出することがないので、店員などのユーザが不用意に給電端子44aおよび44bに触ることがなく、安全性が高い。
【0058】
また、吊下げフック16が切込み40の中に幾分沈むので、吊下げフック16が切込み40の中に安定的に保持されるとともに、吊下げフック16に接触したりして外力が加えられる可能性が減り、ハンガーラック32からのハンガー10の離脱を効果的に抑制することができる。
【0059】
さらに、この実施例の特徴の1つは、ハンガーラック32にハンガー10を吊るすだけでディスプレイ14に給電できる給電方式にある。先に挙げた特許文献1には、光充電、電池、無線充電などの記載はあるものの、その具体的な記載はなく、さらには、現実問題として、光充電、無線充電はパワー不足で現実には使用できず、また給電なしに動作させるように電池をハンガーに組み込むようにすると、電池のサイズ(容量)が大きくなってしまう。電池を小さくすると、頻繁に交換しなければならず、交換の頻度を考えるとこれも実用的とはいえない。
【0060】
これに対して、この実施例では、ハンガーラック32から吊下げフック16を通して電子回路15に必要な電力を供給することができるので、電力不足の心配はなく、そのため、電池46aは必要最小のものでよい。
【0061】
さらに、上述の実施例では、本体12に内蔵した電子回路15によってディスプレイ14での表示を制御するようにしたが、表示データはブルートゥース(商品名)のような無線方式に従ってディスプレイ14に送信するようにしてもよい。
【0062】
また、上述の実施例では、吊下げフック16に設けた受電部(第1の実施例では受電端子28a、28bにハンガーラック32から給電するようにしたが、これに限らず、たとえば吊下げフック16の受電部を挟むクリップなどを用いて、これらの受電部に直接電力を投入するようにしてもよい。
【0063】
図8はこの発明の他の実施例の衣類ハンガー10を示す図解図であり、
図8(A)は前方から見た図であり、
図8(B)は後方から見た図である。ただし、図面の煩雑さを回避する目的で、以下の図面では、吊下げフックは省略している。吊下げフックとしては、先の実施例のものでよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
この実施例では、本体12を、基幹部分13を含む基幹部材100と、この基幹部材100とは別体であって、基幹部材100に対して着脱自在の左右の肩部材102で構成した。基幹部材100の前面の顔に相当する位置には、先の実施例と同様に、ディスプレイ14が設けられる。少なくともこのディスプレイ14を含む機能機構の少なくとも一部を構成する電子回路15が基幹部材100に内蔵される。
【0065】
基幹部材100は、一例として正面視で変形六角形の形状を有し、前後方向に一定の厚み(奥行き)を有し、この中に、
図1において点線で示し、
図7において具体的に示すような上述の電子回路15(
図8では図示せず)が内蔵される。
【0066】
図9に示すように、基幹部材100の六角形形状の左右の下側斜面が、一定の厚みのある第1取付け面部104として構成され、その第1取付け面部104に複数の(実施例では4個の)だるま穴106が上下左右に整列して形成されている。だるま穴106は、周知の形状であり、
図10に示すように、径大の脱着穴106aとその下端に連通する脱着穴106aの直径(幅)より狭い幅の締付け穴106bで形成される。
【0067】
左右の肩部材102の基端部材100側の端部には、第1取付け面部104に対応する傾斜の斜面が形成されていて、この斜面が第2取付け面部108として利用される。
【0068】
肩部材102の第2取付け面部108には、上述の第1取付け面部104のだるま穴106の位置にそれぞれ対応する位置に、複数の(実施例では4個の)嵌合フック110が設けられる。嵌合フック110は、よく知られているように、先端部110aとその下端から延びる軸110bを含む。先端部110aの直径はだるま穴106の脱着穴106aの直径より僅かに小さく、軸110bの太さは、だるま穴106の締付け穴106bの幅より僅かに小さい。
【0069】
なお、基幹部材100および肩部材102は基本的にはプラスチックの成形によって形成されるが、第1取付け面部104および第2取付け面部108に金属板(図示せず)などで補強を施してもよく、あるいは第1取付け面部104および第2取付け面部108を一定の厚みのある金属板で形成してもよい。
【0070】
このような肩部材102を基幹部材100に取り付けて一体化した
図8に示す本体12を構成するためには、肩部材102の第2取付け面部108を基幹部材100の第1取付け面部104に取り付ける。つまり、嵌合フック110の先端110aをだるま穴106の脱着穴106aに通し、そのまま肩部材102を、取付け面部104および108の傾斜に沿って、下方に動かす。それによって、嵌合フック110の軸100bが、だるま穴106の締付け穴106b内に移動し、嵌合フック110がだるま穴106に強固に固定されるので、第1取付け面部104および第2取付け面部108が面接触した状態で肩部材102が基幹部材100に強固に、安定的に保持される。
【0071】
そして、肩部材102を基幹部材100から取り外す場合には、肩部材102を第1取付け面部104および第2取付け面部108の傾斜に沿って上方に動かし、軸110を脱着穴106aの位置まで移動させ、その位置で先端110aを脱着穴106aから抜けばよい。
