(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051461
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】感圧センサーおよび感圧センサーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01L1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157649
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】米村 貴幸
(57)【要約】
【課題】受圧面内の圧力分布を検出可能であり、電極の剥離に伴う不具合が生じにくい感圧センサーおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】互いに表裏の関係を持つ第1面および第2面を有するシート状をなし、押圧されることにより電気抵抗値が変化する感圧導電体と、前記第1面に設けられている塗布膜である複数の第1電極と、前記第2面に設けられている塗布膜である複数の第2電極と、を備え、前記第1電極は、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向において互いに離間しており、前記第2電極は、前記第2方向に延在し、前記第1方向において互いに離間していることを特徴とする感圧センサー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに表裏の関係を持つ第1面および第2面を有するシート状をなし、押圧されることにより電気抵抗値が変化する感圧導電体と、
前記第1面に設けられている塗布膜である複数の第1電極と、
前記第2面に設けられている塗布膜である複数の第2電極と、
を備え、
前記第1電極は、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向において互いに離間しており、
前記第2電極は、前記第2方向に延在し、前記第1方向において互いに離間していることを特徴とする感圧センサー。
【請求項2】
前記第1電極および前記第2電極は、平均厚さが10μm以下である請求項1に記載の感圧センサー。
【請求項3】
前記感圧導電体は、感圧導電性エラストマーまたは感圧導電性ゴムである請求項1または2に記載の感圧センサー。
【請求項4】
互いに表裏の関係を持つ第1面および第2面を有するシート状をなし、押圧されることにより電気抵抗値が変化する感圧導電体を用意する準備工程と、
前記第1面に導電性粒子を含む塗布液を印刷することにより、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向において互いに離間する、複数の第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第2面に導電性粒子を含む塗布液を印刷することにより、前記第2方向に延在し、前記第1方向において互いに離間する、複数の第2電極を形成する第2電極形成工程と、
を有することを特徴とする感圧センサーの製造方法。
【請求項5】
前記第1電極形成工程および前記第2電極形成工程は、インクジェット印刷機により、前記塗布液を印刷する請求項4に記載の感圧センサーの製造方法。
【請求項6】
前記導電性粒子の平均粒径は、100nm以下である請求項5に記載の感圧センサーの製造方法。
【請求項7】
前記第1電極形成工程および前記第2電極形成工程は、前記塗布液を複数回重ねて印刷する請求項5または6に記載の感圧センサーの製造方法。
【請求項8】
前記第1電極形成工程および前記第2電極形成工程は、印刷された前記塗布液を、温度100℃以上140℃以下で、1分以上120分以下加熱する乾燥処理を含む請求項4または5に記載の感圧センサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサーおよび感圧センサーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットハンドで対象物を把持する場合、対象物からロボットハンドが受ける荷重を検出することが望まれている。例えば、ロボットハンドが対象物を押さえる力や、対象物がロボットハンドからずれ落ちようとする力を測定すれば、測定した力を把持力に反映させることができ、対象物を的確に把持することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、多点の感圧部を有する感圧センサーが開示されている。この感圧センサーは、一対のシート基材と、一方のシート基材に銀印刷してなる印加側電極と、他方のシート基材に銀印刷してなるレシーブ側電極と、印加側電極上に印刷形成されている感圧導電性インクと、レシーブ側電極上に印刷形成されている感圧導電性インクと、を備えている。印加側電極およびレシーブ側電極は、対向配置されており、交差部が感圧部になっている。シート基材には、ポリエチレンナフタレート製のシートが用いられている。また、感圧導電性インクは、導電性カーボンブラックと、シリコーンエラストマーと、を含むインクである。
【0004】
このような感圧センサーによれば、多数の感圧部を備えているため、これらの感圧部からの出力をセンシングに利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の感圧センサーは、前述したように、シート基材に銀印刷された電極を用いている。ところが、シート基材には、樹脂材料が用いられるため、電極との密着性を高めることが容易ではない。このため、シート基材と電極との剥離を防ぐことが課題となっている。特に、感圧センサーに受圧面に対して平行な成分を含む方向に力が加わった場合、剥離が生じやすい。このような力としては、例えば感圧センサーをロボットハンドに用いた場合、把持している対象物にかかる重力に伴って感圧センサーが受ける力が挙げられる。
