(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051388
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157529
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることなく、扉開口の拡大を可能として消火栓の取り扱いを容易とする。
【解決手段】消火栓装置10は、監視員通路35の路面上方の所定の高さとなりトンネル壁面に近接又は当接するように、監視員通路35の路面上に設置された架台30上に設置され、消火栓装置10の前面の扉開口14に配置された消火栓扉12と、消火栓扉12の扉面と消火栓装置10の前面との平行状態を維持して扉開口14の上方へ消火栓扉12を移動させて開放させる扉開閉機構として、第1リンク42と第2リンク44により作り出される平行リンク機構と平行リンク機構を作動させて消火栓扉12を上方へ移動させる駆動部となるガスダンパー48とを備えたリフト式扉開閉機構40と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面又は前記トンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に対して設置された消火栓装置であって、
前記消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、
前記消火栓扉の扉面と前記消火栓装置の前面との平行状態を維持して前記扉開口の上方へ前記消火栓扉を移動させて開放させる扉開閉機構と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記扉開閉機構は、前記消火栓扉を前方への移動を伴いながら上方へ移動させて開放させることを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記扉開閉機構は、
前記消火栓扉の扉面と前記消火栓装置の前面との平行状態を維持して前記消火栓扉を上方へ移動させる平行リンク機構と、
前記消火栓扉の扉操作部を開操作した場合の伸展により前記平行リンク機構を作動させて消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記扉開閉機構は、
前記扉開口の両側部に対応して配置されたガイド部と、
前記消火栓扉の両側部に配置され、前記ガイド部に沿って案内移動することで消火栓扉を上下方向に移動させるローラ部と、
前記消火栓扉の扉操作部を開操作した場合の伸展により前記ローラ部を前記ガイド部に沿って案内移動させて前記消火栓扉を上方へ移動させるように作動させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の消火栓装置において、
前記駆動部は、前記扉操作部が開操作され開位置にある場合に伸展し、前記扉操作部が操作されずに閉位置にある場合に伸展を停止して当該停止位置で前記消火栓扉を保持するガスダンパー装置を備えたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項6】
請求項1記載の消火栓装置において、
前記消火栓装置は、前記監視員通路の路面上方の所定の高さとなり前記トンネル壁面に近接又は当接するように、前記監視員通路の路面上に設置された架台上に設置されたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項7】
請求項2記載の消火栓装置において、
前記消火栓装置は、前記トンネル壁面を箱抜きして形成された開口部に埋込み設置されたことを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁面又はトンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に対して設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。例えば消火栓装置は、前傾式の消火栓扉(前傾扉)を備えた筐体内部の消火栓収納部に、先端にノズルを装着した消火用ホースや消火栓弁を含むバルブ類等が収納され、また消火器扉を備えた筐体内部の消火器収納部に、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的にトンネル長手方向、例えば50メートル間隔で監視員通路が沿って設けられたトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている。
【0003】
しかし、シールド工法等により作られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや労力の関係から困難であるから、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置することが必要になる。
【0004】
このため、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する構造として、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する壁掛け構造が提案されており、当該壁掛け構造の架台は壁面に固定される主支持部と消火栓装置の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、壁掛け構造による消火栓装置の設置は、トンネル壁面への消火栓装置の取り付けに工数と時間が掛かる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する、いわゆる据置き構造を採用することが考えられている。
【0006】
ところで、従来の消火栓装置は消火栓扉を開閉させるために約90°回動させる開閉機構を備えているが、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置する場合であっても監視員通路の通路幅が狭いと、消火栓扉の開放に際し監視員通路に消火栓扉が突出し監視員通路の通行を妨げる問題がある。また、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置する壁掛け構造や据置構造で消火栓装置を設置する場合には、設置した段階で消火栓装置が監視員通路に露出しているので、消火栓扉の開放による監視員通路の通行を妨げる問題はより顕著となってくる。
【0007】
このため、特許文献2の消火栓装置にあっては、消火栓扉を開放させた際に、消火栓扉の上端部を消火栓扉の下端部より下方に位置するまで90°を超えて回動可能にしている。これにより、消火栓扉を開放した際の突出量を抑えて監視員通路の通行を妨げる度合を低減可能としている。
