(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051521
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】振動デバイス及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
G10K 9/122 20060101AFI20240404BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20240404BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240404BHJP
H04R 17/10 20060101ALI20240404BHJP
G10K 9/12 20060101ALI20240404BHJP
H10N 30/80 20230101ALI20240404BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
G10K9/122 171
G06K19/07 090
G06K19/077 120
G06K19/077 196
G06K19/077 144
G06K19/077 244
G06K19/077 272
G06K19/077 296
H04R17/10
G10K9/12 F
H01L41/04
H01L41/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157734
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】金子 滋
(72)【発明者】
【氏名】友成 寿緒
(72)【発明者】
【氏名】小椋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤根 正義
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA01
5D004DD01
5D004FF10
(57)【要約】
【課題】部品点数が少なく簡単な構造で十分な振動を得ることが可能な振動デバイスを提供する。
【解決手段】振動デバイス1は、コイルパターン110と、コイルパターン110に生じる誘導起電力を直流電圧に変換する直流生成回路120と、直流電圧に基づいて所定の周波数を有する駆動信号Sを生成する駆動回路130と、駆動信号Sに応じて変位する圧電素子140とを備える。駆動信号Sは、略垂直な立ち上がり波形を有する。これにより、部品点数が少なく簡単な構造で十分な振動を得ることができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルに生じる誘導起電力を直流電圧に変換する直流生成回路と、
前記直流電圧に基づいて所定の周波数を有する駆動信号を生成する駆動回路と、
前記駆動信号に応じて変位する圧電素子と、を備え、
前記駆動信号は、略垂直な立ち上がり波形を有する、振動デバイス。
【請求項2】
前記直流生成回路は、前記コイルに接続されたダイオードブリッジを含む整流回路と、前記整流回路に接続され、前記直流電圧を安定化させる電圧レギュレータを含む、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記所定の周波数は、可聴周波数より低い、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記コイルの長手方向と、前記圧電素子の長手方向が一致している、請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記コイルが形成された基材をさらに備え、前記直流生成回路、駆動回路及び圧電素子は、前記コイルの軸方向から見て、前記コイルの開口領域と重なる位置に配置されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記コイルと重なる磁性体をさらに備え、
前記磁性体は、前記コイルの開口領域と重なる貫通孔を有し、
前記圧電素子は、前記コイルの軸方向から見て、前記磁性体の貫通孔と重なる位置に配置されている、請求項5に記載の振動デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の振動デバイスと、
前記磁性体を介して前記基材と重なるメタルプレートと、を備え、
前記圧電素子は、接着層を介して前記メタルプレートに接着される、ICカード。
【請求項8】
前記コイルと結合するICモジュールをさらに備える、請求項7に記載のICカード。
【請求項9】
前記コイルは、アンテナコイルと、前記アンテナコイルに接続又は電磁界結合され、前記ICモジュールと電磁界結合するカップリングコイルとを含み、
前記直流生成回路は、前記カップリングコイルの電圧に基づいて活性化される、請求項8に記載のICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動デバイス及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルに生じる誘導起電力を蓄えるキャパシタと、キャパシタに蓄えられた電力によって駆動する振動用モーターとを備えた非接触型ICカードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたICカードは、誘導起電力を蓄えるキャパシタを用いていることから、部品点数が多いという問題があった。また、振動用モーターの代わりに圧電素子を用いた場合には、十分な振動が得られないという問題もあった。
【0005】
