(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051394
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】水密接続構造、及びそれを備えた水洗大便器
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20240404BHJP
E03D 11/13 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16J15/10 L
E03D11/13
F16J15/10 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157541
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
【テーマコード(参考)】
2D039
3J040
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD02
2D039CA05
2D039DB00
3J040BA03
3J040EA01
3J040EA16
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA04
3J040HA15
(57)【要約】
【課題】組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができるパッキン及びそれを備えた水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は、水密接続構造(6)であって、パッキン(8)は、環状の基部(8a)と、この基部の一方の面から突出する第1環状壁部(8b)と、基部の他方の面から突出する第2環状壁部(8c)と、基部から内周側に向けて突出する係止部(8d)と、を有し、第1の部材に設けられた流路の周囲には、パッキンを収容するための収容凹部(18)が設けられ、第2の部材には、収容凹部に収容されたパッキンの第2環状壁部と当接してパッキンを弾性変形させる当接面(10b)が設けられ、第1の部材の収容凹部の内周壁(18a)には、パッキンの係止部と係合してパッキンを適所に保持するように、第1の部材の流路の外方に向けて突出する係合突起(4f)が設けられていることを特徴としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材に設けられた流路と第2の部材に設けられた流路をパッキンを使用して水密的に接続する水密接続構造であって、
上記パッキンは、
上記第1の部材に設けられた流路を取り囲むように配置される環状の基部と、
この基部の一方の面から上記第1の部材に向けて突出する第1環状壁部と、
上記基部の他方の面から上記第2の部材に向けて突出する第2環状壁部と、
上記基部から内周側に向けて突出する係止部と、を有し、
上記第1の部材に設けられた流路の周囲には、上記パッキンを収容するための収容凹部が設けられ、
上記第2の部材には、上記収容凹部に収容された上記パッキンの第2環状壁部と当接して上記パッキンを弾性変形させる当接面が設けられ、
上記第1の部材の収容凹部の内周壁には、上記パッキンの係止部と係合して上記パッキンを適所に保持するように、上記第1の部材の流路の外方に向けて突出する係合突起が設けられていることを特徴とする水密接続構造。
【請求項2】
上記第1の部材の流路は、上記第2の部材の当接面を超えて突出する突出管部を備え、この突出管部は、上記第2の部材の中に受け入れられている請求項1記載の水密接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水密接続構造により接続された上記第1の部材である樹脂製の接続管と、上記第2の部材である陶器製の水洗大便器本体と、を有する水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水密接続構造に関し、特に、第1の部材に設けられた流路と第2の部材に設けられた流路をパッキンを使用して水密的に接続する水密接続構造、及びそれを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-56495号公報(特許文献1)には、ガスケット及び水回り機器設備が記載されている。特許文献1においては、略矩形のガスケットが、水洗大便器本体(陶器部材)と、排水トラップ管の一部を構成する樹脂部材との間に適用され、それらの間の水密性が確保されている。また、樹脂部材の、水洗大便器本体と接続される部分には、ガスケットを収容するための収容部が設けられ、この収容部の中にガスケットを配置した後、樹脂部材が水洗大便器本体に取り付けられる。
