(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051522
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】プラズマを利用した濁水処理装置及び濁水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20230101AFI20240404BHJP
C02F 1/463 20230101ALI20240404BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20240404BHJP
【FI】
C02F1/48 B
C02F1/463
C02F1/40 B
C02F1/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157736
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨貴 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玄太
(72)【発明者】
【氏名】長幡 逸佳
(72)【発明者】
【氏名】稲邉 裕司
(72)【発明者】
【氏名】浪平 隆男
(72)【発明者】
【氏名】王 斗艶
【テーマコード(参考)】
4D051
4D061
【Fターム(参考)】
4D051AA06
4D051AB03
4D051CA06
4D051CA10
4D051CA15
4D061DA08
4D061DB15
4D061EA06
4D061EA15
4D061EB01
4D061EB14
4D061EB18
4D061EB20
4D061FA04
(57)【要約】
【課題】処理能力が高く、小型化・軽量化が実現でき、メンテナンス性に優れ、且つ環境に配慮したプラズマを利用した濁水処理装置を提供する。
【解決手段】濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるプラズマ発生装置3と、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収する浮上細粒土回収装置4と、金属製の陽電極板6と陰電極板7とを交互に配列してなる電気凝集装置5とを備える。前記電気凝集装置5の陽電極板6及び陰電極板7が濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ設置され、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土が、前記電気凝集装置5から遊離した金属イオンと凝集して沈降することにより分離・回収される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収する浮上細粒土回収装置と、金属製の陽電極板と陰電極板とを交互に配列してなる電気凝集装置とを備え、
前記電気凝集装置の陽電極板及び陰電極板が濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ設置され、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土が、前記電気凝集装置から遊離した金属イオンと凝集して沈降することにより分離・回収されることを特徴とするプラズマを利用した濁水処理装置。
【請求項2】
前記電気凝集装置の陽電極板及び陰電極板は、濁水の水面から20~40cmの深さ範囲にのみ設けられ、それより下方には設けられていない請求項1記載のプラズマを利用した濁水処理装置。
【請求項3】
前記浮上細粒土回収装置によって回収された濁水を脱水する脱水装置が備えられている請求項1記載のプラズマを利用した濁水処理装置。
【請求項4】
濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるとともに、このプラズマによって生成された水素イオンに引き寄せられて濁水中の細粒土を浮上させ、水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収して脱水装置に送るとともに、その下流側に、金属製の陽極板と陰極板とを交互に配列してなる電気凝集装置を、濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ配置することにより、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土を、前記電気凝集装置から遊離した金属イオンと凝集して沈降させ、分離・回収することを特徴とするプラズマを利用した濁水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種トンネル工事、ダム工事、地盤改良工事、地中連続壁造成工事などの工事において発生する濁水を簡便に且つ環境に配慮した方法で処理するプラズマを利用した濁水処理装置及び濁水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル又はシールドトンネルなどの各種トンネル工事、ダム工事、地盤改良工事、地中連続壁造成工事などの土木工事においては、削孔、ズリ積み、ズリ運搬による細粒土(粘土及びシルトなど)が湧水や工事用水に混入することで、排水基準(SS(浮遊物質)の基準値は200mg/L)を超える濁水が大量に発生する。
【0003】
