(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051462
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】光源装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240404BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240404BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240404BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240404BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20240404BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20240404BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240404BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240404BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21S2/00 340
F21V9/30
F21V9/08 100
F21V7/28 240
F21V5/04 200
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157650
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】安松 航
(72)【発明者】
【氏名】松本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】進藤 直哉
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA02
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA45
2K203FA62
2K203GA23
2K203GA26
2K203GA34
2K203GA35
2K203GA36
2K203GA40
2K203GA44
2K203GA52
2K203HA02
2K203HA14
2K203HA27
2K203HA43
2K203HA74
2K203HA92
2K203HB09
2K203HB22
2K203HB24
2K203MA04
2K203MA06
(57)【要約】
【課題】色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替え可能な光源装置を提供する。
【解決手段】本発明の光源装置は、第1偏光成分と第2偏光成分とを含む第1波長帯の第1光を射出する第1光源部と、第2波長帯の第2光を射出する第2光源部と、第1光を第3波長帯の第3光に変換する波長変換素子と、第1光と第2光と第3光とを合成する光合成素子と、第3光が入射する場合に第3波長帯のうちの一部の波長帯の光を減光させるフィルターと、を備える。光合成素子は、第1光のうち、第1偏光成分の光を反射して第2偏光成分の光を透過することにより、第1偏光成分の光および第2偏光成分の光のうちのいずれか一方を波長変換素子に向けて射出し、第1光および第2光と、第3光と、のいずれか一方を透過し、いずれか他方を反射する。フィルターは、第3光がフィルターを透過する第1位置と、第3光がフィルターを透過しない第2位置と、の間で移動可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1偏光成分と、前記第1偏光成分とは異なる第2偏光成分と、を含む第1波長帯の第1光を射出する第1光源部と、
前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光を射出する第2光源部と、
前記第1光を、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯の第3光に変換する波長変換素子と、
前記第1光と前記第2光と前記第3光とを合成して合成光を射出する光合成素子と、
前記第3光が入射し、前記第3波長帯のうちの一部の波長帯の光を減光させるフィルターと、
を備え、
前記光合成素子は、
前記第1光源部から射出される前記第1光のうち、前記第1偏光成分の光を反射して前記第2偏光成分の光を透過することにより、前記第1偏光成分の光および前記第2偏光成分の光のうちのいずれか一方を前記波長変換素子に向けて射出し、
前記第1光および前記第2光と、前記第3光と、のいずれか一方を透過し、いずれか他方を反射し、
前記フィルターは、
前記第3光が前記フィルターを透過する第1位置と、前記第3光が前記フィルターを透過しない第2位置と、の間で移動可能である、光源装置。
【請求項2】
前記第1光と前記第2光とを拡散させる拡散装置をさらに備える、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記拡散装置は、前記光合成素子と前記第2光源部との間に配置され、
前記拡散装置は、前記光合成素子により反射された前記第1光が入射する第1面に前記第1光と前記第2光とを拡散させる拡散構造を有し、前記第1面とは反対側の第2面に、前記第1光を反射し前記第2光を透過する反射膜を有する、請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記フィルターの光入射側に設けられ、前記第3光を略平行化する平行化素子をさらに備える、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記フィルターの光入射面は、前記第3光の主光線に対して90度以外の角度で交差する、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第1光源部は、
前記第1光を射出する第1発光素子と、
前記第1発光素子と前記光合成素子との間に設けられ、前記第1光に位相差を付与する第1位相差素子と、
を備え、
前記光合成素子から射出される前記第1光が前記波長変換素子に入射し、
前記第1位相差素子は、前記第1位相差素子の光入射面に交差する軸を中心として回転可能である、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記フィルターが前記第1位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値と、前記フィルターが前記第2位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値とが、互いに異なるように制御する制御部をさらに備える、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第1光は青色光であり、
前記第2光は赤色光であり、
前記第3光は緑色光であり、
前記制御部は、前記フィルターが前記第1位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値を、前記フィルターが前記第2位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値よりも大きくする制御を行う、請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記フィルターが前記第1位置に位置する場合の前記第2光源部に供給する電流値を、前記フィルターが前記第2位置に位置する場合の前記第2光源部に供給する電流値よりも小さくする制御をさらに行う、請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光合成素子は、前記波長変換素子から第1方向に沿って入射する前記第3光と、前記第2光源部から前記第1方向と交差する第2方向に沿って入射する前記第2光と、を合成し、
前記フィルターは、前記光合成素子と前記波長変換素子との間に設けられている、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記フィルターの光入射側に設けられ、前記光合成素子から射出される前記合成光を第1光束と第2光束とに分割する第1光学素子と、
前記フィルターの光射出側に設けられ、前記第1光束が入射する第1光入射領域と前記第2光束が入射する第2光入射領域とを有する第2光学素子と、
をさらに備え、
前記フィルターは、前記第1光束が入射する第1フィルター部と、前記第2光束が入射する第2フィルター部と、を有し、
前記フィルターの前記第1位置において、前記第1フィルター部は、前記第2光学素子の前記第1光入射領域と対向する位置に配置され、前記第2フィルター部は、前記第2光学素子の前記第2光入射領域と対向する位置に配置され、
前記フィルターの前記第2位置において、前記第1フィルター部は、前記第2光学素子の前記第1光入射領域と前記第2光入射領域との間の領域と対向する位置に配置される、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記フィルターに入射する前記第1光の断面形状は、長軸と短軸とを有する楕円形であり、
前記フィルターに入射する前記第3光の断面形状は、円形であり、
前記第3光の断面形状における径の長さは、前記第1光の断面形状における前記長軸に沿う方向の径の長さおよび前記短軸に沿う方向の径の長さのいずれか一方と略一致しており、
前記フィルターは、前記長軸に沿う方向および前記短軸に沿う方向のうち、前記略一致している軸に沿う方向に移動可能である、請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項13】
