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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051472
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】振動素子および振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20240404BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H03H9/19 F
H03H9/19 D
H03H9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157660
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】川内 修
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC08
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE14
5J108EE18
5J108FF06
5J108FF07
5J108GG03
5J108GG08
5J108GG11
5J108GG15
5J108GG16
5J108GG20
5J108KK01
5J108KK02
5J108KK03
(57)【要約】
【課題】支持応力の影響を低減することができる電極構造を備えた振動素子および振動デバイスを提供すること。
【解決手段】振動素子は、振動基板と、前記振動基板に配置されている励振電極および前記励振電極と電気的に接続されているパッド電極と、を有し、前記パッド電極は、前記振動基板と接合されている接合部と、前記接合部から延出し前記振動基板と離間している離間部と、を有する。また、前記振動基板は、振動部と、振動部を支持し前記支持部よりも厚さが小さい支持部と、を有し、前記振動部に前記励振電極が配置され、前記支持部に前記パッド電極が配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動基板と、
前記振動基板に配置されている励振電極および前記励振電極と電気的に接続されているパッド電極と、を有し、
前記パッド電極は、前記振動基板と接合されている接合部と、前記接合部から延出し前記振動基板と離間している離間部と、を有することを特徴とする振動素子。
【請求項2】
前記振動基板は、振動部と、前記振動部を支持し前記振動部よりも厚さが小さい支持部と、を有し、
前記振動部に前記励振電極が配置され、
前記支持部に前記パッド電極が配置されている請求項1に記載の振動素子。
【請求項3】
前記振動基板の平面視で、前記離間部は、前記振動部と重なっている請求項2に記載の振動素子。
【請求項4】
前記離間部は、前記接合部を囲む枠状である請求項1に記載の振動素子。
【請求項5】
前記パッド電極は、前記振動基板上に配置されている電極層と、前記電極層上に配置されている金属膜と、を有し、
前記接合部は、前記電極層と前記金属膜との積層体で構成され、
前記離間部は、前記金属膜で構成されている請求項1に記載の振動素子。
【請求項6】
前記金属膜の厚さは、5μm以上50μm以下である請求項5に記載の振動素子。
【請求項7】
パッケージと、
前記パッケージに収容されている振動素子と、
前記パッケージと前記振動素子とを接合する接合部材と、を有し、
前記振動素子は、振動基板と、
前記振動基板に配置されている励振電極および前記励振電極と電気的に接続されているパッド電極と、を有し、
前記パッド電極は、前記振動基板と接合されている接合部と、前記接合部から延出し前記振動基板と離間している離間部と、を有し、
前記接合部材は、少なくとも一部が前記離間部と重なるように前記パッド電極に接合されていることを特徴とする振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動素子および振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された振動デバイスは、パッケージと、パッケージに収容された振動素子と、を有する。また、振動素子は、1つの接合部材によってパッケージに固定されている。また、パッケージと振動素子との電気的な接続は、前述した接合部材と、ボンディングワイヤーと、を用いて行われている。このような構成によれば、振動素子が1点でパッケージに固定されるため、パッケージからの応力、特にパッケージと振動素子との線膨張係数差により生じる熱応力(以下、単に「支持応力」とも言う。)が振動素子に加わり難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-195652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、支持応力の影響を低減するための振動素子の電極構造について何ら記載されてない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の振動素子は、振動基板と、