この濁水は、処理システムに送られ処理される。一般に、濁水処理システムによる処理は、各種工事現場からの原水(濁水)が先ず原水槽に供給され貯留される。この原水のSSは概ね500~3000mg/Lである。所定量の原水が凝集沈降分離装置(所謂、シックナ)に移送され、ここで、無機凝集剤と高分子凝集剤とが添加されるとともに、中和処理のために炭酸ガスが投入される。前記凝集処理によって濁水中に浮遊する多くの微細粒子群がフロックとなって沈降分離される。この凝集沈降分離工程によって、原水のSSは、概ね10~25mg/Lまで低減される。
【0004】
前記無機凝集剤(例えば、PAC又は硫酸バンド等)は、排泥水中の浮遊物質が帯びている電荷(一般には負に帯電)に反対の電荷を与えて電気的に中性とし、粒子間相互の反発を無くして凝集させるものであり、前記高分子凝集剤(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド陰イオン変性物、ポリアクリルアミド、デンプン等)は、水中に懸濁しているコロイドや微粒子の表面電荷を中和して粒子を凝集させ、吸着架橋作用により大きなフロックを形成するためのものである。これらの凝集剤は単独で使用されることもあるが、凝集沈降効果を上げるために、併用されることが多い。
【0005】
しかし、凝集剤の使用は環境や生態系への影響が懸念されており、特に高分子凝集剤は、魚のえらに付着して窒息死させることがあり、環境への影響が大きく懸念されている。
【0006】
凝集剤の使用量を抑え環境への影響を大幅に低減するため、下記特許文献1には、土砂等の懸濁粒子を含む懸濁排水が供給される懸濁粒子凝集槽と、陽極板及び陰極板が交互に並行配置され前記懸濁粒子凝集槽に沈設される懸濁粒子凝集部と、前記懸濁粒子凝集部の前記陽極板及び前記陰極板の浸漬深さを調整する浸漬深さ調整部とを備えた懸濁粒子凝集装置が開示されている。特許文献1には、懸濁粒子凝集部の陽極板及び陰極板の浸漬深さを調整する浸漬深さ調整部を有するので、陽極板と陰極板の使用範囲を選択して、電極板を無駄なく最後まで効率的に使用することができ、電極板の長寿命性、環境保護性に優れるだけでなく、懸濁排水の処理量や濁質に応じて電極板の浸漬深さを調整することにより、電気凝集の処理能力を切り替えることができ、電極板の無駄な消耗を防ぐことができ、汎用性、懸濁排水処理の効率性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1などに開示される従来の電気凝集装置は、ユニット化されているため、1台あたりの濁水の処理能力が、例えば最大で40~60m3/時程度に限られており、処理に時間がかかる欠点があった。
【0009】
また、特許文献1記載の装置は、陽極板と陰極板との間に直流電圧を印加することにより、その間を流れる懸濁排水中の微小粒子を帯電させ、懸濁粒子のフロック化を促して、凝集体の一部を懸濁粒子凝集槽内に沈殿させ、沈殿汚泥水として排出、回収するものであるため、濁水中の細粒土の凝集化を促進させるため、電極板は凝集槽の底部まで達する水深方向のほぼ全長に亘る大型板を用いる必要がある。このため、装置が大型化・高重量化する欠点があるとともに、電極板に付着するスケールに対するメンテナンス性が悪いなどの課題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、処理能力が高く、小型化・軽量化が実現でき、メンテナンス性に優れ、且つ環境に配慮したプラズマを利用した濁水処理装置及び濁水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるプラズマ発生装置と、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収する浮上細粒土回収装置と、金属製の陽電極板と陰電極板とを交互に配列してなる電気凝集装置とを備え、
前記電気凝集装置の陽電極板及び陰電極板が濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ設置され、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土が、前記電気凝集装置から遊離した金属イオンと凝集して沈降することにより分離・回収されることを特徴とするプラズマを利用した濁水処理装置が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるプラズマ発生装置を備えている。濁水中の細粒土は、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上する。水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部は、前記浮上細粒土回収装置によって回収され、脱水装置に送られる。それ以外の濁水は、前記電気凝集装置において、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土が、前記電気凝集装置から遊離した金属イオンと凝集して沈降することにより分離・回収される。
【0013】
本発明に係る濁水処理装置は、濁水が供給される沈砂池などに、前記プラズマ発生装置、浮上細粒土回収装置、電気凝集装置の各装置を取り付けることで実施できるため、ユニット化する必要がなく、処理能力が高い。
【0014】
