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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051395
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】バッテリの設置構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20240404BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20240404BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20240404BHJP
   B60P 3/20 20060101ALI20240404BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240404BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240404BHJP
   H01M 10/655 20140101ALI20240404BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240404BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01M10/613
F25D11/00 101D
B60R16/04 Y
B60P3/20 Z
H01M10/658
H01M10/6556
H01M10/655
H01M10/625
F25B49/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157542
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】盛島 明元
(72)【発明者】
【氏名】染川 和摩
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(72)【発明者】
【氏名】松浦 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 金敬
【テーマコード(参考)】
3L045
5H031
【Fターム(参考)】
3L045AA04
3L045BA02
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045HA02
3L045PA04
5H031KK02
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】バッテリの温調を効果的に行うことができるようにする。
【解決手段】バッテリの設置構造は、移動体(1)に搭載される装置に電力を供給するバッテリ(B)と、前記バッテリ(B)を収容し、断熱材を含む筐体(60)と、前記筐体(60)内の温度を調整する温調装置(R)とを備え、前記移動体(1)は、温度調整可能な第1空間(2,3a,3a1)を含み、前記筐体(60)は、前記第1空間(2,3a,3a1)に設置され、または、前記第1空間(2,3a,3a1)に隣接する第2空間(3a2)に設置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(1)に搭載される装置に電力を供給するバッテリ(B)と、
前記バッテリ(B)を収容し、断熱材を含む筐体(60)と、
前記筐体(60)内の温度を調整する温調装置(R)と
を備え、
前記移動体(1)は、温度調整可能な第1空間(2,3a,3a1)を含み、
前記筐体(60)は、前記第1空間(2,3a,3a1)に設置され、または、前記第1空間(2,3a,3a1)に隣接する第2空間(3a2)に設置される、バッテリの設置構造。
【請求項2】
前記温調装置(R)は、前記第1空間(2,3a,3a1)の温度調整とは独立して前記筐体(60)内の温度を調整可能である、請求項1に記載のバッテリの設置構造。
【請求項3】
前記移動体(1)には、前記第1空間(2,3a,3a1)の温度調整を行う冷凍装置(10)が搭載され、
前記バッテリ(B)は、前記冷凍装置(10)に電力を供給する、請求項1または請求項2に記載のバッテリの設置構造。
【請求項4】
前記第1空間は、前記移動体(1)のキャビン(2)内の空間である、請求項1または請求項2に記載のバッテリの設置構造。
【請求項5】
前記第1空間は、貨物を収容するための庫内空間(3a)である、請求項1または請求項2に記載のバッテリの設置構造。
【請求項6】