前記振動基板に配置されている励振電極および前記励振電極と電気的に接続されているパッド電極と、を有し、
前記パッド電極は、前記振動基板と接合されている接合部と、前記接合部から延出し前記振動基板と離間している離間部と、を有する。
【0006】
本発明の振動デバイスは、パッケージと、
前記パッケージに収容されている振動素子と、
前記パッケージと前記振動素子とを接合する接合部材と、を有し、
前記振動素子は、振動基板と、
前記振動基板に配置されている励振電極および前記励振電極と電気的に接続されているパッド電極と、を有し、
前記パッド電極は、前記振動基板と接合されている接合部と、前記接合部から延出し前記振動基板と離間している離間部と、を有し、
前記接合部材は、少なくとも一部が前記離間部と重なるように前記パッド電極に接合されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る振動子を示す断面図である。
図2図1の振動子が有する振動素子を示す上面図である。
図3図2中のA-A線断面図である。
図4図2中のB-B線断面図である。
図5】振動素子の下面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
図8】振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
図9】振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
図10】振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
図11】振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
図12】振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
図13】振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
図16】振動素子の下面図である。
図17】本発明の第4実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
図18】本発明の第4実施形態に係る振動素子を示す断面図である。
図19】本発明の第5実施形態に係る振動素子を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の振動素子および振動デバイスを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る振動子を示す断面図である。図2は、図1の振動子が有する振動素子を示す上面図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図4は、図2中のB-B線断面図である。図5は、振動素子の下面図である。
【0010】
図1に示す振動デバイスとしての振動子1は、パッケージ2と、パッケージ2に収容された振動素子3と、を有する。
【0011】
また、パッケージ2は、ベース21と、リッド22と、を有する。ベース21は、箱状をなし、その上面に開口する凹部211を有する。そして、凹部211の底面に振動素子3が接合部材B1、B2により実装されている。一方、リッド22は、板状をなし、凹部211の開口を塞ぐようにして、シールリング、低融点ガラス等の封止部材23を介してベース21の上面に接合されている。これにより、凹部211が気密封止され、パッケージ2内に収容空間Sが形成される。収容空間Sは、気密であり、減圧状態、好ましくは真空またはそれに近い状態となっている。これにより、粘性抵抗が減り、振動素子3の発振特性が高まる。
【0012】
ベース21およびリッド22の構成材料としては、それぞれ、特に限定されない。例えば、ベース21をアルミナ、チタニア等の各種セラミック材料で構成し、リッド22をコバール等の各種金属材料で構成することができる。これにより、ベース21とリッド22との線膨張係数差が小さくなり、熱応力が生じ難いパッケージ2となる。
【0013】
また、凹部211の底面には一対の内部端子241、242が配置され、ベース21の下面には一対の外部端子251、252が配置されている。内部端子241は、ベース21内に形成された図示しない内部配線を介して外部端子251と電気的に接続されている。同様に、内部端子242は、前記内部配線を介して外部端子252と電気的に接続されている。また、内部端子241は、導電性の接合部材B1を介して振動素子3と電気的に接続され、内部端子242は、導電性の接合部材B2を介して振動素子3と電気的に接続されている。
【0014】