【0003】
また、ガスケットの四隅には、内周に向けて突出する係止部が夫々設けられている。これらの係止部は、ガスケットを樹脂部材の収容部に組み付けた際に弾性変形される。この弾性変形によってガスケットが樹脂部材に嵌め込まれ、適度な力でガスケットが樹脂部材に固定されるので、樹脂部材の水洗大便器本体への組み付けが容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のガスケットでは、施工時のガスケットの樹脂部材への組み付け方により、ガスケットのシール性能が低下する場合がある。このガスケット(パッキン)のように、2つの部材の間に挟まれた状態で使用されるパッキンは、組み付け完了後の使用状態において、どのような形状に弾性変形されているか、直接観察することができない。パッキンのシール性能が低下する原因を解明するため、本件発明者は、組み付け状態にある弾性変形後のパッキンの形状を、X線解析等を利用して観察し、その原因を突き止めた。例えば、特許文献1記載のガスケットに設けた係止部が設計の意図通りに弾性変形されず、収容部の外にはみ出した場合には、係止部が水洗大便器本体と樹脂部材の間の意図しない位置に挟まってしまい、却ってシール性能を低下させてしまう場合がある。
【0006】
従って、本発明は、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができるパッキン及びそれを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、第1の部材に設けられた流路と第2の部材に設けられた流路をパッキンを使用して水密的に接続する水密接続構造であって、パッキンは、第1の部材に設けられた流路を取り囲むように配置される環状の基部と、この基部の一方の面から第1の部材に向けて突出する第1環状壁部と、基部の他方の面から第2の部材に向けて突出する第2環状壁部と、基部から内周側に向けて突出する係止部と、を有し、第1の部材に設けられた流路の周囲には、パッキンを収容するための収容凹部が設けられ、第2の部材には、収容凹部に収容されたパッキンの第2環状壁部と当接してパッキンを弾性変形させる当接面が設けられ、第1の部材の収容凹部の内周壁には、パッキンの係止部と係合してパッキンを適所に保持するように、第1の部材の流路の外方に向けて突出する係合突起が設けられていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、パッキンが、環状の基部と、この基部の一方の面から突出する第1環状壁部と、基部の他方の面から突出する第2環状壁部と、基部から内周側に向けて突出する係止部と、を備えている。一方、第1の部材にはパッキンを収容する収容凹部が設けられ、収容凹部の内周壁には、流路の外方に向けて突出する係合突起が設けられている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、収容凹部の内周壁に設けられた係合突起が、パッキンの係止部と係合してパッキンを適所に保持するので、パッキンの係止部を確実に設計意図通りに弾性変形させることができ、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第1の部材の流路は、第2の部材の当接面を超えて突出する突出管部を備え、この突出管部は、第2の部材の中に受け入れられている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、第1の部材の流路が、第2の部材の当接面を超えて突出する突出管部を備えているので、この突出管部が第2の部材の中に受け入れられることにより、第1の部材に設けられた流路と第2の部材に設けられた流路を容易に整合させることができる。このため、第1の部材と第2の部材の接続に手間取り、第1の部材の収容凹部に保持されたパッキンが適所からずれるリスクを軽減することができ、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、本発明の水密接続構造により接続された第1の部材である樹脂製の接続管と、第2の部材である陶器製の水洗大便器本体と、を有する水洗大便器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパッキン及びそれを備えた水洗大便器によれば、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態による水密接続構造が適用された水洗大便器の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