【0008】
また、監視員通路の通行を妨げる度合をさらに低減するため、特許文献3の消火栓装置にあっては、消火栓扉全体を180°回動させる開閉機構を備えるようにしている。これにより消火栓扉を開放した際の突出量をほぼないものとすることができ、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-078429号公報
【特許文献2】特開2016-146906号公報
【特許文献3】特開2014-068743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2の消火栓装置の消火栓扉にあっては、消火栓扉を開放した際の突出量は低減できているものの、消火栓扉が開放されると消火栓扉の下端部は突出していることから、監視員通路の通路幅によっては監視員通路の通行を妨げる可能性もあり、また特許文献3の消火栓装置の消火栓扉にあっては、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることはないものの、筐体前面の消火栓扉が設けられる扉開口の下部に、少なくとも扉開口と同じ大きさの領域を確保する必要があることから、扉開口のサイズが制限されることとなり、筐体内部に収納された消火用ホースの取り出しや消火栓弁の開放操作等の消火栓装置の取り扱いに支障を来たす可能性がある。
【0011】
本発明は、消火栓扉の開放により監視員通路の通行を妨げることなく、扉開口の拡大を可能として消火栓の取り扱いを容易とする消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火栓装置)
トンネル壁面又はトンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に対して設置された消火栓装置であって、
消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、
消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して扉開口の上方へ消火栓扉を移動させて開放させる扉開閉機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
(扉開閉機構による消火栓扉の開放方向)
扉開閉機構は、消火栓扉を前方への移動を伴いながら上方へ移動させて開放させる。
【0014】
(第1の扉開閉機構)
扉開閉機構は、
消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して消火栓扉を上方へ移動させる平行リンク機構と、
消火栓扉の操作部を開操作した場合の伸展により平行リンク機構を作動させて消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、
を備える。
【0015】
(第2の扉開閉機構)
扉開閉機構は、
扉開口の両側部に対応して配置されたガイド部と、
消火栓扉の両側部に配置され、ガイド部に沿って案内移動することで消火栓扉を上下方向に移動させるローラ部と、
消火栓扉の扉操作部を開操作した場合の伸展によりローラ部をガイド部に沿って案内移動させて消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、
を備える。
【0016】
(駆動部)
駆動部は、扉操作部が開操作され開位置にある場合に伸展し、扉操作部が操作されずに閉位置にある場合に伸展を停止して当該停止位置で消火栓扉を保持するガスダンパー装置を備える。
【0017】
(据置き型の消火栓装置)
消火栓装置は、監視員通路の路面上方の所定の高さとなりトンネル壁面に近接又は当接するように、監視員通路の路面上に設置された架台上に設置される。
【0018】
(埋込み型の消火栓装置)
消火栓装置は、トンネル壁面を箱抜きして形成された開口部に埋込み設置される。
【発明の効果】
【0019】
(消火栓装置の効果)
本発明は、トンネル壁面又はトンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に対して設置された消火栓装置であって、消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して扉開口の上方へ消火栓扉を移動させて開放させる扉開閉機構と、を備えたため、消火栓装置の上方に位置する空間を利用して、その空間に消火栓扉を移動して扉開口を開放させることができることから、扉開口の縦幅(設置面に対して垂直方向の幅)を大きく取ることが可能となり、消火用ホースの引き出し、消火用ホースに連結したノズルの取り出し、消火栓弁を開閉させる開閉操作部の操作等の消火栓装置の取扱いを容易とする。
【0020】
また、消火栓扉は消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して扉開口の上方へ移動することから、消火栓扉を開放しても開放した消火栓扉により監視員通路の通行を妨げることがなく、消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して移動することから、従来の回転式の消火栓扉のように消火栓扉が開放途中に必要以上に前方へ突出することがなく、道路利用者が消火栓扉を開放する際に高い操作性と安全性を確保することを可能とする。
【0021】
(扉開閉機構による消火栓扉の開放方向による効果)
扉開閉機構は、消火栓扉を前方への移動を伴いながら上方へ移動させて開放させるため、例えば消火栓装置がトンネル壁面に箱抜きして形成された開口部に埋込み設置された等の消火栓装置の上方に位置する空間が制限されている場合であっても、消火栓扉の上方移動に伴って消火栓扉を上方に位置する空間が制限されていない位置まで前方移動させることができ、消火栓装置の上方に位置する空間が制限された場所に消火栓装置が設置された場合でも消火栓扉の上方移動による開放を可能とする。
【0022】
(第1の扉開閉機構による効果)
また、消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して消火栓扉を上方へ移動させる平行リンク機構と、消火栓扉の操作部を開操作した場合の伸展により平行リンク機構を作動させて消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、を備えたため、平行リンク機構による扉開閉機構とした場合にも、扉開口の拡大と監視員通路の通行妨害の抑止との両立可能とする。
【0023】
(第2の扉開閉機構による効果)