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記合成光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された励起光を蛍光体に照射した際に蛍光体から射出する蛍光を利用した光源装置が提案されている。例えば、下記の特許文献1に、青色光を射出する第1光源と、青色光により励起され、緑色光を射出する蛍光体と、赤色光を射出する第2光源と、青色光を透過し、緑色光を反射する第1ダイクロイックミラーと、青色光および緑色光を透過し、赤色光を反射する第2ダイクロイックミラーと、を備える光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年のプロジェクターにおいて、色再現性を重視するモードと輝度を重視するモードとを使用者が選択できる機能が求められる場合がある。このようなプロジェクターを実現するためには、色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替え可能な光源装置の提供が求められる。
【0005】
特許文献1のように、蛍光体を用いて特定の色光、例えば緑色光を生成する場合、緑色光レーザーを用いる場合に比べて、緑色光の純度の低下が避けられない。その結果、この種の光源装置を備えるプロジェクターにおいては色再現性が低下する。特許文献1には第2ダイクロイックミラーのフィルターを狭帯域化することで赤色光を有効利用することが記載されているが、特許文献1の光源装置では、色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の光源装置は、第1偏光成分と、前記第1偏光成分とは異なる第2偏光成分と、を含む第1波長帯の第1光を射出する第1光源部と、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光を射出する第2光源部と、前記第1光を、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯の第3光に変換する波長変換素子と、前記第1光と前記第2光と前記第3光とを合成して合成光を射出する光合成素子と、前記第3光が入射し、前記第3波長帯のうちの一部の波長帯の光を減光させるフィルターと、を備える。前記光合成素子は、前記第1光源部から射出される前記第1光のうち、前記第1偏光成分の光を反射して前記第2偏光成分の光を透過することにより、前記第1偏光成分の光および前記第2偏光成分の光のうちのいずれか一方を前記波長変換素子に向けて射出し、前記第1光および前記第2光と、前記第3光と、のいずれか一方を透過し、いずれか他方を反射する。前記フィルターは、前記第3光が前記フィルターを透過する第1位置と、前記第3光が前記フィルターを透過しない第2位置と、の間で移動可能である。
【0007】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置から射出される前記合成光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図3】フィルターの第1光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図4】フィルターの第2光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図5】光合成素子の第3光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図6】光合成素子の第4光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図7】変形例のフィルターの第1光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図8】各光源部の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図9】フィルターを透過した後の緑色光のスペクトルを示すグラフである。
【
図10】青色光の照度分布とフィルターの移動方向との関係を示す図である。
【
図11】緑色光の照度分布とフィルターの移動方向との関係を示す図である。
【
図12】第2実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図13】第3実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図14】フィルターの第2光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図15】第4実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図16】第2光合成素子の第5光学膜の分光特性を示すグラフである。
【
図17】第5実施形態の光源装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1~
図11を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、半導体レーザーと蛍光体とを用いた光源装置を備える液晶プロジェクターの一例である。
なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0010】
本実施形態のプロジェクター10は、スクリーン(被投写面)SCR上にカラー画像を表示する投写型の画像表示装置である。プロジェクター10は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの各色光に対応した3つの光変調装置を備える。
【0011】
図1は、本実施形態のプロジェクター10の概略構成図である。
図1に示すように、プロジェクター10は、光源装置100と、色分離導光光学系200と、赤色光用光変調装置400Rと、緑色光用光変調装置400Gと、青色光用光変調装置400Bと、クロスダイクロイックプリズム500と、投写光学装置600と、を備える。
【0012】
本実施形態において、光源装置100は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBを含む白色の合成光LWを射出する。光源装置100の具体的な構成については、後述する。
【0013】
色分離導光光学系200は、ダイクロイックミラー210と、ダイクロイックミラー220と、反射ミラー230と、反射ミラー240と、反射ミラー250と、リレーレンズ260と、リレーレンズ270と、を備える。色分離導光光学系200は、光源装置100から射出される合成光LWを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離し、赤色光LRを赤色光用光変調装置400Rに導き、緑色光LGを緑色光用光変調装置400Gに導き、青色光LBを青色光用光変調装置400Bに導く。
【0014】
色分離導光光学系200と赤色光用光変調装置400Rとの間には、フィールドレンズ300Rが配置されている。色分離導光光学系200と緑色光用光変調装置400Gとの間には、フィールドレンズ300Gが配置されている。色分離導光光学系200と青色光用光変調装置400Bとの間には、フィールドレンズ300Bが配置されている。
【0015】
ダイクロイックミラー210は、赤色光成分を透過させ、緑色光成分および青色光成分を反射する。ダイクロイックミラー220は、緑色光成分を反射して、青色光成分を透過させる。反射ミラー230は、赤色光成分を反射する。反射ミラー240および反射ミラー250のそれぞれは、青色光成分を反射する。
【0016】
赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、および青色光用光変調装置400Bのそれぞれは、各光変調装置に入射された色光を画像情報に応じて変調して画像を形成する液晶パネルから構成されている。
【0017】
図示を省略したが、フィールドレンズ300Rと赤色光用光変調装置400Rとの間、フィールドレンズ300Gと緑色光用光変調装置400Gとの間、フィールドレンズ300Bと青色光用光変調装置400Bとの間には、入射側偏光板がそれぞれ配置されている。また、赤色光用光変調装置400Rとクロスダイクロイックプリズム500との間、緑色光用光変調装置400Gとクロスダイクロイックプリズム500との間、青色光用光変調装置400Bとクロスダイクロイックプリズム500との間には、射出側偏光板がそれぞれ配置されている。
【0018】
クロスダイクロイックプリズム500は、赤色光用光変調装置400R、緑色光用光変調装置400G、青色光用光変調装置400Bのそれぞれから射出された各画像光を合成してカラー画像を形成する。クロスダイクロイックプリズム500は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面に誘電体多層膜が設けられた構成を有する。
【0019】
クロスダイクロイックプリズム500から射出されたカラー画像は、投写光学装置600によってスクリーンSCRなどの被投写面上に拡大投写される。投写光学装置600は、複数のレンズによって構成されている。
【0020】
図2は、光源装置100の概略構成図である。
以下の説明においては、座標軸としてXYZ直交座標系を用いる。光源装置100から合成光LWが射出される方向をY軸の正方向とし、後述する第1光源部11から青色光が射出される方向をX軸の正方向とし、X軸およびY軸と垂直で紙面の手前から奥へ向かう方向をZ軸の正方向とする。
【0021】
本実施形態の光源装置100は、第1光源部11と、第2光源部12と、波長変換素子13と、光合成素子14と、フィルター15と、平行化素子16と、拡散装置17と、集光素子18と、集光・ピックアップ素子19と、第2位相差板20と、インテグレーター光学素子21と、偏光変換素子22と、重畳レンズ23と、制御部24と、を備える。