による水密接続構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による水密接続構造に使用されているパッキンの斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態による水密接続構造において、収容凹部に収納され、圧縮される前のパッキンを拡大して示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による水密接続構造において、収容凹部に収納され、圧縮された後のパッキンを拡大して示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例による水密接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水密接続構造、及びそれを備えた水洗大便器を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水密接続構造が適用された水洗大便器の断面図である。
図2は、本発明の実施形態による水密接続構造を示す断面図である。
図3は、本発明の実施形態による水密接続構造に使用されているパッキンの斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、水洗大便器本体2と、第1の部材である排水ソケット4を備えた水洗大便器であり、水洗大便器本体2と排水ソケット4の間の水密性が、本発明の実施形態の水密接続構造6により確保されている。即ち、水密接続構造6には、パッキン8が用いられ、水洗大便器本体2と排水ソケット4の間の水密性が確保されている。
【0017】
水洗大便器本体2は洋風の水洗大便器であり、ボウル部2aと、ボウル部2aの底部から延びる第2の部材である排水管10と、ボウル部2aを取り囲むスカート部2bと、を有する。また、排水管10はボウル部2aと一体に形成された略円形断面の管である。ボウル部2aを洗浄した洗浄水は、ボウル部2aの底部と連通した排水管10を通って排水される。なお、本実施形態において、水洗大便器本体2は陶器製である。
【0018】
排水ソケット4は、水洗大便器本体2の排水管10の下流側に接続される略円形断面の管状の部材である。また、排水ソケット4の下流側は、水洗大便器本体2を設置した床面から延びる下水配管12に接続される。従って、本実施形態において、排水ソケット4は、水洗大便器本体2と下水配管12とを接続する「接続管」として機能する。本実施形態においては、水洗大便器本体2の排水管10と排水ソケット4により、排水トラップ管路が形成される。即ち、水洗大便器本体2の排水管10は、ボウル部2aの底部から斜め上方に向けて延び、排水管10の下流端に接続された排水ソケット4は、下方に向けて延び、下水配管12に接続される。なお、本明細書において、「排水ソケット」とは、水洗大便器本体の排水管に水密的に接続される任意の部材を意味するものとする。また、本実施形態において排水ソケット4は樹脂製である。
【0019】
上述したように、水洗大便器本体2の排水管10の下流端と、排水ソケット4の上流端は、本発明の実施形態による水密接続構造6によって接続されている。
図2は、水密接続構造6を具体的に示す断面図であり、排水管10の下流端と排水ソケット4の上流端との接続部を拡大して示している。
【0020】
図2に示すように、排水管10の下流端には、排水管10の半径方向外方に延びる円形のフランジ部10aが設けられている。一方、排水ソケット4は、流路を形成するソケット管部4aと、このソケット管部4aの上流端に、半径方向外方に延びるように設けられた円形のフランジ部4bと、を有する。これら、排水管10と排水ソケット4は、フランジ部10aの当接面10bと、フランジ部4bの当接面4cが当接するように固定され、接続される。そして、排水ソケット4のフランジ部4bには、ソケット管部4aの周囲を取り囲むように、パッキン8を収容するための円環状の収容凹部18が設けられている。パッキン8は、収容凹部18の中に収容された状態で弾性変形され、排水管10のフランジ部10aと、排水ソケット4のフランジ部4bを水密的に接続する。なお、本実施形態において、排水管10の内径と、排水ソケット4のソケット管部4aの内径は、略同一に構成され、排水管10とソケット管部4aは整合するように接続される。
【0021】
さらに、排水管10のフランジ部10aの背面側(当接面10bの反対側)には、固定金具14が配置されている。固定金具14は、排水管10を受け入れる開口14aが形成されたプレート状の部材であり、フランジ部10aの裏側に当接するように配置される。さらに、固定金具14には、4つの雌ネジ穴14b(
