(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051474
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及びプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240404BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240404BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 305
B41J2/14 611
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157662
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐弘
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC08
2C056EC38
2C056EC72
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056KC02
2C057AF21
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG55
2C057AG68
2C057AG75
2C057AG84
2C057AK07
2C057AL25
2C057AM15
2C057AM16
2C057AM21
2C057AM22
2C057AN01
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体の吐出精度が向上する液体吐出装置を提供すること
【解決手段】第1吐出モジュールで検出された第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、第1吐出データが第1の値である場合、第1吐出モジュールの第1スイッチ回路は第1駆動波形を含む第1駆動電圧信号を出力し、第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、第1吐出データが記第1の値である場合、第1スイッチ回路は第2駆動波形を含む第1駆動電圧信号を出力し、第2吐出モジュールで検出された第2温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、第2吐出データが第1の値である場合、第2吐出モジュールの第2スイッチ回路は第1駆動波形を含む第2駆動電圧信号を出力し、第2温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、第2吐出データが第1の値である場合、第2スイッチ回路は第2駆動波形を含む第2駆動電圧信号を出力する、液体吐出装置。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動波形を含む駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドと、
を備え、
前記プリントヘッドは、第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、
前記第1吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第1駆動電圧信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が複数設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第1吐出データを含む第1吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで、前記第1圧電素子に供給される前記第1駆動電圧信号を出力する第1スイッチ回路と、
前記第1スイッチ回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1配線基板と電気的に接続され、前記第1圧力室の温度に応じた第1温度情報を検出する第1温度検知部と、
を含み、
前記第2吐出モジュールは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第2駆動電圧信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が複数設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第2吐出データを含む第2吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで前記第2圧電素子に供給される前記第2駆動電圧信号を出力する第2スイッチ回路と、
前記第2スイッチ回路が設けられた第2配線基板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2配線基板と電気的に接続され、前記第2圧力室の温度に応じた第2温度情報を検出する第2温度検知部と、
を含み、
前記第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが第1液滴量の液体を吐出させるための第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第1駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第1駆動波形と異なる第2駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第1駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第2駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1温度検知部の少なくとも一部は、前記第1振動板に積層され、前記第2温度検知部の少なくとも一部は、前記第2振動板に積層されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1液滴量と異なる第2液滴量の液体を吐出させるための第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第3駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第3駆動波形と異なる第4駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1吐出情報信号は、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第1吐出データと、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第1波形選択データと、
を含み、
前記第2吐出情報信号は、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第2吐出データと、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第2波形選択データと、
を含み、
前記第1温度情報に基づいて前記第1波形選択データが更新され、
前記第2温度情報に基づいて前記第2波形選択データが更新される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1スイッチ回路が前記第1駆動電圧信号を前記第1圧電素子に供給しない期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて、前記第1波形選択データが更新され、
前記第2スイッチ回路が前記第2駆動電圧信号を前記第2圧電素子に供給しない期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて、前記第2波形選択データが更新される、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて、前記第1波形選択データが更新され、
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて、前記第2波形選択データが更新される、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記第1吐出情報信号に含まれる前記第1波形選択データは、第1吐出周期で取得された前記第1温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く第2吐出周期において更新され、
更新された前記第1波形選択データを含む前記第1吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く第3吐出周期で前記第1スイッチ回路に入力され、
前記第2吐出情報信号に含まれる前記第2波形選択データは、前記第1吐出周期で取得された前記第2温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く前記第2吐出周期において更新され、
更新された前記第2波形選択データを含む前記第2吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く前記第3吐出周期で前記第2スイッチ回路に入力され、
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
駆動信号出力回路が出力する複数の駆動波形を含む駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドであって、
第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、
前記第1吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第1駆動電圧信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が複数設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第1吐出データを含む第1吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで、前記第1圧電素子に供給される前記第1駆動電圧信号を出力する第1スイッチ回路と、
前記第1スイッチ回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1配線基板と電気的に接続され、前記第1圧力室の温度に応じた第1温度情報を検出する第1温度検知部と、
を含み、
前記第2吐出モジュールは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第2駆動電圧信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が複数設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第2吐出データを含む第2吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで前記第2圧電素子に供給される前記第2駆動電圧信号を出力する第2スイッチ回路と、
前記第2スイッチ回路が設けられた第2配線基板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2配線基板と電気的に接続され、前記第2圧力室の温度に応じた第2温度情報を検出する第2温度検知部と、
を含み、
前記第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが第1液滴量の液体を吐出させるための第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第1駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第1駆動波形と異なる第2駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第1駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第2駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力する、
ことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項9】
前記第1温度検知部の少なくとも一部は、前記第1振動板に積層され、前記第2温度検知部の少なくとも一部は、前記第2振動板に積層されている、
ことを特徴とする請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記第1温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1液滴量と異なる第2液滴量の液体を吐出させるための第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第3駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第3駆動波形と異なる第4駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力する、
ことを特徴とする請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
前記第1吐出情報信号は、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第1吐出データと、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第1波形選択データと、
を含み、
前記第2吐出情報信号は、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第2吐出データと、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第2波形選択データと、
を含み、
前記第1温度情報に基づいて更新された前記第1波形選択データが入力され、
前記第2温度情報に基づいて更新された前記第2波形選択データが入力される、
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
前記第1スイッチ回路が前記第1駆動電圧信号を前記第1圧電素子に供給しない期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて更新された前記第1波形選択データが入力され、
前記第2スイッチ回路が前記第2駆動電圧信号を前記第2圧電素子に供給しない期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて更新された前記第2波形選択データが入力される、
ことを特徴とする請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて更新された前記第1波形選択データが入力され、
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて更新された前記第2波形選択データが入力される、
ことを特徴とする請求項11に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記第1吐出情報信号に含まれる前記第1波形選択データは、第1吐出周期で取得された前記第1温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く第2吐出周期において更新され、
更新された前記第1波形選択データを含む前記第1吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く第3吐出周期で前記第1スイッチ回路に入力され、
前記第2吐出情報信号に含まれる前記第2波形選択データは、前記第1吐出周期で取得された前記第2温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く前記第2吐出周期において更新され、
更新された前記第2波形選択データを含む前記第2吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く前記第3吐出周期で前記第2スイッチ回路に入力され、
ことを特徴とする請求項11に記載のプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及びプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体をする液体吐出装置には、圧電素子と、圧力室と、圧力室と連通するノズルとを有するプリントヘッドを備えた構成が知られている。そして、プリントヘッドは、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させ、圧力室に供給された液体をノズルから吐出する。このような液体吐出装置には、プリントヘッドに貯留されるインクの温度に基づいて圧電素子を駆動制御することで、当該インクの温度に適した吐出制御を実現する構成が知られている。例えば、特許文献1には、圧電素子、圧力室、及びノズルを有するプリントヘッドの内部に、インクが貯留される圧力室の温度を検出する温度検知部を有することで、検出される温度と圧力室内の温度との温度差を低減し、圧力室の温度の検出精度を高めることができる液体吐出装置、及び液体吐出ヘッド(プリントヘッド)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、温度検知部が取得した圧力室の温度を精度よく検出可能な構成について開示されてはいるものの、検出した温度を用いた液体吐出装置、及びプリントヘッドの最適な制御方法については、何らの記載もなく、それ故に、液体吐出装置、及びプリントヘッドから吐出される液体の吐出精度を向上させるとの観点において、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
複数の駆動波形を含む駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドと、
を備え、
前記プリントヘッドは、第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、
前記第1吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第1駆動電圧信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が複数設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第1吐出データを含む第1吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで、前記第1圧電素子に供給される前記第1駆動電圧信号を出力する第1スイッチ回路と、
前記第1スイッチ回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1配線基板と電気的に接続され、前記第1圧力室の温度に応じた第1温度情報を検出する第1温度検知部と、
を含み、
前記第2吐出モジュールは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第2駆動電圧信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が複数設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第2吐出データを含む第2吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで前記第2圧電素子に供給される前記第2駆動電圧信号を出力する第2スイッチ回路と、
前記第2スイッチ回路が設けられた第2配線基板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2配線基板と電気的に接続され、前記第2圧力室の温度に応じた第2温度情報を検出する第2温度検知部と、
を含み、
前記第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが第1液滴量の液体を吐出させるための第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第1駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第1駆動波形と異なる第2駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第1駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第2駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力する。
【0006】
本発明に係るプリントヘッドの一態様は、
駆動信号出力回路が出力する複数の駆動波形を含む駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドであって、
第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、
前記第1吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第1駆動電圧信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が複数設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第1吐出データを含む第1吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで、前記第1圧電素子に供給される前記第1駆動電圧信号を出力する第1スイッチ回路と、
前記第1スイッチ回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1配線基板と電気的に接続され、前記第1圧力室の温度に応じた第1温度情報を検出する第1温度検知部と、
を含み、
前記第2吐出モジュールは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第2駆動電圧信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が複数設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第2吐出データを含む第2吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで前記第2圧電素子に供給される前記第2駆動電圧信号を出力する第2スイッチ回路と、
前記第2スイッチ回路が設けられた第2配線基板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2配線基板と電気的に接続され、前記第2圧力室の温度に応じた第2温度情報を検出する第2温度検知部と、
を含み、
前記第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが第1液滴量の液体を吐出させるための第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第1駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第1駆動波形と異なる第2駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第1駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第2駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】ラッチ信号、チェンジ信号、クロック信号、及びヘッド制御信号と選択信号との関係を説明するための図である。
【
図6】ヘッド制御信号のデータ構成の一例を示す図である。
【
図9】吐出モジュールの構造を示す分解斜視図である。
【
図14】駆動回路が出力する駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
【
図15】インクが通常温度である場合に、駆動信号選択回路に入力されるヘッド制御信号の一例を示す図である。
【
図16】デコーダーのデコード内容の具体例を示す図である。
【
図17】
図16に示す選択信号が供給された場合に選択回路から出力される駆動信号VOUTを示す図である。
