(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051421
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A63B37/00 512
A63B37/00 212
A63B37/00 316
A63B37/00 412
A63B37/00 626
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157579
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 潤
(57)【要約】
【課題】ボール使用中の環境温度変化に対して、ボールの温度変化自体を抑えることにより、本来設計された最適な物性を維持することができるゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】塗膜層、カバー層、中間層及びコアなどのゴルフボールを構成する部材に、相変化を示す物質(PCM)を含有した材料を含むこと、好ましくは、上記の相変化を示す物質(PCM)が、融点が5~40℃であるノルマルパラフィンであり、マイクロカプセル化したものを用いるゴルフボールを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールを構成する部材に、相変化を示す物質(PCM)を含有した材料を含むことを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記の相変化を示す物質(PCM)の融点が5~40℃である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記の相変化を示す物質(PCM)を含有した材料がマイクロカプセルの形態である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記マイクロカプセルの膜材が熱硬化性樹脂を含む請求項3記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記の相変化を示す物質(PCM)が融点5~40℃のパラフィン系である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記の相変化を示す物質(PCM)がノルマルパラフィンである請求項5記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記ノルマルパラフィンの炭素数が14~20である請求項6記載のゴルフボール。
【請求項8】
上記の相変化を示す物質(PCM)を含有した材料は、過冷却防止剤を含有する請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項9】
上記の相変化を示す物質(PCM)を含有した材料は、塗膜層、カバー層、中間層及びコアの群から選ばれる1種以上の部材に含まれる請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項10】
ゴルフボールを構成する部材に含まれる相変化を示す物質(PCM)を含有した材料の質量割合が5質量%以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアやカバー層などのゴルフボールを構成する部材に、相変化を示す物質(PCM)を含有した材料を含むゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールには、飛びや打感、耐久性などの種々の性能が要求される。これらの性能を最適に実現するためのゴルフボールの設計については、代表的な使用環境(例えば気温15℃~30℃)を想定してその設計が行われることが多い。しかし、ゴルフは年間を通して楽しまれており、また使用される地域も限定されず、したがって様々な気候、環境下でプレーされており、場合によっては想定を超える低温、あるいは高温で使用される可能性がある。そのため使用温度によっては設計された性能が十分発現されないことが起こり得る。特に低温環境でのプレーでは、第1打目を打ってから第2打目を打つまでの間にボール温度が低下することで、2打目のショットで期待する性能が発現しないことが起こり得る。同様に夏季のプレーでは高温な気温や直射日光等によってボール表面温度が上昇することで、期待する性能が発現しないことが起こり得る。
【0003】
