(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051423
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】環境状態測定装置および環境状態測定装置のセッティング方法
(51)【国際特許分類】
G01S 11/14 20060101AFI20240404BHJP
G01P 5/24 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01S11/14
G01P5/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157582
(22)【出願日】2022-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋江井 武彦
(72)【発明者】
【氏名】井阪 健
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 知景
(72)【発明者】
【氏名】石田 絢音
(57)【要約】
【課題】環境状態測定装置による測定結果の信頼性を向上させる
【解決手段】環境状態測定装置(1)は、被測定空間(P)の周囲に設置される複数の音波ユニット(10)を備える。音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)を仮想的に画定する複数の境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置する。複数の音波ユニット(10)には、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)とが含まれる。各音波ユニット(10)は、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸を、当該音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部をなす各境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定空間(MS)の周囲に設置される複数の音波ユニット(10)を備え、
前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)を仮想的に画定する複数の境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置し、
前記複数の音波ユニット(10)には、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)と、が含まれ、
前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間を伝搬する音波の伝搬特性に基づいて、前記被測定空間(MS)の環境状態を測定する環境状態測定装置であって、
少なくとも一部の前記音波ユニット(10)は、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される、環境状態測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境状態測定装置において、
前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)の隅部に配置され、
前記被測定空間(MS)の隅部に位置する前記音波ユニット(10)は、当該隅部を形成する複数の前記境界平面(BP)のそれぞれに対して、前記指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される、環境状態測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
前記所定の角度は、当該角度で設置される前記音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される、環境状態測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の環境状態測定装置において、
前記音波の減衰量は、前記伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに当該伝搬経路(P)に係る前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて算出される、環境状態測定装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
同一の前記境界平面(BP)の外周上に位置する複数の前記音波ユニット(10)について、前記指向軸(DA)が当該同一の境界平面(BP)に対してなす角度は、互いに同じ角度に設定される、環境状態測定装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)の隅部に配置され、
同一の前記境界平面(BP)の外周上で前記被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の前記音波ユニット(10)は、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、当該一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称となる姿勢で設置される、環境状態測定装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
前記複数の境界平面(BP)は、互いに対向する第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および第2境界平面(BP2,BP4,BP6)を含み、
前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)の互いに対応する位置関係にある一対の前記音波ユニット(10)はそれぞれ、前記送信ユニット(10S)の機能を実現する送信素子(12)と、前記受信ユニット(10R)の機能を実現する受信素子(14)と、を別体として備え、
当該一対の音波ユニット(10)は、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)と前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)との間の中間位置に設定される仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して前記送信素子(12)および前記受信素子(14)の位置関係が互いに同じとなる姿勢で設置される、環境状態測定装置。
【請求項8】
指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)と、を含む複数の音波ユニット(10)を、互いに離間した位置に設置することで、前記音波ユニット(10)が外周上に位置する複数の境界平面(BP)により被測定空間(MS)を画定する環境状態測定装置のセッティング方法であって、
少なくとも一部の前記音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出し、
前記少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢における、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)が当該音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して傾斜する角度を、前記伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定する、環境状態測定装置のセッティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境状態測定装置および環境状態測定装置のセッティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、音波により空間の環境状態を測定する装置が知られる。そうした環境状態測定装置の一例として、被測定空間の風速分布を計測する風速分布計測装置が特許文献1に開示される。特許文献1の風速分布計測装置は、音波を送信する複数の送信機と、音波を受信する複数の受信機とを備える。
【0003】
この風速分布計測装置では、送信機から受信機に至る伝搬経路ごとに、送信機からの直接音と、直接音が受信機に反射して再び送信機で反射した反射音とを利用して、送信機から受信機に伝搬する音波の伝搬時間を求め、その音波の伝搬時間に基づき、送信機と受信機との間の風速を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の風速分布計測装置では、伝搬経路における音波の伝搬時間を精度よく算出すべく、送信機を受信機と対向して配置させる。また、一般的に、指向性をもって音波を送信する送信機と、指向性をもって音波を受信する受信機とを使用する場合、両者の間に伝搬経路を形成する送信機と受信機は、互いに対向して配置される。
【0006】
しかし、被測定空間の環境状態を三次元的に測定する場合、各送信機および各受信機の設置姿勢を一様に、特定の送信機と特定の受信機とが被測定空間を画定する境界平面と平行な方向において互いに対向する姿勢に決定すると、送信機とその送信機と対向しない受信機との各向きおよび位置関係によっては、それら送信機と受信機との間の伝搬経路において、有効な音波の伝搬が行われず、データの欠損を生じる。一部の伝搬経路にでもデータの欠損を生じると、環境状態の算出に用いるデータが不足するため、測定結果の信頼性が低下する。
【0007】
本開示の目的は、環境状態測定装置による測定結果の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、環境状態測定装置(1)を対象とする。第1の態様の環境状態測定装置(1)は、被測定空間(MS)の周囲に設置される複数の音波ユニット(10)を備える。前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)を仮想的に画定する複数の境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置する。前記複数の音波ユニット(10)には、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)とが含まれる。当該環境状態測定装置(1)は、前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間を伝搬する音波の伝搬特性に基づいて、前記被測定空間(MS)の環境状態を測定する。そして、少なくとも一部の前記音波ユニット(10)は、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。
【0009】
この第1の態様では、少なくとも一部の音波ユニット(10)が、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、音波ユニット(10)における送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢である。それにより、互いに対向しない送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制できる。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様の環境状態測定装置(1)において、前記音波ユニット(10)が、前記被測定空間(MS)の隅部に位置する、環境状態測定装置(1)である。この環境状態測定装置(1)において、前記被測定空間(MS)の隅部に位置する前記音波ユニット(10)は、当該隅部を形成する複数の前記境界平面(BP)のそれぞれに対して、前記指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。
【0011】
この第2の態様では、被測定空間(MS)の隅部に位置する音波ユニット(10)が、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、当該被測定空間(MS)の隅部を形成する複数の境界平面(BP)のそれぞれに対して、指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢である。このことは、三次元的に配置された送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制するのに有利である。
【0012】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様の環境状態測定装置(1)において、前記所定の角度が、当該角度で設置される前記音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される、環境状態測定装置(1)である。
【0013】
この第3の態様では、音波ユニット(10)の設置角度が、当該音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される。伝搬経路(P)における音波の減衰量が大きいと、当該伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行えない。よって、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。
【0014】
本開示の第4の態様は、第3の態様の環境状態測定装置(1)において、前記音波の減衰量が、前記伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに当該伝搬経路(P)に係る前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて算出される、環境状態測定装置(1)である。
【0015】
この第4の態様では、音波の減衰量が、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて算出される。所定の伝搬経路(P)を伝搬する音波は、当該伝搬経路(P)に対する送信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に対する受信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に係る送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の距離減衰が大きいほど減衰する。このように音波の減衰量と関係の深い、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、当該伝搬経路(P)での音波の減衰量を精度よく算出できる。
【0016】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つの環境状態測定装置(1)において、同一の前記境界平面(BP)の外周上に位置する複数の前記音波ユニット(10)について、前記指向軸(DA)が当該同一の境界平面(BP)に対してなす角度が、互いに同じ角度に設定される、環境状態測定装置(1)である。
【0017】
この第5の態様では、同一の境界平面(BP)の外周上に位置する複数の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該同一の境界平面(BP)に対して指向軸(DA)のなす角度を各音波ユニット(10)で同じとするように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0018】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つの環境状態測定装置(1)において、前記音波ユニット(10)が、前記被測定空間(MS)の隅部に位置する、環境状態測定装置(1)である。この環境状態測定装置(1)において、同一の前記境界平面(BP)の外周上で前記被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の前記音波ユニット(10)は、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、当該一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称となる姿勢で設置される。
【0019】
この第6の態様では、同一の境界平面(BP)の外周上で被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の音波ユニット(10)の設置姿勢が、所定の線対称の関係となるように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0020】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つの環境状態測定装置(1)において、前記複数の境界平面(BP)が、互いに対向する第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および第2境界平面(BP2,BP4,BP6)を含む、環境状態測定装置(1)である。この環境状態測定装置(1)において、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)の互いに対応する位置関係にある一対の前記音波ユニット(10)はそれぞれ、前記送信ユニット(10S)の機能を実現する送信素子(12)と、前記受信ユニット(10R)の機能を実現する受信素子(14)と、を別体として備える。そして、当該一対の音波ユニット(10)は、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)と前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)との間の中間位置に設定される仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して前記送信素子(12)および前記受信素子(14)の位置関係が互いに同じとなる姿勢で設置される。
【0021】
この第7の態様では、第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および第2境界平面(BP2,BP4,BP6)において互いに対応する位置関係にある一対の音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(13)を別体として備える。一方の音波ユニット(10)の送信素子(12)と他方の音波ユニット(10)の受信素子(14)、および一方の音波ユニット(10)の受信素子(14)と他方の音波ユニット(10)の送信素子(12)とは、互いの間に別々の伝搬経路(P)を形成する。それら一対の音波ユニット(10)における送信素子(12)および受信素子(13)は、仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して位置関係が同じとされる。それにより、一対の音波ユニット(10)の間に形成される別々の伝搬経路(P)の長さの差を小さくできる。このことは、環境状態測定装置(1)による測定を簡略化するのに有利である。
【0022】
本開示の第8の態様は、環境状態測定装置(1)のセッティング方法を対象とする。第8の態様の環境状態測定装置(1)のセッティング方法は、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)と、を含む複数の音波ユニット(10)を、互いに離間した位置に設置することで、前記音波ユニット(10)が外周上に位置する複数の境界平面(BP)により被測定空間(MS)を画定する方法である。この環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、少なくとも一部の前記音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出する。そして、前記少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢における、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)が当該音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して傾斜する角度を、前記伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定する。
【0023】
この第8の態様では、少なくとも一部の音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出する。伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、伝搬経路(P)での音波の減衰量を精度よく算出できる。そして、当該セッティング方法では、少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢における角度を決定する。当該設置角度は、音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して指向軸(DA)が傾斜する角度であり、音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定される。このとき、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態の環境状態測定装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、環境状態測定装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、音波ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、送信素子の周波数特性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、送信素子の指向特性を示すチャートである。
