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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051404
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/28 20060101AFI20240404BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F15B15/28 C
B23Q3/06 304F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157558
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】長尾 哲也
【テーマコード(参考)】
3C016
3H081
【Fターム(参考)】
3C016CA03
3H081AA03
3H081CC29
3H081DD22
3H081DD24
3H081GG05
3H081GG17
3H081HH04
(57)【要約】
【課題】
出力部材のピストンロッドの外周と、ハウジングの内壁を利用して出力部材の位置を3段階で検出する機構を設けたシリンダ装置を提供すること。
【解決手段】
ハウジング2には、圧縮気体を供給するA通路Apと、大気に排出する排出するB通路Bpが設けられている。ピストンロッド3にはシール部材11と環状弁部材10を引き連れて押し下げる突起12aが設けられている。ハウジング内の中空内壁には、シール部材11aが当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域13と、シール部材11aのシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域14と、環状弁部材10が上下動可能な大きな内径を持つとともに上側をリング面2dで囲って環状弁部材10を収容し、かつB通路Bpに連通する弁部材領域18が設けられている。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁のシール溝に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を前記供給通路及び排出通路よりも大きな圧力損失で通過させ、前記排出通路に連通する圧力損失通路が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域であって、1つの遊挿領域を2つの摺面領域が上下に挟み、さらに当該2つの摺面領域の上と下に夫々遊挿領域が挟むように設けられており、
前記供給通路、排出通路、圧力損失通路の夫々は、いずれか1つの別々の前記遊挿領域に接続しており、かつ、前記供給通路が接続された遊挿領域は前記供給通路が接続された遊挿領域と上下に隣り合っていることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁の上下に間隔を開けたシール溝の夫々に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を前記供給通路及び排出通路よりも大きな圧力損失で通過させ、前記排出通路に連通する圧力損失通路が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域であって、1つの遊挿領域を2つの摺面領域が上下に挟み、さらに当該2つの摺面領域の上と下に夫々遊挿領域が挟むように設けられており、
前記供給通路、排出通路、圧力損失通路の夫々は、いずれか1つの別々の前記遊挿領域に接続し、かつ、前記供給通路が接続された遊挿領域は前記供給通路が接続された遊挿領域と上下に隣り合っており、
前記ピストンロッドが上下する過程で、上下の前記シール部材が夫々上下の前記摺面領域の位置に同時に位置付くように取り付けられていることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項3】
ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁の上下に間隔を開けたシール溝の夫々に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を前記供給通路及び排出通路よりも大きな圧力損失で通過させ、前記排出通路に連通する圧力損失通路が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域であって、1つの遊挿領域を2つの摺面領域が上下に挟み、さらに当該2つの摺面領域の上と下に夫々遊挿領域が挟むように設けられており、
前記供給通路、排出通路、圧力損失通路の夫々は、いずれか1つの別々の前記遊挿領域に接続し、かつ、前記供給通路が接続された遊挿領域は前記供給通路が接続された遊挿領域と上下に隣り合っており、
前記ピストンロッドが上下する過程で、一方の前記シール部材が上下いずれかの前記摺面領域の位置に位置付くとき、他方の前記シール部材はいずれかの前記遊挿領域の位置に位置付くように取り付けられていることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項4】
ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁のシール溝に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁と、
前記ピストンロッドに外挿される環状弁部材とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路が設けられ、
前記ピストンロッドの前記シール溝の下側に前記環状弁部材を引き連れて押し下げる突起が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域と、前記環状弁部材が上下動可能な大きな内径を持つとともに上側をリング面で囲って前記環状弁部材を収容し、かつ前記排出通路に連通する弁部材領域とが、摺面領域、遊挿領域、弁部材領域が連続して上下に設けられており、
