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特開2024-51419金属射出成形機のスクリュ保守用治具、およびスクリュ保守方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051419
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】金属射出成形機のスクリュ保守用治具、およびスクリュ保守方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B22D17/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157577
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】部谷 道雄
(57)【要約】
【課題】スクリュの取り出しと冷却時に大気との接触を防止し、冷却後のスクリュの露出が容易な、金属射出成形機のスクリュ保守用治具提供する。
【解決手段】スクリュ保守用治具(30)を、スクリュ(16)が挿入・収納されるスクリュ収納部(43)と複数個の吊り下げ部(40)とから構成する。スクリュ収納部(43)は複数個のパイプ分割部材(34、38)から構成する。複数個のパイプ分割部材(34、38)同士を結合するとパイプ状に形成され、パイプ分割部材(34、38)同士を離間させるとパイプの内部が開放されるように構成する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にスクリュが挿入・収納されるパイプ状のスクリュ収納部と、
前記スクリュ収納部に対して設けられている複数個の吊り下げ部と、を備え、
前記スクリュ収納部は、パイプの軸と並行な切断面によって分割された複数個のパイプ分割部材から構成され、複数個の前記パイプ分割部材同士が近接してあるいは結合されてパイプ状に形成されたり、少なくとも一部の前記パイプ分割部材同士が離間してあるいは分離してパイプの内部が開放されたりするようになっている、金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項2】
前記パイプ分割部材には複数の連結ブラケットが設けられ、前記連結ブラケット同士が結合されると複数個の前記パイプ分割部材から密閉したパイプ状に形成されるようになっており、少なくとも一部の前記パイプ分割部材に設けられている前記連結ブラケットに前記吊り下げ部が固着されている、請求項1に記載の金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項3】
複数個の前記パイプ分割部材は、互いにヒンジ構造によって連結されている、請求項1に記載の金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項4】
1個の前記パイプ分割部材と、他の1個の前記パイプ分割部材に、それぞれ前記吊り下げ部が設けられ、前記1個のパイプ分割部材と、前記他の1個のパイプ分割部材のそれぞれの前記吊り下げ部を吊り下げると、複数個の前記パイプ分割部材から密閉したパイプ状に形成される、請求項3に記載の金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項5】
前記スクリュ保守用治具はロック手段を備え、前記1個のパイプ分割部材に設けられている前記吊り下げ部と、前記他の1個のパイプ分割部材に設けられている前記吊り下げ部とを互いにロックすると、複数個の前記パイプ分割部材から形成された密閉したパイプ状が維持されるようになっている、請求項4に記載の金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項6】
前記スクリュ収納部は、パイプを半割状にした一対の前記パイプ分割部材からなり、前記一対のパイプ分割部材同士はヒンジ構造によって接続されていると共にそれぞれ前記吊り下げ部が固着されており、一方の前記パイプ分割部材の吊り下げ部と他方の前記パイプ分割部材の吊り下げ部との間隔を広げると前記一対のパイプ分割部材同士が開いてパイプの内部が開放され、間隔を狭めると前記一対のパイプ分割部材同士が閉じられて密閉したパイプ状に形成される、請求項1に記載の金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項7】
前記スクリュ保守用治具は複数個から構成され、複数個の前記スクリュ保守用治具が、それぞれの前記スクリュ収納部を軸方向に連続するように並べると、それぞれの前記スクリュ収納部によって前記スクリュの全体が収納されるようになっている、請求項1または2に記載の金属射出成形機のスクリュ保守用治具。
【請求項8】
スクリュ保守用治具を使用して金属射出成形機のスクリュを保守するスクリュ保守方法であって、
前記スクリュ保守用治具は、内部に前記スクリュが挿入・収納されるパイプ状のスクリュ収納部と、
前記スクリュ収納部に対して設けられている複数個の吊り下げ部と、を備え、