【
図6】
図6は、受信素子の周波数特性を示すグラフである。
【
図7】
図7は、受信素子の指向特性を示すチャートである。
【
図8】
図8は、被測定空間に対する複数の音波ユニットの設置図である。
【
図9】
図9は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を鉛直方向から示す平面図である。
図9では、境界上面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示し、括弧書きで境界下面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図10】
図10は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を一の側方から示す第1側面図である。
図10では、第3境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示し、括弧書きで第4境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図11】
図11は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を他の側方から示す第2側面図である。
図11では、第5境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示し、括弧書きで第6境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図12】
図12は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を第1区画垂直面の正面視方向から示す第3側面図である。
図12では、第1区画垂直面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図13】
図13は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に鉛直方向から示す平面図である。
図13では、境界上面の外周上に位置する音波ユニットと指向軸とを示し、括弧書きで境界下面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図14】
図14は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に一の側方から示す第1側面図である。
図14では、第3境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示し、括弧書きで第4境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図15】
図15は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に他の側方から示す第2側面図である。
図15では、第5境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示し、括弧書きで第6境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図16】
図16は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に第1区画垂直面の正面視方向から示す第3側面図である。
図16では、第1区画垂直面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図17】
図17は、音波ユニットの距離減衰特性を示すグラフである。
【
図18】
図18は、送信角度と受信角度について説明するための概念図である。
【
図19】
図19は、音波ユニットの設置角度と角度減衰との関係を例示する表である。
【
図20】
図20は、音波ユニットの設置角度と角度減衰合計との関係を例示するグラフである。
【
図21】
図21は、環境状態測定装置のセッティング方法における要部を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、各音波ユニットが初期設定角度であるときの第1音波ユニットに係る各伝搬経路での音波の全減衰量とその関連情報を例示する表である。
【
図23】
図23は、各音波ユニットの角度変更後における第1音波ユニットの各伝搬経路での音波の全減衰量およびその関連情報を例示する表である。
【
図26】
図26は、変形例の環境状態測定装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、本開示の技術を概念的に説明するためのものである。よって、図面では、本開示の技術の理解を容易にするために寸法、比または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。
【0026】
《実施形態》
-環境状態測定装置の構成-
この実施形態の環境状態測定装置(1)は、音波を用いて被測定空間(MS)の環境状態を測定する装置である。被測定空間(MS)は、例えば、各種施設や住宅などの屋内空間(IS)に設定される。環境状態には、被測定空間(MS)における風速および空気の温度が含まれる。屋内空間(IS)には、空気処理装置が設けられてもよい。空気処理装置は、例えば、換気装置、空気清浄機、空気調和機などである。
【0027】
〈被測定空間〉
図1に示すように、被測定空間(MS)は、複数の境界平面(BP)によって仮想的に画定される。本例の被測定空間(MS)は、直方形状の三次元空間である。この被測定空間(MS)を画定する境界平面(BP)は、6つの境界平面(BP)で構成される。6つの境界平面(BP)は、境界上面(BP1)と、境界下面(BP2)と、第1境界側面(BP3)と、第2境界側面(BP4)と、第3境界側面(BP5)と、第4境界側面(BP6)とである。
【0028】
境界上面(BP1)は、被測定空間(MS)の上側境界を画定する。境界下面(BP2)は、被測定空間(MS)の下側境界を画定する。境界上面(BP1)と境界下面(BP2)とは、それぞれ水平方向に広がる矩形状の仮想面であり、上下方向において互いに対向する。境界上面(BP1)は第1境界平面の一例であり、境界下面(BP2)は第2境界平面の一例である。境界上面(BP1)の各頂点と境界下面(BP2)の各頂点とは、上下方向に互いに対応する位置にあり、平面視で互いに重なり合う。
【0029】
第1境界側面(BP3)、第2境界側面(BP4)、第3境界側面(BP5)および第4境界側面(BP6)はそれぞれ、鉛直方向に広がる矩形状の仮想面であり、被測定空間(MS)の外周境界を画定する。第1境界側面(BP3)と第2境界側面(BP4)とは、水平方向において互いに対向する。第1境界側面(BP3)は第1境界平面の一例であり、第2境界側面(BP4)は第2境界平面の一例である。第3境界側面(BP5)と第4境界側面(BP6)とは、それぞれ第1境界側面(BP3)および第2境界側面(BP4)と直角をなし、水平方向において互いに対向する。第3境界側面(BP5)は第1境界平面の一例であり、第4境界側面(BP6)は第2境界平面の一例である。
【0030】
境界上面(BP1)と第1境界側面(BP3)と第3境界側面(BP4)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第1隅部(C1)を形成する。境界上面(BP1)と第1境界側面(BP3)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して第2隅部(C2)を形成する。境界上面(BP1)と第2境界側面(BP4)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第3隅部(C3)を形成する。境界上面(BP1)と第2境界側面(BP4)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第4隅部(C4)を形成する。
【0031】
境界下面(BP2)と第1境界側面(BP3)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第5隅部(C5)を形成する。境界下面(BP2)と第1境界側面(BP3)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して第6隅部(C6)を形成する。境界下面(BP2)と第2境界側面(BP4)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第7隅部(C7)を形成する。境界下面(BP2)と第2境界側面(BP4)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第8隅部(C8)を形成する。
【0032】
第1隅部(C1)と第3隅部(C3)、第2隅部(C2)と第4隅部(C4)とはそれぞれ、境界上面(BP1)において互いに対角の位置関係にある。第5隅部(C5)と第7隅部(C7)、第6隅部(C6)と第8隅部(C8)とはそれぞれ、境界下面(BP2)において互いに対角の位置関係にある。被測定空間(MS)は、第1区画垂直面(VP1)と第2区画垂直面(VP2)とにより仮想的に仕切られる。第1区画垂直面(VP1)および第2区画垂直面(VP2)は、それぞれ鉛直方向に広がる矩形状の仮想面であり、互いに直交する。
【0033】
第1区画垂直面(VP1)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点と、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点とを結んでなる。第1区画垂直面(VP1)は、被測定空間(MS)を一の対角方向に分断するように設定される。
【0034】
第2区画垂直面(VP2)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点と、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点と、境界下面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点とを結んでなる。第2区画垂直面(VP2)は、被測定空間(MS)を他の対角方向に分断するように設定される。
【0035】
被測定空間(MS)における境界上面(BP1)、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)、第2境界側面(BP4)、第3境界側面(BP5)、第4境界側面(BP6)、第1区画垂直面(VP1)および第2区画垂直面(VP2)はそれぞれ、環境状態が測定される測定平面(MP)を構成する。
【0036】
〈環境状態測定装置〉
図2に示すように、環境状態測定装置(1)は、複数の音波ユニット(10)と、座標計測部(20)と、コントローラ(30)とを備える。
【0037】
〈音波ユニット〉
複数の音波ユニット(10)は、8つの音波ユニット(10)で構成される。8つの音波ユニット(10)は、第1音波ユニット(10A)と、第2音波ユニット(10B)と、第3音波ユニット(10C)と、第4音波ユニット(10D)と、第5音波ユニット(10E)と、第6音波ユニット(10F)と、第7音波ユニット(10G)と、第8音波ユニット(10H)とである。以下では、第1~第8音波ユニット(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)を区別しない場合、単に「音波ユニット(10)」と称する。
【0038】
各音波ユニット(10)は、内蔵したバッテリーで駆動し、Wi-Fi(登録商標)や赤外線通信といった無線通信機能を有する。8つの音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)の周囲において互いに間隔をあけた分散位置に設置される。音波ユニット(10)は、6つの境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置する。
図8に示すように、本例の音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)の各隅部に配置される。
【0039】
具体的には、第1音波ユニット(10A)は被測定空間(MS)の第1隅部(C1)に、第2音波ユニット(10B)は被測定空間(MS)の第2隅部(C2)に、第3音波ユニット(10C)は被測定空間(MS)の第3隅部(C3)に、第4音波ユニット(10D)は被測定空間(MS)の第4隅部(C4)に、第5音波ユニット(10E)は被測定空間(MS)の第5隅部(C5)に、第6音波ユニット(10F)は被測定空間(MS)の第6隅部(C6)に、第7音波ユニット(10G)は被測定空間(MS)の第7隅部(C7)に、第8音波ユニット(10H)は被測定空間(MS)の第8隅部(C8)にそれぞれ配置される。
【0040】
図示しないが、各音波ユニット(10)は、自立式の支持体により支持される。各支持体は、鉛直方向に延びる。各支持体には、支持する音波ユニット(10)の高さを調節する高さ調節機構が設けられる。例えば、第1~第4隅部(C1,C2,C3,C4)に配置される各音波ユニット(10)の高さ、第5~第8隅部(C5,C6,C7,C8)に配置される音波ユニット(10)の高さはそれぞれ、高さ調節機構により同じ高さ位置に設定される。また、支持体には、音波ユニット(10)の設置角度を調節する角度調節機構が設けられる。角度調節機構は、音波ユニット(10)のロール角、ピッチ角およびヨー角のうち少なくともピッチ角およびヨー角を調節可能に構成される。
【0041】
図3に示すように、音波ユニット(10)には、ロール軸(A1)、ピッチ軸(A2)およびヨー軸(A3)が定められる。ロール軸(A1)は、音波ユニット(10)の中心を前後方向に通る軸線である。ピッチ軸(A2)は、ロール軸(A1)に直交し、音波ユニット(10)の中心を幅方向に通る軸線である。ヨー軸(A3)は、ロール軸(A1)およびピッチ軸(A2)に直交し、音波ユニット(10)の中心を高さ方向に通る軸線である。各音波ユニット(10)の設置姿勢は、ロール軸(A1)回りの回転角(ロール角)、ピッチ軸(A2)回りの回転角(ピッチ角)、およびヨー軸(A3)回りの回転角(ヨー角)により設定される。
【0042】
8つの音波ユニット(10)には、音波を送信する送信ユニット(10S)と、音波を受信する受信ユニット(10R)とが含まれる。本例の各音波ユニット(10)は、送信ユニット(10S)および受信ユニット(10R)の両方を兼ねる。各音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(14)を別体として備える。送信素子(12)および受信素子(14)は、音波ユニット(10)を正面視したときに、当該音波ユニット(10)の前面におけるロール軸(A1)が交差する中央点(CP)に対してヨー軸(A3)に沿う方向に等距離の位置に設けられる。
【0043】
第1音波ユニット(10A)は、第1送信素子(12a)および第1受信素子(14a)を有する。第2音波ユニット(10B)は、第2送信素子(12b)および第2受信素子(14b)を有する。第3音波ユニット(10C)は、第3送信素子(12c)および第3受信素子(14c)を有する。第4音波ユニット(10D)は、第4送信素子(12d)および第4受信素子(14d)を有する。第5音波ユニット(10E)は、第5送信素子(12e)および第5受信素子(14e)を有する。第6音波ユニット(10F)は、第6送信素子(12f)および第6受信素子(14f)を有する。第7音波ユニット(10G)は、第7送信素子(12g)および第7受信素子(14g)を有する。第8音波ユニット(10H)は、第8送信素子(12h)および第8受信素子(14h)を有する。以下では、第1~第8送信素子(12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h)を区別しない場合、単に「送信素子(12)」と称し、第1~第8受信素子(14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h)を区別しない場合、単に「受信素子(14)」と称する。
【0044】
送信素子(12)は、送信ユニット(10S)の機能(音波の送信機能)を実現する。本例の送信素子(12)は、
図4に示すような周波数特性を示し、40kHzにピーク周波数を持ち、そのピーク周波数から低い側および高い側になるに連れて音圧レベルが減少する山形の特性を有する。送信素子(12)は、有指向性に構成される。有指向性の送信素子(12)は、所定の角度範囲のみに指向性をもって音波を送信する。本例の送信素子(12)は、
図5に示すような指向特性を有する。
【0045】
図5では、送信素子(12)が送信する音波の放射角度と、放射角度ごとの送信強度との関係を示す。送信素子(12)は、音波を送信する送信面の法線方向(0°)へ出射する音波の送信強度が最大であり、放射角度が大きくなるほど送信強度が小さくなる(つまり、音波の減衰量が大きくなる)ような送信指向性を呈する。送信素子(12)は、送信の最大強度(最大の送信出力)を示す送信指向軸(DA1)を有する。本例の送信素子(12)は、送信指向軸(DA1)を中心とした約90°に広がる角度範囲を指向角とする。
【0046】
受信素子(14)は、受信ユニット(10R)の機能(音波の受信機能)を実現する。本例の受信素子(14)は、
図6に示すような周波数特性を示し、40kHzにピーク周波数を持ち、そのピーク周波数から低い側および高い側になるに連れて感度が減少する山形の特性を有する。受信素子(14)は、有指向性に構成される。有指向性の受信素子(14)は、所定の角度範囲のみで指向性をもって音波を受信する。本例の受信素子(14)は、
図7に示すような指向特性を有する。
【0047】
図7では、受信素子(14)が受信する音波の入射角度と、入射角度ごとの受信感度との関係を示す。受信素子(14)は、音波を受信する受信面の法線方向(0°)から入射する音波の受信感度が最大であり、入射角度が大きくなるほど受信感度が小さくなる(つまり、音波の減衰量が大きくなる)ような受信指向性を呈する。受信素子(14)は、受信の最大強度(最大の受信感度)を示す受信指向軸(DA2)を有する。本例の受信素子(14)は、受信指向軸(DA1)を中心とした約90°に広がる角度範囲を指向角とする。
【0048】
図3に示すように、送信素子(12)の送信面および受信素子(14)の受信面は、各音波ユニット(10)の同一面に位置する。本例の各音波ユニット(10)において、送信指向軸(DA1)と受信指向軸(DA2)とは、同一の方向に向けて互いに平行に延びる。以下では、送信指向軸(DA1)および受信指向軸(DA2)を区別しない場合、単に「指向軸(DA)」と称する。指向軸(DA)は、後に参照する
図17~
図20において代表した1本の軸線で示す。各音波ユニット(10)は、送信素子(12)の送信面および受信素子(14)の受信面を被測定空間(MS)の内方に向ける姿勢に設置される。
【0049】
第1音波ユニット(10A)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第2音波ユニット(10B)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第3音波ユニット(10C)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第4音波ユニット(10D)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。
【0050】
第5音波ユニット(10E)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第6音波ユニット(10F)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第7音波ユニット(10G)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第8音波ユニット(10H)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。
【0051】
図9~
図12に示すように、複数の音波ユニット(10)は、複数の伝搬経路(Pmn)(m=1,2,…8;mは送信素子(12)の「第」に続く識別のための数字に対応する)(n=1,2,…8;nは受信素子(14)の「第」に続く識別のための数字に対応する)を相互間に形成する。以下では、いずれの一対の音波ユニット(10)の間に形成される伝搬経路(Pmn)であるかを区別しない場合、単に「伝搬経路(P)」と称する。
【0052】
伝搬経路(P)は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間に2つずつ存在する。それら2つの伝搬経路(P)は、一方の音波ユニット(10)の送信素子(12)と他方の音波ユニット(10)の受信素子(14)との間に形成される伝搬経路(P)と、一方の音波ユニット(10)の受信素子(14)と他方の音波ユニット(10)の送信素子(12)との間に形成される伝搬経路(P)とである。本例の被測定空間(MS)には、56の伝搬経路(P)が形成される。
【0053】
56の伝搬経路(P)はいずれも、直接波を伝搬する伝搬経路である。直接波は、伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)のうち一方の音波ユニット(10)から送信された後、屋内空間(MS)の壁面(WL)などに衝突せずに、他方の音波ユニット(10)に届く音波である。被測定空間(MS)において、一対の音波ユニット(10)の間には、反射波を伝搬する伝搬経路が形成されてもよい。反射波は、伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)のうち一方の音波ユニット(10)から送信された後、屋内空間(MS)の壁面(MS)に反射してから他方の音波ユニット(10)に届く音波である。
【0054】