【0007】
そこで、電極の剥離に伴う不具合が生じにくい感圧センサーの実現が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の適用例に係る感圧センサーは、
互いに表裏の関係を持つ第1面および第2面を有するシート状をなし、押圧されることにより電気抵抗値が変化する感圧導電体と、
前記第1面に設けられている塗布膜である複数の第1電極と、
前記第2面に設けられている塗布膜である複数の第2電極と、
を備え、
前記第1電極は、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向において互いに離間しており、
前記第2電極は、前記第2方向に延在し、前記第1方向において互いに離間している。
【0009】
本発明の適用例に係る感圧センサーの製造方法は、
互いに表裏の関係を持つ第1面および第2面を有するシート状をなし、押圧されることにより電気抵抗値が変化する感圧導電体を用意する準備工程と、
前記第1面に導電性粒子を含む塗布液を印刷することにより、第1方向に延在し、前記第1方向と交差する第2方向において互いに離間する、複数の第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第2面に導電性粒子を含む塗布液を印刷することにより、前記第2方向に延在し、前記第1方向において互いに離間する、複数の第2電極を形成する第2電極形成工程と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る感圧センサーを示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す感圧センサーと対象物とが接触したとき、対象物の硬さの違いが弾性体に加わる力の分布に及ぼす影響を説明するための概念図である。
【
図4】
図1に示す感圧センサーと対象物とが接触したとき、対象物の硬さの違いが弾性体に加わる力の分布に及ぼす影響を説明するための概念図である。
【
図5】センサー出力回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図1に示す感圧センサーの製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】第1電極形成工程において、感圧導電体の第1面に形成した複数の第1電極の例を示す平面図である。
【
図8】第2電極形成工程において、感圧導電体の第2面に形成した複数の第2電極の例を示す平面図である。
【
図9】弾性体配置工程において、第1面に配置される弾性体の位置を示す平面図である。
【
図10】実施形態に係るロボットを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の感圧センサーおよび感圧センサーの製造方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
1.感圧センサー
まず、実施形態に係る感圧センサーについて説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る感圧センサー100を示す分解斜視図である。
図2は、
図1のB-B線断面図である。なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸としてX軸、Y軸およびZ軸を設定している。各軸を矢印で表し、先端側を「プラス」、基端側を「マイナス」とする。以下の説明で、例えば「X軸方向」とは、X軸のプラス方向およびマイナス方向の双方を含む。
【0014】
感圧センサー100は、
図1に示すように、感圧導電体110と、弾性体120と、複数の第1電極130と、複数の第2電極140と、演算部170と、を有する。感圧導電体110は、押圧されることにより電気抵抗値が変化する部材である。弾性体120は、弾性を有し、対象物と接触すると、対象物から受ける接触力によって変形する。
【0015】
1.1.感圧導電体
感圧導電体110は、
図1に示すようにシート状をなしており、互いに表裏の関係を持つ第1面111および第2面112を有する。
【0016】
感圧導電体110の平均厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上3.0mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上1.5mm以下であるのがより好ましい。感圧導電体110の平均厚さが前記範囲内であれば、圧力の有無で生じる電気抵抗率の差を十分に大きく確保することができるとともに、感圧センサー100が必要以上に厚くなるのを避けることができる。
【0017】
なお、感圧導電体110の平均厚さは、感圧導電体110の厚さを10か所で測定したとき、得られた測定値の平均値である。
【0018】
感圧導電体110の構成材料としては、例えば、感圧導電性エラストマー、感圧導電性ゴム、感圧導電性樹脂等が挙げられる。このうち、良好な弾性を有し、受けた圧力の変化に対する電気抵抗値の変化幅が大きいという観点で、感圧導電性エラストマーまたは感圧導電性ゴムが好ましく用いられる。感圧導電体110は、マトリックスであるエラストマー、ゴムまたは樹脂に、導電性物質を分散させた材料である。
【0019】
導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、炭素繊維のような炭素系材料、酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウムのような金属酸化物材料、銅、銀、ニッケルのような金属材料等が挙げられる。また、導電性物質の形態としては、例えば、粉末、顆粒、繊維片等が挙げられる。