前記スクリュ収納部は、パイプの軸と並行な切断面によって分割された複数個のパイプ分割部材から構成され、複数個の前記パイプ分割部材同士が近接してあるいは結合されてパイプ状に形成されたり、少なくとも一部の前記パイプ分割部材同士が離間してあるいは分離してパイプの内部が開放されたりするようになっており、
前記スクリュ保守方法は、前記スクリュ収納部を複数個の前記パイプ分割部材から密閉したパイプ状に形成するようにし、クレーンのフックを前記吊り下げ部に掛けて前記スクリュ保守用治具を吊り下げると共にパイプ状にされた前記スクリュ収納部を加熱シリンダの下流側に配置する準備工程と、
前記加熱シリンダの上流側から押出用の棒材を挿入して前記スクリュを下流側に押し出し、前記スクリュを前記スクリュ収納部に挿入・収納するスクリュ取り外し工程と、
前記スクリュ収納部に前記スクリュが収納された前記スクリュ保守用治具を保守作業エリアに搬送する搬送工程と、
前記スクリュ収納部に前記スクリュが収納された状態で前記スクリュの冷却を待つ冷却工程と、
複数個の前記パイプ分割部材について、少なくとも一部の前記パイプ分割部材同士を離間してパイプの内部を開放させ、前記スクリュを取り出す、スクリュ取り出し工程と、を備えた、金属射出成形機のスクリュ保守方法。
【請求項9】
前記スクリュ保守方法は、前記準備工程に先立って実施する射出装置旋回工程を備え、
前記射出装置旋回工程は、前記金属射出成形機においてベッド上に旋回可能に設けられている射出装置を、旋回させて前記加熱シリンダの下流側の端部を、前記金属射出成形機の型締装置から離間させる工程である、請求項8に記載の金属射出成形機のスクリュ保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を射出材料として溶融し射出する金属射出成形機のスクリュを保守するスクリュ保守用治具、およびスクリュ保守方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム合金等の金属を射出材料として扱ういわゆる金属射出成形機は、例えば特許文献1に記載されているように、ベッドに設けられている型締装置と、同様にベッドに設けられている射出装置と、を備えている。射出装置は加熱シリンダと、この加熱シリンダ内において回転方向と軸方向とに駆動可能に入れられているスクリュと、を備えている。金属の射出材料をホッパから供給し、加熱シリンダをヒータにより加熱しながらスクリュを回転すると、金属は溶融されてスクリュにより下流に送られ、加熱シリンダの下流部に計量される。型締装置によって型締めした金型に溶融した金属を射出すると、金属からなる成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-033967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属射出成形機は、射出材料の金属を溶融するために加熱シリンダを比較的高温に、例えば500℃等にする必要がある。このような高温の加熱シリンダ内でスクリュを駆動すると、加熱シリンダやスクリュに対する影響が比較的大きく、定期的にスクリュ清掃等のメンテナンスをする必要がある。スクリュをメンテナンスするには、加熱シリンダからスクリュを取り出す必要がある。ところで金属材料として多用されているマグネシウム合金は、高温状態のとき大気に触れると激しく燃焼するという問題がある。加熱シリンダから取り出したスクリュにはマグネシウム合金が付着しているので、スクリュをできるだけ大気に触れないように取り出し、冷却する必要がある。そして冷却後はスクリュを露出させる必要がある。しかしながら、このようなメンテナンスを実施するための適切な治具が存在しない、という問題がある。
【0005】
本開示において、スクリュの取り出しと冷却時に大気との接触を可及的に防止し、冷却後のスクリュの露出が容易に実施できる、金属射出成形機のスクリュ保守用治具を提供する。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、スクリュ保守用治具を、内部にスクリュが挿入・収納されるパイプ状のスクリュ収納部と、複数個の吊り下げ部と、から構成する。スクリュ収納部はパイプの軸と並行な切断面によって分割された複数個のパイプ分割部材から構成する。複数個のパイプ分割部材同士を近接してあるいは結合するとパイプ状に形成され、少なくとも一部のパイプ分割部材同士を離間させ、あるいは分離するとパイプの内部が開放されるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、スクリュの取り出しと冷却時に大気との接触を防止でき、冷却後のスクリュの露出が容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る金属射出成形機の正面図である。
図2A】第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の斜視図である。
図2B】第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の斜視図である。