前記移動体(1)は、
貨物を収容するための庫内空間(3a)と、
前記庫内空間(3a)を第1庫内空間(3a)と第2庫内空間(3a)とに仕切る隔壁(3b)と
を含み、
前記第1空間は、前記第1庫内空間(3a)であり、
前記第2空間(3a2)は、前記第1庫内空間(3a)に隣接する前記第2庫内空間(3a)である、請求項1または請求項2に記載のバッテリの設置構造。
【請求項7】
前記温調装置(R)による前記筐体(60)内の温度調整と、前記第1空間(2)の温度調整とが、別系統の冷媒回路により行われる、請求項1または請求項2に記載のバッテリの設置構造。
【請求項8】
前記温調装置(R)による前記筐体(60)内の温度調整と、前記第1空間(3a,3a1)の温度調整とが、同系統の冷媒回路(R)により行われる、請求項1または請求項2に記載のバッテリの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載用冷凍装置が開示されている。車載用冷凍装置は、エンジン、バッテリ、冷凍庫を有する車両に搭載される。車載用冷凍装置は、バッテリの電力により稼働する圧縮装置(圧縮機)、圧縮装置から吐出される冷媒と冷凍庫内の空気を熱交換させる室内熱交換器等を備える。バッテリは、冷凍車の架台の床下に設置され、外気により冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-106204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バッテリの周囲の外気の温度がバッテリ(B)の保管に適した温度とかけ離れてしまうと、外気との熱交換によりバッテリが高温状態または低温状態となることで、バッテリの寿命が短くなる可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、バッテリの温調を効果的に行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のバッテリの設置構造は、移動体(1)に搭載される装置に電力を供給するバッテリ(B)と、前記バッテリ(B)を収容し、断熱材を含む筐体(60)と、前記筐体(60)内の温度を調整する温調装置(R)とを備え、前記移動体(1)は、温度調整可能な第1空間(2,3a,3a1)を含み、前記筐体(60)は、前記第1空間(2,3a,3a1)に設置され、または、前記第1空間(2,3a,3a1)に隣接する第2空間(3a2)に設置される。
【0007】
第1の態様では、バッテリ(B)の温調を効果的に行うことができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記温調装置(R)は、前記第1空間(2,3a,3a1)の温度調整とは独立して前記筐体(60)内の温度を調整可能である。
【0009】
第2の態様では、第1空間(2,3a,3a1)の温調と、筐体(60)内の温調とを各自に行うことができる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記移動体(1)には、前記第1空間(2,3a,3a1)の温度調整を行う冷凍装置(10)が搭載され、前記バッテリ(B)は、前記冷凍装置(10)に電力を供給する。
【0011】
第3の態様では、冷凍装置(10)により第1空間(2,3a,3a1)の温調を行いつつ、温調装置(R)により筐体(60)内の温調を行うことができる。
【0012】
第4の態様は、第1または第2の態様において、前記第1空間は、前記移動体(1)のキャビン(2)内の空間である。
【0013】
第4の態様では、キャビン(2)に筐体(60)を配置した状態で、キャビン(2)用のエアコンによりキャビン(2)の温調を行いつつ、温調装置(R)により筐体(60)内のバッテリ(B)の温調を行うことができる。
【0014】
第5の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記第1空間は、貨物を収容するための庫内空間(3a)である。
【0015】
第5の態様では、庫内空間(3a)に筐体(60)を配置した状態で、庫内空間(3a)の温調を行いつつ、温調装置(R)により筐体(60)内の温調を行うことができる。
【0016】
第6の態様は、第1~第3のいずれか1つの態様において、前記移動体(1)は、貨物を収容するための庫内空間(3a)と、前記庫内空間(3a)を第1庫内空間(3a)と第2庫内空間(3a)とに仕切る隔壁(3b)とを含み、前記第1空間は、前記第1庫内空間(3a)であり、前記第2空間(3a2)は、前記第1庫内空間(3a)に隣接する前記第2庫内空間(3a)である。
【0017】
