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特開2024-51525流動接触分解用原料油及び流動接触分解方法
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  • 特開-流動接触分解用原料油及び流動接触分解方法 図1
  • 特開-流動接触分解用原料油及び流動接触分解方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051525
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】流動接触分解用原料油及び流動接触分解方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/02 20060101AFI20240404BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C10G45/02
C10G11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157739
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】千代田 範人
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA07
4H129CA09
4H129DA04
4H129DA16
4H129GA03
4H129KA02
4H129KA07
4H129KC03Y
4H129KC15Y
4H129KC16Y
4H129KD15Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129KD44Y
4H129NA02
4H129NA22
4H129NA26
4H129NA37
(57)【要約】
【課題】減圧軽油のみからなる留分を水素化処理して得られた留分のみを流動接触分解用原料油として用いた場合と比べて、転化率が同等以上となる、減圧軽油と軽質油からなる留分を水素化処理して得られる流動接触分解用原料油、及び前記流動接触分解用原料油を用いた流動接触分解方法の提供。
【解決手段】350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.3以上である留分Aの1~60体積%と、減圧軽油の40~99体積%からなる留分を水素化処理して得られる、流動接触分解用原料油。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.3以上である留分Aの1~60体積%と、
減圧軽油の40~99体積%からなる留分を水素化処理して得られる、流動接触分解用原料油。
【請求項2】
前記流動接触分解用原料油の総体積に対する340~400℃で留出する留分の含有量が20~50体積%である、請求項1に記載の流動接触分解用原料油。
【請求項3】
前記留分Aは、原油を常圧蒸留して得られる直留軽油留分を含む留分Bを含み、前記留分Bの総体積に対する直留軽油留分の含有量が80~100体積%である、請求項1又は2に記載の流動接触分解用原料油。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の流動接触分解用原料油を含む原料油を流動接触分解装置で処理する、流動接触分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解用原料油及び流動接触分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解装置は、石油精製工程で得られる低品位な重質油を含む原料油を接触分解処理することによって、ガソリン、灯油、軽油、並びに石油化学原料であるプロピレン、エチレンなど付加価値の高い分解油を製造する装置である。重質油としては、原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる常圧残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる減圧軽油を間接脱硫装置で脱硫処理して得られる脱硫減圧軽油などが用いられている。
【0003】
流動接触分解装置としては、流動接触分解触媒に原料油を接触させて前記原料油を分解し、分解油を生成するライザー、分解油と流動接触分解触媒とを分離する反応塔、及び分離した流動接触分解触媒上に堆積したカーボン(コーク)を燃焼することで触媒を再生する再生塔を備えるものが従来からよく知られている(例えば、特許文献1)。流動接触分解触媒は粉末状の固体触媒であり、例えば、ゼオライトを主成分として含む固体触媒が広く使用されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-102204号公報
【特許文献2】特開2008-173583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流動接触分解装置は、機器設定の最大処理量での運用が最も収益性が高いと考えられる。一方、減圧軽油が不足し、結果として脱硫減圧軽油が、機器設定の最大処理量に対して不足する場合がある。
【0006】
