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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051479
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240404BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/01 303
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157667
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 悠介
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 優揮
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA10
2C056HA37
2C056KB13
(57)【要約】
【課題】収容部に収容される長尺部材の摩耗を抑制できる記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置は、長尺部材79と収容部60とを備える。収容部60は、長尺部材79を収容するとともに、固定端61と移動端と長尺状の可変部とを有する。可変部が途中で折り返す部分である湾曲部がキャリッジの移動に追従して移動する。収容部60の高さ方向HDにおいて、長尺部材79と収容部60との間には、可撓性を有するフィルム部材76が配置される。フィルム部材76と長尺部材79との摩擦係数は、収容部60と長尺部材79との摩擦係数よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に記録する記録ヘッドが設けられ、主走査方向に移動可能なキャリッジと、
一端が前記記録ヘッド又は前記キャリッジに接続される長尺部材と、
前記長尺部材を収容するとともに、装置側に固定される固定端と前記キャリッジに固定される移動端と前記固定端と前記移動端との間に延びる可変な部分である長尺状の可変部とを有し、前記主走査方向と平行に延びる前記可変部が途中で折り返す部分である湾曲部が前記キャリッジの移動に追従して移動する長尺状の収容部と、
前記収容部の長手方向と交差する高さ方向において、前記長尺部材と前記収容部との間に配置される可撓性を有するフィルム部材と、
を備え、
前記フィルム部材と前記長尺部材との摩擦係数は、前記収容部と前記長尺部材との摩擦係数よりも小さい、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、前記媒体に液体を吐出することで前記媒体に記録を行い、
前記長尺部材の少なくとも1つは、前記記録ヘッドに液体を供給するチューブである、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記長尺部材の長手方向に間隔を有して前記長尺部材に取り付けられる1または複数のクランプ部材を備えることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記収容部は、
前記収容部の両側の側部を構成するとともに隣同士が角度変更可能な状態で一列に連結された複数のリンク部材と、
複数の前記リンク部材のうち両側で対をなす少なくとも一部の前記リンク部材の両側に係止されることで、前記長手方向において前記リンク部材のピッチのM倍(Mは自然数)のピッチで間隔をおいて並ぶ複数のカバー部材と、
前記長手方向に前記リンク部材のピッチのN倍(Nは自然数)のピッチで配置される区画板と、を有し、
前記複数のクランプ部材は、前記区画板が配置されるピッチよりも短いピッチで、前記長尺部材に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記高さ方向において、前記フィルム部材と前記収容部との間に配置されるノイズ除去部材を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記収容部の下方に配置される第1部材と、
前記高さ方向において、前記収容部と前記第1部材との間に配置される板部材とを備える請求項1~4のいずれか一項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の媒体に対して記録ヘッドが移動することで媒体に記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、記録ヘッドが移動するシリアル記録方式の記録装置が開示されている。この種の記録装置には、複数種のインクを貯留するインクタンクと、インクを吐出する記録ヘッドと、インクタンクから記録ヘッドにインクを供給する複数のチューブ等のインク配管(長尺部材の一例)を収容するケーブルベヤ(登録商標)(収容部の一例)を含むインク供給路部とを備える。ケーブルベア(登録商標)は、複数のリンク部材が一列に連結されることで、湾曲などの変形が可能に構成される。収容部は、一端が装置側に固定される固定端と、記録ヘッドが設けられるキャリッジに固定された移動端と、固定端と移動端との間を接続するとともに途中で湾曲状に折り返す湾曲部を有する可変部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-46614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の記録装置において、記録ヘッドの移動に追従して収容部のうち湾曲部となる部分が順次変化する。湾曲部では内周側よりも外周側の方が変位量が大きいため、内周側と外周側との変位量の差の分だけ長尺部材と収容部とが長手方向に徐々にずれる。このずれにより、チューブ等の長尺部材が収容部の内面と摺動することになる。長期間使用するうちに摺動が繰り返されると、長尺部材が摩耗するという課題がある。上記特許文献1に記載された記録装置では、長尺部材の摩耗について何ら考慮されていなかった。このため、長尺部材の摩耗を抑制できる記録装置が要望されている。なお、長尺部材は、チューブに限らず、電力線、信号線、ケーブル、あるいはホース等が収容部に収容される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する記録装置は、媒体に記録する記録ヘッドが設けられ、主走査方向に移動可能なキャリッジと、一端が前記記録ヘッド又は前記キャリッジに接続される長尺部材と、前記長尺部材を収容するとともに、装置側に固定される固定端と前記キャリッジに固定される移動端と前記固定端と前記移動端との間に延びる可変な部分である長尺状の可変部とを有し、前記主走査方向と平行に延びる前記可変部が途中で折り返す部分である湾曲部が前記キャリッジの移動に追従して移動する長尺状の収容部と、前記収容部の長手方向と交差する高さ方向において、前記長尺部材と前記収容部との間に配置される可撓性を有するフィルム部材と、を備え、前記フィルム部材と前記長尺部材との摩擦係数は、前記収容部と前記長尺部材との摩擦係数よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態における記録装置を示す側面図である。
図2】記録ユニットを示す模式正面図である。
図3】流体供給路部の一部を示す斜視図である。
図4】流体供給路部の一部を示す部分斜視図である。
図5】流体供給路部の一部を示す斜視図である。
図6図3における6-6矢視で示される断面図である。
図7】流体供給路部を示す正断面図である。
図8】比較例の流体供給路部を示す模式正面図である。
図9】第1実施例の流体供給路部を示す模式正面図である。
図10】第2実施例の流体供給路部を示す模式正面図である。
図11】変更例における長尺部材保護構造を示す断面図である。
図12図11と異なる変更例における収容部の一部を示す正面図である。