前記ピストンロッドが上下する過程で、前記シール部材が上側の前記摺面領域の位置、前記シール部材が前記遊挿領域の位置、前記突起が前記環状弁部材を引き連れて押し下げる位置に設けられていることを特徴とするシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダ装置に関し、特に、クランプ対象物を固定するシリンダ装置等に適用されるシリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
出力部材の上下動により、シリンダ装置はアンクランプ状態からクランプ状態へ移行する。各状態におけるピストン部の位置を検出する機構が特許文献1に開示されている。特許文献1では、ハウジング内を圧力流体により上下に可動される出力部材を有するシリンダが開示されている。ハウジングの下壁と前記出力部材の間には第1弁室が設けられている。また、ピストン部にはくりぬき状に第2弁室が設けられて、第1弁室側に開放されている。ハウジングの下壁から弁ロッドが突出して第2弁室に挿入されている。出力部材を駆動する圧力流体の経路とは別にこれら第1弁室、弁ロッド、第2弁室を利用して、位置検出用の圧縮気体を1系統配置する。この系統に圧縮気体を送ったときの当該系統の圧力が、高い状態か、低い状態か、中間の状態かにより、出力部材の位置検出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-215074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の出力部材の位置を検出する機構は、第2弁室は出力部材をくりぬき状にして設けたものであり、その中にハウジングの下壁から突出した弁ロッドが挿入されている。このため、小型のシリンダ装置には、適用しにくい構成である。
本発明の目的は、出力部材のピストンロッドの外周と、ハウジングの内壁を利用して出力部材の位置を3段階で検出する機構を設けたシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁のシール溝に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を前記供給通路及び排出通路よりも大きな圧力損失で通過させ、前記排出通路に連通する圧力損失通路が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域であって、1つの遊挿領域を2つの摺面領域が上下に挟み、さらに当該2つの摺面領域の上と下に夫々遊挿領域が挟むように設けられており、
前記供給通路、排出通路、圧力損失通路の夫々は、いずれか1つの別々の前記遊挿領域に接続しており、かつ、前記供給通路が接続された遊挿領域は前記供給通路が接続された遊挿領域と上下に隣り合っていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明では、ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁の上下に間隔を開けたシール溝の夫々に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を前記供給通路及び排出通路よりも大きな圧力損失で通過させ、前記排出通路に連通する圧力損失通路が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域であって、1つの遊挿領域を2つの摺面領域が上下に挟み、さらに当該2つの摺面領域の上と下に夫々遊挿領域が挟むように設けられており、
前記供給通路、排出通路、圧力損失通路の夫々は、いずれか1つの別々の前記遊挿領域に接続し、かつ、前記供給通路が接続された遊挿領域は前記供給通路が接続された遊挿領域と上下に隣り合っており、
前記ピストンロッドが上下する過程で、上下の前記シール部材が夫々上下の前記摺面領域の位置に同時に位置付くように取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁の上下に間隔を開けたシール溝の夫々に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を前記供給通路及び排出通路よりも大きな圧力損失で通過させ、前記排出通路に連通する圧力損失通路が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域であって、1つの遊挿領域を2つの摺面領域が上下に挟み、さらに当該2つの摺面領域の上と下に夫々遊挿領域が挟むように設けられており、
前記供給通路、排出通路、圧力損失通路の夫々は、いずれか1つの別々の前記遊挿領域に接続し、かつ、前記供給通路が接続された遊挿領域は前記供給通路が接続された遊挿領域と上下に隣り合っており、
前記ピストンロッドが上下する過程で、一方の前記シール部材が上下いずれかの前記摺面領域の位置に位置付くとき、他方の前記シール部材はいずれかの前記遊挿領域の位置に位置付くように取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、ハウジング内を圧力流体により上下動するピストンを有するシリンダ装置において、
前記ピストンに固定されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの外周壁のシール溝に取り付けられたシール部材と、
前記ピストンロッドが上下動する前記ハウジング内の中空内壁と、
前記ピストンロッドに外挿される環状弁部材とを有し、
前記ハウジングには、前記中空内壁の内側に圧縮気体を供給する供給通路と、前記中空内壁の内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路が設けられ、
前記ピストンロッドの前記シール溝の下側に前記環状弁部材を引き連れて押し下げる突起が設けられ、
前記ハウジング内の中空内壁には、前記シール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域と、シール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域と、前記環状弁部材が上下動可能な大きな内径を持つとともに上側をリング面で囲って前記環状弁部材を収容し、かつ前記排出通路に連通する弁部材領域とが、摺面領域、遊挿領域、弁部材領域が連続して上下に設けられており、
