(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051508
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】加硫ゴム用離型剤及びそれを用いた加硫ゴム成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/60 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B29C33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157716
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗石 徹也
(72)【発明者】
【氏名】中島 順市
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202CA27
4F202CA30
4F202CB01
4F202CB02
4F202CM41
(57)【要約】
【課題】離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮する加硫ゴム用離型剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、A
1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n1は、A
1Oの平均付加モル数を示し、35~200の数であり、R
1は、炭素数3~22のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
2は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を示す。]
で表される脂肪酸エステルを含有することを特徴とする加硫ゴム用離型剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、A
1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n1は、A
1Oの平均付加モル数を示し、35~200の数であり、R
1は、炭素数3~22のアルキル基又はアルケニル基を示し、R
2は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を示す。]
で表される脂肪酸エステルを含有することを特徴とする加硫ゴム用離型剤。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】
[式(2)中、A
2O及びA
3Oは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n2及びn3は、それぞれA
2O及びA
3Oの平均付加モル数を示し、それぞれ独立に、1~40の数であり、a1及びa2は、それぞれ独立に、1又は2であり、b1及びb2は、それぞれ独立に、0又は1であり、a1+a2+b1+b2=4であり、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示し、R
5は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(21):
【化3】
[式(21)中、A
4Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n4は、A
4Oの平均付加モル数を示し、1~40の数である。]
で表される基を示し、c1は、0~2の整数である。]
で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項3】
下記一般式(3):
【化4】
[式(3)中、R
6は、炭素数8~22の炭化水素基を示し、R
7は、炭素数1~2のアルキレン基を示し、R
8は、水素原子又はメチル基を示し、X
1は、下記一般式(31)又は(32):
-COOM (31)
-SO
3M (32)
[式(31)及び(32)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。]
で表されるアニオン性基を示す。]
で表されるN-アシル化合物を更に含有することを特徴とする請求項2に記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項4】
前記脂肪酸エステルの含有量が、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して、3~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項5】
金型と未加硫ゴムとの接触面に請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の加硫ゴム用離型剤又はその希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する工程を含む、加硫ゴム成型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム用離型剤及びそれを用いた加硫ゴム成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムホース等のゴム製品は、自動車をはじめ、様々な機械の部品として広範に使用されている。ゴム製品の多くは、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の原料ゴムに硫黄や架橋剤を添加してゴム分子同士を架橋させる加硫を行い、該原料ゴムに伸縮性や弾性を付与した加硫ゴムを、押出成型や金型成型等で成型したものである。例えば、ゴムホースは、主に、所定の形状に成型されたマンドレルなどの金型に加硫ゴムを挿入して成型した後に引き抜く方法、又は、前記金型に未加硫の原料ゴム組成物を挿入して加硫・成型した後に引き抜く方法によって製造されている。
【0003】
このようなゴム製品の成型においては、成型後の加硫ゴム製品と金型とを離し易くするため、又は成型前の原料ゴム組成物を金型に挿入しやすくするために離型剤が用いられており、かかる加硫ゴム用の離型剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、脂肪酸石鹸、ジメチルシリコーン、変性シリコーンオイル等が知られている。