図13図12における13-13矢視で示される断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、記録装置について図面を参照して説明する。記録装置は、例えば、大判サイズの長尺の媒体に印刷を行うラージフォーマットプリンターである。
図1に示すように、記録装置11は、支持台12と、支持台12上に固定された筐体部13と、媒体Mを支持する支持部20と、媒体Mを図1に矢印で示す搬送方向D1に搬送する搬送装置25と、媒体Mに記録を行う記録ユニット50とを備える。
【0008】
以降の説明では、媒体Mの搬送方向D1と直交する方向(図1では紙面と直交する方向)を主走査方向Xとし、記録ユニット50が印刷を行う位置において媒体Mが搬送される方向を搬送方向Yとする。本実施形態において、主走査方向X及び搬送方向Yは互いに交差(好ましくは、直交)する方向であって、いずれも鉛直方向Z(重力方向)と交差(好ましくは、直交)する。主走査方向Xに対して媒体Mが搬送される搬送方向Yが副走査方向である。なお、媒体Mの搬送方向D1は、図1における実線の矢印で示すように搬送経路上の位置に応じて変化する。
【0009】
図1に示すように、支持部20は、媒体Mの搬送経路を形成する第1の支持部21、第2の支持部22及び第3の支持部23と、第2の支持部22の下側に配置された吸引機構24とを備えている。第1の支持部21は、搬送方向Yにおける上流側より下流側の方が高くなるように傾斜した傾斜面を有する。第2の支持部22は、記録ユニット50と対向する位置に設けられて、印刷が行われる媒体Mを支持する。第3の支持部23は、搬送方向Yにおける上流側より下流側の方が低くなるように傾斜した傾斜面を有して、記録ユニット50によって印刷が行われた媒体Mを案内する。第2の支持部22は、媒体Mを支持する支持面に図示しない複数の吸引孔を有し、吸引機構24の駆動によって吸引孔を通じて媒体Mを吸引することにより、印刷が行われる媒体Mの浮き上がりを抑制する。
【0010】
次に、搬送装置25の構成を詳述する。図1図2に示すように、搬送装置25は、媒体Mを給送する給送部30と、給送部30から給送された媒体Mを搬送方向Yに沿って搬送する搬送部40とを備えている。給送部30は、媒体Mをロール状に巻回したロール体31を回転可能に支持するロール体支持部32を有する保持部33と、ロール体31を正逆回転させる動力を出力する給送モーター34とを備える。なお、給送部30は、ロール体支持部32の回転を検出可能な回転検出器35を備えている。
【0011】
図1に示すように、搬送部40は、媒体Mを挟持して搬送方向Yに沿って搬送するローラー対41と、ローラー対41に媒体Mを搬送する動力を出力する駆動源である搬送モーター(図示略)とを備える。ローラー対41は、駆動ローラー42と従動ローラー43とが対をなすことで構成される。そして、搬送モーターの動力で駆動ローラー42が回転することにより、媒体Mはローラー対41に挟持された状態で支持部20の上面に沿って搬送される。
【0012】
図1に示すように、記録ユニット50は、主走査方向Xに移動可能なキャリッジ52と、キャリッジ52に設けられ、媒体Mに記録する記録ヘッド53とを備える。記録ヘッド53は、媒体Mに記録を行う。記録ヘッド53は、ローラー対41よりも搬送方向Yの下流側に位置する印刷領域PAで媒体Mに記録(印刷)する。記録ユニット50は、シリアル記録方式を採用する。キャリッジ52は、不図示のキャリッジモーターの駆動により、係合部54を介してガイド部材51に沿って主走査方向Xに往復移動可能に構成される。記録ヘッド53は、キャリッジ52が主走査方向Xに移動する過程で、支持部20に支持された媒体Mに記録する。シリアル記録方式では、媒体Mを次の記録位置まで搬送する搬送動作と、記録ヘッド53により1走査分の記録を行う記録動作とが交互に行われることで、媒体Mに文字又は画像が記録される。記録ヘッド53がインク等の液体を吐出する液体吐出方式(例えばインクジェット方式)である場合、記録ヘッド53は媒体Mに向けてインクを吐出することで記録を行う。記録装置11は、図1に示す搬送装置25及び記録ユニット50を制御する制御部100を備える。
【0013】
<記録ユニット50の構成について>
次に、図2を参照して、記録ユニット50の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、記録装置11は、液体供給部90を備える。液体供給部90は、ホルダー91を備える。ホルダー91には、1又は複数の液体収容体92が装着されている。図2に示す例では、液体収容体92の装着数は、8個であるが、3個、4個、10個など他の複数でもよい。液体収容体92は、例えば、インクカートリッジ又はインクタンクにより構成される。記録ヘッド53は、液体収容体92から供給されるインク等の液体を吐出するノズル(図示略)を有する。
【0014】
液体収容体92がn個(n≧2)である場合、n個の液体収容体92は、それぞれ異なるn色のインクをそれぞれのチューブ93を通じて記録ヘッド53に供給する。n≧4である場合、4個以上の液体収容体92は、例えば、カラーを構成する、シアン、マゼンタ、イエロー、黒を含む複数色のインクをそれぞれ収容する。ホルダー91からは液体収容体92内のインクを記録ヘッド53に供給するための1又は複数のチューブ93が延びている。図2に示す例では、液体供給部90を構成する液体収容体92の数と同数の複数本(例えば8本)のチューブ93が設けられる。チューブ93は、液体供給部90とキャリッジ52との間を接続している。
【0015】
記録ユニット50は、キャリッジ52と、キャリッジ52に設けられる記録ヘッド53と、装置側からキャリッジ52又は記録ヘッド53に流体を供給する流体供給路部50Aを備える。流体供給路部50Aは、キャリッジ52又は記録ヘッド53に供給される流体等の伝送対象の伝送路となる長尺部材79と、長尺部材79を収容する収容部60とを備える。本実施形態では、流体は、例えば、インク等の液体およびエアのうち少なくとも一方である。本実施形態の長尺部材79は、インク等の液体およびエアの両方を供給する複数種ある。
【0016】
本実施形態では、長尺部材79の少なくとも1つは、記録ヘッド53に液体を供給するチューブ93である。収容部60は、長尺部材79の1つの例として1又は複数のチューブ93を収容する。本実施形態では、収容部60は、長尺部材79の他の1つの例としてキャリッジ52にエアを供給する1又は複数のチューブ94(図6参照)を収容する。流体供給路部50Aは、電力を供給する電力線や、信号を伝送する信号線を、長尺部材79の他の1つとして収容してもよい。
【0017】
収容部60は、その長手方向の両端部に固定端61と移動端62とを有する。さらに、収容部60は、固定端61と移動端62との間の部分に湾曲状の変形が可能な可変部63を備える。すなわち、収容部60は、長尺部材79を収容するとともに、装置側に固定される固定端61と、キャリッジ52に固定される移動端62と、固定端61と移動端62との間に延びる可変な部分である長尺状の可変部63とを有する。可変部63は、主走査方向Xと平行に延びる可変部63が途中で折り返す部分である湾曲部66を有する。収容部60に形成される湾曲部66は、キャリッジ52の移動に追従して移動する。
【0018】
可変部63は、第1直状部64と、第2直状部65と、第1直状部64と第2直状部65との間の部分で折返し経路を描きながら湾曲する湾曲部66とを有する。第1直状部64は、固定端61から主走査方向Xに沿って直線状に延びている。第2直状部65は、移動端62から主走査方向Xに沿って直線状に延びている。固定端61は、支持台12を構成するフレーム12Fに固定されている。移動端62は、キャリッジ52に固定されている。図1に示す例のように、キャリッジ52に対してY方向に離れた位置に収容部60が配置されている場合、移動端62は、キャリッジ52からY方向に延出する支持部に固定されてもよい。また、収容部60の配置位置は、図1に示す例のように、キャリッジ52の移動経路に対して搬送方向Yの上流側の位置に限らず、下流側の位置であってもよい。
【0019】
