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特開2024-51399粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051399
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240404BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240404BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/38
B32B37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157548
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】堤 清貴
(72)【発明者】
【氏名】道下 そら
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB05C
4F100EJ30
4F100EJ91A
4F100EJ94
4F100GB41
4J004AA10
4J004AA14
4J004AA16
4J004AB01
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】軟質な粘着剤層を有する大判の積層フィルムを効率よく製造するのに適した積層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、用意工程と外形加工工程を含む。用意工程では、キャリアフィルムCと、フィルム層10と、原粘着剤層20と、フィルム層30とを厚さ方向Hに順に備える長尺のワークフィルムWを用意する。外形加工工程では、ワークフィルムWを流れ方向D1に走行させつつ、複数のガルバノスキャナSを備えるレーザー加工装置により、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光を照射して、フィルム層10上で原粘着剤層20とフィルム層30を切断する。この工程では、ワークフィルムWの幅方向D2に連なるようにワークフィルムWに設定される、ガルバノスキャナSと同数の走査領域Rと、ガルバノスキャナSとを一対一で対応させて、各ガルバノスキャナSによって一の走査領域R内でレーザー光を走査する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルムと、第1フィルム層と、原粘着剤層と、第2フィルム層とを厚さ方向にこの順で備える長尺のワークフィルムを用意する用意工程と、
前記ワークフィルムを長さ方向に走行させつつ、複数のガルバノスキャナを備えるレーザー加工装置により、前記ワークフィルムに対して前記第2フィルム層側からレーザー光を照射して、前記第1フィルム層上で前記原粘着剤層および前記第2フィルム層を切断する、外形加工工程とを含み、
前記外形加工工程では、前記ワークフィルムの幅方向に連なるように当該ワークフィルムに設定される、前記ガルバノスキャナと同数の走査領域と、前記複数のガルバノスキャナとを一対一で対応させて、各ガルバノスキャナによって一の走査領域内でレーザー光を走査する、粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記レーザー加工装置が、前記ワークフィルムを吸引可能な加工ステージを備え、
前記外形加工工程では、前記ワークフィルムを前記加工ステージで吸引しつつ当該加工ステージ上をスライド走行させる、請求項1に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記外形加工工程では、前記ワークフィルムの幅方向における前記複数のガルバノスキャナの位置が固定されている、請求項1または2に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルは、例えば、画素パネル、偏光フィルム、タッチパネルおよびカバーフィルムなどの要素を含む積層構造を有する。そのようなディスプレイパネルの製造過程では、積層構造に含まれる要素どうしの接合のために、例えば、光学的に透明な粘着シート(光学粘着シート)が用いられる。光学粘着シートは、例えば、同シートの両面がはく離ライナーで被覆された形態(粘着剤層を有する積層フィルムの形態)で製造される。
【0003】
一方、例えばスマートフォン用およびタブレット端末用に、繰り返し折り曲げ可能(フォルダブル)なディスプレイパネルの開発が進んでいる。フォルダブルディスプレイパネルは、具体的には、屈曲形状とフラットな非屈曲形状との間で、繰り返し変形可能である。このようなフォルダブルディスプレイパネルでは、積層構造中の各要素が、繰り返し折り曲げ可能に作製されており、そのような要素間の接合に薄い光学粘着シートが用いられている。フォルダブルディスプレイパネルなどフレキシブルデバイス用の光学粘着シートについては、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-111754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルデバイス用の粘着シートは、従来、例えば次のようにして製造される。
【0006】
まず、図7Aに示すように、長尺の原反フィルムとしての積層フィルム90を用意する。積層フィルム90は、はく離ライナー91と、粘着剤層92と、はく離ライナー93とを、厚さ方向Hにこの順で有する。はく離ライナー91は、粘着剤層92の一方面に剥離可能に接している。はく離ライナー93は、粘着剤層92の他方面に剥離可能に接している。このような積層フィルム90が、キャリアフィルム(図示略)上に支持された状態で、製造ラインを流される。
【0007】
次に、図7Bに示すように、積層フィルム90の粘着剤層92に対するプレス加工により、複数の枚葉状の光学粘着シート92Aを形成する(外形加工工程)。プレス加工では、ロールトゥロール方式でプレス加工可能なプレス加工機を用いる。具体的には、プレス加工では、積層フィルム90に対して、加工刃(図示略)を、はく離ライナー93側からはく離ライナー91に至るまで押し入れる。これにより、所定の平面視形状の光学粘着シート92Aを形成する。本工程では、粘着剤層92における光学粘着シート92Aまわりには、周囲部92aが形成される。はく離ライナー93もプレス加工されて、粘着剤層92と同一の平面視形状のはく離ライナー93Aが形成され、はく離ライナー93Aまわりに周囲部93aが形成される。また、本工程では、図8に示すように、積層フィルム90において切断溝95が形成される。切断溝95は、粘着剤層92およびはく離ライナー93に押し入る加工刃が、粘着剤層92およびはく離ライナー93を面方向Dに押圧することより、形成される。はく離ライナー91上で隣り合う光学粘着シート92Aおよび周囲部92aの端縁部E,Eは、互いに対向する。