【0004】
例えば、特開平7-292236号公報(特許文献1)には、特定の構造を有するジアミンのアルキレンオキサイド付加物からなる加硫ゴム用離型剤が記載されている。また、特開2004-114472号公報(特許文献2)には、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基にエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とがランダム状に共重合した化合物を含有する加硫ゴム用離型剤が記載されている。さらに、特開2020-1311号公報(特許文献3)には、特定の構造を有するポリアミンアルキレンオキサイド付加物と、特定の構造を有するカルボン酸アミド化合物とを含有する加硫ゴム用離型剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-292236号公報
【特許文献2】特開2004-114472号公報
【特許文献3】特開2020-1311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の離型剤では、成型後の加硫ゴム製品の引き抜き作業を容易にする特性(離型性)、及び成型後の加硫ゴム製品の表面に付着している離型剤の除去が容易である特性(洗浄性)が、未だ十分ではないという問題を有していた。また、特許文献2及び特許文献3に記載の離型剤では、洗浄性は、離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲で良好な特性を示したが、離型性は、離型剤の有効成分の濃度が低下するにつれて、低下するという問題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮する加硫ゴム用離型剤及びそれを用いた加硫ゴム成型品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する脂肪酸エステルを含有し、好ましくは特定の構造を有するポリアミンアルキレンオキサイド付加物を更に含有し、より好ましくは特定の構造を有するN-アシル化合物を更に含有する加硫ゴム用離型剤が、離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0010】
[1]下記一般式(1):
【0011】
【0012】
[式(1)中、A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n1は、A1Oの平均付加モル数を示し、35~200の数であり、R1は、炭素数3~22のアルキル基又はアルケニル基を示し、R2は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を示す。]
で表される脂肪酸エステルを含有する、加硫ゴム用離型剤。
【0013】
[2]下記一般式(2):
【0014】
【0015】
[式(2)中、A2O及びA3Oは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n2及びn3は、それぞれA2O及びA3Oの平均付加モル数を示し、それぞれ独立に、1~40の数であり、a1及びa2は、それぞれ独立に、1又は2であり、b1及びb2は、それぞれ独立に、0又は1であり、a1+a2+b1+b2=4であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示し、R5は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(21):
【0016】
【0017】
[式(21)中、A4Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、n4は、A4Oの平均付加モル数を示し、1~40の数である。]
で表される基を示し、c1は、0~2の整数である。]
で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物を更に含有する、[1]に記載の加硫ゴム用離型剤。
【0018】
[3]下記一般式(3):
【0019】
【0020】
[式(3)中、R6は、炭素数8~22の炭化水素基を示し、R7は、炭素数1~2のアルキレン基を示し、R8は、水素原子又はメチル基を示し、X1は、下記一般式(31)又は(32):
-COOM (31)
-SO3M (32)
[式(31)及び(32)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。]
で表されるアニオン性基を示す。]
で表されるN-アシル化合物を更に含有する、[2]に記載の加硫ゴム用離型剤。
【0021】
[4]前記脂肪酸エステルの含有量が、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して、3~100質量%である、[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載の加硫ゴム用離型剤。
【0022】
[5]金型と未加硫ゴムとの接触面に[1]~[4]のうちのいずれか1項に記載の加硫ゴム用離型剤又はその希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する工程を含む、加硫ゴム成型品の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮する加硫ゴム用離型剤を得ることができ、また、それを用いた加硫ゴム成型品の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0025】
〔加硫ゴム用離型剤〕
先ず、本発明の加硫ゴム用離型剤について説明する。本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記一般式(1)で表される脂肪酸エステルを含有するものである。また、本発明の加硫ゴム用離型剤においては、下記一般式(2)で表されるポリアミンアルキレンオキサイド付加物を更に含有することが好ましく、下記一般式(3)で表されるN-アシル化合物を更に含有することがより好ましい。