【0022】
第1光源部11は、第1発光素子27と、コリメーターレンズ28と、第1位相差板29と、を備える。第1発光素子27は、直線偏光の青色光LBsを射出する青色半導体レーザーから構成されている。第1発光素子27は、第1波長帯の青色光LBsを+X方向に射出する。第1波長帯は、例えば455nm±10nmの青色波長帯である。第1発光素子27は、基板30上に実装されている。
図2では、2個の第1発光素子27が示されているが、第1発光素子27の個数は特に限定されない。本実施形態の場合、第1発光素子27から射出される青色光LBsは、光合成素子14に対するS偏光であるが、光合成素子14に対するP偏光LBpであってもよい。以下の説明において、S偏光およびP偏光の表記は、特に断らない限り、光合成素子14に対する偏光方向を表す。
本実施形態の青色光LBs,LBpは、特許請求の範囲の第1光に対応する。
【0023】
コリメーターレンズ28は、第1発光素子27の光射出側に設けられている。コリメーターレンズ28は、1つの第1発光素子27に対応して設けられた1つの凸レンズから構成されている。コリメーターレンズ28は、第1発光素子27から射出される青色光LBsを平行化する。
【0024】
第1位相差板29は、第1発光素子27と光合成素子14との間の青色光LBsの光路上に設けられている。第1位相差板29は、青色光LBsに位相差を付与する。第1位相差板29は、青色光LBsの第1波長帯に対する1/2波長板で構成されている。第1位相差板29は、光入射面29aに直交する軸(X軸に平行な軸)を中心として回転可能に設けられている。したがって、第1位相差板29には、図示しないモーター等の駆動源が設けられている。
【0025】
第1発光素子27から射出された青色光LBsは直線偏光(S偏光成分)であるため、第1位相差板29の回転角度を適切に設定することにより、第1位相差板29を透過する青色光LBsを、S偏光成分とP偏光成分とを所定の比率で含む青色光に変換することができる。すなわち、第1位相差板29を回転させることにより、S偏光成分とP偏光成分との比率を変化させることができる。このようにして、第1光源部11は、S偏光成分とP偏光成分とを含む第1波長帯の青色光LBs,LBpを射出する。第1光源部11から射出される青色光LBs,LBpの主光線の光路を、第1光源部11の光軸AX1と定義する。
本実施形態の第1位相差板29は、特許請求の範囲の第1位相差素子に対応する。本実施形態のS偏光成分は、特許請求の範囲の第1偏光成分に対応する。本実施形態のP偏光成分は、特許請求の範囲の第2偏光成分に対応する。
【0026】
第2光源部12は、第2発光素子32と、コリメーターレンズ33と、を備える。第2発光素子32は、直線偏光の赤色光LRを射出する赤色半導体レーザーから構成されている。第2発光素子32は、第2波長帯の赤色光LRを+Y方向に射出する。第2波長帯は、例えば640nm±10nmの赤色波長帯である。第2発光素子32は、基板34上に実装されている。
図2では、2個の第2発光素子32が示されているが、第2発光素子32の個数は特に限定されない。第2発光素子32から射出される赤色光LRは、S偏光であってもよいし、P偏光であってもよい。第2光源部12から射出される赤色光LRの主光線の光路を、第2光源部12の光軸AX2と定義する。
本実施形態の赤色光LRは、特許請求の範囲の第2光に対応する。
【0027】
波長変換素子13は、青色光LBpを吸収して緑色光LGに変換して射出する緑色蛍光体を含む。すなわち、波長変換素子13は、第1光源部11から射出される青色光LBpを第3波長帯の緑色光LGに変換し、緑色光LGを-X方向に向けて射出する。第3波長帯は、例えば470~650nmの緑色波長帯である。波長変換素子13は、緑色蛍光体として、例えばLu3Al5O12:Ce3+系蛍光体、Y3O4:Eu2+系蛍光体、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+系蛍光体、Ba3Si6O12N2:Eu2+系蛍光体、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+系蛍光体等の蛍光体材料を含む。波長変換素子13は、図示しない基板上に設けられている。波長変換素子13は、回転可能な基板上に回転軸を中心として円環状に設けられていてもよい。この構成によれば、波長変換素子13の温度上昇が抑制され、波長変換効率を高められるとともに、波長変換素子13の信頼性を高めることができる。
本実施形態の緑色光LGは、特許請求の範囲の第3光に対応する。
【0028】
光合成素子14は、第1光源部11の光軸AX1と第2光源部12の光軸AX2とが互いに交差する位置に設けられている。光合成素子14は、基板36と、基板36の一方の面に設けられた第3光学膜37と、基板36の他方の面に設けられた第4光学膜38と、を有する。第3光学膜37および第4光学膜38のそれぞれは、誘電体多層膜から構成されている。光合成素子14は、光軸AX1および光軸AX2のそれぞれに対して45度の角度をなす向きに配置されている。
【0029】
光合成素子14は、第3光学膜37および第4光学膜38の作用により、第1光源部11から射出される青色光LBs,LBpのうち、S偏光成分の青色光LBsを反射してP偏光成分の青色光LBpを透過することにより、P偏光成分の青色光LBpを波長変換素子13に向けて射出し、S偏光成分の青色光LBsを拡散装置17に向けて射出し、青色光LBpおよび赤色光LRを透過し、緑色光LGを反射する。これにより、光合成素子14は、拡散装置17から+Y方向に沿って入射する青色光LBpと、第2光源部12から+Y方向に沿って入射する赤色光LRと、波長変換素子13から-X方向に沿って入射する緑色光LGと、を合成し、白色の合成光LWを+Y方向に向けて射出する。各光学膜37,38の詳細な分光特性については後述する。
本実施形態の-X方向は、特許請求の範囲の第1方向に対応する。本実施形態の+Y方向は、特許請求の範囲の第2方向に対応する。
【0030】
フィルター15は、光合成素子14とインテグレーター光学素子21との間の光軸AX2上に設けられている。本実施形態の場合、フィルター15は、フィルター15の光入射面15aが緑色光LGを含む合成光LWの主光線の光路に対して90度の角度で交差する向きに配置されている。フィルター15は、基板40と、基板40の一方の面に設けられた第1光学膜41と、基板40の他方の面に設けられた第2光学膜42と、を有する。第1光学膜41および第2光学膜42のそれぞれは、誘電体多層膜から構成されている。
【0031】
フィルター15は、合成光LWの主光線の光路(光軸AX2)に対して垂直な方向(X軸方向)に移動可能となっている。すなわち、フィルター15は、緑色光LGを含む合成光LWがフィルター15を透過する第1位置(実線で示す)と、緑色光LGを含む合成光LWがフィルター15を透過しない第2位置(破線で示す)と、の間で移動可能となっている。フィルター15は、使用者によって色再現性重視モードと輝度重視モードとのいずれか一方が選択された際に、図示しないモーター等の駆動源によって自動的に移動する構成を有していてもよいし、使用者が手で移動させる構成を有していてもよい。フィルター15は、緑色光LGを含む合成光LWが入射する第1位置に位置する際に、第1光学膜41および第2光学膜42の作用により、第3波長帯(緑色波長帯)のうちの一部の波長帯の緑色光LGを減光させる。各光学膜41,42の詳細な分光特性については後述する。
【0032】
平行化素子16は、波長変換素子13と光合成素子14との間の光軸AX1上に設けられている。本実施形態の場合、平行化素子16は、2つの凸レンズで構成されているが、レンズの個数は特に限定されない。平行化素子16は、波長変換素子13から射出される緑色光LGを平行化するとともに、光合成素子14から射出される青色光LBpを波長変換素子13に向けて集光させる。
【0033】
拡散装置17は、光合成素子14と第2光源部12との間の光軸AX2上に設けられている。拡散装置17は、拡散板44と、回転軸45を中心として拡散板44を回転させるモーター46と、を備える。図示を省略するが、拡散板44の一方の面には、拡散板44に入射する青色光LBc1および赤色光LRを拡散させる拡散構造としての凹凸構造が設けられている。凹凸構造は、不規則な形状および大きさを有する複数の凹部および凸部が形成された構成であってもよいし、複数のマイクロレンズが配列された構成であってもよい。また、拡散板44の他方の面には、青色光成分を反射し、赤色光成分を透過する反射膜であるダイクロイック膜が設けられている。なお、拡散板44のその他の形態として、磨りガラス、ホログラフィックディフューザー、ブラスト処理が施された透明基板、散乱材が分散された透明基板などが用いられてもよい。
【0034】
このように、本実施形態の光源装置100は、青色光LBc1と赤色光LRとを拡散させる拡散装置17を備える。この構成によれば、青色光LBc1および赤色光LRの照度分布を均一化でき、色むらを低減できる。また、半導体レーザーから射出されるコヒーレンス光である青色光LBc1および赤色光LRを拡散させるため、プロジェクター10に適用した際の画像のスペックルノイズを抑制することができる。さらに、青色光LBc1を拡散させる拡散装置と赤色光LRを拡散させる拡散装置とを個別に用意する必要がないため、光源装置100の部品点数の削減、および小型化が図れる。さらに、拡散装置17は光学素子14と第2光源部との間の光軸AX2上に設けられているため、光学素子21と第2光源部12との間の光軸AX2と交差する方向に光源装置100が大型化するのを抑制することができる。
【0035】
集光素子18は、第2光源部12と拡散板44との間の光軸AX2上に設けられている。本実施形態の場合、集光素子18は、2つの凸レンズで構成されているが、レンズの個数は特に限定されない。集光素子18は、第2光源部12から射出される赤色光LRを拡散板44に向けて集光させる。