前記ピストンロッドが上下する過程で、前記シール部材が上側の前記摺面領域の位置、前記シール部材が前記遊挿領域の位置、前記突起が前記環状弁部材を引き連れて押し下げる位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピストンロッドの外周とハウジングの内壁を利用して、出力部材の位置を3段階で検出することができるため、シリンダ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1のシリンダ装置を示し、図1Aはアンクランプ状態の断面、図1Bは ハウジングの断面、図1Cは出力部材6の断面、図1Dはクランプロッドの斜視図である。
図2】実施例1のシリンダ装置を示し、図2Aはクランプ状態の断面、図2Bは環状弁部材の拡大図である。
図3】実施例1のシリンダ装置の断面図(クランプ状態)である。
図4】本発明の実施例2を示し、図4Aはアンクランプ状態、図4Bはクランプ状態、図4Cはクランプ状態の断面図を夫々示している。
図5】本発明の実施例3を示し、図5Aはアンクランプ状態、図5Bはクランプ状態、図5Cはクランプ状態の断面図を夫々示している。
図6】本発明の実施例4を示し、図6Aはアンクランプ状態、図6Bはクランプ状態、図6Cはクランプ状態の断面図を夫々示している。
図7】本発明の実施例5を示し、図7Aはアンクランプ状態、図7Bはクランプ状態、図7Cはクランプ状態の断面図を夫々示している。
図8】本発明の実施例6を示し、図8Aはアンクランプ状態、図8Bはクランプ状態、図8Cはクランプ状態の断面図を夫々示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
シリンダ装置の全体構造を説明する。シリンダ装置は、ハウジングと、出力部材とを有している。出力部材は、ハウジング内の中空内壁内を上下動するピストンロッドと、ピストンロッドにより駆動されるクランプロッドと、掴み部材とを有している。ピストンロッドの上下する方向を軸線c方向と呼び、「上」若しくは「下」と言う場合には、重力の方向を示すものでは無く、軸線c方向で出力部材をハウジングに引き込む方向を「下」と呼び、ハウジングから繰り出す方向を「上」と呼ぶことにする。また、ピストン、ピストンロッド、クランプロッドを合わせて出力部材と呼ぶ。
【0012】
本発明のシリンダ装置は、出力部材の位置を3段階で検出するために、圧縮気体を利用する。圧縮気体は、出力部材を上下動させる圧力流体とは別の系統でシリンダ装置に与えられる。圧縮気体として、空気、窒素ガス等が利用できる。ハウジングには、圧縮気体を供給する通路と、大気に排出する通路が設けられる。2つの通路を夫々、供給通路と排出通路とする。供給通路と排出通路は、ハウジング内の中空とピストンロッドとの間を経由してつながっているが、供給通路と排出通路の間は、ピストンロッドの上下位置により閉鎖、中閉鎖、開放のいずれかの状態になる。ピストンロッドの上下位置の検出は、圧縮気体を供給する側の通路の圧力を測定することにより行われる。
【0013】
供給通路と排出通路の間が閉鎖状態の時、圧縮気体の漏れがないため、圧力測定をすると「高圧力」になる。供給通路と排出通路の間が中閉鎖状態の時、圧縮気体は中程度に漏れるため、圧力測定をすると「中圧力」になる。供給通路と排出通路の間が開放状態の時、圧縮気体は大気に開放されるため、圧力測定をすると「低圧力」になる。尚、「低圧力」は、圧力センサで検出された圧力が、第1閾値以下の場合に「低圧力」、その第1閾値よりも高圧な第2閾値以上の場合に「高圧力」、第1閾値と第2閾値の間の場合に「中圧力」と定義することができる。1つの圧力センサに第1閾値、第2閾値を設定してもよい。1つの通路中に2つの圧力センサを設けても良い。2つの圧力センサを設ける場合、一方の圧力センサに第1閾値を設定し、他方の圧力センサに第2閾値を設定するようにしてもよい。圧力センサが、圧力値を数値にて取得するものであれば、比較器に第1閾値、第2閾値を設定し、圧力センサの出力を「高圧力」「中圧力」「低圧力」に分類しても良い。
【0014】
閉鎖、中閉鎖、開放の状態の状態変化をさせるのは、ピストンロッドの外周壁構造とハウジングの中空内壁構造である。また、必要に応じて、環状弁部材が用いられる。環状弁部材は、ピストンとは別に、ハウジングの中空内壁とピストンロッドの外周壁の間を移動する部材である。また、ピストンロッドが上昇位置の時点、途中位置の時点、下降位置の時点において、どのような圧力を検出できるようにするかで、これらの組み合わせが選択される。
【0015】
すなわち、上昇位置の時点で、「高圧力」を検出できるようにするか、「中圧力」を検出できるようにするか、「低圧力」を検出できるようにするかである。途中位置の時点、下降位置の時点においても同様であり、順列組み合わせを考慮すると、6パターンが存在する。この6パターンについて実施例1-6で説明する。
【0016】
また、ピストンロッドの外周壁とハウジングの中空内壁は、上下方向にいくつかの区画、領域が組み合わさって形成されている。
【0017】
まず、ピストンロッドの外周壁はほぼ同一径であるが、ピストンロッドの外周壁の限られた範囲には、以下の区画がある。

1)1周に渡ってシール部材が装着されたSシール区画(以下、各実施例において引用符号を共通の「11」とする)。シール部材として、Oリング、パッキンが用いられる。
2)ピストンロッドが下降する際に、環状弁部材を引き連れて押し下げるプッシュ区画(同上 引用符号「12」)。

Sシール区画11の1つ又は2つ、又はSシール区画11の1つとプッシュ区画12とが組み合わされてピストンロッドの外周壁に実装される。
【0018】
A通路とB通路のいずれか一方の通路が圧縮気体を供給される供給通路であり、他方の通路が大気に開放されている排出通路であるとして説明すると、ハウジングの中空内壁の領域としては、以下のものがある。