図3】第1の実施形態に係るスクリュ保守方法を説明するフローチャートである。
図4A】本実施の形態に係る金属射出成形機の一部を示す上面図である。
図4B】第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
図4C】本実施の形態に係る金属射出成形機の一部と、第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の上面図である。
図4D】本実施の形態に係る金属射出成形機の一部と、第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の上面図である。
図4E】スクリュが入れられた状態の第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
図4F】スクリュが入れられた状態の第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
図4G】スクリュと、第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
図5A】スクリュが入れられた状態の比較例に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
図5B】スクリュと、比較例に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
図6A】第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具の斜視図である。
図6B】第3の実施形態に係るスクリュ保守用治具の斜視図である。
図7A】スクリュと、第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具の側面断面図である。
図7B】スクリュと、第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具の側面断面図である。
図8】第1の実施形態の変形例に係るスクリュ保守用治具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0011】
<金属射出成形機>
後で説明するスクリュ保守方法の対象である、本実施の形態に係る金属射出成形機1を説明する。本実施の形態に係る金属射出成形機1は、図1に示されているように、ベッドBの上に設けられている型締装置2と、ベッドB上でスライド自在に設けられている射出装置3と、を備えている。
【0012】
<型締装置>
型締装置2は、ベッドBに固定されている固定盤5と、ベッドB上をスライド自在に設けられている可動盤6と、同様にベッドB上をスライド自在に設けられている型締ハウジング7とを備えている。固定盤5と型締ハウジング7は、タイバー9、9、…によって連結されており、可動盤6はタイバー9、9、…に貫通されている。可動盤6と型締ハウジング7の間には型締機構、本実施の形態においてはトグル機構10が設けられている。固定盤5には固定側金型12が、そして可動盤6には可動側金型13がそれぞれ設けられている。型締装置2においてトグル機構10を駆動すると、固定側金型12と可動側金型13とが型開閉されるようになっている。
【0013】
<射出装置>
射出装置3は、金属材料を溶融し射出するようになっており、次のように構成されている。すなわち射出装置3は、加熱シリンダ15と、この加熱シリンダ15内に回転方向と軸方向とに駆動可能に入れられているスクリュ16と、スクリュ16を駆動するスクリュ駆動装置17と、を備えている。ベッドBにはスライド自在に台座18が設けられ、この台座18の上にスクリュ駆動装置17が設けられている。したがって、射出装置3は全体として型締装置2に対して接近したり離間したりするようになっている。ところでスクリュ駆動装置17は台座18に対して旋回軸19を介して接続されている。したがって、射出装置3は旋回軸19を中心に水平に旋回させることができるようになっている。加熱シリンダ15にはホッパ21と、射出ノズル22とが設けられている。
【0014】
[第1の実施形態]
<スクリュ保守用治具>
第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30が、図2Aに示されている。第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30は、下側部材31と、上側部材32とから構成されている。下側部材31は、金属製円筒パイプをパイプの軸と平行な切断面で半割したパイプ分割部材である下側パイプ分割部材34と、この下側パイプ分割部材34に固着されている下側連結ブラケット35、35とから構成されている。下側連結ブラケット35、35にはそれぞれボルト穴36、36、…が形成されている。
【0015】