各音波ユニット(10)は、当該音波ユニット(10)が外周上に位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。本例の各音波ユニット(10)は、当該音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部を形成する3つの境界平面(BP)のそれぞれに対して、指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。音波ユニット(10)の設置角度は、当該音波ユニット(10)を支持する支持体の角度調整機構により、少なくともピッチ角およびヨー角について調整可能とされる。
【0055】
第1音波ユニット(10A)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第2音波ユニット(10B)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第3音波ユニット(10C)は、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第4音波ユニット(10D)は、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。
【0056】
第5音波ユニット(10E)は、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第6音波ユニット(10F)は、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第7音波ユニット(10G)は、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第8音波ユニット(10H)は、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。
【0057】
本例の環境状態測定装置(1)において、第1~第8音波ユニット(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の設置姿勢には、以下に説明する第1~第3制約条件が付けられる。
【0058】
(1)第1制約条件
図13~
図16に示すように、同一の境界平面(BP)の外周上に位置する4つの音波ユニット(10)について、指向軸(DA)が当該同一の境界平面(BP)に対してなす角度は、互いに同じ角度に設定される。
【0059】
具体的には、第1音波ユニット(10A)、第2音波ユニット(10B)、第3音波ユニット(10C)および第4音波ユニット(10D)の各指向軸(DA)は、境界上面(BP1)に対して互いに同じ角度をなす。第5音波ユニット(10E)、第6音波ユニット(10F)、第7音波ユニット(10G)および第8音波ユニット(10H)の各指向軸(DA)は、境界下面(BP2)に対して互いに同じ角度をなす。第1音波ユニット(10A)、第2音波ユニット(10B)、第5音波ユニット(10E)および第6音波ユニット(10F)の各指向軸(DA)は、第1境界側面(BP3)に対して互いに同じ角度をなす。
【0060】
第3音波ユニット(10C)、第4音波ユニット(10D)、第7音波ユニット(10G)および第8音波ユニット(10H)の各指向軸(DA)は、第2境界側面(BP4)に対して互いに同じ角度をなす。第1音波ユニット(10A)、第4音波ユニット(10D)、第5音波ユニット(10E)および第8音波ユニット(10H)の各指向軸(DA)は、第3境界側面(BP5)に対して互いに同じ角度をなす。第2音波ユニット(10B)、第3音波ユニット(10C)、第6音波ユニット(10F)および第7音波ユニット(10G)の各指向軸(DA)は、第4境界側面(BP6)に対して互いに同じ角度をなす。
【0061】
(2)第2制約条件
図13~
図15に示すように、同一の境界平面(BP)の外周上で被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の音波ユニット(10)は、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、それら一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称となる姿勢で設置される。
【0062】
図13に示すように、第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第2音波ユニット(10B)の設置姿勢、第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢とはそれぞれ、境界上面(BP1)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL1)に関して互いに線対称をなす。第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢、第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第3音波ユニット(10C)の設置姿勢とはそれぞれ、境界上面(BP1)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL2)に介して互いに線対称をなす。
【0063】
図13に括弧書きで示すように、第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢、第7音波ユニット(10G)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、境界下面(BP2)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL3)に関して互いに線対称をなす。第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢、第6音波ユニット(10F)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢とはそれぞれ、境界下面(BP2)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL4)に介して互いに線対称をなす。
【0064】
図14に示すように、第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第2音波ユニット(10B)の設置姿勢、第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢とはそれぞれ、第1境界側面(BP3)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL5)に関して互いに線対称をなす。第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第5音波ユニット(10E)の設置姿勢、第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢とはそれぞれ、第1境界側面(BP1)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL6)に関して互いに線対称をなす。
【0065】
図14に括弧書きで示すように、第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢、第7音波ユニット(10G)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第2境界側面(BP4)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL7)に関して互いに線対称をなす。第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢、第4音波ユニット(10D)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第2境界側面(BP4)を直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL8)に関して互いに線対称をなす。
【0066】
図15に示すように、第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢、第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第3境界側面(BP5)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL9)に関して互いに線対称をなす。第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第5音波ユニット(10E)の設置姿勢、第4音波ユニット(10D)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第3境界側面(BP5)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL10)に関して互いに線対称をなす。
【0067】
図15に括弧書きで示すように、第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第3音波ユニット(10C)の設置姿勢、第6音波ユニット(10F)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢とはそれぞれ、第4境界側面(BP6)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL11)に関して互いに線対称をなす。第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢、第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢とはそれぞれ、第4境界側面(BP6)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL12)に関して互いに線対称をなす。
【0068】
(3)第3制約条件
図13~
図16に示すように、互いに対向する2つの境界平面(BP)の外周上で互いに対応する位置関係にある一対の音波ユニット(10)は、それら2つの境界平面(BP)の間の中間位置に設定される仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して、送信素子(12)および受信素子(14)の位置関係が互いに同じとなる姿勢で設置される。
【0069】
当該一対の音波ユニット(10)の設置姿勢は、音波ユニット(10)のピッチ角についての傾斜方向が基準平面(RP1~RP3)に対して反対となる反転姿勢である。本例では、当該一対の音波ユニット(10)は、基準平面(RP1~RP3)に対して、送信素子(12)が相対的に離れ、受信素子(14)が相対的に近い設置姿勢とされる。当該一対の音波ユニット(10)は、基準平面(RP1~RP3)に対して、送信素子(12)が相対的に近く、受信素子(14)が相対的に離れる設置姿勢とされてもよい。
【0070】
第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)、第2音波ユニット(10B)と第6音波ユニット(10F)、第3音波ユニット(10C)と第7音波ユニット(10G)、第4音波ユニット(10D)と第8音波ユニット(10H)とはそれぞれ、基準平面(RP1)に対して、上記反転姿勢をとる。第1音波ユニット(10A)と第4音波ユニット(10D)、第2音波ユニット(10B)と第3音波ユニット(10C)、第5音波ユニット(10E)と第8音波ユニット(10H)、第6音波ユニット(10F)と第7音波ユニット(10G)とはそれぞれ、基準平面(RP2)に対して、上記反転姿勢をとる。第1音波ユニット(10A)と第2音波ユニット(10B)、第4音波ユニット(10D)と第3音波ユニット(10C)、第5音波ユニット(10E)と第6音波ユニット(10F)、第8音波ユニット(10H)と第7音波ユニット(10G)とはそれぞれ、基準平面(RP3)に対して、上記反転姿勢をとる。
【0071】
上述のように、第1~第8音波ユニット(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の設置姿勢に制約条件があることで、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間に形成される2つの伝搬経路(P)の長さである伝搬距離が等しくなる。伝搬距離は、音波の送受信を行う送信素子(12)と受信素子(14)との間の直線距離である。
【0072】
例えば、第1音波ユニット(10A)に係る各伝搬経路(P)について言えば、第1音波ユニット(10A)と第2音波ユニット(10B)との間に形成される2つの伝搬経路(P12,P21)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第3音波ユニット(10B)との間に形成される2つの伝搬経路(P13,P31)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第4音波ユニット(10D)との間に形成される2つの伝搬経路(P14,P41)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)との間に形成される2つの伝搬経路(P15,P51)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第6音波ユニット(10F)との間に形成される2つの伝搬経路(P16,P61)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第7音波ユニット(10G)との間に形成される2つの伝搬経路(P17,P71)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第8音波ユニット(10H)との間に形成される2つの伝搬経路(P18,P81)の伝搬距離はそれぞれ、互いに等しく、それら一対の音波ユニット(10)の間の距離(厳密には、一対の音波ユニット(10)の上記中央点(CP)の間の距離)と同じである。これらのことは、その他の第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)に係る各伝搬経路(Pmn)についても同様である。
【0073】
各音波ユニット(10)の設置角度は、当該音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される。音波の減衰量とは、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のうち一方の音波ユニット(10)から送信されてから他方の音波ユニット(10)が受信するまでに減衰する音圧レベルのことである。音波の減衰量は、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性による減衰、並びに伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて算出される。
【0074】
一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰は、音波の伝搬距離に応じて音波が減衰することである。音波ユニット(10)から送信された音波のエネルギーは当該音波ユニット(10)から離れるほど薄まり、送受信のペアをなす音波ユニット(10)で受信されるまでに音圧レベルが小さくなる。
図17に示すように、距離減衰による音波の減衰量は、音波の伝搬距離によって決まり、伝搬距離が長くなるに連れて増す。よって、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間の距離が長いほど、距離減衰による音波の減衰量が大きくなる。
【0075】
伝搬経路(P)に対する送信の指向性は、音波の送信角度(θ1)に応じて、音波の放射強度が変わることである。
図18に模式的に示すように、送信角度(θ1)は、伝搬経路(P)に対して送信指向軸(DA1)がなす角度である。送信の指向性による音波の減衰量は、送信素子(12)の指向特性に基づいて決まり、送信角度(θ1)が大きくなるに連れて増す。以下では、送信の指向性による音波の減衰量を「送信素子(12)の角度減衰」と称する。
【0076】
伝搬経路(P)に対する受信の指向性は、音波の受信角度(θ2)に応じて、音波の受信感度が変わることである。
図18に模式的に示すように、受信角度(θ2)は、伝搬経路(P)に対して受信指向軸(DA2)がなす角度である。受信の指向性による音波の減衰量は、受信素子(14)の指向特性に基づいて決まり、受信角度(θ2)が大きくなるに連れて増す。以下では、受信の指向性による音波の減衰量を「受信素子(14)の角度減衰」と称する。
【0077】
図19に、音波ユニット(10)の設置角度と、送信素子(12)の角度減衰、受信素子(14)の角度減衰および角度減衰合計との関係を例示する。ここでの音波ユニット(10)の設置角度は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のそれぞれの指向軸(DA)が伝搬経路(P)に対してなす角度である。また、角度減衰合計は、送信素子(12)の角度減衰と受信素子(14)の角度減衰とによる伝搬経路(P)でのトータルの角度減衰を意味する。
【0078】
図19に示すように、音波ユニット(10)の設置角度が大きくなるほど、送信素子(12)の角度減衰、および受信素子(14)の角度減衰がそれぞれ増す結果、
図20にも示すように、伝搬経路(P)の角度減衰合計が大きくなる。なお、
図19では、便宜上、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の設置角度が同じである場合を記載するが、実際には、送受信を行う一対の音波ユニット(10)において、送信指向軸(DA1)が伝搬経路(P)に対してなす送信角度(θ1)と、受信指向軸(DA2)が伝搬経路(P)に対してなす受信角度(θ2)とは、互いに異なる。
【0079】
伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量は、距離減衰と合成角度減衰とによる音波の全減衰量である。合成角度減衰については後述する。この全減衰量は、距離減衰による音波の減衰量と、合成角度減衰による音波の減衰量とに基づいて、対数計算により算出される。各音波ユニット(10)の設置角度は、当該音波ユニット(10)に係るいずれの伝搬経路(P)においても音波の全減衰量が所定値よりも小さくなるように設定される。ここでの所定値は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のいずれの組合せにおいても、伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える値(つまり、有効な音波の伝搬を行うために抑えるべき全減衰量の値)に設定される。
【0080】
このように設置姿勢が設定される複数の音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)が立方体形状などでない場合、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のいずれの組合せにおいても互いに正対しない場合がある。各音波ユニット(10)の設置姿勢は、上述した第1~第3制約条件により、いずれか1つの音波ユニット(10)の設置姿勢に従って変更される。例えば、第1音波ユニット(10A)の設置角度が変更されると、第1~第3の制約条件を満たすように第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の設置角度も変更される。
【0081】
〈座標計測部〉
座標計測部(20)は、屋内空間(IS)の形状に関する三次元座標と、各音波ユニット(10)の位置に関する三次元座標とを計測する。座標計測部(20)は、三次元レーザ計測装置により構成される。
【0082】
〈コントローラ〉
コントローラ(30)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリデバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。コントローラ(30)は、各音波ユニット(10)および座標計測部(20)と、無線または有線の通信線を介して接続される。コントローラ(30)の一部または全部は、音波ユニット(10)に設けられてもよいし、ネットワーク上のサーバに設けられてもよい。
【0083】
コントローラ(30)は、記憶部(32)および演算部(34)を有する。記憶部(32)は、座標計測部(20)により計測した三次元座標を記憶する。また、記憶部(32)は、複数の伝搬経路(P)と、これら各伝搬経路(P)における伝搬距離とを、互いに関連付けて記憶する。演算部(34)は、音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10)において、一方の音波ユニット(10)が音波を送信してから、その音波を他方の音波ユニット(10)が受信するまでの伝搬時間を測定する。演算部(34)は、記憶部(32)に記憶されたデータと、各伝搬経路(P)の音波の伝搬時間とに基づいて、公知の手法により被測定空間(MS)の各測定平面(MP)での風速および空気の温度を求める。
【0084】
このように、環境状態測定装置(1)は、音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10間を伝搬する音波の伝搬特性(本例では伝搬時間)に基づいて、被測定空間(MS)の風速や空気の温度といった環境状態を測定する。
【0085】
-環境状態測定装置のセッティング方法-
上記構成の環境状態測定装置(1)をセッティングする方法について説明する。環境状態測定装置(1)のセッティングでは、複数の音波ユニット(10)を、互いに離間した分散位置に設置することで、音波ユニット(10)が外周上に位置する複数の境界平面(BP)を規定し、それら複数の境界平面(BP)により被測定空間(MS)を画定する。
【0086】
この環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、少なくとも一部の音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて、音波の全減衰量を算出する。そして、音波ユニット(10)の設置姿勢における指向軸(DA)が当該音波ユニット(10)の位置する隅部をなす各境界平面(BP)に対して傾斜する角度を、伝搬経路(P)ごとの音波の全減衰量に基づいて決定する。