また、扉開閉機構は、扉開口の両側部に対応して配置されたガイド部と、消火栓扉の両側部に配置され、ガイド部に沿って案内移動することで消火栓扉を上下方向に移動させるローラ部と、消火栓扉の扉操作部を開操作した場合の伸展によりローラ部をガイド部に沿って案内移動させて前記消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、を備えたため、ガイド部とローラ部からなる簡単な構造による扉開閉機構とした場合にも、扉開口の拡大と監視員通路の通行妨害の抑止との両立可能とする。
【0024】
(駆動部の効果)
また駆動部は、扉操作部が開操作され開位置にある場合に伸展し、扉操作部が操作されずに閉位置にある場合に伸展を停止して当該停止位置で消火栓扉を保持するガスダンパー装置を備えるようにしたため、操作したい消火栓装置の内部に収納された消火栓機器の位置に対応して必要な分だけ消火栓扉を上方に移動させて開放し、その位置で停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の消火栓装置を正面から示した説明図である。
【
図2】第1実施形態の消火栓装置を左側面から示した説明図である。
【
図3】
図1の消火栓装置の内部構造を、消火栓扉を全開位置まで開放して正面から示した説明図である。
【
図4】
図1の消火栓装置の内部構造を側面から示した説明図である。
【
図5】消火栓扉のリフト式扉開閉機構を示した説明図である。
【
図6】
図5のリフト式扉開閉機構により等価的に作りだされる平行リンク機構で示した説明図である。
【
図7】ガスダンパーの遠隔操作機構を示した説明図である。
【
図8】
図7の扉ハンドルを取り出して示した説明図である。
【
図9】
図7のガスダンパーを取り出して断面で示した説明図である。
【
図10】
図7のガスダンパーの動作を示した説明図である。
【
図11】第2実施形態の消火栓装置を、消火栓扉を全開位置まで開放して正面から示した説明図である。
【
図12】消火栓扉のスライド式扉開閉機構を、消火栓扉が閉鎖位置にある状態で示した説明図である。
【
図13】消火栓扉のスライド式扉開閉機構を、消火栓扉が全開位置にある状態で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る消火栓装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0027】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、トンネル壁面又はトンネル壁面に沿って設けられた監視員通路に対して設置された消火栓装置に関するものである。
【0028】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火用ホース等の消火栓機器、赤色表示灯や発信機等の電装機器、端子箱及び消火器等が配置又は収納されたものであり、消火栓装置が設置された消火栓設備を含む概念である。
【0029】
また、「トンネル壁面又は監視員通路に対して設置された消火栓装置」とは、トンネル壁面を箱抜きして形成された開口部に埋込み設置された「埋込み型」の消火栓装置、監視員通路に消火栓装置が露出した状態で設置された「壁掛け型」や「据置き型」の消火栓装置等を含むものである。ここで、「壁掛け型」とは、トンネル壁面に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する等により消火栓装置をトンネル壁面に対して壁掛けするように設置するものであり、「据置き型」とは、監視員通路の路面上に架台を設置し、設置された架台に消火栓装置を取付固定する等により消火栓装置を監視員通路の路面上に設置するものである。
【0030】
また、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える構造を指すものであり、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。また、「トンネル壁面に近接又は当接させて設置」とは、トンネル壁面に近接して設置、一部をトンネル壁面に当接して設置、又は一部をトンネル壁面に固定して設置することを含むものである。
【0031】
そして、実施形態の消火栓装置は、消火栓装置の前面の扉開口に配置された消火栓扉と、消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して扉開口の上方へ消火栓扉を移動させて開放させる扉開閉機構と、を備えたことを特徴とする。
【0032】
ここで、「消火栓扉」とは、道路利用者が消火栓装置の内部にアクセスする際に開放される扉であり、消火栓扉が配置される「扉開口」には消火栓扉以外の扉が配置されていても良く、例えば消火栓装置の点検時等に開放される保守扉が消火栓扉と共に扉開口に配置されていても良い。
【0033】
また、「消火栓扉の扉面」とは、扉開口のサイズに対応したサイズを持つ一面のことであり、扉開口に配置された際にその扉開口を閉鎖する消火栓扉の前面又はその前面に相対する裏面が該当する。また、消火栓扉を開放したときの消火栓扉の位置を「開放位置」としており、それに対応して扉開口を閉鎖したときの消火栓扉の位置ついては「閉鎖位置」とする。
【0034】
また、「消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態」とは、厳密に消火栓装置の前面に対して消火栓扉の扉面が平行であることを限定するものではなく、監視員通路に突出して監視員通路の通行を妨げることがない程度に略平行であるものを含む概念である。また、消火栓扉の開放は、上方成分のみの移動に限定されず、例えばトンネルの壁面を箱抜きして形成された開口部に埋込み設置された等、消火栓装置の上方の空間に制限があり、消火栓扉の開放に際し、上方成分に合わせて前方成分を含んだ移動であっても良い。
【0035】
また、「扉開閉機構」の構成や種類は任意であるが、例えばリフト式扉開閉機構とした第1の扉開閉機構やスライド式扉開閉機構とした第2の扉開閉機構を含むものである。
【0036】
リフト式扉開閉機構とした「第1の扉開閉機構」は、消火栓扉の扉面と消火栓装置の前面との平行状態を維持して消火栓扉を上方へ移動させる平行リンク機構と、消火栓扉の操作部を開操作した場合の伸展により平行リンク機構を作動させて消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、を備える。
【0037】
スライド式扉開閉機構とした「第2の扉開閉機構」は、扉開口の両側部に対応して配置されたガイド部と、消火栓扉の両側部に配置され、ガイド部に沿って案内移動することで消火栓扉を上下方向に移動させるローラ部と、消火栓扉の扉操作部を開操作した場合の伸展によりローラ部をガイド部に沿って案内移動させて消火栓扉を上方へ移動させる駆動部と、を備える。
【0038】