上側部材32も金属製円筒パイプをパイプの軸と平行な切断面で半割したパイプ分割部材である上側パイプ分割部材38を備えている。上側部材32は、この上側パイプ分割部材38と、上側パイプ分割部材38に固着されている上側連結ブラケット39、39と、上側連結ブラケット39、39に設けられているアイボルトつまり吊り下げ部40、40と、から構成されている。上側連結ブラケット39、39にはボルト42、42、…が設けられている。
【0016】
このような下側部材31と上側部材32とを、図2Bに示されているように、結合させる。すなわち、下側連結ブラケット35、35に上側連結ブラケット39、39を結合させて、ボルト42、42、…によって締め付ける。そうすると、下側パイプ分割部材34と上側パイプ分割部材38とから1本の金属製円筒パイプが形成される。このパイプは後で説明するようにスクリュ16(図1参照)が挿入・収納されるスクリュ収納部43になっている。したがって、スクリュ16が挿入されるように、金属製円筒パイプの内径はスクリュ16の径より少しだけ大きくなっている。
【0017】
<スクリュ保守方法>
第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30を使用して実施するスクリュ保守方法を図3に示されているフローチャートにより説明する。最初に射出装置旋回工程S01を実施する。すなわち、図4Aに示されているように、射出装置3を旋回させ加熱シリンダ15の先端、つまり下流側を型締装置2から離間させる。なお、旋回の前に、必要に応じて射出装置3を型締装置2から離間する方向に後退させておく。旋回後、射出ノズル22(図1参照)を加熱シリンダ15から取り外す。
【0018】
次に図3に示されているように準備工程S02を実施する。すなわち、図4Bに示されているように、スクリュ保守用治具30において下側部材31と上側部材32とを結合して、ボルト42、42を締め付け、下側パイプ分割部材34と上側パイプ分割部材38とからパイプ状にしたスクリュ収納部43を形成する。このようなスクリュ保守用治具30においてフック45、45を吊り下げ部40、40つまりアイボルトに引っ掛けて、図に示されていないクレーンで吊り下げる。そして、クレーンによりスクリュ保守用治具30を搬送し、図4Cに示されているように、スクリュ収納部43が加熱シリンダ15の下流側になるように配置させる。
【0019】
図3に示されているように、スクリュ取り出し工程S03を実施する。すなわち、図4Dに示されているように、加熱シリンダ15の上流側から押出用の棒材47、47、…を加熱シリンダ15に挿入し、スクリュ16を押し出す。そうすると、スクリュ16がスクリュ保守用治具30のスクリュ収納部43に挿入される。スクリュ16は高熱であり、燃焼しやすいマグネシウム合金等が付着しているが、加熱シリンダ15から押し出されたスクリュ16は速やかにスクリュ収納部43に入れられて大気との接触が防止される。これにより燃焼が防止される。
【0020】
スクリュ16が完全にスクリュ収納部43に挿入・収納されたら、図3に示されているように搬送工程S04を実施する。すなわち図4Eに示されているように、スクリュ16が入れられたスクリュ保守用治具30を、所定の保守作業エリアまでクレーンで搬送する。搬送され、保守作業エリアに置かれた状態のスクリュ保守用治具30が図4Fに示されている。この状態で図3に示されている冷却工程S05を実施する。すなわちスクリュ16がスクリュ収納部43に収納された状態で、大気との接触を防止してスクリュ16の冷却を待つ。
【0021】
スクリュ16が完全に冷却されたら、図3に示されているスクリュ取り出し工程S06を実施する。具体的には、図4Gに示されているように、スクリュ保守用治具30においてボルト42、42を緩める。そうすると下側部材31から上側部材32を分離させることができる。下側パイプ分割部材34と上側パイプ分割部材38が離間してスクリュ16が露出する。スクリュ16をクレーン等の搬送手段により取り出す。スクリュ16の清掃等、必要なメンテナンスを実施する。スクリュ16の保守が完了する。
【0022】
[比較例]
図5A図5Bによって、比較例に係るスクリュ保守用治具100を説明する。比較例に係るスクリュ保守用治具100は、金属パイプからなるスクリュ収納部101と、このスクリュ収納部101に取り付けられているアイボルト102、102とから構成されている。このような比較例に係るスクリュ保守用治具100であっても、例えば図4C図4Dに示されているように、加熱シリンダ15の下流側に配置させてスクリュ16を大気に極力触れないようにして収納させることはできる。図5Aには、スクリュ16が収納された状態の比較例に係るスクリュ保守用治具100が、フック104、104を備えた図示されないクレーンによって吊り下げられている様子が示されている。
【0023】
しかしながら、スクリュ16の冷却後、スクリュ16を取り出すときに問題が発生する。比較例に係るスクリュ保守用治具100は、スクリュ収納部101が開放されるようになっていない。したがってスクリュ収納部101の開口された両端のいずれかからスクリュ16を抜き出す必要がある。そこで例えば、図5Bに示されているように、1個のアイボルト102にのみフック104を備えたクレーンで吊り下げる。そうすると自重によりスクリュ16がスクリュ収納部101から斜めに滑り出す。このようにすると、スクリュ16を取り出すことができる。