【0087】
そうした各音波ユニット(10)の設置角度の決定は、コントローラ(30)が、作業者の入力した測定対象とする被測定空間(MS)の形状およびサイズと、音波ユニット(10)の数および設置位置との各データに基づいて行う。
【0088】
具体的には、
図21に示すように、まず、ステップST1において、作業者が被測定空間(MS)(同空間(MS)の形状およびサイズ)を決定する。本例では、縦10m、横10m、高さ2mの直方形状の空間を被測定空間(MS)とする。作業者は、決定した被測定空間(MS)の形状およびサイズのデータをコントローラ(30)に入力する。
【0089】
次に、ステップST2では、ユーザが、ステップST1で決定した被測定空間(MS)に対して設置する音波ユニット(10)の数および設置位置を決定する。本例では、音波ユニット()の数を8つとし、音波ユニット(10)の設置位置を被測定空間(MS)の8つの隅部のそれぞれとする。作業者は、決定した音波ユニット(10)の数および設置位置のデータをコントローラ(30)に入力する。
【0090】
次に、ステップST3では、コントローラ(30)が、ステップST2で数および設置位置を決定した複数の音波ユニット(10)について、送受信を行う一対の音波ユニット(10)ごとに、音波ユニット(10)の間の距離を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の距離については、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された音波ユニット(10)の間の距離を記憶する。
【0091】
次に、ステップST4では、コントローラ(30)が、記憶部(32)に記憶された送受信を行う一対の音波ユニット(10)ごとの音波ユニット(10)の間の距離を、各々対応する伝搬経路(P)の伝搬距離として、伝搬経路(P)ごとに距離減衰による音波の減衰量を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の伝搬経路(P)ごとの距離減衰による音波の減衰量は、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された各伝搬経路(P)での距離減衰による音波の減衰量を記憶する。
【0092】
次に、ステップST5では、コントローラ(30)が、各音波ユニット(10)の初期設定角度を決定する。本例における各音波ユニット(10)の初期設定角度は、各々の指向軸(DA)を被測定空間(MS)の中心に向ける姿勢での角度である。よって、被測定空間(MS)の対角線上に位置する一対の音波ユニット(10)は、初期設定角度の姿勢あるときには、互いに正対する。
【0093】
次に、ステップST6では、コントローラ(30)が、各伝搬経路(P)の合成角度減衰による音波の減衰量を算出する。このとき、各音波ユニット(10)の設置角度(指向軸(DA)の向き)は既知である。ステップST6において、まず、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)において、音波ユニット(10)の送信指向軸(DA1)が当該伝搬経路(P)に対してなす送信角度と、音波ユニット(10)の受信指向軸(DA2)が当該伝搬経路(P)に対してなす受信角度とを算出する。
【0094】
各伝搬経路(P)に対する送信角度および受信角度は、当該伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の合成角度(Ac)に相当する。
図16に示すように、一対の音波ユニット(10)の合成角度(Ac)は、それら一対の音波ユニット(10)の間の2つの伝搬経路(P)の中間に引かれる合成線(CL)に対して、各音波ユニット(10)の指向軸(DA)がなす角度である。合成線(CL)は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の中央点(CP)同士を結んだラインとして規定される。
【0095】
合成角度(Ac)は、水平方向および垂直方向に対して傾斜した角度である。このため、合成角度(Ac)は、
図13~
図15に示すように、水平方向の合成角度(a1)と、垂直方向の合成角度(a2)とに分けて取り扱うことができる。水平方向の合成角度(a1)は、対象とする指向軸(DA)と合成線(CL)とを水平面上で正面視したときの角度である。垂直方向の合成角度(a2)は、対象とする指向軸(DA)と合成線(CL)とを垂直面上で正面視したときの角度である。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間における水平方向の合成角度(a1)および垂直方向の合成角度(a2)はそれぞれ、
図22に示すように求められる。
【0096】
コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る水平方向の合成角度(a1)と垂直方向の合成角度(a2)のそれぞれについて、当該伝搬経路(P)での送信素子(12)の角度減衰による音波の減衰量である受信減衰量を、送信素子(12)の指向特性に基づいて算出する。また、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る水平方向の合成角度(a1)と垂直方向の合成角度(a2)のそれぞれについて、当該伝搬経路(P)での受信素子(14)の角度減衰による音波の減衰量である受信減衰量を、受信素子(14)の指向特性に基づいて算出する。
【0097】
さらに、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る水平方向の合成角度(a1)について、当該伝搬経路(P)での音波の送信減衰量と音波の受信減衰量とを足し合わせることで、水平方向の角度減衰合計を算出する。また、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る垂直方向の合成角度(a2)について、当該伝搬経路(P)での音波の送信減衰量と音波の受信減衰量とを足し合わせることで、垂直方向の角度減衰合計を算出する。
【0098】
そして、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)について、水平方向の角度減衰合計と垂直方向の角度減衰合計とを対数計算により合成することで、合成角度減衰による音波の減衰量を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の伝搬経路(P)ごとの水平方向の角度減衰合計、垂直方向の角度減衰合計、および合成角度減衰はそれぞれ、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された各伝搬経路(P)での合成角度減衰による音波の減衰量を記憶する。
【0099】
次に、ステップST7では、コントローラ(30)が、各々記憶部(32)に記憶された、各伝搬経路(P)での距離減衰による音波の減衰量と、各伝搬経路(P)での合成角度減衰による音波の減衰量とに基づいて、伝搬経路(P)ごとに音波の全減衰量を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の伝搬経路(P)ごとの全減衰量は、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された各伝搬経路(P)での音波の全減衰量を記憶する。
【0100】
次に、ステップST8では、コントローラ(30)が、記憶部(32)に記憶された各伝搬経路(P)での音波の全減衰量が所定値よりも小さいか否かの条件を判定する。このステップST8で全ての伝搬経路(P)での音波の全減衰量が所定値よりも小さいと判定した場合(YESの場合)、ステップST10に進み、各音波ユニット(10)の設置角度が決定して、各音波ユニット(10)の設置角度の設定を終了する。
【0101】
一方、ステップST8で一部の伝搬経路(P)でも音波の全減衰量が所定値以上である場合、ステップST9に進む。ステップST9では、音波の全減衰量が所定値以上である問題の伝搬経路(P)に係る各音波ユニット(10)の設置角度を変更する。ここで、各音波ユニット(10)の設置角度の変更は、対象とする伝搬経路(P)側に指向軸(DA)を傾ける方向に行われる。
【0102】
ステップST9では、変更対象の音波ユニット(10)に第1~第3制約条件で関わる各音波ユニット(10)の設置角度も、第1~第3制約条件に従って変更される。本例では、1つの伝搬経路(P)に係る音波ユニット(10)の設置角度を変更する場合、全ての音波ユニット(10)の設置角度を変更する。音波ユニット(10)の設置角度は、初期設定角度から所定角度のみずらす変更でもよいし、問題の伝搬経路(P)に対して音波の全減衰量が改善する所定の角度とするように決め打ちで変更してもよい。
【0103】
例えば、ステップST8で判定基準とする所定値として、32dBが設定されたとする。この場合、
図22に示すように、初期設定角度にある複数の音波ユニット(10)のうち第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)との間の各伝搬経路(P)についての音波の全減衰量が所定値以上である。また、第1音波ユニット(10A)および第5音波ユニット(10E)と同様な位置関係にある、第2音波ユニット(10B)と第6音波ユニット(10F)との間の各伝搬経路(P)、第3音波ユニット(10C)と第7音波ユニット(10G)との間の各伝搬経路(P)、第4音波ユニット(10D)と第8音波ユニット(10H)との間の各伝搬経路(P)についての音波の全減衰量も所定値以上である。そのため、コントローラ(30)は、ステップST8でNOと判定し、ステップST9に進む。
【0104】
そして、
図22に示す例の場合、ステップST9において、例えば、第1音波ユニット(10A)と第3音波ユニット(10C)との間の垂直方向の合成角度(a2)が8°から30°となるように各音波ユニット(10)の設置角度(ピッチ角)を決め打ちで変更する。これにより、
図24および
図25に示すように、第1音波ユニット(10A)および第5音波ユニット(10E)の設置姿勢、第2音波ユニット(10B)および第6音波ユニット(10F)の設置姿勢、第3音波ユニット(10C)および第7音波ユニット(10G)の設置姿勢は、それら両音波ユニット(10)の間の伝搬経路(P)側に指向軸(DA)を傾け、互いの指向軸(DA)が交差する姿勢とされる。このことは、図示しない第4音波ユニット(10D)および第8音波ユニット(10H)の設置姿勢についても、同様とされる。
【0105】
ステップST9で音波ユニット(10)の設置角度の変更を終えると、ステップST6に戻り、それ以降のステップST6,ST7,ST8,ST9をステップST8での判定条件を満たすまで行う。そして、ステップST8での判定条件を満たした場合、上述の通り、ステップST10に進み、各音波ユニット(10)の設置角度を決定して、各音波ユニット(10)の設置角度の設定を終了する。
【0106】
図22に示す例について、各音波ユニット(10)の設置角度を変更した後の第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の間における垂直方向の合成角度(a2)は、
図23に下線を付して示すように再び求められる。そして、ステップST6,ST7において、各伝搬経路(P)での合成角度減衰による音波の減衰量と、音波の全減衰量を再計算する。
【0107】
第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の各伝搬経路(P)についての合成角度減衰による音波の減衰量および全減衰量は、
図23に下線を付して示すように再計算される。この場合、第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)の間の各伝搬経路(P)での全減衰量は、-30.3dBであるので、ステップST8でYESと判定し、各音波ユニット(10)の設置角度を決定する。
【0108】
環境状態測定装置(1)のセッティングでは、以上のようにして決定された各音波ユニット(10)の設置角度に従って、作業者が、複数の音波ユニット(10)を被対象空間(MS)の周囲における所定の分散位置に設置する。また、環境状態測定装置(1)のセッティングは、複数の音波ユニット(10)を一旦は初期設定角度で設置した後、各音波ユニット(10)の設置角度を調整することで行ってもよい。
【0109】
-実施形態の特徴-
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、複数の音波ユニット(10)のそれぞれが、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、各音波ユニット(10)の指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する各境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢である。それにより、互いに対向しない一対の音波ユニット(10)の間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制できる。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0110】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、被測定空間(MS)の各隅部に位置する音波ユニット(10)が、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、被測定空間(MS)の隅部を形成する複数の境界平面(BP)のそれぞれに対して、指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢である。このことは、三次元的に配置された音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制するのに有利である。
【0111】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、音波ユニット(10)の設置角度が、当該音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される。伝搬経路(P)における音波の減衰量が大きいと、当該伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行えない。よって、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲(所定値よりも小さい範囲)に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。
【0112】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、音波の減衰量が、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて算出される。伝搬経路(P)を伝搬する音波は、当該伝搬経路(P)に対する送信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に対する受信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰が大きいほど減衰する。このように音波の減衰量と関係の深い、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、当該伝搬経路(P)での音波の減衰量を精度よく算出できる。
【0113】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、同一の境界平面(BP)の外周上に位置する複数の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該同一の境界平面(BP)に対して指向軸(DA)のなす角度を各音波ユニット(10)で同じとするように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0114】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、同一の境界平面(BP)の外周上で被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、当該一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称の関係となるように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0115】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、互いに対向する一対の境界平面(BP)の外周上で互いに対応する位置関係にある2つの音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(14)を別体として備える。それら2つの音波ユニット(10)における送信素子(12)および受信素子(14)は、仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して位置関係が同じとされる。それにより、一対の音波ユニット(10)の間に形成される別々の伝搬経路(P)の長さの差を小さくできる。このことは、環境状態測定装置(1)による測定を簡略化するのに有利である。
【0116】
この実施形態の環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、各音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および当該伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出する。伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、伝搬経路(P)での音波の全減衰量を精度よく算出できる。
【0117】
そして、この実施形態の環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、各音波ユニット(10)の設置姿勢における角度を決定する。当該設置角度は、音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部をなす各境界平面(BP)に対して指向軸(DA)が傾斜する角度であり、音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定される。このとき、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲(所定値よりも小さい範囲)に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0118】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0119】
音波ユニット(10)の数は、8つに限らず、9つ以上であってもよい。例えば、各測定面(MP)で環境状態の測定についての分解能を高くしたい場合、
図26に示すように、各測定面(BP)の外周上に位置する音波ユニット(10)の数を増やせばよい。また、音波ユニット(10)の数は、7つ以下であってもよく、被測定空間(MS)の形状やサイズに応じて適宜変更される。
【0120】
複数の音波ユニット(10)のうち一部の音波ユニット(10)のみが、当該音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部をなす各境界平面(BP)に対して指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置されてもよい。要は、全ての伝搬経路(P)において有効な音波の伝搬を行えるように、少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させたものであればよい。
【0121】
音波ユニット(10)において、送信素子(12)の送信面と受信素子(14)の受信面とが正面側に臨んでいれば、送信指向軸(DA1)および受信指向軸(DA1)は、互いに異なる方向に向いてもよい。この場合、音波ユニット(10)は、送信指向軸(DA1)または受信指向軸(DA2)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して傾斜させた姿勢に設置される。
【0122】
音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(14)を別体としてではなく、送信素子(12)および受信素子(14)の機能を併せ持つ一体の送受信素子を備えてもよい。
【0123】
複数の音波ユニット(10)には、送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)とが別ユニットとして含まれてもよい。例えば、複数の音波ユニット(10)は、送信機能のみを有する複数の送信ユニット(10S)と、受信機能のみを有する複数の受信ユニット(10R)とで構成されてもよい。
【0124】
複数の音波ユニット(10)には、送信ユニット(10S)および受信ユニット(10R)を兼ねる音波ユニット(10)と、送信ユニット(10S)としてのみ機能する音波ユニット(10)と、受信ユニット(10R)としてのみ機能する音波ユニット(10)とが混在してもよい。
【0125】
環境状態測定装置(1)は、被測定空間(MS)の風速および空気の温度以外の環境状態を測定してもよい。例えば、環境状態測定装置(1)は、被測定空間(MS)の空気の圧力を環境状態として測定してもよい。
【0126】
環境状態測定装置(1)において、複数の音波ユニット(10)の設置姿勢には、第1~第3制約条件の少なくとも1つが付けられなくてもよい。各音波ユニット(10)の設置姿勢は、全ての伝搬経路(P)での音波の全減衰量が所定値よりも小さくなるように、別々に独立して決定されてもよい。
【0127】