なお、従来から、冬季のゴルフボール物性変化を最小化するために、様々な技術が提案されている。特許文献1には、低温でも飛距離が低下することがなく、優れた打感を有するゴルフボールを提供するために、ゴルフボールの構成部材に、シリコーン・ポリカーボネート共重合体を含む材料を用いることが開示されている。特許文献2には、冬季使用時のボールの反発力低下や硬さの変化を抑えるために、コア用ゴム材に溶液重合スチレンブタジエンゴムと乳化重合スチレンブタジエンゴムとを所定比率で配合することが記載されている。特許文献3には、高硬度と高反発弾性とを両立し、且つ気温により飛距離が変化しないゴルフボールコア材を提供するために、該コア材に、特定のシラン化合物またはシロキサン化合物等を配合することが記載されている。そのほか、特許文献4や特許文献5には、外層コアやカバーの樹脂材料に、アラミド系エラストマーや線状低密度ポリエチレンを含有することにより、低温でも飛びの低下や耐久性低下を抑制したゴルフボールが提案されている。
【0004】
しかしながら、これらのゴルフボールは、いずれも、ゴルフボールの構成部材の基材ゴムやベース樹脂に対して、温度変化に対する物性変化が小さい材料を配合することに着目した発明であり、ゴルフボールとして最適な物性が得られるために、選択・使用された材材料の温度を安定させる技術の提案ではない。
【0005】
また、ゴルフボールの設定硬度(圧縮硬度)を軟らかく設定することで、冬季の温度変化に対する硬度変化や反発変化の幅を小さくするような商品が販売されている。しかし、これらゴルフボールの商品は、冬季の物性変化を小さくすることを優先した設計となっており、温度変化そのものを抑える設計にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-74100号公報
【特許文献2】特開2002-272877号公報
【特許文献3】特開2001-54593号公報
【特許文献4】特開平10-309331号公報
【特許文献5】特開平10-192448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ボール使用中の環境温度変化に対して、ボールの温度変化自体を抑えることにより、本来設計された最適な物性を維持することができるゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、塗膜層、カバー層、中間層及びコアなどのゴルフボールを構成する部材に、相変化を示す物質(PCM)を含有させることにより、ボール使用中の環境温度変化に対して、ボールの温度変化自体を抑えることができ、本来設計された最適な物性の維持、特に、打撃時の打感変化を抑え、ゴルファーに安心したプレーを提供することができることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
即ち、ゴルフボールの部材の一部に相変化を示す物質(PCM)を導入することで、環境温度変化が発生したときに予め選択した任意の温度(相変化温度)を超えるときの相変化時間を確保することにより、ゴルフボールの温度変化速度が遅くなり、設計された物性を発現させる時間を延長させる効果が得られる。また、PCMの添加量を適宜調整することで、上記の効果を調整することが可能である。なお、上記のPCMとは、Phase Change Materialsの略語である。
【0010】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.ゴルフボールを構成する部材に、相変化を示す物質(PCM)を含有した材料を含むことを特徴とするゴルフボール。
2.上記の相変化を示す物質(PCM)の融点が5~40℃である上記1記載のゴルフボール。
3.上記の相変化を示す物質(PCM)を含有した材料がマイクロカプセルの形態である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記マイクロカプセルの膜材が熱硬化性樹脂を含む上記3記載のゴルフボール。
5.上記の相変化を示す物質(PCM)が融点5~40℃のパラフィン系である上記1記載のゴルフボール。
6.上記の相変化を示す物質(PCM)がノルマルパラフィンである上記5記載のゴルフボール。
7.上記ノルマルパラフィンの炭素数が14~20である上記6記載のゴルフボール。
8.上記の相変化を示す物質(PCM)を含有した材料は、過冷却防止剤を含有する上記1又は2記載のゴルフボール。
9.上記の相変化を示す物質(PCM)を含有した材料は、塗膜層、カバー層、中間層及びコアの群から選ばれる1種以上の部材に含まれる上記1又は2記載のゴルフボール。
10.ゴルフボールを構成する部材に含まれる相変化を示す物質(PCM)を含有した材料の質量割合が5質量%以上である上記1又は2記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフボールは、ボールの使用中、環境温度変化に対して、ボールの温度変化自体を抑えることにより、本来設計された最適な物性を維持することができ、更には最適な物性を維持することで打撃時の打感変化を抑え、ゴルファーに安心したプレーを提供することができる。