図2に示す収容部60は、可変部63において湾曲部66が形成される部分を順次移動させることで、キャリッジ52の移動に追従する。これにより、キャリッジ52が主走査方向Xに移動しても、液体収容体92からキャリッジ52にインク等の液体を供給するチューブ93を保護しつつチューブ93を通じて記録ヘッド53に液体を供給可能である。
【0020】
図2に示すように、キャリッジ52は、その移動経路上の一端であるホーム位置HPと、他端である反ホーム位置AHとの間を移動可能である。図2に実線で示すように、キャリッジ52がホーム位置HPにあるとき、第2直状部65よりも長くなる第1直状部64がほぼ一番長い長さになる。また、図2に二点鎖線で示すように、キャリッジ52が、反ホーム位置AHにあるとき、第2直状部65よりも短くなる第1直状部64が、ほぼ一番短い長さになる。キャリッジ52がホーム位置HPと反ホーム位置AHとの間を移動する過程において、湾曲部66が形成される部分が移動することで、第1直状部64と第2直状部65との長さの比が変化する。
【0021】
<リニアエンコーダー36の構成>
図2に示すように、記録装置11は、リニアエンコーダー36を備える。リニアエンコーダー36は、主走査方向Xに沿って張設されたリニアスケール37と、リニアスケール37を検知可能な状態でキャリッジ52に設けられたセンサー38とを備える。センサー38は、リニアスケール37に一定ピッチで設けられた複数の透光部(図示略)を通った光を検知可能な光学式センサーである。センサー38は、キャリッジ52の移動量に比例する数のパルスを含むエンコーダー信号を制御部100(図1参照)に対して出力する。
【0022】
制御部100は、リニアエンコーダー36のセンサー38から入力するエンコーダー信号のパルスエッジの数を計数する不図示のカウンターを備える。カウンターは、キャリッジ52が移動経路上の原点位置にあるときにリセットされる。制御部100は、カウンターの計数値によりキャリッジ52の移動経路上の位置であるキャリッジ位置を取得する。制御部100は、エンコーダー信号に基づいてキャリッジ52の位置制御および速度制御を行う。
【0023】
<メンテナンス装置55>
図2に示すように、キャリッジ52がホーム位置HPにあるときの記録ヘッド53と対向する位置には、メンテナンス装置55が配置されている。ホーム位置HPは、キャリッジ52の非印刷時の待機位置である。メンテナンス装置55は、本体56と、本体56に対して昇降可能なキャップ57と、キャップ57を付勢するばね58とを備える。メンテナンス装置55は、ポンプ59を備えてもよい。キャップ57は、図2に実線で示す待機位置と、図2に二点鎖線で示すキャップ位置との間を移動する。キャップ位置にあるキャップ57は、ばね58の付勢力により記録ヘッド53のノズル面に押し付けられた状態で当接する。ノズル面とは、記録ヘッド53のノズルが開口する面である。
【0024】
キャップ位置にあるキャップ57と記録ヘッド53との間には略閉空間が形成される。このキャッピング状態では、ノズル内のインクの増粘や乾燥が抑制される。また、クリーニング時期になると、キャッピング状態の下でポンプ59が駆動されることで、キャップ57と記録ヘッド53との間の略閉空間が負圧とされる。略閉空間が負圧になることで、ノズルからインクが強制的に排出される。これにより、ノズル内の気泡や増粘インク等がインクと共に排出されるクリーニングが行われる。なお、クリーニングは、後述するエア供給用のチューブ94(図6参照)を通じて記録ヘッド53に供給される加圧エアによりインク室のダイヤフラムを加圧することで、インク室に連通するノズルからインクを強制的に排出することで行われてもよい。この種の加圧クリーニングは、液体収容体92をケース内にインクパックを有する構成とし、ケース内のインクパックを加圧エアを用いて加圧することでチューブ93内のインクを加圧することにより行われてもよい。
【0025】
<第1部材45の保護構造>
図2に示すように、収容部60の下方には、第1部材45が配置されている。第1部材45は、収容部60の下方に位置するフレーム部46に支持されている。高さ方向HDにおいて、収容部60と第1部材45との間に配置される板部材47を備える。第1部材45は、収容部60内の長尺部材79の少なくとも1つが伝送する伝送対象を蓄積または生成する部品であってもよい。第1部材45は、例えば、加圧エア又は負圧エアを蓄積する圧力タンク、または加圧エア又は負圧エアを生成するエア生成部であってもよい。この場合、長尺部材79は、その中の1つにエア供給用のチューブ94(図6参照)を含んでもよい。この場合、チューブ94は、加圧エアまたは負圧エアを供給するものであってもよい。
【0026】
収容部60およびその収容物であるチューブ93,94等の長尺部材79の総重量が大きくなると、収容部60が鉛直方向Zに垂れ下がる場合がある。この場合の収容部60の垂れ下がり量をある一定値以下に規制するために図2に示す板部材47が設けられている。板部材47は、例えば、板金により構成される。金属製である板部材47は、収容部60が垂れ下がっても、その垂れ下がった収容部60が板部材47に接触または摺動する位置よりも下方への垂れ下がりを規制する。金属製の板部材47は、垂れ下がった収容部60の重量を受けても撓み難い程度の剛性を有する。つまり、流体供給路部50Aの垂れ下がり量は、板部材47によって、第1部材45に接触することがないように規制される。
【0027】
<収容部60の詳細な構成>
次に、図3図7を参照して、収容部60の詳細な構成について説明する。図3は、収容部60の固定端61寄りの一部を斜視で示しており、収容部60内を見やすくするためにカバー部材74の一部が取り外された状態にある。図3に示すように、収容部60のうち可変部63の両側の側部67は、隣同士が角度変更可能な状態でピン72を介して一列に連結された複数のリンク部材71により構成される。収容部60の上部と下部は、長手方向LDに間隔を空けた状態で、長手方向LDと交差する幅方向WDに架設された複数のカバー部材74により間欠的に覆われている。カバー部材74は、幅方向WDに長い四角板状を呈する。リンク部材71はその高さ方向HDの両端部(図3では上端部のみ図示)に係止部73を有する。カバー部材74は、幅方向WDの両端部に、係止部73と係止可能な被係止部75を有する。図3に示す例では、係止部73が係止突起であり、被係止部75が被係止穴である。
【0028】
収容部60の長手方向LDにおいてカバー部材74を配置する間隔は、ユーザーがカバー部材74を取り付ける位置を決めることで選択可能である。複数のカバー部材74は、複数のリンク部材71のうち幅方向WDの両側で対をなす少なくとも一部のリンク部材71の両側に架け渡された状態で係止される。これにより、複数のカバー部材74は、長手方向LDにおいてリンク部材71のピッチのM倍(Mは自然数)のピッチで間隔をおいて並んでいる。
【0029】
図3に示す例では、複数のカバー部材74は、長手方向LDに1列に配列されるリンク部材71に対して1つおきの間隔で配置されている。つまり、複数のカバー部材74は、長手方向LDにおいてリンク部材71のピッチの2倍(M=2)のピッチで配置されている。なお、カバー部材74のピッチは、リンク部材71のピッチの3倍(M=3)または4倍(M=4)のピッチや、同一ピッチ(M=1)など適宜なピッチを選択してもよい。
【0030】
図4において、収容部60の下部を構成するカバー部材85は、収容部60の上部を構成する複数のカバー部材74と基本的に同様の取り付け構造で取り付けられている。すなわと、下側のカバー部材85についても、リンク部材71の下端にある係止部がカバー部材85の両端部にある被係止部と係止されることで、カバー部材85は、上側のカバー部材74と長手方向LDに同じ位置かつ同じピッチで配置されている。
【0031】
図3に示すように、リンク部材71は、収容部60の湾曲部66で内側となる図3における上部が上端ほど幅寸法が狭くなる先細り形状を有する。図3に示す第1直状部64では、複数のリンク部材71は、隣同士で下部が当接し合うことでそれ以上近づく方向には回動できないように規制される。また、複数のリンク部材71は、隣同士で上部が間隔を空けて位置することでその位置から互いに近づく方向に角度変更可能に構成される。