環境状態測定装置(1)のセッティングにおいて、各音波ユニット(10)の設置角度の決定は、コントローラ(30)とは別個に準備されたコンピュータが行ってもよいし、ネットワーク上のサーバで行われてもよい。
【0128】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0129】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上説明したように、本開示は、環境状態測定装置および環境状態測定装置のセッティング方法について有用である。
【符号の説明】
【0131】
BP 境界平面
BP1 境界上面(第1境界平面)
BP2 境界下面(第2境界平面)
BP3 第1境界側面(第1境界平面)
BP4 第2境界側面(第2境界平面)
BP5 第3境界側面(第1境界平面)
BP6 第4境界側面(第2境界平面)
DA 指向軸
MS 被測定空間
P 伝搬経路
RL1~RL12 基準線
RP1~RP3 基準面
1 環境状態測定装置
10 音波ユニット
10S 送信ユニット
10R 受信ユニット
12 送信素子
14 受信素子
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境状態測定装置および環境状態測定装置のセッティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、音波により空間の環境状態を測定する装置が知られる。そうした環境状態測定装置の一例として、被測定空間の風速分布を計測する風速分布計測装置が特許文献1に開示される。特許文献1の風速分布計測装置は、音波を送信する複数の送信機と、音波を受信する複数の受信機とを備える。
【0003】
この風速分布計測装置では、送信機から受信機に至る伝搬経路ごとに、送信機からの直接音と、直接音が受信機に反射して再び送信機で反射した反射音とを利用して、送信機から受信機に伝搬する音波の伝搬時間を求め、その音波の伝搬時間に基づき、送信機と受信機との間の風速を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の風速分布計測装置では、伝搬経路における音波の伝搬時間を精度よく算出すべく、送信機を受信機と対向して配置させる。また、一般的に、指向性をもって音波を送信する送信機と、指向性をもって音波を受信する受信機とを使用する場合、両者の間に伝搬経路を形成する送信機と受信機は、互いに対向して配置される。
【0006】
しかし、被測定空間の環境状態を三次元的に測定する場合、各送信機および各受信機の設置姿勢を一様に、特定の送信機と特定の受信機とが被測定空間を画定する境界平面と平行な方向において互いに対向する姿勢に決定すると、送信機とその送信機と対向しない受信機との各向きおよび位置関係によっては、それら送信機と受信機との間の伝搬経路において、有効な音波の伝搬が行われず、データの欠損を生じる。一部の伝搬経路にでもデータの欠損を生じると、環境状態の算出に用いるデータが不足するため、測定結果の信頼性が低下する。
【0007】
本開示の目的は、環境状態測定装置による測定結果の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、環境状態測定装置(1)を対象とする。第1の態様の環境状態測定装置(1)は、被測定空間(MS)の周囲に設置される複数の音波ユニット(10)を備える。前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)を仮想的に画定する複数の境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置する。前記複数の音波ユニット(10)には、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)とが含まれる。当該環境状態測定装置(1)は、前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間を伝搬する音波の伝搬特性に基づいて、前記被測定空間(MS)の環境状態を測定する。そして、少なくとも一部の前記音波ユニット(10)は、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。
【0009】
この第1の態様では、少なくとも一部の音波ユニット(10)が、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、音波ユニット(10)における送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢である。それにより、互いに対向しない送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制できる。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様の環境状態測定装置(1)において、前記音波ユニット(10)が、前記被測定空間(MS)の隅部に位置する、環境状態測定装置(1)である。この環境状態測定装置(1)において、前記被測定空間(MS)の隅部に位置する前記音波ユニット(10)は、当該隅部を形成する複数の前記境界平面(BP)のそれぞれに対して、前記指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。
【0011】
この第2の態様では、被測定空間(MS)の隅部に位置する音波ユニット(10)が、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、当該被測定空間(MS)の隅部を形成する複数の境界平面(BP)のそれぞれに対して、指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢である。このことは、三次元的に配置された送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制するのに有利である。
【0012】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様の環境状態測定装置(1)において、前記所定の角度が、当該角度で設置される前記音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される、環境状態測定装置(1)である。
【0013】
この第3の態様では、音波ユニット(10)の設置角度が、当該音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される。伝搬経路(P)における音波の減衰量が大きいと、当該伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行えない。よって、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。
【0014】
本開示の第4の態様は、第3の態様の環境状態測定装置(1)において、前記音波の減衰量が、前記伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに当該伝搬経路(P)に係る前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて算出される、環境状態測定装置(1)である。
【0015】
この第4の態様では、音波の減衰量が、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて算出される。所定の伝搬経路(P)を伝搬する音波は、当該伝搬経路(P)に対する送信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に対する受信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に係る送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の距離減衰が大きいほど減衰する。このように音波の減衰量と関係の深い、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、当該伝搬経路(P)での音波の減衰量を精度よく算出できる。
【0016】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つの環境状態測定装置(1)において、同一の前記境界平面(BP)の外周上に位置する複数の前記音波ユニット(10)について、前記指向軸(DA)が当該同一の境界平面(BP)に対してなす角度が、互いに同じ角度に設定される、環境状態測定装置(1)である。
【0017】
この第5の態様では、同一の境界平面(BP)の外周上に位置する複数の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該同一の境界平面(BP)に対して指向軸(DA)のなす角度を各音波ユニット(10)で同じとするように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0018】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つの環境状態測定装置(1)において、前記音波ユニット(10)が、前記被測定空間(MS)の隅部に位置する、環境状態測定装置(1)である。この環境状態測定装置(1)において、同一の前記境界平面(BP)の外周上で前記被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の前記音波ユニット(10)は、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、当該一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称となる姿勢で設置される。
【0019】
この第6の態様では、同一の境界平面(BP)の外周上で被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の音波ユニット(10)の設置姿勢が、所定の線対称の関係となるように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0020】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つの環境状態測定装置(1)において、前記複数の境界平面(BP)が、互いに対向する第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および第2境界平面(BP2,BP4,BP6)を含む、環境状態測定装置(1)である。この環境状態測定装置(1)において、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)の互いに対応する位置関係にある一対の前記音波ユニット(10)はそれぞれ、前記送信ユニット(10S)の機能を実現する送信素子(12)と、前記受信ユニット(10R)の機能を実現する受信素子(14)と、を別体として備える。そして、当該一対の音波ユニット(10)は、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)と前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)との間の中間位置に設定される仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して前記送信素子(12)および前記受信素子(14)の位置関係が互いに同じとなる姿勢で設置される。
【0021】
この第7の態様では、第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および第2境界平面(BP2,BP4,BP6)において互いに対応する位置関係にある一対の音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(13)を別体として備える。一方の音波ユニット(10)の送信素子(12)と他方の音波ユニット(10)の受信素子(14)、および一方の音波ユニット(10)の受信素子(14)と他方の音波ユニット(10)の送信素子(12)とは、互いの間に別々の伝搬経路(P)を形成する。それら一対の音波ユニット(10)における送信素子(12)および受信素子(13)は、仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して位置関係が同じとされる。それにより、一対の音波ユニット(10)の間に形成される別々の伝搬経路(P)の長さの差を小さくできる。このことは、環境状態測定装置(1)による測定を簡略化するのに有利である。
【0022】
本開示の第8の態様は、環境状態測定装置(1)のセッティング方法を対象とする。第8の態様の環境状態測定装置(1)のセッティング方法は、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)と、を含む複数の音波ユニット(10)を、互いに離間した位置に設置することで、前記音波ユニット(10)が外周上に位置する複数の境界平面(BP)により被測定空間(MS)を画定する方法である。この環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、少なくとも一部の前記音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出する。そして、前記少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢における、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)が当該音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して傾斜する角度を、前記伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定する。
【0023】
この第8の態様では、少なくとも一部の音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出する。伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、伝搬経路(P)での音波の減衰量を精度よく算出できる。そして、当該セッティング方法では、少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢における角度を決定する。当該設置角度は、音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して指向軸(DA)が傾斜する角度であり、音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定される。このとき、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態の環境状態測定装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、環境状態測定装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、音波ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、送信素子の周波数特性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、送信素子の指向特性を示すチャートである。
【
図6】
図6は、受信素子の周波数特性を示すグラフである。
【
図7】
図7は、受信素子の指向特性を示すチャートである。
【
図8】
図8は、被測定空間に対する複数の音波ユニットの設置図である。
【
図9】
図9は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を鉛直方向から示す平面図である。
図9では、境界上面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示し、括弧書きで境界下面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図10】
図10は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を一の側方から示す第1側面図である。
図10では、第3境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示し、括弧書きで第4境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図11】
図11は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を他の側方から示す第2側面図である。
図11では、第5境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示し、括弧書きで第6境界側面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図12】
図12は、複数の音波ユニットの設置状態および伝搬経路の一例を第1区画垂直面の正面視方向から示す第3側面図である。
図12では、第1区画垂直面の外周上に位置する音波ユニットと伝搬経路とを示す。
【
図13】
図13は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に鉛直方向から示す平面図である。
図13では、境界上面の外周上に位置する音波ユニットと指向軸とを示し、括弧書きで境界下面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図14】
図14は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に一の側方から示す第1側面図である。
図14では、第3境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示し、括弧書きで第4境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図15】
図15は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に他の側方から示す第2側面図である。
図15では、第5境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示し、括弧書きで第6境界側面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図16】
図16は、複数の音波ユニットの設置状態の一例を指向軸と共に第1区画垂直面の正面視方向から示す第3側面図である。
図16では、第1区画垂直面の外周上に位置する音波ユニットとその指向軸とを示す。
【
図17】
図17は、音波ユニットの距離減衰特性を示すグラフである。
【
図18】
図18は、送信角度と受信角度について説明するための概念図である。
【
図19】
図19は、音波ユニットの設置角度と角度減衰との関係を例示する表である。
【
図20】
図20は、音波ユニットの設置角度と角度減衰合計との関係を例示するグラフである。
【
図21】
図21は、環境状態測定装置のセッティング方法における要部を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、各音波ユニットが初期設定角度であるときの第1音波ユニットに係る各伝搬経路での音波の全減衰量とその関連情報を例示する表である。
【
図23】
図23は、各音波ユニットの角度変更後における第1音波ユニットの各伝搬経路での音波の全減衰量およびその関連情報を例示する表である。
【
図26】
図26は、変形例の環境状態測定装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、本開示の技術を概念的に説明するためのものである。よって、図面では、本開示の技術の理解を容易にするために寸法、比または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。
【0026】
《実施形態》
-環境状態測定装置の構成-
この実施形態の環境状態測定装置(1)は、音波を用いて被測定空間(MS)の環境状態を測定する装置である。被測定空間(MS)は、例えば、各種施設や住宅などの屋内空間(IS)に設定される。環境状態には、被測定空間(MS)における風速および空気の温度が含まれる。屋内空間(IS)には、空気処理装置が設けられてもよい。空気処理装置は、例えば、換気装置、空気清浄機、空気調和機などである。
【0027】
〈被測定空間〉
図1に示すように、被測定空間(MS)は、複数の境界平面(BP)によって仮想的に画定される。本例の被測定空間(MS)は、直方形状の三次元空間である。この被測定空間(MS)を画定する境界平面(BP)は、6つの境界平面(BP)で構成される。6つの境界平面(BP)は、境界上面(BP1)と、境界下面(BP2)と、第1境界側面(BP3)と、第2境界側面(BP4)と、第3境界側面(BP5)と、第4境界側面(BP6)とである。
【0028】
境界上面(BP1)は、被測定空間(MS)の上側境界を画定する。境界下面(BP2)は、被測定空間(MS)の下側境界を画定する。境界上面(BP1)と境界下面(BP2)とは、それぞれ水平方向に広がる矩形状の仮想面であり、上下方向において互いに対向する。境界上面(BP1)は第1境界平面の一例であり、境界下面(BP2)は第2境界平面の一例である。境界上面(BP1)の各頂点と境界下面(BP2)の各頂点とは、上下方向に互いに対応する位置にあり、平面視で互いに重なり合う。
【0029】
第1境界側面(BP3)、第2境界側面(BP4)、第3境界側面(BP5)および第4境界側面(BP6)はそれぞれ、鉛直方向に広がる矩形状の仮想面であり、被測定空間(MS)の外周境界を画定する。第1境界側面(BP3)と第2境界側面(BP4)とは、水平方向において互いに対向する。第1境界側面(BP3)は第1境界平面の一例であり、第2境界側面(BP4)は第2境界平面の一例である。第3境界側面(BP5)と第4境界側面(BP6)とは、それぞれ第1境界側面(BP3)および第2境界側面(BP4)と直角をなし、水平方向において互いに対向する。第3境界側面(BP5)は第1境界平面の一例であり、第4境界側面(BP6)は第2境界平面の一例である。