【0024】
しかしながら、この取り出し方法はスクリュ16が落下したり、床面を滑ったりして危険が伴う。特に重量の大きなスクリュ16の場合危険度が高くなる。また、スクリュ収納部101を斜めに傾けた際にスクリュ16に付着していたマグネシウム合金等の一部が粉末状になって周囲に多量に飛散する。これに対して第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30(図3A参照)を用いれば、このような危険がなく、安全にスクリュ16を取り出すことができる。そして、スクリュ保守用治具30を用いればスクリュ16に付着していたマグネシウム合金等の一部が粉末状になって周囲に多量に飛散することもない。
【0025】
[第2の実施形態]
図6Aによって、第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Aを説明する。第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Aは、金属製円筒パイプを軸と平行な面で二つ割りに切断した一対のパイプ分割部材51、51を備えている。一対のパイプ分割部材51、51は、互いに複数個のヒンジ構造52、52、…によって接続されていると共に、それぞれ2個ずつ吊り下げ部54、54、…が設けられている。
【0026】
第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Aにおいて、それぞれの吊り下げ部54、54、…を図示されないクレーンによって吊り下げると、一対のパイプ分割部材51、51はヒンジ構造52、52、…を中心に回転して互いに閉じられる。これによって、1本の金属製円形パイプが形成される。すなわちスクリュ収納部43Aが構成される。一方、クレーンから吊り下げ部54、54、…を取り外すと、図6Aに示されているように一対のパイプ分割部材51、51が開いてパイプ内部が開放される。
【0027】
第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Aを使用してスクリュ16(図1参照)を保守する場合、第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30(図2A図2B参照)を使用して実施するスクリュ保守方法と実質的に同様にして実施すればよい。つまり、図3に示されているように、射出装置旋回工程S01、準備工程S02、…、スクリュ取り出し工程S06を実施する。
【0028】
ただし、第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具30A(図6A参照)を使用する場合、準備工程S02において、それぞれの吊り下げ部54、54、…をクレーンによって吊り下げて、スクリュ収納部43Aを構成するようにする。また冷却工程S05は、吊り下げ部54、54、…からクレーンを取り外さないで実施し、一対のパイプ分割部材51、51がパイプ状に維持されるようにする。あるいは、所定の留め具等を使用して吊り下げ部54、54、…を固定して、一対のパイプ分割部材51、51がパイプ状に維持されるようにしてもよい。スクリュ取り出し工程S06においては、吊り下げ部54、54、…からクレーンを取り外す。あるいは留め具等を取り外す。そうするとスクリュ収納部43Aに入れられているスクリュ16(図1参照)が露出する。スクリュ16を取り出すことができる。
【0029】
[第3の実施形態]
図6Bには、第3の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Bが示されている。第3の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Bは、金属製円筒パイプを軸と平行な面で二つ割りに切断した形状の1個の二分パイプ分割部材56と、4分割した形状の2個の四分パイプ分割部材57、57とを備えている。二分パイプ分割部材56の両端に、ヒンジ構造52、52、…を介してそれぞれ四分パイプ分割部材57、57が接続されている。これら2個の四分パイプ分割部材57、57に、それぞれ吊り下げ部54、54、…が設けられている。
【0030】
この第3の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Bも、第2の実施形態に係るスクリュ保守用治具30A(図6A参照)と同様に、それぞれの吊り下げ部54、54、…をクレーンによって吊り下げるとスクリュ収納部43Bが構成される。第3の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Bも、第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30を使用したスクリュ保守方法と同様にしてスクリュ16(図1参照)をメンテナンスすることができるので、スクリュ保守方法についての説明を省略する。
