(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051393
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】パッキン及びそれを備えた水洗大便器
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240404BHJP
E03D 1/26 20060101ALI20240404BHJP
E03D 11/13 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16J15/10 N
E03D1/26
E03D11/13
F16J15/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157540
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翼
【テーマコード(参考)】
2D039
3J040
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039CA05
2D039CB01
3J040BA03
3J040EA01
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA03
(57)【要約】
【課題】組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができるパッキンを提供する。
【解決手段】本発明は、第1の部材と第2の部材との間に挟んで使用されるパッキン(6)であって、環状の基部(12)と、この基部の一方の面から第1の部材に向けて突出する環状の壁部であって、第1の部材と当接する複数の第1環状壁部(14)と、基部の他方の面から第2の部材に向けて突出する環状の壁部であって、第2の部材と当接する複数の第2環状壁部(16)と、を有し、複数の第1環状壁部及び複数の第2環状壁部は、第1の部材と第2の部材の間に挟まれたとき、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形され、基部には、複数の第1環状壁部と第1の部材によって囲まれた空間と、複数の第2環状壁部と第2の部材によって囲まれた空間を連通させる連通孔(12b)が設けられていることを特徴としている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を流出させる第1の部材と、この第1の部材から流出した液体を流入させる第2の部材との間に挟んで使用されるパッキンであって、
上記第1の部材に設けられた流出口及び上記第2の部材に設けられた流入口を取り囲むように配置される環状の基部と、
この基部の一方の面から上記第1の部材に向けて突出する環状の壁部であって、上記第1の部材と当接する複数の第1環状壁部と、
上記基部の他方の面から上記第2の部材に向けて突出する環状の壁部であって、上記第2の部材と当接する複数の第2環状壁部と、を有し、
上記複数の第1環状壁部及び上記複数の第2環状壁部は、上記第1の部材と上記第2の部材の間に挟まれたとき、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形され、
上記基部には、上記複数の第1環状壁部と上記第1の部材によって囲まれた空間と、上記複数の第2環状壁部と上記第2の部材によって囲まれた空間を連通させる連通孔が設けられていることを特徴とするパッキン。
【請求項2】
上記連通孔は、円形、又は角の丸い形状に形成されている請求項1記載のパッキン。
【請求項3】
上記基部は、上記連通孔の周囲において、厚さが厚くなるように構成されている請求項1記載のパッキン。
【請求項4】
上記基部には、上記連通孔が複数設けられている請求項1記載のパッキン。
【請求項5】
上記第1の部材及び上記第2の部材の一方は陶器製であり、上記第1の部材及び上記第2の部材の他方は樹脂製である請求項1記載のパッキン。
【請求項6】
洗浄水タンクを備えた密結式の水洗大便器であって、
上記第1の部材である樹脂製の洗浄水タンクと、
上記第2の部材である陶器製の水洗大便器本体と、
上記洗浄水タンクと上記水洗大便器本体との間に配置された請求項1乃至5の何れか1項に記載のパッキンと、