【0020】
エラストマーとしては、例えば、熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を示すが、常温ではゴム弾性を示す材料を指す。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)やエチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)のようなオレフィン系エラストマー、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS)やスチレン-エチレン-ブタジエン共重合体(SEBS)のようなスチレン系エラストマー、シリコン系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ナイロン系エラストマー、エステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、およびそれらのエラストマーに反応部位(二重結合、無水カルボキシル基等)を導入した変性物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
ゴムとしては、例えば、架橋ゴムが挙げられる。架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等の各種架橋化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
樹脂としては、例えば、ポリエチレンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度0.90未満の超低密度ポリエチレン(VLDPE)およびエチレンと他のα-オレフィン、不飽和カルボン酸またはその誘導体の中から選ばれる2種以上の化合物の共重合体、例えばエチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0023】
導電性物質の含有量は、感圧導電体110の1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、5質量%以上30質量%以下であるのがより好ましい。
【0024】
導電性物質が粉末である場合、粉末の平均粒径は、特に限定されないが、5nm以上10μm以下であるのが好ましく、20nm以上5μm以下であるのがより好ましい。なお、平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒子径分布測定装置により、体積基準の粒度分布を取得し、小径側からの累積頻度が50%になるときの粒径である。
【0025】
感圧導電体110は、例えば、導電性物質およびマトリックスの構成材料を含む組成物を混練し、シート状に延伸することによって作製される。
【0026】
1.2.電極
第1電極130は、感圧導電体110の第1面111に設けられた塗布膜である。また、第2電極140は、感圧導電体110の第2面112に設けられた塗布膜である。塗布膜とは、液相成膜法によって形成された膜のことである。したがって、塗布膜は、導電性粒子を含む液状被膜が形成された後、液状被膜の固化または硬化を経て作製されている。これにより、感圧導電体110に対して強固に密着した第1電極130および第2電極140が得られる。その結果、感圧センサー100に対し、例えば第1面111や第2面112に平行な成分の力が加わっても、第1電極130および第2電極140の剥離が抑制され、剥離に伴う不具合が生じにくくなる。これにより、信頼性の高い感圧センサー100が得られる。
【0027】
なお、本明細書において「面に設けられる」とは、その面に直接配置される場合に加え、任意の介在物を介して配置される場合も含む。
【0028】
第1電極130および第2電極140の各構成材料は、前述した導電性粒子が金属粒子である場合、金属粒子同士が融着した融着物を含んでいる。融着とは、金属粒子同士の少なくとも一部が融合または焼結した状態をいう。融合には、ナノサイズの金属粒子に特有の自発的な融合も含む。また、前述した粒径の金属粒子は、第1面111や第2面112の凹部に容易に侵入できるため、金属粒子同士が融着するとき、機械的アンカー効果が生じる。このため、第1電極130および第2電極140は、感圧導電体110に対して強固に密着する。
【0029】
導電性粒子の構成材料としては、例えば、Al、Cu、Ni、Ag、Au等の単体またはこれらの金属元素を含む合金、酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウムまたはこれらの複合物のような金属酸化物等が挙げられる。
【0030】
第1電極130および第2電極140の各平均厚さは、特に限定されないが、10μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上5μm以下であるのがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、第1電極130および第2電極140の導通抵抗を十分に低く抑えつつ、第1電極130および第2電極140の剛性を下げることができる。これにより、第1電極130および第2電極140の剥離をより確実に抑制することができる。
【0031】
なお、第1電極130および第2電極140の各平均厚さは、10か所以上の厚さの測定値を平均した値である。また、厚さの測定には、切断面を拡大観察し、画像上で行う方法を用いることができる。