【
図18】インクが高温である場合に、駆動信号選択回路に入力されるヘッド制御信号の一例を示す図である。
【
図19】デコーダーのデコード内容の具体例を示す図である。
【
図20】
図19に示す選択信号が供給された場合に選択回路から出力される駆動信号VOUTを示す図である。
【
図21】インクが低温である場合に、駆動信号選択回路に入力されるヘッド制御信号の一例を示す図である。
【
図22】デコーダーのデコード内容の具体例を示す図である。
【
図23】
図22に示す選択信号が供給された場合に選択回路から出力される駆動信号VOUTを示す図である。
【
図24】温度情報信号の取得タイミング、及び駆動信号VOUTの補正タイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.液体吐出装置の構造
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態における液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを吐出するプリントヘッド20が搭載されたキャリッジ21が走査軸に沿って往復動し、搬送方向に沿って搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに対して画像を形成するシリアル印刷方式のインクジェットプリンターを例示して説明を行う。このような液体吐出装置1に用いられる媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。
【0010】
図1に示すように液体吐出装置1は、インク容器2、制御機構10、キャリッジ21、移動機構30、及び搬送機構40を備える。
【0011】
インク容器2には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。インク容器2に貯留されるインクの色彩としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グレー等が挙げられる。このようなインクが貯留されるインク容器2としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0012】
制御機構10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、プリントヘッド20を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0013】
キャリッジ21は、プリントヘッド20を搭載し、移動機構30に含まれる無端ベルト32に固定されている。なお、インク容器2は、キャリッジ21に搭載されていてもよい。
【0014】
キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20には、制御機構10が出力するプリントヘッド20を制御するための制御信号Ctrl-Hと、プリントヘッド20を駆動するための駆動信号COMと、が入力される。また、プリントヘッド20には、不図示のチューブを介して、インク容器2に貯留されるインクが供給される。そして、プリントヘッド20は、入力される制御信号Ctrl-Hと駆動信号COMとに基づいて、インク容器2から供給されるインクを吐出する。
【0015】
移動機構30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモーター31は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ21が走査軸に往復動する。すなわち、キャリッジ21は、媒体Pが搬送される搬送方向と交差する走査軸に沿って往復移動する。
【0016】
搬送機構40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、搬送モーター41の動作に従って回転する。この搬送ローラー42の回転に伴って媒体Pが搬送方向に搬送される。
【0017】
以上のように液体吐出装置1は、搬送機構40による媒体Pの搬送と移動機構30によるキャリッジ21の往復動とに連動し、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20が媒体Pにインクを吐出することで、媒体Pの表面の任意の位置にインクが着弾し、媒体Pに所望の画像を形成する。
【0018】
2.液体吐出装置の機能構成
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。
図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。
図2に示すように液体吐出装置1は、制御機構10、プリントヘッド20、キャリッジモーター31、搬送モーター41、及びリニアエンコーダー90を備える。
【0019】
制御機構10は、駆動回路50、基準電圧信号出力回路52、及び制御回路100を有する。制御回路100は、例えば、CPUやFPGA等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含む。制御回路100には、液体吐出装置1の外部と通信可能に接続されたホストコンピューター等の外部機器から画像データ等を含む画像情報信号が入力される。制御回路100は、入力される画像情報信号に基づいて、液体吐出装置1を制御するための各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0020】
具体例には、制御回路100には、上述した画像情報信号に加えて、リニアエンコーダー90から、キャリッジ21の走査位置に基づく検出信号が入力される。制御回路100は、入力される検出信号に基づいてキャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、プリントヘッド20の走査位置と画像情報信号とに応じた各種信号を生成し、出力する。
【0021】
詳細には、制御回路100は、プリントヘッド20の走査位置に応じて、プリントヘッド20の走査軸に沿った移動を制御するための制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。これにより、キャリッジモーター31が動作し、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20の走査軸に沿った移動、及び走査位置が制御される。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。これにより、搬送モーター41が動作し、媒体Pの搬送方向に沿った移動が制御される。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、キャリッジモーター31に入力されてもよく、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0022】
また、制御回路100は、外部機器から入力される画像情報信号と、リニアエンコーダー90から入力されるプリントヘッド20の走査位置と、に基づいて、プリントヘッド20を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、ヘッド制御信号DI1~DIn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、プリントヘッド20に出力する。
【0023】
また、制御回路100は、所定のタイミングにおいて、プリントヘッド20の温度を取得するための温度取得要求信号TDを生成し、プリントヘッド20に出力する。また、制御回路100には、温度取得要求信号TDに応じてプリントヘッド20が出力する温度情報信号TIが入力される。すなわち、制御回路100には、プリントヘッド20の温度の情報を含む温度情報信号TIが入力される。制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tを補正する。また、制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、プリントヘッド20のお温度が正常ではないと判断した場合、液体吐出装置1の動作を停止してもよい。
【0024】
さらに、制御回路100は、駆動回路50にデジタル信号である基駆動信号dOを出力する。駆動回路50は、入力される基駆動信号dOをデジタル/アナログ信号変換したのち、変換されたアナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMを生成し、プリントヘッド20に出力する。すなわち、制御回路100が出力する基駆動信号dOは、駆動信号COMの波形を規定するデジタル信号である。ここで、基駆動信号dOは、駆動回路50が出力する駆動信号COMの波形を規定することができればよく、アナログ信号であってもよい。なお、駆動回路50の詳細については後述する。
【0025】
基準電圧信号出力回路52は、基準電圧信号VBSを生成し、プリントヘッド20に出力する。この基準電圧信号出力回路52が出力する基準電圧信号VBSは、後述する圧電素子60の駆動の基準となる電位の信号であって、例えば、グラウンド電位で一定の信号であってもよく、5.5Vや6V等の電位で一定の直流電圧信号であってもよい。この基準電圧信号出力回路52は、駆動回路50と一体に構成されていてもよい。
【0026】
プリントヘッド20は、吐出モジュール22-1~22-nと、温度情報出力回路26と、を有する。また、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれは、駆動信号選択回路200、温度検出回路24、及び圧電素子60[1]~60[m]を含む。
【0027】
吐出モジュール22-1には、制御回路100が出力するヘッド制御信号DI1、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKと、駆動回路50が出力する駆動信号COMと、基準電圧信号出力回路52が出力する基準電圧信号VBSと、が入力される。
【0028】
吐出モジュール22-1に入力されたクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、ヘッド制御信号DI1、及び駆動信号COMは、駆動信号選択回路200に入力される。駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DI1に基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成する。そして、駆動信号選択回路200は、生成した駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を、対応する圧電素子60[1]~60[m]の一端に個別に入力する。また、圧電素子60[1]~60[m]の他端には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。そして、圧電素子60[1]~60[m]は、一端に個別に入力される駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]と、他端に共通に入力される基準電圧信号VBSとの電位差により駆動する。この圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれの駆動に応じた量のインクが、吐出モジュール22-1から吐出される。
【0029】
ここで、本実施形態のプリントヘッド20では、駆動信号VOUT[1]が圧電素子60[1]に対応し、駆動信号VOUT[m]が圧電素子60[m]に対応するとして説明を行う。すなわち、駆動信号選択回路200が生成した駆動信号VOUT[1]は、圧電素子60[1]の一端に入力され、駆動信号選択回路200が生成した駆動信号VOUT[m]は、圧電素子60[m]の一端に入力されるとして説明を行う。
【0030】
また、圧電素子60[1]~60[m]はいずれも同様の構成であり、区別する必要がない場合、圧電素子60と称する場合がある。その際、圧電素子60の一端には、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]として駆動信号VOUTが供給されるとして説明を行う。すなわち、圧電素子60は、一端に供給される駆動信号VOUTと他端に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて駆動するとして説明を行う場合がある。
【0031】
また、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24は、吐出モジュール22-1の温度を検出する。そして、温度検出回路24は、検出した吐出モジュール22-1の温度を温度検出情報TH1として温度情報出力回路26に出力する。
【0032】
ここで、吐出モジュール22-2~吐出モジュール22-nは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみで吐出モジュール22-1と同様の構成を有し、同様の動作を行う。
【0033】
すなわち、吐出モジュール22-nには、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、ヘッド制御信号DIn、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。そして、吐出モジュール22-nが有する駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DInに基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成する。吐出モジュール22-nが有する駆動信号選択回路200が生成した駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]は、吐出モジュール22-nが有する対応する圧電素子60[1]~60[m]の一端に入力される。吐出モジュール22-nが有する圧電素子60[1]~60[m]の他端には、基準電圧信号VBSが共通に入力される。これにより、吐出モジュール22-nが有する圧電素子60[1]~60[m]が駆動し、圧電素子60[1]~60[m]の駆動に応じた量のインクが、吐出モジュール22-nから吐出される。さらに、吐出モジュール22-nが有する温度検出回路24は、吐出モジュール22-nの温度を検出し、検出した温度を温度検出情報THnとして出力する。
【0034】
ここで、以下の説明において、吐出モジュール22-1~吐出モジュール22-nを区別する必要がない場合、吐出モジュール22と称する場合がある。この際、吐出モジュール22には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、ヘッド制御信号DI、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力され、吐出モジュール22の温度を示す温度検出情報THを出力するとして説明を行う。
【0035】
温度情報出力回路26には、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが有する温度検出回路24が出力する温度検出情報TH1~THnと、制御回路100が出力する温度取得要求信号TDと、が入力される。温度情報出力回路26は、温度検出情報TH1~THnのそれぞれを増幅し保持する。そして、温度情報出力回路26は、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じて、保持する温度検出情報TH1~THnのそれぞれを増幅した信号の内の対応する信号を温度情報信号TIとして出力する。このような温度情報出力回路26は、温度検出情報TH1~THnを増幅する増幅回路と、入力される温度取得要求信号TDを受け付け、温度検出情報TH1~THnを増幅した温度情報信号TIを出力するマイクロコンピューター等のプロセッサーと、温度検出情報TH1~THnのそれぞれを増幅し保持する記憶回路と、を含む。
【0036】
なお、温度情報出力回路26は、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが有する温度検出回路24が出力する温度検出情報TH1~THnのそれぞれを保持し、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じて、保持する温度検出情報TH1~THnのそれぞれを増幅し、増幅した信号を、温度情報信号TIとして出力してもよい。
【0037】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1は、駆動信号COMを出力する駆動回路50と、駆動信号COMを受けてインクを吐出するプリントヘッド20と、を備える。換言すれば、プリントヘッド20は、駆動回路50が出力する駆動信号COMを受けてインクを吐出する。
【0038】
3.駆動回路の構成
次に、駆動信号COMを出力する駆動回路50の構成及び動作について説明する。
図3は、駆動回路50の構成を示す図である。駆動回路50は、集積回路500、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570,572、及びその他の電子部品を有する。
【0039】
集積回路500は、端子In、端子Bst、端子Hdr、端子Sw、端子Gvd、端子Ldr、端子Gnd、端子Vfb、及び端子Ifbを含む複数の端子を有する。集積回路500は、当該複数の端子を介して外部に設けられた不図示の基板と電気的に接続される。また、集積回路500は、DAC(Digital to Analog Converter)511、変調回路510、及びゲートドライブ回路520を含む。
【0040】
DAC511は、入力されるデジタル信号の基駆動信号dOをアナログ信号の基駆動信号aOに変換し、変調回路510に出力する。このDAC511が出力する基駆動信号aOが増幅された信号が駆動信号COMに相当する。すなわち、基駆動信号aOは、駆動信号COMの増幅前の目標となる信号に相当し、基駆動信号dO,aOは、駆動信号COMの信号波形を規定する信号である。
【0041】
変調回路510は、基駆動信号aOを変調した変調信号Msを生成し、ゲートドライブ回路520に出力する。変調回路510は、加算器512,513、コンパレーター514、インバーター515、積分減衰器516、及び、減衰器517を含む。
【0042】
積分減衰器516は、端子Vfbを介して入力される駆動信号COMを減衰するとともに積分し、加算器512の-側の入力端に出力する。加算器512の+側の入力端には、基駆動信号aOが入力される。そして、加算器512は、+側の入力端に入力された電圧から-側の入力端に入力された電圧を差し引き積分した電圧を、加算器513の+側の入力端に出力する。
【0043】
減衰器517は、端子Ifbを介して入力された駆動信号COMの高周波成分を減衰した電圧を、加算器513の-側の入力端に出力する。加算器513の+側の入力端には、加算器512から出力された電圧が入力される。そして、加算器513は、+側の入力端に入力された電圧から-側の入力端に入力された電圧を減算した電圧信号Osを生成し、コンパレーター514に出力する。
【0044】
コンパレーター514は、加算器513から入力される電圧信号Osをパルス変調した変調信号Msを出力する。具体的には、コンパレーター514は、加算器513から入力される電圧信号Osの電圧値が、上昇している場合に所定の閾値Vth1以上となることでHレベルとなり、電圧信号Osの電圧値が、下降している場合に所定の閾値Vth2を下回ることでLレベルとなる変調信号Msを生成し出力する。ここで閾値Vth1,Vth2は、閾値Vth1=>閾値Vth2という関係に設定されている。
【0045】
コンパレーター514が出力する変調信号Msは、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー521に入力されるとともに、インバーター515を介して、ゲートドライブ回路520に含まれるゲートドライバー522にも入力される。すなわち、ゲートドライバー521とゲートドライバー522とには、論理レベルが排他的な関係の信号が入力される。ここで、論理レベルが排他的な関係には、ゲートドライバー521及びゲートドライバー522に入力される信号の論理レベルが、同時にHレベルにならないことが含まれる。したがって、変調回路510は、インバーター515に替えて若しくは加えて、ゲートドライバー521に入力される変調信号Msとゲートドライバー522に入力される変調信号Msの論理レベルを反転した信号とのタイミングを制御するためのタイミング制御回路を含んでもよい。
【0046】
ゲートドライブ回路520は、ゲートドライバー521とゲートドライバー522とを含む。ゲートドライバー521は、コンパレーター514から出力される変調信号Msをレベルシフトすることで増幅制御信号Hgdを生成し、端子Hdrから出力する。
【0047】
具体的には、ゲートドライバー521の電源電圧の内、高位側には端子Bstを介して電圧が供給され、低位側には端子Swを介して電圧が供給される。端子Bstは、コンデンサーC5の一端、及び逆流防止用のダイオードD1のカソードに接続されている。端子Swは、コンデンサーC5の他端に接続されている。また、ダイオードD1のアノードは、端子Gvdと接続されている。そして、端子Gvdには、不図示の電源回路が出力する例えば7.5Vの直流電圧である電圧信号Vmが供給されている。すなわち、ダイオードD1のアノードには、電圧信号Vmが供給される。したがって、端子Bstと端子Swとの電位差は、電圧信号Vmの電圧値におよそ等しくなる。その結果、ゲートドライバー521は、入力される変調信号Msに従って、端子Swに対して電圧信号Vmの電圧値だけ大きな電圧値の増幅制御信号Hgdを生成し、端子Hdrから出力する。
【0048】
ゲートドライバー522は、ゲートドライバー521よりも低電位側で動作する。ゲートドライバー522は、コンパレーター514から出力された変調信号Msの論理レベルがインバーター515によって反転された信号をレベルシフトすることで増幅制御信号Lgdを生成し、端子Ldrから出力する。
【0049】
具体的には、ゲートドライバー522の電源電圧の内、高位側には電圧信号Vmが供給され、低位側には端子Gndを介してグラウンド電位が供給される。そして、ゲートドライバー522は、入力される変調信号Msの論理レベルを反転した信号に従って、端子Gndに対して電圧信号Vmの電圧値だけ大きな電圧値の増幅制御信号Lgdを端子Ldrから出力する。ここで、グラウンド電位とは、駆動回路50の基準電位であって、例えば、0Vである。
【0050】
増幅回路550は、トランジスターM1とトランジスターM2とを含む。
【0051】
トランジスターM1は、表面実装型のFET(Field Effect Transistor)であって、トランジスターM1のドレインには、増幅回路550の増幅用電源電圧として、例えば42Vの直流電圧である電圧信号VHVが供給される。また、トランジスターM1のゲートは、抵抗R1の一端と電気的に接続され、抵抗R1の他端は、集積回路500の端子Hdrと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM1のゲートには、増幅制御信号Hgdが入力される。また、トランジスターM1のソースは、集積回路500の端子Swと電気的に接続されている。
【0052】
トランジスターM2は、表面実装型のFETであって、トランジスターM2のドレインは、集積回路500の端子Swと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM2のドレインとトランジスターM1のソースとは、互いに電気的に接続されている。トランジスターM2のゲートは、抵抗R2の一端と電気的に接続され、抵抗R2の他端は、集積回路500の端子Ldrと電気的に接続されている。すなわち、トランジスターM2のゲートには、増幅制御信号Lgdが入力される。また、トランジスターM2のソースには、グラウンド電位が供給される。
【0053】
そして、トランジスターM1のドレインとソースとの間が非導通に制御され、トランジスターM2のドレインとソースとの間が導通に制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電位は、グラウンド電位となる。したがって、端子Bstには電圧信号Vmが供給される。一方、トランジスターM1のドレインとソースとの間が導通に制御され、トランジスターM2のドレインとソースとの間が非導通に制御されている場合、端子Swが接続されるノードの電位は、電圧信号VHVの電圧値となる。したがって、端子Bstには電圧信号VHVの電圧値と電圧信号Vmの電圧値との和の電位の電圧が供給される。すなわち、トランジスターM1を駆動させるゲートドライバー521は、コンデンサーC5をフローティング電源として、トランジスターM1及びトランジスターM2の動作に応じて、端子Swの電位がグラウンド電位又は電圧信号VHVの電圧値に変化することで、Lレベルが電圧信号VHVの電圧値であって、且つ、Hレベルが電圧信号VHVの電圧値と電圧信号Vmの電圧値との和の電圧値の増幅制御信号Hgdを生成し、トランジスターM1のゲートに出力する。