【0036】
集光・ピックアップ素子19は、拡散板44と光合成素子14との間の光軸AX2上に設けられている。本実施形態の場合、集光・ピックアップ素子19は、2つの凸レンズで構成されているが、レンズの個数は特に限定されない。集光・ピックアップ素子19は、光合成素子14から射出される青色光LBc1を拡散板44に向けて集光させ、拡散板44によって拡散される青色光LBc2および赤色光LRを平行化する。
【0037】
第2位相差板20は、集光・ピックアップ素子19と光合成素子14との間の光軸AX2上に設けられている。第2位相差板20は、青色光LBs,LBc2に位相差を付与する。第2位相差板20は、青色光LBs,LBc2の第1波長帯に対する1/4波長板で構成されている。これにより、第2位相差板20を透過する直線偏光の青色光LBsは円偏光の青色光LBc1に変換され、第2位相差板20を透過する円偏光の青色光LBc2は直線偏光の青色光LBpに変換される。
【0038】
インテグレーター光学素子21は、第1マルチレンズアレイ48と、第2マルチレンズアレイ49と、を備える。第1マルチレンズアレイ48は、合成光LWを複数の光束に分割するための複数の第1レンズを有する。
【0039】
第1マルチレンズアレイ48のレンズ面、すなわち第1レンズの表面と、各色光用の光変調装置400R,400G,400Bの各々の画像形成領域とは、互いに共役の関係となっている。そのため、光軸AX2の方向から見て、第1レンズの各々の形状は、光変調装置400R,400G,400Bの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、第1マルチレンズアレイ48から射出された複数の光束の各々は、光変調装置400R,400G,400Bの画像形成領域にそれぞれ効率良く入射する。
【0040】
第2マルチレンズアレイ49は、第1マルチレンズアレイ48の複数の第1レンズに対応する複数の第2レンズを有する。第2マルチレンズアレイ49は、重畳レンズ23とともに、第1マルチレンズアレイ48の各第1レンズの像を各光変調装置400R,400G,400Bの各々の画像形成領域の近傍に結像させる。
【0041】
インテグレーター光学素子21を透過した合成光LWは、偏光変換素子22に入射する。 偏光変換素子22は、図示しない偏光分離膜と反射膜および位相差板とをアレイ状に配列した構成を有する。偏光変換素子22は、合成光LWの偏光方向を所定の方向に揃える。具体的には、偏光変換素子22は、合成光LWの偏光方向を光変調装置400R,400G,400Bの入射側偏光板の透過軸の方向に揃える。
【0042】
これにより、偏光変換素子22を透過した合成光LWから分離される赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの偏光方向は、各光変調装置400R,400G,400Bの入射側偏光板の透過軸方向に一致する。したがって、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBは、入射側偏光板でそれぞれ吸収されることなく、光変調装置400R,400G,400Bの画像形成領域にそれぞれ入射する。
【0043】
偏光変換素子22を透過した合成光LWは、重畳レンズ23に入射する。重畳レンズ23は、インテグレーター光学素子21と協働して、被照明領域である光変調装置400R,400G,400Bの各々の画像形成領域における照度分布を均一化する。
【0044】
制御部24は、第1光源部11の第1発光素子27、および第2光源部12の第2発光素子32のそれぞれに供給する電流値を制御する。具体的には、制御部24は、フィルター15が第1位置に配置される場合の第1光源部11および第2光源部12のそれぞれに供給する電流値と、フィルター15が第2位置に配置される場合の第1光源部11および第2光源部12のそれぞれに供給する電流値と、を個別に制御する。制御の具体例については後述する。さらに、制御部24は、色再現性重視モードと輝度重視モードとのいずれか一方が選択された際のフィルター15の移動、第1位相差板29の回転角度、拡散板44の回転速度等の項目を制御してもよい。
【0045】
以下、第1光源部11および第2光源部12のそれぞれから射出される光の振る舞いについて説明する。
上述したように、第1光源部11において、第1発光素子27から射出されるS偏光成分の青色光LBsは、第1位相差板29を透過することにより、S偏光成分とP偏光成分とが所定の割合で混在した青色光LBs,LBpに変換される。このうち、P偏光成分の青色光LBpは、光合成素子14を透過し、平行化素子16によって集光された状態で、波長変換素子13に入射する。波長変換素子13において、緑色蛍光体が青色光LBpによって励起され、緑色光LGが発光する。波長変換素子13から射出される緑色光LGは、平行化素子16によって平行化された後、光合成素子14によって反射され、フィルター15に向かって進む。
【0046】
一方、S偏光成分の青色光LBsは、光合成素子14によって反射され、第2位相差板20を透過することにより、所定の円偏光、例えば右回りの円偏光の青色光LBc1に変換される。右回りの円偏光の青色光LBc1は、集光・ピックアップ素子19によって集光された状態で、拡散板44に入射する。拡散板44に入射した右回りの円偏光の青色光LBc1は、拡散板44によって拡散されるとともに、左回りの円偏光の青色光LBc2に変換される。左回りの円偏光の青色光LBc2は、集光・ピックアップ素子19によって平行化された後、第2位相差板20を透過することにより、P偏光成分の青色光LBpに変換される。P偏光成分の青色光LBpは、光合成素子14を透過し、フィルター15に向かって進む。
【0047】
第2光源部12において、第2発光素子32から射出される赤色光LRは、集光素子18によって集光された状態で拡散板44に入射し、拡散板44によって拡散される。拡散された赤色光LRは、集光・ピックアップ素子19によって平行化された後、第2位相差板20を透過し、光合成素子14を透過し、フィルター15に向かって進む。なお、第2位相差板20は、青色波長帯に対して最適化されているため、赤色光LRが第2位相差板20を透過しても偏光状態が大きく変化することはない。また、光合成素子14は、赤色光LRを赤色光LRの偏光状態にかかわらず透過させる。
【0048】
以上のように、青色光LBpと緑色光LGと赤色光LRとは、光合成素子14によって合成される。光合成素子14からは、白色の合成光LWが射出される。
【0049】
以下、フィルター15および光合成素子14の各光学膜の分光特性について説明する。
図3は、フィルター15の第1光学膜41の分光特性を示すグラフである。
図4は、フィルター15の第2光学膜42の分光特性を示すグラフである。
図5は、光合成素子14の第3光学膜37の分光特性を示すグラフである。
図6は、光合成素子14の第4光学膜38の分光特性を示すグラフである。
図3~
図6において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は透過率(%)である。
図8は、各光源部11,12の発光スペクトルを示すグラフである。
図9は、フィルター15を透過した後の緑色光LGのスペクトルを示すグラフである。
図8および
図9において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は相対輝度(-)である。
【0050】
図8に示すように、第1光源部11の第1発光素子27は、455nm±10nmの青色波長帯の青色光LBsを射出する。第2光源部12の第2発光素子32は、640nm±10nmの赤色波長帯の赤色光LRを射出する。波長変換素子13は、470~650nmの緑色波長帯の緑色光LGを射出する。
【0051】
上記の発光スペクトルに対して、
図3に示すように、フィルター15の第1光学膜41は、波長変換素子13から射出される緑色光LGのうち、470~520nm程度の短波長側の成分をカットし、残りの波長帯の成分を透過させる。さらに、第1光学膜41は、中心波長が455nmの青色光LBpと中心波長が640nmの赤色光LRとを透過させる。このように、第1光学膜41は、緑色光LGのうちの短波長側の成分のカットに寄与する。
【0052】
図4に示すように、フィルター15の第2光学膜42は、波長変換素子13から射出される緑色光LGのうち、540~620nm程度の長波長側の成分をカットし、残りの波長帯の成分を透過させる。さらに、第2光学膜42は、中心波長が455nmの青色光LBpと中心波長が640nmの赤色光LRとを透過させる。このように、第2光学膜42は、緑色光LGのうちの長波長側の成分のカットに寄与する。
【0053】
上記2つの光学膜41,42の作用により、フィルター15は、波長変換素子13から射出される470~650nmの第3波長帯の緑色光LGのうち、470~520nmの短波長成分と540~620nmの長波長成分とをカットする。これにより、
図9に示すように、フィルター15は、緑色光LGの波長帯を530nm±20nm程度にまで狭帯域化することができる。
【0054】
図5に示すように、光合成素子14の第3光学膜37は、第1波長帯の青色光LBs,LBpに対して、P偏光成分の光を透過し、S偏光成分の光を反射する。また、第3光学膜37は、第2波長帯の赤色光LRおよび第3波長帯の緑色光LGを透過する。このように、第3光学膜37は、青色光LBs,LBpに対する偏光分離膜として機能する。
【0055】
図6に示すように、光合成素子14の第4光学膜38は、第1波長帯の青色光LBpを透過し、第3波長帯の緑色光LGを反射し、第2波長帯の赤色光LRを透過する。さらに、第4光学膜38は、第3波長帯の緑色光LGのうちの長波長側の成分を透過する。このように、第4光学膜38は、波長選択膜として機能する。