図2には2つのみ図示)が形成されている。一方、排水管10のフランジ部10a、及び排水ソケット4のフランジ部4bには、固定金具14に設けられた雌ネジ穴14bと整合する位置に、ボルト穴4d、10cが夫々形成されている。さらに、4本のボルト16(
図2には2つのみ図示)が、排水ソケット4のボルト穴4d、及び排水管10のボルト穴10cを通して、固定金具14の雌ネジ穴14bにねじ込まれている。これにより、排水管10のフランジ部10aを、排水ソケット4のフランジ部4bと固定金具14の間に挟み、排水ソケット4を排水管10に固定している。
【0022】
次に、
図3を参照して、パッキン8の構造を説明する。
図3に示すように、パッキン8は、全体として、円環状のゴム製の部材であり、排水ソケット4のソケット管部4aを取り囲むように配置される。また、パッキン8は、環状の基部8aと、この基部8aの一方の面から排水ソケット4(の収容凹部18)に向けて延びる複数の第1環状壁部8bと、基部8aの他方の面から排水管10(のフランジ部10a)に向けて延びる複数の第2環状壁部8c(
図4)と、を有する。
【0023】
基部8aは、円形、環状の平面部分であり、基部8aの内側には略円形の開口が形成されている。さらに、基部8aには、内周側に向けて突出するように、4つの係止部8dが形成されている。これらの係止部8dは、基部8aと一体に形成された平坦な円弧状の突出部分であり、基部8aの円周方向に等間隔に4つ設けられている。本実施形態においては、この環状の基部8a内側に排水ソケット4のソケット管部4aが嵌め込まれるため、基部8aは、ソケット管部4aの周囲を取り囲むように配置される。
【0024】
ここで、本実施形態においては、基部8aの内径d1はソケット管部4aの外径よりも大きく、対向する2つの係止部8d間の距離(各係止部の内周縁と重なる仮想的な円の直径d2)は、ソケット管部4aの外径よりも小さい。このため、パッキン8が排水ソケット4のソケット管部4aに嵌め込まれたとき、パッキン8の基部8aはソケット管部4aに接触せず、各係止部8dの先端部がソケット管部4aと接触して弾性変形される。
【0025】
なお、本実施形態において、基部8a(パッキン8)は、円形の環状に構成されているが、基部8aは必ずしも円形である必要はなく、水密性を確保する部材の形状に合わせて、任意形態の環状に構成することができる。例えば、基部8a(パッキン8)を角の丸い矩形状に構成することもできる。
【0026】
また、本実施形態において、係止部8dは4つ設けられているが、係止部8dは任意の数設けることができる。例えば、基部8a(パッキン8)を矩形状に構成した場合には、4つの角部の内側に突出するように係止部8dを設けることもできる。或いは、基部8aの内径を、排水ソケット4のソケット管部4aの外径よりも小さく構成し、基部8aの内側全周を1つの係止部8dとして機能させることもできる。この場合には、基部8aの、ソケット管部4aの外径よりも内側まで拡張された部分が、係止部8dとして機能する。
【0027】
第1環状壁部8bは、基部8aの一方の面から排水ソケット4に向けて突出する円形の環状の壁部であり、本実施形態においては、同心円上に2つの第1環状壁部8bが設けられている。外周側の第1環状壁部8bは、基部8aの外周縁に沿って設けられ、基部8aから立ち上がるように構成されている。また、内周側の第1環状壁部8bは、外周側の第1環状壁部8bの内側に間隔を空けて設けられ、基部8aから立ち上がるように構成されている。さらに、外周側及び内周側の第1環状壁部8bは、内側に向けて(パッキン8の中心に向けて)傾斜するように構成されている。また、パッキン8の実使用時において、各第1環状壁部8bの先端は、排水ソケット4の収容凹部18と当接し、パッキン8が排水ソケット4に押し付けられると、各第1環状壁部8bは、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形される。
【0028】
なお、外周側及び内周側の第1環状壁部8bは、同一の高さに形成されていると共に、同一の角度傾斜している。本実施形態において、各第1環状壁部8bの高さは約8mmであり、好ましくは、第1環状壁部8bの高さを約6mm乃至約10mmに構成する。また、本実施形態において、各第1環状壁部8bは、基部8aに対して約20度の角度を為すように構成されており、好ましくは、第1環状壁部8bの角度は約15度乃至約25度に構成する。この結果、本実施形態において使用されているパッキン8の厚さ(第1環状壁部8bの先端から第2環状壁部8cの先端までの距離)は、約1mmに構成されている。さらに、本実施形態において、外周側の第1環状壁部8bと内周側の第1環状壁部8bは、半径方向に約5mm離間して配置されている。好ましくは、外周側と内周側の第1環状壁部8bを、半径方向に約3mm乃至約7mm離間させる。また、本実施形態において、第1環状壁部8bは2つ設けられているが、第1環状壁部8bを3つ以上設けることもできる。