【0072】
このように、この実施例のハンガーでは、第1嵌合部および第2嵌合部によって、それぞれ別体の肩部材102を基幹部材100に対して取外し可能にしたので、必要に応じて、形状や寸法(サイズ)、あるいは材質の違う肩部材102と交換することができる。
【0073】
たとえば、
図11に示す変形例では、肩部材102Aは
図9実施例の肩部材102より明らかに細く(スリムに)される。このような細い肩部材102Aを用いる場面としては、たとえばシャツやブラウスのような、比較的軽い衣料を掛ける場合等が想定できる。
【0074】
図12に示す他の変形例では、肩部材102Bは
図9実施例の肩部材102より明らかに短くなっている。このように短い肩部材102Bを用いる場面としては、たとえばベビー服や子供服のような、比較的小さい衣料を掛ける場合等が想定できる。
【0075】
これらの変形例における、肩部材102Aおよび102Bにおいても、肩部材102Aおよび102Bの第2取付け面部108の傾斜角度が基幹部材100の第1取付け面部104の傾斜角度に対応している。そして、第2取付け面部108に、だるま穴106に対応して、嵌合フック110が設けられている。
【0076】
したがって、用途に合わせて、
図9に示す肩部材102に代えて、肩部材102Aや102Bを共通の基幹部材100に取り付けて本体12を形成することができる。
【0077】
図13は
図8実施例のその他の変形実施例を示す図解図である。この実施例では、肩部材102の第2取付け面部108の表面に、たとえばRFタグのように電子的に情報を読み取ることができる識別タグ112を設ける。一方、電子回路15に
図14に示すように、タグリーダ114を設ける。この識別タグ112およびタグリーダ114が協働して、装着しようとしている肩部材を識別する、識別手段として機能する。
【0078】
肩部材102を基幹部材100へ取り付けようとするとき、タグリーダ114がその識別タグ112を読み取り、マイコン48へそのタグデータを送る。そうすると、表示手段として機能するマイコン48が、ディスプレイ14に、識別メッセージ116を表示する。識別メッセージ116としては、
図15のようなサイズ表示(Lサイズ、Mサイズ、Sサイズなど)の他、用途(子供服用、婦人服用、紳士服用など)など種々のメッセージが考えられる。
【0079】
このように識別メッセージ116をディスプレイ14に表示することによって、取付けようとしている肩部材の選択が正しいか、間違いかを事前に確認できるという利点がある。
【0080】
なお、このディスプレイ14を価格表示に利用する場合には、掛けている衣類のサイズがハンガーの正面のディスプレイに表示されるので、販売側としては衣類サイズ表記のためのタグ付けの手間が省ける上に、顧客にとってもタグを改めることなく衣類のサイズ確認が一目で可能となる
さらに、
図8-
図12の実施例において、第1取付け面部104のだるま穴106が第1嵌合部として機能し、嵌合フック110が第2嵌合部として機能するが、第1嵌合部および第2嵌合部の具体的な構成はこれらの実施例のものに限らない。
【0081】
図16の実施例では、基幹部材100Aの第1取付け面部104に第1嵌合部として機能する雌ねじ118を形成し、肩部材102Cの第2取付け面部108に、その雌ねじ118に螺合する、第2嵌合部としての雄ねじ120を形成する。肩部材102Cを基幹部材100Aに取り付ける場合には、肩部材102Cを持って、第2取付け面部108を第1取付け面部104に対向させ、雄ねじ118を雌ねじ120へ差し込み、肩部材102Cを矢印方向に廻す。そうすることによって、雄ねじ120を雌ねじ118へ螺合(嵌合)させることができ、強固に一体化した肩部材102Cを基幹部材100Aで本体12を形成することができる。
【0082】
上述の実施例では、基幹部材100(および100A)の第1嵌合部を第1取付け面部104に設け、肩部材102(および102A、102B、102C)の第2取付け面部108に第2嵌合部を設けているので、第1取付け面部104と第2取付け面部108が面接触した状態で肩部材が基幹部材に強固に、安定して装着され得る。
【0083】
しかも、第1取付け面部104および第2取付け面部108を同じまたはほぼ同じ傾斜角度を有する、上部が外側で下部が内側の傾斜面(外側に傾斜する傾斜面)とすることによって、第2取付け面部108が第1取付け面部104に接合するように肩部材を基幹部材に取付けたとき、肩部材の先端側(肩先部分)が下がったハンガー形状を自然に再現できる。
【0084】
また、上述の実施例では、基幹部材に具備する機能機構の具体的な例として、少なくともディスプレイ14を含む機能機構について説明したが、そのような機能機構の他の例として、香り発生機能、消臭機能、発音機能などの各機構が考えられる。
【符号の説明】
【0085】
10 …ハンガー
12 …本体
14 …ディスプレイ
15 …電子回路
16 …吊下げフック
100、100A …基幹部材
102、102A、102B、102C …肩部材
104 …第1取付け面
106 …だるま穴
108 …第2取付け面部
110 …嵌合フック
112 …識別タグ
114 …タグリーダ
116 …識別メッセージ
118 …雌ねじ
120 …雄ねじ