【0056】
上記2つの光学膜37,38の作用により、光合成素子14は、第1光源部11から射出される青色光LBs,LBpのうち、P偏光成分の青色光LBpを透過し、S偏光成分の青色光LBsを反射するとともに、赤色光LRを透過し、緑色光LGを反射する機能を実現することができる。
【0057】
なお、フィルター15は、上記の構成に代えて、以下の構成を有していてもよい。
図7は、変形例のフィルターの第1光学膜の分光特性を示すグラフである。
図示を省略するが、変形例のフィルターは、基板と、基板の一方の面に設けられた第1光学膜と、基板の他方の面に設けられた反射防止膜と、を有する。
【0058】
図7に示すように、変形例のフィルターの第1光学膜は、波長変換素子13から射出される470~650nmの波長帯の緑色光LGのうち、520~550nmの成分のみを透過させる。また、第1光学膜は、中心波長が455nmの青色光LBpと中心波長が640nmの赤色光LRとを透過させる。
【0059】
以上説明したように、光合成素子14から射出される合成光LWに含まれる緑色光LGは、フィルター15を透過することにより、狭帯域化されて色純度が向上する。一方、青色光LBpおよび赤色光LRは、もともと半導体レーザーに由来する狭帯域の光であり、フィルター15を透過しても色純度は高いままである。そのため、合成光LWの光路内にフィルター15を配置すれば、合成光LWの色域が広がるため、色再現性を高めることができる。これに対して、合成光LWの光路外にフィルター15を配置すれば、緑色光LGの一部の成分がフィルター15によってカットされなくなるため、合成光LWの輝度を高めることができる。
【0060】
本実施形態の光源装置100は、フィルター15の光入射側に設けられ、波長変換素子13から射出される緑色光LGを略平行化する平行化素子16を備える。さらに、光源装置100は、フィルター15の光入射側に設けられ、拡散板44から射出される青色光LBc2および赤色光LRを略平行化する集光・ピックアップ素子19を備える。また、フィルター15は、光入射面15aが緑色光LGを含む合成光LWの主光線の光路に対して90度の角度で交差する向きに配置されている。この構成により、合成光LWは、フィルター15の光入射面15aに対して垂直に入射する。これにより、フィルター15の各光学膜41,42の設計に際して光の入射角依存性を考慮しなくて済むため、フィルター15の特性を向上させやすく、フィルター15を製造しやすい。
【0061】
以下、制御部24による各光源部11,12への電流値の制御の具体例について説明する。
本発明者の検討において、特定の光学系を用いたプロジェクターの色温度を6500Kと設定し、偏差を0.003と設定する。フィルター15を光路内に入れていない状態で色域が規格のDCI-P3を満足したとすると、所定のホワイトバランスを確保するための各色光の光量のバランスは、赤色光:緑色光:青色光=160%:100%:58%、となる。
【0062】
次に、色再現性を高めるために、フィルター15を光路内に入れたとする。このとき、緑色光LGの一部がフィルター15によってカットされるため、緑色光LGの光量が減少する。この場合、フィルター15を光路内に入れていない場合と同等のホワイトバランスを確保するためには、緑色光LGの光量減少に合わせて、赤色光LRおよび青色光LBpの光量も減少させる必要がある。したがって、フィルター15を光路内に入れた場合の光量のバランスは、赤色光:緑色光:青色光=75%:100%:15.9%、となる。
【0063】
このように、フィルター15を光路内に入れた状態では、緑色光LGの光量と青色光LBpの光量とのバランスがフィルター15を光路内に入れていない状態から変化する。そこで、第1位相差板29を回転させてP偏光成分とS偏光成分との光量比を変化させることにより、緑色光LGの光量と青色光LBpの光量とのバランスを調整する。また、フィルター15を光路内に入れた状態では、緑色光LGの光量と赤色光LRの光量とのバランスも、フィルター15を光路内に入れていない状態から変化する。そこで、制御部24は、フィルター15を光路内に入れた場合の第2発光素子32に供給する電流値を、フィルター15を光路内に入れていない場合の第2発光素子32に供給する電流値よりも小さくする制御を行う。
【0064】
ここで、光源装置100が1つの電源から第1発光素子27と第2発光素子32とに電流を振り分ける構成を有する場合、第2発光素子32に供給する電流値を小さくすると、電源の電力容量の余裕が大きくなり、第1発光素子27に多くの電流を振り分けることが可能となる。このとき、制御部24は、フィルター15を光路内に入れた場合の第1発光素子27に供給する電流値を、フィルター15を光路内に入れていない場合の第1発光素子27に供給する電流値よりも大きくする制御を行う。
【0065】
本実施形態の光源装置100においては、制御部24が以上の制御を行うことにより、光源装置100から射出される合成光LWのホワイトバランスを調整しつつ、フィルター15を光路内に入れた場合の明るさの低下を最小限に抑えることができる。
【0066】
以下、フィルター15の好ましい移動方向について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は、フィルター15上での青色光LBpの照度分布とフィルター15の移動方向との関係を示す図である。
図11は、フィルター15上での緑色光LGの照度分布とフィルター15の移動方向との関係を示す図である。
【0067】
一般に、半導体レーザーから射出される光の断面形状は、長軸と短軸とを有する楕円形である。本明細書において、光の断面形状は、光の主光線に垂直な方向の断面形状と定義する。そのため、本実施形態において、フィルター15に入射する時点での青色光LBpの断面形状は、第1発光素子27の個数や配置によっても多少変わるが、拡散板44で拡散されたとしても円形にはならず、
図10に示すように、楕円形の形状を維持する場合が多い。
【0068】
一方、緑色光LGは波長変換素子13から等方的にランバート発光するため、フィルター15に入射する時点での緑色光LGの断面形状は、
図11に示すように、円形の形状を維持する場合が多い。また、フィルター15の後段の光学系における色むらを抑えるために、緑色光LGの断面形状における径の長さD1を、青色光LBpの断面形状における長軸に沿う方向の径の長さD2および短軸に沿う方向の径の長さD3のいずれか一方と略一致させる。
図10および
図11の例では、緑色光LGの断面形状における径の長さD1を、青色光LBpの断面形状における長軸に沿う方向の径の長さD2と略一致させている。これとは逆に、緑色光LGの断面形状における径の長さD1を、青色光LBpの断面形状における短軸に沿う方向の径の長さD3と略一致させてもよい。
【0069】
図10および
図11に示すように、フィルター15を青色光LBpの断面形状における短軸に沿う方向(図の横方向)に移動させたとする。この場合、図の右側に示すように、フィルター15の移動途中において、青色光LBpは全ての領域でフィルター15を透過する一方、緑色光LGは一部の領域でフィルター15を透過しない時間が生じる。これにより、モード切替時にフィルター15の移動途中で色むらが生じるおそれがある。したがって、フィルター15を青色光LBpの断面形状における長軸に沿う方向(図の縦方向)に移動させれば、一方の光が全ての領域でフィルター15を透過し、他方の光が一部の領域でフィルター15を透過しないという状況が生じなくなる。これにより、フィルター15の移動途中での色むらの発生を抑えることができる。すなわち、緑色光LGの断面形状における径の長さD1が青色光LBpの断面形状における長軸に沿う方向の径の長さD2、および短軸に沿う方向の径の長さD3のいずれか一方と略一致している場合、フィルター15は、長軸に沿う方向および短軸に沿う方向のうち、略一致している軸に沿う方向に移動させることが望ましい。
【0070】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の光源装置100は、S偏光成分とP偏光成分とを含む第1波長帯の青色光LBs,LBpを射出する第1光源部11と、第2波長帯の赤色光LRを射出する第2光源部12と、青色光LBpを第3波長帯の緑色光LGに変換する波長変換素子13と、青色光LBpと赤色光LRと緑色光LGとを合成して合成光LWを射出する光合成素子14と、緑色光LGが入射する場合に第3波長帯のうちの一部の波長帯の光を減光させるフィルター15と、を備える。光合成素子14は、第1光源部11から射出される青色光LBs,LBpのうち、S偏光成分の青色光LBsを反射してP偏光成分の青色光LBpを透過することにより、P偏光成分の青色光LBpを波長変換素子13に向けて射出し、S偏光成分の青色光LBsを拡散装置17に向けて射出し、青色光LBpおよび赤色光LRを透過し、緑色光LGを反射する。フィルター15は、緑色光LGがフィルター15を透過する第1位置と、緑色光LGがフィルター15を透過しない第2位置と、の間で移動可能である。
【0071】
この構成によれば、上述したように、緑色光LGがフィルター15を透過する第1位置において、緑色光LGの一部の波長帯の光が減光されることにより、緑色光LGが狭帯域化され、色純度が向上する。これにより、合成光LWの色域が広がり、色再現性を高めることができる。一方、緑色光LGがフィルター15を透過しない第2位置においては、緑色光LGの一部の波長帯の光がフィルター15によって減光されなくなるため、合成光LWの輝度を高めることができる。このように、フィルター15を第1位置と第2位置との間で移動させることにより、光源装置100から射出される合成光LWの特性を変えることができる。その結果、光源装置100をプロジェクター10に適用した場合、フィルター15の移動によって、色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができる。