【0054】
一方、トランジスターM2を駆動させるゲートドライバー522は、トランジスターM1及びトランジスターM2の動作に関係なく、Lレベルがグラウンド電位であって、且つ、Hレベルが電圧信号Vmの電圧値の増幅制御信号Lgdを生成し、トランジスターM2のゲートに出力する。
【0055】
以上のように構成された増幅回路550は、トランジスターM1のソースとトランジスターM2のドレインとの接続点に、変調信号Msを電圧信号VHVに基づいて増幅した増幅変調信号AMsを生成する。そして、増幅回路550は、生成した増幅変調信号AMsを復調回路560に出力する。
【0056】
ここで、増幅回路550に入力される電圧信号VHVが伝搬する伝搬経路には、コンデンサーC7が設けられている。具体的には、コンデンサーC7の一端は、電圧信号VHVが伝搬する伝搬経路であって、トランジスターM1のドレインと電気的に接続し、コンデンサーC7の他端には、グラウンド電位が供給されている。これにより、増幅回路550に入力される電圧信号VHVの電圧値が変動するおそれが低減するとともに、電圧信号VHVにノイズが重畳するおそれが低減し、その結果、増幅回路550が出力する増幅変調信号AMsの波形精度が向上する。そのため、高耐圧で大容量の電解コンデンサーが用いられる。なお、コンデンサーC7は、1個の駆動回路50に対応するように設けられていてもよく、複数の駆動回路50に対応するように設けられていてもよい。
【0057】
復調回路560は、増幅回路550が出力する増幅変調信号AMsを復調することで、駆動信号COMを生成し、駆動回路50から出力する。復調回路560は、インダクターL1とコンデンサーC1とを含む。インダクターL1の一端は、コンデンサーC1の一端と接続されている。インダクターL1の他端には、増幅変調信号AMsが入力される。また、コンデンサーC1の他端には、グラウンド電位が供給されている。すなわち、復調回路560においてインダクターL1とコンデンサーC1とは、ローパスフィルター(Low Pass Filter)を構成する。そして、復調回路560は、当該ローパスフィルターによって増幅変調信号AMsを平滑することで復調し、復調した信号を駆動信号COMとして出力する。すなわち、駆動回路50は、復調回路560に含まれるインダクターL1の一端、及びコンデンサーC1の一端から駆動信号COMを出力する。
【0058】
帰還回路570は、抵抗R3と抵抗R4とを含む。抵抗R3の一端には、駆動信号COMが供給され、他端は、端子Vfb及び抵抗R4の一端と接続されている。抵抗R4の他端には、電圧信号VHVが供給される。これにより、端子Vfbには、帰還回路570を通過した駆動信号COMが、電圧信号VHVの電圧値でプルアップされた状態で帰還する。
【0059】
帰還回路572は、コンデンサーC2,C3,C4と抵抗R5,R6とを含む。コンデンサーC2の一端には駆動信号COMが入力され、他端は抵抗R5の一端及び抵抗R6の一端と接続されている。抵抗R5の他端にはグラウンド電位が供給される。これにより、コンデンサーC2と抵抗R5とは、ハイパスフィルター(High Pass Filter)として機能する。また、抵抗R6の他端は、コンデンサーC4の一端及びコンデンサーC3の一端と接続されている。コンデンサーC3の他端には、グラウンド電位が供給される。これにより、抵抗R6とコンデンサーC3とは、ローパスフィルターとして機能する。すなわち、帰還回路572は、ハイパスフィルターとローパスフィルターと含み、駆動信号COMに含まれる所定の周波数域の信号を通過させるバンドパスフィルター(Band Pass Filter)として機能する。
【0060】
そして、コンデンサーC4の他端は集積回路500の端子Ifbと接続されている。これにより、端子Ifbには、バンドパスフィルターとして機能する帰還回路572を通過した駆動信号COMの高周波成分のうち、直流成分がカットされた信号が帰還する。
【0061】
駆動信号COMは、基駆動信号dOに基づく増幅変調信号AMsを復調回路560によって平滑された信号である。また、駆動信号COMは、端子Vfbを介して積分・減算された上で、加算器512に帰還される。これにより、駆動回路50は、帰還の遅延と帰還の伝達関数とで定まる周波数で自励発振する。ただし、端子Vfbを介した帰還経路は遅延量が大きく、それ故に、当該端子Vfbを介した帰還のみでは、駆動信号COMの精度を十分に確保できるほどに、自励発振の周波数を高くすることができない場合がある。そこで、端子Vfbを介した経路とは別に、端子Ifbを介して駆動信号COMの高周波成分を帰還する経路を設けることで、回路全体でみた場合における遅延を小さくしている。これにより、電圧信号Osの周波数は、端子Ifbを介した経路が存在しない場合と比較して、駆動信号COMの精度を十分に確保できるほどに高くすることができる。
【0062】
以上のように駆動回路50は、入力される基駆動信号dOをデジタル/アナログ変換した後、当該アナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMを生成し、生成した駆動信号COMを出力する。すなわち、駆動回路50は、D級増幅回路を含み、プリントヘッド20は、D級増幅回路を含む駆動回路50が出力する駆動信号COMを受けて液体を吐出する。
【0063】
4.駆動信号選択回路の構成
次に、駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。前述のとおり、駆動信号選択回路200は、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成し、圧電素子60の一端に出力する。
【0064】
図4は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。
図4に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210と、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応した選択回路230[1]~230[m]と、を有する。
【0065】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIが入力される。選択制御回路210は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を駆動信号VOUTとして出力するか否かを切り替えるための選択信号S[1]~S[m]を生成する。選択制御回路210が生成した選択信号S[1]~S[m]は、対応する選択回路230[1]~230[m]に入力される。選択回路230[1]~230[m]は、入力される選択信号S[1]~S[m]に基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで圧電素子60[1]~60[m]に対応する駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成し、対応する圧電素子60[1]~60[m]に出力する。ここで、選択回路230[1]~230[m]はいずれも同様の構成であり、圧電素子60[1]~60[m]の内の圧電素子60に対応する選択回路230[1]~230[m]を選択回路230と称する。この際、選択回路230は、選択信号S[1]~S[m]の内の選択信号Sに基づいて駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とするとして説明を行う。
【0066】
選択制御回路210の動作の詳細を説明するにあたり、選択制御回路210に入力されるラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及びヘッド制御信号DIの概要を説明する。
図5は、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及びヘッド制御信号DIと選択信号Sとの関係を説明するための図である。
【0067】
ラッチ信号LATは、リニアエンコーダー90が出力するプリントヘッド20の走査位置を示す信号に基づくパルス信号であり、プリントヘッド20が媒体Pにドットを形成する周期tpを規定する。チェンジ信号CHは、駆動信号COMに含まれる信号波形を圧電素子60に供給するか否かの切替タイミングを規定するパルス信号であり、周期tpを期間t1~t4に分割する。駆動信号選択回路200は、ラッチ信号LATによって規定される周期tpがチェンジ信号CHによって分割された期間t1~t4のそれぞれにおいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、圧電素子60に出力する。
【0068】
また、ヘッド制御信号DIは、吐出制御信号SIと波形選択信号SPをシリアルに含む。吐出制御信号SIは、圧電素子60の駆動により吐出されるインクの吐出量を、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対して個別に規定する。また、波形選択信号SPは、期間t1~t4のそれぞれにおいて出力される選択信号Sの論理レベルと、吐出制御信号SIとの関係を規定する。
【0069】
そして、
図5に示すように、ヘッド制御信号DIは、ラッチ信号LATが立ち上がる前の周期tpにおいて、クロック信号SCKに同期して選択制御回路210に入力される。このとき、選択制御回路210に入力されたヘッド制御信号DIは、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応するレジスターに保持される。そして、当該レジスターに保持されたヘッド制御信号DIは、ラッチ信号LATの立ち上りにおいて、一斉にラッチされる。すなわち、周期tpの開始のタイミングで、当該レジスターに保持されたヘッド制御信号DIが一斉にラッチされる。選択制御回路210は、一斉にラッチされたヘッド制御信号DIに基づいて、ラッチ信号LATが立ち上がった後の周期tpにおける期間t1,t2,t3,t4のそれぞれに対応して選択信号Sを生成し、選択回路230に出力する。
【0070】
ここで、吐出制御信号SIと波形選択信号SPとを含むヘッド制御信号DIの詳細について説明する。
図6は、ヘッド制御信号DIのデータ構成の一例を示す図である。
図6に示すようにヘッド制御信号DIは、吐出制御信号SI及び波形選択信号SPを含む。
【0071】
吐出制御信号SIは、圧電素子60の駆動により吐出されるインクの吐出量を規定する信号であって、上位吐出データSIHと下位吐出データSILとを含む。すなわち、吐出制御信号SIには、圧電素子60の駆動を制御するための上位吐出データSIHと下位吐出データSILとの2ビットのデータが、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応して含まれている。
【0072】
具体的には、吐出制御信号SIは、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応するmビットの上位吐出データSIHを、圧電素子60[m]に対応する上位吐出データSIH、圧電素子60[m-1]に対応する上位吐出データSIH、…、圧電素子60[1]に対応する上位吐出データSIHの順にシリアルに含み、上位吐出データSIHの後に続き、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応するmビットの下位吐出データSILを、圧電素子60[m]に対応する下位吐出データSIL、圧電素子60[m-1]に対応する下位吐出データSIL、…、圧電素子60[1]に対応する下位吐出データSILの順にシリアルに含む。すなわち、吐出制御信号SIは、圧電素子60[m]~60[1]に対応するmビットの上位吐出データSIHと、圧電素子60[m]~60[1]に対応するmビットの下位吐出データSILと、をシリアルに含む2mビットの信号である。そして、圧電素子60[i](iは1~mのいずれか)の駆動により吐出されるインクの吐出量が、圧電素子60[i]に対応する上位吐出データSIHと、圧電素子60[i]に対応する下位吐出データSILと、の2ビットで規定される。
【0073】
ここで、以下の説明において、圧電素子60[i]に対応する上位吐出データSIHを上位吐出データSIHiと称し、圧電素子60[i]に対応する下位吐出データSILを下位吐出データSILiと称する場合がある。さらに、以下の説明において、圧電素子60に対応する上位吐出データSIHと下位吐出データSILとを、一括りに吐出データ[SIH,SIL]と称する場合があり、圧電素子60[i]に対応する上位吐出データSIHiと下位吐出データSILiとを、一括りに吐出データ[SIHi,SILi]と称する場合がある。すなわち、圧電素子60[i]の駆動により吐出されるインクの吐出量は、吐出データ[SIHi,SILi]によって規定される。換言すれば、吐出データ[SIHi,SILi]は、圧電素子60[i]の駆動により吐出されるインクの吐出量を規定する。
【0074】
波形選択信号SPは、吐出データ[SIH,SIL]に対応する圧電素子60の駆動パターンを期間t1~t4のそれぞれにおいて規定するための信号であって、吐出データ[SIH,SIL]に対応する期間t1~t4のそれぞれにおいて出力される選択信号Sの論理レベルを規定する。本実施形態における波形選択信号SPは、設定情報SP00~SP03,SP10~SP13,SP20~SP23,SP30~SP33を含む16ビットの信号である。
【0075】
具体的には、波形選択信号SPは、吐出データ[SIH,SIL]によって決定される期間t1における圧電素子60の駆動パターンを規定する設定情報SP00~SP03と、吐出データ[SIH,SIL]によって決定される期間t2における圧電素子60の駆動パターンを規定する設定情報SP10~SP13と、吐出データ[SIH,SIL]によって決定される期間t3における圧電素子60の駆動パターンを規定する設定情報SP20~SP23と、吐出データ[SIH,SIL]によって決定される期間t4における圧電素子60の駆動パターンを規定する設定情報SP30~SP33と、を設定情報SP33,SP32,SP31,SP30,SP23,SP22,SP21,SP20,SP13,SP12,SP11,SP10,SP03,SP02,SP01,SP00の順にシリアルに含む。そして、波形選択信号SPは、圧電素子60[i]の駆動により吐出されるインクの吐出量であって、吐出データ[SIH,SIL]に対応し、駆動信号に含まれる複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する。
【0076】
なお、波形選択信号SPは、16ビットの信号に限られるものではなく、周期tpがチェンジ信号CHによって分割された期間数や、吐出制御信号SIによって規定される圧電素子60の駆動パターンの数に応じて、16ビット以上の信号、若しくは、16ビット以下の信号であってもよい。
【0077】
以上のように、ヘッド制御信号DIは、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれの駆動により吐出されるインクの吐出量を規定する吐出データ[SIH1,SIL1]~[SIHm,SILm]と、圧電素子60[1]~60[m]の駆動により吐出されるインクの吐出量に対応し、駆動信号COMに含まれる複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する波形選択信号SPと、を含む。
【0078】
図4に戻り、選択制御回路210は、制御ロジック回路260と、圧電素子60[1]~60[m]に対応して設けられる選択信号出力部270[1]~270[m]と、を有する。そして、選択制御回路210は、入力されるラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHで規定されるタイミングにおいて、クロック信号SCKに同期して伝搬されるヘッド制御信号DIに基づいて、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応する選択信号S[1]~S[m]を生成し、対応する選択回路230[1]~230[m]に出力する。
【0079】
制御ロジック回路260は、SP用レジスター群261と、選択制御信号生成部262と、を含む。SP用レジスター群261は、シリアルに接続された複数のレジスターを含み、クロック信号SCKに同期して入力されるヘッド制御信号DIを、順次後段のレジスターに伝搬する所謂シフトレジスターを構成している。そして、クロック信号SCKの供給が停止すると、SP用レジスター群261には、ヘッド制御信号DIの内、波形選択信号SPに含まれる設定情報SP00~SP33が保持される。
【0080】
選択制御信号生成部262は、ラッチ信号LATの立ち上がりでSP用レジスター群261に保持されている設定情報SP00~SP33をラッチする。そして、選択制御信号生成部262は、ラッチした設定情報SP00~SP33を翻訳することで、選択制御信号Q0,Q1,Q2,Q3を生成し、選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれが有するデコーダー226に出力する。
【0081】
選択制御信号Q0は、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03を含み、期間t1において選択制御回路210から出力される選択信号Sの論理レベルを規定する。選択制御信号Q1は、設定情報SP10,SP11,SP12,SP13を含み、期間t2において選択制御回路210から出力される選択信号Sの論理レベルを規定する。選択制御信号Q2は、設定情報SP20,SP21,SP22,SP23を含み、期間t3において選択制御回路210から出力される選択信号Sの論理レベルを規定する。選択制御信号Q3は、設定情報SP30,SP31,SP32,SP33を含み、期間t4において選択制御回路210から出力される選択信号Sの論理レベルを規定する。
【0082】
ここで、以下の説明において、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03を含む選択制御信号Q0を、選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]と称し、設定情報SP10,SP11,SP12,SP13を含む選択制御信号Q1を、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]と称し、設定情報SP20,SP21,SP22,SP23を含む選択制御信号Q2を、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]と称し、設定情報SP30,SP31,SP32,SP33を含む選択制御信号Q3を、選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]と称する場合がある。
【0083】
選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれは、第1レジスター222a、第2レジスター222b、第1ラッチ回路224a、第2ラッチ回路224b、及びデコーダー226を有する。
【0084】
選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれに含まれる第2レジスター222bは、複数のレジスターを含むSP用レジスター群261の後段にシリアルに接続され、選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれに含まれる第1レジスター222aは、シリアルに接続されたm個の第2レジスター222bの後段にシリアルに接続されている。
【0085】
具体的には、SP用レジスター群261の後段に、選択信号出力部270[1]に含まれる第2レジスター222bが接続され、選択信号出力部270[1]に含まれる第2レジスター222bの後段に、選択信号出力部270[2]に含まれる第2レジスター222b、選択信号出力部270[3]に含まれる第2レジスター222b、…、選択信号出力部270[m]に含まれる第2レジスター222bが順にシリアルに接続されている。そして、選択信号出力部270[m]に含まれる第2レジスター222bの後段に、選択信号出力部270[1]に含まれる第1レジスター222aが接続されている。また、選択信号出力部270[1]に含まれる第1レジスター222aの後段に、選択信号出力部270[2]に含まれる第1レジスター222a、選択信号出力部270[3]に含まれる第1レジスター222a、…、選択信号出力部270[m]に含まれる第1レジスター222aが順にシリアルに接続されている。
【0086】
すなわち、SP用レジスター群261と、選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれに含まれるm個の第2レジスター222bと、選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれに含まれるm個の第1レジスター222aとは、シフトレジスターを構成している。そして、SP用レジスター群261に入力されたヘッド制御信号DIは、クロック信号SCKに同期して選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれに含まれるm個の第2レジスター222b、選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれに含まれるm個の第1レジスター222aの順に後段に伝搬される。その後、クロック信号SCKの供給が停止することで、選択信号出力部270[i]に含まれる第2レジスター222bには、圧電素子60[i]に対応する下位吐出データSILiが保持され、選択信号出力部270[i]に含まれる第1レジスター222aには、圧電素子60[i]に対応する上位吐出データSIHiが保持される。
【0087】
選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれが有する第1レジスター222aに保持された上位吐出データSIHは、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応する第1ラッチ回路224aによりラッチされ、選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれが有する第2レジスター222bに保持された下位吐出データSILは、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応する第2ラッチ回路224bによりラッチされる。そして、第1ラッチ回路224aは、ラッチした上位吐出データSIHをラッチデータLTaとしてデコーダー226に出力し、第2ラッチ回路224bは、ラッチした下位吐出データSILをラッチデータLTbとしてデコーダー226に出力する。
【0088】
ここで、以下の説明において、選択信号出力部270[i]が有する第1ラッチ回路224aが出力するラッチデータLTaを、ラッチデータLTaiと称し、選択信号出力部270[i]が有する第2ラッチ回路224bが出力するラッチデータLTbを、ラッチデータLTbiと称する場合がある。また、ラッチデータLTa,LTbを一括りにラッチデータ[LTa,LTb]と称する場合があり、選択信号出力部270[i]に対応するラッチデータLTai,LTbiを一括りにラッチデータ[LTai,LTbi]と称する場合がある。
【0089】
選択信号出力部270[1]~270[m]のそれぞれが有するデコーダー226には、選択制御信号生成部262が出力する選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]、及び選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]が共通に入力されるとともに、対応する第1ラッチ回路224a及び第2ラッチ回路224bが出力するラッチデータ[LTa,LTb]が入力される。すなわち、選択信号出力部270[i]が有するデコーダー226には、選択制御信号生成部262が出力する選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]、及び選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]と、吐出データ[SIHi,SILi]に対応するラッチデータ[LTai,LTbi]と、が入力される。そして、選択信号出力部270[i]が有するデコーダー226は、選択制御信号Q0~Q3に基づいて、ラッチデータ[LTai,LTbi]をデコードすることで選択信号S[i]を生成し、選択回路230[i]に出力する。