を有することを特徴とする水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパッキンに関し、特に、液体を流出させる第1の部材と、この第1の部材から流出した液体を流入させる第2の部材との間に挟んで使用されるパッキン、及びそれを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-169552号公報(特許文献1)には、パッキン及び水洗大便器が記載されている。特許文献1において、パッキンは、洗浄水タンクと便器本体を備えた所謂密結式の水洗大便器に適用されており、洗浄水タンクと便器本体との間に挟んだ状態で使用され、これらの部材の間の水密性を確保している。即ち、特許文献1記載のパッキンは、円環状の基部と、この基部から洗浄水タンクの側に突出する複数の第1突出部と、基部から便器本体の側に突出する複数の第2突出部と、を備えている。そして、使用時において、洗浄水タンクと便器本体との間に挟まれると、基部から突出する第1突出部、及び第2突出部が内側に向けて倒れ込むように弾性変形される。これにより、第1突出部と洗浄水タンク、及び第2突出部と便器本体が夫々密着し、洗浄水タンクと便器本体を水密的に連通させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のパッキンでは、施工時のパッキンの組み付け方により、パッキンのシール性能が低下する場合がある。このパッキンのように、2つの部材の間に挟まれた状態で使用されるパッキンは、組み付け完了後の使用状態において、どのような形状に弾性変形されているか、直接観察することができない。パッキンのシール性能が低下する原因を解明するため、本件発明者は、組み付け状態にある弾性変形後のパッキンの形状を、X線解析等を利用して観察し、その原因を突き止めた。即ち、パッキンを2つの部材の間に組み付ける際、パッキンの2つの突出部と組み付ける部材の表面によって囲まれる閉空間が形成され、この空間内の空気が適時に排出されずに残ると、残留した空気の影響により突出部が設計時に意図した通りの形状に変形されず、シール性能が低下する場合があることが明らかになった。
【0005】
従って、本発明は、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができるパッキン及びそれを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体を流出させる第1の部材と、この第1の部材から流出した液体を流入させる第2の部材との間に挟んで使用されるパッキンであって、第1の部材に設けられた流出口及び第2の部材に設けられた流入口を取り囲むように配置される環状の基部と、この基部の一方の面から第1の部材に向けて突出する環状の壁部であって、第1の部材と当接する複数の第1環状壁部と、基部の他方の面から第2の部材に向けて突出する環状の壁部であって、第2の部材と当接する複数の第2環状壁部と、を有し、複数の第1環状壁部及び複数の第2環状壁部は、第1の部材と第2の部材の間に挟まれたとき、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形され、基部には、複数の第1環状壁部と第1の部材によって囲まれた空間と、複数の第2環状壁部と第2の部材によって囲まれた空間を連通させる連通孔が設けられていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、パッキンを第1の部材と第2の部材の間に組み付ける際に、複数の第1環状壁部の間と第1の部材の表面によって囲まれる空間、及び複数の第2環状壁部の間と第2の部材の表面によって囲まれる空間が形成される。パッキンが第1の部材と第2の部材の間に挟まれて押圧されると、パッキンの複数の第1環状壁部及び複数の第2環状壁部は、夫々パッキンの内側に向けて倒れるように弾性変形される。これにより、パッキンと第1、第2の部材の間の水密性が確保されると共に、複数の第1環状壁部と第1の部材によって囲まれた空間、及び複数の第2環状壁部と第2の部材によって囲まれた空間の容積が夫々縮小される。これに伴い各空間内の空気は、第1環状壁部と第1の部材の表面の間、又は第2環状壁部と第2の部材の表面の間から排出される。
【0008】
ここで、空間内の空気の抜けやすさ(排出のされやすさ)は、第1、第2の部材の材質、各部材の表面の粗さ、パッキンの環状壁部と部材の表面の間の摺動抵抗、環状壁部と部材の押し付け圧力等に依存する。例えば、一方の部材の表面が樹脂製であり、他方の部材の表面が陶器製である場合、樹脂製の表面と環状壁部の間の方が摺動抵抗が小さく、これらの間から空気が抜けやすくなる傾向がある。上記のように構成された本発明によれば、パッキンの基部に、複数の第1環状壁部と第1の部材によって囲まれた空間と、複数の第2環状壁部と第2の部材によって囲まれた空間を連通させる連通孔が設けられている。このため、複数の第1環状壁部と第1の部材によって囲まれた空間と、複数の第2環状壁部と第2の部材によって囲まれた空間の、空気が抜けやすい方から空気を排出することができる。この結果、両方の空間から容易に空気を排出することが可能になり、空間内に閉じ込められた空気により第1又は第2の環状壁部の弾性変形が阻害されるのを抑制することができる。これにより、第1環状壁部及び第2環状壁部を適正に弾性変形させることができ、シール性能の低下を抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、連通孔は、円形、又は角の丸い形状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、パッキンの基部に設けた連通孔が、円形、又は角の丸い形状に形成されているので、パッキンが弾性変形される際に、連通孔の縁に応力集中が発生するのを抑制することができる。