本願の発明者は、減圧軽油に、軽質油を混合し、得られた留分を間接脱硫装置で脱硫処理して得られる脱硫減圧軽油を含む脱硫留分を用いることにより上述の不足分を補う検討を行った。この場合、脱硫減圧軽油のみを原料油として流動接触分解装置で処理した場合と、前記脱硫減圧軽油を含む脱硫留分を原料油として流動接触分解装置で処理した場合で、原料油の転化率は同等程度となると本願の発明者は予想していた。しかしながら、予想に反し後者では前者の場合よりも原料油の転化率が低下することがあることが判明した。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、減圧軽油のみからなる留分を水素化処理して得られた留分のみを流動接触分解用原料油として用いた場合と比べて、転化率が同等以上となる、減圧軽油と軽質油からなる留分を水素化処理して得られる流動接触分解用原料油、及び前記流動接触分解用原料油を用いた流動接触分解方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.3以上である留分Aの1~60体積%と、減圧軽油の40~99体積%からなる留分を水素化処理して得られる、流動接触分解用原料油。
[2] 前記流動接触分解用原料油の総体積に対する340~400℃で留出する留分の含有量が20~50体積%である、[1]に記載の流動接触分解用原料油。
[3] 前記留分Aは、原油を常圧蒸留して得られる直留軽油留分を含む留分Bを含み、前記留分Bの総体積に対する直留軽油留分の含有量が80~100体積%である、[1]又は[2]に記載の流動接触分解用原料油。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の流動接触分解用原料油を含む原料油を流動接触分解装置で処理する、流動接触分解方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、減圧軽油のみからなる留分を水素化処理して得られた留分のみを流動接触分解用原料油として用いた場合と比べて、転化率が同等以上となる、減圧軽油と軽質油からなる留分を水素化処理して得られる流動接触分解用原料油、及び前記流動接触分解用原料油を用いた流動接触分解方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る流動接触分解用原料油の製造方法を示す模式図である。
図2】流動接触分解装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0012】
<定義>
「沸点範囲」とは、蒸留初留点(Initial boiling point、以下「IBP」ともいう)~終点(end point、以下、「EP」ともいう)の範囲を意味する。
IBP、EP、X容量%留出温度(Xは0超100未満である。)は、JIS K2254(2018)「石油製品-蒸留性状の求め方」に準拠して測定することができる。
硫黄分は、JIS K 2541-4(2003)「原油及び石油製品-硫黄分試験方法 第4部:放射線式励起法」に準拠して測定することができる。
【0013】
「直留軽油留分」とは、原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分を意味する。直留軽油留分の沸点範囲は、例えば、200~460℃である。
【0014】
「減圧軽油」とは、原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる常圧残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分の内、重質な留分を意味する。減圧軽油の沸点範囲は、例えば、250~600℃である。
「軽質減圧軽油」とは、原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる常圧残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分の内、軽質な留分を意味する。軽質減圧軽油の沸点範囲は、例えば、200~360℃である。
【0015】
「脱硫減圧軽油」とは、減圧軽油を含む留分を間接脱硫装置で脱硫処理して得られる留分の内、重質な留分を意味する。脱硫減圧軽油の沸点範囲は、例えば、200~600℃である。脱硫減圧軽油の総質量に対する硫黄分は、例えば0.05~0.5質量%である。
「脱硫軽質減圧軽油」とは、減圧軽油を含む留分を間接脱硫装置で脱硫処理して得られる留分の内、軽質な留分を意味する。脱硫軽質減圧軽油の沸点範囲は、例えば、160~370℃である。脱硫軽質減圧軽油の総質量に対する硫黄分は、例えば0.005~0.02質量%である。
【0016】
≪流動接触分解用原料油≫
本実施形態の流動接触分解用原料油は、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.3以上である留分Aの1~60体積%と、減圧軽油の40~99体積%からなる留分を水素化処理して得られる、流動接触分解用原料油である。
【0017】
留分Aの含有量は、1~60体積%であり、1~50体積%であることが好ましく、3~35体積%であることがより好ましい。留分Aの含有量が前記範囲の下限値以上であると、軽質油である留分Aの処理量が向上する。留分Aの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油の転化率が向上する。
【0018】
減圧軽油の含有量は、40~99体積%であり、50~99体積%であることが好ましく、65~97体積%であることがより好ましい。減圧軽油の含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油の転化率が向上する。減圧軽油の含有量が前記範囲の上限値以下であると、軽質油である留分Aの処理量が向上する。
【0019】
流動接触分解用原料油の総体積に対する340~400℃で留出する留分の含有量が20~50体積%であることが好ましく、20~40体積%であることがより好ましく、25~40体積%であることがさらに好ましい。前記含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油の転化率が向上する。前記含有量が前記範囲の上限値以下であると、本来のFCC原料油である減圧軽油に由来する留分が多くなり、重質留分の分解によるメリットを受けやすくなる。