【0026】
(脂肪酸エステル)
本発明において、脂肪酸エステルは、下記一般式(1):
【0027】
【0028】
で表される化合物である。
【0029】
一般式(1)において、A1Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基、すなわち、炭素数2のエチレンオキシ基(以下、「EO」と示す)、炭素数3のプロピレンオキシ基(以下、「PO」と示す)、又は炭素数4のブチレンオキシ基(以下、「BO」と示す)を示す。前記アルキレンオキシ基は、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基であること、すなわち、EO又はPOであることが好ましい。また、一般式(1)中に複数存在するA1Oは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
前記アルキレンオキシ基が付加してなるアルキレンオキサイド鎖(-(A1O)n1-)としては、前記アルキレンオキシ基のうちの1種の基の単独付加からなる鎖であっても2種以上の基の共付加からなる鎖であってもよく、共付加である場合にはブロック付加であってもランダム付加であってもよい。また、前記アルキレンオキサイド鎖は、少なくともEOを含むことが好ましい。
【0031】
前記アルキレンオキサイド鎖がアルキレンオキシ基としてEOを含む場合、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、一般式(1)中の全アルキレンオキサイド鎖に対する全EOの含有量が、25~90質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましい。
【0032】
一般式(1)において、n1は、A1Oの平均付加モル数を示し、35~200の数であり、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、50~200の数であることが好ましい。
【0033】
また、一般式(1)において、R1は、炭素数3~22のアルキル基又はアルケニル基を示し、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、炭素数12~22のアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。R1の炭素数が前記下限未満になると、加硫ゴム用離型剤の離型性が低下する傾向にある。また、R2は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を示す。
【0034】
このような脂肪酸エステルは、常法に従って、例えば、アルコールのアルキレンオキサイド付加物を原料として、脂肪酸によるエステル化反応を行うことにより得ることができる。具体的には、例えば、前記アルコールのアルキレンオキサイド付加物及び所定量の脂肪酸を反応容器に仕込み、不活性ガス雰囲気下において加熱してエステル化反応を行う方法が挙げられる。
【0035】
前記アルコールのアルキレンオキサイド付加物は、アルコール(ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、等の高級アルコール等)を原料として、末端のヒドロキシル基の水素原子(活性水素)に代えて前記アルキレンオキシ基を付加重合することにより得ることができる。
【0036】
前記アルコールにアルキレンオキシ基を付加重合させる方法としては、具体的には、例えば、前記アルコール等の原料を耐圧反応器に仕込み、不活性ガス雰囲気下において加熱し、所定量のアルキレンオキサイドを導入(圧入)して付加させる方法が挙げられ、反応触媒として水酸化アルカリ等を使用することができる。また、前記アルキレンオキシ基を付加重合させる方法としては、1種のアルキレンオキサイドを1段階で導入して付加させる方法、2種以上のアルキレンオキサイドを混合して1段階で導入して付加させる方法のほか、1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを多段階に分けて導入して付加させる方法等、目的とするアルキレンオキシ基の付加形態に応じて適宜選択することができる。
【0037】
(ポリアミンアルキレンオキサイド付加物)
本発明において、ポリアミンアルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(2):
【0038】
【0039】
で表される化合物である。前記脂肪酸エステルに、このポリアミンアルキレンオキサイド付加物を併用することによって、加硫ゴム用離型剤の離型性が更に向上する。
【0040】
一般式(2)において、A2O及びA3Oは、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレンオキシ基、すなわち、EO、PO、BOを示す。前記アルキレンオキシ基は、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基であること、すなわち、EO又はPOであることが好ましい。また、一般式(2)中にA2Oが複数存在する場合、A2Oは、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、A3Oが複数存在する場合、A3Oは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
前記アルキレンオキシ基が付加してなるアルキレンオキサイド鎖(-(OA2)n2-及び-(A3O)n3-)としては、前記アルキレンオキシ基のうちの1種の基の単独付加からなる鎖であっても2種以上の基の共付加からなる鎖であってもよく、共付加である場合にはブロック付加であってもランダム付加であってもよい。これらの中でも、前記アルキレンオキシ基の付加形態としては、水中での分散性及び金型への付着性がより向上し、また、加硫ゴム用離型剤の洗浄性の観点から、共付加(ランダム付加又はブロック付加)であることが好ましく、EOとPOの共付加であることがより好ましい。さらに、前記アルキレンオキシ基の付加形態がEOとPOの共付加である場合には、POの付加の後にEOが付加したブロック付加であることが好ましい。
【0042】