これにより、連通孔を設けたことに起因する基部の損傷を抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、基部は、連通孔の周囲において、厚さが厚くなるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、連通孔の周囲において基部が厚く構成されているので、連通孔の周囲が補強され、連通孔の周囲における損傷の発生を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、基部には、連通孔が複数設けられている。
このように構成された本発明によれば、基部に、連通孔が複数設けられているので、パッキンを組み付ける際、パッキンの弾性変形により1つの連通孔が閉塞された場合でも、他の連通孔から空気を逃がすことができる。このため、より確実に環状壁部と部材の表面で囲まれた空間から空気を逃がすことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、第1の部材及び第2の部材の一方は陶器製であり、第1の部材及び第2の部材の他方は樹脂製である。
一般に、環状壁部と樹脂製の部材の表面の間からは空気が抜けやすく、環状壁部と陶器製の部材の表面の間からは空気が抜けにくい傾向がある。上記のように構成された本発明によれば、一方の部材が陶器製であり、他方の部材は樹脂製であるので、環状壁部と陶器製の部材の表面によって囲まれた空間内の空気を、樹脂製の部材と環状壁部の間から逃がすことができる。これにより、第1の部材の側、第2の部材の側とも、確実に空気を逃がすことができ、環状壁部を適正に弾性変形させることができる。
【0013】
また、本発明は、洗浄水タンクを備えた密結式の水洗大便器であって、第1の部材である樹脂製の洗浄水タンクと、第2の部材である陶器製の水洗大便器本体と、洗浄水タンクと水洗大便器本体との間に配置された本発明のパッキンと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパッキン及びそれを備えた水洗大便器によれば、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態によるパッキンを組み込んだ水洗大便器の分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態によるパッキンの斜視図である。
【
図3】
図2に示すパッキンのIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるパッキンの連通孔の部分を拡大して示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態の水洗大便器において、洗浄水タンクの水洗大便器本体への取り付け作業を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態において、洗浄水タンクの取り付け時におけるパッキンの状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態において、パッキンが弾性変形された状態を示す断面図である。
【
図8】比較例によるパッキンにおいて、適正な弾性変形が阻害された状態を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるパッキン、及びそれを備えた水洗大便器を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるパッキンを組み込んだ水洗大便器の分解斜視図である。
図2は、本発明の実施形態によるパッキンの斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、パッキンの連通孔の部分を拡大して示す平面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、洗浄水タンク2と、水洗大便器本体4を備えた所謂密結式の水洗大便器であり、洗浄水タンク2と水洗大便器本体4の間の水密性が、本発明の実施形態のパッキン6により確保されている。即ち、パッキン6は、第1の部材である洗浄水タンク2と、洗浄水タンク2から流出した洗浄水を流入させる第2の部材である水洗大便器本体4との間に挟んで使用され、洗浄水タンク2と水洗大便器本体4の間の水密性を確保している。
【0018】
洗浄水タンク2は、水洗大便器本体4を洗浄するための洗浄水を貯留するタンクである。また、洗浄水タンク2の底面中央には短い円筒形の流出管8が設けられており、この流出管8は、洗浄水タンク2の底面から下方に向けて突出し、洗浄水タンク2に貯留した洗浄水を下端の流出口8aから流出させる。パッキン6は、流出管8周囲に配置される。さらに、洗浄水タンク2の底面には2本の固定用ボルト2aが設けられており、これらの固定用ボルト2aは流出管8の両側から下方に向けて突出している。なお、本実施形態において、洗浄水タンク2は樹脂製であるが、洗浄水タンク2は陶器製であっても良い。