第6の態様では、第2庫内空間(3a)に筐体(60)を配置した状態で、第2庫内空間(3a)に隣接する第1庫内空間(3a)の温調を行いつつ、温調装置(R)により筐体(60)内の温調を行うことができる。
【0018】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記温調装置(R)による前記筐体(60)内の温度調整と、前記第1空間(2)の温度調整とが、別系統の冷媒回路により行われる。
【0019】
第7の態様では、別系統の冷媒回路により筐体(60)内の温度調整と第1空間(2,3a,3a1)の温度調整とを行うことができる。
【0020】
第8の態様は、前第1、第2、第3、第5、および第6のいずれか1つの態様において、前記温調装置(R)による前記筐体(60)内の温度調整と、前記第1空間(3a,3a1)の温度調整とが、同系統の冷媒回路(R)により行われる。
【0021】
第8の態様では、同別系統の冷媒回路により筐体(60)内の温度調整と第1空間(2,3a,3a1)の温度調整とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、移動体を示す模式図である。
図2図2は、冷凍装置を示す概略構成図である。
図3図3は、移動体の第1変形例を示す模式図である。
図4図4は、移動体の第2変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0024】
実施形態に係るバッテリの設置構造は、移動体(1)に搭載される装置に電力を供給するバッテリ(B)と、バッテリ(B)を収容する筐体(60)と、筐体(60)内の温度を調整する温調装置とを備え、バッテリ(B)を収容する筐体(60)を移動体(1)に設置するための構造である。
【0025】
(1)移動体
図1に示すように、実施形態に係る移動体(1)はトラックである。実施形態に係る移動体(1)は、キャビン(2)と、キャビン(2)の後方に設けられる保冷庫(3)とを有する冷凍車両である。キャビン(2)内には、運転室(2a)が形成される。保冷庫(3)には、庫内空間(3a)が形成される。庫内空間(3a)には、食料品などの貨物が貯蔵される。移動体(1)は、保冷庫(3)の庫内空気を冷却するための冷凍装置(10)を有する。
【0026】
キャビン(2)には、キャビン(2)用の空調機(2b)が設置される。キャビン(2)用の空調機(2b)は、庫内空間(3a)用の冷凍装置(10)の冷媒回路(R)(図2参照)とは別系統の冷媒回路を有し、当該別系統の冷媒回路によりキャビン(2)内の温度調整を行う。キャビン(2)用の冷媒回路は、例えば、冷媒を圧縮する圧縮機と、室外空気と冷媒とを熱交換させる第1熱交換器と、キャビン(2)内の空気と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、当該圧縮機と第1熱交換器と第2熱交換器との間で冷媒を送るための管とを含む。キャビン(2)内の空間は、第1空間の第1例である。
【0027】
バッテリ(B)は、冷凍装置(10)の駆動源である。バッテリ(B)は車体駆動用のバッテリを除く。バッテリ(B)は、二次電池であり、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池である。バッテリ(B)は、例えば、商用電源、および充電器により充電される。商用電源の交流電力は、充電器に供給される。充電器は、商用電源の交流電力を直流電力に変換する。充電器によって変換された直流電力がバッテリ(B)に供給されることで、バッテリ(B)が充電される。バッテリ(B)は、エンジン、発電機、および発電用インバータにより充電されてもよい。エンジンは、内燃機関であり、燃料の燃焼により発生する熱エネルギーを回転エネルギーに変換することによって、移動体(1)であるトラックの車輪(X)を回転させる。エンジンの熱エネルギーが変換された回転エネルギーの一部は、図示しない遊星歯車を用いた動力分割機構を介して発電機に供給される。発電機は、エンジンからの回転エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、3相交流電力を発生させる。3相交流電力は、発電用インバータに供給される。発電用インバータは、発電機からの3相交流電力を直流電力に変換する。発電用インバータによって変換された直流電力がバッテリ(B)に供給されることで、バッテリ(B)が充電される。
【0028】
筐体(60)は、中空の部材である。筐体(60)内の空間と、筐体(60)外部との連通が遮断される。筐体(60)は、例えば、発泡ポリウレタン、グラスウール、ウレタンフォームおよび真空断熱材のような断熱性能を有する断熱材を含む。筐体(60)内には、バッテリ(B)が収容される。筐体(60)は、キャビン(2)内(例えば、助手席)に設置される。