【0032】
図3において、収容部60は、上側が内周側となる一方の向きへは湾曲可能であるが、その反対側の向きへの湾曲は規制される。このため、上側に位置する第2直状部65は、重力等の鉛直方向Zの荷重を受けても、直線状に保持される。一方、下側に位置する第1直状部64は、前述の板部材47に支持されるため、直線状に保持される。
【0033】
<収容部60内の長尺部材摩耗防止構造>
次に、図3図4を参照して、収容部60内の長尺部材摩耗防止構造について説明する。図3に示すように、収容部60の高さ方向HDにおいて、長尺部材79と収容部60との間には、可撓性を有するフィルム部材76が配置されている。ここで、高さ方向HDとは、収容部60の長手方向LDと交差する方向である。高さ方向HDとは、収容部60の幅方向WDとも交差する方向である。高さ方向HDは、湾曲部66においては径方向に相当する。収容部60のうち可変部63を構成する部材、すなわち、リンク部材71、カバー部材74、後述する第1区画板77、第2区画板78およびカバー部材85(いずれも図4参照)は合成樹脂製である。また、フィルム部材76は、例えば、合成樹脂製である。
【0034】
フィルム部材76と長尺部材79との摩擦係数は、収容部60と長尺部材79との摩擦係数よりも小さい。詳しくは、フィルム部材76に対する長尺部材79の摩擦係数は、収容部60のカバー部材74、第1区画板77、第2区画板78、カバー部材85(いずれも図4参照)のいずれに対する摩擦係数よりも小さい。長尺部材79が例えばチューブ93である場合、チューブ93は、例えばゴム製である。この場合、チューブ93はゴムであれば、合成ゴムに限らず天然ゴムでもよい。フィルム部材76の材質には、ゴムに対する摩擦係数よりも、可変部63を構成する部材の材質である合成樹脂に対する摩擦係数が小さくなる樹脂材料が選択される。
【0035】
フィルム部材76は、低摩擦性樹脂材料により構成される。低摩擦性樹脂材料は、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)フィルムである。フィルム部材76は、例えば、ルミラー(登録商標)である。なお、フィルム部材76は、低摩擦性樹脂材料であれば、ルミラー以外のフィルムであってもよい。
【0036】
湾曲部66では、内周側と外周側で長手方向LD(湾曲部66では周方向)の変位量が異なる。すなわち、湾曲部66では、内周側の変位量よりも、外周側の変位量の方が大きい。この湾曲部66における内周側の変位量と外周側の変位量との差が原因で、湾曲部66では、収容部60と長尺部材79との間に摺動が発生する。本実施形態では、長尺部材79は、収容部60と摺動することはなく、収容部60との間に介在するフィルム部材76と摺動する。このため、長尺部材79が湾曲部66で摺動するときに受ける摺動摩擦力は、カバー部材74,85や各区画板77,78と直接摺動した際に受ける摺動摩擦力に比べ小さい。
【0037】
<固定機構61Aの構成>
図4は、収容部60を幅方向WDの半分辺りの位置で長手方向LDに沿って切断した様子を示す。図3図4に示すように、固定端61は、可変部63の端部を固定先の対象物に固定するための固定機構61Aを備える。固定機構61Aは、長尺部材79が挿通される弾性部材84と、弾性部材84を挟み込む保持部材81及び押圧板82と、押圧板82を保持部材81に対して締結する締結部材の一例としてボルト83とを備える。固定機構61Aでは、保持部材81と押圧板82とを弾性部材84を間に挟んでボルト83により締結するため、長尺部材79が受ける締結力による荷重が緩和される。
【0038】
<収容部60内の区画板77,78による区画構成>
図5は、カバー部材74および1枚のフィルム部材76を取り外した状態の斜視を示す。また、図6は、収容部60において図3の6-6矢視の断面を示す。図4図6に示すように、収容部60は、その内部を幅方向WDに複数の収容領域に区画可能な位置に配置された複数の区画板の一例としての第1区画板77を備える。複数の第1区画板77は、長手方向LDに所定の間隔ごとに配置されている。図4図6等の示す例では、第1区画板77は、収容部60内を幅方向WDに3つの収容領域に区画する。第1区画板77は、各収容領域に収容される長尺部材79の幅方向WDへのずれを抑制する。つまり、第1区画板77は、長尺部材79をそれぞれの各収容領域に保持する機能を有する。
【0039】
図4図6に示すように、収容部60内には、その高さを二分する高さ位置に第2区画板78が幅方向WDに延びるように架設されている。図5に示すように、第1区画板77は、高さ方向HDに複数の挿通孔77Bを有し、そのうち選択された少なくとも1つの挿通孔77Bに第2区画板78が挿通される。図4図6に示す例では、第2区画板78は、第1区画板77の高さを二分する中央に位置する挿通孔77Bに挿通されることで、収容部60内を上下に2つの収容領域に区画する。また、第1区画板77は、高さ方向HDの両端に係止凹部77Aを有する。カバー部材74,85は、幅方向WDの両端部が、係止凹部77Aに係止されることで、幅方向WDに架設される。
【0040】
第1区画板77と第2区画板78とにより収容部60内を上下左右に6つの各収容領域に区画される。図6に示すように、6つに区画された各収容領域には、長尺部材79がそれぞれグループごとに収容される。
【0041】
<固定機構61Aの構成>
図6に示すように、収容部60を構成する固定端61と移動端62は、1又は複数の長尺部材79を収容部60内の収容領域に収容する状態で固定機構61Aを介して固定対象に固定されている。詳しくは、固定端61は、固定機構61Aを介して装置側のフレーム12Fに固定されている。なお、固定機構61Aは、固定端61と移動端62とで基本的な構成は同じである。このため、以下では、固定端61の例で説明する。
【0042】
図6に示すように、固定機構61Aは、フレーム12Fと、フレーム12Fの上側に固定される保持部材81と、保持部材81の上面に配置される押圧板82とを備える。押圧板82と保持部材81にはボルト83が挿通される。フレーム12Fにはボルト83の雄ねじが螺着可能なねじ穴が設けられている。
【0043】
保持部材81と押圧板82とで囲まれた空間は、長尺部材79の通り道となる。保持部材81と押圧板82とで囲まれた空間には、弾性部材84が配置されている。弾性部材84は、複数の挿通孔84A,84B,84C,84Dおよびスリット84Sを有する。弾性部材84は、1つの部材で構成されてもよいし、複数の弾性部品を積層して全体が組み立てられる構成でもよい。
【0044】
図6に示すように、挿通孔84Aには、インク供給用のチューブ93に取り付けられたクランプ部材80が嵌合された状態で挿通されている。挿通孔84Bには、エア供給用のチューブ94に取り付けられたクランプ部材80が嵌合された状態で挿通されている。挿通孔84Cには、電力線95が嵌合された状態で挿通されている。電力線95は、記録ヘッド53に電力を供給する。2本の電力線95は、例えば、電源線とアース線である。また、挿通孔84Dには、光通信用の光ケーブル96などのケーブルが嵌合された状態で挿通されている。また、スリット84Sは、クランプ部材80が挿通される挿通孔84A,84Bに対してその上下に位置する。スリット84Sには、フィルム部材76が挿通されている。
【0045】
このように、複数のボルト83が締結されることにより保持部材81と押圧板82との間に挟まれた弾性部材84が押圧される。このとき、ボルト83の締結力は弾性部材84により緩和されるので、長尺部材79には作用しにくい。このため、固定端61では、固定機構61Aにより、長尺部材79が保護された状態で装置側のフレーム12Fに固定される。なお、移動端62は、長尺部材79が弾性部材84に保護された状態で固定機構61Aを介してキャリッジ52に固定される。
【0046】
<クランプ部材80について>