一般式(2)において、n2及びn3は、それぞれA2O及びA3Oの平均付加モル数を示し、それぞれ独立に、1~40の数であり、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、5~36の数であることが好ましく、10~32の数であることがより好ましい。
【0043】
また、一般式(2)において、a1及びa2は、それぞれ独立に、1又は2であり、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、2が好ましい。また、b1及びb2は、それぞれ独立に、0又は1であり、a1+a2+b1+b2=4である。さらに、c1は、0~2の整数であり、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、0又は1の整数であることが好ましい。
【0044】
一般式(2)において、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数2~6のアルキレン基を示し、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、エチレン基であることが好ましい。R5は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は下記一般式(21):
【0045】
【0046】
で表される基を示す。
【0047】
一般式(21)において、A4Oは、炭素数2~4のアルキレンオキシ基を示し、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、炭素数2~3のアルキレンオキシ基、すなわち、EO又はPOであることが好ましい。また、一般式(21)中にA4Oが複数存在する場合、A4Oは、互いに同一であっても異なっていてもよい。n4は、A4Oの平均付加モル数を示し、1~40の数である。
【0048】
前記アルキレンオキシ基が付加してなるアルキレンオキサイド鎖(-(A4O)n4-)としては、前記アルキレンオキシ基のうちの1種の基の単独付加からなる鎖であっても2種以上の基の共付加からなる鎖であってもよく、共付加である場合にはブロック付加であってもランダム付加であってもよい。これらの中でも、前記アルキレンオキシ基の付加形態としては、水中での分散性及び金型への付着性がより向上し、また、加硫ゴム用離型剤の洗浄性の観点から、共付加(ランダム付加又はブロック付加)であることが好ましく、EOとPOの共付加であることがより好ましい。さらに、前記アルキレンオキシ基の付加形態がEOとPOの共付加である場合には、POの付加の後にEOが付加したブロック付加であることが好ましい。
【0049】
一般式(2)中のアルキレンオキサイド鎖(-(OA2)n2-、-(A3O)n3-、及び-(A4O)n4-)がアルキレンオキシ基としてEOを含む場合には、加硫ゴム用離型剤の離型性の観点から、一般式(2)中の全アルキレンオキサイド鎖に対する全EOの含有量が、35質量%以下であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましい。全アルキレンオキサイド鎖に対する全EOの含有量が前記上限を超えると、加硫ゴム用離型剤の離型性が低下する傾向にある。
【0050】
このようなポリアミンアルキレンオキサイド付加物は、常法に従って、例えば、ポリアミン(アルキレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアルキレンポリアミン等)を原料として、この窒素原子に結合する水素原子(活性水素)に代えて前記アルキレンオキシ基を付加重合させて得ることができる。また、前記ポリアミンに代えて、例えば、前記ポリアミンの活性水素に代えてヒドロキシアルキレン基が付加した化合物(N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシアルキル)アルキレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタキス(2-ヒドロキシアルキル)ジアルキレントリアミン等)を原料として用い、このヒドロキシル基の水素原子(活性水素)に代えて前記アルキレンオキシ基を付加重合させて得ることもできる。
【0051】
前記ポリアミンにアルキレンオキシ基を付加重合させる方法としては、具体的には、例えば、前記ポリアミン等の原料を耐圧反応器に仕込み、不活性ガス雰囲気下において加熱し、所定量のアルキレンオキサイドを導入(圧入)して付加させる方法が挙げられ、反応触媒として水酸化アルカリ等を使用することができる。また、前記アルキレンオキシ基を付加重合させる方法としては、1種のアルキレンオキサイドを1段階で導入して付加させる方法、2種以上のアルキレンオキサイドを混合して1段階で導入して付加させる方法のほか、1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを多段階に分けて導入して付加させる方法等、目的とするアルキレンオキシ基の付加形態に応じて選択することができる。
【0052】
(N-アシル化合物)
本発明において、N-アシル化合物は、下記一般式(3):
【0053】
【0054】
で表される化合物である。前記脂肪酸エステル及び前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物に、このN-アシル化合物を併用することによって、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性が更に向上する。
【0055】
一般式(3)において、R6は、炭素数8~22の炭化水素基を示し、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、炭素数8~18の炭化水素基であることが好ましく、炭素数12~18の炭化水素基であることがより好ましい。また、前記炭化水素基としては、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状構造を含んでいてもよいが、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、直鎖状炭化水素基であることが好ましく、アルキル基又はアルケニル基であることがより好ましい。