接合部材B1、B2としては、導電性と接合性とを兼ね備えていれば、特に限定されず、例えば、金バンプ、銀バンプ、銅バンプ、はんだバンプ等の各種金属バンプ、銀ペースト、銅ペースト等の各種導電性ペースト、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系の各種接着剤に銀フィラー等の導電性フィラーを分散させた導電性接着剤等を用いることができる。接合部材B1、B2として前者の金属バンプを用いると、接合部材B1、B2からのガスの発生を抑制でき、収容空間Sの環境変化、特に圧力の上昇を効果的に抑制することができる。また、接合部材B1、B2が濡れ広がらないため、接合部材B1、B2を狭ピッチで配置することができ、振動子1の小型化を図ることができる。一方、接合部材B1、B2として後者の導電性接着剤を用いると、接合部材B1、B2が金属パンプに比べて柔らかくなり、振動素子3に支持応力が伝わり難くなる。
【0015】
図2に示すように、振動素子3は、ATカットの水晶基板である振動基板4と、振動基板4に配置された電極7と、を有する。ATカットの水晶基板は、厚みすべり振動モードを有し、三次の周波数温度特性を有する。そのため、優れた温度特性を有する振動素子3となる。ただし、振動基板4のカット角は、特に限定されない。
【0016】
ATカットの水晶基板について簡単に説明すると、水晶基板は、互いに直交する結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸を有する。X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、電気軸、機械軸、光学軸と呼ばれる。ATカットの水晶基板は、X-Z面をX軸回りに所定の角度θ回転させた平面に沿って切り出された「回転Yカット水晶基板」であり、θ=35°15’回転させた平面に沿って切り出した基板を「ATカット水晶基板」という。なお、以下では、角度θに対応してX軸まわりに回転したY軸およびZ軸をY’軸およびZ’軸とする。すなわち、水晶基板は、Y’軸方向に厚みを有し、X-Z’面方向に広がりを有する。また、以下では、各軸の矢印先端側を「プラス側」とも言い、その反対側を「マイナス側」とも言う。
【0017】
振動基板4は、板状であり、表裏関係にある第1面としての上面4aと第2面としての下面4bと、を有する。また、振動基板4は、平面視で、矩形、特にX軸方向を長手とする長方形である。ただし、振動基板4の平面視形状は、特に限定されない。また、振動基板4は、振動部41と、振動部41を支持する支持部42と、を有する。また、支持部42は、振動部41のX軸方向マイナス側に位置している。このような振動素子3は、図2に示すように、支持部42において接合部材B1、B2を介してベース21に固定されている。
【0018】
なお、本実施形態では、振動部41は、全体が均一な厚みを有する構成となっているが、これに限定されず、所謂「メサ型」、「逆メサ型」であってもよい。
【0019】
また、支持部42は、振動部41よりも厚さが小さい。つまり、図3および図4に示すように、振動部41の厚さをt1とし、支持部42の厚さをt2としたとき、t2<t1である。これにより、支持部42が変形し易くなり、支持応力を効果的に吸収、緩和することができる。そのため、振動部41に応力が伝わり難くなり、振動特性の変動を効果的に抑制することができる。したがって、優れた振動特性を有する振動素子3となる。
【0020】
t1は、特に限定されず、振動素子3の周波数によっても異なるが、例えば、30μm以上100μm以下程度とすることができる。また、t2は、特に限定されず、振動部41の寸法などによっても異なるが、例えば、5μm以上15μm以下程度とすることが好ましく、10μm程度とすることがより好ましい。これにより、支持部42が十分に柔らかくなり、支持応力を効果的に吸収、緩和することができる。
【0021】
支持部42は、振動基板4の上面4a側が凹没して形成されている。つまり、支持部42の上面4aは、振動部41の上面4aよりも下側に位置し、支持部42の下面4bは、振動部41の下面4bと連続した平坦面である。ただし、これに限定されず、振動基板4の下面4b側が凹没して形成されていてもよいし、振動基板4の上面4aおよび下面4bが共に凹没して形成されていてもよい。
【0022】
また、図2に示すように、支持部42は、2つに分割されており、Z’軸方向に並んで互いに離間して配置された第1支持部421および第2支持部422を有する。そして、第1支持部421が接合部材B1を介してベース21に接合され、第2支持部422が接合部材B2を介してベース21に接合されている。このように、支持部42を第1、第2支持部421、422に分割することにより、第1、第2支持部421、422が離間または接近するように支持部42が変形し、支持応力を効果的に吸収、緩和することができる。そのため、支持応力が振動部41に伝わり難くなり、振動特性の変動を効果的に抑制することができる。
【0023】