【0020】
流動接触分解用原料油の沸点範囲は、例えば、200~600℃であり、220~580℃であることが好ましく、250~550℃であることがより好ましい。
流動接触分解用原料油の10容量%留出温度は、300~400℃であることが好ましく、320~380℃であることがより好ましく、340~360℃であることがさらに好ましい。
流動接触分解用原料油の50容量%留出温度は、400~500℃であることが好ましく、420~480℃であることがより好ましく、440~460℃であることがさらに好ましい。
流動接触分解用原料油の90容量%留出温度は、480~580℃であることが好ましく、490~560℃であることがより好ましく、510~540℃であることがさらに好ましい。
流動接触分解用原料油の総質量に対する硫黄分は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.05~0.4質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
<減圧軽油>
減圧軽油の沸点範囲は、250~600℃であることが好ましく、260~580℃であることがより好ましく、280~550℃であることがさらに好ましい。
減圧軽油の10容量%留出温度は、300~400℃であることが好ましく、320~380℃であることがより好ましく、340~360℃であることがさらに好ましい。
減圧軽油の50容量%留出温度は、400~500℃であることが好ましく、420~480℃であることがより好ましく、430~460℃であることがさらに好ましい。
減圧軽油の90容量%留出温度は、480~580℃であることが好ましく、500~560℃であることがより好ましく、510~540℃であることがさらに好ましい。
【0022】
<留分A>
留分Aは、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.3以上である留分である。前記比率は、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。前記比率は、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。前記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
前記比率が前記下限値以上であると、原料油の転化率が向上する。重質分が不足する場合に軽質分で補うという本発明の目的から、前記比率は上限値以下とすることが好ましい。
【0023】
留分Aの沸点範囲は、200~500℃であることが好ましく、220~480℃であることがより好ましく、250~450℃であることがさらに好ましい。
留分Aの10容量%留出温度は、280~380℃であることが好ましく、300~360℃であることがより好ましく、320~340℃であることがさらに好ましい。
留分Aの50容量%留出温度は、320~420℃であることが好ましく、340~400℃であることがより好ましく、340~360℃であることがさらに好ましい。
留分Aの90容量%留出温度は、350~450℃であることが好ましく、370~430℃であることがより好ましく、390~410℃であることがさらに好ましい。
留分Aの硫黄分は特に限定はないが、留分Aが直留軽油などの原油由来の留分の場合には留分Aの総質量に対する硫黄分は、0.5~1.5質量%であることが好ましく、0.5~1.3質量%であることがより好ましく、0.5~1.1質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
留分Aは、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.3以上である留分である限り特に限定されない。
【0025】
留分Aとしては、原油を常圧蒸留して得られる直留軽油留分を含む留分(以下、「留分B」ともいう)、軽質減圧軽油を含む留分、廃食油を含む留分、FT合成油を含む留分、プラスチック油化油を含む留分等が挙げられ、留分Bが好ましい。留分Bに含まれる直留軽油の沸点範囲としては、10容量%留出温度で300℃以上であることが好ましく、310℃以上であることがより好ましく、320℃以上であることがさらに好ましい。
【0026】
留分Bの総体積に対する直留軽油の合計含有量は、80~100体積%であることが好ましく、82~100体積%であることがより好ましく、85~100体積%であることがさらに好ましい。
【0027】
留分Bの沸点範囲は、例えば、250~600℃であり、300~500℃であることが好ましく、350~450℃であることがより好ましい。
留分Bの10容量%留出温度は、280~380℃であることが好ましく、300~360℃であることがより好ましく、320~340℃であることがさらに好ましい。
留分Bの50容量%留出温度は、310~410℃であることが好ましく、330~390℃であることがより好ましく、350~370℃であることがさらに好ましい。
留分Bの90容量%留出温度は、350~450℃であることが好ましく、370~430℃であることがより好ましく、390~410℃であることがさらに好ましい。
【0028】
<流動接触分解用原料油の製造方法>
図1は一実施形態に係る流動接触分解用原料油の製造方法を示す模式図である。以下、図1を参照しながら、本実施形態の流動接触分解用原料油の製造方法を説明する。
【0029】
図1は、本実施形態の流動接触分解用原料油の製造方法を示す模式図である。
原油を常圧蒸留装置100で常圧蒸留して常圧残渣油を得る。常圧残渣油を減圧蒸留装置200で減圧蒸留して減圧軽油を得る。減圧軽油に留分Aを混合することにより、混合減圧軽油を得る。混合減圧軽油は、留分Aの1~60体積%と、減圧軽油の40~99体積%からなる留分である。混合減圧軽油を水素化処理して脱硫混合減圧軽油を得る。水素化処理は、本分野で公知の水素化処理装置により行うことができる。図1では、水素化処理装置として間接脱硫装置300を例示している。このようにして得られた脱硫混合減圧軽油が本実施形態の流動接触分解用原料油である。
