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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051439
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】着雪試験方法および着雪試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157615
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 治樹
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA20
2G050CA03
2G050CA09
(57)【要約】
【課題】より自然環境下における着雪状況を再現できるようにする。
【解決手段】着雪試験方法では、供試体に雪を積もらせる積雪工程(ステップST11、ST13)と、前記供試体に雪が供給されない状態で、前記供試体に積もった雪を氷結させる着雪工程(ステップST12、ST14)と、を行う。前記積雪工程及び前記着雪工程は、繰り返し行われる。前記着雪工程では、前記供試体の周囲温度が前記積雪工程のときの周囲温度よりも低い温度に調整される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体に雪を積もらせる積雪工程と、
前記供試体の周囲温度がマイナスの温度に調整される期間を少なくとも含み、前記供試体に雪が供給されない状態で、前記供試体に積もった雪を氷結させる着雪工程と、
を行う着雪試験方法。
【請求項2】
前記積雪工程及び前記着雪工程を繰り返し行う請求項1に記載の着雪試験方法。
【請求項3】
前記着雪工程では、前記供試体の周囲温度が前記積雪工程のときの周囲温度よりも低い温度に調整される請求項1に記載の着雪試験方法。
【請求項4】
前記供試体に積もった雪が前記供試体から落下するように前記供試体の周囲温度または供試体温度を上昇させる落雪工程を行う請求項1に記載の着雪試験方法。
【請求項5】
前記着雪工程を行う前に、前記供試体に積もった雪を融解させる融雪工程を行う請求項1に記載の着雪試験方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の着雪試験方法を実施可能な着雪試験装置であって、
降雪環境を提供するための試験室と、
前記試験室内を空調する空調機と、
前記試験室内において前記降雪環境を得るための水粒子を噴射するノズルと、
前記試験室内の温度が、前記積雪工程用の温度及び前記着雪工程用の温度として設定された温度になるように前記空調機を制御するとともに、前記ノズルを制御する制御器と、を備えている着雪試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着雪試験方法および着雪試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工的に雪を降らせて供試体に雪を積もらせる着雪試験が知られている。着雪試験を行うに際して、例えば下記特許文献1に開示された降雪機を用いることができる。すなわち、試験室内を-3℃以下に強制冷却し、その状態で水を噴霧状に噴射して雪を降らせて供試体上に積もらせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-113278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、雪を供試体上に積もらせるだけでは、自然環境下で得られる積雪状況と異なることがある。すなわち、自然環境下に置かれた物に雪が降り積もった場合においては、この物に雪が強固に付着することがある。一方、試験室内で単に雪を降らせた場合には、供試体に雪が積もったとしても、簡単に雪を払い落とすことができるため、自然環境で生ずる着雪状況を再現できているとは言い難い。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より自然環境下における着雪状況を再現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る着雪試験方法は、供試体に雪を積もらせる積雪工程と、前記供試体の周囲温度がマイナスの温度に調整される期間を少なくとも含み、前記供試体に雪が供給されない状態で、前記供試体に積もった雪を氷結させる着雪工程と、を行う。
【0007】
本発明では、供試体に雪を積もらせる積雪工程を行った後、供試体上に積もった雪を氷結させるための着雪工程を行う。この着雪工程では、供試体に雪が供給されない状態で雪の水分を凍らせるため、供試体上で雪片同士を結合させることができる。しかも、雪が供試体にも強固に付着することになるため、供試体に積もった雪を簡単には手で払い落とすことができない状態にすることができる。したがって、自然界において、降り積もった雪が夜間に固まり、雪が積もった物にも強固に付着する状況を再現できる。
【0008】
前記積雪工程及び前記着雪工程を繰り返し行ってもよい。この態様では、供試体に積もる雪が厚くなるように、雪の層を成長させることができる。すなわち、積雪工程のみを長い時間行った場合には、積もった雪が氷結するとは限らないため、雪の重みによって積雪が崩れてしまい、供試体上に厚い雪の層を形成することはできない。これに対し、積雪工程と積雪工程との間に着雪工程を行うことにより、雪を固まらせることができて、雪の層を成長させることができる。
【0009】
