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特開2024-515超高強度コンクリート杭製造方法及び加振機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000515
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】超高強度コンクリート杭製造方法及び加振機
(51)【国際特許分類】
   B28B 21/34 20060101AFI20231225BHJP
   B28B 1/087 20060101ALI20231225BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20231225BHJP
   B06B 1/12 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
B28B21/34
B28B1/087
C04B28/02
B06B1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094534
(22)【出願日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2022098641
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】野村 靜夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 聡
【テーマコード(参考)】
4G112
5D107
【Fターム(参考)】
4G112PC12
4G112PE02
5D107DD06
(57)【要約】
【課題】遠心力成形で超高強度コンクリート杭を製造可能な超高強度コンクリート杭製造方法を提供する。
【解決手段】
コンクリート杭の製造方法として、パイル型枠1の外周に特定間隔でキャス2を設け、キャス2の下部をランナーホイール3で支持し、杭成形装置10キャス2と回動するランナーホイール3の摩擦伝導で型枠を回転させる遠心力成形を行う。この型枠には、低スランプの高強度コンクリート4を充填する。そして、キャス2の下部から加振機5により振動を付加して、遠心力成形する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠の外周に特定間隔でキャスを設け、該キャスの下部をランナーホイールで支持し、前記キャスと回動する前記ランナーホイールの摩擦伝導で前記型枠を回転させる遠心力成形によるコンクリート杭の製造方法であって、
低スランプの高強度コンクリートを充填し、
前記キャスの下部から加振機により振動を付加して、遠心力成形する
ことを特徴とする超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項2】
前記加振機は、
複数の突起が形成され該複数の突起が前記キャスの下部から前記キャスの回転に応じて押圧を加えつつ回動する歯車状部と、該歯車状部を軸支して前記押圧を付加する押圧部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項3】
前記振動は、遠心加速度で10G以下の回転の際にのみ付加される
ことを特徴とする請求項1に記載の超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項4】
前記振動により、遠心力成形時に発生する遠心加速度の100~2000倍の重力加速度を付加する
ことを特徴とする請求項1に記載の超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項5】
前記高強度コンクリートは、スランプが0~4cmの範囲である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項6】
前記高強度コンクリートに用いられるセメントは、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントであり、
水結合材比が10~18%である
ことを特徴とする請求項5に記載の超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項7】
前記セメントが普通セメントの場合、セメント500~650kg/m3、混和材100~280kg/m3、水100~140kg/m3、細骨材500~600kg/m3、粗骨材900~1200kg/m3、及び減水剤10~20kg/m3の配合とし、水結合材比を10~18%とし、
前記セメントが早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントの場合、1kg/m3の単位量あたり、セメント500~650kg/m3、混和材100~280kg/m3、水100~140kg/m3、細骨材500~600kg/m3、粗骨材900~1200kg/m3、及び減水剤10~20kg/m3の配合とし、水結合材比を10~13%とする
ことを特徴とする請求項6に記載の超高強度コンクリート杭製造方法。
【請求項8】
型枠の外周に特定間隔でキャスを設け、該キャスの下部をランナーホイールで支持し、前記キャスと回動する前記ランナーホイールの摩擦伝導で前記型枠を回転させる遠心力成形によるコンクリート杭の製造に用いる加振機であって、
複数の突起が形成され該複数の突起が前記キャスの下部から前記キャスの回転に応じて押圧を加えつつ回動する歯車状部と、
前記歯車状部を軸支して前記押圧を付加する押圧部とを備える
ことを特徴とする加振機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高強度コンクリートを用いた超高強度コンクリート杭製造方法、及び加振機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、細長い円筒状のプレキャストコンクリート構造物である「既製杭」等と呼ばれるコンクリート杭が、建造物の基礎に埋め込む基礎工事等に用いられている。
【0003】
このコンクリート杭は、通常、遠心力成形法によって製造される。