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明は、ゴルフボールの構成部材の一部に相変化を示す物質(PCM)を導入させるため、その相変化を示す物質(PCM)を含有した材料をゴルフボールの構成部材に含むことを特徴とする。
【0013】
以下、その相変化を示す物質(PCM)を単に「PCM」と省略し、相変化を示す物質(PCM)を含有した材料を単に「PCM含有材料」と省略して記載することがある。
【0014】
上記のPCMについては、ゴルフボールが使用される環境温度の範囲内で相変化するものであれば限定されず、物質としても1種またはそれ以上の混合物でもよい。具体例としては、ノルマルパラフィン等のパラフィン・ワックス類のほか、酢酸ナトリウム3水塩、硫酸ナトリウム10水塩等の水和物や脂肪酸類などが挙げられる。これらの中でも、ゴルフボールの使用の環境温度ではノルマルパラフィンがPCMとして好適であり、その炭素数を適宜選択することにより任意の相変化温度に調整することができる。
【0015】
本発明に好適に使用されるノルマルパラフィンについて、その種類と融点は以下の表に示される。下記の表に示すように、PCMとしては、融点5~40℃であり、炭素数14~20であるノルマルパラフィンを用いることが好適である。
【0016】
【0017】
また、PCMは冷却した際に過冷却を起こすことがあり、この場合、予め設計した温度での転移が起きず、PCMを導入したゴルフボールについて期待する効果が得られない場合がある。このため、予め、本発明に使用されるPCM含有材料については、過冷却防止剤を含有させることができる。これにより、相転移する融解温度と凝固温度とが一致することで、PCMの導入による効果を確実に発現させることができる。過冷却防止剤としては、特に限定はないが、使用されるPCMの種類に応じて適宜選択することができ、例えば、PCMよりも高い融点を持つ有機化合物を採用することができ、具体的には、n-アルキルアルコールやn-アルキルアミン等のn-パラフィン誘導体を選択することができる。
【0018】
PCMの含有量については、ゴルフボールを構成する部材(1つの部材)100質量%に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、最も好ましくは20質量%以上である。なお、この含有量の上限値は、PCMがゴルフボールの構成部材の基材樹脂(マトリックス)の本来有する機能が損なうことを防止する点から、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下である。これらの含有量は、ゴルフボールを構成する部材の種類によって好ましい範囲が異なり、また、PCMを含有する構成部材は1つに限られず複数でも可能であるので、その態様によって上記のPCMの含有量は適宜選定される。
【0019】
そのほか、本発明に使用されるPCM含有材料には、増粘剤や酸化防止剤などを必要に応じて含有することができる。
【0020】
PCM含有材料を含ませるゴルフボールの対象部材については、ゴルフボールを構成する部材であれば特に制限はなく、例えば、塗膜層、カバー層、中間層、コア等の部材が対象となる。これらの部材の一つに限らず、2つ以上の部材にPCM含有材料を含ませることができる。
【0021】
コアにPCM含有材料を含ませる場合には、基材ゴム、共架橋剤、無機充填剤、有機過酸化物等の各成分と同様に、PCM含有材料を含有させてゴム組成物を調製し、加硫を行うことによりPCM含有材料を含むコアを作製することができる。
【0022】
中間層やカバー層にPCM含有材料を含ませる場合には、中間層やカバー層の主材となるアイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂やそのほかの公知のゴルフボール用樹脂材料にPCM含有材料を含有させ、この樹脂材料により射出成形等の公知の成形方法によりPCM含有材料を含む樹脂層を中間層やカバー層として用いることができる。
【0023】
塗膜層にPCM含有材料を含ませる場合には、ゴルフボールに使用される公知の塗料組成物において、ポリエステルポリオール等の主剤組成物にPCM含有材料を配合し、この塗料組成物を通常の塗装工程によりゴルフボール表面に塗布することにより、PCM含有材料を含む塗膜層を形成することができる。
【0024】