したがって、本開示は、部品点数が少なく簡単な構造で十分な振動を得ることが可能な振動デバイス及びこれを備えたICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様による振動デバイスは、コイルと、コイルに生じる誘導起電力を直流電圧に変換する直流生成回路と、直流電圧に基づいて所定の周波数を有する駆動信号を生成する駆動回路と、駆動信号に応じて変位する圧電素子とを備え、駆動信号は、略垂直な立ち上がり波形を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、部品点数が少なく簡単な構造で十分な振動を得ることが可能な振動デバイス及びこれを備えたICカードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による振動デバイスを備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、ICカード3の構造を説明するための略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、ICカード3の構造を説明するための略断面図である。
【
図4】
図4は、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。
【
図5】
図5は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【
図6】
図6は、直流生成回路120及び駆動回路130の回路図である。
【
図7】
図7は、ICカード3とカードリーダー6が通信を行う状態を示す模式図である。
【
図8】
図8は、駆動回路130から圧電素子140に印加される駆動信号Sの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態による振動デバイスを備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態によるICカード3は、Y方向を長手方向、X方向を短手方向、Z方向を厚み方向とする板状体であり、XY面を構成する上面3aと裏面3bを有している。ICカード3には後述する振動デバイスが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード3の上面3aに露出している。
【0012】
図2及び
図3は、それぞれICカード3の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0013】
図2及び
図3に示すICカード3は、裏面3b側から上面3a側に向かって、プラスチックプレート10、基材20、磁性体30及びメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。プラスチックプレート10は、磁束を妨げない樹脂材料からなる。プラスチックプレート10の表面は、ICカード3の裏面3bを構成する。メタルプレート40は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなる。メタルプレート40の表面はICカード3の上面3aを構成する。メタルプレート40の裏面42には、接着層64を介して圧電素子140が接着されている。ここで、接着層64を構成する材料としては、熱可塑性の接着剤が挙げられる。接着層64が常温で固化することで、メタルプレート40と圧電素子140が固定されるため、圧電素子140の変位がメタルプレート40に伝達され振動する。メタルプレート40には貫通孔41が設けられており、貫通孔41の内部にICモジュール50が配置されている。このように、ICカード3は、本体にメタルプレートが用いられたカードである。
【0014】
基材20は、絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、その一方の表面21にコイルパターン110が設けられ、その他方の表面22に直流生成回路120及び駆動回路130が実装されている。フィルム状の基材20を構成する絶縁性樹脂材料の例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)などが挙げられる。このように、基材20として薄いフィルム状部材を用い、その表面21にコイルパターン110を形成すれば、全体の厚さを薄くすることができることから、ICカード3への応用に好適である。基材20の一方の表面21はプラスチックプレート10と向かい合い、基材20の他方の表面22は、磁性体30を介してメタルプレート40と向かい合う。プラスチックプレート10と基材20は、接着層61を介して接着される。
【0015】
基材20の他方の表面22は、磁性体30で覆われる。磁性体30は、シート状部材であっても構わないし、基材20の他方の表面22に塗布されたものであっても構わない。磁性体30がシート状部材である場合、磁性体30と基材20は、
図3に示すように接着層62を介して互いに接着される。磁性体30が基材20の他方の表面22に塗布されたものである場合、磁性体30と基材20は、接着層を介することなく直接接触する。
【0016】
磁性体30には、ICモジュール50と重なる位置に貫通孔31が設けられ、直流生成回路120、駆動回路130及び圧電素子140と重なる位置に貫通孔32が設けられている。メタルプレート40に設けられた貫通孔41は、Z方向から見た平面視で、磁性体30の貫通孔31と重なりを有している。磁性体30とメタルプレート40は、接着層63を介して接着される。本実施形態では、貫通孔32は1つの貫通孔から構成されているが、直流生成回路120、駆動回路130及び圧電素子140のそれぞれに対応する貫通孔が複数設けられていても構わない。