遠心力成形法は、コンクリートの練混ぜに必要な余剰となる水を遠心力によって脱水することで、見かけの水セメント比(以下W/C)を小さくして締め固める製造法である。遠心力成形法は、外面の型枠側が非常に緻密で高耐久となること、内型枠が不要となること等のメリットがある。
【0004】
一方、近年、コンクリート用混和剤の発達により、練混ぜに必要な水量を極力少なくし、遠心力によって脱水することができないほど少ない水量での高強度コンクリートの製造が可能になった。
【0005】
ここで、特許文献1を参照すると、型枠の外周に適当間隔で多数のキャスティング(キャス)を取り付け、このキャスの下部を金属製のランナーホイールで支持し、キャスと回転するランナーホイールの摩擦伝導で型枠に回転を与える遠心力成型によるコンクリート管の製造方法において、上記型枠にランナーホイールによる回転の他に、その上方から振動機による振動を与え、ゼロスランプの超硬練りコンクリートを遠心力と振動との併用によって成型するコンクリート管の製造方法が記載されている。
この製造方法によれば、ゼロスランプの超硬練りの高強度コンクリートの使用が可能で、しかも安全性の面からも優れたコンクリート管を製造可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-254831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のコンクリート管製造方法は、比較的径が大きなヒューム管用の技術であった。この技術は、細長い円筒状のコンクリート杭には、上からでは十分な振動がかけられないため、適用できなかった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題を解消し、高強度コンクリートを用いた超高強度コンクリート杭製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、型枠の外周に特定間隔でキャスを取り付け、該キャスの下部をランナーホイールで支持し、前記キャスと回動する前記ランナーホイールの摩擦伝導で前記型枠を回転させる遠心力成形によるコンクリート杭の製造方法であって、低スランプの高強度コンクリートを充填し、前記キャスの下部から加振機により振動を付加して、遠心力成形することを特徴とする。
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、前記加振機は、複数の突起が形成され該複数の突起が前記キャスの下部から前記キャスの回転に応じて押圧を加えつつ回動する歯車状部と、該歯車状部を軸支して前記押圧を付加する押圧部とを備えることを特徴とする。
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、前記振動は、遠心加速度で10G以下の回転の際にのみ付加されることを特徴とする。
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、前記振動により、遠心力成形時に発生する遠心加速度の100~2000倍の重力加速度を付加することを特徴とする。
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、前記高強度コンクリートは、スランプが0~4cmの範囲であることを特徴とする。
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、前記高強度コンクリートに用いられるセメントは、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントであり、水結合材比が10~18%であることを特徴とする。
本発明の超高強度コンクリート杭製造方法は、前記セメントが普通セメントの場合、セメント500~650kg/m3、混和材100~280kg/m3、水100~140kg/m3、細骨材500~600kg/m3、粗骨材900~1200kg/m3、及び減水剤10~20kg/m3の配合とし、水結合材比を10~18%とし、前記セメントが早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントの場合、1kg/m3の単位量あたり、セメント500~650kg/m3、混和材100~280kg/m3、水100~140kg/m3、細骨材500~600kg/m3、粗骨材900~1200kg/m3、及び減水剤10~20kg/m3の配合とし、水結合材比を10~13%とすることを特徴とする。
本発明の加振機は、型枠の外周に特定間隔でキャスを取り付け、該キャスの下部をランナーホイールで支持し、前記キャスと回動する前記ランナーホイールの摩擦伝導で前記型枠を回転させる遠心力成形によるコンクリート杭の製造に用いる加振機であって、複数の突起が形成され該複数の突起が前記キャスの下部から前記キャスの回転に応じて押圧を加えつつ回動する歯車状部と、前記歯車状部を軸支して前記押圧を付加する押圧部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低スランプの高強度コンクリートを充填し、キャスの下部から加振機により振動を付加しつつ遠心力成形することで、高強度コンクリートを用いた超高強度コンクリート杭製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の杭成形装置の実施形態に係る側面図である。
図2】本発明の杭成形装置の実施形態に係る正面図である。
図3】本発明の実施例1に係る高強度コンクリート杭について振動の有無による変化を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態>
(杭成形装置10の構成)
まず、図1図2により、本発明の杭成形装置10の実施形態について、基本的な形状及び構造の構成例について説明する。図1は概略側面図、図2は概略正面図である。これら図1図2において、主要な構成以外は省略している。
【0013】
本実施形態に係る杭成形装置10は、高強度コンクリート4を用いた超高強度コンクリートを用いたパイル又はポール(以下、単に「コンクリート杭」という。)を製造する超高強度コンクリート杭製造装置の一例である。
以下、本実施形態においては、地面に対する重力方向を「下」、その反対方向を「上」と称する。