【0008】
このような外形加工工程の後、図7Cに示すように、はく離ライナー91上から周囲部92a,93aを除去する(除去工程)。この後、図7Dに示すように、長尺のはく離ライナー91が枚葉状のはく離ライナー91Aに切断される。これにより、粘着剤層を有する枚葉状の積層フィルム(はく離ライナー91A/光学粘着シート92A/はく離ライナー93A)が得られる。
【0009】
フレキシブルデバイス用の光学粘着シートには、デバイス屈曲時の被着体への充分な追従性と、優れた応力緩和性とを有するように、高度に軟質であることが求められる。しかしながら、上述の製造方法では、粘着剤層92が軟質なほど、外形加工工程(図7B)後に、はく離ライナー91上で隣り合う光学粘着シート92Aおよび周囲部92aの端縁部E,Eが、図8において一点鎖線で示すように、それぞれ外方に膨らむように変形しやすい。具体的には、プレス加工時の加工刃の押し入りによって間が開いた端縁部E,Eは、元の位置に復帰するように変形しやすい(復帰的変形)。
【0010】
このような端縁部Eの変形は、隣り合う端縁部E,Eどうしが接触して付着すること(ブロッキング)の原因となる。端縁部E,E間にブロッキングが生じると、除去工程(図7C)において、周囲部92a,93aを適切に除去できない。端縁部E,E間のブロッキングは、粘着剤層を有する積層フィルムの製造歩留まりを低下させる。
【0011】
上述の製造方法の外形加工工程では、プレス加工に代えてレーザー加工することも考えられる。図9は、従来のロールトゥロール方式のレーザー加工機の一例としてのレーザー加工機200を表す。
【0012】
レーザー加工機200は、加工ステージ210と、ガントリー装置220と、レーザーヘッド230と、発振器240とを備えるガントリー式のレーザー加工機である。ガントリー装置220は、一対のガイド221と、第1可動ユニット222と、第2可動ユニット223とを備える。第1可動ユニット222は、各ガイド221に対して、ワークフィルムの流れ方向D1にスライド可能に取り付けられている。第2可動ユニット223は、第1可動ユニット222に対して、ワークフィルムの幅方向D2にスライド可能に取り付けられている。レーザーヘッド230は、第2可動ユニット223に固定されている。ガントリー装置220により、加工ステージ210の上方において、レーザーヘッド230が流れ方向D1および幅方向D2に移動可能である。また、発振器240では、レーザー光が発生される。当該レーザー光は、所定の光路(図9では模式的に点線で表す)によってレーザーヘッド230に導かれ、レーザーヘッド230から加工ステージ210側に照射される。
【0013】
このようなレーザー加工機200による外形加工工程では、ワークフィルムとしての積層フィルム90が加工ステージ210上を流れ方向D1に流されつつ、積層フィルム90に対してレーザーヘッド230からレーザー光が照射される。レーザーヘッド230は、ガントリー装置220によって位置制御される。具体的には、積層フィルム90におけるレーザー光の照射スポットが切断予定ラインをたどるように、ガントリー装置220により、レーザーヘッド230が流れ方向D1および幅方向D2に必要に応じて移動される。すなわち、ガントリー装置220により、積層フィルム90に対してレーザー光が走査される。このようなレーザー加工により、積層フィルム90において複数の枚葉状の光学粘着シート92A(図7B)が順次に形成される。
【0014】
このような従来のレーザー加工においては、積層フィルム90に対するレーザー照射箇所の走査は、上述のように、単一のレーザーヘッド230をガントリー装置220によって移動させることによって実施される。しかし、ガントリー装置220の可動ユニット222,223は、重いので、レーザーヘッド230を高速で移動させるのに適さない。すなわち、ガントリー式のレーザー加工機200によるレーザー加工は、レーザー照射箇所の高速での走査に適さない。そのため、当該レーザー加工では、ワークフィルムの幅方向D2の寸法が大きくて製造目的物(粘着剤層を有する積層フィルム)が大きいほど、ワークフィルムの流れ方向D1の速度(搬送速度)を低下させる必要がある。これは、粘着剤層を有する積層フィルムの製造効率を低下させる。加えて、ガントリー式のレーザー加工機200は、比較的大きなガントリー装置220が必要であるため、製造ラインを大型化させる。
【0015】
本発明は、軟質な粘着剤層を有する大判の積層フィルムを効率よく製造するのに適した積層フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明[1]は、キャリアフィルムと、第1フィルム層と、原粘着剤層と、第2フィルム層とを厚さ方向にこの順で備える長尺のワークフィルムを用意する用意工程と、前記ワークフィルムを長さ方向に走行させつつ、複数のガルバノスキャナを備えるレーザー加工装置により、前記ワークフィルムに対して前記第2フィルム層側からレーザー光を照射して、前記第1フィルム層上で前記原粘着剤層および前記第2フィルム層を切断する、外形加工工程とを含み、前記外形加工工程では、前記ワークフィルムの幅方向に連なるように当該ワークフィルムに設定される、前記ガルバノスキャナと同数の走査領域と、前記複数のガルバノスキャナとを一対一で対応させて、各ガルバノスキャナによって一の走査領域内でレーザー光を走査する、粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0017】
本製造方法の外形加工工程では、上記のように、レーザー光の照射により、ワークフィルムにおける第1フィルム層上の原粘着剤層が切断される。これにより、原粘着剤層において、所定の平面視形状の個片化された粘着剤層と、当該粘着剤層まわりの周囲部とが形成される。原粘着剤層に対してレーザー光が照射された部分では、原粘着剤層の材料が蒸発して除去される。すなわち、外形加工工程では、原粘着剤層の部分的除去により、当該原粘着剤層において、粘着剤層と周囲部とが隔てられて形成される。原粘着剤層はプレス刃の押し入りによって粘着剤層と周囲部とに切断されるのではないので、粘着剤層と周囲部とにおいて上述の復帰的変形が生じない。このような外形加工工程は、粘着剤層が軟質であるために変形しやすい場合であっても、粘着剤層と周囲部との間で上述のブロッキングが生じるのを抑制するのに適する。
【0018】