1)ピストンロッドのシール部材が当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域(以下、各実施例において引用符号を共通の「13」とする)。ここで、摺面領域では、シール部材が当接していない範囲では、ピストンロッドの外周壁との間には隙間が空いている。
2)ピストンロッドのシール部材のシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域(同上 引用符号「14」)。
3)遊挿領域にA通路が接続されたA通路接続領域(同上 引用符号「15」)。
4)遊挿領域にB通路が接続されたB通路接続領域(同上 引用符号「16」)。
5)遊挿領域に圧力損失通路が接続された圧力損失通路接続領域(同上 引用符号「17」) 。遊挿領域は、圧力損失通路を介して、B通路若しくはA通路に連通している。ここで、圧力損失通路とは、A通路とB通路の何れよりも、圧力損失の大きな通路である。具体的には、孔径を小さくしたり、障害物を入れたりして絞ることができる。
6)大きな内径を有し、上側をリング面で囲って、環状弁部材を収容可能とした弁部材領域(同上 引用符号「18」)。ここで、弁部材領域内で環状弁部材は上下動可能である。また、弁部材領域は、B通路に連通している。

これらは選択的に組み合わされてハウジングの中空内壁に実装される。ただし、遊挿領域は、A通路接続領域、B通路接続領域、圧力損失通路接続領域の一部として実装される。
【0019】
また、必要に応じて適用される環状弁部材には、上面に溝を設けている。上面に溝を設けた環状弁部材の上面が、弁部材領域の上側のリング面と面接触したときには、リング面と溝により圧力損失通路を形成し、この圧力損失通路を介してB通路に連通する。

以下の実施例においては、A通路が供給通路であり、B通路が排出通路であるとして説明する。
[実施例1]
【0020】
図1図3に、実施例1のシリンダ装置1を示す。
シリンダ装置1は、出力部材上昇位置の時点で「高圧力」、途中位置の時点で「中圧力」、下降位置の時点で「低圧力」になるシリンダ装置である。
【0021】
図1Bにハウジング2のみを取り出して示している。ハウジング2は、固定台としてのテーブルTに固定される。ハウジング2は中空の筒状であり、中空内壁は上からカラー部2aと圧力検出部2bとシリンダ部2cとを備える。
【0022】
図1Cに出力部材6のみを取り出して示している。出力部材6は、ピストン7、ピストンロッド3、クランプロッド4と、ワークを掴む一対のスライダ駒5とを具備している。ピストンロッド3は筒状であり、下端側の外周面にピストン7が固定されている。ピストン7は、シリンダ部2cに内挿される箇所である。ピストンロッド3の中空内壁には、下側からクランプロッド4が挿入されて上端内縁に設けられた鍔部3aで止まるようになっている。ピストンロッド3の下側からスペーサ8が中空部に挿入され、ストップリング8aにより中空部から脱落しないように固定される。ピストンロッド3の外周には、Sシール区画11が設けられている。Sシール区画11には、リング溝11bにシール部材11aとしてOリングが装着される。シール部材11aは、ピストンロッド3の外周を1周に渡ってシールする。
【0023】
また、Sシール区画11の下に外周を一周する突起部12aが設けられる。この突起部12aは、環状弁部材10を引き連れて押し下げる突起であり、突起部12aが設けられた領域がプッシュ区画12である。これら2つの領域以外のピストンロッド3の領域は、概ねシール部材11aの外径より小さい同一径になっている。
【0024】
クランプロッド4の先端部分の斜視図を図1Dに示す。クランプロッド4の先端部分には、カム部4aが設けられている。カム部4aには、下側に向けて軸線cに近づくような傾斜面4bが軸線を挟んで2面設けられている。ピストン7、ピストンロッド3、スペーサ8の間には、これらの部材の隙間を埋めるように、多数のシール部材が配置されている。
【0025】
図1Aに戻り、ハウジング2のカラー部2aは、上下方向に移動可能なように軸線c方向に出力部材6を支持する。シリンダ部2cは、上下動可能にピストン7を収容する。
【0026】
出力部材6の上下には、ハウジング2との間に、夫々OリングS1、S2が配置され、圧縮気体が漏れないようにしている。圧力検出部2bは、ハウジング2のA通路Apに連通するA通路接続領域15と、Sシール区画11のシール部材11aによりシール可能な内径を有する摺面領域13と、Sシール区画11のシール部材11aではシールできない大きな内径を有する遊挿領域14と、遊挿領域より大きな内径を持ち、その中を環状弁部材10が摺動可能な弁部材領域18とを上から順に連続的に有している。弁部材領域18の上側の天井面がリング面2dである。
【0027】
環状弁部材10は、プッシュ区画12の下側のピストンロッド3の外周を上下に摺動可能になっており、環状弁部材10の上面10aには溝10bが設けられている(図2B参照)。溝10bは、環状弁部材10の上面10aの一部に軸線cの半径方向に設けられている。環状弁部材10の上面10aとリング面2dが互いに面接触したとき、溝10bとリング面2dにより圧力損失の大きい圧力損失通路が形成される。弁部材領域18は、環状弁部材10の上面10aとリング面2dが面接触しているときは、溝10bによる圧力損失通路のみによりB通路Bpに連通する。環状弁部材10が下降すると、環状弁部材10の上面10aとリング面2dの間が開き、圧力損失通路を維持できなくなる。
【0028】
ハウジング2の上端側には、マウント部9が設けられている。マウント部は、ワークを積載する着座面9a、スライダ駒5を軸線cの半径方向に案内する案内部9bとを有している。スライダ駒5の外周とマウント部9の間には、塵芥の侵入を防止するパッキン9cが配置されている。マウント部9の上側には、必要に応じてキャップ9dが被せられる。
【0029】
次に、出力部材6を上下動させる圧力流体の経路について説明する。クランプ側の圧力流体は、テーブルTの経路Th1、ハウジング2の経路Hhを経て、ピストン7の上側に供給される。ピストン7の上側の空間は、シリンダ装置1がワークをクランプするときに圧力流体が流入するクランプ室CLであり、ピストン7の上面、シリンダ部2c、環状弁部材10の下面で囲まれている。
【0030】