【0072】
本実施形態のプロジェクター10は、本実施形態の光源装置100と、光源装置100から射出される合成光LWを含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置400R,400G,400Bと、光変調装置400R,400G,400Bにより変調された光を投写する投写光学装置600と、を備える。
【0073】
この構成によれば、光源装置100によって色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができるため、例えば映像の表現力を高めて映画などを視聴する用途と、明るい部屋で資料等を表示する用途と、を使用者が使い分けることが可能なプロジェクター10が実現できる。
【0074】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図12を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と同様であり、光源装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの基本構成の説明は省略する。
【0075】
図12は、第2実施形態の光源装置120の概略構成図である。
図12において、第1実施形態で用いた
図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、本実施形態の光源装置120は、第1光源部11と、第2光源部12と、波長変換素子13と、光合成素子14と、フィルター15と、平行化素子16と、拡散装置17と、集光素子18と、集光・ピックアップ素子19と、第2位相差板20と、インテグレーター光学素子21と、偏光変換素子22と、重畳レンズ23と、制御部24と、を備える。
【0077】
第1実施形態では、フィルター15は、光入射面15aが緑色光LGを含む合成光LWの主光線の光路に対して90度の角度で交差する向きに配置されている。これに対して、本実施形態では、フィルター15は、光入射面15aが緑色光LGを含む合成光LWの主光線の光路(光軸AX2)に対して90度以外の角度で交差する向きに傾いて配置されている。光源装置120のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0078】
[第2実施形態の効果]
本実施形態の光源装置120においても、フィルター15を第1位置と第2位置との間で移動させることにより、光源装置120から射出される合成光LWの特性を変えることができ、プロジェクター10に適用した場合に色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0079】
さらに本実施形態の場合、フィルター15の光入射面15aが緑色光LGを含む合成光LWの主光線の光路に対して90度以外の角度で交差する向きに傾いている。この構成によれば、フィルター15で反射する合成光LWの一部がフィルター15に入射する合成光LWとは異なる経路を進むため、フィルター15で反射した後、波長変換素子13および各発光素子27,32に戻る光を減らすことができる。これにより、波長変換素子13および各発光素子27,32の信頼性を高めることができる。例えば、波長変換素子13に向かって進む光が波長変換素子13の支持基板に入射する構成としてもよい。この構成によれば、反射光によって生じる熱を支持基板から放出することができ、波長変換素子13の信頼性を高めることができる。
【0080】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、
図13および
図14を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と同様であり、光源装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの基本構成の説明は省略する。
【0081】
図13は、第3実施形態の光源装置130の概略構成図である。
図13において、第1実施形態で用いた
図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図13に示すように、本実施形態の光源装置130は、第1光源部11と、第2光源部12と、波長変換素子13と、光合成素子14と、フィルター55と、平行化素子16と、拡散装置17と、集光素子18と、集光・ピックアップ素子19と、第2位相差板20と、インテグレーター光学素子21と、偏光変換素子22と、重畳レンズ23と、制御部24と、を備える。
【0083】
本実施形態の光源装置130は、フィルター55の位置が第1実施形態の光源装置100とは異なる。具体的には、本実施形態の場合、フィルター55は、光合成素子14と波長変換素子13との間の光軸AX1上に設けられている。第1実施形態の場合、光合成素子14によって合成された合成光LW、すなわち全ての色光がフィルター55に入射する。これに対し、本実施形態の場合、光合成素子14によって合成される前の緑色光LGと、光合成素子14から射出される青色光LBpと、がフィルター55に入射し、赤色光LRはフィルター55に入射しない。光源装置130のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0084】
図14は、本実施形態のフィルター55の第2光学膜56の分光特性を示すグラフである。
図14において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は透過率(%)である。
【0085】
図14に示すように、フィルター55の第2光学膜56は、波長変換素子13から射出される緑色光LGのうち、550nm以上の長波長側の成分をカットする。なお、第1光学膜41は、第1実施形態の第1光学膜41(
図3参照)と同じである。2つの光学膜56,41の作用により、フィルター55は、波長変換素子13から射出される470~650nmの第3波長帯の緑色光のうち、470~520nmの短波長成分の光と550nm以上の長波長成分の光とをカットする。これにより、フィルター55は、緑色光LGを狭帯域化することができる。
【0086】
[第3実施形態の効果]
本実施形態の光源装置130においても、フィルター55を第1位置と第2位置との間で移動させることにより、光源装置130から射出される合成光LWの特性を変えることができ、プロジェクター10に適用した場合に色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0087】
本実施形態の場合、フィルター55の第2光学膜として、第1実施形態の第2光学膜42を用いることもできるが、上述の
図14に示す分光特性を有する第2光学膜56を用いることが望ましい。この構成によれば、第2光学膜56は、緑色光LGの長波長側の成分はカットしつつ、赤色光LRを透過させる必要がないため、第2光学膜56の仕様が、
図4に示す第1実施形態の第2光学膜42の仕様よりも単純になる。そのため、フィルター55の製造コストを低減できるともに、所望の分光特性を実現しやすい。
【0088】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、
図15および
図16を用いて説明する。
第4実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と同様であり、光源装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの基本構成の説明は省略する。
【0089】
図15は、第4実施形態の光源装置140の概略構成図である。
図15において、第1実施形態で用いた
図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0090】
図15に示すように、本実施形態の光源装置140は、第1光源部11と、第2光源部12と、波長変換素子13と、光合成素子64と、フィルター15と、平行化素子16と、拡散装置65と、集光素子18と、集光・ピックアップ素子19と、第2位相差板20と、インテグレーター光学素子21と、偏光変換素子22と、重畳レンズ23と、制御部24と、を備える。本実施形態の光源装置140においては、光合成素子64の構成、第2光源部12の位置、および拡散装置65の構成のそれぞれが第1実施形態の光源装置100とは異なる。
【0091】
本実施形態の場合、光合成素子64は、第1光合成素子67と、第2光合成素子68と、から構成される。第1光合成素子67の構成および光学特性は、第1実施形態の光合成素子14と同一である。また、第1光合成素子67に対する第1光源部11、波長変換素子13、および拡散装置65の位置関係についても、第1実施形態と同一である。
【0092】
拡散板70から射出される光の主光線に沿う軸を光軸AX3と定義する。光軸AX3は、インテグレーター光学素子21、偏光変換素子22、重畳レンズ23等の光軸と一致する。第1実施形態では、第1光源部11の光軸AX1と第2光源部12の光軸AX2とは、直交していた。これに対して、本実施形態では、第1光源部11の光軸AX1と第2光源部12の光軸AX2とは、X軸に平行に配置されて互いに平行であり、かつ、Y軸に平行な光軸AX3とは直交する。
【0093】
第2光合成素子68は、第1光合成素子67とフィルター15との間の光軸AX3上に設けられている。また、第2光合成素子68は、第2光源部12の光軸AX2と光軸AX3とが互いに交差する位置に設けられている。第2光合成素子68は、基板72と、基板72の一方の面に設けられた第5光学膜73と、基板72の他方の面に設けられた反射防止膜74と、を有する。第5光学膜73は、誘電体多層膜から構成されている。第2光合成素子68は、基板72の板面が光軸AX2および光軸AX3のそれぞれに対して45度の角度をなす向きに配置されている。また、第2光源部12と第2光合成素子68との間の光軸AX2上に、赤色光LRを拡散させる赤色光用拡散板76が設けられている。