また、本製造方法の外形加工工程では、上記のように、複数のガルバノスキャナを用いる。ワークフィルムには、同フィルムの幅方向に連なるように複数の走査領域が設定される。ガルバノスキャナの数と走査領域の数とは同じであり、ガルバノスキャナと走査領域とを一対一で対応させる。そして、各ガルバノスキャナによって一の走査領域内でレーザー光を走査する。このような外形加工工程では、ガントリー装置によってレーザー光を走査する必要がない。そのため、同工程は、ワークフィルムに対する高速加工を実現するのに適し、従って、ワークフィルムの高い搬送速度を確保するのに適する。加えて、外形加工工程では、複数の走査領域がワークフィルムの幅方向に連なる。そのため、同工程は、ワークフィルムが幅広であって当該ワークフィルムにおいて大判の積層フィルムを形成する場合であっても、ワークフィルムの搬送速度の低下を抑制するのに適する。このような外形加工工程を含む本製造方法は、粘着剤層を有する積層フィルムを効率よく製造するのに適する。
【0019】
以上のように、本製造方法は、軟質な粘着剤層を有する大判の積層フィルムを効率よく製造するのに適する。
【0020】
本発明[2]は、前記レーザー加工装置が、前記ワークフィルムを吸引可能な加工ステージを備え、前記外形加工工程では、前記ワークフィルムを前記加工ステージで吸引しつつ当該加工ステージ上をスライド走行させる、上記[1]に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0021】
このような構成は、外形加工工程において、ワークフィルムの原粘着剤層に対してレーザー光の焦点を高精度に合わせるのに好ましく、従って、原粘着剤層を高精度に切断するのに好ましい。
【0022】
本発明[3]は、前記外形加工工程では、前記ワークフィルムの幅方向における前記複数のガルバノスキャナの位置が固定されている、上記[1]または[2]に記載の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法を含む。
【0023】
このような構成では、外形加工工程において、ガルバノスキャナをワークフィルムに対して幅方向および/または流れ方向に並進移動させるためのガントリー装置などの可動装置が必要ない。そのような可動装置が不要なことは、外形加工工程において、原粘着剤層を高精度に切断するのに好ましい。加えて、可動装置が不要なことは、本製法方法を実施する製造ラインの省スペース化、および、製造コストの低減に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の粘着剤層を有する積層フィルムの製造方法の一実施形態の工程を表す。図1Aは積層フィルムを用意する工程を表し、図1Bは外形加工工程を表し、図1Cは除去工程を表し、図1Dは切断工程を表す。
図2】外形加工工程を表す斜視図である。
図3】外形加工工程を表す断面図である。
図4】外形加工工程を表す平面図である。
図5】レーザー加工ユニットの内部構成の模式図である。
図6】ガルバノスキャナの一例の斜視図である。
図7】粘着剤層を有する積層フィルムの従来の製造方法の一例を表す。図7Aは積層フィルムを用意する工程を表し、図7Bは外形加工工程を表し、図7Cは除去工程を表し、図7Dは切断工程を表す。
図8図7Bに示す外形加工工程の切断箇所の部分拡大断面模式図である。
図9】従来のレーザー加工装置の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態の積層フィルムの製造方法は、粘着剤層を有する枚葉状の積層フィルムのロールトゥロール方式での製造方法である。本製造方法は、図1Aから図1Dに示すように、用意工程(図1A)と、外形加工工程(図1B)と、除去工程(図1C)と、切断工程(図1D)とを含む。
【0026】
用意工程では、図1Aに示すように、長尺の原反フィルムとしての積層フィルムXを用意する。本製造方法を実施する製造ラインにおいて、積層フィルムXは、キャリアフィルムC上に用意される。
【0027】
積層フィルムXは、フィルム層10(第1フィルム層)と、原粘着剤層20と、フィルム層30(第2フィルム層)とを、厚さ方向Hにこの順で備える。原粘着剤層20は、第1面20aと、当該第1面20aとは反対の第2面20bとを有する。フィルム層10は第1面20aに接している。フィルム層30は第2面20bに接している。積層フィルムXは、厚さ方向Hと直交する面方向に広がる。
【0028】
キャリアフィルムCは、厚さ方向Hの一方側に粘着面を有する片面粘着フィルムである。キャリアフィルムCおよび積層フィルムXは、ワークフィルムWを形成する。ワークフィルムWにおいて、キャリアフィルムCの粘着面が積層フィルムXのフィルム層10側に貼り合わせられている。ワークフィルムWは、具体的には、キャリアフィルムCと、フィルム層10と、原粘着剤層20と、フィルム層30とを厚さ方向Hにこの順で備える。また、キャリアフィルムCは、本実施形態では、ワークフィルムWの流れ方向D1(図2)と直交する幅方向D2(図2,図3)において、積層フィルムXよりも幅広である。積層フィルムXは、キャリアフィルムC上において、幅方向D2の中央位置に配置される。積層フィルムXの幅(幅方向D2の長さ)は、例えば200mm以上、好ましくは280mm以上、より好ましくは400mm以上であり、また、例えば1200mm以下、好ましくは1000mm以下、より好ましくは800mm以下である。このようなワークフィルムWが、製造ラインを流される。
【0029】
フィルム層10は、例えば、はく離ライナー、機能性光学フィルム、または基材フィルム(支持フィルム)である。
【0030】
はく離ライナーの材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、およびポリカーボネートが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。はく離ライナーとしてのフィルム層10は、原粘着剤層20の第1面20aに剥離可能に接している。そのようなフィルム層10の表面(原粘着剤層20側の表面)は、好ましくは剥離処理されている。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離処理およびフッ素剥離処理が挙げられる。はく離ライナーの厚さは、粘着剤層に対する保護機能を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。はく離ライナーの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0031】
機能性光学フィルムとしては、例えば、偏光フィルムおよび位相差フィルムが挙げられる。機能性光学フィルムは、パネル補強材などの他の光学フィルムであってもよい。フィルム層10が機能性光学フィルムである場合、そのようなフィルム層10に対し、原粘着剤層20の第1面20aは接合している。機能性光学フィルムとしてのフィルム層10と、原粘着剤層20とは、粘着剤層付き機能性光学フィルムを形成する。
【0032】