シリンダ装置1がワークをアンクランプするときの圧力流体は、テーブルTの経路Th2を経て、ピストン7の下側に供給される。アンクランプ室UCは、ピストン7の下側、シリンダ部2c、ピストンロッド3の下面、スペーサ8の下面で囲まれている。
【0031】
シリンダ装置のクランプ動作について説明する。
図1Aに図示されたシリンダ装置1は、アンクランプ状態である。クランプ室CLから圧力流体が排出されており、アンクランプ室UCへ経路Th2を介して圧力流体が供給されている。出力部材6は上昇位置である。
【0032】
図2Aに図示されたシリンダ装置1は、クランプ状態である。ワークWには把持孔WHが穿孔されている。把持孔WHにスライダ駒5を挿入する。クランプ状態へ切換えるときには、経路Th1、Hhを介して圧力流体をクランプ室CLに供給し、アンクランプ室UCから経路Th2を介して圧力流体を排出する。出力部材6が下降すると、クランプロッド4の先端に設けられたカム面5aが、スライダ駒5を軸線c半径方向に押し出して、把持孔WHの内側から把持する。クランプ状態からアンクランプ状態へ切り換えるときには、アンクランプ室UCへ圧力流体を供給し、クランプ室CLの圧力流体を排出する。
【0033】
図3に図示されたシリンダ装置1は、クランプ状態であるが、何らかの理由により、出力部材6が下降し過ぎているオーバーストローク状態である。例えば、把持孔WHの大きさが大きすぎた場合、スライダ駒5が摩耗して、小径になってしまった場合などである。このような場合には、シリンダ装置1はクランプ状態であるが、実際にはワークWは正確に掴めていない。
【0034】
次に、出力部材6の位置を検出する圧縮気体の経路について説明する。テーブルTからの圧縮気体の通路Tpは、ハウジング2の経路Hpに連通し、マウント部9への通路Mp、A通路Apの2つに分岐する。マウント部9への通路は、大気に開放されている。A通路Apは、圧力検出部2bのA通路接続領域15に接続されている。
【0035】
圧縮気体を用いた出力部材6の位置の検出について説明する。尚、図面上において、圧縮気体が流れる経路には、薄墨を施してある。
図1において、圧縮気体は、マウント部9の経路Mpを経て大気に開放されている。このため、圧縮気体を供給する位置(図示せず)で圧縮気体の圧力を測定すると、低圧力の状態になっている。図1のシリンダ装置1にワークWを搭載すると、マウント部9の経路MpがワークWにより塞がれる。一方で、Sシール区画11は摺面領域13の位置にあってシール機能が働いている。よって、A通路Apの先には圧縮気体の出口が無い状態である。このため、A通路Apの圧縮気体の圧力は維持される。圧縮気体を供給する位置での圧力を測定すれば、高圧力が検出され、ワークWの搭載/非搭載を判断することができる。この状態が、アンクランプ状態である。なお、ワークWが搭載されていても斜めに搭載されている場合には、ワークWは着座面9aに密着しておらず、圧縮気体が漏れることになる。この場合も、適切に搭載されていないと判断することができる。
【0036】
図2において、圧力流体により出力部材6を下降移動させると、Sシール区画11は、摺面領域13を外れてシール部材が機能しなくなり、圧縮気体は遊挿領域14、弁部材領域18へ供給される。供給された圧縮気体は、溝10bとリング面2dによる圧力損失通路を経て、B通路Bpから大気に開放される。このため、圧縮気体の圧力を外部の圧縮気体供給口から測定すると、図1のワークWを搭載していない状態ほど、圧力は低くなってはいないものの、圧力損失通路により圧力が低下している状態を検出することが出来る。圧縮気体を供給する位置で圧力を測定すれば、中圧力が検出され、シリンダ装置1がワークWをクランプしているクランプ状態であることを判断することが出来る。
【0037】
図3において、出力部材6がさらに下降すると、Sシール区画11の下側のプッシュ区画12の突起部12aが、環状弁部材10に突き当たり、環状弁部材10を下降させる。その結果、環状弁部材10の上面10aとリング面2dとの間隔が開く。この状態においては、B通路Bpへの圧縮気体の通り道は、圧力損失通路だけではなくなり、大気に開放された状態になる。圧縮気体を供給する位置で圧力を測定すれば、低圧力が検出され、シリンダ装置1の出力部材6が下がり過ぎたオーバーストローク状態であると判断することが出来る。
【0038】
本実施例では、環状弁部材10に溝10bを設け、環状弁部材10が移動することにより、溝10bがリング面2dと協働して圧力損失通路を形成する場合と、環状弁部材10の上面10aとリング面2dが離れる場合の場合分けすることにより、中圧力を検出する場合と、低圧力を検出する場合の2つを作り出した。これに、圧縮気体を漏らさない状態を加えて、3つの状態を検出することができる。
【0039】
本実施例では、テーブルTの圧縮気体を2つに分岐して1つをマウント部9に供給し、1つを圧力検出部2bに供給していたが、テーブルTに2系統の圧縮気体を用意して、1つをマウント部9へ他の1つを圧力検出部2bに別々に送っても良い。
【0040】
本実施例によれば、ピストンロッド3の外周とハウジング2の内壁を利用して、出力部材6の位置を3段階で検出することができるため、シリンダ装置1の小型化を図ることができる。
[実施例2]
【0041】
図4に実施例2のシリンダ装置20を示す。
シリンダ装置20は、出力部材6の上昇位置の時点で「高圧力」、途中位置の時点で「低圧力」、下降位置の時点で「中圧力」になるシリンダ装置である。
【0042】
実施例1との相違点は、出力部材6のピストンロッドとハウジングの圧力検出部の構造である。実施例1の圧力検出部2bは、上からA通路接続領域15、摺面領域13、遊挿領域14、弁部材領域18の順であったが、実施例2の圧力検出部2bは、上からA通路接続領域15、上側の摺面領域13、圧力損失通路接続領域17、下側の摺面領域13、B通路接続領域16となっており、弁部材領域18を有していない。圧力損失通路接続領域17は、B通路Bpに連通する圧力損失通路Npが設けられている。
【0043】