また、パイル型枠1の内面の円周の各点から軸芯に対して最短距離で到達する鉛直方向の距離、すなわち円周の半径方向の距離を、杭成形装置10の内部の各構成における「高さ」と称する。一方、円筒の軸芯に沿った方向(軸芯方向)の距離を「軸芯方向の長さ」と称する。
【0014】
パイル型枠1は、本実施形態に係る超高強度コンクリート杭用の型枠である。本実施形態において、パイル型枠1は、鋼製の上型枠と下型枠とで構成され、内部に図示しないコンクリート杭用の鉄筋籠が配置されている。
【0015】
キャス2は、パイル型枠1の円周面から円周状に突出し、パイル型枠1を回転させるための鋼製のタイヤ(キャスティング又はホイール。以下、単に「キャス」という。)である。キャス2は、パイル型枠1の端部から軸芯方向に50cm~1mの箇所から、数十cm~数メートル程度の特定間隔で複数個設けられる。
【0016】
ランナーホイール3は、キャス2の下部と圧接して支持し、パイル型枠1を回転させる鋼製のタイヤ等である。
図1に示すように、軸Cがモータ等の駆動部Mで駆動されることで、ランナーホイール3が特定方向に回転する。このランナーホイール3の回転によって、摩擦伝導がキャス2に伝えられることで、連結されたパイル型枠1が回動される。
ここで、図2に示すように、本実施形態においては、このランナーホイール3がキャス2の下部に、左右一対、備えられてキャス2を支持する。
【0017】
高強度コンクリート4は、パイル型枠1の内面に注入され、遠心力成形される。
本実施形態において、高強度コンクリート4は、パイル型枠1内に、ポンプ投入方法又は盛込み方法で、図示しない投入機により投入される。
高強度コンクリート4は、低スランプのコンクリートであってもよい。この高強度コンクリート4の組成等については後述する。
【0018】
加振機5は、遠心力成形する際にキャス2の下部から加振機5により振動を付加する装置である。
図1に示すように、細長いパイル型枠1を支持するために、複数の加振機5が備えられている。図1では、軸芯方向に備えられたキャス2の一つ置きに加振機5が備えられた例を示すものの、ランナーホイール全て、又は数か所のみであってもよい。
さらに、図2に示すように、本実施形態において、加振機5は、同じキャス2を支持するランナーホイール3の中間位置に設置されていてもよい。なお、図1では、この加振機5を見やすくするために、加振機5が接触するキャス2の手前側にあるランナーホイール3の記載を省略している。
【0019】
加振機5は、歯車状部5a及び押圧部5bを備える。
【0020】
歯車状部5aは、複数の突起が歯車状に形成され回動する部材である。歯車状部5aは、キャス2の下部から、特定の押圧を加えつつキャス2に当接される。このため、歯車状部5aは、キャス2が回転すると、この回転に応じた摩擦により、押圧をキャス2に加えつつ回動する。これにより、歯車状部5aの突起の有無に応じて、当接面に振動が加えられる。
【0021】
押圧部5bは、歯車状部5aを軸支して押圧を付加する部材である。本実施形態において、押圧部5bは、油圧又は空気圧によって上下するシリンダー部材を備える。このシリンダー部材のストロークにより押圧が発生する。この押圧は、パイル型枠1自体を押し上げる程の力ではなく、キャス2に歯車状部5aが当接して回動する程度であってもよい。
この押圧の詳細、及び押圧による振動の重力加速度の算出方法については、後述する。
【0022】
(高強度コンクリート4の構成)
次に、本発明の高強度コンクリート4の実施の形態について説明する。
本実施形態に係る高強度コンクリート4は、例えば、JIS A 5308により規定されている高強度コンクリートであってもよい。
本実施形態において、高強度コンクリート4は、低スランプの高強度コンクリート材料を使用可能である。
【0023】
本実施形態に係る高強度コンクリート4は、粘性が著しく高く、水飴のように硬いコンクリートになる手前の状態を用いる。
具体的には、本実施形態に係る高強度コンクリート4は、高い粘性を発揮する手前の状態である、すなわちスランプが0~4cmの範囲(以下、「低スランプコンクリート」ともいう。)であることを特徴とする。高強度コンクリート4は、低スランプコンクリートであれば、まだ固まらない状態のコンクリートは骨材の周りにモルタルが付着している性状のため、容易に鉄筋籠を通り抜けて下型枠に投入することが可能である。また、高強度コンクリート4は、山盛りに盛り込むことも可能で、パイル型枠1の下型枠から溢れだすこともなくなる。
【0024】
次に、本実施形態に係る高強度コンクリート4に用いられるコンクリート材料の具体的な構成について説明する。
高強度コンクリート4は、水と、セメントと、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤と、膨張材等が配合される。
【0025】
このうち、本実施形態のコンクリート材料に用いる水は、特に制限されず、水道水であってもよい。本実施形態に係る水のpH等も任意である。
【0026】
本実施形態に係るセメントは、普通ポルトランドセメント(普通セメント)、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント、及びこれらの混合セメント等を用いることが可能である。このうち、普通ポルトランドセメントは、例えば、中庸熱、低熱、早強、超早強、耐硫酸塩等の性質を備える各種ポルトランドセメントであってもよい。また、普通ポルトランドセメントとして、例えば、JIS R 5210等で規定された、密度3.15g/cm3程度、比表面積3310cm2/g程度のものであってもよい。
【0027】
本実施形態に係る細骨材は、一般的な砕砂等の細骨材を使用可能である。この細骨材は、JIS A 5005 砕砂(硬質砂岩)に該当するもので、密度が2.62g/cm3程度であることが好適である。また、細骨材として、スラグ系骨材、例えば高炉の水砕スラグから製造した細骨材、電気炉酸化スラグ骨材等も用いることが可能である。
【0028】
本実施形態に係る粗骨材は、一般的な砂岩等の粗骨材を使用可能である。この粗骨材は、例えば、JIS A 5005 砕石2005(硬質砂岩)に該当するもので、密度が2.67g/cm3程度であることが好適である。
【0029】