【0017】
図4は、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。尚、
図4に示すA-A線は、
図3の断面位置を示している。
図4においては、基材20の他方の表面22側に位置する磁性体30の貫通孔31,32が破線で示されているとともに、貫通孔32と重なる位置に設けられた直流生成回路120、駆動回路130及び圧電素子140が破線で示されている。
【0018】
図4に示すように、基材20の一方の表面21には、コイルパターン110を構成するアンテナコイル111及びカップリングコイル112と、カップリングコイル112に接続された配線パターン113が設けられている。これらのパターンは導電材料から構成されており、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。本実施形態による振動デバイス1は、基材20の一方の表面21に形成されたコイルパターン110と、基材20の他方の表面22に実装された直流生成回路120及び駆動回路130と、メタルプレート40に接着された圧電素子140によって構成される。
【0019】
アンテナコイル111は、磁性体30と重なるよう基材20の外縁に沿って約3ターン周回するパターンであり、Y方向を長手方向、X方向を短手方向とする略矩形状に周回している。カップリングコイル112は、アンテナコイル111の最内周ターンに挿入されており、磁性体30の貫通孔31の内縁に沿って約3ターン周回する。これにより、アンテナコイル111とカップリングコイル112は、直列に接続されることになる。カップリングコイル112の内周端とアンテナコイル111を接続する導体パターンについては、破線で示すように、基材20の他方の表面22に形成される。但し、アンテナコイル111とカップリングコイル112が直列接続されている点は必須でなく、互いに電磁界結合するものであっても構わない。
【0020】
アンテナコイル111の内周端及び外周端は、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンを介して、直流生成回路120に接続される。また、カップリングコイル112に接続された配線パターン113も、直流生成回路120に接続される。カップリングコイル112、直流生成回路120、駆動回路130及び圧電素子140は、コイル軸であるZ方向から見て、いずれもアンテナコイル111の開口領域111aに配置される。したがって、磁性体30の貫通孔31,32やメタルプレート40の貫通孔41についても、コイル軸であるZ方向から見て、いずれもアンテナコイル111の開口領域111aに配置される。
【0021】
上述の通り、アンテナコイル111はY方向を長手方向とする形状を有しており、その開口領域111aについてもY方向を長手方向とする形状を有している。そして、開口領域111aと重なる位置には、カップリングコイル112、圧電素子140、並びに、直流生成回路120及び駆動回路130がY方向に配列されている。このような配置により、これらの各要素を効率よくレイアウトすることができるとともに、アンテナコイル111のアンテナ特性を高めることができる。また、圧電素子140自体もY方向を長手方向、X方向を短手方向とする略矩形状であることから、開口領域111a内におけるレイアウトが容易である。なお、アンテナコイル111の長手方向と圧電素子140の長手方向は厳密に一致している必要はなく、製造誤差等により生じるばらつきは一致しているに含まれるものとする。誤差の範囲としては、例えば、アンテナコイル111の長手方向と圧電素子140の長手方向の成す角度が5°以内であってもよい。
【0022】
図5は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0023】
図5に示すように、ICモジュール50は、モジュール基板51と、モジュール基板51に搭載又は内蔵されたICチップ52と、カップリングコイル53とを備えている。ICチップ52は、ドーム状の保護樹脂54で覆われることにより保護されている。保護樹脂54は絶縁部材からなる。モジュール基板51の表面側には、
図1に示す端子電極Eが設けられる。このような構成を有するICモジュール50は、メタルプレート40に設けられた貫通孔41に収容される。ICモジュール50が貫通孔41に収容されると、カップリングコイル53と基材20に設けられたカップリングコイル112が電磁界結合する。そして、カップリングコイル112は、アンテナコイル111に接続されていることから、アンテナコイル111を介して、ICモジュール50が外部と通信可能となる。例えば、アンテナコイル111と、寄生容量又はアンテナコイル111に接続される他の容量成分とによる共振回路の共振周波数を13.56MHz又は13.56MHz近傍の周波数帯に設定することで、近距離無線通信(NFC)が可能となる。なお、本実施形態では、アンテナコイル111とICモジュール50がカップリングコイル112,53を介して結合しているが、アンテナコイル111とICモジュール50を直接接続しても構わない。
【0024】
図6は、直流生成回路120及び駆動回路130の回路図である。
【0025】
直流生成回路120は、コイルパターン110に生じる誘導起電力を直流電圧に変換する回路であり、電源IC121と入力キャパシタ122と出力キャパシタ125とを含んでいる。電源IC121は、ダイオードブリッジ123及び電圧レギュレータ124を含んでいる。ダイオードブリッジ123は、一対の交流入力端子IN1,IN2と、一対の直流出力端子POS,NEGに接続されている。交流入力端子IN1,IN2は、アンテナコイル111の内周端及び外周端にそれぞれ接続される。直流出力端子POSには、入力キャパシタ122が接続される。直流出力端子NEGは接地される。ダイオードブリッジ123と入力キャパシタ122は、整流回路を構成する。