また、何れの扉開閉機構の「駆動部」も、扉操作部が開操作され開位置にある場合に伸展し、扉操作部が操作されずに閉位置にある場合に伸展を停止して当該停止位置で消火栓扉を保持するガスダンパー装置を備えるものであっても良い。
【0039】
また、「ガスダンパー装置」とは、扉操作部により遠隔操作が可能であり、扉操作部の操作によって消火栓扉の移動や停止を可能とするものであり、ガスダンパーを備えた機器、装置及びガスダンパー自体を含む概念である。また、ガスダンパー装置により消火栓扉を任意の開放位置で停止させることができ、この場合には複数の「開放位置」が存在することになるが、消火栓扉を最大限まで上方に移動させた場合の開放位置を「全開位置」とする。
【0040】
また、「扉操作部」は、消火栓扉を開閉する際に操作される箇所であり、その構成や種類は任意であるが、手前に引くことで消火栓扉の開閉操作を可能とする「扉ハンドル」等を含むものである。
【0041】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、据置き型の消火栓装置」を対象とし、扉開閉機構をリフト式扉開閉機構とした第1実施形態の消火栓装置、扉開閉機構をスライド式扉開閉機構とした第2実施形態の消火栓装置に分け、「ガスダンパー装置」が「ガスダンパー」であり、「扉操作部」が「扉ハンドル」の場合で説明する。
【0042】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.リフト式扉開閉機構を備えた第1実施形態の消火栓装置
a1.消火栓装置の概要
a2.消火栓装置の設置
a3.消火栓装置の設置高さと薄型化
a4.消火栓装置の内部構造
b.消火栓扉のリフト式扉開閉機構
b1.リフト式扉開閉機構の構造
b2.ガスダンパーの遠隔操作機構
c.スライド式扉開閉機構を備えた第2実施形態の消火栓装置
d.埋込み型の消火栓装置
e.本発明の変形例
【0043】
[a.リフト式扉開閉機構を備えた第1実施形態の消火栓装置]
据置き型の消火栓装置を対象に、第1実施形態となるリフト式扉開閉機構を備えた消火栓装置について説明する。
【0044】
(a1.消火栓装置の概要)
まず、消火栓装置の概要について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置した第1実施形態の消火栓装置を正面(前面)から示した
図1を参照する。ここで、
図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置10の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は本発明の実施形態となる
図2~
図13においてX-Y-Z方向が示されている場合にも同様となる。
【0045】
図1に示すように、消火栓装置10は、監視員通路35の路面上に設置された架台30上に設置され、消火栓装置10の筐体は、第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cに分割されている。
【0046】
第1筐体11aの前面には化粧枠13aが装着されている。化粧枠13aには扉開口14が形成され、扉開口14には消火栓扉12が配置され、第1筐体11aの内部となる消火栓収納部に消火用ホース及び消火栓弁等のバルブ類を含む所定の消火栓機器が収納されている。本実施形態の消火栓扉12は、扉ハンドル15を開操作すると、消火栓扉12の両側の筐体内に配置されたリフト式扉開閉機構により筐体11aの前面と消火栓扉12の扉面との平行状態を維持して上方に移動し、想像線で示す消火栓扉12aの位置で扉開口14を全開する全開位置まで開放できる。
【0047】
第2筐体11bの前面には化粧枠13bが装着されている。化粧枠13bの扉開口の右側にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きして、内部の端子箱26a,26bへのアクセスを可能とする補助扉20が配置されている。電装扉18には、電装機器として、例えば赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ25が設けられ、内側には電話ジャックが設けられている。
【0048】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。また、発信機24は、例えば火災等が発生して押されて押し釦スイッチがオンすると発信信号を送信し、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力され、防災受信盤からの応答信号を受信した消火栓装置10は、赤色表示灯22を点滅させると共に、応答ランプ25を点灯させる。
【0049】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱26aと低圧用の端子箱26bが上下方向に並べて配置されている。高圧用の端子箱26aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱26bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ25及び電話ジャック等を接続する。
【0050】
第3筐体11cの前面には化粧枠13cが装着されている。化粧枠13cの扉開口にはヒンジ16aにより左向きに横開きする消火器扉16が配置され、第3筐体11cの内部となる消火器収納部に2本の消火器が収納されている。また、消火器扉16には覗き窓17が設けられ、外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0051】
(a2.消火栓装置の設置)
次に、監視員通路に対する消火栓装置の設置について説明する。当該説明にあっては、監視員通路の路面上に設置された消火栓装置を左側面から示した
図2を参照する。
【0052】
図2に示すように、シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には道路36がトンネル長手方向(左右方向)に構築され、道路36に沿ったトンネル壁面27の下側に、道路36に対し所定高さの監視員通路35が構築されている。監視員通路35の内部はダクトとなっており、給水本管やケーブルが敷設され、消火栓装置10には給水配管51が給水本管から分岐されて引き込まれている。
【0053】
シールド工法によるトンネル壁面27は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路35の路面上にトンネル壁面27に近接させて架台30を設置し、連結された第1筐体11a、第2筐体11b及び第3筐体11cを架台30上に取付固定することで、消火栓装置10を設置している。ここで、監視員通路35の路面から消火栓装置10に配置された発信機24までの高さが、法的に定められた800mm~1500mmの間に入るように、架台30の高さH1が設定される。また、本実施形態の架台30は、