偏光フィルムとしては、例えば、二色性物質による染色処理とその後の延伸処理とを経た親水性高分子フィルムが挙げられる。二色性物質としては、例えば、ヨウ素および二色性染料が挙げられる。親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、部分ホルマール化PVAフィルム、および、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分ケン化フィルムが挙げられる。偏光フィルムとしては、ポリエン配向フィルムも挙げられる。ポリエン配向フィルムの材料としては、例えば、PVAの脱水処理物、および、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物が挙げられる。偏光フィルムは、厚さ方向の一方面および/または他方面に、接着剤を介して接合された保護フィルムを有していてもよい。偏光フィルムの厚さは、偏光フィルムの機能、強度および耐久性確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。偏光フィルムの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
【0033】
位相差フィルムとしては、例えば、λ/2波長フィルムおよびλ/4波長フィルム、および視野角補償フィルムが挙げられる。位相差フィルムの材料としては、例えば、延伸処理によって複屈折化された高分子フィルムが挙げられる。高分子フィルムとしては、例えば、セルロースフィルムおよびポリエステルフィルムが挙げられる。セルロースフィルムとしては、例えばトリアセチルセルロースフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、およびポリブチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。位相差フィルムとしては、セルロースフィルムなどの基材と、当該基材上の液晶性ポリマーなど液晶化合物の配向層とを備えるフィルムも挙げられる。位相差フィルムの厚さは、位相差フィルムの機能および強度を確保する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。位相差フィルムの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0034】
基材フィルムの材料としては、例えば、はく離ライナーの材料として上記した材料が挙げられる。フィルム層10が基材フィルムである場合、そのようなフィルム層10に対し、原粘着剤層20の第1面20aは接合している。基材フィルムとしてのフィルム層10と、原粘着剤層20とは、片面粘着シートを形成する。基材フィルムの厚さは、基材としての強度を確保する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上である。基材フィルムの厚さは、積層フィルムXの薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0035】
原粘着剤層20は、粘着剤組成物から形成されている。粘着剤組成物は、ベースポリマーを含む。ベースポリマーは、粘着性を発現させる粘着成分である。ベースポリマーとしては、例えば、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、およびポリビニルエーテルポリマーが挙げられる。ベースポリマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。原粘着剤層20における良好な透明性および粘着性を確保する観点から、ベースポリマーとしては、好ましくはアクリルポリマーが用いられる。
【0036】
アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを50質量%以上の割合で含むモノマー成分の共重合体である。「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられ、より好ましくは、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。
【0037】
モノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを含んでもよい。共重合性モノマーとしては、例えば、極性基を有するモノマーが挙げられる。極性基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、およびカルボキシ基含有モノマー、が挙げられる。極性基含有モノマーは、アクリルポリマーへの架橋点の導入、アクリルポリマーの凝集力の確保など、アクリルポリマーの改質に役立つ。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチルが挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルイミダゾール、およびN-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0038】
ベースポリマーは、好ましくは、架橋構造を有する。ベースポリマーへの架橋構造の導入方法としては、架橋剤と反応可能な官能基を有するベースポリマーと架橋剤とを粘着剤組成物に配合し、ベースポリマーと架橋剤とを粘着剤層中で反応させる方法(第1の方法)、および、ベースポリマーを形成するモノマー成分に架橋剤としての多官能モノマーを含め、当該モノマー成分の重合により、ポリマー鎖に分枝構造(架橋構造)が導入されたベースポリマーを形成する方法(第2の方法)が、挙げられる。これら方法は、併用されてもよい。
【0039】
上記第1の方法で用いられる架橋剤としては、例えば、ベースポリマーに含まれる官能基(ヒドロキシ基およびカルボキシ基など)と反応する化合物が挙げられる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、過酸化物架橋剤、およびエポキシ架橋剤が挙げられる。架橋剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
【0040】
上記第2の方法では、まず、ベースポリマーを形成するための単官能モノマーを重合させ(予備重合)、これによって部分重合物(低重合度の重合物と未反応のモノマーとの混合物)を含有するプレポリマー組成物を調製する。次に、プレポリマー組成物に架橋剤としての多官能モノマーを添加した後、部分重合物と多官能モノマーとを重合させる(本重合)。多官能モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を1分子中に2個以上含有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
ベースポリマーは、上述のモノマー成分を重合させることによって形成できる。重合方法としては、例えば、溶液重合、無溶剤での光重合(例えばUV重合)、塊状重合、および乳化重合が挙げられる。溶液重合の溶媒としては、例えば、酢酸エチルおよびトルエンが用いられる。また、重合の開始剤としては、例えば、熱重合開始剤または光重合開始剤が用いられる。