【0030】
なお、上記説明では、混合減圧軽油を間接脱硫装置300で脱硫処理して得られた脱硫混合減圧軽油を流動接触分解用原料油としたが、前記脱硫混合減圧軽油からガス成分等の極めて軽質な留分を分離した後の精製脱硫混合減圧軽油を流動接触分解用原料油としてもよい。また、脱硫減圧軽油留分を重質な留分(脱硫減圧軽油)と軽質な留分(脱硫軽質減圧軽油)に分離し、脱硫減圧軽油、脱硫軽質減圧軽油、及び必要に応じてその他の留分を混合して得られる混合留分を流動接触分解用原料油としてもよい。
【0031】
混合減圧軽油の沸点範囲は、例えば、250~600℃であり、260~590℃であることが好ましく、270~580℃であることがより好ましい。
混合減圧軽油の10容量%留出温度は、300~400℃であることが好ましく、320~380℃であることがより好ましく、340~360℃であることがさらに好ましい。
混合減圧軽油の50容量%留出温度は、350~450℃であることが好ましく、360~430℃であることがより好ましく、380~420℃であることがさらに好ましい。
混合減圧軽油の90容量%留出温度は、450~550℃であることが好ましく、470~540℃であることがより好ましく、490~530℃であることがさらに好ましい。
【0032】
脱硫混合減圧軽油及び精製脱硫混合減圧軽油の沸点範囲は、例えば、200~600℃であり、220~580℃であることが好ましく、250~550℃であることがより好ましい。
脱硫混合減圧軽油及び精製脱硫混合減圧軽油の10容量%留出温度は、300~400℃であることが好ましく、320~380℃であることがより好ましく、340~360℃であることがさらに好ましい。
脱硫混合減圧軽油及び精製脱硫混合減圧軽油の50容量%留出温度は、400~500℃であることが好ましく、420~480℃であることがより好ましく、440~460℃であることがさらに好ましい。
脱硫混合減圧軽油及び精製脱硫混合減圧軽油の90容量%留出温度は、480~580℃であることが好ましく、490~560℃であることがより好ましく、510~540℃であることがさらに好ましい。
脱硫混合減圧軽油及び精製脱硫混合減圧軽油の総質量に対する硫黄分は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.05~0.4質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
脱硫減圧軽油の沸点範囲は、200~600℃であることが好ましく、220~580℃であることがより好ましく、240~560℃であることがさらに好ましい。
脱硫減圧軽油の10容量%留出温度は、260~360℃であることが好ましく、280~340℃であることがより好ましく、300~320℃であることがさらに好ましい。
脱硫減圧軽油の50容量%留出温度は、330~430℃であることが好ましく、350~410℃であることがより好ましく、370~390℃であることがさらに好ましい。
脱硫減圧軽油の90容量%留出温度は、430~530℃であることが好ましく、450~510℃であることがより好ましく、470~490℃であることがさらに好ましい。
脱硫減圧軽油の総質量に対する硫黄分は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.05~0.4質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
脱硫軽質減圧軽油の沸点範囲は、160~370℃であることが好ましく、180~360℃であることがより好ましく、210~360℃であることがさらに好ましい。
脱硫軽質減圧軽油の10容量%留出温度は、220~320℃であることが好ましく、240~300℃であることがより好ましく、260~280℃であることがさらに好ましい。
脱硫軽質減圧軽油の50容量%留出温度は、260~360℃であることが好ましく、280~340℃であることがより好ましく、300~320℃であることがさらに好ましい。
脱硫軽質減圧軽油の90容量%留出温度は、290~370℃であることが好ましく、310~360℃であることがより好ましく、330~350℃であることがさらに好ましい。
脱硫軽質減圧軽油の総質量に対する硫黄分は、0.005~0.02質量%であることが好ましく、0.005~0.015質量%であることがより好ましく、0.01~0.015質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
脱硫減圧軽油留分を脱硫減圧軽油と脱硫軽質減圧軽油に分離し、脱硫減圧軽油、脱硫軽質減圧軽油、及び必要に応じてその他の留分を混合して得られる混合留分を流動接触分解用原料油とする場合、流動接触分解用原料油の総体積に対する脱硫減圧軽油及び脱硫軽質減圧軽油の合計含有量は、60~100体積%であることが好ましく、70~100体積%であることがより好ましく、80~100体積%であることがさらに好ましい。
流動接触分解用原料油の総体積に対する脱硫減圧軽油の含有量は、30~80体積%であることが好ましく、40~85体積%であることがより好ましく、50~80体積%であることがさらに好ましい。
流動接触分解用原料油の総体積に対する脱硫軽質減圧軽油の含有量は、10~50体積%であることが好ましく、10~40体積%であることがより好ましく、10~35体積%であることがさらに好ましい。
前記その他の留分としては、例えば、廃食油、FT合成油、プラスチック油化油、等が挙げられる。その他の留分の含有量は、0~40体積%であることが好ましく、0~30体積%であることがより好ましく、0~20体積%であることがさらに好ましい。