【0056】
このようなR6として具体的には、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基が好ましく、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基がより好ましい。
【0057】
一般式(3)において、R7は、炭素数1~2のアルキレン基を示す。R8は、水素原子又はメチル基を示し、メチル基であることが好ましい。
【0058】
また、一般式(3)において、X1は、下記一般式(31)又は(32):
-COOM (31)
-SO3M (32)
で表されるアニオン性基を示し、一般式(31)及び(32)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子又は一価のカチオン基を示す。
【0059】
前記一価のカチオン基としては、一般式(31)又は(32)中のアニオンと対塩を形成して中和することができるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アンモニウム(NH4)、アルカノールアミン(モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン等;好ましくは、炭素数1~4のアルカノールアミン)が挙げられる。一般式(31)又は(33)において、Mとしては、入手のし易さ等の観点からは、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムであることが好ましい。また、本発明において、前記アニオン性基としては、水素原子又は前記カチオン基を除いた酸性基であってもよく、その中和度に関しては特に限定はなく、適宜調整することができる。
【0060】
このようなN-アシル化合物としては、より具体的には、N-ラウロイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、N-パルミトイルサルコシン、N-ステアロイルサルコシン、N-オレオイルサルコシン等のN-アシルサルコシン;N-ラウロイルメチルタウリン、N-ミリストイルメチルタウリン、N-パルミトイルメチルタウリン、N-ステアロイルメチルタウリン、N-オレオイルメチルタウリン等のN-アシル-N-メチルタウリンが挙げられ、これらのうちの1種が単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。中でも、前記N-アシル化合物としては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性がより向上する傾向にある観点から、N-アシルサルコシン及びN-アシル-N-メチルタウリンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、N-アシルサルコシンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0061】
(加硫ゴム用離型剤)
本発明の加硫ゴム用離型剤は、前記脂肪酸エステルを含有するものであり、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物を更に含有することが好ましく、前記N-アシル化合物を更に含有することがより好ましい。このような加硫ゴム用離型剤は、離型剤の有効成分(前記脂肪酸エステル、前記前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物及び前記N-アシル化合物)の濃度が幅広い範囲(例えば、3~100質量%、好ましくは、5~90質量%、より好ましくは、9~80質量%)において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができる。
【0062】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記脂肪酸エステルの含有量としては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して、3~100質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、5~70質量%であることが更に好ましい。
【0063】
また、本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物の含有量としては、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の観点から、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して、3~97質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、5~70質量%であることが更に好ましい。
【0064】
さらに、本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記N-アシル化合物の含有量としては、加硫ゴム用離型剤の全質量に対して、0.05~50質量%であることが好ましく、0.1~30質量%であることがより好ましく、0.15~20質量%であることが更に好ましい。前記N-アシル化合物の含有量が前記上限を超えても、それ以上の離型性及び洗浄性の向上効果は期待できないために経済性が悪化する傾向にあり、他方、前記下限未満であると、離型性及び洗浄性が低下する傾向にある。
【0065】
本発明の加硫ゴム用離型剤としては、水を更に含有していてもよい。本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記のように、使用時に必要に応じて水で適宜希釈して用いることができる。前記水としては特に制限されず、精製水、滅菌水、天然水、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の加硫ゴム用離型剤としては、前記脂肪酸エステルと前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物と前記N-アシル化合物に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲内において、他の成分を更に含有していてもよい。
