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特開2024-51389結露リスク予測システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051389
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】結露リスク予測システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20240404BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20240404BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20240404BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20240404BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20240404BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240404BHJP
   F24F 110/22 20180101ALN20240404BHJP
   F24F 130/10 20180101ALN20240404BHJP
【FI】
F24F11/64
G06Q10/04
F24F11/52
F24F11/58
G01W1/10 K
F24F110:10
F24F110:22
F24F130:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157530
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋
(72)【発明者】
【氏名】掛谷 文俊
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
【テーマコード(参考)】
3L260
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
3L260AA20
3L260AB15
3L260BA24
3L260BA64
3L260BA73
3L260BA75
3L260CA13
3L260CA23
3L260CA39
3L260CB63
3L260CB70
3L260EA27
3L260FA06
3L260FC03
3L260FC32
3L260GA13
3L260GA17
3L260JA11
3L260JA18
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】非空調の建物における土間床の結露リスクの有無を簡易に予測する。
【解決手段】結露リスク予測システムは、温度センサによって過去に検知された1日ごとの基準時刻の床温度と最低床温度との差を、実測差分値として記憶する記憶手段(32)と、温度センサにより基準時刻に検知された床温度と記憶手段に記憶された過去の実測差分値とに基づいて、1日単位で、基準時刻から24時間以内の結露リスク判定に用いる閾値を設定する閾値設定手段(22)と、閾値設定手段で設定した閾値と、基準時刻から24時間以内の最高露点温度予報値とを比較し、1日単位で結露リスクの有無を判定する判定手段(23)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非空調の建物における土間床の結露リスクを予測するための結露リスク予測システムであって、
前記建物内に設けられ、前記土間床の床温度を検知する温度センサと、
前記温度センサによって過去に検知された1日ごとの基準時刻の床温度と最低床温度との差を、実測差分値として記憶する記憶手段と、
前記温度センサにより前記基準時刻に検知された床温度と前記記憶手段に記憶された過去の実測差分値とに基づいて、1日単位で、前記基準時刻から24時間以内の結露リスク判定に用いる閾値を設定する閾値設定手段と、
前記閾値設定手段で設定した前記閾値と、前記基準時刻から24時間以内の最高露点温度予報値とを比較し、1日単位で結露リスクの有無を判定する判定手段とを備える、結露リスク予測システム。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、前記基準時刻に検知された床温度から、前記記憶手段に記憶された過去の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、前記閾値として設定する、請求項1に記載の結露リスク予測システム。
【請求項3】
前記記憶手段は、1日ごとの前記実測差分値とともに、直近の同等値が何日前であるかを示す日数をさらに記憶し、
前記閾値設定手段は、前記記憶手段に記憶された過去の日数のうち高頻度の日数を最適期間として選択し、前記基準時刻に検知された床温度から、前記記憶手段に記憶された前記最適期間内の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、前記閾値として設定する、請求項1に記載の結露リスク予測システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、1日ごとの前記実測差分値とともに、直近の同等値が何日前であるかを示す日数をさらに記憶し、
前記閾値設定手段は、
前記基準時刻に検知された床温度から、前記記憶手段に記憶された所定期間内の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、第1閾値として設定し、