【0090】
図7は、選択制御信号Q0~Q3に基づくデコーダー226のデコード内容を示す図である。
図7に示すように、デコーダー226は、期間t1において、選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力し、期間t2において、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力し、期間t3において、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力し、期間t4において、選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力する。
【0091】
具体的には、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、デコーダー226は、選択制御信号Q0~Q3で規定される内容に従って、期間t1において設定情報SP00の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t2において設定情報SP10の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t3において設定情報SP20の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t4において設定情報SP30の論理レベルを選択信号Sとして出力する。同様に、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、デコーダー226は、選択制御信号Q0~Q3で規定される内容に従って、期間t1において設定情報SP01の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t2において設定情報SP11の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t3において設定情報SP21の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t4において設定情報SP31の論理レベルを選択信号Sとして出力する。同様に、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、選択制御信号Q0~Q3で規定される内容に従って、期間t1において設定情報SP02の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t2において設定情報SP12の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t3において設定情報SP22の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t4において設定情報SP32の論理レベルを選択信号Sとして出力する。同様に、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,0]が入力された場合、デコーダー226は、選択制御信号Q0~Q3で規定される内容に従って、期間t1において設定情報SP03の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t2において設定情報SP13の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t3において設定情報SP23の論理レベルを選択信号Sとして出力し、期間t4において設定情報SP33の論理レベルを選択信号Sとして出力する。
【0092】
以上のように、選択制御回路210は、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIに基づいて、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応する選択回路230[1]~230[m]の状態を制御する選択信号S[1]~S[m]を出力する。
【0093】
次に、選択回路230[1]~230[m]の構成について説明する。ここで、選択回路230[1]~230[m]は、いずれも同様の構成である。そのため、選択回路230[1]~230[m]を区別する必要がない場合、単に選択回路230と称する場合がある。そして、選択回路230には、選択信号S[1]~S[m]の内の選択信号Sが入力されるとして説明を行う。
【0094】
図8は、圧電素子60に対応する選択回路230の構成を示す図である。
図8に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232と、トランスファーゲート234と、を有する。
【0095】
選択制御回路210が出力する選択信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232によって論理反転されて、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給される。具体的には、トランスファーゲート234は、入力される選択信号SがHレベルの場合に入力端と出力端との間を導通とし、入力される選択信号SがLレベルの場合に入力端と出力端との間を非導通とする。そして、トランスファーゲート234の出力端から駆動信号VOUTが出力される。
【0096】
以上のように、本実施形態における駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びヘッド制御信号DIに基づいて、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応する選択信号S[1]~S[m]を生成する。そして、選択信号S[1]~S[m]によって、選択回路230[1]~230[m]のそれぞれが、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、圧電素子60[1]~60[m]のそれぞれに対応する駆動信号VOUT[1]~VOUT[m]を生成し、対応する圧電素子60[1]~60[m]に出力する。
【0097】
すなわち、選択回路230は、圧電素子60の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する吐出データ[SIH,SIL]を含むヘッド制御信号DIに基づいて、駆動信号COMに含まれる複数の信号波形を選択又は非選択とすることで圧電素子60に供給される駆動信号VOUTを出力する。
【0098】
5.プリントヘッド20が有する吐出モジュール22の構造
次に、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22の構造について説明する。
図9は、吐出モジュール22の構造を示す分解斜視図であり、
図10は、吐出モジュール22の平面図であり、
図11は、
図10に示すIV-IV断面を示す断面図であり、
図12は、
図11の要部詳細図であり、
図13は、
図10に示すVI-VI断面を示す断面図である。また、プリントヘッド20の構造を説明するにあたり、各図には、互いに直交する3つの空間軸であるおいてX、Y、Zを図示している。本実施形態では、これらの軸に沿った方向をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向と称するとともに、向きを特定する場合、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用し、各図の矢印が向かう向きを+方向、矢印の反対方向を-方向として説明する。また、Z軸方向は、鉛直方向を示し、+Z軸方向は鉛直下向き、-Z軸方向は鉛直上向きを示す。さらに、正方向及び負方向を限定しない3つのX、Y、Zの空間軸については、X軸、Y軸、Z軸と称する。
【0099】
図9に示すように、吐出モジュール22は、Z軸方向、より具体的は+Z軸方向にインクを吐出する。吐出モジュール22は、圧力室基板310と、連通板315と、ノズルプレート320と、コンプライアンス基板345と、後述する振動板350と、後述する圧電素子60と、保護基板330と、ケース部材340と、配線基板420と、を構成部材として有する。
【0100】
圧力室基板310は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。
図10に示すように、圧力室基板310には、複数の圧力室312がY軸方向に沿って並ぶ圧力室列が、X軸方向に2列配置されている。換言すると、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22は、複数の圧力室312を有し、複数の圧力室312は、複数の圧力室312がY軸方向に沿って並ぶ圧力室列を形成する。ここで、2列の圧力室列のうち、+X方向側となる圧力室列を第1圧力室列、第1圧力室列とX軸方向において-X方向に離れる圧力室列を第2圧力室列と称する場合がある。なお、
図10は、吐出モジュール22の平面図であるが、圧力室基板310周辺の構成を図示し、保護基板330、ケース部材340の図示を省略している。
【0101】
また、各圧力室列を構成する複数の圧力室312は、X軸方向の位置が同じ位置となるように、Y軸方向に沿った直線上に配置されている。Y軸方向で互いに隣り合う圧力室312は、
図13に示す隔壁311によって区画されている。もちろん、圧力室312の配置は特に限定されるものではない。例えば、Y軸方向に並ぶ複数の圧力室312の配置は、各圧力室312を1つ置きにX軸方向にずれた位置とする、いわゆる千鳥配置となっていてもよい。
【0102】
また、本実施形態の圧力室312は、+Z方向からの平面視においてX軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長い、例えば、長方形に形成されている。もちろん、+Z方向からの平面視における圧力室312の形状は、特に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。なお、ここでいうオーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれる。
【0103】
図9、
図12に示すように、圧力室基板310の+Z軸方向側には、連通板315と、ノズルプレート320及びコンプライアンス基板345とが順次積層されている。
【0104】
連通板315には、圧力室312とノズル321とを連通するノズル連通路316が設けられている。また、連通板315には、複数の圧力室312が連通する共通液室となるマニホールド400の一部を構成する第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318が設けられている。第1マニホールド部317は、連通板315をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部318は、連通板315をZ軸方向に貫通することなく、+Z軸方向側の面に開口して設けられている。
【0105】
さらに、連通板315には、圧力室312のX軸方向の一方の端部に連通する供給連通路319が圧力室312の各々に独立して設けられている。供給連通路319は、第2マニホールド部318と各圧力室312とを連通して、マニホールド400内のインクを各圧力室312に供給する。
【0106】
連通板315としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。なお、連通板315は、熱膨張率が圧力室基板310と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、圧力室基板310及び連通板315の温度が変化した際、熱膨張率の違いに起因して圧力室基板310及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0107】
ノズルプレート320は、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z軸方向側の面に設けられている。ノズルプレート320には、各圧力室312にノズル連通路316を介して連通するノズル321が形成されている。
【0108】
本実施形態では、複数のノズル321は、Y軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。そしてノズルプレート320には、これら複数のノズル321が列設されたノズル列がX軸方向に離れて2列設けられている。2列のノズル列は第1圧力室列、第2圧力室列にそれぞれ対応する。各列の複数のノズル321は、X軸方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なおノズル321の配置は特に限定されるものではない。例えば、Y軸方向に並んで配置されるノズル321は、1つ置きにX軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0109】
ノズルプレート320の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらにノズルプレート320の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることもできる。ただし、ノズルプレート320は、連通板315の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、ノズルプレート320及び連通板315の温度が変化した際、熱膨張率の違いに起因してノズルプレート320及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0110】
コンプライアンス基板345は、ノズルプレート320と共に、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z軸方向側の面に設けられている。このコンプライアンス基板345は、ノズルプレート320の周囲に設けられ、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318の開口を封止する。コンプライアンス基板345は、可撓性を有する薄膜からなる封止膜346と、金属等の硬質の材料からなる固定基板347と、を含む。固定基板347のマニホールド400に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部348となっている。このため、マニホールド400の一方面は、可撓性を有する封止膜346のみで封止されたコンプライアンス部349となっている。
【0111】
一方、圧力室基板310のノズルプレート320等とは反対側、すなわち-Z方向側の面には、詳しくは後述するが、振動板350と、この振動板350を撓み変形させて圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電素子60とが積層されている。換言すると、振動板350は圧電素子60に対してZ軸方向の+Z軸方向に設けられ、圧力室基板310は振動板350に対してZ軸方向の+Z軸方向に設けられている。なお、
図11は、吐出モジュール22の全体構成を説明するための図であり、圧電素子60の構成については簡略化して示している。
【0112】
圧力室基板310の-Z軸方向側の面には、さらに、圧力室基板310と略同じ大きさを有する保護基板330が接着剤等によって接合されている。保護基板330は、圧電素子60を保護する空間である保持部331を有する。保持部331は、Y軸方向に並んで配置された圧電素子60の列毎に独立して設けられたものであり、X軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板330には、X軸方向に並んで配置された2つの保持部331の間にZ軸方向に貫通する貫通孔332が設けられている。
【0113】
また、保護基板330上には、複数の圧力室312に連通するマニホールド400を圧力室基板310と共に画成するケース部材340が固定されている。ケース部材340は、-Z軸方向からの平面視において上述した連通板315と略同一形状を有し、保護基板330に接合されると共に、上述した連通板315にも接合されている。
【0114】
このようなケース部材340は、圧力室基板310及び保護基板330を収容可能な深さの空間である収容部341を保護基板330側に有する。この収容部341は、保護基板330の圧力室基板310に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部341に圧力室基板310及び保護基板330が収容された状態で収容部341のノズルプレート320側の開口面が連通板315によって封止されている。
【0115】
またケース部材340には、X軸方向における収容部341の両外側に、第3マニホールド部342がそれぞれ画成されている。そして、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318と、第3マニホールド部342と、によってマニホールド400が構成されている。マニホールド400は、Y軸方向に亘って連続して設けられており、各圧力室312とマニホールド400とを連通する供給連通路319は、Y軸方向に並んで配置されている。
【0116】
また、ケース部材340には、マニホールド400に連通して各マニホールド400にインクを供給するための供給口344が設けられている。さらにケース部材340には、保護基板330の貫通孔332に連通して配線基板420が挿通される接続口343が設けられている。
【0117】
このような本実施形態の吐出モジュール22では、インク容器2に貯留されたインクを供給口344から取り込み、マニホールド400からノズル321に至るまで内部をインクで満たした後、駆動信号選択回路200を含む集積回路421から、圧力室312に対応するそれぞれの圧電素子60に、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを供給する。これにより圧電素子60と共に振動板350がたわみ変形して各圧力室312内の圧力が高まり、各ノズル321からインクが吐出される。そして、プリントヘッド20は、上述した吐出モジュール22を複数有することで構成されている。
【0118】
次に、上述した振動板350、圧電素子60を含む、圧力室基板310の-Z軸方向側に積層形成される構成について詳しく説明する。吐出モジュール22は、圧力室基板310の-Z軸方向側に積層される構成として、振動板350、圧電素子60に加え、個別リード電極391、共通リード電極392、測定用リード電極393、および抵抗配線401を有する。
【0119】
図11~
図13に示すように、振動板350は、圧力室基板310側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜351と、弾性膜351上に設けられた酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜352と、で構成されている。圧力室312等の液体流路は、圧力室基板310を+Z軸方向側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室312等の液体流路の-Z軸方向側の面は、弾性膜351で構成されている。
【0120】
なお、振動板350の構成は特に限定されるものではない。振動板350は、例えば、弾性膜351と絶縁体膜352との何れか一方で構成されていてもよく、さらには、弾性膜351及び絶縁体膜352以外のその他の膜が含まれていてもよい。その他の膜の材料としては、シリコン、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0121】
圧電素子60は、圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーターの一例である。この圧電素子60は、振動板350側である+Z軸方向側から-Z軸方向側に向かって順次積層された電極360と、圧電体370と、電極380とを有する。換言すると、圧電素子60は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に設けられる。
【0122】
電極360および電極380は、いずれも配線基板420と電気的に接続され、配線基板420に実装される集積回路421に含まれる駆動信号選択回路200から供給される駆動信号VOUTと、配線基板420を伝搬する基準電圧信号VBSと、を圧電体370に供給する。電極360には、インクの吐出量に応じて異なる駆動信号VOUTが供給され、電極380には、インクの吐出量に関わらず、一定の基準電圧信号VBSが供給される。これにより、電極360と電極380との間に電位差が生じて、圧電体370が変形する。すなわち、圧電素子60が駆動されることにより、振動板350が変形または振動し、圧力室312の容積が変化することにより、圧力室312に収容されているインクに圧力が付与される。その結果、ノズル連通路316を介してノズル321からインクが吐出される。この場合において、圧力室312の容積変化量がインクの吐出量となる。
【0123】
圧電素子60のうち、電極360と電極380との間に電圧を印加した際に、圧電体370に圧電歪みが生じる部分を活性部410と称する。これに対して、圧電体370に圧電歪みが生じない部分を非活性部415と称する。すなわち、圧電素子60のうち、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれた部分が活性部410であり、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれていない部分が非活性部415である。また、圧電素子60を駆動させた際、Z軸方向に変位する部分を可撓部と称し、Z方向に変位しない部分を非可撓部と称する。すなわち、圧電素子60のうち、圧力室312にZ軸方向で対向する部分が可撓部となり、圧力室312の外側部分が非可撓部となる。なお、活性部410は能動部、非活性部415は非能動部とも言う。
【0124】
一般的には、活性部410の何れか一方の電極を活性部410毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部410に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、電極360が個別電極を構成し、電極380が共通電極を構成している。
【0125】
具体的には、電極360は、圧電体370に対して、Z軸方向の+Z軸方向側に設けられ、圧力室312毎に切り分けられて活性部410毎に独立する個別電極を構成する。すなわち、電極360は、複数の圧力室312に対して個別に設けられる。電極360は、Y軸方向において、圧力室312の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、Y軸方向において、電極360の端部は、圧力室312に対向する領域の内側に位置している。
【0126】
また、電極360の+X方向の端部360a及び-X方向の端部360bは、それぞれ圧力室312の外側に配置されている。例えば、第1圧力室列では、
図12に示すように、電極360の端部360aは、圧力室312の+X軸方向の端部312aよりも+X軸方向側となる位置に配置されている。電極360の端部360bは、圧力室312の-X軸方向の端部312bよりも-X軸方向側となる位置に配置されている。
【0127】
電極360の材料は特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極360として白金(Pt)を用いた。
【0128】
圧電体370は、
図10に示すように、X軸方向の長さを所定長さとして、Y軸方向に亘って連続して設けられている。すなわち、圧電体370は、所定の厚さで圧力室312の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体370の厚さは特に限定されないが、1000ナノメートルから4000ナノメートル程度の厚さで形成される。
【0129】
また、
図12に示すように、圧電体370のX軸方向の長さは、圧力室312の長手方向であるX軸方向の長さよりも長い。このため、圧力室312のX軸方向の両側では、圧電体370は、圧力室312の外側まで延在している。このように、圧電体370がX軸方向において圧力室312の外側まで延在していることで、振動板350の強度が向上する。したがって、活性部410を駆動させて圧電素子60を変位させた際、振動板350や圧電素子60にクラック等が発生するおそれを低減することができる。
【0130】
また、例えば、第1圧力室列では、
図12に示すように、圧電体370の+X方向の端部370aは、電極360の端部360aよりも外側となる+X軸方向側に位置している。すなわち、電極360の端部360aは圧電体370によって覆われている。一方、圧電体370の-X方向の端部370bは、電極360の端部360bよりも内側となる+X軸方向側に位置しており、電極360の端部360bは、圧電体370では覆われていない。