【0031】
[第4の実施形態]
図7A図7Bには、第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Cが示されている。第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Cは、金属製円筒パイプを軸と平行な面で二つ割りに切断した形状の一対のパイプ分割部材60、60を備えている。一対のパイプ分割部材60、60は互いにヒンジ構造52、52、…によって接続されており、ヒンジ構造52、52、…を中心にして回転するようになっている。第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Cは、一対のパイプ分割部材60、60のそれぞれに操作レバー61、61、…が固着されている。これらの操作レバー61、61、…は、互いに交差しており、操作レバー61、61、…の先端に吊り下げ部54、54、…が形成されている。
【0032】
第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Cを、図7Aに示されているように、吊り下げ部54、54、…にフック45、45を引っ掛けて図示されないクレーンによって上方につり上げる。そうすると、図において左右に示されている操作レバー61、61、…同士の間隔、つまり吊り下げ部54、54、…同士の間隔が狭められる。これにより一対のパイプ分割部材60、60同士が近接してパイプ収納部43Cが形成される。図7Aにはパイプ収納部43Cにスクリュ16が挿入・収納されている様子が示されている。一方、左右の操作レバー61、61、…同士の間隔、つまり吊り下げ部54、54、…同士の間隔を広げるようにすると、図7Bに示されているように、一対のパイプ分割部材60、60が離間する。そうするとパイプ内部が開放され、スクリュ16を取り出すことができるようになっている。
【0033】
第4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30Cは、ロック手段も設けられている。具体的には、一方のパイプ分割部材60に固定されている操作レバー61、…に、ロックバー63が回転可能に支持されている。ロックバー63には第1、第2の突起部65、66が形成されている。図7Aに示されているように、一対のパイプ分割部材60、60が閉じられた状態でロックバー63を下ろすと、第1の突起部65が操作レバー61に接触する。そうすると、左右の操作レバー61、61、…は開かれなくなる。つまり一対のパイプ分割部材60、60は閉じられた状態で維持される。一方、図7Bに示されているように一対のパイプ分割部材60、60が離間した状態でロックバー63を下ろすと、第2の突起部66が操作レバー61に接触する。そうすると左右の操作レバー61、61、…は閉じられなくなる。つまり、一対のパイプ分割部材60、60は開いた状態で維持される。
【0034】
<他の変形例>
第1~4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30、30A、…は色々な変形が可能である。図8には第1の実施形態の変形例に係るスクリュ保守用治具30‘、30’が示されている。第1の実施形態の変形例に係るスクリュ保守用治具30‘、30’は軸方向の長さが短くなっているが、その構成は第1の実施形態に係るスクリュ保守用治具30(図2A図2B参照)と同様であるので構成についての説明は省略する。第1の実施形態の変形例に係るスクリュ保守用治具30‘、30’は、2本で1本のスクリュ16を挿入・収納するようになっている。
【0035】
他にも変形が可能である。第1~4の実施形態に係るスクリュ保守用治具30、30A、…は、いずれも吊り下げ部54、54、…が、スクリュ収納部43、43A、…において軸方向の異なる2カ所に配置されている。しかしながら、3カ所、あるいは4カ所以上に配置されるようにしてもよい。
【0036】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 金属射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 5 固定盤
6 可動盤 7 型締ハウジング
9 タイバー 10 トグル機構
12 固定側金型 13 可動側金型
15 加熱シリンダ 16 スクリュ
17 スクリュ駆動装置 18 台座
19 旋回軸 21 ホッパ
22 射出ノズル
30 スクリュ保守用治具 31 下側部材
32 上側部材 34 下側パイプ分割部材
35 下側連結ブラケット 36 ボルト穴
38 上側パイプ分割部材 39 上側連結ブラケット
40 吊り下げ部 42 ボルト
43 スクリュ収納部 45 フック
51 パイプ分割部材 52 ヒンジ構造
54 吊り下げ部 56 二分パイプ分割部材
57 四分パイプ分割部材 60 パイプ分割部材
61 操作レバー 63 ロックバー
65 第1の突起部 66 第2の突起部
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8