本実施形態に係る高性能減水剤は、コンシステンシーに影響することなく単位水量を大幅に減少させる、又は単位水量に影響することなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤である。本実施形態の高性能減水剤は、例えば、JIS A 6204に該当するもので、例えば、ポリカルボン酸系の密度1.00g/cm3程度のものを用いることが好適である。また、本実施形態においては、高性能減水剤は、水の内割り置き換えで用いることが好適である。
【0030】
本実施形態に係る膨張材は、粉体状で水分の供給によって膨張し、乾燥収縮によるひび割れを低減する性質の物質である。本実施形態の膨張材の例として、石灰系膨張材、エトリンガイト系(カルシウムサルフォアルミネート系)膨張材、エトリンガイト-生石灰複合系膨張材等が挙げられる。また、膨張材は、例えば、日本工業規格JIS A 6202等で規定された品質に適合するものであることが好適である。
【0031】
さらに、上述の膨張材の他に、高炉スラグ微粉末、フライアッシュシリカフューム、防水材、粉砕石材、無機又は有機繊維等の混和材を用いることが可能である。本実施形態においては、特に、高炉スラグ微粉末8000、10000、20000ブレーンや、シリカフューム等を適宜ブレンドすることが可能である。このうち、高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206準拠のものを用いることが可能である。シリカフュームは、JIS A 6207準拠のものを用いることが可能である。また、このブレンドの比率は、圧縮強度が高まるような比率を、適宜、当業者が調整可能である。
【0032】
次に、本実施形態に係るコンクリート材料の具体的配合について説明する。
本実施形態においては、水と、セメント、及び混和材を含む重量比、すなわち水/(セメント+混和材)の値を一定とし、例えば、10~30%(重量%)とすることが好適である。この重量比が30%未満であると、セメントの水和に必要な水の絶対量が不足し、遠心力成形するのに不適である。一方、この重量比が30%以上であると、遠心力成形には適するものの、強度発現が不足する。更に、この重量比が40%より大きいと、材料分離が起こりやすくなる。また、細骨材率(重量%)についても、30~50%とすることが好適である。
この上で、普通ボルトランドセメント500~1000kg/m3、混和材0~80kg/m3、細骨材700~900kg/m3、粗骨材800~1200kg/m3、高性能減水剤0.5~4重量%として調整したコンクリートが使用できる。
【0033】
より具体的には、後述する実施例2で示すように、130N/mm2を超える圧縮強度では、普通セメントを用いた場合、水結合材比10~18%にて、高強度の混和材を併用することで強度が得られる。
具体的には、セメントとして普通セメントを用いる場合、セメント500~650kg/m3、混和材100~280kg/m3、水100~140kg/m3、細骨材500~600kg/m3、粗骨材900~1200kg/m3、及び減水剤10~20kg/m3の配合とし、水結合材比を10~18%とすることが好適である。
または、セメントとして早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントを用いる場合、1kg/m3の単位量あたり、セメント500~650kg/m3、混和材100~280kg/m3、水100~140kg/m3、細骨材500~600kg/m3、粗骨材900~1200kg/m3、及び減水剤10~20kg/m3の配合とし、水結合材比を10~13%とすることが好適である。
【0034】
なお、本実施形態に係るコンクリート材料の空気量は、AE(Air Entraining)剤等の空気量調整剤により調整してもよい。具体的には、遠心力成形では、遠心力で空気が全て抜けてしまうものの、例えば、フレッシュ時の流動性を維持するためにAE剤を意図的に入れてもよい。この場合でも、遠心力成形後に空気は全て抜けるので、空気による強度低下は生じない。
このAE剤の例としては、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系、及び両性系の各種界面活性剤が挙げられる。また、この陰イオン系の界面活性剤の例として、樹脂系、アルキルベンゼンスルホン酸系、高級アルコールエステル系等の界面活性剤が挙げられる。なお、AE剤と減水剤との両方の性質をもつ、AE減水剤を用いることも可能である。
【0035】
また、本実施形態に係るコンクリート材料においては、他にも、流動化剤、遅延剤、防水混和剤、防湿混和剤、発泡剤、増粘剤、防凍剤、着色剤、ワーカビリティー増進剤、防しょう剤、消泡剤、凝結調整剤、収縮低減剤、セメント急硬材、高分子エマルション、繊維等を適宜配合することが可能である。さらに、ゼオライト、シリカ質微粉末、炭酸カルシウム、ベントナイト等の粘土鉱物、石膏、ケイ酸カルシウム等、コンクリート材料に一般的な物質を、適宜配合してもよい。これらの配合により、上述の高性能コンクリートとすることが可能となってもよい。
【0036】
また、高強度コンクリート4は、繊維補強コンクリート、引張抵抗性のコンクリート、及び膨張コンクリート等を用いてもよい。このうち、繊維補強コンクリートの繊維は、ビニロン短繊維、ポリプロピレン短繊維、アクリル繊維、炭素繊維、無機繊維等を用いることも可能である。無機繊維は、金属繊維であってもよい。
【0037】
(超高強度コンクリート杭の製造方法)
次に、本実施形態に係る杭成形装置10による超高強度コンクリート杭の製造方法の詳細について説明する。
本実施形態に係る製造方法では、まず、パイル型枠1の下型枠に、溶接された鉄筋籠等の構造物を載置して、上述の高強度コンクリート4を投入する。
この投入の際、ポンプ投入方法と盛込み投入方法のいずれかの投入方法を用いることが可能である。このうち、ポンプ投入方法では、高強度コンクリート4は、細長い型枠の中に長い筒状の管を差し込み、ポンプ圧送して投入される。なお、ヒューム管とは異なり、本実施形態に係るコンクリート杭では、ポンプ圧送による投入時に、パイル型枠1を回転させない。
一方、盛込み投入方法では、高強度コンクリート4は、下型枠の上に投入され、所定量投入された後に、上型枠にて蓋をされる。
【0038】