前記記憶手段に記憶された過去の日数のうち高頻度の日数を最適期間として選択し、前記基準時刻に検知された床温度から、前記記憶手段に記憶された前記最適期間内の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、第2閾値として設定し、
前記判定手段は、予測対象日の最高露点温度予報値が前記第1閾値および前記第2閾値を超える場合に、最高露点温度予報値が前記第1閾値のみを超える場合よりも、結露リスクのレベルが高いと判定する、請求項1に記載の結露リスク予測システム。
【請求項5】
前記判定手段による判定結果を外部装置に通知する通知手段をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の結露リスク予測システム。
【請求項6】
非空調の建物における土間床の結露リスクを予測するための結露リスク予測プログラムであって、
前記建物内に設けられた温度センサから、前記土間床の床温度を取得するステップと、
前記温度センサにより検知された1日ごとの基準時刻の床温度と最低床温度との差を、実測差分値として算出し、記憶手段に記録するステップと、
前記温度センサにより前記基準時刻に検知された床温度と前記記憶手段に記憶された過去の実測差分値とに基づいて、1日単位で、前記基準時刻から24時間以内の結露リスク判定に用いる閾値を設定するステップと、
設定した前記閾値と、前記基準時刻から24時間以内の最高露点温度予報値とを比較し、1日単位で結露リスクの有無を判定するステップとをコンピュータに実行させる、結露リスク予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非空調の建物における土間床の結露リスクを予測するための結露リスク予測システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などの非空調の建物では、コンクリート製の土間床の結露が問題となっている。土間床の結露は、土間床の表面温度(床温度)が空気の露点温度を下回ることで発生する。外気が低温な状態が続いた後、外気温度と絶対湿度が急激に変化(上昇)する気象条件下で発生することが多く、通常は目視によって結露水が確認された時点で対処を始めるため、対処が後手に回り、収容物が濡れる、錆やカビが発生する、などの被害が発生するリスクがある。
【0003】
前日の段階で結露の発生を予測できると、結露が生じる前に適切な対策をとることができるので土間床の結露を防止することができるが、土間床の結露の発生を事前に予測する技術は存在しない。
【0004】
倉庫内の結露予測という観点では、気象予報データを利用することで、建物内に保管した製品(金属コイル等)の結露を予測する技術が従来から提案されている。特開2001-12784号公報(特許文献1)では、実測値である建物内外の空気温湿度および保管品表面温度のデータと気象予報データから、回帰式を用いて露点温度と製品表面温度を予測する手法が開示されている。回帰式の入力値(説明変数)は同時刻の瞬時値であり、回帰式は1年間に4回程度変更するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-12784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
倉庫などの建物には、収容物も含めて大きな熱容量があるため、土間床の床温度は、そのときの外気温度だけでなく、過去の外気温度の推移の影響を大きく受ける。そのため、特許文献1のように瞬時値のみを入力値として土間床の床温度を予測することは困難である。つまり、土間床の床温度を予測するためには、外気温度の観測値の推移を考慮する必要があることから、将来(たとえば翌日)の土間床の結露リスクの有無を簡易に予測することができない。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、非空調の建物における土間床の結露リスクの有無を簡易に予測することのできる結露リスク予測システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う結露リスク予測システムは、非空調の建物における土間床の結露リスクを予測するための結露リスク予測システムであって、建物内に設けられ、土間床の床温度を検知する温度センサと、温度センサによって過去に検知された1日ごとの基準時刻の床温度と最低床温度との差を、実測差分値として記憶する記憶手段とを備える。また、温度センサにより基準時刻に検知された床温度と記憶手段に記憶された過去の実測差分値とに基づいて、1日単位で、基準時刻から24時間以内の結露リスク判定に用いる閾値を設定する閾値設定手段と、閾値設定手段で設定した閾値と、基準時刻から24時間以内の最高露点温度予報値とを比較し、1日単位で結露リスクの有無を判定する判定手段とを備える。
【0009】
好ましくは、閾値設定手段は、基準時刻に検知された床温度から、記憶手段に記憶された過去の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、閾値として設定する。
【0010】
記憶手段は、1日ごとの実測差分値とともに、直近の同等値が何日前であるかを示す日数をさらに記憶することも望ましい。この場合、閾値設定手段は、記憶手段に記憶された過去の日数のうち高頻度の日数を最適期間として選択し、基準時刻に検知された床温度から、記憶手段に記憶された最適期間内の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、閾値として設定する。