【0067】
前記他の成分としては、石鹸等の界面活性剤;ジメチルシリコーン、変性シリコーンオイル等のシリコーン;ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール等の防錆剤;鉱物油;植物油や、従来公知の離型剤成分が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。本発明において、加硫ゴム用離型剤が前記他の成分を更に含有する場合、その含有量(2種以上の場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記脂肪酸エステルと前記アルキレンオキサイド付加物と前記N-アシル化合物の合計100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
【0068】
本発明においては、前記脂肪酸エステル、又は、前記脂肪酸エステルと前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物との混合物、又は、前記脂肪酸エステルと前記ポリアミンアルキレンオキサイド付加物と前記N-アシル化合物との混合物、をそのまま本発明の加硫ゴム用離型剤としてもよく、前記水及び必要に応じて前記他の成分を更に混合して本発明の加硫ゴム用離型剤としてもよい。このような混合方法としては特に限定されない。
【0069】
本発明の加硫ゴム用離型剤はまた、必要に応じて、使用時に低濃度となるように水で希釈し、離型剤溶液として用いることができる。本発明の加硫ゴム用離型剤は水に容易に溶解し、また、金型への付着性に優れるため、離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮することができる。
【0070】
〔加硫ゴム成型品の製造方法〕
次に、本発明の加硫ゴム成型品の製造方法について説明する。本発明の加硫ゴム成型品の製造方法は、前記本発明の加硫ゴム用離型剤又はその希釈液を用いて加硫ゴム成型品を製造する方法であり、具体的には、金型と未加硫ゴムとの接触面に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又はその希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する工程を含む方法である。
【0071】
金型と未加硫ゴムとの接触面に、前記加硫ゴム用離型剤又はその希釈液を付着させる方法としては、例えば、金型の加硫ゴム又は未加硫ゴムと接する部分に予め前記加硫ゴム用離型剤又はその希釈液を塗布する方法;未加硫ゴムホースの末端に前記加硫ゴム用離型剤又はその希釈液を塗布する方法;これらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
【0072】
本発明の加硫ゴム成型品の製造方法において、加硫ゴムを成型する方法としては特に限定されず、従来公知の加硫ゴムの成型方法を採用することができるが、本発明の加硫ゴム用離型剤が加硫中にゴムから滲み出る成分と混合されても優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮できることから、金型に加硫ゴムを挿入して成型した後に引き抜く方法や、金型に未加硫の原料ゴム組成物を挿入して加硫・成型した後に引き抜く方法も、好適に採用することができる。
【0073】
前記金型としては、鉄製、ステンレス製、ジェラルミン製等の金型が挙げられ、形状は特に制限されないが、本発明の加硫ゴム用離型剤は、加硫ゴムホースの成型に用いるマンドレルに適用する離型剤として好適に用いることができる。前記塗布の方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を採用することができ、スプレーガンを用いて吹き付ける方法(スプレー塗布)や刷毛で塗布する方法等が挙げられる。塗布量は、前記加硫ゴム用離型剤又はその希釈液の濃度、加硫ゴム又は未加硫ゴムの種類や挿入速度、金型の温度等によって適宜調整することができる。
【0074】
前記加硫ゴムとしては、特に制限されず、天然ゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリル・ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を加硫したものが挙げられる。本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴムを加硫した加硫ゴムに対して好適に用いることができる。
【実施例0075】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(合成例A1:EO(74)PO(21)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル)
先ず、1Lのオートクレーブに、原料アルコールとしてのステアリルアルコール(新日本理化株式会社製:コノール30SS)50gと、触媒としての48質量%水酸化カリウム水溶液2.95gとを仕込み、反応装置内を窒素で十分に置換した後に昇温し、減圧脱水した。120℃に達した後にエチレンオキサイド(以下、EOと表記)606.56gとプロピレンオキサイド(以下、POと表記)227.29gの混合物を同温度にて滴下し、圧力0.5MPa未満で反応させ、圧力の低下がなくなるまで熟成した。その後冷却し、50℃にて99質量%酢酸を1.53g添加して触媒を中和し、ポリオキシエチレン(74)ポリオキシプロピレン(21)ステアリルエーテル(EO(74)PO(21)ステアリルエーテル)を886.79g得た。
【0077】
次に、2Lのガラス製の反応容器に、得られたEO(74)PO(21)ステアリルエーテル800gとオレイン酸(KLK OLEO社製:PALMERA A1813)47.63gを投入し、窒素通入しながら180~240℃にて約24時間反応を行うことで目的の化合物であるポリオキシエチレン(74)ポリオキシプロピレン(21)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル(EO(74)PO(21)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル)を844.59g得た。