図4図5図7に示すように、流体供給路部50Aは、長尺部材79の長手方向LDに間隔を有して長尺部材79に取り付けられる1または複数のクランプ部材80を備える。図5等に示す例では、長尺部材79には、複数のクランプ部材80が取り付けられている。複数のクランプ部材80は、長尺部材79の長手方向に、例えば、一定の間隔ごとに取り付けられている。
【0047】
図4図5図7に示す例では、クランプ部材80が取り付けられた長尺部材79は、チューブ93である。本例のチューブ93は、複数本(例えば4本)が幅方向WDに1列に連接されている。クランプ部材80は、1列に連接された複数本のチューブ93のねじれ等を防ぐために1列に並ぶ状態に保持する。クランプ部材80は、1列分のチューブ93を挿通可能な複数の挿通穴を有し、各挿通穴に1本ずつチューブ93が挿通されることで複数本のチューブ93を一体に保持する。このため、複数本のチューブ93のクランプ部材80が取り付けられた部分は、全周に亘りクランプ部材80が径方向の外側に凸状に突出している。
【0048】
チューブ93は、収容部60の高さ方向HDの両側をフィルム部材76により覆われた状態で収容部60内に収容されている。そのため、チューブ93の幅方向WDの側方には、フィルム部材76が存在しない。しかし、チューブ93に取り付けられたクランプ部材80が収容部60の内側壁に当たることで、チューブ93が収容部60の内側壁に当たることが回避され易い。例えば、クランプ部材80が第1区画板77に当たることで、チューブ93が第1区画板77に当たることが回避され易い。
【0049】
図7に示すように、長手方向LDにおいて、クランプ部材80が配置されるピッチをP1、区画板77,78が配置されるピッチをP2、リンク部材71のピッチをP3とする。区画板77,78は、長手方向LDにおいてリンク部材71のピッチP3のN倍(Nは自然数)のピッチP2で配置される。複数のクランプ部材80は、区画板77,78が配置されるピッチP2よりも短いピッチP1で、長尺部材79に取り付けられる。これにより、湾曲部66において、クランプ部材80と区画板77,78との長手方向LDにおける位置関係がずれても、すべてのクランプ部材80のうち一定の割合で複数個につき1つ又は2つのクランプ部材80が区画板77,78に直接もしくはフィルム部材76を介して当たる。これにより、チューブ93,94が区画板77,78に当たることが抑制される。
【0050】
<クランプ部材80と区画板77,78との位置関係>
次に、図8図10を参照して、クランプ部材80と区画板77,78との長手方向LDの位置関係について説明する。図8図10は、収容部60の湾曲部66におけるクランプ部材80と第2区画板78(以下では単に区画板78ともいう。)との長手方向LDに沿う位置関係を模式的に示す。
【0051】
第1区画板77と第2区画板78との長手方向LDにおける位置は基本的にほぼ同じであるとみなせるので、図8図10では、第2区画板78の例を示す。第1区画板77についても内周側と外周側との変位量の差により、長尺部材79と収容部60の内側壁との間にずれが生じる場合がある。図8図10は、湾曲部66の湾曲経路を水平な経路に展開した図である。図8は、比較例のクランプ部材80と区画板78との湾曲部66における位置関係を示す。また、図8図10では、フィルム部材76を省略している。
【0052】
図8図10では、クランプ部材80と区画板78が長手方向LDにおいて、クランプ部材80が区画板78にフィルム部材76を介して当たる位置関係にある部分を、破線の四角枠で囲んでいる。フィルム部材76は撓むため、すべて又は多くのクランプ部材80が長手方向LDに区画板78からずれると、チューブ93がフィルム部材76を介して区画板78に当たることになる。このとき、チューブ93における区画板78と対応する部分には過度な圧力がかかり、この状態で摺動すると、区画板78との間にフィルム部材76が介在してもチューブ93は局所的に過度な摺動摩擦力を受けやすくなる。また、チューブ93の側方は、フィルム部材76が存在しないので、すべて又は多くのクランプ部材80が長手方向LDに第1区画板77からずれると、チューブ93が区画板77に当たりやすくなる。これらの点は、エア供給用のチューブ94についても同様である。
【0053】
(比較例)
まず、図8を参照して、クランプ部材80と区画板78とのピッチの比率が不適切な例である比較例について説明する。湾曲部66では、内周側と外周側とで長手方向LDに沿った変位量が異なることに起因し、クランプ部材80と区画板78との長手方向LD沿う位置関係がずれる。このずれは、直状部64,65では生じず、湾曲部66で生じる。さらにこのずれ量は湾曲部66に入ってから湾曲部66に沿って進むに連れてずれ量が大きくなる。
【0054】
直状部64,65の位置関係をずれ量Δ=0とする。クランプ部材80のピッチをP1、区画板78のピッチをP2とする。図8は、2*P1=P2の関係を満たす例である。クランプ部材80の長手方向LDの寸法をd1、区画板78の長手方向LDの寸法をd2とする。ここで、d1=d2/2の関係が成立する。クランプ部材80の長手方向LDの寸法d1と同じ量のずれ量をδとする。クランプ部材80と区画板78とのずれ量Δは、図8に示すとおりである。ずれ量δのときは、すべてのクランプ部材80と区画板78との位置関係がずれている。
【0055】
ずれ量2δのときも、すべてのクランプ部材80と区画板78との位置関係がずれている。さらに、ずれ量3δのときは、すべてのクランプ部材80と区画板78との位置関係がずれている。そして、ずれ量4δのときは、複数のクランプ部材80のうち一部のクランプ部材80と区画板78との位置関係がずれていない。つまり、一部のクランプ部材80が区画板78に支持される。
【0056】
(第1実施例)
次に、図9を参照して、第1実施例について説明する。第1実施例は、クランプ部材80と区画板78とのピッチの比率が、前述の比較例と異なる。図9では、クランプ部材80のピッチのみ比較例と異なる。第1実施例では、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80が、区画板78の外周側(図9では上側)に位置する。このため、5つのクランプ部材80につき1つのクランプ部材80は区画板78に支持されることが可能である。そして、ずれ量δがδずつ大きくなっても、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80は、区画板78の外周側に位置する。つまり、ずれ量Δが、ずれ量δずつ変化しても、5つにつき1つの割合でクランプ部材80が区画板78に支持される。
【0057】
詳しくは、ずれ量Δが0のとき、左から1番目と3番目と5番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
ずれ量Δがδでは、左から2番目と4番目と6番目の各区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0058】
ずれ量Δが2δでは、左から2番目と4番目と6番目の各区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
さらに、ずれ量Δが3δでは、左から1番目と3番目と5番目の各区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0059】
(第2実施例)
次に、図10を参照して、第2実施例について説明する。第2実施例は、クランプ部材80と区画板78とのピッチの比率が、第1実施例と異なる。図10では、クランプ部材80のピッチのみ比較例および第1実施例と異なる。第2実施例では、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80が、区画板78の外周側(図10では上側)に位置する。このため、5つのクランプ部材80につき1つのクランプ部材80は区画板78に支持されることが可能である。そして、ずれ量Δがδずつ大きく変化しても、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80は、区画板78の外周側に位置する。つまり、ずれ量Δが、ずれ量δずつ変化しても、5つにつき1つの割合でクランプ部材80が区画板78に支持される。