【0011】
また、記憶手段が、1日ごとの実測差分値とともに、直近の同等値が何日前であるかを示す日数をさらに記憶する場合、閾値設定手段は、2つの閾値を設定してもよい。具体的には、閾値設定手段は、基準時刻に検知された床温度から、記憶手段に記憶された所定期間内の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、第1閾値として設定し、記憶手段に記憶された過去の日数のうち高頻度の日数を最適期間として選択し、基準時刻に検知された床温度から、記憶手段に記憶された最適期間内の実測差分値のうち最大値を差し引いた値を、第2閾値として設定する。この場合、判定手段は、予測対象日の最高露点温度予報値が第1閾値および第2閾値を超える場合に、最高露点温度予報値が第1閾値のみを超える場合よりも、結露リスクのレベルが高いと判定することも可能である。
【0012】
好ましくは、結露リスク予測システムは、判定手段による判定結果を外部装置に通知する通知手段をさらに備える。
【0013】
この発明の他の局面に従う結露リスク予測プログラムは、非空調の建物における土間床の結露リスクを予測するための結露リスク予測プログラムであって、建物内に設けられた温度センサから、土間床の床温度を取得するステップと、温度センサにより検知された1日ごとの基準時刻の床温度と最低床温度との差を、実測差分値として算出し、記憶手段に記録するステップと、温度センサにより基準時刻に検知された床温度と記憶手段に記憶された過去の実測差分値とに基づいて、1日単位で、基準時刻から24時間以内の結露リスク判定に用いる閾値を設定するステップと、設定した閾値と、基準時刻から24時間以内の最高露点温度予報値とを比較し、1日単位で結露リスクの有無を判定するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非空調の建物における土間床の結露リスクの有無を、複雑な解析を行うことなく、簡易に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る結露リスク予測システムの概要を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における中央監視装置の機能ブロック図である。
図3】(A),(B)は、本発明の実施の形態における閾値の設定方法および結露リスクの判定方法を説明するためのグラフである。
図4】本発明の実施の形態における結露リスク予測方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態において、設定方法1に従って閾値を設定した場合の結露リスクの予測結果と実際の結露の有無との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態において、設定方法2に従って閾値を設定する場合の差分記憶部のデータ例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
(概要について)
図1は、本実施の形態に係る結露リスク予測システムの概要を示す図である。図1を参照して、結露リスク予測システム1は、建物100のコンクリート製の土間床101の結露リスクを予測するためのシステムである。建物100は非空調の建物であり、建物100内には屋内の温湿度環境を調整するための空調設備が設けられていない。
【0018】
建物100は、典型的には倉庫であり、様々な種類の物品を内部(屋内空間)に収容している。建物100は、出入口に設けられたシャッター(図示せず)と、換気装置の一種であり、外壁等に設けられた換気扇102とを備えている。換気扇102は、通常時には常時運転され、外気が建物100内に取り込まれる。
【0019】
結露リスク予測システム1は主に、中央監視装置2と、土間床101の表面温度、すなわち床温度を検知する温度センサ3とを備えている。中央監視装置2は、メモリおよびプロセッサを有するコンピュータであり、有線または無線により、建物100に設置された温度センサ3と接続されている。また、中央監視装置2は、インターネットに接続されており、インターネット経由で翌日以降の気象予報値を入手可能である。なお、中央監視装置2は、建物100内に設けられていてもよいし、クラウド上に設けられていてもよい。
【0020】
中央監視装置2は、メモリに記憶されている結露リスク予測プログラムを実行することにより、翌日の土間床101の結露リスクの有無を予測し、その予測結果を、建物100の管理者や作業者の端末(外部装置)5に通知する。
【0021】
(中央監視装置の機能構成について)
図2(A)は、本実施の形態における中央監視装置2の機能構成を示す図である。中央監視装置2は、算出部21と、閾値設定部22と、リスク判定部23と、通知処理部24と、履歴データベース31と、差分記憶部(dT記憶部)32とを含む。
【0022】
履歴データベース31には、温度センサ3により検知された床温度データが時系列に記憶される。算出部21は、履歴データベース31に記憶された履歴データに基づいて、毎日(1日単位で)、基準時刻の床温度とその日の最低床温度との差(以下、「実測差分値dT」という)を算出する。「基準時刻」は、閾値設定部22が閾値を設定する時刻であり、たとえば午前0時である。
【0023】
図3(A)に示すグラフの6月9日の例では、午前0時の床温度が21.0℃程度であり、その日の最低床温度が20.5℃程度であるので、6月9日の実測差分値dTは0.5℃として算出される。
【0024】