また、図2に示すように、電極7は、振動部41の上面4aに配置された第1励振電極71と、振動部41の下面4bに第1励振電極71と対向して配置された第2励振電極74と、第1支持部421の下面4bに配置された第1パッド電極72と、第2支持部422の下面4bに配置された第2パッド電極75と、第1励振電極71と第1パッド電極72とを電気的に接続する第1接続電極73と、第2励振電極74と第2パッド電極75とを電気的に接続する第2接続電極76と、を有する。そして、第1パッド電極72が接合部材B1を介して内部端子241と電気的に接続され、第2パッド電極75が接合部材B2を介して内部端子242と電気的に接続される。これにより、パッケージ2と振動素子3とが電気的に接続される。
【0024】
また、図3および図4に示すように、電極7のうち、第1励振電極71、第2励振電極74、第1接続電極73および第2接続電極76は、それぞれ、電極層5で構成されている。これに対して、第1パッド電極72および第2パッド電極75は、それぞれ、電極層5と金属膜6との積層体で構成されている。このように、第1、第2パッド電極72、75を電極層5と金属膜6との積層体で構成することにより、後述するような特徴的な形状の第1、第2パッド電極72、75を容易に形成することができる。
【0025】
電極層5の構成としては、導電性を有していれば特に限定されないが、例えば、Cr(クロム)の下地層とAu(金)層の表層との積層体で構成することができる。また、電極層5は、例えば、振動基板4の表面に成膜した金属膜をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いてパターニングすることで形成することができる。また、電極層5の厚さは、特に限定されないが、例えば、2000Å以上5000Å以下程度とすることができる。
【0026】
金属膜6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ニッケル(Ni)で構成することができる。ニッケル(Ni)で形成することにより、金属膜6を、例えば、めっき法、特に無電解ニッケルめっき法を用いて形成することができる。これにより、厚い金属膜6を容易に形成することができる。ここで、前述したように、振動素子3では、支持部42を振動部41よりも薄くすることにより支持応力を吸収、緩和しているが、その分、機械的強度が低下し、衝撃によって破損するおそれがある。そこで、振動素子3は、金属膜6を利用して支持部42を補強している。
【0027】
金属膜6の厚さt6は、電極層5の厚さt5よりも大きい。つまり、t6>t5である。なお、厚さt6、t5は、平均厚さを意味する。これにより、金属膜6により支持部42を効果的に補強することができる。厚さt6としては、特に限定されず、振動基板4の寸法等によっても異なるが、例えば、5μm以上50μm以下であることが好ましい。これにより、金属膜6が十分に厚くなり、支持部42の補強効果がより顕著となる。ただし、これに限定されず、t6≦t5であってもよい。
【0028】
また、図3および図4に示すように、第1パッド電極72は、振動基板4に接合されている接合部721と、接合部721から外側に延出し振動基板4と離間している離間部722と、を有する。離間部722は、振動基板4とギャップGを介して対向しており、上下への弾性変形が可能である。そして、接合部材B1は、その少なくとも一部が離間部722と重なるように第1パッド電極72に接合されている。同様に、第2パッド電極75は、振動基板4と接合されている接合部751と、接合部751から外側に延出し振動基板4と離間している離間部752と、を有する。離間部752は、振動基板4とギャップGを介して対向し、上下への弾性変形が可能である。そして、接合部材B2は、その少なくとも一部が離間部752と重なるように第2パッド電極75に接合されている。
【0029】
このような構成によれば、離間部722、752の分、第1、第2パッド電極72、75が広くなり、接合部材B1、B2との接合面積が大きくなる。したがって、振動素子3と接合部材B1、B2との接合強度を高めることができる。さらに、離間部722、752と重なるようにして接合部材B1、B2を第1、第2パッド電極72、75に接合すると、離間部722、752の変形により支持応力を吸収、緩和することができる。そのため、振動部41に応力が伝わり難くなり、振動特性の変動を効果的に抑制することができる。
【0030】
次に、第1、第2パッド電極72、75の構成について詳細に説明するが、これらは互いに同様の構成であるため、以下では、第1パッド電極72について説明し、第2パッド電極75については、その説明を省略する。第1パッド電極72は、前述したように、振動基板4に接合されている接合部721と、振動基板4と離間する離間部722と、を有する。このうち、接合部721は、電極層5と金属膜6との積層体で構成され、離間部722は、金属膜6で構成されている。これにより、金属膜6と振動基板4との間に電極層5の厚み分のギャップGを有する離間部722を容易に形成することができる。
【0031】