【0032】
図1に示す感圧センサー100は、3本の第1電極130と、3本の第2電極140と、を有する。
【0033】
第1電極130は、それぞれ、電極部131と、配線部132と、を含んでいる。電極部131は、X軸方向(第1方向)に延在し、X軸方向と交差するY軸方向(第2方向)において互いに離間している。配線部132は、一方の端部が、電極部131のX軸プラス側の端部に接続され、他方の端部が、感圧導電体110のY軸プラス側の端部まで引き回されている。
【0034】
第2電極140は、それぞれ、電極部141と、配線部142と、を含んでいる。電極部141は、Y軸方向に延在し、X軸方向において互いに離間している。配線部142は、一方の端部が、電極部141のY軸プラス側の端部に接続され、他方の端部が、感圧導電体110のY軸プラス側の端部まで引き回されている。
【0035】
このように、配線部132、142は、いずれも、他方の端部が、感圧導電体110のY軸プラス側の端部まで引き出されているため、
図1に示す別の配線145との接続作業に適している。
【0036】
なお、第2方向は、第1方向と交差していればよいが、その交差角は、45°以上90°以下であるのが好ましく、60°以上90°以下であるのがより好ましい。交差角とは、第1方向と第2方向とがなす角度のうち、90°以下となる角度である。本実施形態では、第1方向と第2方向とが直交している。
【0037】
感圧導電体110をZ軸方向、つまり第1面111の法線上から平面視したとき、電極部131および電極部141は、互いに交差している。これらの交差部と、それに対応する感圧導電体110の部分とで、感圧部150が構成される。感圧部150は、弾性体120に加わった力が伝搬したとき、押圧力の変化を検出する。
【0038】
図1に示す感圧センサー100は、9個の感圧部150を有している。9個の感圧部150は、Z軸方向から見たとき、格子状に並んでいる。このため、感圧センサー100は、受圧面内の圧力分布を検出することができる。受圧面とは、例えば、第1面111に平行な面である。
【0039】
また、電極部131、141は、それぞれ互いに幅が等しく、かつ、直線状に延在しているのが好ましい。これにより、Z軸方向から見て電極部131と電極部141とを交差させたとき、交差部同士の面積を一定に制御しやすくなる。具体的には、電極部131、141が前記条件を満たしている場合、電極部131および電極部141の配置が、設計上の位置からずれたとしても、交差部同士の面積は一定になる。ずれ方には、X軸方向の並進ずれ、Y軸方向の並進ずれ、Z軸まわりの回転ずれ等があるが、いずれの場合も同様である。このため、9個の感圧部150から出力される検出信号の強度は、感圧部150に印加される力の大きさを精度よく反映したものとなる。その結果、力の分布をより精度よく検出することができる。また、感圧センサー100の製造難易度を下げることができる。特に、感圧導電体110をロール・ツー・ロールで繰り出しながら印刷法で電極を形成する場合、表面と裏面との位置ずれの許容幅を大きくできる。これにより、製造コストの削減、製造効率の向上を図りやすくなる。
【0040】
なお、第1電極130の本数および第2電極140の本数は、それぞれ複数であれば、特に限定されず、2本であっても、4本以上であってもよい。また、感圧部150の数も、特に限定されないが、力の分布を精度よく検出するためには、6個以上であるのが好ましく、9個以上であるのがより好ましい。
【0041】
1.3.弾性体
弾性体120は、弾性を有し、9個の感圧部150を覆うように第1面111に配置されている。なお、弾性体120は、第1面111に直接配置されていてもよいし、任意の介在物を介して配置されていてもよい。弾性とは、力が加えられたときには、力に応じて変形し、力が除かれると元の形状に戻ろうとする性質のことをいう。したがって、弾性体120に力が加わると、弾性体120が変形し、力が伝搬する。
【0042】
また、弾性体120は、
図2に示すように、凸曲面121を有している。凸曲面121は、第1面111から遠ざかる方向に突出する球面状または非球面状の曲面である。なお、凸曲面121の形状は、特に限定されない。
【0043】
図2に示す凸曲面121は、Z軸プラス側へ最も突出している部位である頂部122と、頂部122の周囲にあって突出量が頂部122よりも小さい周縁部123と、を有する。つまり、凸曲面121では、頂部122から周縁部123に向かって突出量が小さくなっている。
【0044】
なお、本明細書では、凸曲面121を有する物体の形状を「円蓋形状」という。円蓋形状をなす弾性部材は、加えられた力を効率よく伝搬できる特性を持っているため、感圧センサー100に用いる弾性体120として有用である。
【0045】
弾性体120の構成材料としては、例えば、ゴム、エラストマー、発泡樹脂等が挙げられる。このうち、ゴムとしては、例えば、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。
【0046】
図3および
図4は、それぞれ、
図1に示す感圧センサー100と対象物とが接触したとき、対象物の硬さの違いが弾性体120に加わる力の分布に及ぼす影響を説明するための概念図である。なお、
図3および
図4では、前述した格子状に並ぶ9個の感圧部150のうち、中央の1個を感圧部150aとし、それ以外の8個を感圧部150bとしている。
【0047】
図3では、鉄塊のような硬い対象物Whに、感圧センサー100の弾性体120を押し付けたとき、対象物Whから弾性体120に加わる接触力F1を示している。また、
図4では、スポンジのような柔らかい対象物Wsに、感圧センサー100の弾性体120を押し付けたとき、対象物Wsから弾性体120に加わる接触力F1、F2を示している。
【0048】