【0019】
水洗大便器本体4は洋風の水洗大便器であり、ボウル部4aと、ボウル部4aを取り囲むスカート部4bと、洗浄水タンク2を載置するための載置部10と、を有する。載置部10は、水洗大便器本体4上面の、ボウル部4aの後方に形成された水平な面であり、洗浄水タンク2を載置して、固定するように構成されている。載置部10の幅方向中央には、洗浄水タンク2から供給された洗浄水を流入させる流入口10aが設けられ、流入口10aの両側には、固定用ボルト2aを受け入れるための固定用穴10bが夫々設けられている。洗浄水タンク2の流出管8から流出した洗浄水は、水洗大便器本体4の流入口10aから流入し、ボウル部4aの吐水口(図示せず)から吐水されてボウル部4aを洗浄する。ボウル部4aを洗浄した洗浄水は、ボウル部4aの底部に連通した排水トラップ管路(図示せず)を通って排水される。
【0020】
図2及び
図3に示すように、パッキン6は、全体として、円環状のゴム製の部材であり、洗浄水タンク2の流出管8の流出口8aを取り囲むように配置される。また、パッキン6は、環状の基部12と、この基部12の上面から洗浄水タンク2(の底面)に向けて延びる複数の第1環状壁部14と、基部12の下面から水洗大便器本体4(の載置部10)に向けて延びる複数の第2環状壁部16と、を有する。
【0021】
基部12は、円形、環状の平面部分であり、基部12の内側には円形の開口12aが形成されている。本実施形態においては、この開口12aの中に洗浄水タンク2の流出管8が嵌め込まれるため、基部12は、流出口8aの周囲を取り囲むように配置される。また、本実施形態において、基部12は、円形の環状に構成されているが、基部12は必ずしも円形である必要はなく、水密性を確保する部材の形状に合わせて、任意形態の環状に構成することができる。
【0022】
第1環状壁部14は、基部12の上面から上方に向けて突出する円形の環状の壁部であり、本実施形態においては、同心円上に2つの第1環状壁部14が設けられている。外周側の第1環状壁部14は、基部12の外周縁に沿って設けられ、基部12の上方に向けて立ち上がるように構成されている。また、内周側の第1環状壁部14は、外周側の第1環状壁部14の内側に間隔を空けて設けられ、基部12の上方に向けて立ち上がるように構成されている。さらに、外周側及び内周側の第1環状壁部14は、内側に向けて(パッキン6の中心に向けて)傾斜するように構成されている。また、パッキン6の実使用時において、各第1環状壁部14の先端14aは、洗浄水タンク2の底面と当接し、パッキン6が洗浄水タンク2に押し付けられると、各第1環状壁部14は、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形される。
【0023】
なお、外周側及び内周側の第1環状壁部14は、同一の高さに形成されていると共に、同一の角度傾斜している。本実施形態において、各第1環状壁部14の高さは約8mmであり、好ましくは、第1環状壁部14の高さを約6mm乃至約10mmに構成する。また、本実施形態において、各第1環状壁部14は、基部12に対して約20度の角度を為すように構成されており、好ましくは、第1環状壁部14の角度は約15度乃至約25度に構成する。さらに、本実施形態において、外周側の第1環状壁部14と内周側の第1環状壁部14は、半径方向に約5mm離間して配置されている。好ましくは、外周側と内周側の第1環状壁部14を、半径方向に約3mm乃至約7mm離間させる。また、本実施形態において、第1環状壁部14は2つ設けられているが、第1環状壁部14を3つ以上設けることもできる。
【0024】
次に、第2環状壁部16は、基部12の下面から下方に向けて突出する円形の環状の壁部であり、本実施形態においては、同心円上に2つの第2環状壁部16が設けられている。また、
図3に示すように、本実施形態において、第2環状壁部16は、基部12の下面に設けられている点を除き、第1環状壁部14と完全に同一に構成されているので、第2環状壁部16の寸法、形状については説明を省略する。さらに、パッキン6の実使用時において、各第2環状壁部16の先端16aは、水洗大便器本体4の載置部10表面と当接し、パッキン6が水洗大便器本体4に押し付けられると、各第2環状壁部16は、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形される。
【0025】
さらに、
図2に示すように、基部12の、外側の第1環状壁部14と内側の第1環状壁部14の間(外側の第2環状壁部16と内側の第2環状壁部16の間)には、連通孔12bが形成されている。この連通孔12bは、本実施形態において、基部12の円周上に等間隔に4つ(