算出部21による算出結果が、差分記憶部32に蓄積される。つまり、差分記憶部32には、温度センサ3によって過去に検知された1日ごとの基準時刻の床温度と最低床温度との差が、実測差分値dTとして記憶される。図2(B)に、差分記憶部32に記憶されるデータ例を示す。
【0025】
閾値設定部22は、温度センサ3により基準時刻に検知された床温度と差分記憶部32に記憶された過去の実測差分値dTとに基づいて、1日単位で、基準時刻から24時間以内(以下、「翌日」ともいう)の結露リスク判定に用いる閾値を設定する。閾値としては、翌日の床温度の最低値に近い値が設定される。閾値の設定方法の具体例は後述する。
【0026】
リスク判定部23は、閾値設定部22で設定した閾値と、翌日(基準時刻から24時間以内)の最高外気露点温度の予報値(以下「最高露点温度予報値」という)とを比較し、1日単位で結露リスクの有無を判定する(結露の発生時刻までは特定しない)。具体的には、翌日の最高露点温度予報値が閾値を越えている場合に、「結露リスク有り」と判定し、翌日の最高露点温度予報値が閾値以下である場合には、「結露リスク無し」と判定する。
【0027】
図3(B)のグラフを参照して、現在時刻が6月10日の午前0時(6月9日の午後12時)と仮定すると、6月10日は、最高露点温度予報値が閾値を下回っているので「結露リスク無し」と判定することができる。なお、前日の6月9日は、「結露リスク有り」と判定される例を示しており、最高露点温度予報値と閾値との関係が逆になっている。図3(B)には、それぞれの日に実際に測定された床温度が二点鎖線で示されている。
【0028】
通知処理部24は、リスク判定部23の判定結果を、通信インターフェイス(図示せず)を介して端末5に通知する。通知処理部24は、リスク判定部23によって「結露リスク有り」と予測された場合にのみ、通知処理を行ってもよい。つまり、リスク判定部23の予測結果が「結露リスク無し」である場合には、端末5への通知処理を行わなくてもよい。
【0029】
算出部21、閾値設定部22、リスク判定部23、および通知処理部24の機能は、典型的にはプロセッサがソフトウェアを実現することにより実現される。履歴データベース31および差分記憶部32は、ハードディスク等の記憶装置により実現されてもよいし、クラウド上に設けられてもよい。
【0030】
(閾値の設定方法)
図2(B)および図3(A)を参照して、閾値の設定方法の具体例について説明する。
【0031】
コンクリート製の土間床101は熱容量が大きいため、外気温度が急激に変化したとしても、床温度は緩やかに変化する特徴があるため、上述の実測差分値dTは大きく変化しない。外気温度が急激に変化し得る夏期であっても、1日ごとの実測差分値dTは極端に変わらない。この特徴に基づいて、以下の手順で閾値を設定する。
【0032】
本実施の形態において、閾値設定部22は、前日までに観測された過去の日ごとの実測差分値dTのうち最大値(以下「最大実測差分値dTmax」という)を選定する。そして、現在時刻(基準時刻)の床温度から、最大実測差分値dTmaxを差し引いた値を、閾値として設定する(図3(A)のグラフ参照)。
【0033】
このように、本実施の形態では、翌日の最悪条件(床温度が最も低下する場合)を想定して、閾値が設定される。
【0034】
(結露リスク予測方法)
図4は、本実施の形態の中央監視装置2が実行する結露リスク予測方法を示すフローチャートである。
【0035】
現在の時刻が予め定めた基準時刻(たとえば午前0時)になると(ステップS2にてYES)、算出部21が前日(過去24時間)の実測差分値dTを算出および記録する(ステップS4)。たとえば、現在時刻が6月10日の午前0時とすると、6月9日の午前0時における床温度とその日の最低床温度との差を、実測差分値dTとして算出する。そして、算出した実測差分値dTを日にち(6月9日)と対応付けて、差分記憶部32に記憶する。
【0036】
続いて、閾値設定部22が、差分記憶部32に記憶されている過去の実測差分値dTのうち、最大実測差分値dTmaxを選択する(ステップS6)。たとえば図2に示す例では、6月1日の実測差分値dT(1.6)が最大実測差分値dTmaxとして選択される。また、閾値設定部22は、履歴データベース31から現在時刻(基準時刻)の床温度T0を取得する(ステップS8)。
【0037】
閾値設定部22は、選択した最大実測差分値dTmaxと取得した現在時刻の床温度T0とに基づいて、予測対象日(6月10日)の閾値を設定する(ステップS10)。すなわち、現在時刻の床温度T0から最大実測差分値dTmaxを引いた温度を、翌日の閾値として設定する。
【0038】
閾値が設定されると、リスク判定部23は、インターネットを介して翌日の最高露点温度予報値を取得し、取得した最高露点温度予報値と閾値とを比較する(ステップS12)。最高露点温度予報値が閾値を上回っている場合(ステップS12にてYES)、リスク判定部23は「結露リスク有り」と判定する(ステップS14)。逆に、最高露点温度予報値が閾値以下であれば(ステップS12にてNO)、リスク判定部23は「結露リスク無し」と判定する(ステップS16)。
【0039】
リスク判定部23による判定処理が終わると、ステップS2に戻る。なお、リスク判定部23による判定結果は通知処理部24に入力される。通知処理部24は、たとえば毎日、端末5に結露リスク予測結果を通知する。端末5への通知は、電子メール等により行われる。
【0040】