【0029】
次に、第2環状壁部8c(
図4)は、基部8aの他方の面から排水管10に向けて突出する円形の環状の壁部であり、本実施形態においては、同心円上に2つの第2環状壁部8cが設けられている。また、
図4に示すように、本実施形態において、第2環状壁部8cは、基部8aの反対側の面に設けられている点を除き、第1環状壁部8bと完全に同一に構成されているので、第2環状壁部8cの寸法、形状については説明を省略する。さらに、パッキン8の実使用時において、各第2環状壁部8cの先端は、排水管10のフランジ部10aの表面と当接し、パッキン8がフランジ部10aに押し付けられると、各第2環状壁部8cは、夫々内側に向けて倒れるように弾性変形される。
【0030】
次に、
図4及び
図5を参照して、排水ソケット4に設けられた収容凹部18の構造、及びそこに収容されたパッキン8の弾性変形について詳細に説明する。
図4は、収容凹部18に収納されたパッキン8を拡大して示す断面図であり、パッキン8が圧縮される前の状態を示している。
図5は、収容凹部18に収納されたパッキン8を拡大して示す断面図であり、パッキン8が圧縮された後の状態を示している。
【0031】
図4に示すように、排水ソケット4のソケット管部4aの上流側端部には、フランジ部4bが設けられ、このフランジ部4bの当接面4cには、排水ソケット4のソケット管部4a(流路)を取り囲むように収容凹部18が設けられている。この収容凹部18は、フランジ部4bの当接面4cに形成された円環状の溝であり、内部にパッキン8が収容される。また、円環状の収容凹部18の内周壁18aはソケット管部4aの外周面により構成されている。一方、収容凹部18の外周壁18bは、当接面4cに形成した溝の内面により構成されている。ここで、収容凹部18の内周壁18aの高さは、外周壁18bの高さよりも高く構成されている。換言すれば、排水ソケット4のソケット管部4aの先端は、フランジ部4bの当接面4cよりも突出するように構成されている。このソケット管部4aの、当接面4cよりも突出した部分は、突出管部4eを構成する。
【0032】
本実施形態では、使用状態において、パッキン8は、約半分の厚さまで圧縮される。本実施形態においては、パッキン8の潰れ量を収容凹部18の深さにより正確に規定することができるので、パッキン8を常に適切な潰し量で使用することができ、シール性を高くすることができる。また、実施形態において、突出管部4eの当接面4cからの突出量は、パッキン8の潰し量の約半分に設定されている。好ましくは、突出管部4eの突出量をパッキン8の潰し量の半分以下に設定する。これにより、排水管10に取り付ける排水ソケット4を適切にガイドすることができ、取り付け作業が容易になると共に、取り付け作業に手間取ることにより、シール性能が低下するリスクを軽減することができる。
【0033】
一方、水洗大便器本体2の排水管10に設けられたフランジ部10aは、排水管10の先端に形成されている。即ち、フランジ部10aの当接面10bは、排水管10の端面と面一に形成されている。さらに、フランジ部10aの当接面10bには、排水ソケット4の当接面4cから突出しているソケット管部4aの先端(突出管部4e)を受け入れるためのザグリ部10dが設けられている。このため、排水ソケット4の突出管部4eは、排水管10のフランジ部10aの当接面4cを超えて、排水管10の中に突出する。
【0034】
次に、
図4に示すように、パッキン8を排水ソケット4に取り付けた状態では、パッキン8の厚さの約半分が、排水ソケット4のフランジ部4bに設けられた収容凹部18の中に位置する。また、上述したように、パッキン8に設けた係止部8dの内径d2は、排水ソケット4のソケット管部4aの外径よりも小さいので、パッキン8が排水ソケット4に取り付けられると、係止部8dの先端が曲がるように弾性変形される。
【0035】
さらに、ソケット管部4aの外周(収容凹部18の内周壁18a)には、流路の外方に向けて突出する係合突起4fが設けられている。この係合突起4fは、収容凹部18に収容されたパッキン8を適所に保持するように、パッキン8の係止部8dと係合する。また、本実施形態において、係合突起4fは、ソケット管部4aの外周全体を一周するように設けられているが、パッキン8の係止部8dと対向する部分のみに係合突起4fを設けることもできる。
【0036】
また、パッキン8を排水ソケット4のフランジ部4bに嵌め込むと、係止部8dの内径d2がソケット管部4aの外径よりも小さく構成されているため、パッキン8の各係止部8dは、収容凹部18の外側(