【0078】
(合成例A2:EO(74)PO(21)ステアリルエーテルのラウリン酸エステル)
オレイン酸の代わりにラウリン酸(新日本理化株式会社製:ラウリン酸P)を用い、原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)ステアリルエーテルのラウリン酸エステルを830.74g得た。
【0079】
(合成例A3:EO(74)PO(21)ラウリルエーテルのオレイン酸エステル)
ステアリルアルコールの代わりにラウリルアルコール(新日本理化株式会社製:コノール20P)を用い、原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)ラウリルエーテルのオレイン酸エステルを845.38g得た。
【0080】
(合成例A4:EO(74)PO(21)ヘキシルエーテルのオレイン酸エステル)
ステアリルアルコールの代わりにヘキサノール(東京化成工業株式会社製:1-Hexanol)を用い、原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)ヘキシルエーテルのオレイン酸エステルを846.21g得た。
【0081】
(合成例A5:EO(23)PO(16)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル)
原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(23)PO(16)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル892.88gを得た。
【0082】
(合成例A6:EO(103)PO(63)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル)
原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(103)PO(63)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル825.01gを得た。
【0083】
(合成例A7:EO(74)PO(21)ステアリルエーテル)
合成例A1のエステル化反応前と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)ステアリルエーテルを886.79g得た。
【0084】
(合成例A8:EO(74)PO(21)ラウリルエーテル)
合成例A3のエステル化反応前と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)ラウリルエーテルを878.66g得た。
【0085】
(合成例A9:EO(74)PO(21)エチルエーテルのオレイン酸エステル)
ステアリルアルコールの代わりにエチルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製:エタノール(超脱水)(99.5))を用い、原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)エチルエーテルのオレイン酸エステルを846.78g得た。
【0086】
(合成例A10:EO(74)PO(21)ステアリルエーテルのカプロン酸エステル)
オレイン酸の代わりにカプロン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製:ヘキサン酸)を用い、原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は合成例A1と同様の操作により合成し、EO(74)PO(21)ステアリルエーテルのカプロン酸エステルを816.55g得た。
【0087】
(合成例A11:EO(7)PO(3)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル)
原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は、合成例A1と同様の操作により合成し、EO(7)PO(3)ステアリルエーテルのオレイン酸エステルを1081.83g得た。
【0088】
(合成例A12:EO(180)PO(108)ステアリルエーテルのオレイン酸エステル)
原料アルコール、48質量%水酸化カリウム水溶液、EO、PO、99質量%酢酸、原料脂肪酸の仕込み量をそれぞれ表1に示す量としたこと以外は、合成例A1と同様の操作により合成し、EO(180)PO(108)ステアリルエーテルのオレイン酸エステルを814.63g得た。
【0089】
【0090】
(合成例B1:エチレンジアミンのPO(42)EO(6)付加物)
先ず、1Lのオートクレーブに、原料としてのテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン(株式会社ADEKA製:アデカカポールMD-100)70.0gと触媒としての48質量%水酸化カリウム水溶液4.1gとを仕込み、反応装置内を窒素で十分に置換した後昇温し、減圧脱水した。温度が120℃に達したところでプロピレンオキサイド528.4gの滴下を開始し、120~150℃に保ちながら圧力0.5MPa未満で反応させた。プロピレンオキサイドを全量滴下後、圧力の低下がなくなるまで熟成した。
【0091】
次に、温度を120~150℃に保ったまま、これにエチレンオキサイド63.2gを滴下し、圧力0.5MPa未満で反応させた。エチレンオキサイドを全量滴下後、圧力の低下がなくなるまで熟成させた。その後冷却し、50℃にて99質量%酢酸を2.1g添加して触媒を中和し、目的の化合物であるエチレンジアミンのPO(42)EO(6)付加物を665.7g得た。
【0092】
(合成例B2:エチレンジアミンのPO(118)EO(18)付加物)
原料化合物、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO、EO、99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ表2に示す量としたこと以外は合成例B1と同様の操作により合成し、エチレンジアミンのPO(118)EO(18)付加物928.1gを得た。