図2に示すように、側面形状を底辺に対し上辺が長い逆台形とし、トンネル壁面27の湾曲形状に沿って後側が斜め下向きの傾斜面となっている。
【0054】
また、設置された消火栓装置10上方には、消火栓扉12が想像線で示す消火栓扉12aの全開位置まで開放するのに十分な空間が確保されている。
【0055】
(a3.消火栓装置の設置高さと薄型化)
次に、消火栓装置の設置高さと薄型化について説明する。
図2に示すように、架台30により監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面27からの突出(出っ張り)による監視員通路35の通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10の設置高さを最適化し、併せて消火栓装置10を可能な限り薄型化している。
【0056】
消火栓装置10の設置高さは、架台30により定まるものであるから、架台30の高さH1を最適化することで、消火栓装置10の設置高さは最適化されることとなる。そして、消火栓装置10が設置されるトンネル壁面27は円形断面となっているため、トンネル中心(円形断面の中心)からの水平方向のトンネル中心線SL1に対し、監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10は、その高さ方向の中心を通る横方向の筐体中心線SL2が可能な限り近付くように、架台30の高さH1が設定されている。この場合、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に近づけるほど、消火栓装置10がトンネル壁面27から突出する度合いを低減することができる。
【0057】
次に、消火栓装置10の薄型化は、消火栓装置10に収納される機器に合わせて最適化されることとなる。本実施形態にあっては、消火栓装置10に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第3筐体11cに収納される消火器であり、消火栓装置の厚さ(前後方向の幅)が第3筐体11cに消火器が収納できるサイズまで消火栓装置10の薄型化が可能であるから、消火栓装置10の幅は第3筐体11cに収納される消火器の外径に対応した所定の幅に設定される。
【0058】
消火器の外径は150~160mm程度であり、収納された消火器が第3筐体11cに接触しないように隙間を確保すると、消火栓装置10の最小幅は、例えば180~200mm程度の範囲内となり、消火栓装置10の幅は当該範囲内の所定の幅に設定される。これに対し、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込み設置する従来の消火栓装置10の幅は300mm程度であることから、本実施形態の消火栓装置10は、幅を従来の2/3以下にすることができ、消火栓装置10を薄型化することができる。
【0059】
また、消火栓装置10の第1筐体11aは、従来の消火栓装置と同じ所定長の消火用ホース、例えば30mの保形ホースを内巻き状態で収納するために、第1筐体11aの横幅(左右方向の幅)を従来の消火栓装置よりも拡大することで、従来と同じ所定長の保形ホースが内巻き状態で収納可能としている。
【0060】
また、従来の消火栓装置では消火器が収納される消火器収納部の後側の筐体後面に端子箱26a,26bを配置していたが、消火栓装置10の薄型化に伴いに端子箱26a,26bを消火器収納部の後側の筐体後面には配置できなくなるため、電装機器が設けられる第2筐体11bの横幅(左右方向の幅)を、電装機器と端子箱を配置可能とする横幅に拡大している。
【0061】
(a4.消火栓装置の内部構造)
次に、消火栓装置の内部構造について説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の内部構造を、消火栓扉を全開位置まで開放して正面(前面)から示した
図3を参照する。なお、
図3は消火栓扉12の両側の内部に配置されるリフト式扉開閉機構は省略している。
【0062】
消火栓収納部となる第1筐体11aの内部は、バルブ類収納部50aとホース収納部50bに分けられている。
【0063】
バルブ類収納部50aには、架台30を通して下方から給水配管51が引き込まれて給水栓52に接続されると共に、給水配管51が下向きに分岐されて消火栓弁54及び自動調圧弁(図示なし)を介して保形ホースを用いた消火用ホース60に接続されている。消火栓弁54は、消火栓弁開閉レバー68により開閉操作され、給水栓52の右上には、消防隊が使用するポンプ起動スイッチ74が設けられ、操作した場合にオンしてポンプ起動信号を防災受信盤へ送信する。
【0064】
ホース収納部50bには、ホース収納フレーム62が設けられ、下側から引き込まれた消火用ホース60が右回り又は左回りの内巻き状態で収納されている。ここで、ホース収納フレーム62は、消火栓装置10の薄型化に伴う第1筐体11aの横幅の拡大に対応して従来よりも横幅を拡大しており、従来の消火栓装置に比べて少ない巻き数で従来と同じ所定長の消火用ホース60が収納可能となっている。
【0065】
また、ホース収納フレーム62の右側にノズルホルダー65を配置し、ホース収納フレーム62のホース取出口63から取り出した消火用ホース60の先端に連結したノズル64をノズルホルダー65に着脱自在に保持している。
【0066】
また、消火栓弁54の開閉操作部として機能する消火栓弁開閉レバー68を、消火栓弁54の操作軸に直結して前面側に配置した操作ボックス70から取り出している。消火栓弁開閉レバー68は通常時は図示の閉止位置にあり、下向きに放水位置まで押し下げると消火栓弁54が開放される。また、操作ボックス70にはポンプ起動連動スイッチ72が設けられ、消火栓弁開閉レバー68を開位置に操作した場合にオンしてポンプ起動信号を防災受信盤へ送信する。
【0067】
また、第2筐体11bの電装扉18の裏面側には電話ジャック28が設けられ、第3筐体11cの内部の消火器収納部には2本の消火器38が収納されている。
【0068】
[b.消火栓扉のリフト式扉開閉機構]
続いて、第1実施形態の消火栓装置に設けられた消火栓扉のリフト式扉開閉機構について説明する。
【0069】
(b1.リフト式扉開閉機構の構造)
まず、リフト式扉開閉機構の構造について説明する。当該説明にあっては、消火栓扉を全開した状態(全開位置)での消火栓装置の内部構造を右側面から示した
図4、消火栓扉のリフト式扉開閉機構を示した
図5、及び
図5のリフト式扉開閉機構により等価的に作り出される平行リンク機構を示した
図6を参照する。尚、
図5(A)は消火栓扉を閉鎖した状態(閉鎖位置)で示し、
図5(B)は消火栓扉を全開した状態(全開位置)で示している。