【0030】
境界上面(BP1)と第1境界側面(BP3)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第1隅部(C1)を形成する。境界上面(BP1)と第1境界側面(BP3)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して第2隅部(C2)を形成する。境界上面(BP1)と第2境界側面(BP4)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第3隅部(C3)を形成する。境界上面(BP1)と第2境界側面(BP4)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第4隅部(C4)を形成する。
【0031】
境界下面(BP2)と第1境界側面(BP3)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第5隅部(C5)を形成する。境界下面(BP2)と第1境界側面(BP3)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して第6隅部(C6)を形成する。境界下面(BP2)と第2境界側面(BP4)と第4境界側面(BP6)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第7隅部(C7)を形成する。境界下面(BP2)と第2境界側面(BP4)と第3境界側面(BP5)とは、互いに隣り合い、頂点を共有して被測定空間(MS)の第8隅部(C8)を形成する。
【0032】
第1隅部(C1)と第3隅部(C3)、第2隅部(C2)と第4隅部(C4)とはそれぞれ、境界上面(BP1)において互いに対角の位置関係にある。第5隅部(C5)と第7隅部(C7)、第6隅部(C6)と第8隅部(C8)とはそれぞれ、境界下面(BP2)において互いに対角の位置関係にある。被測定空間(MS)は、第1区画垂直面(VP1)と第2区画垂直面(VP2)とにより仮想的に仕切られる。第1区画垂直面(VP1)および第2区画垂直面(VP2)は、それぞれ鉛直方向に広がる矩形状の仮想面であり、互いに直交する。
【0033】
第1区画垂直面(VP1)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点と、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点とを結んでなる。第1区画垂直面(VP1)は、被測定空間(MS)を一の対角方向に分断するように設定される。
【0034】
第2区画垂直面(VP2)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点と、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)で共有する頂点と、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)で共有する頂点とを結んでなる。第2区画垂直面(VP2)は、被測定空間(MS)を他の対角方向に分断するように設定される。
【0035】
被測定空間(MS)における境界上面(BP1)、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)、第2境界側面(BP4)、第3境界側面(BP5)、第4境界側面(BP6)、第1区画垂直面(VP1)および第2区画垂直面(VP2)はそれぞれ、環境状態が測定される測定平面(MP)を構成する。
【0036】
〈環境状態測定装置〉
図2に示すように、環境状態測定装置(1)は、複数の音波ユニット(10)と、座標計測部(20)と、コントローラ(30)とを備える。
【0037】
〈音波ユニット〉
複数の音波ユニット(10)は、8つの音波ユニット(10)で構成される。8つの音波ユニット(10)は、第1音波ユニット(10A)と、第2音波ユニット(10B)と、第3音波ユニット(10C)と、第4音波ユニット(10D)と、第5音波ユニット(10E)と、第6音波ユニット(10F)と、第7音波ユニット(10G)と、第8音波ユニット(10H)とである。以下では、第1~第8音波ユニット(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)を区別しない場合、単に「音波ユニット(10)」と称する。
【0038】
各音波ユニット(10)は、内蔵したバッテリーで駆動し、Wi-Fi(登録商標)や赤外線通信といった無線通信機能を有する。8つの音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)の周囲において互いに間隔をあけた分散位置に設置される。音波ユニット(10)は、6つの境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置する。
図8に示すように、本例の音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)の各隅部に配置される。
【0039】
具体的には、第1音波ユニット(10A)は被測定空間(MS)の第1隅部(C1)に、第2音波ユニット(10B)は被測定空間(MS)の第2隅部(C2)に、第3音波ユニット(10C)は被測定空間(MS)の第3隅部(C3)に、第4音波ユニット(10D)は被測定空間(MS)の第4隅部(C4)に、第5音波ユニット(10E)は被測定空間(MS)の第5隅部(C5)に、第6音波ユニット(10F)は被測定空間(MS)の第6隅部(C6)に、第7音波ユニット(10G)は被測定空間(MS)の第7隅部(C7)に、第8音波ユニット(10H)は被測定空間(MS)の第8隅部(C8)にそれぞれ配置される。
【0040】
図示しないが、各音波ユニット(10)は、自立式の支持体により支持される。各支持体は、鉛直方向に延びる。各支持体には、支持する音波ユニット(10)の高さを調節する高さ調節機構が設けられる。例えば、第1~第4隅部(C1,C2,C3,C4)に配置される各音波ユニット(10)の高さ、第5~第8隅部(C5,C6,C7,C8)に配置される音波ユニット(10)の高さはそれぞれ、高さ調節機構により同じ高さ位置に設定される。また、支持体には、音波ユニット(10)の設置角度を調節する角度調節機構が設けられる。角度調節機構は、音波ユニット(10)のロール角、ピッチ角およびヨー角のうち少なくともピッチ角およびヨー角を調節可能に構成される。
【0041】
図3に示すように、音波ユニット(10)には、ロール軸(A1)、ピッチ軸(A2)およびヨー軸(A3)が定められる。ロール軸(A1)は、音波ユニット(10)の中心を前後方向に通る軸線である。ピッチ軸(A2)は、ロール軸(A1)に直交し、音波ユニット(10)の中心を幅方向に通る軸線である。ヨー軸(A3)は、ロール軸(A1)およびピッチ軸(A2)に直交し、音波ユニット(10)の中心を高さ方向に通る軸線である。各音波ユニット(10)の設置姿勢は、ロール軸(A1)回りの回転角(ロール角)、ピッチ軸(A2)回りの回転角(ピッチ角)、およびヨー軸(A3)回りの回転角(ヨー角)により設定される。
【0042】
8つの音波ユニット(10)には、音波を送信する送信ユニット(10S)と、音波を受信する受信ユニット(10R)とが含まれる。本例の各音波ユニット(10)は、送信ユニット(10S)および受信ユニット(10R)の両方を兼ねる。各音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(14)を別体として備える。送信素子(12)および受信素子(14)は、音波ユニット(10)を正面視したときに、当該音波ユニット(10)の前面におけるロール軸(A1)が交差する中央点(CP)に対してヨー軸(A3)に沿う方向に等距離の位置に設けられる。
【0043】
第1音波ユニット(10A)は、第1送信素子(12a)および第1受信素子(14a)を有する。第2音波ユニット(10B)は、第2送信素子(12b)および第2受信素子(14b)を有する。第3音波ユニット(10C)は、第3送信素子(12c)および第3受信素子(14c)を有する。第4音波ユニット(10D)は、第4送信素子(12d)および第4受信素子(14d)を有する。第5音波ユニット(10E)は、第5送信素子(12e)および第5受信素子(14e)を有する。第6音波ユニット(10F)は、第6送信素子(12f)および第6受信素子(14f)を有する。第7音波ユニット(10G)は、第7送信素子(12g)および第7受信素子(14g)を有する。第8音波ユニット(10H)は、第8送信素子(12h)および第8受信素子(14h)を有する。以下では、第1~第8送信素子(12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h)を区別しない場合、単に「送信素子(12)」と称し、第1~第8受信素子(14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14h)を区別しない場合、単に「受信素子(14)」と称する。
【0044】
送信素子(12)は、送信ユニット(10S)の機能(音波の送信機能)を実現する。本例の送信素子(12)は、
図4に示すような周波数特性を示し、40kHzにピーク周波数を持ち、そのピーク周波数から低い側および高い側になるに連れて音圧レベルが減少する山形の特性を有する。送信素子(12)は、有指向性に構成される。有指向性の送信素子(12)は、所定の角度範囲のみに指向性をもって音波を送信する。本例の送信素子(12)は、
図5に示すような指向特性を有する。
【0045】
図5では、送信素子(12)が送信する音波の放射角度と、放射角度ごとの送信強度との関係を示す。送信素子(12)は、音波を送信する送信面の法線方向(0°)へ出射する音波の送信強度が最大であり、放射角度が大きくなるほど送信強度が小さくなる(つまり、音波の減衰量が大きくなる)ような送信指向性を呈する。送信素子(12)は、送信の最大強度(最大の送信出力)を示す送信指向軸(DA1)を有する。本例の送信素子(12)は、送信指向軸(DA1)を中心とした約90°に広がる角度範囲を指向角とする。
【0046】
受信素子(14)は、受信ユニット(10R)の機能(音波の受信機能)を実現する。本例の受信素子(14)は、
図6に示すような周波数特性を示し、40kHzにピーク周波数を持ち、そのピーク周波数から低い側および高い側になるに連れて感度が減少する山形の特性を有する。受信素子(14)は、有指向性に構成される。有指向性の受信素子(14)は、所定の角度範囲のみで指向性をもって音波を受信する。本例の受信素子(14)は、
図7に示すような指向特性を有する。
【0047】
図7では、受信素子(14)が受信する音波の入射角度と、入射角度ごとの受信感度との関係を示す。受信素子(14)は、音波を受信する受信面の法線方向(0°)から入射する音波の受信感度が最大であり、入射角度が大きくなるほど受信感度が小さくなる(つまり、音波の減衰量が大きくなる)ような受信指向性を呈する。受信素子(14)は、受信の最大強度(最大の受信感度)を示す受信指向軸(DA2)を有する。本例の受信素子(14)は、受信指向軸(DA1)を中心とした約90°に広がる角度範囲を指向角とする。
【0048】
図3に示すように、送信素子(12)の送信面および受信素子(14)の受信面は、各音波ユニット(10)の同一面に位置する。本例の各音波ユニット(10)において、送信指向軸(DA1)と受信指向軸(DA2)とは、同一の方向に向けて互いに平行に延びる。以下では、送信指向軸(DA1)および受信指向軸(DA2)を区別しない場合、単に「指向軸(DA)」と称する。指向軸(DA)は、後に参照する
図17~
図20において代表した1本の軸線で示す。各音波ユニット(10)は、送信素子(12)の送信面および受信素子(14)の受信面を被測定空間(MS)の内方に向ける姿勢に設置される。
【0049】
第1音波ユニット(10A)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第2音波ユニット(10B)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第3音波ユニット(10C)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第4音波ユニット(10D)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界上面(BP1)から鉛直方向下側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。
【0050】
第5音波ユニット(10E)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第6音波ユニット(10F)は、平面視で第1境界側面(BP3)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第7音波ユニット(10G)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第3境界側面(BP5)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。第8音波ユニット(10H)は、平面視で第2境界側面(BP4)から第4境界側面(BP6)に亘る範囲、側面視で境界下面(BP2)から鉛直方向上側に亘る範囲において、音波を送信および受信する。
【0051】
図9~
図12に示すように、複数の音波ユニット(10)は、複数の伝搬経路(Pmn)(m=1,2,…8;mは送信素子(12)の「第」に続く識別のための数字に対応する)(n=1,2,…8;nは受信素子(14)の「第」に続く識別のための数字に対応する)を相互間に形成する。以下では、いずれの一対の音波ユニット(10)の間に形成される伝搬経路(Pmn)であるかを区別しない場合、単に「伝搬経路(P)」と称する。
【0052】
伝搬経路(P)は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間に2つずつ存在する。それら2つの伝搬経路(P)は、一方の音波ユニット(10)の送信素子(12)と他方の音波ユニット(10)の受信素子(14)との間に形成される伝搬経路(P)と、一方の音波ユニット(10)の受信素子(14)と他方の音波ユニット(10)の送信素子(12)との間に形成される伝搬経路(P)とである。本例の被測定空間(MS)には、56の伝搬経路(P)が形成される。
【0053】
56の伝搬経路(P)はいずれも、直接波を伝搬する伝搬経路である。直接波は、伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)のうち一方の音波ユニット(10)から送信された後、屋内空間(MS)の壁面(WL)などに衝突せずに、他方の音波ユニット(10)に届く音波である。被測定空間(MS)において、一対の音波ユニット(10)の間には、反射波を伝搬する伝搬経路が形成されてもよい。反射波は、伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)のうち一方の音波ユニット(10)から送信された後、屋内空間(MS)の壁面(MS)に反射してから他方の音波ユニット(10)に届く音波である。
【0054】
各音波ユニット(10)は、当該音波ユニット(10)が外周上に位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。本例の各音波ユニット(10)は、当該音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部を形成する3つの境界平面(BP)のそれぞれに対して、指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される。音波ユニット(10)の設置角度は、当該音波ユニット(10)を支持する支持体の角度調整機構により、少なくともピッチ角およびヨー角について調整可能とされる。
【0055】
第1音波ユニット(10A)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第2音波ユニット(10B)は、境界上面(BP1)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第3音波ユニット(10C)は、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第4音波ユニット(10D)は、境界上面(BP1)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。
【0056】
第5音波ユニット(10E)は、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第6音波ユニット(10F)は、境界下面(BP2)、第1境界側面(BP3)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第7音波ユニット(10G)は、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第4境界側面(BP6)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。第8音波ユニット(10H)は、境界下面(BP2)、第2境界側面(BP4)および第3境界側面(BP5)に対して指向軸(DA)を傾斜させた設置姿勢とされる。
【0057】
本例の環境状態測定装置(1)において、第1~第8音波ユニット(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の設置姿勢には、以下に説明する第1~第3制約条件が付けられる。
【0058】
(1)第1制約条件
図13~
図16に示すように、同一の境界平面(BP)の外周上に位置する4つの音波ユニット(10)について、指向軸(DA)が当該同一の境界平面(BP)に対してなす角度は、互いに同じ角度に設定される。
【0059】
具体的には、第1音波ユニット(10A)、第2音波ユニット(10B)、第3音波ユニット(10C)および第4音波ユニット(10D)の各指向軸(DA)は、境界上面(BP1)に対して互いに同じ角度をなす。第5音波ユニット(10E)、第6音波ユニット(10F)、第7音波ユニット(10G)および第8音波ユニット(10H)の各指向軸(DA)は、境界下面(BP2)に対して互いに同じ角度をなす。第1音波ユニット(10A)、第2音波ユニット(10B)、第5音波ユニット(10E)および第6音波ユニット(10F)の各指向軸(DA)は、第1境界側面(BP3)に対して互いに同じ角度をなす。
【0060】
第3音波ユニット(10C)、第4音波ユニット(10D)、第7音波ユニット(10G)および第8音波ユニット(10H)の各指向軸(DA)は、第2境界側面(BP4)に対して互いに同じ角度をなす。第1音波ユニット(10A)、第4音波ユニット(10D)、第5音波ユニット(10E)および第8音波ユニット(10H)の各指向軸(DA)は、第3境界側面(BP5)に対して互いに同じ角度をなす。第2音波ユニット(10B)、第3音波ユニット(10C)、第6音波ユニット(10F)および第7音波ユニット(10G)の各指向軸(DA)は、第4境界側面(BP6)に対して互いに同じ角度をなす。
【0061】
(2)第2制約条件
図13~
図15に示すように、同一の境界平面(BP)の外周上で被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の音波ユニット(10)は、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、それら一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称となる姿勢で設置される。
【0062】
図13に示すように、第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第2音波ユニット(10B)の設置姿勢、第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢とはそれぞれ、境界上面(BP1)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL1)に関して互いに線対称をなす。第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢、第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第3音波ユニット(10C)の設置姿勢とはそれぞれ、境界上面(BP1)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL2)に介して互いに線対称をなす。
【0063】
図13に括弧書きで示すように、第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢、第7音波ユニット(10G)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、境界下面(BP2)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL3)に関して互いに線対称をなす。第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢、第6音波ユニット(10F)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢とはそれぞれ、境界下面(BP2)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL4)に介して互いに線対称をなす。
【0064】