【0029】
(2)冷凍装置の全体構成
冷凍装置(10)は、冷媒が充填された冷媒回路(R)を有する。冷媒回路(R)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷凍装置(10)は、第1ユニット(11)、第2ユニット(20)、および第3ユニット(30)を有する。第1ユニット(11)は、キャビン(2)の上方に配置される。第1ユニット(11)は、室外空間(O)に位置する熱源ユニットを構成する。第2ユニット(20)は、庫内空間(3a)に配置される。第2ユニット(20)は、冷却ユニットを構成する。第3ユニット(30)は、筐体(60)に配置される。第3ユニット(30)は、バッテリ温調ユニットを構成する。
【0030】
第1ユニット(11)は、圧縮機(12)、室外熱交換器(13)、および室外ファン(14)を有する。第2ユニット(20)は、庫内熱交換器(21)および庫内ファン(22)を有する。第3ユニット(30)は、バッテリ側熱交換器(31)、およびバッテリ側ファン(32)を有する。なお、第3ユニット(30)は、バッテリ側ファン(32)を有しない構成であってもよい。
【0031】
(3)冷媒回路の構成
図2に示すように、冷媒回路(R)は、主要な機器として、圧縮機(12)、室外熱交換器(13)、庫内熱交換器(21)、およびバッテリ側熱交換器(31)を有する。冷媒回路(R)は、第1膨張弁(23)、第2膨張弁(33)、および圧力調節弁(34)を有する。
【0032】
圧縮機(12)は、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。圧縮機(12)は、スクロール型、ロータリー型、揺動ピストン型などの圧縮機である。圧縮機(12)は、吐出管(15)を介して室外熱交換器(13)のガス端部と直列に接続する。
【0033】
室外熱交換器(13)は、室外空間(O)、あるいは室外空気が流れる流路に設置される。室外熱交換器(13)は、室外空気と冷媒とを熱交換させる。室外熱交換器(13)は、フィンアンドチューブ式である。室外熱交換器(13)の液端部は、主液管(16)を介して第1管(P1)および第2管(P2)に接続する。
【0034】
室外ファン(14)は、室外熱交換器(13)の近傍に配置される。室外ファン(14)は、室外空気が室外熱交換器(13)を流れるように、室外空気を搬送する。
【0035】
第1管(P1)および第2管(P2)は、冷媒回路(R)において互いに並列に接続される。第1管(P1)および第2管(P2)の一端は、主液管(16)の端部である分岐部(17)に接続する。第1管(P1)および第2管(P2)の他端は、圧縮機(12)の吸入管(18)と接続する。
【0036】
第1管(P1)には、液側からガス側に向かって順に、第1膨張弁(23)、庫内熱交換器(21)が接続される。第1膨張弁(23)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成される。
【0037】
庫内熱交換器(21)は、フィンアンドチューブ式である。庫内熱交換器(21)は、庫内空間(3a)に設置される。庫内熱交換器(21)は、庫内空間(3a)内の空気と冷媒とを熱交換させる。その結果、庫内空間(3a)の温度調整が行われる。
【0038】
庫内ファン(22)は、庫内熱交換器(21)の近傍に配置される。庫内ファン(22)は、庫内空間(3a)の空気が庫内熱交換器(21)を流れるように、庫内空間(3a)の空気を搬送する。
【0039】
第2管(P2)には、液側からガス側に向かって順に、第2膨張弁(33)、バッテリ側熱交換器(31)、圧力調節弁(34)が接続される。第2膨張弁(33)は、開度が調節可能な電子膨張弁で構成される。圧力調節弁(34)は、バッテリ側熱交換器(31)の蒸発圧力を調節する。
【0040】
バッテリ側熱交換器(31)は、フィンアンドチューブ式である。バッテリ側熱交換器(31)は、筐体(60)内に配置される。バッテリ側熱交換器(31)は、バッテリ(B)と離れて配置されてもよいし、バッテリ(B)と接触するように配置されてもよい。バッテリ側熱交換器(31)は、バッテリ側ファン(32)が搬送する筐体(60)内の空気と冷媒とを熱交換させる。その結果、筐体(60)内の温度が調整される。
【0041】
冷媒回路(R)は、温調装置の一例である。
【0042】
図2に示すように、冷凍装置(10)は、コントローラ(80)を有する。コントローラ(80)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。