図3に示す例では、対象物Whが弾性体120よりも硬いため、弾性体120が対象物Whにめり込む量が小さい。このため、頂部122に接触力F1が生じる。その結果、感圧部150aにおいて圧力の変化を検出できる一方、感圧部150bでは圧力の変化をほとんど検出できない。
【0049】
図4に示す例では、対象物Wsが弾性体120よりも柔らかいため、弾性体120が対象物Wsにめり込む量が大きくなる。このため、頂部122に接触力F1が生じるだけでなく、周縁部123に接触力F2が生じる。その結果、感圧部150a、150bの双方で圧力の変化を検出できるとともに、感圧部150aで検出される圧力の変化が、感圧部150bで検出される圧力の変化よりも大きくなる。
【0050】
したがって、感圧部150aから出力される検出信号と、感圧部150bから出力される検出信号と、を比較することにより、接触力F1、F2の印加状態を捉えることができる。これにより、対象物Wh、Wsの硬さを評価することができる。また、対象物Wh、Wsの硬さが互いに同じである場合には、凹凸の有無といった形状的な違いや部分的な材質の違い等を、対象物Wh、Ws間で評価することができる。
【0051】
また、感圧センサー100を例えばロボットの把持部に適用した場合、感圧センサー100を介して把持する物体の情報を取得することが可能になる。例えば、9個の感圧部150で検出された力の分布に基づいて、物体から弾性体120に加えられた力の方向等を取得することができる。これらの情報を把持力に反映させることにより、物体をより安定して把持することができ、把持を伴う各種作業の効率や成功率を高めることができる。
【0052】
以上、弾性体120について説明したが、弾性体120は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよいし、他の部材で代替されていてもよい。他の部材としては、例えば、弾性体120とは異なる形状を有する弾性体が挙げられる。
【0053】
1.4.演算部
演算部170は、
図1に示す配線145を介して、第1電極130および第2電極140と電気的に接続されている。演算部170は、3本の第1電極130から1本を選択するとともに、3本の第2電極140から1本を選択し、選択された電極間の電気抵抗値に基づく検出信号を取得する機能を有する。演算部170は、選択する電極の組み合わせを変えることにより、9個の感圧部150の全てについて、検出信号を取得することができる。
【0054】
演算部170は、
図5に示すセンサー出力回路160を有していてもよい。
図5は、センサー出力回路160の構成例を示す回路図である。
【0055】
センサー出力回路160は、固定抵抗RLと、感圧部150に相当する感圧素子抵抗VR_Cと、を有している。固定抵抗RLは、電気抵抗値が一定の抵抗素子である。感圧素子抵抗VR_Cは、感圧部150に加わる力に応じて電気抵抗値が変化する抵抗素子である。固定抵抗RLおよび感圧素子抵抗VR_Cは、センサー用電源電圧VinとグランドGNDとの間に、この順で直列に接続されている。そして、固定抵抗RLと感圧素子抵抗VR_Cとの間からセンサー出力信号Voutが出力されるように構成されている。
【0056】
このようなセンサー出力回路160では、下記式に基づいてセンサー出力信号Voutが求められる。
Vout=VR_C/(RL+VR_C)×Vin
【0057】
得られるセンサー出力信号Voutの強度は、検出対象の感圧部150の電気抵抗値に対応している。
【0058】
なお、センサー出力回路160は、必要に応じて、
図5に示す回路構成に対して任意の要素が追加または置換されたものであってもよい。
【0059】
演算部170は、センサー出力信号Voutをアナログ/デジタル変換した後、得られた信号に基づいて、対象物の硬さやその他の情報を算出する機能を有していてもよい。
【0060】
なお、感圧センサー100は、演算部170による演算結果を出力する図示しない出力部、演算部170にデータを入力する図示しない入力部等を備えていてもよい。出力部としては、例えば、液晶表示装置等が挙げられる。また、入力部としては、例えば、キーボード、タッチパネル等が挙げられる。
【0061】
2.感圧センサーの製造方法
次に、実施形態に係る感圧センサーの製造方法について説明する。以下の説明では、前述した感圧センサー100の製造方法を例にして説明する。
【0062】
図6は、
図1に示す感圧センサー100の製造方法を説明するための工程図である。
図6に示す製造方法は、準備工程S102と、第1電極形成工程S104と、第2電極形成工程S106と、弾性体配置工程S108と、を有する。
【0063】
2.1.準備工程
準備工程S102では、シート状をなす感圧導電体110を用意する。感圧導電体110は、前述したように、互いに表裏の関係を持つ第1面111および第2面112を有し、押圧されることにより電気抵抗値が変化する部材である。
【0064】
感圧導電体110には、必要に応じて、後述する工程で電極を形成するための下地処理が施されていてもよい。下地処理としては、例えば、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、粗面化処理、カップリング剤処理等が挙げられる。
【0065】
2.2.第1電極形成工程
図7は、第1電極形成工程S104において、感圧導電体110の第1面111に形成した複数の第1電極130の例を示す平面図である。
【0066】
第1電極形成工程S104では、第1面111に導電性粒子を含む塗布液を印刷する。これにより、
図7に示すように、塗布膜である複数の第1電極130を形成する。
【0067】