これらの投入の際、高強度コンクリート4は、上述のように、高い粘性を発揮する手前、すなわちスランプが0~4cmの範囲の状態で投入される。これにより、盛り込み方法であっても、鉄筋籠を通り抜けて、下型枠に投入することが可能である。その際、上述のように、高強度コンクリート4を山盛りに盛り込むことも可能である。
【0039】
この上で、高強度コンクリート4を、遠心力成形による締め固める。本実施形態においては、高強度コンクリート4を投入した後のパイル型枠1を、上述のキャス2と回動するランナーホイール3の摩擦伝導で高速回転させる。これにより、遠心力を利用して最終的に20~40G程度の加速度で締固め、コンクリート材料を自立させる、又は余剰水をスラッジ水として排出するための遠心力成形を行う。
ここで、本実施形態に係る高強度コンクリート4は、単位水量が少なくて余剰水がないため、スラッジ水を排出しなくてもよい。具体的には、高強度コンクリート4は、W/Cが小さいので、遠心力成形でスラッジ水を排出する場合はドロドロとなり、内面につらら状態となることがある。このような状態となることを避けるため、本実施形態においては、基本的には、スラッジ水を排出しないように遠心力成形することが好適である。
【0040】
本実施形態に係る遠心力成形では、数段階に加速度を大きくして締固める。この段階としては、例えば、低速回転、中速回転、高速回転として、それぞれ5G以下、15G程度、30~35Gを、適切な割合で締固めする。この「G」は、遠心加速度(重力加速度)を示す。
【0041】
具体的には、低速回転(5G以下)では、パイル型枠1内にコンクリートを十分に充填させる。本実施形態に係る低速回転では、約3G~5Gの範囲であることが適切である。この際に、加振機5により、キャス2に直接、振動が付加される。これにより、低スランプコンクリートであっても、遠心力成形により、パイル型枠1内に十分、均一に充填することが可能となる。
【0042】
低速回転時に、加振機5の歯車状部5aによりキャス2に加えられる振動の振幅(全振幅)は、例えば、0.5mm以下に設定されることが好適である。
本実施形態において、この振幅は、加振機5の押圧部5bのシリンダー部材に設定された押圧により制御される。この押圧が大きすぎると、遠心力によってパイル型枠1がランナーホイール3から脱落する可能性がある。また、押圧が小さすぎる場合には、型枠の回転に伴う振動が発生しないか小さくなりすぎる。適切な押圧により、歯車状部5aの回動により適切な振動がキャス2に付加可能となる。
たとえば、Φ1200(最大径)×15m(最長長さ)のコンクリート杭を製造する場合、パイル型枠1と高強度コンクリート4とで約30トンとなる。パイル型枠1にキャス2を7つ備える場合、一つのキャス2当たり荷重は30/7=4.5トンとなる。このため、このような重量に応じた押圧を油圧又は空気圧で加える。
【0043】
ここで、全振幅(mm)、周波数(Hz)が与えられた際、振動の加速度(G)は、下記の式(1)で算出可能である:

加速度(G)={2π×周波数(Hz)}2×{全振幅(mm)/2}×10-3×{1/9.8} …… 式(1)
【0044】
このうち、加速度の単位をm/s2に変換したい場合、加速度(G)の値を9.8倍すればよい。
【0045】
一方、遠心加速度(m/s2)は、下記の式(2)で算出可能である:

遠心加速度(m/s2)=4π22l/3600 …… 式(2)

ここで、Nは回転速度(rpm)、lは中心から加速度変換器の重心までの距離(m)である。
【0046】
この式(2)を簡略化すると、下記の式(3)となる:

遠心加速度(G)=1.118×R×N2×10-6 …… 式(3)

ここで、Rは回転半径(mm)、Nは回転数(rpm)である。
【0047】
この式(1)、(3)により、遠心加速度(G)を算出可能である。
具体的には、キャス2の外径、及び歯車状部5aの外径並びに突起数から、キャス2が一回転する際の突起の接触数から振動の周波数(Hz)を算出する。この上で、低速回転時のキャス2の回転数(rpm)と、全振幅(mm)から遠心加速度を算出し、これを振動による重力加速度(G)とすることが可能となる。
【0048】
本実施形態においては、この加振機5による振動により、遠心力成形時に発生する遠心加速度(G)(以下、「遠心G」と記載する。)の約100~2000倍の振動による重力加速度(G)(以下、「振動G」と記載する。)を付加することが可能である。すなわち、低速回転時の遠心Gが5Gの場合、振動Gとして500~10000Gの重力加速度を付加することが好適である。
ここで、例えば、外径1200mmのコンクリート杭では、5Gを得るための型枠の回転数は100rpm程度である。これは、後述する実施例の遠心供試体の外径200mmの6倍となるため、振動の周波数もこれに応じて増加する。振動Gは、振動の周波数の二乗に比例するため、キャス2の直径(外径)に応じた振動Gを加えることが好適である。
【0049】
また、本実施形態においては、複数の加振機5において、歯車状部5aの突起の位置を合わせて、振動を同期させて付加してもよい。
このように、低速回転で振動を付加することで、低スランプの高強度コンクリート4を確実に充填しつつ、中速回転、高速回転で、コンクリート材料を自立させる又は余剰水をスラッジ水として排水することができる。結果として、パイル型枠1の内側に、緻密に締固められた高強度コンクリート4を遠心力成形することが可能となる。
【0050】
低速回転後に、パイル型枠1を中速回転(15G程度)させ、パイル型枠1内に充填されたコンクリートの空隙を消滅させる。
最後に、パイル型枠1を高速回転(30~35G)させ、コンクリート材料を自立させる又は余剰水をスラッジ水として廃水させる。
【0051】
なお、本実施形態においては、振動の付加は10G以下の回転の際のみで、主に低速回転で振動を付加する。一方、中速回転で10G以上になった場合、及び高速回転では振動は付加しない。これは、中速回転で15G以上となると、パイル型枠1がランナーホイール3から脱落する可能性があるからである。
さらに、振動をかける前に高速回転を与えた場合、骨材が遠心Gにより噛み合うため、その後、低速回転で振動をかけても、高強度コンクリート4が十分に充填されることがなくなる。これは、遠心力は、骨材等の材料を回転に対して鉛直方向に押圧するだけで、材料を横方向に広げないためである。一方、振動は、材料を横方向に広げようとする。このため、低速回転時に振動をかけることが好適である。