【0042】
ベースポリマーの重量平均分子量は、原粘着剤層20における凝集力の確保の観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは50万以上である。同重量平均分子量は、好ましくは500万以下、より好ましくは300万以下、更に好ましくは200万以下である。ベースポリマーの重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)によって測定してポリスチレン換算により算出される。
【0043】
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)は、原粘着剤層20の柔らかさを確保する観点から、好ましくは0℃以下、より好ましくは-10℃以下、更に好ましくは-20℃以下である。同ガラス転移温度は、例えば-80℃以上である。
【0044】
ベースポリマーのガラス転移温度(Tg)については、下記のFoxの式に基づき求められるガラス転移温度(理論値)を用いることができる。Foxの式は、ポリマーのガラス転移温度Tgと、当該ポリマーを構成するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。下記のFoxの式において、Tgはポリマーのガラス転移温度(℃)を表し、Wiは当該ポリマーを構成するモノマーiの重量分率を表し、Tgiは、モノマーiから形成されるホモポリマーのガラス転移温度(℃)を示す。ホモポリマーのガラス転移温度については文献値を用いることができる。例えば、「Polymer Handbook」(第4版,John Wiley & Sons, Inc., 1999年)には、各種のホモポリマーのガラス転移温度が挙げられている。一方、モノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、特開2007-51271号公報に具体的に記載されている方法によって求めることも可能である。
【0045】
Foxの式 1/(273+Tg)=Σ[Wi/(273+Tgi)]
【0046】
粘着剤組成物は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、溶剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、軟化剤、および酸化防止剤が挙げられる。溶剤としては、例えば、アクリルポリマーの重合時に必要に応じて用いられる重合溶媒、および、重合後に重合反応溶液に添加される溶剤が、挙げられる。当該溶剤としては、例えば、酢酸エチルおよびトルエンが用いられる。
【0047】
原粘着剤層20のヘイズは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。原粘着剤層20のヘイズは、JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘイズメーターを使用して測定できる。ヘイズメーターとしては、例えば、日本電色工業社製の「NDH2000」、および、村上色彩技術研究所社製の「HM-150型」が挙げられる。
【0048】
原粘着剤層20の25℃でのせん断貯蔵弾性率は、原粘着剤層20の凝集力を確保する観点から、好ましくは10kPa以上、より好ましくは15kPa以上、更に好ましくは20kPa以上、特に好ましくは25kPa以上である。原粘着剤層20の25℃でのせん断貯蔵弾性率は、フレキシブルディスプレイパネル用途の光学粘着シートに求められる柔らかさを原粘着剤層20において実現する観点から、好ましくは1000kPa以下、より好ましくは700kPa以下、更に好ましくは500kPa以下、特に好ましくは300kPa以下である。せん断貯蔵弾性率の調整方法としては、例えば、原粘着剤層20におけるベースポリマーの種類の選択、分子量の調整、配合量の調整、ガラス転移温度の調整、および架橋度の調整が挙げられる。せん断貯蔵弾性率の調整方法としては、原粘着剤層20におけるベースポリマー以外の成分の選択および配合量の調整も挙げられる。粘着剤層のせん断貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定によって求められる。同測定は、Rheometric Scientific社製の動的粘弾性測定装置「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」によって実施できる。同測定では、測定モードをせん断モードとし、測定温度範囲を-40℃~100℃とし、昇温速度を5℃/分とし、周波数を1Hzとする。
【0049】
フィルム層30は、本実施形態では、はく離ライナーである。はく離ライナーの材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、およびポリカーボネートが挙げられる。具体的には、フィルム層10に関して上記したはく離ライナーの材料が挙げられる。はく離ライナーとしてのフィルム層30は、原粘着剤層20の第2面20bに剥離可能に接している。そのようなフィルム層30の表面(原粘着剤層20側の表面)は、好ましくは剥離処理されている。剥離処理としては、例えば、シリコーン剥離処理およびフッ素剥離処理が挙げられる。フィルム層30の厚さは、例えば10μm以上であり、また、例えば200μm以下である。
【0050】
積層フィルムXは、例えば次のようにして製造できる。まず、上述の粘着剤組成物をフィルム層10上に塗布して塗膜を形成する。次に、フィルム層10上の塗膜の上にフィルム層30を貼り合わせる。次に、フィルム層10,30間の塗膜を乾燥させ、且つ、必要に応じて塗膜に対して光照射する。これにより、フィルム層10,30間に原粘着剤層20を形成する。粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、およびダイコートが挙げられる。塗膜の乾燥温度は、例えば50℃~200℃である。乾燥時間は、例えば5秒~20分である。
【0051】
外形加工工程では、図1Bに示すように、ワークフィルムWに対するレーザー加工を実施する。具体的には、複数のガルバノスキャナを備えるレーザー加工装置により、ワークフィルムWに対してフィルム層30側からレーザー光Lを照射して、フィルム層10上で原粘着剤層20およびフィルム層30を切断する。これにより、原粘着剤層20において、個片化された粘着剤層21と、粘着剤層21まわりの周囲部22とが形成される。また、フィルム層30において、粘着剤層21上のフィルム31と、フィルム31まわりの周囲部32とが形成される。フィルム層10には、ハーフカット溝10aが形成される。ハーフカット溝10aは、粘着剤層21の端縁21aに沿って形成される。本実施形態では、複数のガルバノスキャナを備えるレーザー加工装置として、図2から図4に示すように、レーザー加工装置100を用いる。