また、PCM含有材料の形態は、特に限定はなく、液状、ゲル、マイクロカプセル等の公知の形態により行うことができ、特に、ゴルフボールの各部材へPCMを容易に導入し得る観点から、マイクロカプセル化したPCMの導入が好適である。この場合、マイクロカプセルの膜材は、特に制限されないが、樹脂やゴムにPCMを添加する場合は加工時にカプセルの形態が維持されることが必要であり、例えば、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル樹脂などの耐衝撃性のある樹脂材料などを選択することができる。
【0025】
上述したPCM含有材料は、市販品を用いることができ、例えば、三木理研工業社製の「PMCD-SPシリーズ」(蓄熱パラフィン)の商品名「PMCD-5SP」(融点約5℃)、「PMCD-15SP」(融点約15℃)、「PMCD-25SP」(融点約25℃)、「PMCD-28SP」(融点約28℃)及び「PMCD-32SP」(融点約32℃)等が挙げられる。
【実施例0026】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
〔実施例I〕
下記のI~IIIの各構成部材の基本配合を用いる。これらの各基本配合にPCM含有材料を適宜調整して配合する。
【0028】
[コア基本配合I]
コア基本配合は表2のとおりである。この基本配合100質量部に対して、後述する表5~7に示すように、PCM含有材料を所定量配合してコア用のゴム組成物を調製した後、155℃、15分間により加硫成形することにより直径36.3mmのコアを作製する。
【0029】
【0030】
上記コアの材料の詳細は下記のとおりである。
「ポリブタジエンA」:商品名「BR01」JSR社製
「ポリブタジエンB」:商品名「BR51」JSR社製
「有機過酸化物」:ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」日油社製
「硫酸バリウム」:商品名「バリコ#100」ハクスイテック社製
「酸化亜鉛」:商品名「酸化亜鉛3種」堺化学工業社製
「アクリル酸亜鉛」:日本触媒社製
「水」:蒸留水、和光純薬工業社製
「ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩」:和光純薬工業社製
【0031】
[カバー各層の基本配合II]
カバー各層の基本配合は表3のとおりである。この基本配合100質量部に対して、後述する表5~7に示すように、PCM含有材料を所定量配合して射出成形用の樹脂材料とし、各種の樹脂材料を配合したカバー(内側から順に包囲層、中間層及び最外層)を射出成形法により順次被覆する。包囲層の厚みは1.3mm、材料硬度はショアD硬度で52であり、中間層の厚みは1.1mm、材料硬度はショアD硬度で62であり、最外層の厚みは0.8mm、材料硬度はショアD硬度で47である。なお、特に図示してはいないが、最外層の外表面には多数のディンプルが射出成形と同時に形成する。
【0032】
【0033】
カバー(包囲層、中間層及び最外層)の材料の詳細は下記のとおりである。
「HPF1000」:Dupont社製のアイオノマー
「ハイミラン1605」:Na系アイオノマー、三井・ダウポリケミカル社製
「ハイミラン1557」:Zn系アイオノマー、三井・ダウポリケミカル社製
「ハイミラン1706」:Zn系アイオノマー、三井・ダウポリケミカル社製
「T-8290」、「T-8283」:DIC BayerPolymer社製の商標パンデックス、MDI-PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン
「ハイトレル4001」:東レデュポン社製、ポリエステルエラストマー
「ポリリエチレンワックス」:三洋化成社製、商品名「サンワックス161P」
「酸化チタン」:石原産業社製「タイペークR680」
「ポリイソシアネート化合物」:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0034】
[塗料の基本配合I]
塗料の基本配合は表4のとおりである。この基本配合100質量部に対して、後述する表5~7に示すように、PCM含有材料を配合して塗料組成物を調製した後、ディンプルが多数形成された最外層の表面に、エアースプレーガンにより上記塗料を塗装し、厚み15μmの塗膜層を形成する。
【0035】
【0036】
[ポリエステルポリオール(A)の合成例]
環流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管及び温度計を備えた反応装置に、トリメチロールプロパン140質量部、エチレングリコール95質量部、アジピン酸157質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール58質量部を仕込み、撹拌しながら200~240℃まで昇温させ、5時間加熱(反応)させる。その後、酸価4,水酸基価170,重量平均分子量(Mw)28,000の「ポリエステルポリオール(A)」を得る。