また、実施例2では弁部材領域と環状弁部材10を有さない代わりに、環状弁部材10に相当する部分がハウジング2の一部で、ハウジング2とピストンロッド3がOリングS3により直接シールされている。よって、圧力検出部2bの上下は、OリングS1とS3により、圧縮気体が大気やクランプ室CLに漏れないようにしている。実施例2のピストンロッド3の外周には、プッシュ区画12は設けられておらず、1つのSシール区画11が設けられている。
【0044】
また、実施例1では、テーブルTの1系統の圧縮気体を2つに分岐して1つをマウント部9に1つを圧力検出部2bに供給していたが、テーブルTに2系統の圧縮気体を用意して、1つをマウント部9へ他の1つをA通路Apに別々に送っている。但し、図4では、圧縮気体をA通路Apへ送るテーブルT側の通路は図示していない。以上が実施例1のシリンダ装置1との相違で有り、他の構成は同じであるので説明は省略する。
【0045】
次にシリンダ装置20の動作について説明する。図4Aのアンクランプ状態においては、ピストンロッド3のSシール区画11のシール部材11aは、上側の摺面領域13に位置している。圧縮気体は、この摺面領域13においてシールされて、下に続く圧力損失通路接続領域17へ漏れることができない。よって、A通路Apへの圧縮気体の供給位置での圧力を測定すれば、高圧力を検出することができる。
【0046】
図4Bのクランプ状態においては、出力部材6は下降して上側の摺面領域13から外れる。Sシール区画11のシールが機能せずに上側の摺面領域13と圧力損失通路接続領域17、下側の摺面領域13及びB通路接続領域16は連通する。圧力損失通路接続領域17では、圧力損失通路Npを経由してB通路Bpに連通する。また、圧縮気体は下側の摺面領域13を経由して通路接続領域16に連通する。よって、圧縮気体の供給位置での圧力を測定すれば、低圧力を検出することができる。
【0047】
図4Cのクランプ状態においては、出力部材6はさらに下降し、Sシール区画11は下側の摺面領域13に到達して、シール機能を発揮する。その結果、圧縮気体は下側の摺面領域13を通ることができず、圧力損失通路接続領域17を経由するのみである。このため、圧縮気体の供給位置での圧力を測定すれば、圧力損失通路Npによる中圧力を検出することができる。
【0048】
[実施例3]
図5に、実施例3のシリンダ装置30を示す。シリンダ装置は、出力部材6の上昇位置の時点で「中圧力」、途中位置の時点で「高圧力」、下降位置の時点で「低圧力」になるシリンダ装置である。
【0049】
実施例1との相違点は、出力部材6のピストンロッド3とハウジング2の圧力検出部2bの構造である。実施例3の圧力検出部2bは、上からB通路接続領域16、摺面領域13、A通路接続領域15、摺面領域13、圧力損失通路接続領域17となっており、実施例1と違って、弁部材領域18を有しておらず、また、環状弁部材10も有さない。その代わりに、環状弁部材10に相当する部分がハウジング2の一部になっている。
【0050】
また、実施例3のピストンロッド3の外周には、実施例1のプッシュ区画12は設けられておらず、上下に2つのSシール区画11を有している。2つのSシール区画11の夫々が、同時に上下の摺面領域13との間でシール機能を発揮することができるように、間隔が決められている。すなわち、シール機能を発揮した2つのSシール区画11でA通路接続領域15を挟むことにより、A通路Apの圧縮気体を遮断する配置になっている。以上が実施例1のシリンダ装置1との相違で有り、他の構成は同じであるので説明は省略する。
【0051】
次にシリンダ装置20の動作について説明する。
図5Aのアンクランプ状態においては、上側のSシール区画11はB通路接続領域16に、下側のSシール区画11は上側の摺面領域13に存在している。よって、A通路接続領域15、下側の摺面領域13、圧力損失通路接続領域17が連通している状態である。このため、圧縮気体の供給位置で圧力を測定すれば、圧力損失通路Npによる中圧力を検出することができる。
【0052】
図5Bのクランプ状態においては、出力部材6は下降し、A通路接続領域15を2つのSシール区画11で挟み、夫々が上側、下側の摺面領域13に存在している。よって、圧縮気体の供給口での圧力を測定すれば、高圧力を検出することができる。
【0053】
図5Cのクランプ状態においては、出力部材6はさらに下降し、上側のSシール区画11は、下側の摺面領域13に存在している。よって、A通路接続領域15、上側の摺面領域13、B通路接続領域16が連通している状態である。このため、圧縮気体の供給口で圧力を測定すれば、低圧力を検出することができる。
【0054】
[実施例4]
図6に、実施例4のシリンダ装置40を示す。シリンダ装置40は、出力部材6の上昇位置の時点で「中圧力」、途中位置の時点で「低圧力」、下降位置の時点で「高圧力」になるシリンダ装置である。
【0055】
実施例1との相違点は、出力部材6のピストンロッド3とハウジング2の圧力検出部2bの構造である。実施例4の圧力検出部2bは、上からA通路接続領域15、摺面領域13、圧力損失通路接続領域17、摺面領域13、B通路接続領域16となっており、実施例1と違って、弁部材領域18を有しておらず、また、環状弁部材10も有さない。その代わりに、実施例4では環状弁部材10に相当する部分がハウジング2の一部になっている。
【0056】
また、実施例4のピストンロッド3の外周には、実施例1のプッシュ区画12は設けられておらず、上下に2つのSシール区画11を有している。2つのSシール区画11の夫々が、同時に上下の摺面領域13との間でシール機能を発揮することが無いように、間隔が決められている。以上が実施例1のシリンダ装置1との相違で有り、他の構成は同じであるので説明は省略する。
【0057】
図6Aのアンクランプ状態のときにおいては、下側のSシール区画11のシール部材11aは、上側の摺面領域13に存在している。よって、B通路接続領域16のみが他の領域と分離され、A通路接続領域15、下側の摺面領域13、圧力損失通路接続領域17が連通している状態である。圧縮気体の供給口で圧力を測定すれば、圧力損失通路Npによる中圧力を検出することができる。
【0058】
図6Bのクランプ状態のときにおいては、出力部材6は下降し、上側のSシール区画11のシール部材11aはA通路接続領域15に、下側のSシール区画11のシール部材11aはB通路接続領域16に夫々存在している。よって、A通路接続領域15、圧力損失通路接続領域17、B通路接続領域16は、連通されている状態である。このため、圧縮気体の供給口で圧力を測定すれば、低圧力を検出することができる。