【0094】
図16は、第2光合成素子68の第5光学膜73の分光特性を示すグラフである。
図16において、横軸は波長(nm)であり、縦軸は透過率(%)である。
図16に示すように、第2光合成素子68は、第5光学膜73の作用により、S偏光成分の赤色光LRsを反射し、P偏光成分の赤色光LRpを透過し、青色光LBpおよび緑色光LGを透過する。
【0095】
第1実施形態の拡散板44は、青色光LBc1に対して反射型拡散板として機能させ、赤色光LRに対して透過型拡散板として機能させるため、青色光LBc1を反射し、赤色光LRを透過するダイクロイック膜が必要であった。これに対して、本実施形態の拡散板70は、青色光LBc1および赤色光LRc1の双方に対して反射型拡散板として機能させればよいため、上記のダイクロイック膜が不要であり、上記のダイクロイック膜に代えて反射膜(図示略)が設けられている。
【0096】
以下、各色光の振る舞いについて説明する。
第1光源部11から射出される青色光LBsと、波長変換素子13から射出される緑色光LGの振る舞いについては、第1実施形態の光源装置100と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
第2光源部12において、第2発光素子32から射出されるS偏光成分の赤色光LRsは、赤色光用拡散板76によって拡散された後、第2光合成素子68によって反射され、第1光合成素子67を透過する。第1光合成素子67から射出されるS偏光成分の赤色光LRsは、第1光源部11から射出されるS偏光成分の青色光LBsと同様、第2位相差板20を透過することにより、所定の円偏光、例えば右回りの円偏光の赤色光LRc1に変換される。本実施形態の場合、第2位相差板20は、青色光LBsと赤色光LRsとの双方に対して位相差を付与する。右回りの円偏光の赤色光LRc1は、集光・ピックアップ素子19によって集光された状態で、拡散板70に入射する。右回りの円偏光の赤色光LRc1は、拡散板70によって拡散されるとともに、左回りの円偏光の赤色光LRc2に変換される。左回りの円偏光の赤色光LRc2は、集光・ピックアップ素子19によって平行化された後、第2位相差板20を透過することにより、P偏光成分の赤色光LRpに変換される。P偏光成分の赤色光LRpは、第1光合成素子67を透過し、第2光合成素子68を透過し、フィルター15に向かって進む。
【0098】
以上のように、青色光LBpと緑色光LGと赤色光LRpとは、第1光合成素子67および第2光合成素子68からなる光合成素子64によって合成される。光合成素子64からは、白色の合成光LWが射出される。フィルター15の作用については、第1実施形態と同様である。
【0099】
[第4実施形態の効果]
本実施形態の光源装置140においても、フィルター15を第1位置と第2位置との間で移動させることにより、光源装置140から射出される合成光LWの特性を変えることができ、プロジェクター10に適用した場合に色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
本実施形態において、フィルター15は、第2光合成素子68とインテグレーター光学素子21との間の光軸AX3上に設けられているが、この位置に代えて、第1光合成素子67と第2光合成素子68との間の光軸AX3上に設けられていてもよい。
【0101】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、
図17および
図18を用いて説明する。
第5実施形態のプロジェクターの基本構成は第1実施形態と同様であり、光源装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの基本構成の説明は省略する。
【0102】
図17は、第5実施形態の光源装置150の概略構成図である。
図17において、第1実施形態で用いた
図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図17に示すように、本実施形態の光源装置150は、第1光源部11と、第2光源部12と、波長変換素子13と、光合成素子14と、フィルター85と、平行化素子16と、拡散装置17と、集光素子18と、集光・ピックアップ素子19と、第2位相差板20と、インテグレーター光学素子21と、偏光変換素子22と、重畳レンズ23と、制御部24と、を備える。
【0104】
本実施形態の光源装置150は、フィルター85の位置および構成が第1実施形態の光源装置100とは異なる。具体的には、本実施形態の場合、フィルター85は、インテグレーター光学素子21と偏光変換素子22との間の光軸AX2上に設けられている。換言すると、インテグレーター光学素子21は、フィルター85の光入射側に設けられている。偏光変換素子22は、フィルター85の光射出側に設けられている。また、フィルター85は、偏光変換素子22に近い位置に配置されることが望ましい。
本実施形態のインテグレーター光学素子21は、特許請求の範囲の第1光学素子に対応する。本実施形態の偏光変換素子22は、特許請求の範囲の第2光学素子に対応する。
【0105】
図18は、フィルター85および偏光変換素子22の近傍を示す拡大図である。
図18において、第1位置に配置される際のフィルター85を実線で示し、第2位置に配置される際のフィルター85を破線で示す。また、図面を見やすくするため、第1位置に配置されるフィルター85の位置と、第2位置に配置されるフィルター85の位置と、を光の進行方向にずらして示す。
【0106】
第1実施形態で説明したように、インテグレーター光学素子21の第1マルチレンズアレイ48は、光合成素子14から射出される合成光LWを複数の光束に分割し、複数の光束を第2マルチレンズアレイ49に入射させる。そのため、
図18に示すように、合成光LWを構成する複数の光束は、第2マルチレンズアレイ49から射出される。ここで、複数の光束のうち、任意の隣り合う2つの光束を第1光束L1および第2光束L2とする。
【0107】
一方、偏光変換素子22は、複数の偏光分離膜87のそれぞれと複数の反射膜88のそれぞれとが交互に配置された構成を有し、複数の光束のそれぞれを複数の偏光分離膜87のそれぞれに入射させる必要がある。したがって、偏光変換素子22は、複数の偏光分離膜87に対応する複数の光入射領域を有する。
図18に示す偏光変換素子22において、第1光束L1が入射する光入射領域を第1光入射領域22Aとし、第2光束L2が入射する光入射領域を第2光入射領域22Bとする。
【0108】
フィルター85は、基板90と、基板90の一方の面に設けられた第1光学膜91と、基板90の他方の面に設けられた第2光学膜92と、を有する。第1光学膜91および第2光学膜92のそれぞれは、誘電体多層膜から構成されている。第1~第4実施形態では、第1光学膜および第2光学膜のそれぞれが基板の全面に設けられていたのに対し、本実施形態では、第1光学膜91および第2光学膜92のそれぞれは、偏光変換素子22の複数の光入射領域のそれぞれに対応するように分割されて設けられている。したがって、以下の説明では、フィルター85のうち、分割された第1光学膜91および第2光学膜92が設けられた1つの領域をフィルター部と称する。第1光束L1が入射するフィルター部を第1フィルター部85Aとし、第2光束L2が入射するフィルター部を第2フィルター部85Bとする。第1光学膜91および第2光学膜92の分光特性は、第1実施形態の第1光学膜41および第2光学膜42の分光特性と同じである。
【0109】
本実施形態の場合、
図18の実線で示すように、フィルター85の第1位置において、第1フィルター部85Aは、偏光変換素子22の第1光入射領域22Aと対向する位置に配置され、第2フィルター部85Bは、偏光変換素子22の第2光入射領域22Bと対向する位置に配置される。このとき、緑色光LGを含む合成光LWは、フィルター85を透過する。また、
図18の破線で示すように、フィルター85の第2位置において、第1フィルター部85Aは、偏光変換素子22の第1光入射領域22Aと第2光入射領域22Bとの間の領域と対向する位置に配置される。このとき、緑色光LGを含む合成光LWは、フィルター85を透過せず、隣り合う2つのフィルター部の間の基板90を透過する。
【0110】
[第5実施形態の効果]
本実施形態の光源装置150においても、フィルター85を第1位置と第2位置との間で移動させることにより、光源装置150から射出される合成光LWの特性を変えることができ、プロジェクター10に適用した場合に色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
本実施形態の光源装置150において、フィルター85を第1位置と第2位置との間で移動させる場合、フィルター85の全体を複数の光束が通過する領域の外側にまで移動させる必要がなく、偏光変換素子22の1つの光入射領域の幅の分だけ移動させれば済む。このように、本実施形態の場合、フィルター85の移動距離を第1~第4実施形態の光源装置に比べて小さくできるため、光源装置150の小型化を図ることができる。
【0112】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記の各実施形態の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0113】
例えば第1実施形態の光合成素子は、青色光と赤色光とを透過し、緑色光を反射する特性を有するが、この特性とは逆に、青色光と赤色光とを反射し、緑色光を透過する特性を有していてもよい。また、光源装置は、青色光と赤色光との双方を拡散させる拡散装置を備えているが、この構成に代えて、青色光を拡散させる拡散装置と赤色光を拡散させる拡散装置とを個別に備えていてもよい。また、第1光源部は、第1位相差板を必ずしも備えていなくてもよく、例えばP偏光成分の青色光を射出する第1発光素子と、S偏光成分の青色光を射出する第1発光素子と、を第1光源部の中に混在させてもよい。