【0052】
さらに、本実施形態のコンクリートは、成形後に蒸気養生されてもよい。この場合、対象とする製品や配合条件などによって、前置時間、上昇温度(昇温)、最高温度、保持時間、除冷方法等の蒸気養生条件を調整することが好適である。
【0053】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来から、コンクリート杭は、遠心力成形法によって製造されていた。
【0054】
一方、近年、コンクリート用混和剤の発達により、高強度コンクリートの製造が可能となっている。高強度コンクリートは、粘性が著しく大きくなり、まだ固まらないコンクリートで通常5~10cmのスランプでは、スコップ等を押し込んでも、なかなか入らないほど水飴のように硬いコンクリートになり、鉄筋籠の隙間を通過して打設することが困難であった。
それに対し、高い粘性を発揮する手前の状態で、すなわちスランプが0~4cmの範囲であれば、投入は可能になる。しかし、このようなコンクリートは、そのままでは、いくら遠心力成形しても型枠内に充填されず、おこしのような状態となり、高強度コンクリート杭として成形できなかった。
【0055】
ここで、従来から、遠心力成形で型枠を回転させる際に、型枠とランナーホイールとの間に、砂利や砂を噛ませて振動させ、コンクリートを型枠内に均一に充填させる方法が当業者に知られていた。
また、従来、特許文献1に記載されているように、ヒューム管の型枠の上から振動機を押し当てて振動を加える方法も知られていた。
【0056】
しかし、これらの方法は、全て、ヒューム管を製造する上での振動付加方法であり、コンクリート杭に適用することはできなかった。これは、コンクリート杭は細長い円筒状であり、これを製造するためのパイル型枠には、複数のキャスが形成されているためである。
すなわち、砂利や砂を噛ませて振動させる場合には、複数のキャスとランナーホイールとの間に、同時に砂利や砂を人為的に投入する必要があるため、非常に危険であった。さらに、ランナーホイールが損傷する可能性もあった。また、上から振動機を押し当てる場合、細長いパイル型枠では、十分な振動を与えることができなかった。
【0057】
これに対して、(1)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法では、パイル型枠1の外周に特定間隔でキャス2を設け、キャス2の下部をランナーホイール3で支持し、キャス2と回動するランナーホイール3の摩擦伝導でパイル型枠1を回転させる遠心力成形によるコンクリート杭の製造方法であって、低スランプの高強度コンクリート4を充填し、キャス2の下部から加振機5により振動を付加して、遠心力成形することを特徴とする。
【0058】
このように構成することで、低スランプの高強度コンクリート4を振動により緻密に充填し、品質の高い超高強度コンクリート杭を製造可能となる。
加えて、キャス2に直接、振動を作用させることで、砂利や砂を噛ませる必要もなくなり、ランナーホイール3の損傷を防ぐこともできる。
【0059】
また、(2)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法において、加振機5は、複数の突起が形成され、この複数の突起がキャス2の下部からキャス2の回転に応じて押圧を加えつつ回動する歯車状部5aと、歯車状部5aを軸支して押圧を付加する押圧部5bとを備える(1)に記載の超高強度コンクリート杭製造方法であることを特徴とする。
【0060】
このように構成し、備えられたランナーホイール3の中間位置に加振機5を設置し、キャス2に当接された歯車状部5aが回転して振動を付加することで、振動の回転数を容易に見積もることが可能となる。これにより、パイル型枠1に加わる振動Gを容易に算出することができ、確実に振動させ、高強度コンクリート4を緻密に充填することが可能となる。
【0061】
また、(3)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法では、振動は、遠心加速度で10G以下の回転の際にのみ付加される(1)又は(2)に記載の超高強度コンクリート杭製造方法であることを特徴とする。
【0062】
このように構成することで、中速回転(15G)以上では型枠が飛び出す危険性を抑えることができる。さらに、振動をかける前に高速回転を与えることで骨材が遠心Gにより噛み合い、その後に低速回転で振動をかけても骨材等の材料が広がらなくなる現象を防ぐことができる。
【0063】
また、(4)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法では、振動により、遠心Gの100~2000倍の振動Gを付加する(1)乃至(3)のいずれかに記載の超高強度コンクリート杭製造方法であることを特徴とする。
【0064】
このように構成することで、高強度コンクリート4のコンクリート材料を、遠心方向とは異なる方向に十分、広げることができ、高強度コンクリート4を緻密に充填可能となる。
【0065】
また、従来から、遠心力成形によるコンクリート円筒構造物の製造では、コンクリートの型枠への投入方法として、ポンプ投入方法と盛込み方法の二種類がある。
ポンプ投入において、高強度コンクリートのような粘性の高いものをポンプ圧送した場合、閉塞の恐れがあり圧送できなくなっていた。
また、盛込み投入方法では、通常5cm~10cmのスランプのコンクリートを用いるものの、高強度コンクリートでは粘性が高いため、鉄筋籠の隙間を通過して打設することが困難であった。
【0066】
一方、従来から、高強度コンクリートを扱う場合、通常のスランプ管理では無く、コンクリートの広がりを見るスランプフローの状態で扱われることも多い。このようなスランプフローのコンクリートは、自己充填性コンクリートや高流動コンクリート等とも呼ばれ、過度の振動をかけなくても、型枠内に自重で自己充填でき、分離も発生しない。
しかしながら、高強度コンクリートをスランプフローの状態で遠心力成形に使用すると、盛込み投入方法では、投入量が下型枠の内空容積の二割~三割多い量を投入する必要が生じる。よって、下型枠に入りきれずに溢れてしまうという問題が生じるため、スランプフローの状態では、超高強度コンクリート杭の遠心力成形には使用できなかった。