【0060】
詳しくは、ずれ量Δが0のとき、左から1番目と4番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
ずれ量Δがδでは、左から3番目と6番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0061】
ずれ量Δが2δでは、左から3番目と6番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
さらに、ずれ量Δが3δでは、左から2番目と5番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0062】
また、ずれ量Δが4δでは、左から2番目と5番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
そして、ずれ量Δが5δでは、左から1番目と4番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0063】
<実施形態の作用>
次に、記録装置11の作用について説明する。記録装置11で印刷が行われるときは、キャリッジ52が主走査方向Xに移動しながら、キャリッジ52と共に移動する記録ヘッド53が媒体Mに記録する。媒体Mの次の記録位置までの搬送動作と、媒体Mに記録する記録動作とが交互に行われることで、媒体Mに画像等が記録される。
【0064】
キャリッジ52が主走査方向Xに移動するときは、収容部60が追従することで湾曲部66の位置が変化する。湾曲部66では内周と外周とで変位量が異なるので、これらの変位量の差により長尺部材79と収容部60との間で相対移動が発生する。このとき、長尺部材79は、収容部60との間に介在するフィルム部材76に対して摺動する。
【0065】
フィルム部材76に対する長尺部材79の摩擦係数は、収容部60に対する長尺部材79の摩擦係数よりも小さい。このため、長尺部材79にかかる摺動摩擦力は、収容部60と長尺部材79との間にフィルム部材76が介在しない構成に比べ小さく済む。この結果、長尺部材79の摩耗は小さく押さえられる。よって、記録装置11を長期間使用しても、長尺部材79の摩耗に起因する傷や破損等の発生を抑制できる。
【0066】
また、収容部60と第1部材45との間に板部材47が配置されているので、収容部60は板部材47に支持されることで、それ以上、下方に垂れ下がることが規制される。この結果、垂れ下がった収容部60が第1部材45に当たることに起因する、収容部60及び第1部材45の摩耗または破損を抑制できる。
【0067】
さらに、長尺部材79のうち少なくともチューブ93には、その長手方向LDに間隔をおいて複数のクランプ部材80が取り付けられている。このため、クランプ部材80が収容部60の内側壁、つまり第1区画板77に当たることで、チューブ93の側部は保護される。
【0068】
また、チューブ93の下方には長手方向LDに所定の間隔ごとに第2区画板78が位置する。区画板78は、収容部60内の空間を高さ方向HDにおいて複数の収容領域に区画する。チューブ93は幅方向WDに4本が一体に連接された形態をとる。チューブ93は、4本ずつが1つの収容領域に収容される。チューブ93は、インクを供給するインクチューブである。そのため、チューブ93は、液体収容体92と同数の本数である8本ある。そして、4本ずつのチューブ93が各収容領域に収容される。
【0069】
チューブ93のうちフィルム部材76を介して区画板78に当たる部分は、区画板78に当たらない部分に比べ大きな接触圧を受け、その接触圧によって強く押されることになり変形等する。なお、収容部60には、チューブとして、エアを供給するチューブ94(図6参照)も収容されている。このエア供給用のチューブ94についても、同様に4本が一体に連接された構成をとり、4本が1つの収容領域に収容される。
【0070】
図9に示すように、第1実施例では、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80が、区画板78の外周側(図9では上側)に位置する。湾曲部66の位置に応じてずれ量が変化する。ずれ量Δがδずつ大きくなっても、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80は、区画板78の外側に位置する。つまり、ずれ量Δが、ずれ量δずつ変化しても、5つにつき1つのクランプ部材80が区画板78に支持される。
【0071】
図9に示すように、ずれ量Δが0のとき、左から1番目と3番目と5番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
ずれ量Δがδでは、左から2番目と4番目と6番目の各区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0072】
ずれ量Δが2δでは、左から2番目と4番目と6番目の各区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
さらに、ずれ量Δが3δでは、左から1番目と3番目と5番目の各区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0073】
このように、どのずれ量Δであっても、クランプ部材80は5つに1つの割合で区画板78に支持される。
図10に示すように、第2実施例では、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80が、区画板78の外周側(図10では上側)に位置する。このため、5つのクランプ部材80につき1つのクランプ部材80は区画板78に支持されることが可能である。そして、ずれ量Δがδずつ大きくなっても、5つのクランプ部材80のうち1つのクランプ部材80は、区画板78の外周側に位置する。つまり、ずれ量Δが、ずれ量δずつ変化しても、5つにつき1つのクランプ部材80が区画板78に支持される。
【0074】
詳しくは、ずれ量Δが0のとき、左から1番目と4番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
ずれ量Δがδでは、左から3番目と6番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0075】
ずれ量Δが2δでは、左から3番目と6番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
さらに、ずれ量Δが3δでは、左から2番目と5番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0076】
また、ずれ量Δが4δでは、左から2番目と5番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
そして、ずれ量Δが5δでは、左から1番目と4番目の区画板78の外周側にクランプ部材80が1つずつ位置する。
【0077】
このように、どのずれ量Δであっても、クランプ部材80は5つに1つの割合で区画板78に支持される。
このように、第1実施例、第2実施例において、クランプ部材80が区画板78に支持されることで、クランプ部材80以外の部分である長尺部材79(例えばチューブ93、94)が区画板78にフィルム部材76を介して当たることが回避される。
【0078】