【0131】
なお、圧電体370には、
図10及び
図13に示すように、各隔壁311に対応して他の領域よりも厚さが薄い部分である溝部371が形成されている。本実施形態の溝部371は、圧電体370をZ軸方向に完全に除去することで形成されている。すなわち、圧電体370が他の領域よりも厚さの薄い部分を有するとは、圧電体370がZ軸方向に完全に除去されたものも含む。もちろん、溝部371の底面に圧電体370が他の部分よりも薄く形成されていてもよい。
【0132】
また、溝部371のY軸方向の長さ、つまり溝部371の幅は、隔壁311の幅と同一もしくは、それより広くなっている。本実施形態では、溝部371の幅は、隔壁311の幅よりも広くなっている。
【0133】
このような溝部371は、-Z軸方向側からの平面視において、矩形状となるように形成されている。もちろん、溝部371の-Z軸方向側からの平面視した形状は、矩形状に限定されず、5角形以上の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状等であってもよい。
【0134】
圧電体370に溝部371を設けることにより、振動板350の圧力室312のY軸方向の端部に対向する部分、いわゆる振動板350の腕部の剛性が抑えられるため、圧電素子60をより良好に変位させることができる。
【0135】
圧電体370としては、電極360上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜、所謂ペロブスカイト型結晶が挙げられる。圧電体370の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体370として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
【0136】
また、圧電体370の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1-x)TiO3]-(1-x)[BiFeO3]、略「BKT-BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1-x)[BiFeO3]-x[BaTiO3]、略「BFO-BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1-x)[Bi(Fe1-yMy)O3]-x[BaTiO3](Mは、Mn、CoまたはCr))等が挙げられる。
【0137】
電極380は、
図10、
図12、及び
図13に示すように、圧電体370に対して、電極360とは反対側であるZ軸方向の-Z軸方向側に設けられ、複数の活性部410に共通する共通電極を構成する。すなわち、電極380は、複数の圧力室312に対して共通に設けられる。電極380は、X軸方向の長さを所定長さとして、Y軸方向に亘って連続して設けられている。この電極380は、溝部371の内面、すなわち圧電体370の溝部371の側面上及び溝部371の底面である絶縁体膜352上にも設けられている。なお溝部371内に関しては、電極380は、溝部371の内面の一部のみに設けられていてもよく、溝部371の内面の全面に亘って設けられていなくてもよい。
【0138】
また、例えば、第1圧力室列では、
図12に示すように、電極380の+X方向の端部380aは、圧電体370で覆われている電極360の端部360aよりも外側となるように+X軸方向側に配置されている。すなわち、電極380の端部380aは、圧力室312の端部312aよりも外側となる+X軸方向側で、電極360の端部360aよりも外側となる+X軸方向側に位置している。本実施形態では、電極380の端部380aは、X軸方向において、圧電体370の端部370aと実質的に一致している。このため、活性部410の+X軸方向の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極360の端部360aによって規定されている。
【0139】
一方、電極380の-X軸方向の端部380bは、圧力室312の-X軸方向の端部312bよりも外側となる-X軸方向側に配置されているが、圧電体370の端部370bよりも内側となる+X軸方向側に配置されている。上述のように圧電体370の端部370bは、電極360の端部360bよりも+X軸方向側となる内側に位置している。したがって電極380の端部380bは、電極360の端部360bよりも+X軸方向側となる圧電体370上に位置している。このため、電極380の端部380bの-X軸方向側には、圧電体370の表面が露出された部分が存在する。
【0140】
このように電極380の端部380bは、圧電体370の端部370b及び電極360の端部360bよりも+X軸方向側に配置されているため、活性部410の-X軸方向の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極380の端部380bによって規定される。
【0141】
電極380の材料は特に限定されないが、電極360と同様に、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極380としてイリジウム(Ir)を用いた。
【0142】
また、電極380の端部380bの外側、すなわち電極380の端部380bのさらに-X軸方向側には、電極380と同一層となるが、電極380とは電気的に不連続となる配線部385が設けられている。また、配線部385は、電極380の端部380bと接触しないように間隔を空けた状態で、圧電体370上から圧電体370よりも-X軸方向に延設された電極360上に亘って形成されている。この配線部385は、活性部410毎に独立して設けられている。すなわち、配線部385は、Y軸方向に沿って所定の間隔で複数配置されている。なお配線部385は、電極380とは別の層で形成されていてもよいが、電極380と同一層で形成することが好ましい。これにより、配線部385の製造工程を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0143】
また、圧電素子60を構成する電極360と電極380とには、電極360には個別リード電極391が接続され、電極380には駆動用共通電極である共通リード電極392がそれぞれ電気的に接続されている。個別リード電極391及び共通リード電極392の圧電素子60に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板420が電気的に接続されている。配線基板420には、制御機構10、温度情報出力回路26、及び図示しない複数の回路と接続するための複数の配線が形成されている。本実施形態において、配線基板420は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)により構成されている。なお、FPCに代えて、FFC(Flexible Flat Cable)など、可撓性を有する任意の基板により構成されてもよい。
【0144】
本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、この貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。また、配線基板420には、圧電素子60を駆動するための駆動信号VOUTを出力する駆動信号選択回路200が搭載された集積回路421が実装されている。
【0145】
個別リード電極391及び共通リード電極392は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、個別リード電極391と共通リード電極392とをそれぞれ個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、個別リード電極391と共通リード電極392とを異なる層で形成するようにしてもよい。
【0146】
個別リード電極391及び共通リード電極392の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392として金(Au)を用いた。また、個別リード電極391及び共通リード電極392は、電極360及び電極380や振動板350との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0147】
個別リード電極391は、活性部410毎、すなわち、電極360毎に設けられたものである。
図12に示すように、例えば、第1圧力室列では、個別リード電極391は、配線部385を介して、圧電体370の外側に設けられた電極360の端部360b付近に接続され、圧力室基板310上、実際には振動板350上まで-X軸方向に引き出されている。
【0148】
一方、
図10に示すように、例えば、第1圧力室列では、共通リード電極392は、Y軸方向の両端部において、圧電体370上の共通電極を構成する電極380上から振動板350上にまで-X方向に引き出されている。また、共通リード電極392は、延設部392a、および延設部392bを有する。
図10、
図12に示すように、例えば、第1圧力室列では、延設部392aは、圧力室312の端部312aに対応する領域にY軸方向に沿って延設され、延設部392bは、圧力室312の端部312bに対応する領域にY軸方向に沿って延設される。これら延設部392a、および延設部392bは、複数の活性部410に対してY軸方向に亘って連続して設けられている。
【0149】
また、延設部392a、および延設部392bは、X軸方向において、圧力室312の内側から圧力室312の外側まで延設されている。本実施形態では、圧電素子60の活性部410は、圧力室312のX軸方向の両端部において圧力室312の外側まで延設されており、延設部392a、および延設部392bは、この活性部410上を圧力室312の外側まで延設されている。
【0150】
図12に示すように、振動板350の-Z軸方向側の面には、抵抗配線401が設けられる。抵抗配線401が、圧力室312の温度を検出するための温度検出回路24の少なくとも一部を構成する。本実施形態の温度検出回路24は、金属や半導体等の電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用したものである。抵抗配線401の材料は、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。このうち、白金(Pt)は、温度による抵抗値変化が大きく、安定性と精度が高いという観点から抵抗配線401の材料として好適に採用できる。本実施形態では、抵抗配線401を、電極360と同層とし、電極360とは電気的に不連続となるように、振動板350の-Z軸方向側の面に積層形成している。よって、抵抗配線401の材料は電極360と同じ白金(Pt)である。これにより、抵抗配線401を、電極360と別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、抵抗配線401を電極360と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0151】
図10に示すように、抵抗配線401は連続しており、X軸方向において+X軸方向側となる抵抗配線401の一端は、測定用リード電極393aと接続され、X軸方向において-X軸方向側となる抵抗配線401の他端は、測定用リード電極393bと接続される。そして、測定用リード電極393a,393bは、配線基板420と電気的に接続される。これにより、抵抗配線401は、温度情報出力回路26と電気的に接続され、温度情報出力回路26は、抵抗配線401の電気抵抗値を測定可能になる。また、本実施形態では、抵抗配線401は、圧電体370に覆われており、Z軸方向において、振動板350と圧電体370との間に位置する。
【0152】
抵抗配線401は、X軸方向において+X軸方向側となる第1圧力室列側蛇行パターンと、X軸方向において-X軸方向側となる第2圧力室列側蛇行パターンと、を備える。第1圧力室列側蛇行パターンは、-Z軸方向から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なる位置において、Y軸方向に沿って蛇行している。第2圧力室列側蛇行パターンは、-Z軸方向から見て、第2圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なる位置においてY軸方向に沿って蛇行している。すなわち、抵抗配線401は、複数の圧力室312が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室312が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を備える。また、
図11、
図12に示すように、圧力室312の-Z軸方向側の端部と抵抗配線401とのZ軸方向における距離は、圧力室312のZ軸方向における寸法より短い。また、例えば、第1圧力室列では、圧力室312の+X方向の端部312aと抵抗配線401とのX軸方向における最長距離は、圧力室312のX軸方向における寸法より短い。このため、抵抗配線401の電気抵抗値は、圧力室312の温度変化に対応して変化しやすい。
【0153】
測定用リード電極393aおよび測定用リード電極393bを含む測定用リード電極393は、本実施形態では、個別リード電極391および共通リード電極392と同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、測定用リード電極393を、個別リード電極391および共通リード電極392と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、測定用リード電極393を、個別リード電極391および共通リード電極392と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0154】
測定用リード電極393の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、測定用リード電極393として金(Au)を用いた。よって、測定用リード電極393の材料は、個別リード電極391および共通リード電極392と同じ材料である。また、測定用リード電極393は、抵抗配線401や振動板350との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0155】
本実施形態では、測定用リード電極393は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、この貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。これにより、温度情報出力回路26は、配線基板420を介して、抵抗配線401の電気抵抗値を取得可能になる。そして、温度情報出力回路26は、制御回路100からの温度取得要求信号TDに応じて、取得した抵抗配線401の電気抵抗値を温度情報信号TIとして出力する。また、温度情報出力回路26は、抵抗配線401の電気抵抗値と温度との対応関係を予め記憶していてもよい。そして、温度情報出力回路26は、制御回路100からの温度取得要求信号TDに応じて、抵抗配線401の電気抵抗値に対応した温度を温度情報信号TIとして出力してもよい。
【0156】
例えば、温度検出回路24が吐出モジュール22の外部に設けられていると、温度検出回路24により測定される温度と圧力室312内の温度との差が、吐出モジュール22内の温度と圧力室312内の温度との差と比較して大きくなるおそれがある。この場合、制御回路100が温度情報信号TIに基づいて、制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tを補正する補正制御が低下し、圧力室312内のインクの温度に適した吐出モジュール22の最適な吐出制御を行なえないおそれがある。本実施形態では、抵抗配線401が、吐出モジュール22の内部に位置する振動板350に積層して設けられている。これにより、温度検出回路24である抵抗配線401の電気抵抗値に基づき検出される温度と圧力室312内の温度との差を小さくすることができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が向上する。その結果、制御回路100による圧力室312内のインクの温度に適した吐出モジュール22の吐出制御が可能となる。
【0157】
すなわち、本実施形態のプリントヘッド20において、吐出モジュール22は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層される積層方向であるZ軸方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対して積層方向であるZ軸方向の一方側である+Z軸方向側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対して積層方向であるZ軸方向の一方側である+Z軸方向側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が複数設けられている圧力室基板310と、駆動信号COMを圧電素子60に供給するか否かを切り替える駆動信号選択回路200と、駆動信号選択回路200を含む集積回路421が設けられた配線基板420と、振動板350に対して積層方向であるZ軸方向の他方側である-Z軸方向側に位置し、配線基板420と電気的に接続され、圧力室312の温度情報を検出する温度検出回路24の少なくとも一部を構成する抵抗配線401と、を含む。
【0158】
これにより、温度検出回路24である抵抗配線401の電気抵抗値に基づき検出される温度と圧力室312内の温度との差を小さくすることができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が向上する。その結果、制御回路100による圧力室312内のインクの温度に適した吐出モジュール22の吐出制御が可能となる。
【0159】
さらに、温度検出回路24である抵抗配線401の少なくとも一部が、振動板350に積層されていることで、温度検出回路24である抵抗配線401をより圧力室312の近傍に配置することができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度がさらに向上する。その結果、制御回路100による圧力室312内のインクの温度により適した吐出モジュール22の吐出制御が可能となる。
【0160】
6.吐出モジュールの検出温度と駆動信号VOUTの補正
以上のように構成された本実施形態の液体吐出装置1において、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22に貯留されるインクの粘度は、当該インクの温度により変化する。このようなインクの粘度の変化は、プリントヘッド20からのインクの吐出特性に大きく影響し、媒体Pに形成される画像品質に大きく寄与する。そのため、本実施形態の液体吐出装置1では、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度に基づいて、圧力室312に貯留されるインクの温度を推定し、推定したインクの温度に応じて、圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの信号波形を補正する。これにより、圧力室312に貯留されるインクの温度が変化した場合であっても、吐出モジュール22から吐出されるインクの吐出量にばらつきが生じるおそれを低減し、インクが着弾する媒体Pに形成される画像品質を向上させる。そこで、以下では、本実施形態における圧力室312に貯留されるインク温度に応じた駆動信号VOUTの信号波形の補正方法の具体例について説明する。
【0161】
前述のとおり、駆動信号VOUTは、駆動回路50が出力する駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることにより生成される。そこで、駆動信号VOUTの信号波形の補正について説明に際し、まず、駆動回路50が出力する駆動信号COMの信号波形の一例について説明を行い、その後、圧力室312に貯留されるインク温度が通常の温度範囲である場合に圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの信号波形の一例、圧力室312に貯留されるインク温度が通常の温度範囲の上限閾値Thよりも高温の場合に圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの信号波形の一例、及び圧力室312に貯留されるインク温度が通常の温度範囲の下限閾値Tlよりも低温の場合に圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの信号波形の一例のそれぞれについて説明する。ここで、以下の説明において、圧力室312に貯留されるインク温度が通常の温度範囲である場合を、単にインクが通常温度である場合と称し、圧力室312に貯留されるインク温度が通常の温度範囲の上限閾値Thよりも高温の場合を、単にインクが高温である場合と称し、圧力室312に貯留されるインク温度が通常の温度範囲の下限閾値Tlよりも低温の場合を、単にインクが低温である場合と称する場合がある。
【0162】
また、本実施形態では、インク温度が通常温度である場合のインク粘度と比較し、インク温度が高温の場合、圧力室312に貯留されるインクの粘度が低下し、インク温度が低温の場合、圧力室312に貯留されるインクの粘度が増加するとして説明を行う。すなわち、インク温度が高温の場合とは、インクの粘度が低粘度である場合との意味を含み、インク温度が低温の場合とは、インクの粘度が高粘度である場合との意味を含む。
【0163】
図14は、駆動回路50が出力する駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
図14に示すように、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t1に配置された台形波形Adpと、期間t1に続き、次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t2に配置された台形波形Bdpと、期間t2に続き、次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t3に配置された台形波形Cdpと、期間t3に続き、ラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間t4に配置された台形波形Ddpと、を連続させた信号波形を含む信号である。
【0164】
台形波形Adpは、インクの温度が通常温度である場合に対応するノズル321から所定量よりも多い量のインクを吐出させるように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Bdpは、インクの温度が通常温度である場合に対応するノズル321から所定量のインクを吐出させるように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Cdpは、インクの温度が通常温度である場合に対応するノズル321から所定量よりも少ない量のインクを吐出させるように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Ddpは、電圧Vcで一定の信号波形であり、圧電素子60に供給された場合であっても、圧電素子60は駆動せず、対応するノズル321からインクを吐出させない信号波形である。ここで、以下の説明において、インクの温度が通常温度である場合に台形波形Adpが圧電素子60に供給されることで、対応するノズル321から吐出されるインクの量を大程度の量と称し、インクの温度が通常温度である場合に台形波形Bdpが圧電素子60に供給されることで、対応するノズル321から吐出されるインクの量を中程度の量と称し、インクの温度が通常温度である場合に台形波形Cdpが圧電素子60に供給されることで、対応するノズル321から吐出されるインクの量を小程度の量と称する場合がある。
【0165】
また、
図14に示すように台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれの開始タイミング及び終了タイミングでの電圧値は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdp,Ddpは、いずれも電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する。そして、期間t1~t4からなる周期tpにおいて、媒体Pに新たなドットが形成される。
【0166】
まず、インクが通常温度である場合、すなわち、対応する圧力室312の温度が上限閾値Thより小さく下限閾値Tlよりも大きい場合に、駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTの一例について説明する。