【0052】
レーザー加工装置100は、本実施形態では、加工ステージ110と、複数のレーザー加工ユニット120と、制御部(図示略)とを備える。図2から図4は、レーザー加工装置100が4台のレーザー加工ユニット120A,120B,120C,120Dを備える場合を例示的に図示する。
【0053】
加工ステージ110は、製造ラインを流れるワークフィルムWを支持するステージである。加工ステージ110は、図3に示すように、支持テーブル111と、吸引路112とを有する。支持テーブル111は、加工ステージ110において、ワークフィルムWに対する支持面を形成する。支持テーブル111は、当該支持テーブル111を厚さ方向に貫通する複数の吸引孔111aを有する。吸引路112は、加工ステージ110内に形成された空間である。吸引路112は、支持テーブル111の下方に位置する。支持テーブル111の各吸引孔111aは、吸引路112と連通する。吸引路112は、減圧ポンプ(図示略)の吸引路と連結されている。減圧ポンプの稼働により、吸引路112は減圧される。減圧ポンプは、制御部による制御に従って、稼働状態と非稼働状態とを選択可能である。支持テーブル111上にワークフィルムWがある場合、吸引路112が減圧されることにより、ワークフィルムWは加工ステージ110の支持テーブル111に対して吸引される。
【0054】
加工ステージ110の製造ライン上流側には、一対のニップローラN1,N1が配置されている。一対のニップローラN1,N1によってワークフィルムWを挟んだ状態で各ニップローラN1を一定速度で回転させることにより、ワークフィルムWを引っ張って加工ステージ110に向けて送る。一方、加工ステージ110の製造ライン下流側には、一対のニップローラN2,N2が配置されている。一対のニップローラN2,N2によってワークフィルムWを挟んだ状態で各ニップローラN2を一定速度で回転させることにより、ワークフィルムWを引っ張ってニップローラN2,N2より下流側に向けて送る。ニップローラN1,N1とニップローラN2,N2とにより、ワークフィルムWは、加工ステージ110の支持ステージ111上を同フィルムの長さ方向(流れ方向D1)に流される。この状態において加工ステージ110の吸引路112が減圧されることにより、ワークフィルムWは、加工ステージ110に吸引されつつ、加工ステージ110上をスライド走行する。
【0055】
レーザー加工ユニット120は、図5に模式的に示すように、筐体121と、レーザー光源122と、ビームエキスパンダ123と、可動レンズ124と、集光レンズ125と、ガルバノスキャナSとを備える。レーザー光源122、ビームエキスパンダ123、可動レンズ124、集光レンズ125、およびガルバノスキャナSは、筐体121内に収容されている。筐体121はレーザー光出射口(図示略)を有する。
【0056】
レーザー光源122は、レーザー光Lを発振する。レーザー光源122としては、例えば、気体レーザー光源、固体レーザー光源、および半導体レーザー光源が挙げられる。気体レーザー光源としては、例えば、赤外域の波長を有するレーザー光をパルス発振するレーザー光源が挙げられる。そのようなレーザー光源としては、例えば、COレーザー光源(5μm)およびCOレーザー光源(9.3~10.6μm)が挙げられる(括弧内の数値はレーザー光源からのレーザー光の波長を表す。レーザー光源に関して以下同じ)。気体レーザー光源としては、エキシマレーザー光源も挙げられる。エキシマレーザー光源としては、例えば、Fエキシマレーザー光源(157nm)、ArFエキシマレーザー光源(193nm)、KrFエキシマレーザー光源(248nm)、およびXeClエキシマレーザー光源(308nm)が挙げられる。固体レーザー光源としては、例えば、Nd:YAGレーザー光源(1064nm)が挙げられる。半導体レーザー光源としては、例えば、波長405nmの半導体レーザー光源が挙げられる。
【0057】
ビームエキスパンダ123は、レーザー光Lのビームサイズを調整する光学部品である。ビームエキスパンダ123と可動レンズ124との間には、他の光学部品が配置されてもよい。他の光学部品としては、例えば、コリメータレンズおよびホモジナイザが挙げられる。
【0058】
可動レンズ124は、レーザー光Lの光軸方向に変位可能なレンズである。可動レンズ124が光軸方向に変位することにより、集光レンズ125で集光されるレーザー光Lの焦点の位置(ワークフィルムWでの焦点の位置)が変動する。可動レンズ124は、制御部による制御に従って、光軸方向の位置を調節可能である(可動レンズ124の位置制御)。
【0059】
集光レンズ125を通過したレーザー光Lは、ガルバノスキャナSで反射される。ガルバノスキャナSは、図6に示すように、ガルバノミラー126(第1ガルバノミラー)と、ガルバノモータ127(第1ガルバノモータ)と、ガルバノミラー128(第2ガルバノミラー)と、ガルバノモータ129(第2ガルバノモータ)とを備える。
【0060】
ガルバノミラー126は、レーザー光Lを反射可能なミラー面126aを有する。ガルバノモータ127は、ガルバノミラー126に連結されたモータ軸芯127aを有する。モータ軸芯127aは、第1方向に延びる。第1方向は、好ましくは、ワークフィルムWの流れ方向D1および幅方向D2のそれぞれと直交する方向である。ガルバノモータ127は、ガルバノミラー126のミラー面126aが向く方向(第1ミラー面方向)を、モータ軸芯127aに沿って延びる回転軸まわりに揺動させることができる。ガルバノモータ127は、制御部による制御に従って、ガルバノミラー126における第1ミラー面方向を制御可能である。
【0061】
ガルバノミラー128は、レーザー光Lを反射可能なミラー面128aを有する。ガルバノモータ129は、ガルバノミラー128に連結されたモータ軸芯129aを有する。モータ軸芯129aは、第2方向に延びる。第2方向は、第1方向と交差する。第2方向は、好ましくは、第1方向と直交する。第2方向は、好ましくは、幅方向D2である。ガルバノモータ129は、ガルバノミラー128のミラー面128aが向く方向(第2ミラー面方向)を、モータ軸芯129aに沿って延びる回転軸まわりに揺動させることができる。ガルバノモータ129は、制御部による制御に従って、ガルバノミラー128における第2ミラー面方向を制御可能である。
【0062】
ガルバノスキャナSにおいて、レーザー光Lは、ガルバノミラー126のミラー面126aと、ガルバノミラー128のミラー面128aとで順次に反射される。このレーザー光Lは、筐体121のレーザー光出射口を通過した後、加工ステージ110上のワークフィルムWに照射される。
【0063】