【0070】
本実施形態の消火栓扉12は、
図5(A)に示すように、第1筐体11aの扉開口14を閉鎖した位置(閉鎖位置)と、
図4及び
図5(B)に示すように、第1筐体11aの扉開口14を全開した位置(全開位置)との間で、リフト式扉開閉機構40により筐体11aの前面に対する消火栓扉12の扉面の平行状態を維持して開閉される。リフト式扉開閉機構40は、
図1に示した消火栓扉12の両側内側の筐体内に配置される。
【0071】
リフト式扉開閉機構40は、
図5に示すように、第1リンク42と第2リンク44を備える。第1リンク42は一端が筐体支点43に軸支され、他端が消火栓扉12の下部内側の扉支点41に軸支されている。第2リンク44は一端が筐体支点43の下側に配置した筐体支点46に軸支され、他端が消火栓扉12の扉支点41の下側に配置した扉支点45に軸支されている。尚、筐体支点43,46による軸支は、例えば筐体11a内に配置されたホース収納フレーム62等の所定位置にされる。
【0072】
このように第1リンク42と第2リンク44を設けることで、
図6に模式的に示すように、第1リンク42と第2リンク44に加えて、筐体支点43,46を結ぶ第3リンク53と扉支点41,45を結ぶ第4リンク55とにより構成される平行リンク機構が等価的に形成されることになる。尚、模式的に示した
図6では第1リンク42と第2リンク44を直線で示しているが、実際には
図5に示すように、消火栓扉12を開放する場合に扉開口14の端部当に当たらないようにするため、屈曲されたリンク形状としている。
【0073】
また、第1リンク42に対しては駆動部として機能するガスダンパー48が設けられている。ガスダンパー48はシリンダ側となる一端が筐体11aの内部上側に筐体支点47で軸支し、ロッド側となる他端を第1リンク42の途中にリンク支点49で軸支している。
【0074】
ガスダンパー48は、後述する扉ハンドル15により操作される遠隔操作機構を備えており、扉ハンドル15が閉位置にある場合にはシリンダに対するピストンロッドの動きが固定されたロック状態にあり、扉ハンドル15が開位置にある場合にはシリンダに対してピストンロッドを伸縮自在とするロック解除状態となる。
【0075】
ガスダンパー48がロック解除状態になると、シリンダ内に設けられたピストンが充填している窒素ガス等のガス圧を受けて移動することでピストンロッドが伸展し、筐体支点43を中心に第1リンク42を右回り(時計回り)に回転させることで、
図5(B)に示すように、消火栓扉12を筐体11aの上方の消火栓扉12aの位置(全開位置)まで移動させることができる。
【0076】
より詳細には、ガスダンパー48による第1リンク42の筐体支点43を中心とした回転と第2リンク44の筐体支点46を中心とした回転により、消火栓扉12は閉鎖位置と同じ扉面を監視員通路35の路面に対して垂直とした状態を維持したまま、閉鎖位置から円弧状の軌跡に描いて上方に移動し、消火栓扉12を筐体11aの前部上方の消火栓扉12aの位置(全開位置)までリフト移動させる。
【0077】
(b2.ガスダンパーの遠隔操作機構)
次に、ガスダンパー48の遠隔操作機構について説明する。当該説明にあっては、ガスダンパーの遠隔操作機構を示した
図7、
図7の扉ハンドルを取り出して示した
図8、
図7のガスダンパーを取り出して断面で示した
図9、及び
図7のガスダンパーの動作を断面で示した
図10を参照する。尚、
図7は消火栓扉12の右側のリフト式扉開閉機構40に設けられたガスダンパーの遠隔制御機構について示すが、消火栓扉12の左側のリフト式扉開閉機構40に設けられたガスダンパーの遠隔制御機構についても同様となる。また、
図8は、扉ハンドルのハンドルレバーがある面を正面として、
図8(A)は扉ハンドルの内部構造を左側面から示し、
図8(B)は扉ハンドルを正面(前面)から示し、
図8(C)は扉ハンドルを背面(後面)から示している。また、
図10(A)はガスダンパーのロック状態を示し、
図10(B)はガスダンパーのロック解除状態を示している。
【0078】
遠隔操作機構100は、
図7に示すように、消火栓扉12に設けられた扉ハンドル15とリフト式扉開閉機構40に設けられたガスダンパー48との間に設けられ、扉ハンドル15の開閉操作に応じてガスダンパー48のロック状態とロック解除状態を制御する。
【0079】
閉鎖位置にある消火栓扉12の閉位置にある扉ハンドル15のハンドルレバー1510を手前に引いて開位置にすると、遠隔操作機構100によりガスダンパー48はロック解除状態となり、消火栓扉12を
図5(A)の閉鎖位置から
図5(B)の全開位置まで移動させて開放することができ、また扉ハンドル15のハンドルレバー1510を離して閉位置とすれば、遠隔操作機構100によりガスダンパー48はロック状態となり、その位置で消火栓扉12の移動を停止させて保持することができる。
【0080】
また、遠隔操作機構100は、
図7に示すように、消火栓扉12の扉ハンドル15に設けたレバーアーム102にワイヤ106の一端を連結している。
【0081】
扉ハンドル15は、
図8に示すように、正面に設けているハンドルレバー1510を手前に引いて開位置にすると、背面両側に張り出しているレバーアーム102が想像線で示すレバーアーム102aの位置に作動する。このため、扉ハンドル15を開位置にすると、
図7に示すように、レバーアーム102の動きによりワイヤ106はローラ108を介して扉ハンドル15側に引かれることになる。
【0082】
また、ワイヤ106の他端は、固定部材110、114により消火栓扉12とガスダンパー48の間に支持されたワイヤチューブ104内を挿通し、ガスダンパー48のピストンロッド80の先端に設けられたブラケット112に対して軸部118により回動自在に設けられたレバー116の先端に連結される。また、レバー116に対してはピストンロッド80の中から突出させたプッシュロッド86の先端が当接している。尚、ワイヤ106を挿通させたワイヤチューブ104は、筐体11aに対する消火栓扉12の動きに対応して所定長さに伸展できるように、例えば途中部分を撓ませた状態で固定部材110,114により固定されている。
【0083】
ガスダンパー48は、シリンダ76上部のブラケット88を、
図5に示した筐体支点47に軸支すると共に、シリンダ76の下側から取り出しているピストンロッド80の先端に設けたブラケット112を
図6に示した第1リンク42の途中のリンク支点49に軸支する。
【0084】
これにより、扉ハンドル15のハンドルレバー1510を手前に引いて開位置にして扉ハンドル15側にワイヤ106が引かれることで、レバー116が回転してプッシュロッド86をピストンロッド80側へ押し込み、内蔵しているスプール弁を開作動させ、シリンダ76に対してピストンロッド80を伸縮自在とするロック解除状態とすることができる。
【0085】