よって、実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)記録装置11は、媒体Mに記録する記録ヘッド53が設けられ、主走査方向Xに移動可能なキャリッジ52と、一端が記録ヘッド53又はキャリッジ52に接続される長尺部材79と、長尺状の収容部60とを備える。収容部60は、長尺部材79を収容するとともに、装置側に固定される固定端61とキャリッジ52に固定される移動端62と固定端61と移動端62との間に延びる可変な部分である長尺状の可変部63とを有する。主走査方向Xと平行に延びる可変部63が途中で折り返す部分である湾曲部66がキャリッジ52の移動に追従して移動する。収容部60の長手方向LDと交差する高さ方向HDにおいて、長尺部材79と収容部60との間には、可撓性を有するフィルム部材76が配置される。フィルム部材76と長尺部材79との摩擦係数は、収容部60と長尺部材79との摩擦係数よりも小さい。この構成によれば、収容部60は湾曲部66の位置を移動させながらキャリッジ52の移動に追従する。長尺部材79は、収容部60に対する摩擦係数よりも摩擦係数の小さいフィルム部材76と接触するため、収容部60と直接接触する場合に比べ、長尺部材79の摩耗を抑制することができる。
【0079】
(2)記録ヘッド53は、媒体Mに液体を吐出することで媒体Mに記録を行う。長尺部材79の少なくとも1つは、記録ヘッド53に液体を供給するチューブ93である。この構成によれば、液体を供給するチューブ93の摩耗を抑制することができる。例えば、チューブ93の摩耗による液体の漏れ等を抑制することができる。
【0080】
(3)記録装置11は、長尺部材79の長手方向LDに間隔を有して長尺部材79に取り付けられる1または複数のクランプ部材80を備える。この構成によれば、クランプ部材80によって、フィルム部材76で保護できない長尺部材79の側面部分の摩耗を抑制することができる。
【0081】
(4)収容部60は、複数のリンク部材71と、複数のカバー部材74,85と、区画板77,78とを有する。複数のリンク部材71は、収容部60の両側の側部を構成するとともに隣同士が角度変更可能な状態で一列に連結される。複数のカバー部材74,85は、複数のリンク部材71のうち両側で対をなす少なくとも一部のリンク部材71の両側に係止されることで、長手方向LDにおいてリンク部材71のピッチのM倍(Mは自然数)のピッチで間隔をおいて並ぶ。区画板77,78は、長手方向LDにリンク部材71のピッチのN倍(Nは自然数)のピッチで配置される。複数のクランプ部材80は、区画板77,78が配置されるピッチP2よりも短いピッチで、長尺部材79に取り付けられる。この構成によれば、キャリッジ52の移動に伴って収容部60及び長尺部材79が移動する中で、長尺部材79が区画板77,78に常に接触しないようなクランプ部材80の配置とすることができる。キャリッジ52の移動に追従して湾曲部66が移動したときに、その移動した湾曲部66において内周側と外周側とで変位量が異なることにより長手方向LDにおけるクランプ部材80と区画板77,78との相対位置が変化しても、クランプ部材80と区画板77,78とのすべてが長手方向LDにずれることを回避できる。よって、収容部60内を幅方向に複数の領域に区画する区画板77,78によって収容部60内が複数の領域に区画される場合、長尺部材79の側部はクランプ部材80が区画板77,78に接触することで保護される。また、収容部60内を高さ方向HDに区画する区画板77,78によって収容部60内が複数の領域に区画される場合、クランプ部材80がフィルム部材76を介して区画板77,78に接触することで、長尺部材79の高さ方向HDの上部または下部が保護される。
【0082】
(5)記録装置11は、収容部60の下方に配置される第1部材45と、高さ方向HDにおいて、収容部60と第1部材45との間に配置される板部材47とを備える。この構成によれば、収容部60の重量が重くなり、垂れ量が増えると、収容部60が下方に位置する第1部材45と接触する可能性が高くなる。板部材47によって、収容部60の垂れ下がり量が規制されるので、垂れ下がった収容部60が第1部材45と接触することを回避できる。よって、収容部60及び第1部材45にダメージが発生することを抑制することができる。
【0083】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0084】
図11に示すように、フィルム部材の一例であるフィルム層111と収容部60との間にノイズ除去部材112が配置される構成でもよい。例えば、フィルム部材110は、前記実施形態のフィルム部材76と同じ材質であるフィルム部材の一例としてのフィルム層111と、ノイズ除去部材112とがラミネートされた構成でもよい。ノイズ除去部材112は、フィルム部材110においてフィルム層111と表面層113とに挟まれた状態でラミネートされた金属シート又は金属箔である。表面層113は、必ずしも低摩擦性材料でなくてもよい。なお、フィルム部材110は、フィルム層111とノイズ除去部材112との2層よりなる構成でもよい。さらに、ラミネート構造に限定されず、前記実施形態のフィルム部材76と収容部60との間に、フィルム部材76とは別体のシート状のノイズ除去部材112が配置される構成でもよい。これらの構成によれば、ノイズ除去部材112によりノイズを減衰させるシールド性を高めることができる。この場合、信号線が収容部60の外側にあり、ノイズ源の一例である電力線が収容部60内にある場合、外部にある信号線や無線領域へのノイズの影響を抑制できる。一方、信号線が収容部60の内側にあり、ノイズ源の一例である電力線が収容部60の外部にある場合、収容部60内にある信号線へのノイズの影響を抑制できる。
【0085】
図12に示すように、収容部60内に長手方向LDに所定の間隔おきに間隔保持部材120を配置してもよい。間隔保持部材120は、長尺部材79を保持するとともに、保持した長尺部材79と収容部60の内壁面とが接触しないように、長尺部材79と収容部60との間隔を保持する。図13に示すように、間隔保持部材120は、例えば、弾性部材により構成され、長尺部材79を挿通する挿通穴を有し、長尺部材79は挿通穴に挿通された状態で間隔保持部材120に保持される。この構成によれば、収容部60が湾曲する湾曲部66においても、長尺部材79は収容部60の内壁面に当たることが抑制される。例えば、前記実施形態におけるフィルム部材76を廃止することが可能である。
【0086】
・第1部材45は、エア供給系の部品または部材以外の部品や部材でもよい。例えば、インク供給系の部品または部材、電源系の部品または部材、駆動系の部品または部材、さらにはクリーニング系の部品または部材でもよい。収容部60に収容される長尺部材により伝送される伝送対象を蓄積または生成するその他の装置や部品でもよい。例えば、電源装置や電源回路等の電源部品でもよい。また、光通信などの信号を生成する信号生成装置や信号を伝送する中継装置などでもよい。もちろん、第1部材45は、液体供給部90又は液体収容体92から供給される液体を中継する中継装置でもよい。さらに、第1部材45は、メンテナンス装置55からの廃液(例えば廃インク)を蓄積する廃液タンクでもよい。また、第1部材45は、制御部100であってもよい。つまり、制御部100を構成する制御ボックスや制御部100を構成する制御基板などでもよい。
【0087】
・カバー部材74の係止構造は、前記実施形態とは反対の組合せでもよい。すなわち、係止構造は、カバー部材74側が係止突部などの係止部であり、リンク部材71側が被係止穴などの被係止部であってもよい。
【0088】
・前記実施形態では、収容部60内を区画したが、収容部60内を区画せずに長尺部材79を収容してもよい。
・長尺部材79の1本ずつにクランプ部材80が個々に設けられてもよい。
【0089】
・フィルム部材76は、収容部60の高さ方向HDの両側のうち一方側のみに配置してもよい。例えば、フィルム部材76を、長尺部材79の湾曲時の外周側のみに設けたり、長尺部材79の湾曲時の内周側のみに設けたりしてもよい。これらの構成でも、長尺部材79のうちフィルム部材76と摺動する部分については摩耗を抑制できる。
【0090】
・電力線95又は光ケーブル96に、それぞれの太さに合ったクランプ部材80を長手方向LDに間隔をおいて設けてもよい。クランプ部材80により電力線95又は光ケーブル96が区画板77,78に当たることを抑制してもよい。