【0036】
<水素化処理>
水素化処理は、本分野で公知の方法により行うことができる。例えば、間接脱硫触媒を備える間接脱硫装置に前記混合減圧軽油(原料油)及び水素を供給することにより行うことができる。以下、水素化処理が間接脱硫処理である場合を具体的に説明する。
【0037】
間接脱硫触媒としては、アルミナは、ゼオライト、ボリア、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化リン等の無機酸化物担体に、周期表第6族金属から選ばれる少なくとも1種、及び周期表第9族金属又は第10族金属から選ばれる少なくとも1種のいずれか一方又は両方が担持された触媒が例として挙げられる。無機酸化物担体としてはアルミナ担体であることが好ましく、γアルミナ担体であることがより好ましい。周期表第6族金属としては、モリブデンであることが好ましい。周期表第9族金属又は第10族金属としてはニッケル、コバルトであることが好ましく、コバルトであることがより好ましい。
【0038】
水素/原料油比は、100~1000Nm/kLであることが好ましく、175~925Nm/kLであることがより好ましく、250~850Nm/kLであることがさらに好ましい。
水素分圧は、3.5~10MPaであることが好ましく、4~9MPaであることがより好ましい。水素分圧が前記範囲の下限値以上であると、水素化反応が進行しやすい。
反応温度は、330~430℃であることが好ましく、350~410℃であることがより好ましい。反応温度が前記範囲の下限値以上であると、触媒活性を充分に発揮できる。反応温度が前記範囲の上限値以下であると、重質炭化水素油の熱分解が適度に進行しつつも、触媒劣化が起こり難い。反応温度とは触媒床の平均温度を意味する。
LHSVは、0.2~2hr-1であることが好ましく、0.5~2hr-1であることがより好ましい。
【0039】
≪流動接触分解方法≫
本実施形態の流動接触分解方法は、上述の流動接触分解用原料油を含む原料油を流動接触分解装置で処理する、流動接触分解方法である。
本実施形態の分解油の製造方法は、上述の流動接触分解用原料油を含む原料油を流動接触分解装置で処理して分解油を製造する、分解油の製造方法である。
以下、上述の流動接触分解用原料油を「原料油1」、上述の原料油1を含む原料油を「原料油2」ともいう。
【0040】
<流動接触分解装置>
本実施形態の流動接触分解装置(以下、「FCC装置」ともいう)は、流動接触分解触媒を備える。流動接触分解触媒に原料油2を接触させて原料油2を分解することによって分解油を生成するライザー、分解油と流動接触分解触媒とを分離する反応塔、及び分離した流動接触分解触媒上に堆積したカーボン(コーク)を燃焼することによって触媒を再生する再生塔を備える。以下、図3を参照して、本実施形態のFCC装置の一例を説明する。図3は、FCC装置の一例を示す構成図である。FCC装置1はライザー10、反応塔20、及び再生塔30を備える。
【0041】
(ライザー)
ライザー10は、流動接触分解触媒に原料油2を接触させて前記原料油2を分解することによって分解油を生成する装置である。ライザー10は、例えば、再生塔30で再生された流動接触分解触媒を供給する再生触媒移送ライン34、及び原料油2を供給する原料油供給ライン11と接続されている。また、原料油供給ライン上には、予熱装置12が備えられている。さらにライザー10の上方は、反応塔20と接続されている。
【0042】
(反応塔)
反応塔20は、分解油と流動接触分解触媒とを分離する装置である。反応塔20は、例えば、サイクロン21、分解油排出ライン22、ストリッパー23及び反応後触媒移送ライン24を備える。サイクロン21の上方は、分解油排出ライン22と接続されている。
さらにストリッパー23の底部と再生塔30の下部とは反応後触媒移送ライン24で接続されている。
【0043】
(再生塔)
再生塔30は、反応塔20で分離した流動接触分解触媒上のコークを燃焼させることによって触媒を再生する装置である。再生塔30は、例えば、エアブロワー31、エアグリッド32、サイクロン33、再生触媒移送ライン34及び排ガスライン35を備える。再生塔の底部とエアブロワー31はエアグリッド32を介して接続されている。さらに再生塔の上部にはサイクロン33が設置されており、サイクロン33の上方は排ガスライン35と接続されている。
【0044】
(精製設備)
流動接触分解装置1の反応塔20は、分解油排出ライン22を介して精製設備(不図示)に接続されていることが好ましい。精製設備は、FCC装置で生成した分解油を、ガソリン、灯油、軽油、並びに石油化学原料等に分離する設備であり、例えば蒸留塔である。
【0045】
<流動接触分解触媒>
本実施形態の流動接触分解触媒(以下、「FCC触媒」ともいう)としては、分解活性を有するゼオライト、マトリックス成分であるアルミナ、粘度鉱物などの無機酸化物、及びこれらを結合する結合剤から構成させる流動接触分解触媒が例として挙げられる。ゼオライトとしては、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト、βゼオライト、ZSM-5型ゼオライト等のゼオライトを含むことが好ましく、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを含むことがより好ましい。前記ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとしては、ソーダライト、A型ゼオライト、EMT、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト等から選ばれる一種以上を挙げることができ、安定化Y型ゼオライトであることが好ましい。
【0046】
<流動接触分解処理>