印刷には、各種の印刷機が用いられる。印刷機の例としては、スクリーン印刷機、スクリーンオフセット印刷機、インクジェット印刷機、凸版印刷機、グラビア印刷機、グラビアオフセット印刷機、フレキソオフセット印刷機、反転転写印刷機、マイクロコンタクト印刷機等が挙げられる。このうち、インクジェット印刷機が好ましく用いられる。インクジェット印刷機は、凸版、凹版、孔版等の印刷版を使う必要がないため、塗布膜に印刷版の跡が残らず、精度の高い塗布膜を低コストで形成することができる。
【0068】
印刷後の塗布膜には、必要に応じて乾燥処理を行う。乾燥処理は、使用する塗布液の組成に応じて適宜選択される。乾燥処理を行うことにより、溶媒の除去を促進するとともに、第1電極130の下地に対する密着性をより高めることができる。
【0069】
例えば、インクジェット印刷用の塗布液を用いた場合、好ましくは、温度100℃以上140℃以下で、1分以上120分以下加熱すればよい。インクジェット印刷機に用いられる塗布液(インク)には、沸点の低い溶媒、つまり、粘度の低い溶媒を用いることができる。このため、印刷後の乾燥条件を比較的低温または短時間にすることができる。その結果、乾燥処理に伴う感圧導電体110の変性、劣化等を抑制することができる。なお、この乾燥条件は、より好ましくは、温度110℃以上130℃以下で、時間5分以上60分以下とされる。
【0070】
また、インクジェット印刷機によれば、他の印刷機に比べてより薄い第1電極130を形成することが可能になる。これにより、前述したように、第1電極130の剛性を下げることができるので、第1電極130が剥離しにくくなる。また、第1電極130の剛性が下がることにより、第1電極130を介した機械的クロストークの発生を抑制することができる。機械的クロストークとは、1つの感圧部150が力を受けたとき、その力が第1電極130や第2電極140を介して隣り合う感圧部150で検出されてしまう現象である。
【0071】
第1電極130をより薄くすることができれば、剛性を下げられるため、機械的クロストークを抑制することができる。これにより、力の分布をより精度よく検出することができる。
【0072】
一方、インクジェット印刷機によれば、同じ領域に対して塗布液を複数回印刷することにより、塗布膜を重ねることができる。これにより、1回の印刷では実現できない厚さの塗布膜を得ることができる。その結果、導通抵抗が低い第1電極130を効率よく製造することができる。なお、インクジェット印刷機では、塗布膜が乾燥する前に、別の塗布膜を重ねることが可能である。このため、複数回の印刷を行う場合でも、乾燥処理を挟む必要がなく、高速化が容易である。
【0073】
また、第1電極形成工程S104では、従来のように基板に対して電極を形成した後、電極と感圧導電体とを接触させるのではなく、感圧導電体110に直接、第1電極130を形成している。これにより、基板を介した機械的クロストークの発生も抑制することができる。それに加え、従来技術では、電極と感圧導電体との接触抵抗がバラついて、力の検出精度が低下するおそれがあった。これに対し、本実施形態では、感圧導電体110に直接、第1電極130を形成する。このため、本実施形態では、接触抵抗がバラつくという課題を解消することができる。
【0074】
塗布液に含まれる導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属酸化物粒子等が挙げられる。金属粒子の構成材料としては、例えば、Al、Cu、Ni、Ag、Au等の単体またはこれらの金属元素を含む合金等が挙げられる。また、金属酸化物粒子の構成材料としては、例えば、酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウムまたはこれらの複合物等が挙げられる。
【0075】
導電性粒子の平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、1nm以上30nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることがさらに好ましい。このような粒径の導電性粒子を含む塗布液を用いることにより、薄くてパターン精度の高い第1電極130および第2電極140を形成することができる。また、このような粒径の導電性粒子には、ナノサイズに特有の自発的な融合が起こりやすく、それによって導通抵抗が低く、かつ、感圧導電体110への密着性に優れた第1電極130および第2電極140を形成することができる。さらに、塗布膜に乾燥処理を行う場合には、より温和な乾燥条件を採用することが可能になる。
【0076】
なお、導電性粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒子径分布測定装置により、体積基準の粒度分布を取得し、小径側からの累積頻度が50%になるときの粒径である。
【0077】
2.3.第2電極形成工程
図8は、第2電極形成工程S106において、感圧導電体110の第2面112に形成した複数の第2電極140の例を示す平面図である。
【0078】
第2電極形成工程S106では、第2面112に導電性粒子を含む塗布液を印刷する。これにより、
図8に示すように、塗布膜である複数の第2電極140を形成する。なお、第2電極形成工程S106における第2電極140の形成方法は、第1電極形成工程S104における第1電極130の形成方法と基本的には同様である。
【0079】
なお、第1電極130と第2電極140とで、印刷条件は同じであっても、異なっていてもよい。例えば、第1電極130と第2電極140とで、厚さや幅を互いに同じにしてもよいし、互いに異ならせてもよい。
【0080】
2.4.弾性体配置工程
図9は、弾性体配置工程S108において、第1面111に配置される弾性体120の位置を示す平面図である。
【0081】