【0043】
コントローラ(80)は、冷媒回路(R)を制御する。具体的には、コントローラ(80)は、圧縮機(12)のON/OFF、および圧縮機(12)の回転数を制御する。コントローラ(80)は、室外ファン(14)、庫内ファン(22)、およびバッテリ側ファン(32)のON/OFFおよび回転数を制御する。コントローラ(80)は、第1膨張弁(23)、第2膨張弁(33)、および圧力調節弁(34)の開度を制御する。
【0044】
バッテリ(B)は、リード線(L)により第1ユニット(11)、第2ユニット(20)、第3ユニット(30)およびコントローラ(80)と接続され、リード線(L)を通じて冷凍装置(10)の各種構成要素に電力を供給する。その結果、第1ユニット(11)、第2ユニット(20)、第3ユニット(30)およびコントローラ(80)が稼働する。
【0045】
(3)運転動作
冷凍装置(10)の基本的な運転動作について図2を参照しながら説明する。
【0046】
冷凍装置の運転時には、コントローラ(80)が圧縮機(12)、室外ファン(14)、庫内ファン(22)、およびバッテリ側ファン(32)を運転させる。コントローラ(80)は、第1膨張弁(23)および第2膨張弁(33)の開度を調節する。
【0047】
圧縮機(12)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(13)を流れる。室外熱交換器(13)では、冷媒が室外空気に放熱して凝縮する。凝縮した冷媒は、主液管(16)を流れ、第1管(P1)と第2管(P2)とに分流する。
【0048】
第1管(P1)に流入した冷媒は、第1膨張弁(23)で減圧された後、庫内熱交換器(21)を流れる。庫内熱交換器(21)では、冷媒が庫内空間(3a)内の空気から吸熱して蒸発する。その結果、庫内空間(3a)内の空気が、庫内熱交換器(21)によって冷やされる。
【0049】
第2管(P2)を流入した冷媒は、第2膨張弁(33)で減圧された後、バッテリ側熱交換器(31)を流れる。バッテリ側熱交換器(31)では、冷媒が吸熱して蒸発する。その結果、筐体(60)内の温度が調整される。
【0050】
庫内熱交換器(21)、およびバッテリ側熱交換器(31)でそれぞれ蒸発した冷媒は、吸入管(18)から圧縮機(12)に吸入され、再び圧縮される。
【0051】
(4)効果
以上のように、バッテリの設置構造は、移動体(1)に搭載される装置に電力を供給するバッテリ(B)と、バッテリ(B)を収容し、断熱材を含む筐体(60)と、筐体(60)内の温度を調整する冷媒回路(R)とを備え、移動体(1)は、温度調整可能なキャビン(2)を含み、筐体(60)は、キャビン(2)に設置される。これにより、冷媒回路(R)(バッテリ側熱交換器(31))により筐体(60)内の温度を調整することで、筐体(60)内の温度をバッテリ(B)の保管に適した温度に調整できるので、バッテリ(B)の温調を効果的に行うことができる。なお、バッテリ(B)を冷凍庫の架台の床下など外気に晒される場所(移動体(1)の外部)に設置すると、外気と筐体(60)内の空気が熱交換を行う。外気温は大きく変化するため、温調装置である冷媒回路(R)の使用能力(消費電力)が大きくなる点で不利である。これに対し、本実施形態では、バッテリ(B)(筐体(60))を移動体(1)の内部の温調可能な場所に設置する。筐体(60)の断熱材は、筐体(60)内の空間と、第1空間(2)とを完全に断熱することができず、これにより、筐体(60)内の空間と第1空間(2)とがある程度、熱交換可能な状態となる。これによると、第1空間(2)の温調が行われる際、第1空間(2)の温調された空気と筐体(60)内の空気との熱交換により筐体(60)内の温調を行うことができる。すなわち、断熱材により筐体(60)内の気温の急激な変化を抑制しつつ、第1空間(2)の温調された気温を利用して筐体(60)内の温調を行うことができる。その結果、温調装置である冷媒回路(R)の能力を抑えた状態でも、第1空間(2)の温調された空気との熱交換により、筐体(60)内の温調を行うことができるので、冷媒回路(R)の消費電力を低減できる。
【0052】
また、筐体(60)内の温度調整は、冷凍装置(10)の冷媒回路(R)により行われる。キャビン(2)の温度調整は、空調機(2b)の冷媒回路により行われる。これにより、筐体(60)内の温度調整と、キャビン(2)の温度調整とが別系統の冷媒回路により行われるので、筐体(60)内の温度調整と、キャビン(2)の温度調整とを互いに独立して行うことが可能である。その結果、筐体(60)内の温度調整と、キャビン(2)の温度調整とを互いに独立して行うことで、筐体(60)内の温度は第1所定温度(バッテリ(B)の保管に適した温度)に調整し、キャビン(2)の温度は第1所定温度とは異なる基準で設定される第2所定温度(キャビン(2)に乗車する人が快適と感じるような温度)に調整することが可能である。