本工程において、ワークフィルムWには、ワークフィルムWの幅方向D2に連なるように複数の走査領域R(図3および図4に示す)が設定される。複数の走査領域Rは、具体的には、ワークフィルムWにおける積層フィルムXを幅方向D2に複数に分割するように設定される。レーザー加工ユニット120(ガルバノスキャナSを備える)の数と、走査領域Rの数とは、同じである。すなわち、ガルバノスキャナSの数と、走査領域Rの数とは同じである。図3および図4は、ワークフィルムWの幅方向に連なるように四つ走査領域R1,R2,R3,R4が設定される場合を例示的に図示する(図3では、ガルバノスキャナSおよびレーザー加工ユニット120を模式的に表す)。走査領域R1は、レーザー加工ユニット120AのガルバノスキャナSと対応づけられる。走査領域R2は、レーザー加工ユニット120BのガルバノスキャナSと対応づけられる。走査領域R3は、レーザー加工ユニット120CのガルバノスキャナSと対応づけられる。走査領域R4は、レーザー加工ユニット120DのガルバノスキャナSと対応づけられる。すなわち、ガルバノスキャナSと走査領域Rとは一対一で対応づけられている。
【0064】
走査領域Rの幅方向D2の長さは、例えば30mm以上、好ましくは50mm以上、より好ましくは100mm以上であり、また、例えば300mm以下、好ましくは250mm以下、より好ましくは200mm以下である。四つの走査領域Rにおける幅方向D2の長さは、互いに全て同じであってもよいし、一部が異なってもよいし、互いに全て異なってもよい。
【0065】
各レーザー加工ユニット120において、レーザー光Lは、ガルバノモータ127,129の第1・第2ミラー面方向の制御により、ワークフィルムWに対して走査される。具体的には、レーザー加工ユニット120からのレーザー光LのワークフィルムW上の照射スポットが、ワークフィルムWにおける切断予定ラインをたどるように、ガルバノモータ127,129の第1・第2ミラー面方向の制御により、流れ方向D1および面方向D2に走査される。各レーザー加工ユニット120において、レーザー光Lは、ガルバノスキャナSの実質的に直下を中心とする所定の範囲(走査エリア)内を走査される。また、走査されるレーザー光Lにおいて、ワークフィルムWに対する入射角(同フィルムの表面の法線方向と、レーザー光Lの光軸方向とが形成する角度)の変化に関わらず照射スポットのサイズ(スポット径)が同じになるように、第1・第2ミラー面方向に応じて可動レンズ124は位置制御される。
【0066】
図4は、レーザー加工ユニット120ごとのレーザー光Lの走査エリアARの配置の一例を示す。図4では、レーザー加工ユニット120Aの走査エリアAR1と、レーザー加工ユニット120Bの走査エリアAR2と、レーザー加工ユニット120Cの走査エリアAR3と、レーザー加工ユニット120Dの走査エリアAR4とが、流れ方向D1において間隔を空けてこの順で並び、且つ、幅方向D2において間隔を空けずにこの順で並ぶ。複数の走査エリアARが幅方向D2において間隔を空けずに並ぶことにより、ワークフィルムWに対する外形加工を幅方向D2に間断なく実施できる。本実施形態では、各走査エリアARがこのような配置となるように、各レーザー加工ユニット120は配置されている。各レーザー加工ユニット120は、例えば、レーザー加工装置100の所定のフレーム部に連結されている。これにより、ワークフィルムWの流れ方向D1および幅方向D2における複数のレーザー加工ユニット120の位置が固定される。すなわち、ワークフィルムWの流れ方向D1および幅方向D2における複数のガルバノスキャナSの位置が固定される。また、複数の走査エリアARも固定される。複数の走査エリアARは、流れ方向D1において間隔を空けずに並んでもよい。複数の走査エリアARが流れ方向D1において間隔を空けずに並ぶように、レーザー加工装置100において複数のレーザー加工ユニット120が配置されてもい。
【0067】
レーザー加工装置100においては、図4に示すように、ワークフィルムWにおける長さ方向の一定領域は、まず、走査エリアAR1でレーザー加工を受け、次に走査エリアAR2でレーザー加工を受け、次に走査エリアAR3でレーザー加工を受け、次に走査エリアAR4でレーザー加工を受ける。本実施形態では、例えば、次のとおりである。
【0068】
走査エリアAR1では、本実施形態では矩形の切断予定ライン(図示略)における点P1から点P2までの部分ライン(第1切断予定部分ライン)が走査エリアAR1を通過する間に、レーザー加工ユニット120Aからのレーザー光Lの照射スポットが、第1切断予定部分ラインを点P1から点P2までたどるように、走査される(第1走査)。これにより、ワークフィルムWに切断ラインT1が形成される。
【0069】
走査エリアAR2では、切断予定ラインにおける点P1から点P3までの部分ライン(第2切断予定部分ライン)が走査エリアAR2を通過する間に、レーザー加工ユニット120Bからのレーザー光Lの照射スポットが、第2切断予定部分ラインを点P1から点P3まで又は点P3から点P1までたどるように、走査される(第2走査)。これにより、切断ラインT1と点P1で繋がる切断ラインT2がワークフィルムWに形成される。また、走査エリアAR2では、切断予定ラインにおける点P2から点P4までの部分ライン(第3切断予定部分ライン)が走査エリアAR2を通過する間に、レーザー加工ユニット120Bからのレーザー光Lの照射スポットが、第3切断予定部分ラインを点P2から点P4まで又は点P2から点P4までたどるように、走査される(第3走査)。これにより、切断ラインT1と点P2で繋がる切断ラインT3がワークフィルムWに形成される。
【0070】
走査エリアAR3では、切断予定ラインにおける点P3から点P5までの部分ライン(第4切断予定部分ライン)が走査エリアAR3を通過する間に、レーザー加工ユニット120Cからのレーザー光Lの照射スポットが、第4切断予定部分ラインを点P3から点P5まで又は点P5から点P3までたどるように、走査される(第4走査)。これにより、切断ラインT2と点P3で繋がる切断ラインT4がワークフィルムWに形成される。走査エリアAR3では、切断予定ラインにおける点P4から点P6までの部分ライン(第5切断予定部分ライン)が走査エリアAR3を通過する間に、レーザー加工ユニット120Cからのレーザー光Lの照射スポットが、第5切断予定部分ラインを点P4から点P6まで又は点P6から点P4までたどるように、走査される(第5走査)。これにより、切断ラインT3と点P4で繋がる切断ラインT5がワークフィルムWに形成される。
【0071】
走査エリアAR4では、切断予定ラインにおける点P5から点P6までの部分ライン(第6切断予定部分ライン)が走査エリアAR4を通過する間に、レーザー加工ユニット120Dからのレーザー光Lの照射スポットが、第6切断予定部分ラインを点P5から点P6までたどるように、走査される(第6走査)。これにより、ワークフィルムWに切断ラインT6が形成される。切断ラインT6は、切断ラインT4と点P5で繋がり、且つ、切断ラインT5と点P6で繋がる。
【0072】