前記着雪工程では、前記供試体の周囲温度が前記積雪工程のときの周囲温度よりも低い温度に調整されてもよい。この態様では、着雪工程において、雪を氷結させることを促進することができる。特に、積雪工程と着雪工程を繰り返し行う場合には、着雪工程において雪が氷結した後の積雪工程では、供試体の周囲温度が着雪工程時における供試体の周囲温度よりも高い温度に調整される。したがって、積もった雪の層の上に、積雪工程において湿った雪をさらに積もらせることができる。これにより、その後の着雪工程において雪を氷結しやすくできる。
【0010】
前記着雪試験方法では、前記供試体に積もった雪が前記供試体から落下するように前記供試体の周囲温度または供試体温度を上昇させる落雪工程を行ってもよい。この態様では、物に積もった雪を落下させる現象を再現することができる。
【0011】
前記着雪試験方法では、前記着雪工程を行う前に、前記供試体に積もった雪を融解させる融雪工程を行ってもよい。この態様では、融雪工程が行われるため、積雪工程において乾いた雪を降らせる場合においても、着雪工程の前の段階で湿った雪が積もった状態にすることができる。したがって、積雪工程での雪質の制約を受けることなく、着雪工程において、雪を氷結させやすくできる。
【0012】
本発明に係る着雪試験装置は、前記着雪試験方法を実施可能な着雪試験装置であって、降雪環境を提供するための試験室と、前記試験室内を空調する空調機と、前記試験室内において前記降雪環境を得るための水粒子を噴射するノズルと、前記試験室内の温度が、前記積雪工程用の温度及び前記着雪工程用の温度として設定された温度になるように前記空調機を制御するとともに、前記ノズルを制御する制御器と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、より自然環境下における着雪状況を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る着雪試験方法を実施するための着雪試験装置を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る着雪試験方法を説明するための図である。
図3】前記着雪試験方法での各ステップにおける降雪の有無及び供試体周囲温度の変化を説明するための図である。
図4】第1実施形態に係る着雪試験方法を実施するための着雪試験装置の変形例を概略的に示す図である。
図5】第2実施形態に係る着雪試験方法を説明するための図である。
図6】第2実施形態に係る着雪試験方法を実施するための着雪試験装置の変形例を概略的に示す図である。
図7】第3実施形態に係る着雪試験方法を実施するための着雪試験装置を概略的に示す図である。
図8】第4実施形態に係る着雪試験方法を説明するための図である。
図9】前記着雪試験方法での各ステップにおける降雪の有無及び供試体周囲温度の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る着雪試験方法を実施可能な着雪試験装置10を示している。着雪試験装置10は、降雪環境を提供する試験室12と、試験室12内を空調する空調機14と、試験室12内に配置されたノズル18と、空調機14及びノズル18を制御する制御器20と、を備えている。ここでいう降雪環境は、水滴から雪を生成できる温度環境であり、例えば、-1℃以下の温度環境を意味している。空調機14は、試験室12内の空気温度を降雪環境に適した温度に調整可能に構成されている。
【0017】
ノズル18は、微細な水粒子を噴霧するように構成されている。例えば、ノズル18は、二流体ノズルによって構成されており、空気と微細な水滴とを噴射するように構成されている。すなわち、ノズル18には、空気供給路18aと冷水供給路18bとが接続されており、ノズル18は、空気供給路18aを通して供給された圧縮空気(又は冷却された圧縮空気)と、冷水供給路18bを通して供給された冷水とを、噴射口18cから噴射する。噴射口18cでは、圧縮空気と冷水とが衝突することにより、冷水が粉砕される。このため、噴射口18cからは、空気と微細な水粒子とが混合した状態の流体が噴射される。噴射口18cから噴射された水粒子は、試験室12内において雪に変わる。なお、図例では、ノズル18が水平向きに空気及び水粒子を噴射するため、供試体Wには雪が側方から付着する。ただしこれに限られるものではなく、例えば供試体Wに上から雪が付着するようにノズル18が配置されてもよい。またノズル18は、二流体ノズルによって構成されているものに限られず、一流体ノズルによって構成されていてもよい。
【0018】
制御器20は、後述する積雪工程及び着雪工程をそれぞれ設定された所定時間だけ行うように空調機14及びノズル18を制御する。すなわち、制御器20は、所定時間行われる積雪工程において、試験室12内の温度が、降雪環境に適した温度として設定された温度になるように空調機14を制御する。また、制御器20は、積雪工程においてノズル18から空気及び水粒子が噴射されるように、ノズル18を制御する。また、制御器20は、所定時間行われる着雪工程において、積雪工程での試験室12内の温度よりも低い温度として設定された温度になるように空調機14を制御する。また、制御器20は、着雪工程において、空気及び水粒子が噴射されないようにノズル18を制御する。
【0019】