図2には2つのみ図示)設けられており、基部12の上面と下面の間を貫通している(
図3)。このため、パッキン6の実使用時において、外側の第1環状壁部14、内側の第1環状壁部14、及び洗浄水タンク2によって囲まれる空間と、外側の第2環状壁部16、内側の第2環状壁部16、及び水洗大便器本体4によって囲まれる空間が、連通孔12bによって連通される。
【0026】
また、
図4に示すように、連通孔12bの半径方向の幅は、外側と内側の第1環状壁部14の間の間隔と同一である。即ち、連通孔12bは、各第1環状壁部14の基端に沿ってパッキン6の円周方向に延びており、平面視において、円弧形状に構成されている。また、円弧状に延びる連通孔12b端部の角には丸味が付けられており、パッキン6が弾性変形されたとき、連通孔12bの角の部分に応力が集中しにくい形状にされている。さらに、連通孔12bの円周方向の両端部には、肉厚部12cが形成されており、基部12の厚さが厚くされている。一方、連通孔12bの半径方向の両側の端部は各第1環状壁部14によって構成されている。このように、基部12は、連通孔12bの周囲において、厚さが厚くなるように構成されている。
【0027】
このように、本実施形態においては、角の丸い円弧形状の連通孔12bが4つ設けられているが、連通孔12bは、円形等、任意の形状に形成することができると共に、1つ以上設けられていれば良い。好ましくは、連通孔12bの角部には丸味を付け、連通孔12bの周囲の肉厚は厚く形成する。
【0028】
次に、
図5乃至
図8を参照して、洗浄水タンク2の水洗大便器本体4への取り付け、及び取り付け時におけるパッキン6の作用を説明する。
図5は、洗浄水タンク2の水洗大便器本体4への取り付け作業を模式的に示す図である。
図6は、洗浄水タンク2の取り付け時におけるパッキンの状態を示す断面図である。
図7は、洗浄水タンク2の取り付け時においてパッキンが弾性変形された状態を示す断面図である。
図8は、比較例として、パッキンの適正な弾性変形が阻害された例を示す断面図である。
【0029】
図5に示すように、洗浄水タンク2を水洗大便器本体4に取り付ける場合には、まず、洗浄水タンク2の底面から突出する流出管8にパッキン6を嵌め込んでおき、この状態で、洗浄水タンク2を水洗大便器本体4の載置部10に載置する。この際、洗浄水タンク2の底面から突出する各固定用ボルト2aが、載置部10に設けられた各固定用穴10bに挿入されるように洗浄水タンク2を載置することにより、洗浄水タンク2を適正位置に位置決めすることができる。
【0030】
図5に示す状態においては、パッキン6の各第1環状壁部14の先端14aは、洗浄水タンク2の底面と当接している。そして、洗浄水タンク2を水洗大便器本体4に載置する際、
図6に示すように、各第2環状壁部16の先端16aが、載置部10の表面と当接する。これにより、パッキン6の基部12の上側には2つの第1環状壁部14と洗浄水タンク2の底面によって囲まれた空間S1が形成され、パッキン6の基部12の下側には2つの第2環状壁部16と水洗大便器本体4の載置部10表面によって囲まれた空間S2が形成される。
【0031】
さらに、
図7に示すように、洗浄水タンク2を下方に下げると、パッキン6は、洗浄水タンク2の底面と水洗大便器本体4の載置部10の間に挟まれ、弾性変形される。この際、パッキン6の各第1環状壁部14及び各第2環状壁部16は、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形される。これに伴い、2つの第1環状壁部14と洗浄水タンク2の底面によって囲まれた空間S1、及び2つの第2環状壁部16と水洗大便器本体4の載置部10表面によって囲まれた空間S2の容積が縮小される。この際、空間S1、S2の中の空気は、各第1環状壁部14の先端14aと洗浄水タンク2の底面の間、及び各第2環状壁部16の先端16aと載置部10表面の間から外部空間に流出する。
【0032】
ここで、本実施形態においては、洗浄水タンク2(の底面)は樹脂製であるため、洗浄水タンク2の底面と、各第1環状壁部14の先端14aとの間の摺動抵抗が比較的低く、各第1環状壁部14の先端14aが洗浄水タンク2の底面上を摺動する際に、比較的、空間内の空気が流出しやすい。一方、水洗大便器本体4(の載置部10)は、陶器製であるため、載置部10と、各第2環状壁部16の先端16aとの間の摺動抵抗が比較的高く、各第2環状壁部16の先端16aと載置部10の間から空気が流出しにくい傾向がある。
【0033】
しかしながら、本実施形態においては、パッキン6の基部12の上側の空間S1と、下側の空間S2が、連通孔12bにより連通されているため、空間S2の中に存在した空気も、連通孔12bを通って空間S1に流入し、各第1環状壁部14の先端14aと洗浄水タンク2の底面の間から外部空間に流出することができる。このように、本実施形態においては、空間S1とS2が連通孔12bにより連通されているため、これらの内部に存在した空気は、空気の抜けやすい部分を通って流出することができ、速やかに外部空間に排出される。このため、本実施形態のパッキン6では、空間S1又はS2の中に閉じ込められた空気により、各第1環状壁部14及び各第2環状壁部16の適正な弾性変形が阻害されることが少なく、各第1環状壁部14及び各第2環状壁部16を適正に弾性変形させることができる。