【0167】
図15は、インクが通常温度である場合に、駆動信号選択回路200に入力されるヘッド制御信号DIの一例を示す図である。ここで、ヘッド制御信号DIに含まれる吐出制御信号SIは、前述のとおり、圧電素子60の駆動により吐出されるインクの吐出量を規定する。そのため、吐出制御信号SIの論理レベルは、液体吐出装置1がインクを吐出し、媒体Pに所望の画像を形成する印刷期間において、適宜変化する。すなわち、吐出制御信号SIに含まれる吐出データ[SIH,SIL]の論理レベルは、媒体Pに形成される画像に応じて周期tp毎に吐出されるインクの量に応じて0又は1のいずれかに変化する。そのため、
図15では、波形選択信号SPについての具体的な論理レベルのみを図示し、吐出制御信号SIの具体的な論理レベルは省略している。
【0168】
図15に示すように、インクが温度通常の場合、駆動信号選択回路200には、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13,SP20,SP21,SP22,SP23,SP30,SP31,SP32,SP33のそれぞれが、“1”“1”“0”“0”“1”“0”“1”“0”“0”“0”“0”“0”“0”“0”“0”“0”である波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIが入力される。すなわち、制御回路100は、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13,SP20,SP21,SP22,SP23,SP30,SP31,SP32,SP33のそれぞれが、“1”“1”“0”“0”“1”“0”“1”“0”“0”“0”“0”“0” “0”“0”“0”“0”である波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIを出力する。
【0169】
これにより、制御ロジック回路260に含まれる選択制御信号生成部262は、選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]=[1,1,0,0]と、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]=[1,0,1,0]と、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]=[0,0,0,0]と、選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]=[0,0,0,0]と、を生成しデコーダー226に出力する。
【0170】
図16は、上述した波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIが駆動信号選択回路200に入力された場合におけるデコーダー226のデコード内容の具体例を示す図である。なお、本実施形態のデコーダー226は、対応する設定情報SP33~SP30,SP23~SP20,SP13~SP10,SP03~SP00の論理レベルが“1”の場合にHレベルの選択信号Sを出力し、対応する設定情報SP33~SP30,SP23~SP20,SP13~SP10,SP03~SP00の論理レベルが“0”の場合にLレベルの選択信号Sを出力するとして説明する。
【0171】
図16に示すように、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてH,H,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてH,L,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,H,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,L,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。
【0172】
図17は、
図16に示す選択信号Sが供給された場合に選択回路230から出力される駆動信号VOUTを示す図であって、インクが通常温度である場合に圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの一例を示す図である。
【0173】
図17に示すようにデコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてHレベルとなり、期間t2においてHレベルとなり、期間t3においてLレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において導通となり、期間t2において導通となり、期間t3において非導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpとなり、期間t2において台形波形Bdpとなり、期間t3において電圧Vcで一定となり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0174】
そして、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されることで、対応するノズル321からは、期間t1において大程度の量のインクが吐出され、期間t2において中程度の量のインクが吐出され、期間t3においてインクは吐出されず、期間t4においてインクは吐出されない。したがって、媒体Pには、大程度の量のインクと中程度の量のインクとが着弾する。このとき、媒体Pに着弾したインクにより形成されるドットと大ドットと称する。
【0175】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてHレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてLレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において非導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpとなり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において電圧Vcで一定となり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0176】
そして、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されることで、対応するノズル321からは、期間t1において大程度の量のインクが吐出され、期間t2においてインクは吐出されず、期間t3においてインクは吐出されず、期間t4においてインクは吐出されない。したがって、媒体Pには、大程度の量のインクが着弾する。このとき、媒体Pに着弾したインクにより形成されるドットと大ドットよりも小さな中ドットと称する。
【0177】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてHレベルとなり、期間t3においてLレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において導通となり、期間t3において非導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において台形波形Bdpとなり、期間t3において電圧Vcで一定となり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0178】
そして、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されることで、対応するノズル321からは、期間t1においてインクは吐出されず、期間t2において中程度の量のインクが吐出され、期間t3においてインクは吐出されず、期間t4においてインクは吐出されない。したがって、媒体Pには、中程度の量のインクが着弾する。このとき、媒体Pに着弾したインクにより形成されるドットと中ドットよりも小さな小ドットと称する。
【0179】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,0]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてLレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において非導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において電圧Vcで一定となり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。そのため、対応するノズル321からインクは吐出されず、媒体Pにドットは形成されない。
【0180】
次に、インクが高温である場合、すなわち、対応する圧力室312の温度が上限閾値Thより大きい場合に、駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTの一例について説明する。
【0181】
図18は、インクが高温である場合に、駆動信号選択回路200に入力されるヘッド制御信号DIの一例を示す図である。ここで、
図18では、
図15の場合と同様の理由により、波形選択信号SPについての具体的な論理レベルのみを図示し、吐出制御信号SIの具体的な論理レベルは省略している。
【0182】
図18に示すように、インクが高温の場合、駆動信号選択回路200には、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13,SP20,SP21,SP22,SP23,SP30,SP31,SP32,SP33のそれぞれが、“1”“0”“0”“0”“0”“1”“0”“0”“1”“1”“1”“0”“0”“0”“0”“0”である波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIが入力される。すなわち、制御回路100は、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13,SP20,SP21,SP22,SP23,SP30,SP31,SP32,SP33のそれぞれが、“1”“0”“0”“0”“0”“1”“0”“0”“1”“1”“1”“0”“0”“0”“0”“0”である波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIを出力する。
【0183】
これにより、制御ロジック回路260に含まれる選択制御信号生成部262は、選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]=[1,0,0,0]と、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]=[0,1,0,0]と、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]=[1,1,1,0]と、選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]=[0,0,0,0]と、を生成しデコーダー226に出力する。
【0184】
図19は、上述した波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIが駆動信号選択回路200に入力された場合におけるデコーダー226のデコード内容の具体例を示す図である。
図19に示すように、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてH,L,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,H,H,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,L,H,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,L,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。
【0185】
図20は、
図19に示す選択信号Sが供給された場合に選択回路230から出力される駆動信号VOUTを示す図であって、インクが高温である場合に圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの一例を示す図である。
【0186】
図20に示すようにデコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてHレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてHレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpとなり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において台形波形Cdpとなり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0187】
仮に、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されると、対応するノズル321からは、期間t1において大程度の量のインクが吐出され、期間t2においてインクは吐出されず、期間t3において小程度の量のインクが吐出され、期間t4においてインクは吐出されない。すなわち、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合において、インクが高温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が低下するように補正されている。
【0188】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてHレベルとなり、期間t3においてHレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において導通となり、期間t3において導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において台形波形Bdpとなり、期間t3において台形波形Cdpとなり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0189】
仮に、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されると、対応するノズル321からは、期間t1においてインクは吐出されず、期間t2において中程度の量のインクが吐出され、期間t3において小程度の量のインクが吐出され、期間t4においてインクは吐出されない。すなわち、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合において、インクが高温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が低下するように補正されている。
【0190】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてHレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において台形波形Cdpとなり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0191】
仮に、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されると、対応するノズル321からは、期間t1においてインクは吐出されず、期間t2においてインクは吐出されず、期間t3において小程度の量のインクが吐出され、期間t4においてインクは吐出されない。すなわち、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合において、インクが高温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が低下するように補正されている。
【0192】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,0]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてLレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において非導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において電圧Vcで一定となり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。そのため、対応するノズル321からインクは吐出されず、媒体Pにドットは形成されない。
【0193】
前述のとおり、インク温度が高温の場合、圧力室312に貯留されるインクの粘度が低下する。すなわち、インク温度が高温の場合に、インクが通常温度の場合と同じ波形の駆動信号VOUTを圧電素子60に供給した場合、インクの吐出量が増加する。本実施形態の液体吐出装置1では、インクが高温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が低下するように、波形選択信号SPを用いて補正している。これにより、インクが高温になり、粘度が低下した場合であっても、インクの吐出量を同程度となるように補正している。
【0194】
次に、インクが低温である場合、すなわち、対応する圧力室312の温度が下限閾値Tlより小さい場合に、駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTの一例について説明する。
【0195】
図21は、インクが低温である場合に、駆動信号選択回路200に入力されるヘッド制御信号DIの一例を示す図である。ここで、
図15の場合と同様の理由により、
図21では、波形選択信号SPについての具体的な論理レベルのみを図示し、吐出制御信号SIの具体的な論理レベルは省略している。
【0196】
図21に示すように、インクが低温の場合、駆動信号選択回路200には、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13,SP20,SP21,SP22,SP23,SP30,SP31,SP32,SP33のそれぞれが、“1”“1”“0”“0”“1”“0”“1”“0”“1”“1”“1”“0”“0”“0”“0”“0”である波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIが入力される。すなわち、制御回路100は、設定情報SP00,SP01,SP02,SP03,SP10,SP11,SP12,SP13,SP20,SP21,SP22,SP23,SP30,SP31,SP32,SP33のそれぞれが、“1”“1”“0”“0”“1”“0”“1”“0”“1”“1”“1”“0”“0”“0”“0”“0”である波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIを出力する。
【0197】
これにより、制御ロジック回路260に含まれる選択制御信号生成部262は、選択制御信号Q0[SP00,SP01,SP02,SP03]=[1,1,0,0]と、選択制御信号Q1[SP10,SP11,SP12,SP13]=[1,0,1,0]と、選択制御信号Q2[SP20,SP21,SP22,SP23]=[1,1,1,0]と、選択制御信号Q3[SP30,SP31,SP32,SP33]=[0,0,0,0]と、を生成しデコーダー226に出力する。
【0198】
図22は、上述した波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DIが駆動信号選択回路200に入力された場合におけるデコーダー226のデコード内容の具体例を示す図である。
図22に示すように、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてH,H,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてH,L,H,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[0,1]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,H,H,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。また、デコーダー226に吐出データ[SIH,SIL]=[0,0]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、デコーダー226は、期間t1,t2,t3,t4においてL,L,L,Lレベルとなる選択信号Sを出力する。
【0199】
図23は、
図22に示す選択信号Sが供給された場合に選択回路230から出力される駆動信号VOUTを示す図であって、インクが高温である場合に圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの一例を示す図である。
【0200】
図23に示すようにデコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてHレベルとなり、期間t2においてHレベルとなり、期間t3においてHレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において導通となり、期間t2において導通となり、期間t3において導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpとなり、期間t2において台形波形Bdpとなり、期間t3において台形波形Cdpとなり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0201】
仮に、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されると、対応するノズル321からは、期間t1において大程度の量のインクが吐出され、期間t2において中程度の量のインクが吐出され、期間t3において小程度の量のインクが吐出され、期間t4においてインクは吐出されない。すなわち、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,1]が入力された場合において、インクが低温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が増加するように補正されている。
【0202】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてHレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてHレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpとなり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において台形波形Cdpとなり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0203】
仮に、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されると、対応するノズル321からは、期間t1において大程度の量のインクが吐出され、期間t2においてインクは吐出されず、期間t3において小程度の量のインクが吐出され、期間t4においてインクは吐出されない。すなわち、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合において、インクが低温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が低下するように補正されている。
【0204】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,1]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてHレベルとなり、期間t3においてHレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において導通となり、期間t3において導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において台形波形Bdpとなり、期間t3において台形波形Cdpとなり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。