また、扉ハンドル15のハンドルレバー1510を離して閉位置に戻すと、レバーアーム102は開位置の状態に戻り、レバー116が逆向きに回転してレバー116によるプッシュロッド86の押し込みが解除され、内蔵しているスプール弁を閉作動させ、シリンダ76に対してピストンロッド80が固定されるロック状態とすることができる。
【0086】
ここで、ガスダンパー48について説明する。
図9に示すように、ガスダンパー48のシリンダ76内にはピストン78が摺動自在に配置され、ピストン78の片側にピストンロッド80を一体に設け、ピストンロッド80の一部はシール96、ロッドガイド98及びダストシール99を介してシリンダ76から外部に取り出されている。
【0087】
ピストン78の内部にはスプール弁82が配置され、スプール弁82はオリフィス孔84を介してピストン78両側のシリンダ室を連通させる流路を開閉可能としている。また、スプール弁82に対してピストンロッド80の内部を貫通してプッシュロッド86が配置され、プッシュロッド86の動きによりスプール弁84を開閉作動できるようにしている。
【0088】
ブラケット88側のシリンダ室についてはフリーピストン90が配置され、フリーピストン90よりブラケット88側を除くピストン78両側のシリンダ室にはオイル92が充填され、フリーピストン90よりブラケット88側のシリンダ室には所定圧力の窒素ガス94が充填されている。
【0089】
次に、ガスダンパー48の動作を説明する。
図10(A)はプッシュロッド86が押し込まれていない初期位置の状態(ロック状態)であり、この状態ではスプール弁82はオリフィス孔84を通るピストン両側のシリンダ室を連通させる流路を閉じてピストン78が移動できないことから、シリンダ76に対してピストンロッド80が固定された状態となる。
【0090】
また、
図10(B)はプッシュロッド86が押し込まれてスプール弁82を開位置に移動させた状態(ロック解除状態)であり、この状態ではオリフィス孔84を通るピストン両側のシリンダ室が連通してオイル92が流動可能となり、ピストン78が摺動自在となる。このため、フリーピストン90を介して充填している窒素ガス94の圧力により摺動自在となったピストン78が移動してピストンロッド80を押し出す動作が行われる。
【0091】
ピストン78の移動中に、プッシュロッド86を初期位置(ロック状態)に戻すと、
図10(A)のようにスプール弁82が再びオリフィス孔84を通るピストン両側のシリンダ室を連通させる流路を閉じ、その位置でピストン78の動きを停止してピストンロッド80が固定された状態となる。
【0092】
このため、ガスダンパー48のプッシュロッド86を、
図7に示したように、扉ハンドル15のハンドルレバー1510を操作して開位置にしてワイヤ106を介して遠隔的に押し込ませることで、ガスダンパー48をロック解除状態として消火栓扉12を移動自在とし、消火栓扉12は全開位置まで移動することができる。また、扉ハンドル15のハンドルレバー1510から手を離して閉位置にすると、プッシュロッド86が初期位置に戻ってガスダンパー48をロック状態とし、消火栓扉12をその位置に停止させて保持することができる。
【0093】
例えば、消火栓扉12を開放してノズル64の取出や消火栓弁開閉レバー68を操作する場合には、ノズル64や消火栓弁開閉レバー68が操作出来る位置まで消火栓扉12を開放させて停止させれば良く、またこれらの消火栓機器よりも上方に位置する給水栓52に消火用ホースを接続する場合やポンプ起動スイッチ74を操作する場合には、消火栓扉12を更に上方に移動させて停止させれば良く、取り扱う消火栓機器に応じて必要な位置まで消火栓扉12を開放させることができる。
【0094】
また、消火栓装置10を使用した消火活動が終了した後の復旧時にあっては、消火栓扉12を全開位置まで上昇させて扉開口14を最大に開くことで、引き出した消火用ホース60を巻き戻す等の復旧作業を簡単且つ容易に行うことを可能とする。また、開放した消火栓扉12の閉鎖する際には、扉ハンドル15を手前に引いてガスダンパー48のロックを解除した状態で消火栓扉12を押し下げればよい。
【0095】
[c.スライド式扉開閉機構を備えた第2実施形態の消火栓装置]
据置き型の消火栓装置を対象に、第2実施形態となるスライド式扉開閉機構を備えた消火栓装置について説明する。当該説明にあっては、第2実施形態の消火栓装置を、消火栓扉を全開した状態(全開位置)で正面(前面)から示した
図11、消火栓扉のスライド式扉開閉機構を、消火栓扉が閉鎖位置にある状態で示した
図12、及び消火栓扉のスライド式扉開閉機構を、消火栓扉が全開位置にある状態で示した
図13を参照する。尚、
図12(A)は正面から見た断面で示し、
図12(B)は
図12(A)のa-a切断線の断面を示し、
図12(C)は
図12(A)のb-b切断線の断面を示す。また、
図13(A)は正面から見た断面で示し、
図13(B)は
図13(A)のc-c切断線の断面を示し、
図13(C)は
図13(A)のd-d切断線の断面を示す。
【0096】
本実施形態の消火栓扉12は、第1筐体11aの扉開口14に配置され、第1筐体11aの両側部に設けられたスライド式扉開閉機構120の作動により筐体11aの前面に対する扉面の平行状態を維持して上方に移動し、
図11に示すように、全開位置まで開放できる。尚、消火栓扉の扉開閉機構以外は、第1実施形態の消火栓装置10と基本的に同様になることから、その説明は省略する。
【0097】
スライド式扉開閉機構120は、
図12、
図13に示すように、消火器扉12の側端下部にローラ134が軸支され、消火器扉12の閉鎖位置と全開位置におけるローラ134の位置に対応して筐体側面内にローラガイド部132が配置されている。ローラガイド部132は、平面(上面)から見て消火栓扉12に相対する内側面側を開放したコ字形の断面を持ち、消火栓扉12の側端下部に軸支されたローラ134を案内移動させるものである。
【0098】
閉鎖位置と全開位置との間での消火栓扉12の垂直方向の移動距離は、消火栓扉12が閉鎖位置にあるときのローラ134の上端からローラガイド部132の内部上端までの距離Lとなる。
【0099】
第1筐体11aの両側内部にはスライド式扉開閉機構120の駆動部として機能するガスダンパー122が配置されている。ガスダンパー122は、シリンダ124側の下端を筐体固定部128で筐体11bの底部に固定し、ピストンロッド126側の上端を消火栓扉12の扉固定部130に固定して監視員通路の路面に対して垂直に起立している。
【0100】
ガスダンパー122には、第1実施形態のガスダンパー48と同様に、扉ハンドル15の開閉操作によりロック状態とロック解除状態を制御する遠隔操作機構が設けられている。本実施形態のガスダンパー122及びその遠隔操作機構は、第1実施形態よりもピストンロッド126のストローク距離が長くなる点で相違するが、それ以外の構成及び動作は基本的に