【0026】
電圧レギュレータ124は、一対の直流入力端子Vin,Vss間に与えられる直流電圧に基づき、安定化された直流電圧を直流出力端子Voutから出力する。直流出力端子Voutとグランド間には、出力キャパシタ125が接続される。直流入力端子Vinは直流出力端子POSに接続され、直流入力端子Vssは接地される。また、電圧レギュレータ124は、イネーブル端子CEに与えられる電圧が所定のレベルを超えている場合に活性化される。イネーブル端子CEは、配線パターン113を介してカップリングコイル112に接続される。したがって、電圧レギュレータ124は、カップリングコイル112の電圧が所定のレベルを超えた場合に活性化され、直流出力端子Voutから所定の直流電圧を出力する。ここで、キャパシタ125は、電圧レギュレータ124の直流出力端子Voutとグランド間に接続されているものの、そのキャパシタンスは例えば1μF程度であり、電源としての機能は有していない。つまり、キャパシタ125は、直流出力端子Voutから出力される直流電圧を蓄積し、放電によって圧電素子140を駆動する能力を有していない。
【0027】
駆動回路130は、タイマーIC131と、キャパシタ133,134と、抵抗135,136とを含んでいる。抵抗135,136及びキャパシタ133は、電圧レギュレータ124の直流出力端子Voutとグランド間に直列に接続されている。これらキャパシタ133,134及び抵抗135,136は、タイマーIC131の発振周期及び出力波形を制御する素子である。
【0028】
タイマーIC131は、グランドノードN1、トリガーノードN2、出力ノードN3、反転リセットノードN4、電圧制御ノードN5、しきい値ノードN6、ディスチャージノードN7、及び電源ノードN8を有している。反転リセットノードN4及び電源ノードN8は、電圧レギュレータ124の直流出力端子Voutに接続される。これにより、電圧レギュレータ124の直流出力端子Voutから所定のレベルの直流電圧が出力されると動作を開始する。電圧レギュレータ124の直流出力端子Voutが所定のレベルに達していない場合には、反転リセットノードN4がローレベル(活性レベル)となるため、タイマーIC131がリセット状態となる。
【0029】
ディスチャージノードN7は、抵抗135と抵抗136の接続点に接続される。トリガーノードN2及びしきい値ノードN6は、抵抗136とキャパシタ133の接続点に接続される。電圧制御ノードN5は、キャパシタ134を介して接地される。これにより、キャパシタ133,134及び抵抗135,136の素子定数によって、出力ノードN3から出力される駆動信号Sの周波数や、駆動信号Sの波形を調整することができる。そして、圧電素子140に設けられた一対の端子電極は、電圧レギュレータ124の直流出力端子Voutと、タイマーIC131の出力ノードN3にそれぞれ接続される。
【0030】
このような構成により、
図7に示すように、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わせれば、カードリーダー6とICチップ52との間で通信を行うことができる。つまり、カードリーダー6は、コイルパターン110を経由して、ICモジュール50のカップリングコイル53と結合し、これによりICチップ52との通信が実現される。
【0031】
そして、コイルパターン110によって生じる誘導起電力は、直流生成回路120によって直流電圧に変換され、さらに、駆動回路130によって所定の周波数を有する駆動信号Sが生成される。この駆動信号Sは、圧電素子140を変位させる。圧電素子140は、接着層64を介してメタルプレート40に接着されていることから、圧電素子140の変位は、振動としてICカード3を持つ手に伝わるとともに、変位によって音が生じる。このような動作は、直流生成回路120が活性化されている場合、つまり、カップリングコイル112に所定レベル以上の電圧が発生している場合に開始されることから、ICカード3を持つ使用者は、ICカード3の振動によって、カードリーダー6と間で通信が行われていることを認識することができる。
【0032】
駆動信号Sの周波数については特に限定されないが、駆動信号Sの周波数が可聴周波数より低い場合に、より強い振動を得ることが可能となる。但し、駆動信号Sの周波数が低すぎると、使用者が違和感を感じるため、駆動信号Sの周波数としては、10Hz~20Hz程度とすることができる。駆動信号Sの周波数が可聴周波数より低い場合、使用者は、圧電素子140を変位によって直接的に生じる音波については聞き取れないものの、メタルプレート40の振動の高調波成分によって生じる音波が使用者の耳に届くことになる。
【0033】
図8は、駆動回路130から圧電素子140に印加される駆動信号Sの波形図である。
【0034】
図8(a)は、駆動信号Sが矩形波である場合を示している。この場合、駆動信号Sは、略垂直な立ち上がり波形と、略垂直な立ち下がり波形を有している。デューティ比は例えば50%である。このように、駆動信号Sが矩形波であれば、圧電素子140の電圧印加時に高い電圧が加わることで圧電素子140の変位が大きくなり、メタルプレート40をより強く振動させることが可能となり、ICカード3を持つ使用者が振動をより認識しやすくなる。
【0035】
図8(b)は、駆動信号Sが矩形波であるものの、立ち上がり波形がやや鈍っている場合を示している。このように、矩形波の立ち上がり波形がやや鈍っている場合であっても、駆動信号Sのレベルが振幅の10%から90%に達する時間を立ち上がり時間T1と定義した場合、駆動信号Sのレベルが振幅の90%を超えている時間T2よりも立ち上がり時間T1が短ければ、立ち上がり波形は略垂直とみなすことができ、メタルプレート40を強く振動させることが可能となる。