上記のとおり、ポリエステルポリオール(B)を混合せず、主剤として「ポリエステルポリオール(A)」のみを酢酸ブチルで溶解させる。この溶液は、不揮発分27.5質量%である。
【0037】
次に、硬化剤として上記表に示すイソシアネートを有機溶剤に溶解させて使用する。即ち、上記表に示す配合割合になるように、HMDI系ヌレート(旭化成(株)製の「デュラネートTPA-100」NCO含有量23.1%、不揮発分100%)と、有機溶剤として酢酸エチル及び酢酸ブチルを加え、塗料を調製する。
【0038】
[実験例1(低温環境での効果試験)]
各ゴルフボールの評価サンプル(No.1~No.8)を24℃に温調し、その打感を6番アイアン(I#6)とパターに分けてそれぞれ評価する。手順としては、ゴルフボールを0℃の恒温槽に5分間放置し、その後、ゴルフボールを取り出して、その打感を下記の基準に従って評価する。なお、ゴルフボールを0℃の恒温槽に5分間放置することは、低温環境下でのゴルフプレーのラウンド時に2打目を想定するものである。つまり、1打目はポケットやゴルフルバックからボールを取り出してから実打するまで短時間であるため低温に晒される時間が短いことが想定されるからである。
[評価基準]
× ・・・ 通常の打感より硬く感じ、打感の変化が大きい。
△ ・・・ 通常の打感より硬く感じるが、打感の変化は小さい。
〇 ・・・ 通常の打感との変化をほとんど感じない。
(なお、通常の打感とは24℃環境下でのゴルフボールの打感を意味する。)
【0039】
【0040】
上記表中のPCM含有材料(1)は、三木理研工業社製の「PMCD-SPシリーズ」(蓄熱パラフィン)の商品名「PMCD-15SP」(融点約15℃、有効成分75%)であり、マイクロカプセル形態であり、カプセルの殻剤はメラミン樹脂である。
【0041】
[実験例2(高温環境での効果試験)]
各ゴルフボールの評価サンプル(No.1、No.9~15)を24℃に温調し、その打感を6番アイアン(I#6)とパターに分けてそれぞれ評価する。手順としては、ゴルフボールを40℃の恒温槽に5分間放置し、その後、ゴルフボールを取り出して、その打感を下記の基準に従って評価する。なお、ゴルフボールを40℃の恒温槽に5分間放置することは、高温環境下でのゴルフプレーのラウンド時に2打目を想定するものである。つまり、1打目はポケットやゴルフルバックからボールを取り出してから実打するまで短時間であるため高温に晒される時間が短いことが想定されるからである。
[評価基準]
× ・・・ 通常の打感より軟らかく感じ、打感の変化が大きい。
△ ・・・ 通常の打感より軟らかく感じるが、打感の変化は小さい。
〇 ・・・ 通常の打感との変化をほとんど感じない。
【0042】
【0043】
上記表中のPCM含有材料(2)は、三木理研工業社製の「PMCD-SPシリーズ」(蓄熱パラフィン)の商品名「PMCD-28SP」(融点約28℃、有効成分75%)であり、マイクロカプセル形態であり、カプセルの殻剤はメラミン樹脂である。
【0044】
[実験例3(熱線環境での効果試験)]
各ゴルフボールの評価サンプル(No.1、No.9~15)を24℃に温調し、その打感を6番アイアン(I#6)とパターに分けてそれぞれ評価する。手順としては、100Wの赤外線ランプを各ゴルフボールのサンプルの上部40cmに設定し、5分間照射し、その後、ゴルフボールを取り出して、その打感を下記の基準に従って評価する。なお、ゴルフボールの上部から赤外線を照射することは、実際のゴルフプレーのラウンド時のように直射日光によりゴルフボールが温度変化する状況を想定するものである
[評価基準]
× ・・・ 通常の打感より軟らかく感じ、打感の変化が大きい。
△ ・・・ 通常の打感より軟らかく感じるが、打感の変化は小さい。
〇 ・・・ 通常の打感との変化をほとんど感じない。
【0045】
【0046】
表5~7から、PCM含有材料を各ゴルフボールの構成部材に含有する割合によって、その打感変化が大きくなったり、小さくなったりするものではあるが、少なくとも、各ゴルフボールの構成部材100質量部に対して、15質量部以上配合すれば打感変化を小さくできることが分かる。但し、PCM含有材料をコアに配合する場合は、PCM含有材料を20質量部であっても、6番アイアン(I#6)での打感変化がなく良好であるが、
パターは打感変化を小さく抑えることができない。これはパターの実打はゴルフボールの構成部材のうち外表部に影響を受けるが、コアまでは影響を受けないためであると考えらえる。パターでの打感変化が小さくなるのは、上記各表に示すように、最外層や塗料に所定量以上のPCM含有材料を配合することにより実現できると考えられる。