また、本発明に係る濁水処理装置では、前記プラズマ発生装置によってプラズマを発生させ、濁水中を浮遊する細粒土が、前記プラズマによって生成された水素イオンに引き寄せられて浮上するようになっているため、水面付近に浮上した細粒土を含む高濃度の濁水を前記浮上細粒土回収装置によって回収することで、細粒土の回収効率が高まり、処理能力の向上を図ることができる。
【0015】
また、前記浮上細粒土回収装置で回収された一部の濁水以外の濁水は、その下流側に設置された電気凝集装置によって細粒土が金属イオンと凝集して沈降することにより分離・回収される。このとき、前記電気凝集装置に備えられる陽電極板と陰電極板は、濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ設置され、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土と、前記電気凝集装置から遊離した金属イオンとが効率よく結合して沈降するため、細粒土の回収効率が高く、処理能力の向上を図ることができる。また、前記電気凝集装置は、濁水の上層部にのみ設置され、下層部には設けられていないため、電気凝集装置の小型化・軽量化が実現でき、清掃や交換の際における取扱いが容易になり、メンテナンス性に優れるようになる。
【0016】
更に、本発明に係る濁水処理装置によって濁水中の細粒土が大幅に低減できるため、その後の処理プラントにおける凝集剤の使用量を大幅に抑えることができ、環境に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記電気凝集装置の陽電極板及び陰電極板は、濁水の水面から20~40cmの深さ範囲にのみ設けられ、それより下方には設けられていない請求項1記載のプラズマを利用した濁水処理装置が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、前記電気凝集装置の陽電極板及び陰電極板を配置する深さ方向の範囲について規定しており、具体的には濁水の水面から20~40cmの範囲にのみ設け、それより下方には設けないようにしている。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記浮上細粒土回収装置によって回収された濁水を脱水する脱水装置が備えられている請求項1記載のプラズマを利用した濁水処理装置が提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明では、前記浮上細粒土回収装置によって回収した高濃度の細粒土が含まれる濁水を脱水するフィルタープレス等の脱水装置を設けている。
【0021】
請求項4に係る本発明として、濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるとともに、このプラズマによって生成された水素イオンに引き寄せられて濁水中の細粒土を浮上させ、水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収して脱水装置に送るとともに、その下流側に、金属製の陽極板と陰極板とを交互に配列してなる電気凝集装置を、濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ配置することにより、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて浮上した細粒土を、前記電気凝集装置から遊離した金属イオンと凝集して沈降させ、分離・回収することを特徴とするプラズマを利用した濁水処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、処理能力が高く、小型化・軽量化が実現でき、メンテナンス性に優れ、且つ環境に配慮したプラズマを利用した濁水処理装置及びプラズマを利用した濁水処理方法が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る濁水処理装置1を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図2】濁水中の細粒土が水素イオンH
+に引き寄せられて浮上する原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
本発明に係る濁水処理装置1は、
図1に示されるように、濁水にパルスパワーを印加することでプラズマを発生させるプラズマ発生装置3と、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンに引き寄せられて水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収する浮上細粒土回収装置4と、金属製の陽電極板6及び陰電極板7を交互に配列してなる電気凝集装置5とを備えている。
【0026】
前記濁水処理装置1は、濁水が供給される沈砂池2や、プラスチックや金属などの素材からなる上面が開放した処理槽などに設けることが可能である。沈砂池2の上流端には、上面などから濁水が供給される濁水の流入口が設けられ、これと反対側の下流端には、処理された濁水が排出され、次の処理プラント等へ送られる排出口が設けられている。前記沈砂池2内の濁水の深さは、50~200cmとするのがよい。
【0027】