【0036】
図8(c)は、駆動信号Sが逆のこぎり波である場合を示している。この場合、駆動信号Sは、略垂直な立ち上がり波形と、なだらかな立ち下がり波形を有している。このように、駆動信号Sの波形が矩形波である必要はなく、略垂直な立ち上がり波形を有していれば、メタルプレート40を強く振動させることが可能となる。
【0037】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上記実施形態では、基材20の表面に形成したコイルパターン110を用いているが、使用するコイルがパターンコイルである必要はなく、導線を周回させた構造を有するコイルであっても構わない。
【0039】
また、本実施形態では、振動デバイス1をICカード3に適用した例を用いて説明したがこれに限られず、振動デバイス1は、ウェアラブルデバイスなどの他の小型電子機器にも適用可能である。
【0040】
また、基材20の表面21,22に設けられるコイルパターン111や配線パターン113を含む導体パターンは、間に樹脂を含む他の材料層を介して基材20の表面21,22に設けられていても構わない。
【0041】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本開示による振動デバイスは、コイルと、コイルに生じる誘導起電力を直流電圧に変換する直流生成回路と、直流電圧に基づいて所定の周波数を有する駆動信号を生成する駆動回路と、駆動信号に応じて変位する圧電素子とを備え、駆動信号は、略垂直な立ち上がり波形を有する。これによれば、電力を蓄積するキャパシタなどを用いることなく、少ない部品点数で十分な振動を得ることが可能な振動デバイスを提供することができる。
【0043】
上記振動デバイスにおいて、直流生成回路は、コイルに接続されたダイオードブリッジを含む整流回路と、整流回路に接続され、直流電圧を安定化させる電圧レギュレータを含んでいても構わない。これによれば、安定した直流電圧を駆動回路に供給することが可能となる。
【0044】
上記いずれかの振動デバイスにおいて、所定の周波数は可聴周波数より低くても構わない。これによれば、より強い振動を得ることが可能となる。
【0045】
上記いずれかの振動デバイスにおいて、コイルの長手方向と圧電素子の長手方向が一致していても構わない。これによれば、コイルと圧電素子のレイアウトが容易となる。
【0046】
上記いずれかの振動デバイスにおいて、コイルが形成された基材をさらに備え、直流生成回路、駆動回路及び圧電素子は、コイルの軸方向から見て、コイルの開口領域と重なる位置に配置されていても構わない。これによれば、レイアウト効率が高められるとともに、コイルのアンテナ特性を高めることができる。
【0047】
上記いずれかの振動デバイスにおいて、コイルと重なる磁性体をさらに備え、磁性体は、コイルの開口領域と重なる貫通孔を有し、圧電素子は、コイルの軸方向から見て磁性体の貫通孔と重なる位置に配置されていても構わない。これによれば、コイルのインダクタンスが高められるとともに、磁性体と圧電素子の干渉を防止することが可能となる。
【0048】
本開示によるICカードは、上記いずれかの振動デバイスと、磁性体を介して基材と重なるメタルプレートとを備え、圧電素子は、接着層を介してメタルプレートに接着される。これによれば、圧電素子によってメタルプレートを振動させることが可能となり、より強い振動を得ることが可能となる。
【0049】
上記のICカードは、コイルと結合するICモジュールをさらに備えていても構わない。これによれば、無線通信可能なICカードを提供することが可能となる。
【0050】
上記ICカードにおいて、コイルは、アンテナコイルと、アンテナコイルに接続又は電磁界結合され、ICモジュールと電磁界結合するカップリングコイルとを含み、直流生成回路は、カップリングコイルの電圧に基づいて活性化されるものであっても構わない。これによれば、ICカードを持つ使用者は、カードリーダーと間で通信が行われていることをICカードの振動によって認識することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 振動デバイス
3 ICカード
3a ICカードの上面
3b ICカードの裏面
6 カードリーダー
10 プラスチックプレート
20 基材
21 基材の一方の表面
22 基材の他方の表面
30 磁性体
31,32 貫通孔
40 メタルプレート
41 貫通孔
42 メタルプレートの裏面
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
53 カップリングコイル
54 保護樹脂
61~64 接着層
110 コイルパターン
111 アンテナコイル
111a 開口領域
112 カップリングコイル
113 配線パターン
120 直流生成回路
121 電源IC
122 入力キャパシタ
123 ダイオードブリッジ
124 電圧レギュレータ
125 出力キャパシタ
130 駆動回路
131 タイマーIC
133,134 キャパシタ
135,136 抵抗
140 圧電素子
CE イネーブル端子
E 端子電極
IN1,IN2 交流入力端子
N1 グランドノード
N2 トリガーノード
N3 出力ノード
N4 反転リセットノード
N5 電圧制御ノード
N6 値ノード
N7 ディスチャージノード
N8 電源ノード
POS,NEG 直流出力端子
S 駆動信号
Vin 直流入力端子
Vin,Vss 直流入力端子
Vout 直流出力端子
Vss 直流入力端子