【0053】
(5)第1変形例
図3に示すように、筐体(60)が庫内空間(3a)に配置されていてもよい。この場合、庫内空間(3a)は、第1空間の第2例である。この場合、バッテリ側熱交換器(31)による筐体(60)内の温度調整と、庫内熱交換器(21)による庫内空間(3a)(第1空間)の温度調整とが、同系統の冷媒回路(R)により行われる。この場合、第1膨張弁(23)、第2膨張弁(33)、および圧力調節弁(34)の開度を制御して、バッテリ側熱交換器(31)および庫内熱交換器(21)の各々に送られる冷媒の量を調整することで、バッテリ側熱交換器(31)による筐体(60)内の温度調整と、庫内熱交換器(21)による庫内空間(3a)の温度調整とを互いに独立して行うことができる。筐体(60)内の温度調整と、庫内空間(3a)の温度調整とが互いに独立して行われることで、筐体(60)内の温度は第1所定温度(バッテリ(B)の保管に適した温度)になるように調整し、筐体(60)内の温度は第1所定温度とは異なる基準で設定される第3所定温度(貨物の保存に適した温度)になるように調整することが可能である。
【0054】
また、庫内空間(3a)の温調が行われる際、庫内空間(3a)の温調された空気と筐体(60)内の空気との熱交換により筐体(60)内の温調を行うことができる。その結果、筐体(60)内の空気の温調能力(冷房能力)を抑えた状態でも筐体(60)内の温調を行うことができるので、冷媒回路(R)の消費電力を低減できる。
【0055】
(6)第2変形例
図4に示すように、庫内空間(3a)に隔壁(3b)を設置することで庫内空間(3a)を第1庫内空間(3a1)と第2庫内空間(3a2)とに仕切り、第1庫内空間(3a1)には貨物を収容し、第1庫内空間(3a1)に隣接する第2庫内空間(3a2)には筐体(60)を設置してもよい。隔壁(3b)は、例えば、庫内空間(3a)において、筐体(60)の設置スペースと、貨物の設置スペースとを区画するために設けられる。この場合、第1庫内空間(3a1)は、第1空間の第3例である。第2庫内空間(3a2)は、第2空間の一例である。この場合も、上記した第1変形例と同様に、温調装置であるバッテリ側熱交換器(31)による筐体(60)内の温度調整と、庫内熱交換器(21)による庫内空間(3a)の温度調整とが、同系統の冷媒回路(R)により行われる。この場合も、筐体(60)内の温度が上記第1所定温度になり、かつ、筐体(60)内の温度が上記第3所定温度になるように、筐体(60)内の温度調整と、庫内空間(3a)の温度調整とが互いに独立して行われる。この場合も、上記した第1変形例と同様の効果を奏する。
【0056】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう(下記(A)~(C))。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態の要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0057】
(A)移動体(1)は、トラックのような車両に限定されない。移動体(1)は、陸上、海上、または空上を自走可能なものであればよく、例えば、船舶、飛行機等であってもよい。
【0058】
(B)冷凍装置(10)は、室外熱交換器(13)を蒸発器として機能させ、庫内熱交換器(21)を凝縮器として機能させることで暖房サイクルを行う暖房機能をさらに有していてもよい。
【0059】
(C)本実施形態では、移動体(1)に搭載され、バッテリ(B)から電力を供給される装置の一例として、冷凍装置(10)が示されている。しかし、本発明はこれに限定されない。移動体(1)に搭載され、バッテリ(B)から電力を供給される装置は、移動体(1)に搭載された状態でバッテリ(B)からの電力により稼働する装置であればよい。例えば、当該装置は、キャンピングカーに搭載されるエアコン、家電等でもよい。
【0060】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上に説明したように、本開示は、バッテリの設置構造について有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 移動体
2 キャビン(第1空間)
3a 庫内空間(第1空間)
3a1 第1庫内空間(第1空間)
3a2 第2庫内空間(第2空間)
10 冷凍装置
60 筐体
B バッテリ
R 冷媒回路(温調装置)
図1
図2
図3
図4