図7乃至
図10に示した第1実施形態の場合と同様になることから、その説明は省略する。
【0101】
次に、スライド式扉開閉機構120の動作を説明する。閉鎖位置にある消火栓扉12の閉位置にある扉ハンドル15を手前に引いて開位置にすると、遠隔操作機構によりガスダンパー122はロック解除状態となり、消火栓扉12を上方に移動させて
図13に示す全開位置まで開くことができ、また扉ハンドル15を離して閉位置にするとガスダンパー122がロック状態となり、消火栓扉12をその位置で停止させて保持することができる。
【0102】
また例えば、消火栓扉12を開放してノズル64の取出や消火栓弁開閉レバー68を操作する場合には、ノズル64や消火栓弁開閉レバー68が操作出来る位置まで消火栓扉12を開放させて停止させれば良く、またこれらの消火栓機器よりも上方に位置する給水栓52に消火用ホースを接続する場合やポンプ起動スイッチ74を操作する場合には、消火栓扉12を更に上方に移動させて停止させれば良く、取り扱う消火栓機器に応じて必要な位置まで消火栓扉12を開放させることができる。
【0103】
また、消火栓装置10を使用した消火活動が終了した後の復旧時にあっては、消火栓扉12を全開位置まで上昇させて扉開口14を最大に開くことで、引き出した消火用ホース60を巻き戻す等の復旧作業を簡単且つ容易に行うことを可能とする。また、開放した消火栓扉12の閉鎖する際には、扉ハンドル15を手前に引いてガスダンパー122のロックを解除した状態で消火栓扉12を押し下げればよい。
【0104】
[d.埋込み型の消火栓装置]
続いて、監視員通路に沿ったトンネル壁面を箱抜きして設置する埋込み型の消火栓装置に適用した場合について説明する。
【0105】
トンネル壁面を箱抜きして設置する埋込み型の消火栓装置についても、前述した監視員通路に露出して設置する消火栓装置の場合と同様に、消火栓扉12の扉開閉機構として、リフト式扉開閉機構40を備えた第1実施形態又はスライド式扉開閉機構120を備えた第2実施形態を適用することができる。
【0106】
何れの扉開閉機構を適用する場合でも、開放させた消火栓扉12が箱抜きした開口部の上面に当たらないように、消火栓扉12の移動範囲を定める必要があるが、リフト式扉開閉機構40を適用した場合には、消火栓扉12は前方に移動しつつ上方に移動して開放できることから、当該消火栓扉12の前方への移動に際し、消火栓扉12が箱抜きした開口部から監視員通路側に露出するようにすることで、開口部の上面に当たることを懸念することなく上方へ移動させることができる。
【0107】
このため、スライド式扉開閉機構120を適用する場合にも、例えばローラガイド部132及びガスダンパー122を設置面に対して垂直となるように設けるのではなく、上部が下部よりも前方側となるように所定角度で傾斜させて設けることで、消火栓扉12の開放に際して消火栓扉12が箱抜きした開口部から監視員通路側に露出して、消火栓扉12が開口部の上面に当たることを懸念することなく上方へ移動させることができる。
【0108】
[e.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0109】
(扉開閉機構)
上記の実施形態は、扉開閉機構の実施形態として、リフト式扉開閉機構とスライド式扉開閉機構を例に取ったが、扉開閉機構はこれらに限定されたものではなく、例えばモータ駆動機構、錘を使用した吊り上げ機構等を利用した任意の扉開閉機構を含むものである。
【0110】
(壁掛け構造の消火栓装置)
上記の実施形態は、監視員通路に露出して設置される消火栓装置として、据置き型の消火栓装置を例に取ったが、壁掛け型の消火栓装置についても、同様に消火栓扉12の扉開放機構として、リフト式扉開閉機構40を備えた第1実施形態又はスライド式扉開閉機構120を備えた第2実施形態を適用することができる。
【0111】
(消火栓装置の筐体)
上記の実施形態は、第2筐体に電装機器を配置し、第3筐体に消火器を収納しているが、第2筐体と第3筐体を一つの筐体としても良い。
【0112】
(トンネル壁面が円形断面以外の場合)
上記の実施形態におけるトンネル断面形状は円形となっているが、トンネル断面が円形以外、例えば、三心円等の場合には、トンネル断面形状の水平方向の幅が最も広い位置の水平線を、上記の説明におけるトンネル中心線SL1とすることで、本発明を適用することができる。
【0113】
(薄型化に対応した消火栓装置の構造)
上記の実施形態における消火栓装置では、消火栓装置の薄型化に対応して第1筐体及び第2筐体の横幅(左右方向)を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保しているが、第1筐体及び第2筐体の縦幅(上下方向)を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保するようにしても良い。
【0114】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0115】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
11c:第3筐体
12:消火栓扉
13a,13b,13c:化粧枠
14:扉開口
15:扉ハンドル
1510:ハンドルレバー
16:消火器扉
17:覗き窓
18:電装扉
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
25:応答ランプ
26a,26b:端子箱
27:トンネル壁面
28:電話ジャック
30:架台
35:監視員通路
36:道路
38:消火器
40:リフト式扉開閉機構
41,45:扉支点
42:第1リンク
43,46,47:筐体支点
44:第2リンク
48,122:ガスダンパー
49:リンク支点
50a:バルブ類収納部
50b:ホース収納部
51:給水配管
52:給水栓
54:消火栓弁
60:消火用ホース
62:ホース収納フレーム
63:ホース取出口
64:ノズル
65:ノズルホルダー
66:ホースガイド
68:消火栓弁開閉レバー
70:操作ボックス
72:ポンプ起動連動スイッチ
74:ポンプ起動スイッチ
76,124:シリンダ
78:ピストン
80,126:ピストンロッド
82:スプール弁
84:オリフィス孔
86:プッシュロッド
88,112:ブラケット
90:フリーピストン
92:オイル
94:窒素ガス
96:シール
98:ロッドガイド
99:ダストシール
100:遠隔操作機構
102:レバーアーム
104:ワイヤチューブ
106:ワイヤ
108,134:ローラ
110,114:固定部材
116:レバー
118:軸部
120:スライド式扉開閉機構
128:筐体固定部
130:扉固定部
132:ローラ―ガイド部