この積雪工程及び着雪工程を行うための時間は、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された時間であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された時間であってもよい。また、積雪工程及び着雪工程での試験室12内の温度についても、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された温度であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された温度であってもよい。例えば、積雪工程での試験室12内の温度よりも所定温度(例えば3℃)だけ低い温度となるように、制御器20が着雪工程の温度を自動で設定することも可能である。
【0020】
本実施形態に係る着雪試験方法では、図2及び図3に示すように、積雪工程と着雪工程とが交互に繰り返し行われる。具体的には、第1の積雪工程(ステップST11)において、試験室12内が降雪環境に適した温度として設定された温度(温度T1)になるように、制御器20が空調機14を制御する。そして、試験室12内に供試体Wが配置された状態で、ノズル18から、空気と微細な水粒子とが混合した状態の流体が噴射される(図3において「降雪ON」)。このときの試験室12内の温度すなわち供試体Wの周囲温度は、-1℃以下の温度(温度T1)である。試験室12内の温度が-1℃以下となっているため、ノズル18から噴射された水粒子は、試験室12内を漂っている間に雪に変わる。この雪は供試体W上に積もるため、供試体W上では次第に積雪厚みが増加する。
【0021】
第1の積雪工程が、予め設定された時間だけ行われると、第1の着雪工程に移行する(ステップST12)。第1の着雪工程では、ノズル18による空気及び水粒子の噴射が停止されるため(図3において「降雪OFF」)、第1の着雪工程では、雪は供試体Wに供給されない。したがって、供試体W上の積雪量が維持される。また、第1の着雪工程では、試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)が、温度T1よりも低い温度(温度T2)になるように、制御器20が空調機14を制御する。例えば、温度T2は、-5℃以下の温度である。つまり、積雪工程が寒冷地において昼間に降雪させる状態を再現しており、着雪工程は、寒冷地において、積もった雪が夜間に氷結する状態を再現している。なお、試験室12内の温度を下げるタイミングは、雪の供給停止に合わせればよく、ノズル18からの噴射停止前に温度を下げ始めてもよく、噴射停止後に温度を下げ始めてもよい。
【0022】
供試体Wに積もっている雪は水分を含んでおり、しかも、着雪工程においては供試体Wに雪が供給されないことによって新たに雪が積もらない。このため、着雪工程では、試験室12内の温度が下げられることによって、供試体Wに積もった雪は効率的に氷結する。すなわち、供試体W上において、積雪層の表面の雪も含め、雪片同士が効率的に結合する。
【0023】
第1の着雪工程が、予め定められた時間だけ行われると、第2の積雪工程が行われる(ステップST13)。第2の積雪工程は第1の積雪工程と同じ条件で行われるため、試験室12内の温度が再び温度T1に調整される。つまり、制御器20は、第1の着雪工程のときの試験室12内の温度に比べて、試験室12内の温度が高くなるように空調機14を制御する。また、制御器20がノズル18を作動させるため、ノズル18から空気と微細な水粒子とが混合した状態の流体が噴射される。これにより、第1の着雪工程において供試体W上で固められた雪の上にさらに雪が降り積もる。
【0024】
そして、第2の積雪工程が、予め設定された時間だけ行われると、第2の着雪工程が行われる(ステップST14)。第2の着雪工程は第1の着雪工程と同じ工程であるため、ノズル18からの空気及び水粒子の噴射が停止されるとともに、試験室12内の温度が再び温度T2に調整される。これにより、第2の積雪工程で成長した積雪層を氷結させることができる。
【0025】
以下、積雪工程と着雪工程とが、予め定められた回数だけ繰り返し行われる。これにより、供試体W上に厚い雪の層を形成することができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態では、供試体Wに雪を積もらせる積雪工程を行った後、供試体W上に積もった雪を氷結させるための着雪工程を行う。この着雪工程では、供試体Wに雪が供給されない状態で雪の水分を凍らせるため、供試体W上で雪片同士を結合させることができる。しかも、雪が供試体Wにも強固に付着することになるため、供試体Wに積もった雪を簡単には手で払い落とすことができない状態にすることができる。したがって、自然界において、降り積もった雪が夜間に固まり、雪が積もった物にも強固に付着する状況を再現できる。
【0027】
しかも、本実施形態では、積雪工程及び着雪工程が繰り返し行われるため、供試体Wに積もる雪が厚くなるように、雪の層を成長させることができる。すなわち、積雪工程のみを長い時間行った場合には、積もった雪が氷結するとは限らないため、雪の重みによって積雪が崩れてしまい、供試体W上に厚い雪の層を形成することはできない。これに対し、積雪工程と積雪工程との間に着雪工程を行うことにより、雪を固まらせることができて、雪の層を成長させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、着雪工程において、供試体Wの周囲温度が積雪工程のときの周囲温度よりも低い温度に調整されるため、着雪工程において、雪を氷結させることを促進することができる。特に本実施形態では、積雪工程と着雪工程が繰り返し行われるため、着雪工程において雪が氷結した後の積雪工程では、供試体Wの周囲温度が着雪工程時における供試体Wの周囲温度よりも高い温度に調整される。したがって、積もった雪の層の上に、積雪工程において湿った雪をさらに積もらせることができる。これにより、その後の着雪工程において雪を氷結しやすくできる。