この閾値設定方法によれば、本システム1の運用を開始してから最も悪い条件(床温度の低下割合が最も高い場合)を採用するため、実際に結露が発生し得る日に対し、前日の段階で確実に「結露リスク有り」と予測することが可能となる。図5に示すように、実際の床温度が閾値を下回ることは無いため、実際に結露が発生し得る日に対して「結露リスク無し」と誤判定されることを防止できる。したがって、従業員への注意喚起をしたり、事前に換気扇102を停止したり、必要な結露対策を講じることが可能となる。
【0041】
一方で、図5にグラフの5月18日、19日のように「結露リスク有り」との予測結果が外れる(実際には結露が発生しない)頻度は、比較的多くなる可能性があるものの、「結露リスク無し」との予測結果が外れる(実際には結露が発生する)ことは無いため、結露被害を防止するという観点で実質的な問題はないと考えられる。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態では、床温度の実測値および翌日の最高露点温度予報値を用いるだけの簡単な計算で、翌日の結露リスクの有無を予測することができる。外気の最高露点温度予報値は一般公開されている天気予報から入手でき、詳細な気象データを入手する(購入する)必要がないため、ランニングコストを抑えることができる。また、重回帰分析のような複雑な解析を必要としないため、本システム1を安価に抑えることができる。
【0043】
(閾値の他の設定方法)
閾値設定部22による閾値の設定方法は、上述の設定方法(以下「設定方法1」という)に限定されない。以下に、他の設定方法(以下「設定方法2」という)について説明する。
【0044】
設定方法2では、閾値設定部22の処理および差分記憶部32の記憶データが、設定方法1と相違するため、ここでは、閾値設定部22および差分記憶部32をそれぞれ、閾値設定部22Aおよび差分記憶部32Aと記載する(図1参照)。
【0045】
図6は、設定方法2に従う場合の差分記憶部32Aのデータ例を示す図である。差分記憶部32Aは、1日ごとの実測差分値dTとともに、直近の同等値が何日前であるかを示す日数Nをさらに記憶している。たとえば6月4日の実測差分値dTが「1.1」であるとすると、直近の同等値は1日前(6月3日)であるので、日数Nとして「1」が記録されている。また、たとえば6月5日の実測差分値dTが「1.4」であるとすると、直近の同等値は3日前(6月2日)であるので、日数Nとして「3」が記録されている。
【0046】
「同等値」は、実測差分値dTと全く同じ値でなくてもよく、たとえば+0.2℃程度の誤差を許容してもよい。ただし、マイナス側の誤差は許容しないことが望ましい。
【0047】
閾値設定部22Aは、まず、差分記憶部32Aに記憶された過去の日数のうち高頻度の日数を最適期間として選択する。図6の例では、6月10日時点での最適期間は「3」となる。最適期間が選択されると、この最適期間内(予測対象日の3日前まで)の実測差分値dTのうち最大値(1.4)を選定し、基準時刻に検知された床温度T0から最大実測差分値dTmax(1.4)を差し引いた値を、閾値として設定する。
【0048】
この設定方法2によると、設定方法1よりも最大実測差分値dTmaxは低い値になることが想定される。そのため、設定方法1よりも閾値は高くなる。たとえば、6月10日の基準時刻の床温度T0が20℃であるとすると、設定方法1では閾値が「18.4」であるのに対し、設定方法2では閾値が「18.6」として算出される。
【0049】
したがって、設定方法2を採用することにより、設定方法1よりも「結露リスク有り」の予測結果が外れる頻度を低減することができる。
【0050】
なお、設定方法2のように毎回、最適期間を選択し、選択した最適期間のうちの最大値を最大実測差分値dTmaxとする方法に限定されず、単純に、予め定めた期間(たとえば、直近の1年間、過去の同じ月)のうちの最大値を最大実測差分値dTmaxとしてもよい。
【0051】
(設定方法1、2を併用したリスク判定)
リスク判定部23は、設定方法1および設定方法2を併用することにより、結露リスクのレベルを判定することも可能である。具体的には、設定方法1で設定した閾値を「第1閾値」、設定方法2で設定した閾値を「第2閾値」と表記すると、リスク判定部23は、予測対象日の最高露点温度予報値が第2閾値を超える場合(必然的に第1閾値も超えるため、第1閾値および第2閾値の両方を超える場合)に、「結露リスク大」と判定し、最高露点温度予報値が第1閾値のみを超える場合に、「結露リスク小」と判定する。つまり、リスク判定部23は、前者の方が後者よりも結露リスクのレベルが高いと判定することが可能である。
【0052】
この場合、通知処理部24によって端末5に結露リスクの有無だけでなく、「結露リスク有り」の場合のレベルが通知されるため、通知を受けた管理者や作業者は、「結露リスク有り」の予測外れの可能性が高いか否かを把握することも可能となる。
【0053】
以上説明した中央監視装置2が実行する結露リスクの予測方法をプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0054】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0055】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 結露リスク予測システム、2 中央監視装置、3 温度センサ、5 端末、21 算出部、22,22A 閾値設定部、23 リスク判定部、24 通知処理部、31 履歴データベース、32,32A 差分記憶部、100 建物、101 土間床、T0 床温度、dT 実測差分値、dTmax 最大実測差分値。
図1
図2
図3
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図5
図6