【0067】
これに対して、(5)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法では、高強度コンクリート4は、スランプが0~4cmの範囲である(1)乃至(4)のいずれかに記載の超高強度コンクリート杭製造方法であることを特徴とする。
【0068】
このように構成し、本実施形態に係る超高強度コンクリート杭用コンクリートは、高い粘性を発揮する手前の状態、スランプが0~4cmの範囲の低スランプコンクリートとする。このような、まだ固まらない状態の低スランプコンクリートは、骨材の周りにモルタルが付着している性状のため、盛込み方法でも、容易に鉄筋籠を通り抜けさせて下型枠に投入することが可能となる。
また、低スランプコンクリートは、盛込み方法で山盛りに盛り込むことも可能であり、下型枠から溢れだすこともなくなる。
【0069】
また、(6)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法では、高強度コンクリート4に用いられるセメントは、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントであり、水結合材比が10~18%である(1)乃至(5)のいずれかに記載の超高強度コンクリート杭製造方法であることを特徴とする。
【0070】
また、(7)本実施形態に係る超高強度コンクリート杭製造方法では、高強度コンクリート4は、セメントが普通セメントの場合、1kg/m3の単位量あたり、セメント500~650、混和材100~280、水100~140、細骨材500~600、粗骨材900~1200、及び減水剤10~20とし、水結合材比を10~18%とし、セメントが早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントの場合、1kg/m3の単位量あたり、セメント500~650、混和材100~280、水100~140、細骨材500~600、粗骨材900~1200、及び減水剤10~20とし、水結合材比を10~13%とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の超高強度コンクリート杭製造方法であることを特徴とする。
【0071】
このように構成することで、コンクリートパイルの強度の規格に合わせた超高強度コンクリート杭を製造することが可能となる。
ここで、コンクリートパイルには、「85N」、「105N」、及び「123N」の強度の規格が存在する。それらの圧縮強度の基準値は、それぞれ、85N/mm2、105Nが105N/mm2、123Nが123N/mm2である。また、規格上で「目標」とする圧縮強度は、85Nが95N/mm2、105Nが115N/mm2、123Nが130N/mm2程度である。本実施形態に係る杭成形装置10を用いることで、普通セメントを用いたものであっても105N規格の圧縮強度を満たし、後述する実施例2に示したように組成を更に調整することで、123N規格も満たすことができる。これにより、低コストで、高強度、高品位なコンクリート杭を製造することが可能となる。
さらに150N/mm2以上の高強度なコンクリート杭とするために、早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメント等を用いることも可能である。
【0072】
なお、上述の実施形態においては、加振機5に歯車状部5aを備える例について説明したものの、他の方式によりキャス2の下から振動を付加することも可能である。たとえば、加振機5の押圧部5bに、キャス2に当接する部材を滑らかな円筒形状の部材又は単なる突起を設けてもよい。この場合、シリンダー部材を、空気圧、油圧、又は電動で直接振動させて、キャス2を振動させるようにしてもよい。
このように構成することで、振動周波数をより細かく調整可能となる。
【0073】
また、上述の実施の形態の図1では、加振機5を三つ見えるように記載したものの、単独の加振機5を備えるようにしても、キャス2の数に合わせて多数の加振機5を備えるように構成してもよい。さらに、図1では、加振機5を一つおきに載置したような例について示したものの、キャス2の数だけ加振機5を備えるようにしてもよい。または、パイル型枠1の端部のキャス2のみ振動させる加振機5を備えてもよい。
また、上述の実施形態においては、複数の加振機5について、振動を同期させて付加する例について記載したものの、共振を抑えるために同期させないようにしてもよい。
【0074】
また、加振機5は、キャス2に振動を付加するのではなく、パイル型枠1に直接振動を付加してもよい。
この場合、キャス2とは異なる円筒状の構造をパイル型枠1に形成してもよい。このように構成された場合、歯車状部5aではなく、キャス2の円筒状の構造に歯車状の突起を形成させて、パイル型枠1を振動させてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、低速回転時にのみ振動を加えるように記載したものの、中速回転時に、低速回転時よりも振動Gが小さな振動を加えてもよい。
【実施例0076】
次に図面に基づき本発明を実施例によりさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
【0077】
遠心力締固めコンクリートの圧縮強度試験方法であるJIS A 1136に基づいて、外径200mm、高さ300mm、内径120mmの円筒形の遠心供試体を作成した。
【0078】
この時のパイル型枠1のキャス2の外径は330mmで、振動機の歯車状部5aの外径は80mmであった。この歯車状部5aの突起(歯)の数は、18枚であり、キャス2が一回転すると、突起が74回、接触する。すなわち、型枠一回転当たりの振動周波数は74となる。
本実施例におけるこの条件を、下記の表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
このうち、歯車状部5aの回転数は、キャス2一回転当たりの歯車状部5aの回転数を示す。
また、下記の表2に、この遠心供試体(Φ20×30cm)の遠心G、キャス2(型枠)の回転数(rpm)、振動の周波数(Hz)、全振幅(mm)、及び振動Gを計算した例を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