また、図5に示すように、第1パッド電極72は、振動基板4の平面視にて、第1支持部421と振動部41とに跨って形成されている。そして、第1支持部421と重なる部分と、当該部分から振動部41上に延出し振動部41と重なる部分の一部と、が接合部721を構成している。つまり、接合部721は、第1支持部421と振動部41とに跨って形成されている。また、振動部41と重なる部分の残りが、離間部722となっている。特に、本実施形態では、離間部722の二方(X軸方向マイナス側およびZ’軸方向マイナス側)を囲むL字状に接合部721が形成されている。
【0032】
このように、接合部721が第1支持部421と振動部41とに跨ることで、応力が集中し易い箇所である第1支持部421と振動部41との境界部が金属膜6で補強され、当該部分の機械的強度が向上する。一方、離間部722を振動部41と重ねることで、振動部41上の接合部721の面積が減り、その分、振動部41の振動が第1パッド電極72を介して振動部41外に漏れ難くなる。そのため、振動素子3の振動特性の低下を効果的に抑制することができる。つまり、本実施形態では、振動部41上に接合部721と離間部722とをバランスよく配置することにより、振動基板4の補強と、振動漏れの抑制と、の両立を図ることができる。ただし、第1パッド電極72内における接合部721および離間部722の配置や形状は、特に限定されない。
【0033】
以上、振動子1について説明した。このような振動子1が有する振動素子3は、前述したように、振動基板4と、振動基板4に配置されている励振電極としての第1、第2励振電極71、74および第1、第2励振電極71、74と電気的に接続されているパッド電極としての第1、第2パッド電極72、75と、を有する。そして、第1、第2パッド電極72、75は、振動基板4と接合されている接合部721、751と、接合部721、751から延出し振動基板4と離間している離間部722、752と、を有する。このような構成によれば、離間部722、752がある分、接合部材B1、B2との接合面積を大きくすることができる。したがって、振動素子3と接合部材B1、B2との接合強度を高めることができる。さらに、離間部722、752と重なるようにして接合部材B1、B2を第1、第2パッド電極72、75に接合すると、離間部722、752の変形により、支持応力を効果的に吸収、緩和することができる。そのため、振動部41に応力が伝わり難くなり、振動特性の変動を効果的に抑制することができる。
【0034】
また、前述したように、振動基板4は、振動部41と、振動部41を支持し振動部41よりも厚さが小さい支持部42と、を有し、振動部41に第1、第2励振電極71、74が配置され、支持部42に第1、第2パッド電極72、75が配置されている。このように、支持部42を振動部41よりも薄くすることで、支持部42が変形し易くなり、支持応力を効果的に吸収、緩和することができる。そのため、振動部41に応力が伝わり難くなり、振動特性の変動を効果的に抑制することができる。
【0035】
また、前述したように、振動基板4の平面視で、離間部722は、振動部41と重なっている。これにより、振動部41の振動が第1パッド電極72を介して振動部41外に漏れ難くなる。そのため、振動素子3の振動特性の低下を効果的に抑制することができる。
【0036】
また、前述したように、第1、第2パッド電極72、75は、振動基板4上に配置されている電極層5と、電極層5上に配置されている金属膜6と、を有し、接合部721、751は、電極層5と金属膜6との積層体で構成され、離間部722、752は、金属膜6で構成されている。これにより、第1、第2パッド電極72、75の形成、特に、離間部722、752の形成が容易となる。
【0037】
また、前述したように、金属膜6の厚さは、5μm以上50μm以下である。これにより、金属膜6によって支持部42を効果的に補強することができる。
【0038】
また、前述したように、振動子1は、パッケージ2と、パッケージ2に収容されている振動素子3と、パッケージ2と振動素子3とを接合する接合部材B1、B2と、を有する。また、振動素子3は、振動基板4と、振動基板4に配置されている励振電極としての第1、第2励振電極71、74と、振動基板4に配置され、第1、第2励振電極71、74と電気的に接続されているパッド電極としての第1、第2パッド電極72、75と、を有する。そして、第1、第2パッド電極72、75は、振動基板4と接合されている接合部721、751と、接合部721、751から延出し振動基板4と離間している離間部722、752と、を有する。そして、接合部材B1、B2は、少なくとも一部が離間部722、752と重なるように第1、第2パッド電極72、75に接合されている。このような構成によれば、離間部722、752がある分、接合部材B1、B2との接合面積を大きくすることができる。したがって、振動素子3と接合部材B1、B2との接合強度を高めることができる。さらに、離間部722、752と重なるようにして接合部材B1、B2を第1、第2パッド電極72、75に接合すると、離間部722、752の変形により、支持応力を効果的に吸収、緩和することができる。そのため、振動部41に応力が伝わり難くなり、振動特性の変動を効果的に抑制することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図6および図7は、それぞれ、本発明の第2実施形態に係る振動素子を示す断面図である。なお、図6は、図2中のA-A線断面図に相当する図であり、図7は、図2中のB-B線断面図に相当する図である。図8ないし図13は、それぞれ、振動素子の製造方法を説明するための断面図である。