【0059】
図6Cのクランプ状態においては、出力部材6はさらに下降し、上のSシール区画11のシール部材11aは、上側の摺面領域13に存在している。A通路接続領域15のみが他の領域と分離されている状態である。このため、圧縮気体供給口での圧力を測定すれば、高圧力を検出することができる。
【0060】
[実施例5]
図7に、実施例5のシリンダ装置50を示す。シリンダ装置は、出力部材6の上昇位置の時点で「低圧力」、途中位置の時点で「高圧力」、下降位置の時点で「中圧力」になるシリンダ装置である。
【0061】
実施例1との相違点は、出力部材6のピストンロッド3とハウジング2の圧力検出部2bの構造である。実施例5の圧力検出部2bは、上から圧力損失通路接続領域17、摺面領域13、A通路接続領域15、摺面領域13、B通路接続領域16となっており、実施例1と違って、弁部材領域18を有しておらず、また環状弁部材10も有さない。その代わりに、実施例5では環状弁部材10に相当する部分がハウジング2の一部になっている。
【0062】
一方、実施例5のピストンロッド3の外周には、実施例1のプッシュ区画12は設けられておらず、上下に2つのSシール区画11を有している。上下2つのSシール区画11の夫々が、同時に上下の摺面領域13との間でそれぞれシール機能を発揮することができるように、間隔が決められている。すなわち、A通路接続領域15を2つのSシール区画11で挟むことにより、A通路Apの圧縮気体を遮断する配置になっている。以上が実施例1のシリンダ装置1との相違で有り、他の構成は同じであるので説明は省略する。
【0063】
次にシリンダ装置50の動作について説明する。
図7Aのアンクランプ状態においては、下側のSシール区画11は、上側の摺面領域13に存在している。よって、圧力損失通路接続領域17が他の領域から分離され、一方A通路接続領域15、下側の摺面領域13、B通路接続領域16が連通している状態である。このため、圧縮気体の供給口で圧力を測定すれば、低圧力を検出することができる。
【0064】
図7Bのクランプ状態においては、出力部材6は下降し、A通路接続領域15を2つのSシール区画11で挟む状態である。圧縮気体は、A通路接続領域15から漏れることができない。よって、圧縮気体の供給口での圧力を測定すれば、高い圧力を検出することができる。
【0065】
図7Cのクランプ状態においては、出力部材6はさらに下降し、上側のSシール区画11は、下側の摺面領域13に存在している。よって、A通路接続領域15、摺面領域13、圧力損失通路接続領域17が連通している状態である。このため、圧縮気体の供給口での圧力を測定すれば、圧力損失通路Npによる中圧力を検出することができる。
【0066】
[実施例6]
図8に、実施例6のシリンダ装置60を示す。シリンダ装置60は、出力部材6の上昇位置の時点で「低圧力」、途中位置の時点で「中圧力」、下降位置の時点で「高圧力」になるシリンダ装置である。
【0067】
実施例1との相違点は、出力部材6のピストンロッド3とハウジング2の圧力検出部2bの構造である。実施例6の圧力検出部2bは、上からA通路接続領域15、摺面領域13、圧力損失通路接続領域17、摺面領域13、B通路接続領域16となっている。実施例1と違って、弁部材領域18を有しておらず、また、環状弁部材10も有さない。その代わりに、実施例6では環状弁部材10に相当する部分がハウジング2の一部になっている。
【0068】
実施例6のピストンロッド3の外周には、実施例1のプッシュ区画12は設けられておらず、上下に2つのSシール区画11を有している。2つのSシール区画11の夫々が、同時に上下の摺面領域13との間でシール機能を発揮することが無いように、間隔が決められている。以上が実施例1のシリンダ装置1との相違で有り、他の構成は同じであるので説明は省略する。
【0069】
図8Aのアンクランプ状態のときにおいては、上側のSシール区画11のシール部材11aはA通路接続領域15に、下側のSシール区画11のシール部材11aは圧力損失通路接続領域17に存在している。よって、A通路接続領域15、摺面領域13、B通路接続領域16が連通している状態である。よって、圧縮気体の供給口で圧力を測定すれば、低圧力を検出することができる
【0070】
図8Bのクランプ状態のときにおいては、出力部材6は下降し、下側のSシール区画11のシール部材11aは下側の摺面領域13に存在する。上側のSシール区画11のシール部材11aはA通路接続領域15に存在している。このため、B通路接続領域16のみが他の領域から分離され、圧縮気体の供給口で圧力を測定すれば、圧力損失通路Npによる中圧力を検出することができる。
【0071】
図8Cのクランプ状態においては、出力部材6はさらに下降し、上側のSシール区画11のシール部材11aは上側の摺面領域13に存在している。このため、A通路接続領域15は、他の領域から分離されるため、圧縮気体の供給口での圧力を測定すれば、高圧力を検出することができる。
【0072】
実施例1とは違い、実施例6では、弁部材領域18を有しておらず、また環状弁部材10も有していない。実施例1の上昇位置の時点で「高圧力」、途中位置の時点で「中圧力」、下降位置の時点で「低圧力」の状態を、弁部材領域18と環状弁部材10を利用せずに実現することも可能である。
【0073】
[実施例7]
実施例7は、弁部材領域18と環状弁部材10を利用せずに実現する。この場合、圧力検出部2bは、上からA通路接続領域15、摺面領域13、圧力損失通路接続領域17、摺面領域13、B通路接続領域16とする。また、ピストンロッド3の外周には、1つのSシール区画11を設ける。
【0074】
アンクランプ状態においては、Sシール区画11が上側の摺面領域13に存在するようにして、A通路接続領域15のみを他の領域から分離することにより、高圧力を検出することができる。
【0075】
次に、出力部材が下降したとき、Sシール区画11が下側の摺面領域13に存在するようにして、A通路接続領域15、上側の摺面領域13、圧力損失通路接続領域17を連通させる。これにより、圧力損失通路Npによる中圧力を検出することができる。