弾性体配置工程S108では、9個の感圧部150を覆うように弾性体120を配置する。なお、本工程は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0082】
その後、必要に応じて、
図1に示す演算部170を接続する。以上のようにして感圧センサー100が得られる。
【0083】
3.ロボット
次に、前述した感圧センサーを備える把持装置およびロボットについて説明する。
【0084】
図10は、実施形態に係るロボット1を示す概略構成図である。
図10に示すロボット1は、把持装置2と、ロボットアーム3と、カメラ4(撮像部)と、第2制御部5と、を備える。
【0085】
3.1.把持装置
把持装置2は、ハンド部20と、第1制御部28と、を備える。このうち、ハンド部20は、把持部22と、駆動部24と、感圧センサー100の一部と、対向部27と、を備える。
【0086】
把持部22は、開閉可能な一対の指部221、222を備える。指部221、222は、
図10に示す移動方向Aにおいて互いに接近または離間するように、駆動部24によって駆動される。これにより、把持部22は、対象物Wを挟んで把持したり、把持を解除したりすることができる。
【0087】
指部221には、感圧センサー100が取り付けられている。感圧センサー100は、対象物Wから受ける接触力を検出し、検出信号を出力する。対向部27は、感圧センサー100と対向する位置に設けられ、感圧センサー100との間で対象物Wを挟持する。
【0088】
駆動部24は、例えば、図示しないラック・アンド・ピニオン機構と、図示しない1つのモーターと、を有する。このような駆動機構を備えることにより、指部221、222を並進させることができる。なお、駆動部24が備える駆動機構は、これに限定されない。例えば、2つのモーターで指部221、222を独立して並進させるようになっていてもよい。また、把持部22は、指部221と指部222とがなす角度が変化するように開閉してもよい。
【0089】
第1制御部28は、
図10に示すように演算部170を含んでいる。そして、演算部170から出力される検出信号に基づいて、駆動部24の動作を制御する。具体的には、第1制御部28は、把持部22と対象物Wとが接触するまで、把持部22と対象物Wとの距離を狭めることにより、把持部22に対象物Wを把持させるように駆動部24の動作を制御する。なお、本明細書において「把持部22と対象物Wとの距離」とは、感圧センサー100の弾性体120と、対象物Wの重心と、の距離のことをいう。
【0090】
このような構成を有する把持装置2では、感圧センサー100が対象物Wから受ける接触力に基づいて、第1制御部28が駆動部24の動作を制御するように構成されていてもよい。これにより、カメラ4で撮像された画像から対象物Wの形状を取得することなく、対象物Wの把持動作が可能になる。その結果、把持装置2の構成の簡素化および低コスト化を図ることができる。また、第1制御部28は、感圧センサー100によって検出された対象物Wの情報を踏まえて把持部22の動作を制御してもよい。これにより、作業成功率および作業効率が高い把持装置2を実現することができる。
【0091】
対向部27は、弾性体120と同様の部材である。対象物Wは、感圧センサー100と対向部27との間に挟まれることで把持される。なお、対向部27も、感圧センサー100と同様の部材であってもよい。
【0092】
3.2.ロボットアーム
図10に示すロボットアーム3は、水平多関節ロボット用のアームである。ロボットアーム3には、ハンド部20が取り付けられている。これにより、ロボットアーム3は、ハンド部20の位置や姿勢を変更することができる。水平多関節ロボットは、アームの回動面が水平であるため、回動速度を高めやすい。このため、水平多関節ロボットを用いることにより、ハンド部20の位置や姿勢を速やかに変更することができ、把持装置2による作業効率を高めることができる。なお、ロボットアーム3の形態は、これに限定されず、垂直多関節ロボット用のアームであってもよい。
【0093】
3.3.カメラ
カメラ4は、対象物Wを撮像し、撮像した画像を第2制御部5に送信する。第2制御部5は、後述するように、取得した画像に基づいて、ロボットアーム3の動作を制御する。これにより、対象物Wの位置に合わせて把持部22を移動させることができる。
【0094】
なお、カメラ4は、対象物Wの外形を撮像可能であれば、カラーカメラであっても、モノクロカメラであってもよい。また、対象物Wの位置を検出可能であれば、カメラ4以外のセンサー等で代替されてもよい。
【0095】
3.4.第2制御部
第2制御部5は、ロボットアーム3の動作を制御する機能、カメラ4で撮像した画像に基づいて対象物Wの位置を算出する機能、対象物Wの位置および把持部22の位置に基づいて、把持部22を移動させる軌道を算出する機能等を有する。
【0096】
4.前記実施形態が奏する効果
以上のように、前記実施形態に係る感圧センサー100は、シート状をなす感圧導電体110と、複数の第1電極130と、複数の第2電極140と、を備える。感圧導電体110は、互いに表裏の関係を持つ第1面111および第2面112を有し、押圧されることにより電気抵抗値が変化する。第1電極130は、第1面111に設けられている塗布膜である。第2電極140は、第2面112に設けられている塗布膜である。
【0097】
また、第1電極130は、X軸方向(第1方向)に延在し、X軸方向と交差するY軸方向(第2方向)において互いに離間している。第2電極140は、Y軸方向に延在し、X軸方向において互いに離間している。
【0098】