【0205】
仮に、インクが通常温度である場合に上述した駆動信号VOUTが圧電素子60に供給されると、対応するノズル321からは、期間t1においてインクは吐出されず、期間t2において中程度の量のインクが吐出され、期間t3において小程度の量のインクが吐出され、期間t4においてインクは吐出されない。すなわち、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[1,0]が入力された場合において、インクが低温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が低下するように補正されている。
【0206】
また、デコーダー226にラッチデータ[LTa,LTb]=[0,0]が入力された場合、選択信号Sの論理レベルは、期間t1においてLレベルとなり、期間t2においてLレベルとなり、期間t3においてLレベルとなり、期間t4においてLレベルとなる。したがって、選択回路230の入力端と出力端との間は、期間t1において非導通となり、期間t2において非導通となり、期間t3において非導通となり、期間t4において非導通となる。その結果、選択回路230は、期間t1において電圧Vcで一定となり、期間t2において電圧Vcで一定となり、期間t3において電圧Vcで一定となり、期間t4において電圧Vcで一定となる駆動信号VOUTを出力する。そのため、対応するノズル321からインクは吐出されず、媒体Pにドットは形成されない。
【0207】
前述のとおり、インク温度が低温の場合、圧力室312に貯留されるインクの粘度が増加する。すなわち、インク温度が低温の場合に、インクが通常温度の場合と同じ波形の駆動信号VOUTを圧電素子60に供給した場合、インクの吐出量が減少する。本実施形態の液体吐出装置1では、インクが低温の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTは、吐出されるインクの温度が同じであるならば、インクが通常温度の場合に駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTよりもインクの吐出量が増加するように、波形選択信号SPを用いて補正している。これにより、インクが低温になり、粘度が増加した場合であっても、インクの吐出量を同程度となるように補正している。
【0208】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1では、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22に含まれる温度検出回路24としての前述した抵抗配線401が検出した圧力室312の温度が所定の上限閾値Thよりも大きいか否か、及び下限閾値Tlよりも小さいか否か、に基づいて、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22からのインクの吐出を制御するヘッド制御信号DIに含まれる波形選択信号SPを更新する。これにより、吐出モジュール22に供給される駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdp,Ddpの電圧値を調整することなく、上述した抵抗配線401が検出した圧力室312の温度に基づいて、圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの信号波形を補正することができる。
【0209】
これにより、本実施形態の液体吐出装置1のように、プリントヘッド20が複数の吐出モジュール22として吐出モジュール22-1~22-nを有し、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれに駆動信号COMが共通に供給されている場合であっても、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれに個別に入力されるヘッド制御信号DIに基づいて、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが有する圧電素子60に供給される駆動信号VOUTの信号波形を補正することができる。その結果、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれの圧力室312の温度に応じた最適な補正を、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれに対して行うことができ、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれから吐出されるインク吐出精度が向上する。
【0210】
すなわち、本実施形態の液体吐出装置1は、吐出モジュール22-1~22-nを有する。そして、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1が、上限閾値Th以下であって下限閾値Tl以上の温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量と中程度の量とのインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,1]である場合、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図17に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1が、上限閾値Thよりも大きい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量と中程度の量とのインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,1]である場合、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図20に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1が、下限閾値Tlよりも小さい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量と中程度の量とのインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,1]である場合、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図23に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力する。
【0211】
また、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2が、上限閾値Th以下であって下限閾値Tl以上の温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量と中程度の量とのインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,1]である場合、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図17に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2が、上限閾値Thよりも大きい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量と中程度の量とのインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,1]である場合、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図20に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2が、下限閾値Tlよりも小さい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量と中程度の量との量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,1]である場合、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図23に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力する。
【0212】
これにより、プリントヘッド20が吐出モジュール22-1,22-2を有し、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれに駆動信号COMが共通に供給されている場合であっても、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれに個別に入力されるヘッド制御信号DI1,DI2に基づいて、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれが有する圧電素子60[i]に供給される駆動信号VOUT[i]の信号波形を補正することができる。その結果、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれの圧力室312の温度に応じた最適な補正を、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれに対して行うことができ、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれから吐出されるインク吐出精度が向上する。
【0213】
さらに、本実施形態の液体吐出装置1において、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1が、上限閾値Th以下であって下限閾値Tl以上の温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,0]である場合、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図17に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1が、上限閾値Thよりも大きい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,0]である場合、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図20に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1が、下限閾値Tlよりも小さい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,0]である場合、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図23に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力する。
【0214】
また、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2が、上限閾値Th以下であって下限閾値Tl以上の温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,0]である場合、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図17に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2が、上限閾値Thよりも大きい温度情報を含み、つヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,0]である場合、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図20に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力し、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2が、下限閾値Tlよりも小さい温度情報を含み、且つヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIHi,SILi]が大程度の量のインクを吐出させための吐出データ[SIHi,SILi]=[1,0]である場合、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる対応する選択回路230[i]は、
図23に示す吐出データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUT[i]を出力する。
【0215】
これにより、プリントヘッド20が、多階調での印刷が可能な構成であったとしても、プリントヘッド20が吐出モジュール22-1,22-2を有し、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれに駆動信号COMが共通に供給されている場合であっても、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれに個別に入力されるヘッド制御信号DI1,DI2に基づいて、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれが有する圧電素子60[i]に供給される駆動信号VOUT[i]の信号波形を補正することができる。その結果、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれの圧力室312の温度に応じた最適な補正を、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれに対して行うことができ、吐出モジュール22-1,22-2のそれぞれから吐出されるインク吐出精度が向上する。
【0216】
ここで、台形波形Adp,Bdp,Cdp,Ddpが複数の駆動波形の一例であり、駆動信号COM、及び駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTが駆動信号の一例であり、駆動信号COMを出力する駆動回路50が駆動信号出力回路の一例であり、吐出モジュール22-1が第1吐出モジュールの一例であり、吐出モジュール22-2が第2吐出モジュールの一例である。
【0217】
また、吐出モジュール22-1が有する電極360が第1電極の一例であり、吐出モジュール22-1が有する電極380が第2電極の一例であり、吐出モジュール22-1が有する圧電体370が第1圧電体の一例であり、吐出モジュール22-1が有する圧電素子60が第1圧電素子の一例であり、吐出モジュール22-1が有する振動板350が第1振動板の一例であり、吐出モジュール22-1が有する圧力室基板310が第1圧力室基板の一例であり、吐出モジュール22-1が有する圧力室312が第1圧力室の一例であり、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200に含まれる選択回路230が第1スイッチ回路の一例であり、吐出モジュール22-1が有する配線基板420が第1配線基板の一例であり、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24、及び抵抗配線401が第1温度検知部の一例である。
【0218】
また、吐出モジュール22-1が有する圧電素子60に供給される駆動信号VOUTが第1駆動電圧信号の一例であり、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24、及び抵抗配線401が出力する温度検出情報TH1が第1温度情報の一例であり、吐出モジュール22-1に入力されるヘッド制御信号DI1が第1吐出情報信号の一例であり、ヘッド制御信号DI1に含まれる吐出データ[SIH,SIL]が第1吐出データの一例であり、吐出モジュール22-1におけるZ軸方向が第1積層方向の一例であり、
また、吐出モジュール22-2が有する電極360が第3電極の一例であり、吐出モジュール22-2が有する電極380が第4電極の一例であり、吐出モジュール22-2が有する圧電体370が第2圧電体の一例であり、吐出モジュール22-2が有する圧電素子60が第2圧電素子の一例であり、吐出モジュール22-2が有する振動板350が第2振動板の一例であり、吐出モジュール22-2が有する圧力室基板310が第2圧力室基板の一例であり、吐出モジュール22-2が有する圧力室312が第2圧力室の一例であり、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200に含まれる選択回路230が第2スイッチ回路の一例であり、吐出モジュール22-2が有する配線基板420が第2配線基板の一例であり、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24、及び抵抗配線401が第2温度検知部の一例である。
【0219】
また、吐出モジュール22-2が有する圧電素子60に供給される駆動信号VOUTが第2駆動電圧信号の一例であり、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24、及び抵抗配線401が出力する温度検出情報TH2が第2温度情報の一例であり、ヘッド制御信号DI2が第2吐出情報信号の一例であり、ヘッド制御信号DI2に含まれる吐出データ[SIH,SIL]が第2吐出データの一例であり、吐出モジュール22-2におけるZ軸方向が第2積層方向の一例である。
【0220】
また、下限閾値Tlと上限閾値Thとの間の温度範囲が第1温度範囲の一例であり、下限閾値Tlよりも小さい温度範囲、又は上限閾値Thより大きい温度範囲が第2温度範囲の一例であり、大程度の量と中程度の量とをわせたインクの吐出量が第1吐出量の一例であり、印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]が第1の値であり、印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が第2の値であり、大程度の量のインクの吐出量が第2吐出量の一例であり、
図17に示す印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUTの信号波形が第1駆動波形の一例であり、
図20又は
図23に示す印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]に対応する駆動信号VOUTの信号波形が第2駆動波形の一例であり、
図17に示す印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUTの信号波形が第3駆動波形の一例であり、
図20又は
図23に示す印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]に対応する駆動信号VOUTの信号波形が第4駆動波形の一例であり、ヘッド制御信号DI1に含まれる波形選択信号SPが第1波形選択データの一例であり、ヘッド制御信号DI2に含まれる波形選択信号SPが第2波形選択データの一例であり、周期tp[p]が第1吐出周期の一例であり、周期tp[p+1]が第2吐出周期の一例であり、周期tp[p+3]が第3吐出周期の一例である。
【0221】
7.吐出モジュールの温度の検出タイミングと駆動信号VOUTの補正タイミング
以上のように構成された液体吐出装置1において、制御回路100が吐出モジュール22の温度を検出する検出タイミングであって、プリントヘッド20が吐出モジュール22の温度を出力する出力タイミング、及び、取得した吐出モジュール22の温度に基づく駆動信号VOUTの補正タイミングの具体例について、
図24を用いて説明する。
図24は、温度情報信号TIの取得タイミング、及び駆動信号VOUTの補正タイミングの一例を示す図である。
【0222】
図24に示すように、制御回路100は、周期tpの内の期間t4において、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれの温度を取得するための温度取得要求信号TDを生成し、温度情報出力回路26に出力する。温度情報出力回路26は、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに基づいて、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが有する温度検出回路24が検出する温度検出情報TH1~THnを含む温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。
【0223】
ここで、期間t4は、
図14に示すように、駆動回路50が電圧Vcで一定の信号を駆動信号COMとして出力する期間であって、さらに、
図16、
図19、
図22に示すように、選択回路230が非導通に制御されることで、駆動信号COMに含まれる信号波形を駆動信号VOUTとして出力しない期間である。すなわち、制御回路100は、駆動信号COMの電圧値が一定の期間であって、選択回路230が駆動信号VOUTを圧電素子60に供給しない期間である期間t4において、温度検出回路24が検出する温度検出情報TH1~THnを含む温度情報信号TIを取得する。
【0224】
制御回路100は、周期tpの内の任意の周期tp[p]に含まれる期間t4において取得した温度情報信号TIに含まれる温度検出情報TH1~THnのそれぞれと、上限閾値Th及び下限閾値Tlとを比較する。そして、制御回路100は、周期tp[p]に続く周期tp[p+1]において、温度検出情報TH1と上限閾値Th及び下限閾値Tlとの比較結果に応じた波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DI1を出力し、温度検出情報TH2と上限閾値Th及び下限閾値Tlとの比較結果に応じた波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DI2を出力し、温度検出情報THnと上限閾値Th及び下限閾値Tlとの比較結果に応じた波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DInを出力する。
【0225】
すなわち、ヘッド制御信号DI1に含まれる波形選択信号SPは、吐出モジュール22-1が有する選択回路230が駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを圧電素子60に供給しない期間であって、駆動信号COMの電圧値が一定の期間である周期tp[p]に含まれる期間t4において、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH1に基づいて、周期tp[p]に続く周期tp[p+1]において更新され、ヘッド制御信号DI2に含まれる波形選択信号SPは、吐出モジュール22-2が有する選択回路230が駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを圧電素子60に供給しない期間であって、駆動信号COMの電圧値が一定の期間である周期tp[p]に含まれる期間t4において、吐出モジュール22-2が有する温度検出回路24が検出した温度検出情報TH2に基づいて、周期tp[p]に続く周期tp[p+1]において更新され、ヘッド制御信号DInに含まれる波形選択信号SPは、吐出モジュール22-nが有する選択回路230が駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを圧電素子60に供給しない期間であって、駆動信号COMの電圧値が一定の期間である周期tp[p]に含まれる期間t4において、吐出モジュール22-nが有する温度検出回路24が検出した温度検出情報THnに基づいて、周期tp[p]に続く周期tp[p+1]において更新される。
【0226】
そして、更新された波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DI1は、周期tp[p+1]に続く周期tp[p+2]において、吐出モジュール22-1が有する駆動信号選択回路200、及び選択回路230に入力され、更新された波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DI2は、周期tp[p+1]に続く周期tp[p+2]において、吐出モジュール22-2が有する駆動信号選択回路200、及び選択回路230に入力され、更新された波形選択信号SPを含むヘッド制御信号DInは、周期tp[p+1]に続く周期tp[p+2]において、吐出モジュール22-nが有する駆動信号選択回路200、及び選択回路230に入力される。