【0040】
本実施形態に係る振動素子3は、電極層5と金属膜6との積層順が逆であること以外は、前述した第1実施形態の振動素子3と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の振動素子3に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0041】
図6および図7に示すように、本実施形態の振動素子3では、金属膜6上に電極層5が積層されている。これにより、電極層5によって金属膜6が保護され、金属膜6の腐食や酸化を効果的に抑制することができる。例えば、前述した第1実施形態では、ニッケルで構成された金属膜6が表層であったため、金属膜6の酸化や腐食によって第1、第2パッド電極72、75と接合部材B1、B2との電気的または機械的な接続不良が生じるおそれがあるが、本実施形態では、そのような問題が生じ難い。
【0042】
また、振動基板4と金属膜6との間には下地層Lが形成されている。下地層Lは、第1、第2パッド電極72、75の接合部721、751と重なる領域に形成されており、離間部722、752と重なる領域には形成されていない。これにより、離間部722、752と振動基板4との間に下地層Lの厚さ分のギャップGが形成される。また、離間部722、752の振動基板4と対向する面には凹凸が形成されている。
【0043】
このような振動素子3は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、図8に示すように、振動基板4の母材であるATカットの水晶基板400を準備する。水晶基板400は、振動基板4よりも大きく、水晶基板400から複数の振動基板4を形成することができる。次に、図9に示すように、水晶基板400上に下地層LおよびマスクMを順に形成する。マスクMは、金属膜6を形成する領域に対応した開口を有する。また、離間部722、752と重なる位置では、マスクMがスリット状に形成されている。
【0044】
次に、図10に示すように、無電解めっき法により、マスクMから露出した下地層L上に金属膜6を形成する。次に、図11に示すように、水晶基板400をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いてパターニングし、振動基板4を形成する。次に、マスクMを除去した後、図12に示すように、下地層Lの一部、具体的には、離間部722、752と重なる領域を除去して、金属膜6の一部を振動基板4から浮かせる。次に、図13に示すように、振動基板4上に電極層5を形成する。電極層5は、振動基板4の表面に金属膜を成膜し、製膜した金属膜をフォトリソグラフィー技法およびエッチング技法を用いてパターニングすることで形成することができる。以上によって、振動素子3が得られる。このような製造方法によれば、振動素子3を比較的簡単に製造することができる。
【0045】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0046】
<第3実施形態>
図14および図15は、それぞれ、本発明の第3実施形態に係る振動素子を示す断面図である。なお、図14は、図2中のA-A線断面図に相当する図であり、図15は、図2中のB-B線断面図に相当する図である。図16は、振動素子の下面図である。
【0047】
本実施形態に係る振動素子3は、第1、第2パッド電極72、75の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動素子3と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の振動素子3に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0048】
図14ないし図16に示すように、本実施形態の振動素子3では、第1パッド電極72において、離間部722が接合部721の基端側つまりX軸方向マイナス側に位置している。また、接合部721は、第1支持部421と振動部41とに跨って配置されている。同様に、第2パッド電極75において、離間部752が接合部751の基端側つまりX軸方向マイナス側に位置している。また、接合部751は、第2支持部422と振動部41とに跨って配置されている。このような構成によれば、前述した第1実施形態と比較して、より広い領域で接合部721、751が第1、第2支持部421、422と振動部41とを跨ぐため、支持部42と振動部41との境界部をより効果的に補強することができる。