【0093】
(合成例B3:エチレンジアミンのPO(52)EO(60)付加物)
原料化合物、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO、EO、99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ表2に示す量としたこと以外は合成例B1と同様の操作により合成し、エチレンジアミンのPO(52)EO(60)付加物688.9gを得た。
【0094】
(合成例B4:EO(10)PO(65)グリコール)
テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの代わりにトリプロピレングリコール(株式会社ADEKA製:TPG-H)を用い、原料化合物、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO、EO、99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ表2に示す量としたこと以外は合成例B1と同様の操作により合成し、EO(10)PO(65)グリコール664.9gを得た。
【0095】
(合成例B5:エチレンジアミンのPO(200)EO(30)付加物)
原料化合物、48質量%水酸化カリウム水溶液、PO、EO、99質量%酢酸の仕込み量をそれぞれ表2に示す量としたこと以外は合成例B1と同様の操作により合成し、エチレンジアミンのPO(200)EO(30)付加物894.4gを得た。
【0096】
【0097】
(合成例C1:N―ラウロイルサルコシンNa塩)
300mlのガラス製の反応容器にN-ラウロイルサルコシン(川研ファインケミカル株式会社製:ソイポンSLA)139.0gと48質量%水酸化ナトリウム水溶液43.0gを加えて混合し、中和物182.0gを得た。中和物5.0gをステンレス皿に取り出し、105℃の乾燥機で3時間乾燥してN-ラウロイルサルコシンNa塩4.4gを得た。
【0098】
(合成例C2:N-オレオイルサルコシンNa塩)
300mlのガラス製の反応容器にN-オレオイルサルコシン(日油株式会社製:オレオイルザルコシン221P)144.0gと48質量%水酸化ナトリウム水溶液34.0gを加えて混合し、中和物178.0gを得た。中和物5.0gをステンレス皿に取り出し、105℃の乾燥機で3時間乾燥してN-オレオイルサルコシンNa塩4.5gを得た。
【0099】
(合成例C3:ラウリン酸Na塩)
300mlのガラス製の反応容器にラウリン酸(新日本理化株式会社製:ラウリン酸P)140.0gと48質量%水酸化ナトリウム水溶液58.0gを加えて混合し、中和物198.2gを得た。中和物5.0gステンレス皿に取り出し、105℃の乾燥機で3時間乾燥してラウリン酸Na塩4.2gを得た。
【0100】
(化合物C’4:ヤシ油モノエタノールアミド)
川研ファインケミカル株式会社製のアミゾールCMEを使用した。
【0101】
(化合物C’5:ラウロイルグルタミン酸Na塩)
BASFジャパン株式会社製のPlantapon Amino SLG-Pを使用した。
【0102】
(実施例1~33及び比較例1~14)
合成例A1~A6で得られた化合物A1~A6、合成例A7~A12で得られた化合物A’7~A’12、合成例B1~B3で得られた化合物B1~B3、合成例B4~B5で得られた化合物B’4~B’5、合成例C1~C2で得られた化合物C1~C2、合成例C3で得られた化合物C’3、前記化合物C’4~C’5を用い、表3~6に示す配合量で各加硫ゴム用離型剤を調製し、それぞれ以下の方法で離型性および洗浄性を評価した。
【0103】
(離型性評価)
先ず、実施例及び比較例で得られた各加硫ゴム用離型剤に、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)の未加硫のゴムホース(直径:7.5mm×長さ:80mm)を、その先端から40mmの部位まで浸漬して取り出した。次いで、加硫ゴム用離型剤に浸漬した側の先端から40mmの部位まで前記ゴムホースの内側に60℃に加温した円柱状のステンレス棒(SUS304製、直径:8.0mm×長さ:300mm)を挿し込んで試料とした。これを乾燥機に入れて180℃で14分間加熱して加硫処理を行い、その後、乾燥機の温度を100℃に降温して、100℃で5分間冷却した。冷却後の試料を乾燥機から取り出した後、ステンレス棒の表面温度が100℃以下であることを表面温度計で確認し、ステンレス棒を固定してゴムホース引き抜き、その際のゴムホースとステンレス棒との抵抗を、下記の基準:
4:スムーズに抜ける
3:抵抗はあるが抜ける
2:抵抗は強いが抜ける
1:抜けない
に従って点数をつけた。評価は10サンプルについて行い、その平均を評価結果(点)とした。なお、評価結果が3.0点以上で、離型性に優れた加硫ゴム用離型剤であると認められる。
【0104】
(洗浄性評価)
先ず、実施例及び比較例で得られた各加硫ゴム用離型剤を0.3gずつ、EPDM板(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム板)の未加硫のゴム片(2.0mm×30mm×120mm)に塗布した後、乾熱乾燥機により180℃で10分間加熱乾燥し、その後、室温まで空冷して、これを試験片とした。次いで、500mlビーカーに洗浄液(水道水、40℃)を500ml入れ、試験片を1往復2秒で上下に動かす。1分毎に試験片表面の加硫ゴム用離型剤の残量を目視で確認し、残留がないと目視で確認できるまで試験を継続した。洗浄性の評価を下記基準:
4:3分未満で脱落
3:3分以上6分未満で脱落
2:6分以上9分未満で脱落
1:9分以上で脱落
に従って点数をつけた。評価は10サンプルについて行い、その平均を評価結果(点)とした。なお、評価結果が3.0点以上で、洗浄性に優れた加硫ゴム用離型剤であると認められる。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
以上説明したように、本発明によれば、離型剤の有効成分の濃度が幅広い範囲において優れた離型性及び洗浄性をいずれも発揮する加硫ゴム用離型剤を得ることができる。したがって、本発明の加硫ゴム成型品の製造方法は、このような加硫ゴム用離型剤を用いていることから、加硫ゴム成型品を効率よく製造する方法として有用である。