【0227】
吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが有する駆動信号選択回路200は、入力されるヘッド制御信号DI1~DInに基づく駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60に出力する。これにより、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれは、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが貯留するインクの温度に応じた駆動信号VOUTによってインクを吐出する。その結果、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれは、高精度にインクを吐出することができ、その結果、媒体Pに形成される画像品質が向上する。
【0228】
また、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20では、温度検出回路24である抵抗配線401を圧力室312の近傍に配置することができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度を精度よく検出できる。このような精度よく検出される圧力室312の温度に基づいて、駆動信号VOUTの波形を補正することで、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれは、高精度にインクを吐出することができ、その結果、媒体Pに形成される画像品質が向上する。
【0229】
一方で、温度検出回路24である抵抗配線401を圧力室312の近傍に配置されるが故に、温度検出回路24である抵抗配線401の近傍に駆動信号VOUTが伝搬する配線が位置する可能性がある。そして、仮に、温度検出回路24である抵抗配線401の近傍に駆動信号VOUTが伝搬する配線が位置すると、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度検出情報THに駆動信号VOUTが干渉し、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が低下するおそれがある。このような問題に対して、波形選択信号SPが、選択回路230が駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを圧電素子60に供給しない期間であって、駆動信号COMの電圧値が一定の期間に、温度検出回路24が検出した温度検出情報THに基づいて、更新されることで、波形選択信号SPの更新に用いられる温度検出情報THに駆動信号VOUTが干渉するおそれが低減する。その結果、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が低下するおそれが低減する。
【0230】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0231】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0232】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0233】
液体吐出装置の一態様は、
複数の駆動波形を含む駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドと、
を備え、
前記プリントヘッドは、第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、
前記第1吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第1駆動電圧信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が複数設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第1吐出データを含む第1吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで、前記第1圧電素子に供給される前記第1駆動電圧信号を出力する第1スイッチ回路と、
前記第1スイッチ回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1配線基板と電気的に接続され、前記第1圧力室の温度に応じた第1温度情報を検出する第1温度検知部と、
を含み、
前記第2吐出モジュールは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第2駆動電圧信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が複数設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第2吐出データを含む第2吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで前記第2圧電素子に供給される前記第2駆動電圧信号を出力する第2スイッチ回路と、
前記第2スイッチ回路が設けられた第2配線基板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2配線基板と電気的に接続され、前記第2圧力室の温度に応じた第2温度情報を検出する第2温度検知部と、
を含み、
前記第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが第1液滴量の液体を吐出させるための第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第1駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第1駆動波形と異なる第2駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第1駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第2駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力する。
【0234】
この液体吐出装置によれば、1つの駆動信号に基づいて液体を吐出する第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、第1吐出モジュールの第1駆動電圧信号を第1温度情報に基づいて補正し、第2吐出モジュールの第2駆動電圧信号を第2温度情報に基づいて補正することができる。すなわち、1つの駆動信号が入力される複数の吐出モジュールを個別に温度補正することができ、プリントヘッドからのインクの吐出精度が向上する。
【0235】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記第1温度検知部の少なくとも一部は、前記第1振動板に積層され、前記第2温度検知部の少なくとも一部は、前記第2振動板に積層されていてもよい。
【0236】
この液体吐出装置によれば、温度検知部が圧力室の近傍に位置することで、第1温度情報、及び第2温度情報の検出精度が向上する。
【0237】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記第1温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1液滴量と異なる第2液滴量の液体を吐出させるための第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第3駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第3駆動波形と異なる第4駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力してもよい。
【0238】
この液体吐出装置によれば、複数の駆動波形を選択することによって多階調を実現する場合であっても、1つの駆動信号が入力される複数の吐出モジュールを個別に温度補正することができ、プリントヘッドからのインクの吐出精度が向上する。
【0239】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記第1吐出情報信号は、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第1吐出データと、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第1波形選択データと、
を含み、
前記第2吐出情報信号は、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第2吐出データと、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第2波形選択データと、
を含み、
前記第1温度情報に基づいて前記第1波形選択データが更新され、
前記第2温度情報に基づいて前記第2波形選択データが更新されてもよい。
【0240】
この液体吐出装置によれば、第1吐出データと第1波形選択データとが1つの第1吐出制御信号として供給され、第2吐出データと第2波形選択データとが1つの第2吐出制御信号として供給されることで、信号のタイミング調整が容易になり、効率的な補正を実現できる。
【0241】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記第1スイッチ回路が前記第1駆動電圧信号を前記第1圧電素子に供給しない期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて、前記第1波形選択データが更新され、
前記第2スイッチ回路が前記第2駆動電圧信号を前記第2圧電素子に供給しない期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて、前記第2波形選択データが更新されてもよい。
【0242】
この液体吐出装置によれば、第1駆動電圧信号が第1温度情報に干渉するおそれが低減し、第2駆動電圧信号が第2温度情報に干渉するおそれが低減することで、第1温度情報及び第2温度情報の取得精度が向上する。
【0243】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて、前記第1波形選択データが更新され、
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて、前記第2波形選択データが更新されてもよい。
【0244】
この液体吐出装置によれば、第1駆動信号が第1温度情報に干渉するおそれが低減し、第2駆動信号が第2温度情報に干渉するおそれが低減することで、第1温度情報及び第2温度情報の取得精度が向上する。
【0245】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記第1吐出情報信号に含まれる前記第1波形選択データは、第1吐出周期で取得された前記第1温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く第2吐出周期において更新され、
更新された前記第1波形選択データを含む前記第1吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く第3吐出周期で前記第1スイッチ回路に入力され、
前記第2吐出情報信号に含まれる前記第2波形選択データは、前記第1吐出周期で取得された前記第2温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く前記第2吐出周期において更新され、
更新された前記第2波形選択データを含む前記第2吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く前記第3吐出周期で前記第2スイッチ回路に入力されてもよい。
【0246】
この液体吐出装置によれば、プリントヘッドからのインクの吐出を事項している期間に、第1吐出モジュールの第1駆動電圧信号を第1温度情報に基づいて補正し、第2吐出モジュールの第2駆動電圧信号を第2温度情報に基づいて補正することができ、補正精度が向上する。
【0247】
プリントヘッドの一態様は、
駆動信号出力回路が出力する複数の駆動波形を含む駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドであって、
第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、
前記第1吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び第1圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記第1圧電体が積層される第1積層方向において、前記第1圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第1駆動電圧信号を受けて駆動する第1圧電素子と、
前記第1圧電素子に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1圧電素子の駆動により変形する第1振動板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の一方側に位置し、前記第1振動板の変形により容積が変化する第1圧力室が複数設けられている第1圧力室基板と、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第1吐出データを含む第1吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで、前記第1圧電素子に供給される前記第1駆動電圧信号を出力する第1スイッチ回路と、
前記第1スイッチ回路が設けられた第1配線基板と、
前記第1振動板に対して前記第1積層方向の他方側に位置し、前記第1配線基板と電気的に接続され、前記第1圧力室の温度に応じた第1温度情報を検出する第1温度検知部と、
を含み、
前記第2吐出モジュールは、
第3電極、第4電極、及び第2圧電体を含み、前記第3電極、前記第4電極、及び前記第2圧電体が積層される第2積層方向において、前記第2圧電体が前記第3電極と前記第4電極との間に位置し、前記駆動信号に基づく第2駆動電圧信号を受けて駆動する第2圧電素子と、
前記第2圧電素子に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2圧電素子の駆動により変形する第2振動板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の一方側に位置し、前記第2振動板の変形により容積が変化する第2圧力室が複数設けられている第2圧力室基板と、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する第2吐出データを含む第2吐出情報信号に基づいて、前記複数の駆動波形を選択又は非選択とすることで前記第2圧電素子に供給される前記第2駆動電圧信号を出力する第2スイッチ回路と、
前記第2スイッチ回路が設けられた第2配線基板と、
前記第2振動板に対して前記第2積層方向の他方側に位置し、前記第2配線基板と電気的に接続され、前記第2圧力室の温度に応じた第2温度情報を検出する第2温度検知部と、
を含み、
前記第1温度情報が第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが第1液滴量の液体を吐出させるための第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第1駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第1駆動波形と異なる第2駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第1駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力し、
前記第2温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第2吐出データが前記第1の値である場合、前記第2スイッチ回路は、前記第2駆動波形を含む前記第2駆動電圧信号を出力する。
【0248】
このプリントヘッドによれば、1つの駆動信号に基づいて液体を吐出する第1吐出モジュールと第2吐出モジュールとを有し、第1吐出モジュールの第1駆動電圧信号を第1温度情報に基づいて補正し、第2吐出モジュールの第2駆動電圧信号を第2温度情報に基づいて補正することができる。すなわち、1つの駆動信号が入力される複数の吐出モジュールを個別に温度補正することができ、インクの吐出精度が向上する。
【0249】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記第1温度検知部の少なくとも一部は、前記第1振動板に積層され、前記第2温度検知部の少なくとも一部は、前記第2振動板に積層されていてもよい。
【0250】
このプリントヘッドによれば、温度検知部が圧力室の近傍に位置することで、第1温度情報、及び第2温度情報の検出精度が向上する。
【0251】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記第1温度情報が前記第1温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第1液滴量と異なる第2液滴量の液体を吐出させるための第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、第3駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力し、
前記第1温度情報が前記第2温度範囲内の温度の情報を含み、且つ、前記第1吐出データが前記第2の値である場合、前記第1スイッチ回路は、前記第3駆動波形と異なる第4駆動波形を含む前記第1駆動電圧信号を出力してもよい。
【0252】
このプリントヘッドによれば、複数の駆動波形を選択することによって多階調を実現する場合であっても、1つの駆動信号が入力される複数の吐出モジュールを個別に温度補正することができ、プリントヘッドからのインクの吐出精度が向上する。
【0253】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記第1吐出情報信号は、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第1吐出データと、
前記第1圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第1波形選択データと、
を含み、
前記第2吐出情報信号は、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量を規定する前記第2吐出データと、
前記第2圧電素子の駆動により吐出される液体の吐出量に対応し、前記複数の駆動波形の選択又は非選択を規定する第2波形選択データと、
を含み、
前記第1温度情報に基づいて更新された前記第1波形選択データが入力され、
前記第2温度情報に基づいて更新された前記第2波形選択データが入力されてもよい。
【0254】
このプリントヘッドによれば、第1吐出データと第1波形選択データとが1つの第1吐出制御信号として供給され、第2吐出データと第2波形選択データとが1つの第2吐出制御信号として供給されることで、信号のタイミング調整が容易になり、効率的な補正を実現できる。
【0255】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記第1スイッチ回路が前記第1駆動電圧信号を前記第1圧電素子に供給しない期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて更新された前記第1波形選択データが入力され、
前記第2スイッチ回路が前記第2駆動電圧信号を前記第2圧電素子に供給しない期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて更新された前記第2波形選択データが入力されてもよい。
【0256】
このプリントヘッドによれば、第1駆動電圧信号が第1温度情報に干渉するおそれが低減し、第2駆動電圧信号が第2温度情報に干渉するおそれが低減することで、第1温度情報及び第2温度情報の取得精度が向上する。
【0257】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第1温度検知部が検出した前記第1温度情報に基づいて更新された前記第1波形選択データが入力され、
前記駆動信号の電圧値が一定の期間に前記第2温度検知部が検出した前記第2温度情報に基づいて更新された前記第2波形選択データが入力されてもよい。
【0258】
このプリントヘッドによれば、第1駆動信号が第1温度情報に干渉するおそれが低減し、第2駆動信号が第2温度情報に干渉するおそれが低減することで、第1温度情報及び第2温度情報の取得精度が向上する。
【0259】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記第1吐出情報信号に含まれる前記第1波形選択データは、第1吐出周期で取得された前記第1温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く第2吐出周期において更新され、
更新された前記第1波形選択データを含む前記第1吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く第3吐出周期で前記第1スイッチ回路に入力され、
前記第2吐出情報信号に含まれる前記第2波形選択データは、前記第1吐出周期で取得された前記第2温度情報に基づいて、前記第1吐出周期に続く前記第2吐出周期において更新され、
更新された前記第2波形選択データを含む前記第2吐出情報信号は、前記第2吐出周期に続く前記第3吐出周期で前記第2スイッチ回路に入力され、
このプリントヘッドによれば、プリントヘッドからのインクの吐出を事項している期間に、第1吐出モジュールの第1駆動電圧信号を第1温度情報に基づいて補正し、第2吐出モジュールの第2駆動電圧信号を第2温度情報に基づいて補正することができ、補正精度が向上する。
【符号の説明】
【0260】
1…液体吐出装置、2…インク容器、10…制御機構、20…プリントヘッド、21…キャリッジ、22…吐出モジュール、24…温度検出回路、26…温度情報出力回路、30…移動機構、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送機構、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、52…基準電圧信号出力回路、60…圧電素子、90…リニアエンコーダー、100…制御回路、200…駆動信号選択回路、210…選択制御回路、222a…第1レジスター、222b…第2レジスター、224a…第1ラッチ回路、224b…第2ラッチ回路、226…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、260…制御ロジック回路、261…SP用レジスター群、262…選択制御信号生成部、270…選択信号出力部、310…圧力室基板、311…隔壁、312…圧力室、312a,312b…端部、315…連通板、316…ノズル連通路、317…第1マニホールド部、318…第2マニホールド部、319…供給連通路、320…ノズルプレート、321…ノズル、330…保護基板、331…保持部、332…貫通孔、340…ケース部材、341…収容部、342…第3マニホールド部、343…接続口、344…供給口、345…コンプライアンス基板、346…封止膜、347…固定基板、348…開口部、349…コンプライアンス部、350…振動板、351…弾性膜、352…絶縁体膜、360…電極、360a,360b…端部、370…圧電体、370a,370b…端部、371…溝部、380…電極、380a,380b…端部、385…配線部、391…個別リード電極、392…共通リード電極、392a,392b…延設部、393,393a,393b…測定用リード電極、400…マニホールド、401…抵抗配線、410…活性部、415…非活性部、420…配線基板、421,500…集積回路、510…変調回路、512,513…加算器、514…コンパレーター、515…インバーター、516…積分減衰器、517…減衰器、520…ゲートドライブ回路、521,522…ゲートドライバー、550…増幅回路、560…復調回路、570,572…帰還回路、C1~C5,C7…コンデンサー、D1…ダイオード、L1…インダクター、M1,M2…トランジスター、P…媒体、R1~R6…抵抗