ここで、本実施例において、低速回転(5G)の時のキャス2の回転数は236rpmで、その際の周波数は17523(Hz)となり、振幅を0.001mmと仮定した場合に、振動Gは618となる。すなわち、遠心力形成時に発生する遠心Gの120倍の振動Gが発生し、コンクリートを押し広げる力が作用した。
一方、比較例として、遠心Gは同様で、振動を付加しない状態の供試体も用いた。
【0083】
また、本実施例の遠心供試体の径が20mmなので、荷重は30kg程度となる。これに型枠の重量を含めると約50kgとなる。このため、シリンダー部材に空気圧で押圧を設定する場合、エアコンプレッサーの圧力を、0.1MPa~1MPaの範囲に設定すると、型枠ごと押し上げて脱落させずに適切な振動Gを付加することができ、好適である。
【0084】
本実施例の高強度コンクリート4の配合は、水セメント比(W/C(%))は18%、全骨材の容積に対する細骨材の占める割合である細骨材率(S/a(%))は45%、セメント量が600kgであった。スランプは0cmの低スランプで、型枠内に規定量詰め込み、遠心製管機上で遠心力成形を実施した。
遠心力成形方法は、振動を加えてもよい低速回転を30秒~2分とした。その後、中速回転(15G)、高速回転(35G)とした。
【0085】
図3に、遠心力成形後の高強度コンクリート4の状態を示す。図3(a)は振動を付加した供試体(本実施例)の外面の状態を示す。図3(b)は振動を付加しない供試体(比較例)の外面の状態を示す。
振動を付加すると材料が型枠内部に充填され、内面も綺麗に仕上がった。一方、振動を付加しない場合、高強度コンクリート4材料のパイル型枠1内への充填は見られず、おこしのような状態となった。
【実施例0086】
次に、実施例2として、各組成において、セメントや他の材料を調整して、より強度発現及び内面性状を高めた。
セメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、及び低熱ポルトランドセメント(いずれも、JIS R 5210準拠、太平洋セメント社製)を用いた。
混和材には、高炉スラグ微粉末8000、10000、20000ブレーン、シリカフューム等をブレンドした。このうち、高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206準拠のもの(セラメント#8000、セラメント#10000、セラメント#20000。いずれも株式会社 デイ・シイ製)を用いた。シリカフュームは、JIS A 6207準拠のもの(巴工業株式会社の輸入販売、エジプト産)を用いた。
細骨材、粗骨材には、JIS A 5002準拠の硬質砂岩系骨材を使用した(コンクリート用砕砂、砕石2005。両神工業株式会社製)。
減水剤には、JIS A 6204準拠のポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用いた(レオビルド8000SS、ポゾリス社製)
この結果を、下記の表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
各試験例において、セメント種類の「普通」は普通セメント、「早強」は早強セメント、「中庸熱」は中庸熱セメント、「低熱」は低熱セメントを、それぞれ示す。
内面性状は、「〇」は良好、「△」は平滑性が無く波打つ、「×」は平滑性がなく真円にならない状態を示す。
【0089】
結果として、本実施例のコンクリートのセメントとして、普通セメントを用いた場合、7日後の圧縮強度が150N/mm2を超える組成のものは、遠心成形後の内面性状が波打っていた。一方、普通セメントを用いても、圧縮強度が130N/mm2までとなる組成のコンクリートでは、内面性状は良好であった。また、早強セメント、中庸熱セメントや低熱セメントでは、150N/mm2を超える組成のものであっても、いずれの組成でも、内面性状は良好であった。
すなわち、圧縮強度が130N/mm2でも、用途によっては十分な強度となるため、これ未満の強度でよければ、普通セメント、早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントを用いることが可能である。一方、圧縮強度として130N/mm2を超える必用があるコンクリートでは、早強セメント、中庸熱セメント、又は低熱セメントを用いることが好適である。
【0090】
また、本実施例のコンクリートの水結合材比は、10~18%であることが好適であった。
具体的には、普通セメントを用いた、圧縮強度が130N/mm2までとなる普通セメントを用いたコンクリートでは、水結合材比は18%までとすることが好適であった。具体的には、試験例11で示すように、単位水量が多くなり、水結合材比が18%より大きくなると、コンクリートは扱いやすくなるものの、内面性状は悪く、強度も低くなる傾向にあった。また、水結合材比は、10%未満であると、そもそもコンクリートの混練ができないために材料が分離し、内面性状も、強度も十分でなくなる。
また、早強セメント、中庸熱セメントや低熱セメントを用いて、圧縮強度が150N/mm2を超える組成のものは、水結合材比を18%より小さくし、13%程度とすることが好適であった。
【0091】
より具体的に説明するとまた、圧縮強度が130N/mm2までとなる普通セメントを用いたコンクリートでは、1kg/m3の単位量あたり、普通セメント500~650、混和材100~280、水100~140、細骨材500~600、粗骨材900~1200、及び減水剤10~20とし、水結合材比を10~18%とすることが好適である。
また、圧縮強度が150N/mm2を超えるコンクリートでは、1kg/m3の単位量あたり、早強セメント、中庸熱セメント、若しくは低熱セメントを500~650、混和材100~280、水100~140、細骨材500~600、粗骨材900~1200、及び減水剤10~20とし、水結合材比を10~13%とすることが好適である。
【0092】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1 パイル型枠
2 キャス
3 ランナーホイール
4 高強度コンクリート
5 加振機
5a 歯車状部
5b 押圧部
10 杭成形装置
C 軸
M 駆動部
図1
図2
図3