本実施形態において流動接触分解処理は、本分野において公知の方法によって実施することができる。流動接触分解処理は、FCC装置において、原料油2とFCC触媒を接触させることにより実施することができる。
【0047】
原料油2は、原料油1のみからなる原料油でもよいし、原料油1とその他の留分を含む原料油でもよい。
前記その他の留分としては、常圧残渣油及び常圧残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる減圧残渣油のいずれか一方又は両方を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる留分、前記減圧残渣油を重質油熱分解装置で熱分解して得られるコーカー分解留分を脱硫処理して得られる留分等が例として挙げられる。
【0048】
前記その他の留分の性状は以下の性状であることが好ましい。
原料油2の沸点範囲は、200~600℃であることが好ましく、220~580℃であることがより好ましく、250~550℃であることがさらに好ましい。
原料油2の10容量%留出温度は、300~400℃であることが好ましく、320~380℃であることがより好ましく、340~360℃であることがさらに好ましい。
原料油2の50容量%留出温度は、400~500℃であることが好ましく、420~480℃であることがより好ましく、440~460℃であることがさらに好ましい。
原料油2の90容量%留出温度は、480~580℃であることが好ましく、490~560℃であることがより好ましく、510~540℃であることがさらに好ましい。
原料油2の総質量に対する硫黄分は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.05~0.4質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらに好ましい。
【0049】
原料油2の流動接触分解処理は、垂直に据え付けられたライザー10、反応塔20、再生塔30からなるFCC装置1に、FCC触媒を連続的に循環させることにより行うことができる。なお、本明細書において、流動接触分解装置(FCC装置)には、残油流動接触分解装置(RFCC装置)も含まれる。すなわち、本明細書において、流動接触分解処理には、残油流動接触分解処理も含まれる。
【0050】
以下、FCC装置によって行われる流動接触分解処理を具体的に説明する。
ライザー10内には、揚送用流体が上方に向かって流通しており、再生触媒移送ライン34より供給されたFCC触媒は、揚送用流体とともにライザー10内を上方へ流れる。
原料油2は、予熱装置12によって所定の温度に加熱され、スチームを加えられた後、原料油供給ライン11からライザー10に供給される。ライザー10内に供給された原料油2がFCC触媒と接触し分解反応が起こる。分解反応により生成した分解油とFCC触媒は反応塔20へ移送される。
【0051】
ライザー10の運転条件としては、反応温度が490~530℃であることが好ましく、500~520℃であることがより好ましい。前記反応温度が前記範囲の下限値以上であると、原料油2の分解反応が進行しやすく、原料油2の転化率が向上する。前記反応温度が前記範囲の上限値以下であると、熱分解により生成するドライガスなどの軽質ガス生成量やコーク生成量を軽減することができ、目的とするガソリン、石油化学原料等の収率を相対的に増大させ易くなるため経済的である。
【0052】
反応圧力は0.10MPa(常圧)~0.49MPa(5kg/cm)であることが好ましく、0.10MPa(常圧)~0.29MPa(3kg/cm)であることがより好ましい。分解反応は、反応物のモル数に対し、生成物のモル数が増加する反応であるため、ライザー10における反応圧力が0.49MPa以下であると、熱力学的(平衡的)に有利となる。
【0053】
FCC触媒/原料油2の質量比は6~12であることが好ましく、7~11であることがより好ましい。前記質量比が前記範囲の下限値以上であると、ライザー10内の触媒濃度を適度に保つことができ、原料油の分解効率が向上する。前記質量比が前記範囲の上限値以下である場合も、原料油の分解反応が効果的に進行し、触媒濃度の上昇に見合った分解反応を進行させ易くなる。
【0054】
ライザー10内で原料油2の分解により生成した分解油は、サイクロン21に供給される。サイクロン21は、遠心力を利用して、分解油をFCC触媒から分離する。そして、分解油は、分解油排出ライン22により、反応塔20から排出され、精製設備へと移送される。
【0055】
サイクロン21によって分離されたFCC触媒はストリッパー23に供給される。ストリッパー23には、スチーム、窒素等が供給されている。ストリッパー23では、スチーム、窒素等によりFCC触媒上の炭化水素を除去する。そして、FCC触媒は、反応後触媒移送ライン24により反応塔20から排出され、再生塔30に移送される。
【0056】
ストリッパー23におけるストリッピング処理時の温度は、通常470~530℃であり、480~520℃であることが好ましく、490~510℃であることがより好ましい。ストリッピングに使用されるガスとしては、ボイラにより発生されたスチームやコンプレッサー等により昇圧された窒素等の不活性ガスなどが使用される。
【0057】
エアブロワー31からエアグリッド32に空気が供給され、エアグリッド32から再生塔30内に空気が供給され、再生塔30に移送されたストリッピング処理後のFCC触媒上のコークは燃焼し、FCC触媒は再生される。再生したFCC触媒と、コークの燃焼により生じた排ガスとはサイクロン33により分離される。再生したFCC触媒は再生触媒移送ライン34により再生塔30から排出され、ライザー10に供給される。排ガスは、排ガスライン35により再生塔30から排出される。
【0058】