【0049】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0050】
<第4実施形態>
図17および図18は、それぞれ、本発明の第4実施形態に係る振動素子を示す断面図である。なお、図17は、図2中のA-A線断面図に相当する図であり、図18は、図2中のB-B線断面図に相当する図である。
【0051】
本実施形態に係る振動素子3は、振動基板4の構成が異なること以外は、前述した第3実施形態の振動素子3と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の振動素子3に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0052】
図17および図18に示すように、本実施形態の振動素子3では、支持部42は、振動基板4の下面4b側を凹没させて形成されている。つまり、支持部42の下面4bは、振動部41の下面4bよりも上側に位置し、支持部42の上面4aは、振動部41の上面4aと連続した平坦面である。そのため、金属膜6は、第1、第2支持部421、422と振動部41との境界に形成された段差を跨いで形成される。当該段差部分が特に応力集中し易いため、これにより、金属膜6によって第1、第2支持部421、422と振動部41との境界部をより効果的に補強することができる。
【0053】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0054】
<第5実施形態>
図19は、本発明の第5実施形態に係る振動素子を示す下面図である。
【0055】
本実施形態に係る振動素子3は、第1、第2パッド電極72、75の形状が異なること以外は、前述した第1実施形態の振動素子3と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の振動素子3に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0056】
図19に示すように、第1パッド電極72では、接合部721は、第1支持部421上に配置され、振動部41に跨っていない。同様に、第2パッド電極75では、接合部751は、第2支持部422上に配置され、振動部41に跨っていない。これにより、振動素子3の振動漏れを効果的に抑制することができる。また、第1パッド電極72では、離間部722は、接合部721の周囲を囲む枠状となっている。同様に、第2パッド電極75では、離間部752は、接合部751の周囲を囲む枠状となっている。これにより、前述した第1実施形態と比較して、第1、第2パッド電極72、75と振動基板4との接合面積が減少するため、ベース21からの応力が振動素子3に伝わり難くなる。
【0057】
以上のように、本実施形態の振動素子3では、離間部722、752は、接合部721、751を囲む枠状である。これにより、第1、第2パッド電極72、75と振動基板4との接合面積が小さくなり、ベース21からの応力が振動素子3に伝わり難くなる。
【0058】
このような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0059】
以上、本発明の振動素子および振動デバイスを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【0060】
また、前述した実施形態では、振動素子3が振動子1に適用されているが、これに限定されず、さらに、パッケージ2内に振動素子3を発振する発振回路が実装された発振器に適用することもできる。
【0061】
また、前述した実施形態では、支持部42の厚さt2が振動部41の厚さt1よりも小さかったが、これに限定されず、t2≧t1であってもよい。また、前述した実施形態では、支持部42が第1支持部421と第2支持部422とに分割されているが、これに限定されず、分割されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…振動子、2…パッケージ、21…ベース、211…凹部、22…リッド、23…封止部材、241…内部端子、242…内部端子、251…外部端子、252…外部端子、3…振動素子、4…振動基板、4a…上面、4b…下面、400…水晶基板、41…振動部、42…支持部、421…第1支持部、422…第2支持部、5…電極層、6…金属膜、7…電極、71…第1励振電極、72…第1パッド電極、721…接合部、722…離間部、73…第1接続電極、74…第2励振電極、75…第2パッド電極、751…接合部、752…離間部、76…第2接続電極、B1…接合部材、B2…接合部材、G…ギャップ、L…下地層、M…マスク、S…収容空間、t1…厚さ、t2…厚さ、t5…厚さ、t6…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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