図14に示すように、第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第2音波ユニット(10B)の設置姿勢、第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢とはそれぞれ、第1境界側面(BP3)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL5)に関して互いに線対称をなす。第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第5音波ユニット(10E)の設置姿勢、第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢とはそれぞれ、第1境界側面(BP1)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL6)に関して互いに線対称をなす。
【0065】
図14に括弧書きで示すように、第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢、第7音波ユニット(10G)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第2境界側面(BP4)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL7)に関して互いに線対称をなす。第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢、第4音波ユニット(10D)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第2境界側面(BP4)を直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL8)に関して互いに線対称をなす。
【0066】
図15に示すように、第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第3音波ユニット(10C)の設置姿勢、第6音波ユニット(10F)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢とはそれぞれ、第4境界側面(BP6)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL
9)に関して互いに線対称をなす。第2音波ユニット(10B)の設置姿勢と第6音波ユニット(10F)の設置姿勢、第3音波ユニット(10C)の設置姿勢と第7音波ユニット(10G)の設置姿勢とはそれぞれ、第4境界側面(BP6)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL
10)に関して互いに線対称をなす。
【0067】
図15に
括弧書きで示すように、第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第4音波ユニット(10D)の設置姿勢、第5音波ユニット(10E)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第3境界側面(BP5)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL
11)に関して互いに線対称をなす。第1音波ユニット(10A)の設置姿勢と第5音波ユニット(10E)の設置姿勢、第4音波ユニット(10D)の設置姿勢と第8音波ユニット(10H)の設置姿勢とはそれぞれ、第3境界側面(BP5)に直交する方向から見たとき、各々の中間位置を通る仮想の基準線(RL
12)に関して互いに線対称をなす。
【0068】
(3)第3制約条件
図13~
図16に示すように、互いに対向する2つの境界平面(BP)の外周上で互いに対応する位置関係にある一対の音波ユニット(10)は、それら2つの境界平面(BP)の間の中間位置に設定される仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して、送信素子(12)および受信素子(14)の位置関係が互いに同じとなる姿勢で設置される。
【0069】
当該一対の音波ユニット(10)の設置姿勢は、音波ユニット(10)のピッチ角についての傾斜方向が基準平面(RP1~RP3)に対して反対となる反転姿勢である。本例では、当該一対の音波ユニット(10)は、基準平面(RP1~RP3)に対して、送信素子(12)が相対的に離れ、受信素子(14)が相対的に近い設置姿勢とされる。当該一対の音波ユニット(10)は、基準平面(RP1~RP3)に対して、送信素子(12)が相対的に近く、受信素子(14)が相対的に離れる設置姿勢とされてもよい。
【0070】
第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)、第2音波ユニット(10B)と第6音波ユニット(10F)、第3音波ユニット(10C)と第7音波ユニット(10G)、第4音波ユニット(10D)と第8音波ユニット(10H)とはそれぞれ、基準平面(RP1)に対して、上記反転姿勢をとる。第1音波ユニット(10A)と第4音波ユニット(10D)、第2音波ユニット(10B)と第3音波ユニット(10C)、第5音波ユニット(10E)と第8音波ユニット(10H)、第6音波ユニット(10F)と第7音波ユニット(10G)とはそれぞれ、基準平面(RP2)に対して、上記反転姿勢をとる。第1音波ユニット(10A)と第2音波ユニット(10B)、第4音波ユニット(10D)と第3音波ユニット(10C)、第5音波ユニット(10E)と第6音波ユニット(10F)、第8音波ユニット(10H)と第7音波ユニット(10G)とはそれぞれ、基準平面(RP3)に対して、上記反転姿勢をとる。
【0071】
上述のように、第1~第8音波ユニット(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の設置姿勢に制約条件があることで、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間に形成される2つの伝搬経路(P)の長さである伝搬距離が等しくなる。伝搬距離は、音波の送受信を行う送信素子(12)と受信素子(14)との間の直線距離である。
【0072】
例えば、第1音波ユニット(10A)に係る各伝搬経路(P)について言えば、第1音波ユニット(10A)と第2音波ユニット(10B)との間に形成される2つの伝搬経路(P12,P21)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第3音波ユニット(10C)との間に形成される2つの伝搬経路(P13,P31)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第4音波ユニット(10D)との間に形成される2つの伝搬経路(P14,P41)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)との間に形成される2つの伝搬経路(P15,P51)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第6音波ユニット(10F)との間に形成される2つの伝搬経路(P16,P61)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第7音波ユニット(10G)との間に形成される2つの伝搬経路(P17,P71)の伝搬距離、第1音波ユニット(10A)と第8音波ユニット(10H)との間に形成される2つの伝搬経路(P18,P81)の伝搬距離はそれぞれ、互いに等しく、それら一対の音波ユニット(10)の間の距離(厳密には、一対の音波ユニット(10)の上記中央点(CP)の間の距離)と同じである。これらのことは、その他の第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)に係る各伝搬経路(Pmn)についても同様である。
【0073】
各音波ユニット(10)の設置角度は、当該音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される。音波の減衰量とは、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のうち一方の音波ユニット(10)から送信されてから他方の音波ユニット(10)が受信するまでに減衰する音圧レベルのことである。音波の減衰量は、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性による減衰、並びに伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて算出される。
【0074】
一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰は、音波の伝搬距離に応じて音波が減衰することである。音波ユニット(10)から送信された音波のエネルギーは当該音波ユニット(10)から離れるほど薄まり、送受信のペアをなす音波ユニット(10)で受信されるまでに音圧レベルが小さくなる。
図17に示すように、距離減衰による音波の減衰量は、音波の伝搬距離によって決まり、伝搬距離が長くなるに連れて増す。よって、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間の距離が長いほど、距離減衰による音波の減衰量が大きくなる。
【0075】
伝搬経路(P)に対する送信の指向性は、音波の送信角度(θ1)に応じて、音波の放射強度が変わることである。
図18に模式的に示すように、送信角度(θ1)は、伝搬経路(P)に対して送信指向軸(DA1)がなす角度である。送信の指向性による音波の減衰量は、送信素子(12)の指向特性に基づいて決まり、送信角度(θ1)が大きくなるに連れて増す。以下では、送信の指向性による音波の減衰量を「送信素子(12)の角度減衰」と称する。
【0076】
伝搬経路(P)に対する受信の指向性は、音波の受信角度(θ2)に応じて、音波の受信感度が変わることである。
図18に模式的に示すように、受信角度(θ2)は、伝搬経路(P)に対して受信指向軸(DA2)がなす角度である。受信の指向性による音波の減衰量は、受信素子(14)の指向特性に基づいて決まり、受信角度(θ2)が大きくなるに連れて増す。以下では、受信の指向性による音波の減衰量を「受信素子(14)の角度減衰」と称する。
【0077】
図19に、音波ユニット(10)の設置角度と、送信素子(12)の角度減衰、受信素子(14)の角度減衰および角度減衰合計との関係を例示する。ここでの音波ユニット(10)の設置角度は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のそれぞれの指向軸(DA)が伝搬経路(P)に対してなす角度である。また、角度減衰合計は、送信素子(12)の角度減衰と受信素子(14)の角度減衰とによる伝搬経路(P)でのトータルの角度減衰を意味する。
【0078】
図19に示すように、音波ユニット(10)の設置角度が大きくなるほど、送信素子(12)の角度減衰、および受信素子(14)の角度減衰がそれぞれ増す結果、
図20にも示すように、伝搬経路(P)の角度減衰合計が大きくなる。なお、
図19では、便宜上、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の設置角度が同じである場合を記載するが、実際には、送受信を行う一対の音波ユニット(10)において、送信指向軸(DA1)が伝搬経路(P)に対してなす送信角度(θ1)と、受信指向軸(DA2)が伝搬経路(P)に対してなす受信角度(θ2)とは、互いに異なる。
【0079】
伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量は、距離減衰と合成角度減衰とによる音波の全減衰量である。合成角度減衰については後述する。この全減衰量は、距離減衰による音波の減衰量と、合成角度減衰による音波の減衰量とに基づいて、対数計算により算出される。各音波ユニット(10)の設置角度は、当該音波ユニット(10)に係るいずれの伝搬経路(P)においても音波の全減衰量が所定値よりも小さくなるように設定される。ここでの所定値は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のいずれの組合せにおいても、伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える値(つまり、有効な音波の伝搬を行うために抑えるべき全減衰量の値)に設定される。
【0080】
このように設置姿勢が設定される複数の音波ユニット(10)は、被測定空間(MS)が立方体形状などでない場合、送受信を行う一対の音波ユニット(10)のいずれの組合せにおいても互いに正対しない場合がある。各音波ユニット(10)の設置姿勢は、上述した第1~第3制約条件により、いずれか1つの音波ユニット(10)の設置姿勢に従って変更される。例えば、第1音波ユニット(10A)の設置角度が変更されると、第1~第3の制約条件を満たすように第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の設置角度も変更される。
【0081】
〈座標計測部〉
座標計測部(20)は、屋内空間(IS)の形状に関する三次元座標と、各音波ユニット(10)の位置に関する三次元座標とを計測する。座標計測部(20)は、三次元レーザ計測装置により構成される。
【0082】
〈コントローラ〉
コントローラ(30)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリデバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。コントローラ(30)は、各音波ユニット(10)および座標計測部(20)と、無線または有線の通信線を介して接続される。コントローラ(30)の一部または全部は、音波ユニット(10)に設けられてもよいし、ネットワーク上のサーバに設けられてもよい。
【0083】
コントローラ(30)は、記憶部(32)および演算部(34)を有する。記憶部(32)は、座標計測部(20)により計測した三次元座標を記憶する。また、記憶部(32)は、複数の伝搬経路(P)と、これら各伝搬経路(P)における伝搬距離とを、互いに関連付けて記憶する。演算部(34)は、音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10)において、一方の音波ユニット(10)が音波を送信してから、その音波を他方の音波ユニット(10)が受信するまでの伝搬時間を測定する。演算部(34)は、記憶部(32)に記憶されたデータと、各伝搬経路(P)の音波の伝搬時間とに基づいて、公知の手法により被測定空間(MS)の各測定平面(MP)での風速および空気の温度を求める。
【0084】
このように、環境状態測定装置(1)は、音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10間を伝搬する音波の伝搬特性(本例では伝搬時間)に基づいて、被測定空間(MS)の風速や空気の温度といった環境状態を測定する。
【0085】
-環境状態測定装置のセッティング方法-
上記構成の環境状態測定装置(1)をセッティングする方法について説明する。環境状態測定装置(1)のセッティングでは、複数の音波ユニット(10)を、互いに離間した分散位置に設置することで、音波ユニット(10)が外周上に位置する複数の境界平面(BP)を規定し、それら複数の境界平面(BP)により被測定空間(MS)を画定する。
【0086】
この環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、少なくとも一部の音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて、音波の全減衰量を算出する。そして、音波ユニット(10)の設置姿勢における指向軸(DA)が当該音波ユニット(10)の位置する隅部をなす各境界平面(BP)に対して傾斜する角度を、伝搬経路(P)ごとの音波の全減衰量に基づいて決定する。
【0087】
そうした各音波ユニット(10)の設置角度の決定は、コントローラ(30)が、作業者の入力した測定対象とする被測定空間(MS)の形状およびサイズと、音波ユニット(10)の数および設置位置との各データに基づいて行う。
【0088】
具体的には、
図21に示すように、まず、ステップST1において、作業者が被測定空間(MS)(同空間(MS)の形状およびサイズ)を決定する。本例では、縦10m、横10m、高さ2mの直方形状の空間を被測定空間(MS)とする。作業者は、決定した被測定空間(MS)の形状およびサイズのデータをコントローラ(30)に入力する。
【0089】
次に、ステップST2では、ユーザが、ステップST1で決定した被測定空間(MS)に対して設置する音波ユニット(10)の数および設置位置を決定する。本例では、音波ユニット(10)の数を8つとし、音波ユニット(10)の設置位置を被測定空間(MS)の8つの隅部のそれぞれとする。作業者は、決定した音波ユニット(10)の数および設置位置のデータをコントローラ(30)に入力する。
【0090】
次に、ステップST3では、コントローラ(30)が、ステップST2で数および設置位置を決定した複数の音波ユニット(10)について、送受信を行う一対の音波ユニット(10)ごとに、音波ユニット(10)の間の距離を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の距離については、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された音波ユニット(10)の間の距離を記憶する。
【0091】
次に、ステップST4では、コントローラ(30)が、記憶部(32)に記憶された送受信を行う一対の音波ユニット(10)ごとの音波ユニット(10)の間の距離を、各々対応する伝搬経路(P)の伝搬距離として、伝搬経路(P)ごとに距離減衰による音波の減衰量を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の伝搬経路(P)ごとの距離減衰による音波の減衰量は、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された各伝搬経路(P)での距離減衰による
音波の減衰量を記憶する。
【0092】
次に、ステップST5では、コントローラ(30)が、各音波ユニット(10)の初期設定角度を決定する。本例における各音波ユニット(10)の初期設定角度は、各々の指向軸(DA)を被測定空間(MS)の中心に向ける姿勢での角度である。よって、被測定空間(MS)の対角線上に位置する一対の音波ユニット(10)は、初期設定角度の姿勢あるときには、互いに正対する。
【0093】
次に、ステップST6では、コントローラ(30)が、各伝搬経路(P)の合成角度減衰による音波の減衰量を算出する。このとき、各音波ユニット(10)の設置角度(指向軸(DA)の向き)は既知である。ステップST6において、まず、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)において、音波ユニット(10)の送信指向軸(DA1)が当該伝搬経路(P)に対してなす送信角度と、音波ユニット(10)の受信指向軸(DA2)が当該伝搬経路(P)に対してなす受信角度とを算出する。
【0094】
各伝搬経路(P)に対する送信角度および受信角度は、当該伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の合成角度(Ac)に相当する。
図16に示すように、一対の音波ユニット(10)の合成角度(Ac)は、それら一対の音波ユニット(10)の間の2つの伝搬経路(P)の中間に引かれる合成線(CL)に対して、各音波ユニット(10)の指向軸(DA)がなす角度である。合成線(CL)は、送受信を行う一対の音波ユニット(10)の中央点(CP)同士を結んだラインとして規定される。
【0095】
合成角度(Ac)は、水平方向および垂直方向に対して傾斜した角度である。このため、合成角度(Ac)は、
図13~
図15に示すように、水平方向の合成角度(a1)と、垂直方向の合成角度(a2)とに分けて取り扱うことができる。水平方向の合成角度(a1)は、対象とする指向軸(DA)と合成線(CL)とを水平面上で正面視したときの角度である。垂直方向の合成角度(a2)は、対象とする指向軸(DA)と合成線(CL)とを垂直面上で正面視したときの角度である。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間における水平方向の合成角度(a1)および垂直方向の合成角度(a2)はそれぞれ、
図22に示すように求められる。
【0096】
コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る水平方向の合成角度(a1)と垂直方向の合成角度(a2)のそれぞれについて、当該伝搬経路(P)での送信素子(12)の角度減衰による音波の減衰量である受信減衰量を、送信素子(12)の指向特性に基づいて算出する。また、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る水平方向の合成角度(a1)と垂直方向の合成角度(a2)のそれぞれについて、当該伝搬経路(P)での受信素子(14)の角度減衰による音波の減衰量である受信減衰量を、受信素子(14)の指向特性に基づいて算出する。
【0097】
さらに、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る水平方向の合成角度(a1)について、当該伝搬経路(P)での音波の送信減衰量と音波の受信減衰量とを足し合わせることで、水平方向の角度減衰合計を算出する。また、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)に係る垂直方向の合成角度(a2)について、当該伝搬経路(P)での音波の送信減衰量と音波の受信減衰量とを足し合わせることで、垂直方向の角度減衰合計を算出する。
【0098】
そして、コントローラ(30)は、各伝搬経路(P)について、水平方向の角度減衰合計と垂直方向の角度減衰合計とを対数計算により合成することで、合成角度減衰による音波の減衰量を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の伝搬経路(P)ごとの水平方向の角度減衰合計、垂直方向の角度減衰合計、および合成角度減衰はそれぞれ、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された各伝搬経路(P)での合成角度減衰による音波の減衰量を記憶する。
【0099】