【0029】
なお、本実施形態では、着雪工程での試験室12の温度が、積雪工程時の試験室12の温度よりも低くなるように調整されているが、これに限られるものではなく、着雪工程と積雪工程とにおいて、試験室12の温度を同じ温度に設定してもよい。ただし、着雪工程での試験室12の温度を積雪工程時の試験室12の温度よりも低くすることにより、供試体W上に積もった雪を効率的に固まらせることができるようになる。
【0030】
また、本実施形態では、積雪工程及び着雪工程がそれぞれ複数回行われるが、これに限られるものではない。積雪工程及び着雪工程をそれぞれ1回ずつのみ行うようにしてもよい。この場合でも、着雪工程において、供試体W上で雪片同士を結合させることができるため、供試体Wに雪を強固に付着させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、着雪試験装置10のノズル18が、供試体Wに向けて水の微粒子を水平向きに噴射する構成となっているが、これに限られない。例えば、図4に示すように、ノズル18は、試験室12内において下向きに配置されて、水の微粒子を降らせる構成であってもよい。
【0032】
(第2実施形態)
図5に示すように、第2実施形態では、落雪工程が行われる。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
第2実施形態では、少なくとも1回の積雪工程及び着雪工程が行われた後、供試体Wに積もった雪の少なくとも一部を融かして、雪を供試体Wから落下させるための落雪工程が制御器20によって行われる(ステップST20)。落雪工程では、制御器20は、試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)が積雪工程時の温度よりも上がるように空調機14を制御する。例えば、落雪工程での試験室12の温度は、着雪工程での試験室12内の温度よりも高い温度である+5~25℃に設定される。落雪工程は、予め定められた時間だけ継続させてもよく、あるいは、積雪が崩れることが確認されるまで行ってもよい。また、落雪工程では、ノズル18が停止される。したがって、ノズル18から空気及び水粒子が噴射されない。
【0034】
落雪工程を予め定められた時間だけ行う場合において、この継続時間は、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された時間であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された時間であってもよい。また、落雪工程での試験室12内の温度についても、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された温度であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された温度であってもよい。例えば、落雪工程での試験室12内の温度は、積雪工程又は着雪工程での試験室12内の温度よりも所定温度(例えば30℃)だけ高い温度となるように、制御器20が自動で設定することも可能である。
【0035】
なお、落雪工程は、試験室12内の温度を上昇させるものに限られない。例えば、供試体Wの温度を上昇させてもよい。この場合において、供試体Wを昇温させるには、図6に示すように、供試体Wを加熱するヒータ22を供試体Wに取り付けるようにしてもよい。あるいは、供試体Wに熱風を吹きかけるようにしてもよい。この場合の落雪工程での供試体Wの温度はプラスの温度であればよい。また、供試体Wが通電されることによって発熱するようなものである場合には、供試体Wに通電して、供試体Wが自己発熱するようにしてもよい。
【0036】
本実施形態によれば、物に積もった雪を落下させる現象を再現することができる。
【0037】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態に係る着雪試験方法を実施するための着雪試験装置10を示している。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
この着雪試験装置10には、雪を作るための造雪装置30が設けられている。造雪装置30は、試験室12に隣接する造雪室31と、造雪室31に配置されたノズル18とを含む。造雪室31は、試験室12よりも低温の温度環境を提供する部屋であり、造雪室31内でノズル18から噴射された微細な水粒子から雪を生成できる。
【0040】
造雪室31内は、例えば、制御器20によって-10℃以下の温度環境に調整される。このため、造雪室31には、造雪室31内の空気を冷却する冷却器32aと、冷却器32aで冷却された空気を造雪室31内に吹き出す送風機32bと、を含む造雪用空調機32が設けられている。つまり、制御器20は、造雪用空調機32を制御するように構成されている。
【0041】