【0114】
その他、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有する単板式のプロジェクターであってもよい。
【0115】
上記実施形態では、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0116】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
【0117】
(付記1)
第1偏光成分と、前記第1偏光成分とは異なる第2偏光成分と、を含む第1波長帯の第1光を射出する第1光源部と、
前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光を射出する第2光源部と、
前記第1光を、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯の第3光に変換する波長変換素子と、
前記第1光と前記第2光と前記第3光とを合成して合成光を射出する光合成素子と、
前記第3光が入射し、前記第3波長帯のうちの一部の波長帯の光を減光させるフィルターと、
を備え、
前記光合成素子は、
前記第1光源部から射出される前記第1光のうち、前記第1偏光成分の光を反射して前記第2偏光成分の光を透過することにより、前記第1偏光成分の光および前記第2偏光成分の光のうちのいずれか一方を前記波長変換素子に向けて射出し、
前記第1光および前記第2光と、前記第3光と、のいずれか一方を透過し、いずれか他方を反射し、
前記フィルターは、
前記第3光が前記フィルターを透過する第1位置と、前記第3光が前記フィルターを透過しない第2位置と、の間で移動可能である、光源装置。
【0118】
付記1の構成によれば、フィルターを第1位置と第2位置との間で移動させることにより、光源装置から射出される合成光の特性を変えることができる。
【0119】
(付記2)
前記第1光と前記第2光とを拡散させる拡散装置をさらに備える、付記1に記載の光源装置。
【0120】
付記2の構成によれば、第1光および第2光の照度分布を均一化でき、色むらを低減できる。また、各光源部がレーザー光源を有する場合、当該光源装置をプロジェクターに適用した場合の画像のスペックルノイズを抑制することができる。さらに、第1光を拡散させる拡散装置と第2光を拡散させる拡散装置とを個別に用意する必要がないため、光源装置の部品点数の削減、および小型化を図ることができる。
【0121】
(付記3)
前記拡散装置は、前記光合成素子と前記第2光源部との間に配置され、
前記拡散装置は、前記光合成素子により反射された前記第1光が入射する面に前記第1光と前記第2光とを拡散させる拡散構造を有し、前記光入射面と反対側の面に、前記第1光を反射し前記第2光を透過する反射膜を有する、付記2に記載の光源装置。
【0122】
付記3の構成によれば、拡散装置を備える場合であっても、光合成素子と第2光源部との間の光軸と交差する方向に光源装置が大型化するのを抑制することができる。
【0123】
(付記4)
前記フィルターの光入射側に設けられ、前記第3光を略平行化する平行化素子をさらに備える、付記1から付記3のうちのいずれか一つに記載の光源装置。
【0124】
付記4の構成によれば、フィルターの設計に際して光の入射角依存性を考慮しなくて済むため、フィルターの特性を向上させやすい。
【0125】
(付記5)
前記フィルターの光入射面は、前記第3光の主光線に対して90度以外の角度で交差する、付記1から付記4までのいずれか一つに記載の光源装置。
【0126】
付記4の構成によれば、フィルターで反射した後、波長変換素子および各光源部に戻る光を減らすことができる。これにより、波長変換素子および各光源部の信頼性を高めることができる。
【0127】
(付記6)
前記第1光源部は、
前記第1光を射出する第1発光素子と、
前記第1発光素子と前記光合成素子との間に設けられ、前記第1光に位相差を付与する第1位相差素子と、
を備え、
前記光合成素子から射出される前記第1光が前記波長変換素子に入射し、
前記第1位相差素子は、前記第1位相差素子の光入射面に交差する軸を中心として回転可能である、付記1から付記5までのいずれか一つに記載の光源装置。
【0128】
付記6の構成によれば、第1位相差素子を回転させることにより、第1偏光成分と第2偏光成分との比率を変化させることができ、波長変換素子に入射させる第1光の割合を変化させることができる。
【0129】
(付記7)
前記フィルターが前記第1位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値と、前記フィルターが前記第2位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値とが、互いに異なるように個別に制御する制御部をさらに備える、付記1から付記6までのいずれか一つに記載の光源装置。
【0130】
付記7の構成によれば、制御部は、フィルターが第1位置および第2位置のいずれに位置するかによって、第1光源部に供給する電流値を個別に制御することができる。
【0131】
(付記8)
前記第1光は青色光であり、
前記第2光は赤色光であり、
前記第3光は緑色光であり、
前記制御部は、前記フィルターが前記第1位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値を、前記フィルターが前記第2位置に位置する場合の前記第1光源部に供給する電流値よりも大きくする制御を行う、付記7に記載の光源装置。
【0132】
付記8の構成によれば、合成光のホワイトバランスを調整することができる。
【0133】
(付記9)
前記制御部は、前記フィルターが前記第1位置に位置する場合の前記第2光源部に供給する電流値を、前記フィルターが前記第2位置に位置する場合の前記第2光源部に供給する電流値よりも小さくする制御をさらに行う、付記8に記載の光源装置。
【0134】
付記9の構成によれば、フィルターが第1位置に位置する場合の輝度低下を最小限に抑えつつ、合成光のホワイトバランスを調整することができる。
【0135】
(付記10)
前記光合成素子は、前記波長変換素子から第1方向に沿って入射する前記第3光と、前記第2光源部から前記第1方向と交差する第2方向に沿って入射する前記第2光と、を合成し、
前記フィルターは、前記光合成素子と前記波長変換素子との間に設けられている、付記1から付記9までのいずれか一つに記載の光源装置。
【0136】
付記10の構成によれば、第2光がフィルターを透過しないため、第2光がフィルターを透過する場合に比べて、フィルターの仕様が単純になる。これにより、フィルターの製造コストを低減でき、所望の分光特性を実現しやすい。
【0137】
(付記11)
前記フィルターの光入射側に設けられ、前記光合成素子から射出される前記合成光を第1光束と第2光束とに分割する第1光学素子と、
前記フィルターの光射出側に設けられ、前記第1光束が入射する第1光入射領域と前記第2光束が入射する第2光入射領域とを有する第2光学素子と、
をさらに備え、
前記フィルターは、前記第1光束が入射する第1フィルター部と、前記第2光束が入射する第2フィルター部と、を有し、
前記フィルターの前記第1位置において、前記第1フィルター部は、前記第2光学素子の前記第1光入射領域と対向する位置に配置され、前記第2フィルター部は、前記第2光学素子の前記第2光入射領域と対向する位置に配置され、
前記フィルターの前記第2位置において、前記第1フィルター部は、前記第2光学素子の前記第1光入射領域と前記第2光入射領域との間の領域と対向する位置に配置される、付記1から付記9までのいずれか一つに記載の光源装置。
【0138】
付記11の構成によれば、第1位置と第2位置との間のフィルターの移動距離を小さくできるため、光源装置の小型化を図ることができる。
【0139】
(付記12)
前記フィルターに入射する前記第1光の断面形状は、長軸と短軸とを有する楕円形であり、
前記フィルターに入射する前記第3光の断面形状は、円形であり、
前記第3光の断面形状における径の長さは、前記第1光の断面形状における前記長軸に沿う方向の径の長さおよび前記短軸に沿う方向の径の長さのいずれか一方と略一致しており、
前記フィルターは、前記長軸に沿う方向および前記短軸に沿う方向のうち、前記略一致している軸に沿う方向に移動可能である、付記1から付記11までのいずれか一つに記載の光源装置。
【0140】
付記12の構成によれば、モード切替時における色むらの発生を抑えることができる。
【0141】
(付記13)
付記1から付記12までのいずれか一つに記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記合成光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【0142】
付記13の構成によれば、色再現性重視モードと輝度重視モードとを切り替え可能なプロジェクターを実現することができる。
【符号の説明】
【0143】
10…プロジェクター、11…第1光源部、12…第1光源部、13…波長変換素子、14,64…光合成素子、15,55,85…フィルター、15a…光入射面、16…平行化素子、17…拡散装置、21…インテグレーター光学素子(第1光学素子)、22…偏光変換素子(第2光学素子)、22A…第1光入射領域、22B…第2光入射領域、24…制御部、27…第1発光素子、29…第1位相差板(第1位相差素子)、85A…第1フィルター部、85B…第2フィルター部、100,120,130,140,150…光源装置、400R,400G,400B…光変調装置、600…投写光学装置、LBp,LBs,LBc1,LBc2…青色光(第1光)、LR,LRp,LRs…赤色光(第2光)、LG…緑色光(第3光)、L1…第1光束、L2…第2光束。