第1~第6走査のそれぞれでは、具体的には、ワークフィルムWの搬送速度(ベクトル)とレーザー光Lの走査速度(ベクトル)との合成速度(ベクトル)によって定まる照射スポットの位置が、走査エリアARを通過する切断予定部分ラインをたどるように、制御部によってガルバノスキャナS(ガルバノモータ127,129)が制御される。
【0073】
以上のような外形加工工程において、レーザー光Lとして例えばCOレーザーを用いる場合、レーザー光Lのパルス幅は例えば0.5~50μ秒であり、レーザー光Lのパルスの周波数は例えば1~200kHzであり、レーザー光Lの出力は例えば2~250Wであり、レーザー光Lのスポット径は例えば50~200μmである。レーザー光Lとして例えば短パルスレーザーを用いる場合は、レーザー光Lのパルス幅は例えば0.2~1000ピコ秒であり、レーザー光Lのパルスの周波数は例えば0.1~1000MHzであり、レーザー光Lの出力は例えば2~250Wであり、レーザー光Lのスポット径は例えば5~100μmである。
【0074】
次に、除去工程では、図1Cに示すように、フィルム層10上から周囲部22,32を除去する。
【0075】
次に、切断工程では、図1Dに示すように、フィルム層10が、枚葉状のフィルム11に切断される。切断方法としては、例えば、レーザー加工による切断、および、プレス加工による切断が挙げられる。
【0076】
以上のようにして、積層フィルムY(粘着剤層を有する積層フィルム)を製造できる。フィルム31を粘着剤層21から剥離した後、粘着剤層21に他のフィルムを貼り合わせてもよい。
【0077】
本製造方法の外形加工工程では、上述のように、レーザー光Lの照射により、ワークフィルムWにおけるフィルム層10上の原粘着剤層20が切断される。これにより、原粘着剤層20において、所定の平面視形状の個片化された粘着剤層21と、粘着剤層21まわりの周囲部22とが形成される。原粘着剤層20に対してレーザー光Lが照射された部分では、原粘着剤層20の材料が蒸発して除去される。すなわち、外形加工工程では、原粘着剤層20の部分的除去により、原粘着剤層20において、粘着剤層21と周囲部22とが隔てられて形成される。原粘着剤層20はプレス刃の押し入りによって粘着剤層21と周囲部22とに切断されるのではないので、粘着剤層21と周囲部22とにおいて上述の復帰的変形が生じない。このような外形加工工程は、粘着剤層21が軟質であるために変形しやすい場合であっても、粘着剤層21と周囲部22との間で上述のブロッキングが生じるのを抑制するのに適する。
【0078】
また、本製造方法の外形加工工程では、上述のように、複数のガルバノスキャナSを用いる。ワークフィルムWには、ワークフィルムWの幅方向D2に連なるように複数の走査領域Rが設定される。ガルバノスキャナSの数と走査領域Rの数とは同じであり、ガルバノスキャナSと走査領域Rとを一対一で対応させる。そして、各ガルバノスキャナSによって一の走査領域R内でレーザー光Lを走査する。このような外形加工工程では、ガントリー装置によってレーザー光Lを走査する必要がない。そのため、同工程は、ワークフィルムWに対する高速加工を実現するのに適し、従って、ワークフィルムWの高い搬送速度を確保するのに適する。加えて、外形加工工程では、複数の走査領域RがワークフィルムWの幅方向D2に連なる。そのため、同工程は、ワークフィルムWが幅広であって大判の積層フィルムYを形成する場合であっても、ワークフィルムWの搬送速度の低下を抑制するのに適する。このような外形加工工程を含む本製造方法は、粘着剤層21を有する積層フィルムYを効率よく製造するのに適する。
【0079】
以上のように、本製造方法は、軟質な粘着剤層21を有する大判の積層フィルムYを効率よく製造するのに適する。
【0080】
本製造方法の外形加工工程では、ワークフィルムWは、加工ステージ110に吸引されつつ、加工ステージ110上をスライド走行される。このことは、外形加工工程において、ワークフィルムWの原粘着剤層20に対してレーザー光Lの焦点を高精度に合わせるのに好ましく、従って、原粘着剤層20を高精度に切断するのに好ましい。
【0081】
本製造方法の外形加工工程では、上述のように、レーザー加工装置100において各ガルバノスキャナSの位置が固定された状態で、レーザー光Lが走査される。本製造方法では、ガルバノスキャナSをワークフィルムに対して幅方向および/または流れ方向に並進移動させるためのガントリー装置などの可動装置は、必要ない。そのような可動装置が不要なことは、外形加工工程において、原粘着剤層20を高精度に切断するのに好ましい。加えて、可動装置が不要なことは、本製法方法を実施する製造ラインの省スペース化、および、製造コストの低減に役立つ。
【0082】
本製造方法において、レーザー加工装置100におけるレーザー加工ユニット120の数は4に限らない。すなわち、レーザー加工装置100が備えるガルバノスキャナSの数は4に限らない。レーザー加工装置100におけるレーザー加工ユニット120の数は、2、3、5、または、6以上であってもよい。すなわち、レーザー加工装置100が備えるガルバノスキャナSの数は、2、3、5、または、6以上であってもよい。ワークフィルムWには、ワークフィルムWの幅方向D2に連なるように、ガルバノスキャナSと同数(2、3、5、または、6以上)の走査領域Rが設定される。
【0083】
レーザー加工ユニット120は、レーザー光LがガルバノスキャナSの後に通過する位置に、テレセントリックタイプのfθレンズを備えてもよい(レーザー加工ユニット120は、テレセントリックタイプのfθレンズを備える場合、集光レンズ125を備えない)。当該fθレンズは、レーザー光LのワークフィルムWに対する入射角の変化に関わらずレーザー光Lの照射スポットのスポット径が同じになるようにするのに役立つ。レーザー加工ユニット120は、そのようなfθレンズを備える場合、必ずしも可動レンズ124を備えなくてもよい。レーザー加工ユニット120に割り当てられる走査領域Rの幅(幅方向D2の長さ)よりも直径が大きなテレセントリックタイプfθレンズを用いることができる場合、そのようなfθレンズを用いることが好ましい。また、レーザー加工ユニット120においては、テレセントリックタイプfθレンズと上述の可動レンズ124とを併用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
W ワークフィルム
X 積層フィルム
C キャリアフィルム
H 厚さ方向
D1 流れ方向
D2 幅方向
10 フィルム層(第1フィルム層)
11 フィルム
20 原粘着剤層
21 粘着剤層
22 周囲部
30 フィルム層(第2フィルム層)
31 フィルム
32 周囲部
100 レーザー加工装置
110 加工ステージ
111 支持テーブル
111a 吸引孔
112 吸引路
120 レーザー加工ユニット
S ガルバノスキャナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9