この着雪試験装置10においては、造雪装置30と試験室12が分かれているため、試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)をマイナスの温度域に設定する必要はない。このため、積雪工程での試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)は+5℃以下に設定されればよい。つまり、第1実施形態に比べて、試験室12内の温度をより高い状態に設定できるため、寒冷地以外の地域の降雪を再現できる。一方、着雪工程での試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)は-1℃以下に設定される。つまり、着雪工程では第1実施形態と同様に、積もった雪を氷結させるため、マイナスの温度域に設定される。このように、着雪工程での試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)は、積雪工程での試験室12内の温度よりも低く設定される。積雪工程及び着雪工程での試験室12内の温度は、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された温度であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された温度であってもよい。例えば、着雪工程での試験室12内の温度は、積雪工程での試験室12内の温度よりも所定温度だけ低い温度となるように、制御器20が自動で設定することも可能である。
【0042】
なお、試験室12内の温度を下げるタイミングは、雪の供給停止に合わせればよく、ノズル18からの噴射停止前に温度を下げ始めてもよく、噴射停止後に温度を下げ始めてもよい。すなわち、着雪工程は、供試体Wの周囲温度がマイナスの温度に調整される期間を少なくとも含んでいればよい。
【0043】
造雪装置30が設けられる場合であっても、積雪工程での試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)がマイナスの温度域に設定されてもよい。この場合には、積雪工程と着雪工程とにおいて、試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)が同じ温度であってもよい。
【0044】
試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)が第1実施形態と異なる以外は第1実施形態と同じである。したがって、積雪工程及び着雪工程が繰り返し行われてもよく、1回ずつのみ行われてもよい。また、第2実施形態と同様に、落雪工程(ステップST20)を行ってもよい。
【0045】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0046】
(第4実施形態)
第4実施形態では、図8に示すように、着雪工程を行う前に、供試体Wに積もった雪を融解させる融雪工程(ステップST21)が行われる。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
融雪工程は、積雪工程に続いて行われる工程であり、この融雪工程では、供試体Wへの雪の供給が停止される一方で、積雪工程での試験室12内の温度(供試体Wの周囲温度)に比べて高い温度の試験室12内の温度に設定される。例えば、融雪工程での試験室12内の温度はプラスの温度域に設定される。このため、図9に示すように、積雪工程(ステップST11)が所定時間行われると、試験室12の温度が温度T1から温度T3に上げられるとともに、ノズル18からの水粒子の噴射が停止される。したがって、積雪工程において乾いた雪が供試体W上に積もったとしても、積もった雪の一部を融かすことができ、湿った雪が積もった状態にすることができる。そして、融雪工程が予め定められた時間だけ行われると、着雪工程に移行する(ステップST12)。
【0048】
融雪工程を行うための時間は、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された時間であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された時間であってもよい。また、融雪工程での試験室12内の温度についても、作業者が図略の設定器を用いて入力することによって制御器20に設定された温度であってもよく、あるいは、作業者が入力するのではなく制御器20によって自動で設定された温度であってもよい。例えば、融雪工程での試験室12内の温度は、積雪工程又は着雪工程での試験室12の温度よりも所定温度だけ高い温度で且つプラスの温度域となるように、制御器20が自動で設定することも可能である。
【0049】
本実施形態では、融雪工程が行われるため、積雪工程において乾いた雪を降らせる場合においても、着雪工程の前の段階で湿った雪が積もった状態にすることができる。したがって、積雪工程での雪質の制約を受けることなく、着雪工程において、雪を氷結させやすくできる。なお、着雪工程において積もった雪が湿った雪である場合には、乾いた雪が積もった場合に比べて、積もった雪が強固になる。
【0050】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第3実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。前記実施形態では、着雪試験装置10が供試体Wの周囲温度として、試験室12内の全体の温度を調整するようにしているが、試験室12内の全体の温度を調整する方法に限られない。例えば、着雪試験装置10がスポットクーラやスポットヒータ等の局所冷却装置または局所加熱装置を備え、制御器20がこの局所冷却装置または局所加熱装置を制御することで、供試体Wの周囲の温度を局所的に調整してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 :着雪試験装置
12 :試験室
14 :空調機
18 :ノズル
20 :制御器
ST11 :積雪工程
ST12 :着雪工程
ST13 :積雪工程
ST14 :着雪工程
ST20 :落雪工程
ST21 :融雪工程
W :供試体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9