次に、ステップST7では、コントローラ(30)が、各々記憶部(32)に記憶された、各伝搬経路(P)での距離減衰による音波の減衰量と、各伝搬経路(P)での合成角度減衰による音波の減衰量とに基づいて、伝搬経路(P)ごとに音波の全減衰量を算出する。例えば、第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の伝搬経路(P)ごとの全減衰量は、
図22に示すように算出される。記憶部(32)は、算出された各伝搬経路(P)での音波の全減衰量を記憶する。
【0100】
次に、ステップST8では、コントローラ(30)が、記憶部(32)に記憶された各伝搬経路(P)での音波の全減衰量が所定値よりも小さいか否かの条件を判定する。このステップST8で全ての伝搬経路(P)での音波の全減衰量が所定値よりも小さいと判定した場合(YESの場合)、ステップST10に進み、各音波ユニット(10)の設置角度が決定して、各音波ユニット(10)の設置角度の設定を終了する。
【0101】
一方、ステップST8で一部の伝搬経路(P)でも音波の全減衰量が所定値以上である場合、ステップST9に進む。ステップST9では、音波の全減衰量が所定値以上である問題の伝搬経路(P)に係る各音波ユニット(10)の設置角度を変更する。ここで、各音波ユニット(10)の設置角度の変更は、対象とする伝搬経路(P)側に指向軸(DA)を傾ける方向に行われる。
【0102】
ステップST9では、変更対象の音波ユニット(10)に第1~第3制約条件で関わる各音波ユニット(10)の設置角度も、第1~第3制約条件に従って変更される。本例では、1つの伝搬経路(P)に係る音波ユニット(10)の設置角度を変更する場合、全ての音波ユニット(10)の設置角度を変更する。音波ユニット(10)の設置角度は、初期設定角度から所定角度のみずらす変更でもよいし、問題の伝搬経路(P)に対して音波の全減衰量が改善する所定の角度とするように決め打ちで変更してもよい。
【0103】
例えば、ステップST8で判定基準とする所定値として、32dBが設定されたとする。この場合、
図22に示すように、初期設定角度にある複数の音波ユニット(10)のうち第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)との間の各伝搬経路(P)についての音波の全減衰量が所定値以上である。また、第1音波ユニット(10A)および第5音波ユニット(10E)と同様な位置関係にある、第2音波ユニット(10B)と第6音波ユニット(10F)との間の各伝搬経路(P)、第3音波ユニット(10C)と第7音波ユニット(10G)との間の各伝搬経路(P)、第4音波ユニット(10D)と第8音波ユニット(10H)との間の各伝搬経路(P)についての音波の全減衰量も所定値以上である。そのため、コントローラ(30)は、ステップST8でNOと判定し、ステップST9に進む。
【0104】
そして、
図22に示す例の場合、ステップST9において、例えば、第1音波ユニット(10A)と第3音波ユニット(10C)との間の垂直方向の合成角度(a2)が8°から30°となるように各音波ユニット(10)の設置角度(ピッチ角)を決め打ちで変更する。これにより、
図24および
図25に示すように、第1音波ユニット(10A)および第5音波ユニット(10E)の設置姿勢、第2音波ユニット(10B)および第6音波ユニット(10F)の設置姿勢、第3音波ユニット(10C)および第7音波ユニット(10G)の設置姿勢は、それら両音波ユニット(10)の間の伝搬経路(P)側に指向軸(DA)を傾け、互いの指向軸(DA)が交差する姿勢とされる。このことは、図示しない第4音波ユニット(10D)および第8音波ユニット(10H)の設置姿勢についても、同様とされる。
【0105】
ステップST9で音波ユニット(10)の設置角度の変更を終えると、ステップST6に戻り、それ以降のステップST6,ST7,ST8,ST9をステップST8での判定条件を満たすまで行う。そして、ステップST8での判定条件を満たした場合、上述の通り、ステップST10に進み、各音波ユニット(10)の設置角度を決定して、各音波ユニット(10)の設置角度の設定を終了する。
【0106】
図22に示す例について、各音波ユニット(10)の設置角度を変更した後の第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)の間における垂直方向の合成角度(a2)は、
図23に下線を付して示すように再び求められる。そして、ステップST6,ST7において、各伝搬経路(P)での合成角度減衰による音波の減衰量と、音波の全減衰量を再計算する。
【0107】
第1音波ユニット(10A)と第2~第8音波ユニット(10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H)との間の各伝搬経路(P)についての合成角度減衰による音波の減衰量および全減衰量は、
図23に下線を付して示すように再計算される。この場合、第1音波ユニット(10A)と第5音波ユニット(10E)の間の各伝搬経路(P)での全減衰量は、-30.3dBであるので、ステップST8でYESと判定し、各音波ユニット(10)の設置角度を決定する。
【0108】
環境状態測定装置(1)のセッティングでは、以上のようにして決定された各音波ユニット(10)の設置角度に従って、作業者が、複数の音波ユニット(10)を被対象空間(MS)の周囲における所定の分散位置に設置する。また、環境状態測定装置(1)のセッティングは、複数の音波ユニット(10)を一旦は初期設定角度で設置した後、各音波ユニット(10)の設置角度を調整することで行ってもよい。
【0109】
-実施形態の特徴-
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、複数の音波ユニット(10)のそれぞれが、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、各音波ユニット(10)の指向軸(DA)を、当該音波ユニット(10)が位置する各境界平面(BP)に対して所定の角度で傾斜させた姿勢である。それにより、互いに対向しない一対の音波ユニット(10)の間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制できる。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0110】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、被測定空間(MS)の各隅部に位置する音波ユニット(10)が、所定の傾斜姿勢に設置される。所定の傾斜姿勢は、被測定空間(MS)の隅部を形成する複数の境界平面(BP)のそれぞれに対して、指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢である。このことは、三次元的に配置された音波の送受信を行う一対の音波ユニット(10)の間の伝搬経路(P)において、有効な音波の伝搬を行い、データの欠損を抑制するのに有利である。
【0111】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、音波ユニット(10)の設置角度が、当該音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される。伝搬経路(P)における音波の減衰量が大きいと、当該伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行えない。よって、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲(所定値よりも小さい範囲)に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。
【0112】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、音波の減衰量が、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて算出される。伝搬経路(P)を伝搬する音波は、当該伝搬経路(P)に対する送信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に対する受信の指向性が低いほど減衰し、当該伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰が大きいほど減衰する。このように音波の減衰量と関係の深い、伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、当該伝搬経路(P)での音波の減衰量を精度よく算出できる。
【0113】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、同一の境界平面(BP)の外周上に位置する複数の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該同一の境界平面(BP)に対して指向軸(DA)のなす角度を各音波ユニット(10)で同じとするように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0114】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、同一の境界平面(BP)の外周上で被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、当該一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称の関係となるように決定される。これによれば、複数の音波ユニット(10)の設置角度に関する設定を簡略化できる。
【0115】
この実施形態の環境状態測定装置(1)では、互いに対向する一対の境界平面(BP)の外周上で互いに対応する位置関係にある2つの音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(14)を別体として備える。それら2つの音波ユニット(10)における送信素子(12)および受信素子(14)は、仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して位置関係が同じとされる。それにより、一対の音波ユニット(10)の間に形成される別々の伝搬経路(P)の長さの差を小さくできる。このことは、環境状態測定装置(1)による測定を簡略化するのに有利である。
【0116】
この実施形態の環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、各音波ユニット(10)に係る音波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および当該伝搬経路(P)に係る一対の音波ユニット(10)の間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出する。伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに伝搬経路(P)に係る距離減衰に基づけば、伝搬経路(P)での音波の全減衰量を精度よく算出できる。
【0117】
そして、この実施形態の環境状態測定装置(1)のセッティング方法では、各音波ユニット(10)の設置姿勢における角度を決定する。当該設置角度は、音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部をなす各境界平面(BP)に対して指向軸(DA)が傾斜する角度であり、音波ユニット(10)に係る伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定される。このとき、各伝搬経路(P)での音波の減衰量が所定の範囲(所定値よりも小さい範囲)に収まるように音波ユニット(10)の設置角度を決定することで、それら各伝搬経路(P)で有効な音波の伝搬を行える。その結果、環境状態測定装置(1)による測定結果の信頼性を向上させることができる。
【0118】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0119】
音波ユニット(10)の数は、8つに限らず、9つ以上であってもよい。例えば、各測定面(MP)で環境状態の測定についての分解能を高くしたい場合、
図26に示すように、各測定面(BP)の外周上に位置する音波ユニット(10)の数を増やせばよい。また、音波ユニット(10)の数は、7つ以下であってもよく、被測定空間(MS)の形状やサイズに応じて適宜変更される。
【0120】
複数の音波ユニット(10)のうち一部の音波ユニット(10)のみが、当該音波ユニット(10)が位置する被測定空間(MS)の隅部をなす各境界平面(BP)に対して指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させた姿勢に設置されてもよい。要は、全ての伝搬経路(P)において有効な音波の伝搬を行えるように、少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢が、当該音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して指向軸(DA)を所定の角度で傾斜させたものであればよい。
【0121】
音波ユニット(10)において、送信素子(12)の送信面と受信素子(14)の受信面とが正面側に臨んでいれば、送信指向軸(DA1)および受信指向軸(DA1)は、互いに異なる方向に向いてもよい。この場合、音波ユニット(10)は、送信指向軸(DA1)または受信指向軸(DA2)を、当該音波ユニット(10)が位置する少なくとも1つの境界平面(BP)に対して傾斜させた姿勢に設置される。
【0122】
音波ユニット(10)は、送信素子(12)および受信素子(14)を別体としてではなく、送信素子(12)および受信素子(14)の機能を併せ持つ一体の送受信素子を備えてもよい。
【0123】
複数の音波ユニット(10)には、送信ユニット(10S)と受信ユニット(10R)とが別ユニットとして含まれてもよい。例えば、複数の音波ユニット(10)は、送信機能のみを有する複数の送信ユニット(10S)と、受信機能のみを有する複数の受信ユニット(10R)とで構成されてもよい。
【0124】
複数の音波ユニット(10)には、送信ユニット(10S)および受信ユニット(10R)を兼ねる音波ユニット(10)と、送信ユニット(10S)としてのみ機能する音波ユニット(10)と、受信ユニット(10R)としてのみ機能する音波ユニット(10)とが混在してもよい。
【0125】
環境状態測定装置(1)は、被測定空間(MS)の風速および空気の温度以外の環境状態を測定してもよい。例えば、環境状態測定装置(1)は、被測定空間(MS)の空気の圧力を環境状態として測定してもよい。
【0126】
環境状態測定装置(1)において、複数の音波ユニット(10)の設置姿勢には、第1~第3制約条件の少なくとも1つが付けられなくてもよい。各音波ユニット(10)の設置姿勢は、全ての伝搬経路(P)での音波の全減衰量が所定値よりも小さくなるように、別々に独立して決定されてもよい。
【0127】
環境状態測定装置(1)のセッティングにおいて、各音波ユニット(10)の設置角度の決定は、コントローラ(30)とは別個に準備されたコンピュータが行ってもよいし、ネットワーク上のサーバで行われてもよい。
【0128】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0129】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上説明したように、本開示は、環境状態測定装置および環境状態測定装置のセッティング方法について有用である。
【符号の説明】
【0131】
BP 境界平面
BP1 境界上面(第1境界平面)
BP2 境界下面(第2境界平面)
BP3 第1境界側面(第1境界平面)
BP4 第2境界側面(第2境界平面)
BP5 第3境界側面(第1境界平面)
BP6 第4境界側面(第2境界平面)
DA 指向軸
MS 被測定空間
P 伝搬経路
RL1~RL12 基準線
RP1~RP3 基準面
1 環境状態測定装置
10 音波ユニット
10S 送信ユニット
10R 受信ユニット
12 送信素子
14 受信素子
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定空間(MS)の周囲に設置される複数の音波ユニット(10)を備え、
前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)を仮想的に画定する複数の境界平面(BP)のそれぞれにおける外周上に位置し、
前記複数の音波ユニット(10)には、指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)と、が含まれ、
前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間を伝搬する音波の伝搬特性に基づいて、前記被測定空間(MS)の環境状態を測定する環境状態測定装置であって、
前記複数の境界平面(BP)は、互いに対向する第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および第2境界平面(BP2,BP4,BP6)を含み、
前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)の外周上における前記音波ユニット(10)は少なくとも、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)と該第1境界平面(BP1,BP3,BP5)に隣り合い且つ頂点を共有する2つの境界平面(BP)とが形成する前記被測定空間(MS)の隅部に配置され、
前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)の外周上における前記音波ユニット(10)は少なくとも、前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)と該第2境界平面(BP2,BP4,BP6)に隣り合い且つ頂点を共有する2つの境界平面(BP)とが形成する前記被測定空間(MS)の隅部に配置され、
前記被測定空間(MS)の隅部に配置された少なくとも一部の前記音波ユニット(10)は、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)を、当該被測定空間(MS)の隅部を形成する3つの前記境界平面(BP)のそれぞれに対して所定の角度で傾斜させた姿勢に設置される、環境状態測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境状態測定装置において、
前記所定の角度は、当該角度で設置される前記音波ユニット(10)に係る直接波の伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて設定される、環境状態測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の環境状態測定装置において、
前記音波の減衰量は、前記伝搬経路(P)に対する送信の指向性および受信の指向性、ならびに当該伝搬経路(P)に係る前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて算出される、環境状態測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
同一の前記境界平面(BP)の外周上に位置する複数の前記音波ユニット(10)について、前記指向軸(DA)が当該同一の境界平面(BP)に対してなす角度は、互いに同じ角度に設定される、環境状態測定装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
前記音波ユニット(10)は、前記被測定空間(MS)の隅部に配置され、
同一の前記境界平面(BP)の外周上で前記被測定空間(MS)の互いに隣り合う隅部に位置する一対の前記音波ユニット(10)は、当該境界平面(BP)に直交する方向から見たとき、当該一対の音波ユニット(10)の中間位置を通る仮想の基準線(RL1~RL12)に関して線対称となる姿勢で設置される、環境状態測定装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の環境状態測定装置において、
前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)および前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)の互いに対応する位置関係にある一対の前記音波ユニット(10)はそれぞれ、前記送信ユニット(10S)の機能を実現する送信素子(12)と、前記受信ユニット(10R)の機能を実現する受信素子(14)と、を別体として備え、
当該一対の音波ユニット(10)は、前記第1境界平面(BP1,BP3,BP5)と前記第2境界平面(BP2,BP4,BP6)との間の中間位置に設定される仮想の基準平面(RP1~RP3)に対して前記送信素子(12)および前記受信素子(14)の位置関係が互いに同じとなる姿勢で設置される、環境状態測定装置。
【請求項7】
指向性をもって音波を送信する送信ユニット(10S)と、指向性をもって音波を受信する受信ユニット(10R)と、を含む複数の音波ユニット(10)を、互いに離間した位置に設置することで、前記音波ユニット(10)が外周上に位置する複数の境界平面(BP)により被測定空間(MS)を画定する環境状態測定装置のセッティング方法であって、
少なくとも一部の前記音波ユニット(10)に係る直接波の伝搬経路(P)ごとに、当該伝搬経路(P)に係る送信の指向性、受信の指向性、および前記送信ユニット(10S)と前記受信ユニット(10R)との間の距離減衰に基づいて、音波の減衰量を算出し、
前記少なくとも一部の音波ユニット(10)の設置姿勢における、送信または受信の指向性の最大強度を示す指向軸(DA)が当該音波ユニット(10)の位置する少なくとも1つの前記境界平面(BP)に対して傾斜する角度を、前記伝搬経路(P)ごとの音波の減衰量に基づいて決定する、環境状態測定装置のセッティング方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】