このような感圧センサー100によれば、格子状に並んだ複数の感圧部150が形成されるため、受圧面内の圧力分布を検出可能であり、かつ、感圧導電体110に直接設けられた塗布膜で第1電極130および第2電極140が構成されるため、第1電極130や第2電極140の剥離に伴う不具合の発生を抑制することができる。これにより、例えば感圧センサー100に押し付けられる対象物の硬さや感圧センサー100に加わる力の方向等を精度よく取得可能であり、かつ、信頼性の高い感圧センサー100を実現することができる。
【0099】
また、第1電極130および第2電極140は、平均厚さが10μm以下であることが好ましい。これにより、第1電極130および第2電極140の導通抵抗を十分に低く抑えつつ、第1電極130および第2電極140の剛性を下げることができる。これにより、第1電極130および第2電極140の剥離をより確実に抑制することができる。また、第1電極130や第2電極140を介した機械的クロストークの発生を抑制することができる。
【0100】
また、感圧導電体110は、感圧導電性エラストマーまたは感圧導電性ゴムであることが好ましい。これにより、良好な弾性を有し、受けた圧力の変化に対する電気抵抗値の変化幅が大きい感圧導電体110が得られる。
【0101】
また、感圧センサーの製造方法は、準備工程S102と、第1電極形成工程S104と、第2電極形成工程S106と、を有する。準備工程S102では、互いに表裏の関係を持つ第1面111および第2面112を有するシート状をなし、押圧されることにより電気抵抗値が変化する感圧導電体110を用意する。第1電極形成工程S104では、第1面111に導電性粒子を含む塗布液を印刷することにより、X軸方向(第1方向)に延在し、X軸方向と交差するY軸方向(第2方向)において互いに離間する、複数の第1電極130を形成する。第2電極形成工程S106では、第2面112に導電性粒子を含む塗布液を印刷することにより、Y軸方向に延在し、X軸方向において互いに離間する、複数の第2電極140を形成する。
【0102】
このような感圧センサーの製造方法によれば、感圧導電体110に塗布液を印刷して第1電極130および第2電極140を形成するため、第1電極130や第2電極140の剥離に伴う不具合の発生を抑制可能な信頼性の高い感圧センサー100を製造することができる。また、第1電極130および第2電極140を延在方向が交差するように形成することで、格子状に並んだ複数の感圧部150を形成することができる。これにより、受圧面内の圧力分布を検出可能な高い感圧センサー100を製造することができる。
【0103】
また、第1電極形成工程S104および第2電極形成工程S106では、インクジェット印刷機により、塗布液を印刷することが好ましい。インクジェット印刷機では、塗布膜に印刷版の跡が残らず、精度の高い塗布膜を低コストで形成することができる。また、インクジェット印刷機に用いられる塗布液には、沸点の低い溶媒、つまり、粘度の低い溶媒を用いることができる。このため、印刷後の乾燥条件を比較的低温または短時間にすることができる。その結果、乾燥処理に伴う感圧導電体110の変性、劣化等を抑制することができる。さらに、インクジェット印刷機によれば、他の印刷機に比べてより薄い第1電極130および第2電極140を形成することが可能になる。
【0104】
また、導電性粒子は、平均粒径が100nm以下の金属粒子であることが好ましい。このような導電性粒子を含む塗布液を用いることにより、薄くてパターン精度の高い第1電極130および第2電極140を形成することができる。また、導通抵抗が低く、かつ、感圧導電体110への密着性に優れた第1電極130および第2電極140を形成することができる。さらに、より温和な乾燥条件を採用することが可能になる。
【0105】
また、第1電極形成工程S104および第2電極形成工程S106では、塗布液を複数回重ねて印刷するようにしてもよい。これにより、塗布膜を重ねることができるので、1回の印刷では実現できない厚さの塗布膜を得ることができる。その結果、導通抵抗が低い第1電極130および第2電極140を効率よく製造することができる。
【0106】
また、第1電極形成工程S104および第2電極形成工程S106は、印刷された塗布液を、温度100℃以上140℃以下で、1分以上120分以下加熱する乾燥処理を含むことが好ましい。これにより、乾燥処理に伴う感圧導電体110の変性、劣化等を抑制することができる。
【0107】
以上、本発明に係る感圧センサーおよび感圧センサーの製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0108】
例えば、本発明に係る感圧センサーは、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成物に置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。また、本発明に係る感圧センサーの製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…ロボット、2…把持装置、3…ロボットアーム、4…カメラ、5…第2制御部、20…ハンド部、22…把持部、24…駆動部、27…対向部、28…第1制御部、100…感圧センサー、110…感圧導電体、111…第1面、112…第2面、120…弾性体、121…凸曲面、122…頂部、123…周縁部、130…第1電極、131…電極部、132…配線部、140…第2電極、141…電極部、142…配線部、145…配線、150…感圧部、150a…感圧部、150b…感圧部、160…センサー出力回路、170…演算部、221…指部、222…指部、A…移動方向、F1…接触力、F2…接触力、GND…グランド、RL…固定抵抗、S102…準備工程、S104…第1電極形成工程、S106…第2電極形成工程、S108…弾性体配置工程、VR_C…感圧素子抵抗、Vin…センサー用電源電圧、Vout…センサー出力信号、W…対象物、Wh…対象物、Ws…対象物