【0034】
また、パッキン6の全周が均等に圧縮されず、パッキン6の一部分のみが先に圧縮された場合には、この圧縮により連通孔12bが閉塞されてしまう場合がある。しかしながら、連通孔12bは、パッキン6の円周上に等間隔に4つ形成されているため、パッキン6の一部分が先に圧縮され、一部の連通孔12bが閉塞された場合でも、他の連通孔12bによって空間S1とS2の連通が確保される。これにより、空間S1及びS2内の空気を確実に排出することができる。
【0035】
これに対して、比較例として、
図8に示すように、パッキンの基部に連通孔12bが設けられていない場合には、空間S1又はS2の中に閉じ込められた空気により、第1環状壁部14又は第2環状壁部16の弾性変形が阻害され、環状壁部が適正に変形させない場合がある。
図8は、空間S2に閉じ込められた空気により、外側の環状壁部の適正な弾性変形が阻害された例を示している。このように、環状壁部が適正に弾性変形されない場合には、パッキンによるシール性能が低下する虞がある。一方、本実施形態のパッキン6では、空間S1とS2が連通孔12bにより連通されているため、空間S1又はS2の何れかの空気が排出されにくい場合でも、空気を排出しやすい方の空間を介して空気を排出することができ、確実に空気を外部に排出することができる。
【0036】
本発明の実施形態のパッキン6によれば、パッキン6の基部に、複数の第1環状壁部14と洗浄水タンク2によって囲まれた空間S1と、複数の第2環状壁部16と水洗大便器本体4によって囲まれた空間S2を連通させる連通孔12bが設けられている。このため、複数の第1環状壁部14と洗浄水タンク2によって囲まれた空間S1と、複数の第2環状壁部16と水洗大便器本体4によって囲まれた空間S2の、空気が抜けやすい方から空気を排出することができる。この結果、両方の空間から容易に空気を排出することが可能になり、空間内に閉じ込められた空気により第1環状壁部14又は第2環状壁部16の弾性変形が阻害されるのを抑制することができる。これにより、第1環状壁部14及び第2環状壁部16を適正に弾性変形させることができ、シール性能の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本発明の実施形態のパッキン6によれば、パッキン6の基部12に設けた連通孔12bが、角の丸い形状に形成されているので、パッキン6が弾性変形される際に、連通孔12bの縁に応力集中が発生するのを抑制することができる。これにより、連通孔12bを設けたことに起因する基部12の損傷を抑制することができる。
【0038】
さらに、本発明の実施形態のパッキン6によれば、連通孔12bの周囲において基部12が厚く構成されているので、連通孔12bの周囲が補強され、連通孔12bの周囲における損傷の発生を抑制することができる。
【0039】
また、本発明の実施形態のパッキン6によれば、基部12に、連通孔12bが複数設けられているので、パッキン6を組み付ける際、パッキン6の弾性変形により1つの連通孔12bが閉塞された場合でも、他の連通孔12bから空気を逃がすことができる。このため、より確実に第1、第2の環状壁部と部材の表面で囲まれた空間から空気を逃がすことができる。
【0040】
さらに、本発明の実施形態のパッキン6によれば、水洗大便器本体4が陶器製であり、洗浄水タンク2は樹脂製であるので、第2環状壁部16と陶器製の水洗大便器本体4の表面によって囲まれた空間S2内の空気を、樹脂製の洗浄水タンク2と第1環状壁部14の間から逃がすことができる。これにより、洗浄水タンク2の側、水洗大便器本体4の側とも、確実に空気を逃がすことができ、第1、第2の環状壁部を適正に弾性変形させることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態によるパッキン及びそれを備えた水洗大便器を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、本発明のパッキンが洗浄水タンクと水洗大便器本体の間に適用されていたが、本発明のパッキンは、水洗大便器本体と排水ソケットの間等、種々の水回り機器において水密性を確保する必要がある2つの部材の接続部に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 水洗大便器
2 洗浄水タンク(第1の部材)
2a 固定用ボルト
4 水洗大便器本体(第2の部材)
4a ボウル部
4b スカート部
6 パッキン
8 流出管
8a 流出口
10 載置部
10a 流入口
10b 固定用穴
12 基部
12a 開口
12b 連通孔
12c 肉厚部
14 第1環状壁部
14a 先端
16 第2環状壁部
16a 先端