触媒再生塔の運転条件としては、再生温度が600~800℃であることが好ましく、700~750℃であることがより好ましい。
触媒再生塔における再生温度が600℃以上であると、コークの燃焼が充分に進み、触媒活性が充分に回復する。また、触媒再生塔における再生温度が800℃以下であると、装置材質への悪影響が低い。
【0059】
分解油排出ライン22により、反応塔20から精製設備へと移送された分解油は、精製設備(蒸留塔)において、塔頂から炭素数1~13の化合物を含む留分が留出され、塔の中段から重質分解軽油(HCO)及び軽質分解軽油(LCO)が留出され、塔底から流動接触分解残油(SLO)が留出される。
【実施例0060】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<蒸留性状の測定方法>
実施例1~4、比較例1~4、参考例1~6で使用した各留分の蒸留性状は、JIS K2254(2018)「石油製品-蒸留性状の求め方」に準拠して測定した。
【0062】
<流動接触分解用原料油の調製に使用した留分>
実施例1~4、比較例1~4、参考例1~6で使用した流動接触分解用原料油の製造に使用した留分は以下の通りである。各留分の蒸留性状を表1に示す。
・減圧軽油(以下、表1の記載を含め、「VGO」ともいう)。
・10容量%留出温度が330℃以上の直留軽油(以下、表1の記載を含め、「LGO(330+)」ともいう)。
・軽質減圧軽油(以下、表1の記載を含め、「LVGO」ともいう)。
【0063】
<間接脱硫処理>
モリブデン及びコバルトがアルミナに担持された間接脱硫触媒を備える間接脱硫装置に原料油を供給することにより行った。具体的には反応温度に加熱した原料油と水素含有ガスとの混合流体を、間接脱硫装置の上部より導入して、下記の条件で脱硫反応と分解反応の水素化反応を進行させ、生成油とガスの混合流体を、反応装置の下部より流出させ、気液分離器で生成油を分離した。そして、生成油を常圧蒸留装置で常圧蒸留し、塔頂から軽質減圧軽油を、塔底から減圧軽油を得た。反応条件としては、圧力(水素分圧);5.7MPa、液空間速度 ;0.511hr-1、水素/原料油比;1621scf/bbl、反応温度は生成油中の硫黄分が0.08質量%になるように設定した。
【0064】
<流動接触分解処理>
実機の流動接触分解装置で長時間反応させて得られた、安定化Y型ゼオライトを活性成分として含むFCC平衡触媒を、沸騰床マイクロ活性試験装置(ACE-Model R+、KAYSER TECHNOLOGY社製)に充填した。後述の実施例1~4、比較例1~4、参考例1~6の原料油を用いて、反応温度510℃、FCC触媒の再生温度650℃で流動接触分解処理を行った。
得られた分解油を、Agilent technologies社製のAC Simdis Analyzerを用いてガスクロ蒸留法にて解析し、Dry Gas(H、C1、C2化合物)、LPG(C3、C4化合物)、ガソリン(沸点27~190℃)、LCO及びHCO(沸点190℃超350℃以下)、SLO(沸点350℃超)の収率生成量を解析した。また、Cokeの収率は再生塔におけるCOおよびCO濃度より解析、算出した。さらに、Dry Gasに含まれるH(表2、3A、3B中のH2)、C1化合物(表2、3A、3B中のC1)、C2化合物(表2、3A、3B中のC2)、及びLPGに含まれるC3化合物(表2、3A、3B中のTotal C3)、C4化合物(表2、3A、3B中のTotal C4)の収率をガスクロマトグラフィーにより、定量した。
転化率は、100%-LCO及びHCOの収率(質量%)-SLOの収率(質量%)より算出した。
【0065】
[参考例1]
VGOを間接脱硫処理して、脱硫減圧軽油(以下、「T-VGO1」ともいう)及び脱硫軽質減圧軽油(以下、「HDS-LGO1」ともいう)を製造した。T-VGO1を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。
【0066】
[実施例1]
VGOとLGO(330+)を混合して混合油2を得た。LGO(330+)は、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が1.78であった。なお、混合比率は、VGOの75体積%、LGO(330+)の25体積%とした。混合油2を間接脱硫処理して、脱硫減圧軽油(以下、「T-VGO2」ともいう)及び脱硫軽質減圧軽油(以下、「HDS-LGO2」ともいう)を製造した。T-VGO2とHDS-LGO2を混合して混合油2’を得た。なお、混合比率は、T-VGO2の75体積%、HDS-LGO2の25体積%とした。この混合油2’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。
【0067】
[実施例2]
VGOとLGO(330+)を混合して混合油3を得た。なお、混合比率は、VGOの50体積%、LGO(330+)の50体積%とした。LGO(330+)は、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が1.78であった。混合油3を間接脱硫処理して、脱硫減圧軽油(以下、「T-VGO3」ともいう)及び脱硫軽質減圧軽油(以下、「HDS-LGO3」ともいう)を製造した。T-VGO3とHDS-LGO3を混合して混合油3’を得た。なお、混合比率は、T-VGO3の68体積%、HDS-LGO3の32体積%とした。この混合油3’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。
【0068】
[参考例2]
参考例1におけるT-VGO1とHDS-LGO1を混合して混合油4を得た。なお、混合比率は、T-VGO1の75体積%、HDS-LGO1の25体積%とした。この混合油4を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。また、HDS-LGO1の蒸留性状を表1に示す。