【0076】
そして、出力部材6がさらに下降したとき、Sシール区画11がB通路接続領域16に存在するようにさせる。A通路接続領域15、上側の摺面領域13、圧力損失通路接続領域17、下側の摺面領域13、B通路接続領域16が連通している状態である。このため、圧縮気体の供給口での圧力を測定すれば、低圧力を検出することができる。
【0077】
このようにすれば、弁部材領域18や環状弁部材10を利用しないので、シリンダ装置のコストを低減することができる。
【0078】
実施例2-7によれば、ハウジング2には、位置検出部2b(ハウジング2の中空内壁)の内側に圧縮気体を供給する供給通路(A通路Ap)と、位置検出部2bの内側に供給された圧縮気体を大気に排出する排出通路(B通路Bp)と、位置検出部2bの内側に供給された圧縮気体を供給通路(A通路Ap)と排出通路(B通路Bp)よりも大きな圧力損失で通過させ、排出通路(B通路Bp)に連通する圧力損失通路Npが設けられる。そして、位置検出部2bには、シール部材11aが当接してシール機能が有効に働くような内径を有する摺面領域13と、シール部材11aのシール機能が一切働かないような大きな内径を有する遊挿領域14が設けられる。
【0079】
これらの実施例においては、遊挿領域14は、A通路接続領域15、B通路接続領域16、圧力損失通路接続領域17の一部になっているため、1つの遊挿領域14を2つの摺面領域13が上下に挟み、さらにこの2つの摺面領域13の上と下に夫々遊挿領域14が挟むようになっている。
【0080】
実施例2と7が、ピストンロッド3に1つのシール部材11aを設けた例(以下、タイプ1)である。実施例3と5が、ピストンロッド3に2つのシール部材11aを設けた第1の例(以下、タイプ2)である。実施例4と6が、ピストンロッド3に2つのシール部材11aを設けた第2の例(以下、タイプ3)である。
【0081】
タイプ2の例においては、上下のシール部材11aが夫々上下の摺面領域13の位置に同時に位置付くようにされている。
【0082】
タイプ3の例においては、ピストンロッド3が上下する過程で、一方のシール部材11aが上下いずれかの摺面領域13の位置に位置付くとき、他方のシール部材11aはいずれかの遊挿領域14(A通路接続領域15、B通路接続領域16、圧力損失通路接続領域17)の位置に位置付くように取り付けられている。
【0083】
タイプ1-3の何れにおいても、A通路接続領域15と圧力損失通路接続領域17は、隣同士になっている。そして、1つ(タイプ1)又は2つ(タイプ2、3)のシール部材11aが、上下いずれかの摺面領域13若しくは上下の摺面領域13と協働してシール機能を発揮し、A通路接続領域15を他の通路から孤立させたとき、検出される圧縮気体の圧力は「高圧力」になる。また、1つのシール部材11aが上下いずれかの摺面領域13と協働してシール機能を発揮し、A通路接続領域15と圧力損失通路接続領域17が連通状態でB通路接続領域16を孤立させたとき、検出される圧縮気体の圧力は「中圧力」になる。そして、1つのシール部材11aが上下いずれかの摺面領域13と協働してシール機能を発揮し、A通路接続領域15とB通路接続領域16が連通状態で圧力損失通路接続領域17を孤立させたとき、または、上下シール部材11aが上下いずれかの摺面領域13と協働することなくシール機能が発揮されないときに、検出される圧縮気体の圧力は「低圧力」になる。
【0084】
A通路接続領域15が圧縮気体を供給する供給通路であるときA通路接続領域15と圧力損失通路接続領域17が隣同士にすること以外は、A通路接続領域15とB通路接続領域16と圧力損失通路接続領域17の上下の並びは如何様でも良い。B通路接続領域16が圧縮気体を供給する供給通路であるときB通路接続領域16と圧力損失通路接続領域17が隣同士にすること以外は、A通路接続領域15とB通路接続領域16と圧力損失通路接続領域17の上下の並びは如何様でも良い。また、シール部材11aが摺面領域13に存在する位置を上下の端の位置にするのか、シール部材11aが遊挿領域14(A通路接続領域15とB通路接続領域16と圧力損失通路接続領域17いずれかの)に存在する位置を上下の端の位置にするには、「高圧力」「中圧力」「低圧力」の3条件が検出することができるように選択すれば良い。例えば、実施例4と6は、A通路接続領域15とB通路接続領域16と圧力損失通路接続領域17の上下の並びは同じであるが、実施例4では下側のシール部材11aが下側の摺面領域13を上限の位置としていることに対して、実施例6では下側のシール部材11aが遊挿領域14(圧力損失通路接続領域17)を上限の位置としている。その結果、ピストンロッド3の位置における「高圧力」「中圧力」「低圧力」の3条件の発生順序が、異なるものとなっている。
【0085】
上記実施例においては、圧力損失通路接続領域17は、圧力損失通路Npを介して、B通路Bpに連通したもののみを示したが、A通路Apに連通させてもよい。また、A通路Apを供給通路、B通路Bpを排出通路として説明したが、A通路Apを排出通路、B通路Bpを供給通路としても良い。また、出力部材6を上下動させる圧力流体として、油圧、水等の液体や、空気、窒素等の気体を利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1、20、30、40、50、60 シリンダ装置
2 ハウジング
2a カラー部
2b 圧力検出部
2c シリンダ部
2d リング面
3 ピストンロッド
3a 鍔部
4 クランプロッド
4a カム部
4b 傾斜面
5 スライダ駒
5a カム面
6 出力部材
7 ピストン
8 スペーサ
8a ストップリング
9 マウント部
9a 着座面
9b 案内部
9c パッキン
9d キャップ
10 環状弁部材
10a 上面
10b 溝
11 Sシール区画
11a シール部材
11b リング溝
12 プッシュ区画
12a 突起部
13 摺面領域
14 遊挿領域
15 A通路接続領域
16 B通路接続領域
17 圧力損失通路接続領域
18 弁部材領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8