前記プラズマ発生装置3は、前記沈砂池2の濁水の流入口付近に設置され、接続されたパルス発生装置からのパルスパワーを濁水に放電することでプラズマを発生させる装置である。放電形態としては、濁水中に水中電極を設置するとともに、濁水の水面より上部に気中電極を設置し、これらの電極間にパルスパワーを印加することにより、前記気中電極と水面との間で放電する液面プラズマを生じるようにしたものでもよいし、濁水中に正電極及び陰電極を離隔して配置し、これらの電極間にパルスパワーを印加することにより、これらの電極間で放電する水中プラズマを生じるようにしたものでもよい。前記パルスパワーとは、極めて短い時間に発生する巨大電力のことであり、例えば数百ナノ秒に数MW~数GWの電力を発生させるものである。前記プラズマとは、中性分子とプラスイオン、マイナスイオンが混在した状態のことである。パルスパワーを水面に印加するとプラズマが発生し、水素イオン、OHラジカル、オゾンなどの物質を生成する。
【0028】
前記プラズマ発生装置3によって濁水にパルスパワーを印加することでプラズマが発生し、このプラズマによって濁水中に水素イオンH
+が生成される(
図2(A)、(B))。この水素イオンH
+は、
図2(B)に示されるように、濁水の水面付近に生成される。濁水中に浮遊するシルトや粘土などの細粒土は、マイナスに帯電していることから、プラスに帯電する水素イオンH
+に電気的に引き寄せられて水面付近に浮上する(
図2(C))。
【0029】
前記浮上細粒土回収装置4は、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンH
+に引き寄せられて水面付近に浮上した細粒土を含む濁水の一部を回収する装置である。回収方法としては、
図1(A)に示されるように、掻き板4aによって水面付近の濁水を掻き取る方式や、掬いマスなどによって水面付近の濁水を掬い取る方式、濁水の水面より若干低い位置に上方に向けて開口する開口部を有する1又は複数の排水管を設置し、この開口部から排水管内に溢水した水面付近の濁水を回収する方式、濁水の水面にポンプ等に接続した配管の開口部を配置して、水面付近の濁水を吸い取る方式などを挙げることができる。
【0030】
前記浮上細粒土回収装置4によって回収された濁水には、沈砂池2に供給される原水より、高濃度の細粒土が含まれている。この濁水は、図示しないフィルタープレス等の脱水装置に送られ、脱水処理され、得られたケーキが廃棄処理される。前記脱水装置としては、前記フィルタープレス以外に、例えばロールプレス、ドラムプレス、ベルトフィルターなどの各種脱水装置を使用することができる。
【0031】
前記浮上細粒土回収装置4によって回収されなかった濁水及び前記浮上細粒土回収装置4より下層側の濁水は、次工程の前記電気凝集装置5に送られ、処理される。前記電気凝集装置5は、金属製の陽電極板6及び陰電極板7が交互に複数配列されるとともに、これら電極板6、7がそれぞれ電極板用印加装置の陽極及び陰極に接続され、電極板6、7間に所定の電圧が印加される。前記陽電極板6及び陰電極板7は、鉄やアルミニウム、ステンレス等の金属製のものを使用することができる。
【0032】
前記陽電極板6及び陰電極板7の間に電圧を付加すると、陽電極板6からプラスに帯電する金属イオン(Fe2+等)が遊離する。前述の通り、濁水中に浮遊するシルトや粘土などの細粒土は、マイナスに帯電していることから、プラスに帯電する金属イオンに電気的に引き合い結合する。これによって、濁水中の細粒土が団粒化して沈降する。
【0033】
前記電気凝集装置5の陽電極板6及び陰電極板7は、濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ設けられ、それより下方には設けられていない。好ましい深さ範囲としては水面から20~40cmであり、濁水の水深の50%以下、好ましくは30%以下とするのがよい。前記陽電極板6及び陰電極板7が濁水の水面から所定の深さ範囲にのみ設けられることにより、前記プラズマによって濁水中に生成された水素イオンH+に引き寄せられて浮上した細粒土と、陽電極板6から遊離した金属イオンとが効率よく結合するため、細粒土の回収効率が高くなり、処理能力の向上が図れる。また、前記陽電極板6及び陰電極板7が濁水の上層部にのみ設置され、下層部には設けられていないため、電気凝集装置5の小型化・軽量化が実現でき、清掃や交換の際における取扱いが容易になり、メンテナンス性に優れるようになる。
【0034】
前記電気凝集装置5の陽電極板6及び陰電極板7は、使用に伴い金属イオンが溶出するため、定期的に交換する必要がある。
【0035】
前記陽電極板6及び陰電極板7は、
図1に示される形態例では、濁水の流水方向と直交する方向に延び、濁水の流水方向にほぼ等間隔に間隔を空けて配置されているが、濁水の流水方向に延び、濁水の流水方向と直交する方向にほぼ等間隔に間隔を空けて配置してもよい。
【0036】
上述の通り、本発明に係る濁水処理装置1では、プラズマ発生装置3によってプラズマを発生させることで、このプラズマによって濁水中に生成された水素イオンH+に引き寄せられて細粒土を浮上させた上で、前記浮上細粒土回収装置4及び電気凝集装置5の2段階に亘って浮遊する細粒土を回収しているため、濁水中の細粒土が大幅に低減でき、その後の処理プラントにおける凝集剤の使用量をゼロにするか大幅に低減することができ、環境に対する影響を最小限に抑えることができる。
【0037】
また、本発明に係る濁水処理装置1は、濁水が供給される沈砂池2に、前記プラズマ発生装置3、浮上細粒土回収装置4及び電気凝集装置5の各装置を取り付けることで実施できるため、ユニット化する必要がなく、処理能力が非常に高い。
【符号の説明】
【0038】
1…濁水処理装置、2…沈砂池、3…プラズマ発生装置、4…浮上細粒土回収装置、5…電気凝集装置、6…陽電極板、7…陰電極板