図4における下方)に向けて曲げられる。このように曲げられた各係止部8dの先端を、係合突起4fを乗り越えるように収容凹部18に押し込むことにより、各係止部8dは、
図4に示すように、収容凹部18の内側に向けて弾性変形される。この状態では、各係止部8dの先端と係合突起4fが係合するため、パッキン8の形状が安定すると共に、パッキン8が収容凹部18の中の適所に保持される。
【0037】
排水ソケット4を排水管10に接続する際には、パッキン8を排水ソケット4のフランジ部4bに嵌め込み、パッキン8の各係止部8dを
図4に示す形状に弾性変形させる。次いで、排水ソケット4の突出管部4eが、排水管10のザグリ部10dの中に受け入れられるように排水ソケット4を位置決めし、排水ソケット4を排水管10のフランジ部10aに押し付ける。この結果、排水ソケット4の当接面4cと、排水管10の当接面10bが当接する。これにより、
図5に示すように、パッキン8の第1環状壁部8b及び第2環状壁部8cが内方に向けて倒れ込むように弾性変形され、パッキン8全体が収容凹部18の中に収容される。これに伴い、パッキン8の基部8aも半径方向外方に押し広げられ、パッキン8の外周が収容凹部18の外周壁18bと接触する。
【0038】
本実施形態の水密接続構造6によれば、パッキン8が収容凹部18の中の適所に保持された状態で、排水ソケット4が排水管10に接続されるので、パッキン8は、確実に
図5に示す適切な形状に弾性変形される。また、排水ソケット4の突出管部4eを受け入れるように、排水管10のフランジ部10aにザグリ部10dが設けられているので、排水ソケット4を排水管10に容易に整合させることができる。
【0039】
本発明の実施形態の水密接続構造6によれば、収容凹部18の内周壁18a(ソケット管部4aの外周面)に設けられた係合突起4fが、パッキン8の係止部8dと係合してパッキン8を適所に保持するので、パッキン8の係止部8dを確実に設計意図通りに弾性変形させることができ、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の水密接続構造6によれば、排水ソケット4の流路が、排水管10の当接面10bを超えて突出する突出管部4eを備えているので、この突出管部4eが排水管10のザグリ部10dの中に受け入れられることにより、排水ソケット4に設けられた流路と排水管10に設けられた流路を容易に整合させることができる。このため、排水ソケット4と排水管10の接続に手間取り、排水ソケット4の収容凹部18に保持されたパッキンが8適所からずれるリスクを軽減することができ、組み付け方によるシール性能の低下を抑制することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態による水密接続構造、及びそれを備えた水洗大便器を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、本発明の水密接続構造が水洗大便器本体と排水ソケットの間に適用されていたが、本発明の水密接続構造は洗浄水タンクと水洗大便器本体の間等、種々の水回り機器において水密性を確保する必要がある2つの部材の接続部に適用することができる。
【0042】
また、上述した実施形態においては、排水ソケット4のフランジ部4bの当接面4cから突出するように突出管部4eが設けられており、これが排水管10のフランジ部10aに設けたザグリ部10dによって受け入れられていた。これに対して、変形例として、
図6に示すように、排水管20の内径を突出管部4eの外径よりも大きく構成しておき、排水管20のフランジ部20aに設けた開口部20b(排水管の内径と同一の直径)に突出管部4eが受け入れられるように本発明を構成することもできる。或いは、排水ソケットに突出管部4eを設けず、ソケット管部4aの先端と当接面4cが面一になるように本発明を構成することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 水洗大便器
2 水洗大便器本体
2a ボウル部
2b スカート部
4 排水ソケット(第1の部材)
4a ソケット管部
4b フランジ部
4c 当接面
4d ボルト穴
4e 突出管部
4f 係合突起
6 水密接続構造
8 パッキン
8a 基部
8b 第1環状壁部
8c 第2環状壁部
8d 係止部
10 排水管(第2の部材)
10a フランジ部
10b 当接面
10c ボルト穴
10d ザグリ部
12 下水配管
14 固定金具
14a 開口
14b 雌ネジ穴
16 ボルト
18 収容凹部
18a 内周壁
18b 外周壁
20 排水管
20a フランジ部
20b 開口部