【0069】
[参考例3]
参考例1におけるT-VGO1とHDS-LGO1を混合して混合油5を得た。なお、混合比率は、T-VGO1の50体積%、HDS-LGO1の50体積%とした。この混合油5を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。
【0070】
[比較例1]
VGOとLVGOを混合して混合油6を得た。なお、混合比率は、VGOの75体積%、LVGOの25体積%とした。LVGOは、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.09であった。混合油6を間接脱硫処理して、脱硫減圧軽油(以下、「T-VGO4」ともいう)及び脱硫軽質減圧軽油(以下、「HDS-LGO4」ともいう)を製造した。T-VGO4とHDS-LGO4を混合して混合油6’を得た。なお、混合比率は、T-VGO4の66体積%、HDS-LGO4の34体積%とした。この混合油6’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。
【0071】
[比較例2]
VGOとLVGOを混合して混合油7を得た。なお、混合比率は、VGOの50体積%、LVGOの50体積%とした。LVGOは、350℃以下で留出する留分の総体積に対する350℃以上で留出する留分の総体積の比率が0.09であった。混合油7を間接脱硫処理して、脱硫減圧軽油(以下、「T-VGO5」ともいう)及び脱硫軽質減圧軽油(以下、「HDS-LGO5」ともいう)を製造した。T-VGO5とHDS-LGO5を混合して混合油7’を得た。なお、混合比率は、T-VGO5の50体積%、HDS-LGO5の50体積%とした。この混合油7’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を9として、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
実施例1、2では、VGOのみを水素化処理して得られた従来の原料油を使用した参考例1~3よりも転化率が高く、ガソリンの収率が高かった。一方、比較例1、2では、VGOのみを水素化処理して得られた従来の原料油を使用した参考例1~3よりも転化率が低かった。
【0075】
[参考例4]
参考例1と同様にT-VGO1を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Aに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Aに示す。
【0076】
[実施例3]
実施例1と同様に混合油2’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Aに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Aに示す。
【0077】
[実施例4]
実施例2と同様に混合油3’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Aに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Aに示す。
【0078】
[参考例5]
参考例2と同様に混合油4を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Bに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Bに示す。
【0079】
[参考例6]
参考例3と同様に混合油5を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Bに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Bに示す。
【0080】
[比較例3]
比較例1と同様に混合油6’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Bに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Bに示す。
【0081】
[比較例3]
比較例2と同様に混合油7’を原料油として用い、FCC触媒/原料油の質量比を表3Bに示すように変更して、流動接触分解処理を行った。転化率及び各成分の収率を表3Bに示す。
【0082】
【表3A】
【0083】
【表3B】
【0084】
同等のFCC触媒/原料油の質量比の場合、実施例3、4では、VGOのみを水素化処理して得られた従来の原料油を使用した参考例4~6よりも転化率が高く、ガソリンの収率が高かった。一方、同等のFCC触媒/原料油の質量比の場合、比較例3、4では、VGOのみを水素化処理して得られた従来の原料油を使用した参考例4~6よりも転化率が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る流動接触分解用原料油を使用すると、脱硫減圧軽油のみを流動接触分解用原料油として用いた場合と比べて、転化率が同等以上となるため有用である。すなわち、減圧軽油(すなわち、脱硫減圧軽油)が、流動接触分解装置の機器設定の最大処理量よりも不足する場合、本発明に係る流動接触分解用原料油を使用することにより、流動接触分解装置の稼働率を高め、収益性が高めることができる。
【符号の説明】
【0086】
1…流動接触分解装置、10…ライザー、11…原料油供給ライン、12…予熱装置、20…反応塔、21…サイクロン、22…分解油排出ライン、23…ストリッパー、24…反応後触媒移送ライン、30…再生塔、31…エアブロワー、32…エアグリッド、33…サイクロン、34…再生触媒移送ライン、35…排ガスライン、100…常圧蒸留装置、200…減圧蒸留装置、300…間接脱硫装置
図1
図2