【0091】
・長尺部材79は、インク供給用のチューブ93のみであってもよい。また、長尺部材79は、エア供給用のチューブ94のみであってもよい。さらに、長尺部材79は、電力線95のみであってもよい。また、長尺部材79は、光ケーブル96等の通信ケーブルのみであってもよい。また、長尺部材79は、インク供給用のチューブ93、エア供給用のチューブ94、電力線95および光ケーブル96等の通信ケーブルのうち少なくとも2種類を含む組み合わせでもよい。例えば、長尺部材79は、チューブ93と電力線95との組み合わせでもよい。
【0092】
・長尺部材79は、インク供給用のチューブ93を含まない構成でもよい。例えば、キャリッジ52にインクカートリッジ等の液体収容体が着脱可能に装着される、いわゆるオンキャリッジタイプであってもよい。
【0093】
・長尺部材79は、エア供給用のチューブ94を含まない構成でもよい。例えば、メンテナンス装置はポンプを備えず、エア供給用のチューブ94を通じて記録ヘッド53に加圧空気を供給することで、ノズルからインク等の液体を強制的に排出するクリーニングを行ってもよい。
【0094】
・媒体Mは、用紙に限定されず、合成樹脂製のフィルムや媒体、布、不織布、ラミネート媒体などでもよい。
・記録装置11は、インクジェット方式の記録装置11に限定されず、ドットインパクトプリンターやレーザープリンターでもよい、また、記録装置11は、捺染装置でもよい。
【0095】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)記録装置は、媒体に記録する記録ヘッドが設けられ、主走査方向に移動可能なキャリッジと、一端が前記記録ヘッド又は前記キャリッジに接続される長尺部材と、前記長尺部材を収容するとともに、装置側に固定される固定端と前記キャリッジに固定される移動端と前記固定端と前記移動端との間に延びる可変な部分である長尺状の可変部とを有し、前記主走査方向と平行に延びる前記可変部が途中で折り返す部分である湾曲部が前記キャリッジの移動に追従して移動する長尺状の収容部と、前記収容部の長手方向と交差する高さ方向において、前記長尺部材と前記収容部との間に配置される可撓性を有するフィルム部材と、を備え、前記フィルム部材と前記長尺部材との摩擦係数は、前記収容部と前記長尺部材との摩擦係数よりも小さい。
【0096】
この構成によれば、収容部は湾曲部の位置を移動させながらキャリッジの移動に追従する。長尺部材は、収容部に対する摩擦係数よりも摩擦係数の小さいフィルム部材と接触するため、収容部と直接接触する場合に比べ、長尺部材の摩耗を抑制することができる。
【0097】
(B)上記記録装置において、前記記録ヘッドは、前記媒体に液体を吐出することで前記媒体に記録を行い、前記長尺部材の少なくとも1つは、前記記録ヘッドに液体を供給するチューブであってもよい。
【0098】
この構成によれば、液体を供給するチューブの摩耗を抑制することができる。例えば、チューブの摩耗による液体の漏れ等を抑制することができる。
(C)上記記録装置は、前記長尺部材の長手方向に間隔を有して前記長尺部材に取り付けられる1または複数のクランプ部材を備えてもよい。
【0099】
この構成によれば、クランプ部材によって、フィルム部材で保護できない長尺部材の側面部分の摩耗を抑制することができる。
(D)上記記録装置は、前記収容部は、前記収容部の両側の側部を構成するとともに隣同士が角度変更可能な状態で一列に連結された複数のリンク部材と、複数の前記リンク部材のうち両側で対をなす少なくとも一部の前記リンク部材の両側に係止されることで、前記長手方向において前記リンク部材のピッチのM倍(Mは自然数)のピッチで間隔をおいて並ぶ複数のカバー部材と、前記長手方向に前記リンク部材のピッチのN倍(Nは自然数)のピッチで配置される区画板と、を有し、前記複数のクランプ部材は、前記区画板が配置されるピッチよりも短いピッチで、前記長尺部材に取り付けられてもよい。
【0100】
この構成によれば、キャリッジの移動に伴って収容部及び長尺部材が移動する中で、長尺部材が区画壁に常に接触しないようなクランプ部材の配置とすることができる。キャリッジの移動に追従して湾曲部が移動したときに、その移動した湾曲部において内周側と外周側とで変位量が異なることにより長手方向におけるクランプ部材と区画板との相対位置が変化しても、クランプ部材と区画板とのすべてが長手方向にずれることを回避できる。よって、収容部内を幅方向に複数の領域に区画する区画板によって収容部内が複数の領域に区画される場合、長尺部材の側部はクランプ部材が区画板に接触することで保護される。例えば、収容部内を高さ方向に区画する区画板によって収容部内が複数の領域に区画される場合、クランプ部材がフィルム部材を介して区画板に接触することで、長尺部材の高さ方向の上部または下部が保護される。
【0101】
(E)上記記録装置は、前記高さ方向において、前記フィルム部材と前記収容部との間に配置されるノイズ除去部材を備えてもよい。
この構成によれば、ノイズを除去することができる。例えば、ノイズ源が収容部内にある場合、収容部外へのノイズの影響を抑制できる。一方、ノイズ源が収容部外にある場合、収容部内の長尺部材の1種である信号線へのノイズの影響を抑制できる。
【0102】
(F)上記記録装置は、前記収容部の下方に配置される第1部材と、前記高さ方向において、前記収容部と前記第1部材との間に配置される板部材とを備えてもよい。
この構成によれば、収容部の重量が重くなり、垂れ量が増えると、収容部が下方に位置する第1部材と接触する可能性が高くなる。板部材によって、収容部の垂れ下がり量が規制されるので、垂れ下がった収容部が第1部材と接触することを回避できる。よって、収容部及び第1部材にダメージが発生することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0103】
11…記録装置、12…支持台、12F…フレーム、13…筐体部、20…支持部、21…第1の支持部、22…第2の支持部、23…第3の支持部、24…吸引機構、25…搬送装置、30…給送部、31…ロール体、32…ロール体支持部、33…保持部、34…給送モーター、35…回転検出器、36…リニアエンコーダー、37…リニアスケール、38…センサー、40…搬送部、41…ローラー対、42…駆動ローラー、43…従動ローラー、45…第1部材、46…支持フレーム、47…板部材、50…記録ユニット、50A…流体供給路部、51…レール部材、52…キャリッジ、53…記録ヘッド、54…係合部、60…収容部、61…固定端、61A…固定機構、62…移動端、63…可変部、64…第1直状部、65…第2直状部、66…湾曲部、67…側部、71…リンク部材、72…連結ピン、73…係止部、74…カバー部材、75…被係止部、76…フィルム、77…区画板の一例としての第1区画板、77A…係止凹部、77B…挿通孔、78…区画板の一例としての第2区画板、79…長尺部材、80…クランプ部材、81…保持部材、82…押圧板、83…ボルト、84…弾性部材、84A…挿通孔、84B…挿通孔、84C…挿通孔、84D…挿通孔、84S…スリット、85…カバー部材、90…液体供給部、91…ホルダー、92…液体収容体、93…チューブ(インク供給用のチューブ)、94…チューブ(エア供給用のチューブ)、95…電力線、96…光ケーブル、100…制御部、110…フィルム部材、111…フィルム層、112…ノイズ除去部材、113…表面層、M…媒体、D1…搬送方向、X…主走査方向、Y…搬送方向、Z…鉛直方向、LD…長手方向、WD…幅方向、HD…高さ方向、P1…クランプ部材のピッチ、P2…区画板のピッチ、P3…リンク部材のピッチ、Δ…ずれ量、δ…ずれ量。
図1
図2
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図8
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図10
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