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特開2024-51527情報処理方法、ケイ素濃度算出装置、ケイ素濃度算出プログラム、及びコンピュータの非一時的可読記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051527
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】情報処理方法、ケイ素濃度算出装置、ケイ素濃度算出プログラム、及びコンピュータの非一時的可読記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C10G 99/00 20060101AFI20240404BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C10G99/00
C10G45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157742
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】薄井 大輔
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA15
4H129KA06
4H129LA14
4H129LA20
4H129NA01
4H129NA37
4H129NA40
4H129NA42
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】ケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応に関して、反応を開始してから所定時間経過した際の生成油中のケイ素濃度を推定することができる情報処理方法の提供。
【解決手段】ケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応に関して、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する情報取得ステップと、取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出するケイ素濃度算出ステップと、を含む、情報処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、
前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する情報取得ステップと、
取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出するケイ素濃度算出ステップと、を含む、情報処理方法。
【請求項2】
前記情報1は、反応次数に関する情報、活性化エネルギーに関する情報、及び頻度因子に関する情報を含み、
前記情報2は、原料油中のケイ素濃度に関する情報を含み、
前記情報3は、触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、及び原料油の供給量に関する情報を含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記ケイ素濃度算出ステップは、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を下式1に基づき行う、請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【数1】
前記式1中、SiP(t(x))は、前記反応t日経過時における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiF(t(x))は、前記反応t日経過時における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSV(t(x))は、前記反応t日経過時における液空間速度(h-1)であり、T(t(x))は、前記反応t日経過時における反応温度(K)であり、nは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数であり、Eaは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー(J・mol-1)であり、Aは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子であり、Rは、気体定数(J・mol-1・K-1)であり、SiPBは、標準化条件における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiFBは、標準化条件における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSVは、標準化条件における液空間速度(h-1)であり、Tは、標準化条件における反応温度(K)であり、(t-tx-1)≦30日であり、θ(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率であり、下式2により算出される。
【数2】
前記式2中、CSi(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、CSi∞は、前記触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(g)である。
【請求項4】
触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、
前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出する演算部と、を含む、ケイ素濃度算出装置。
【請求項5】
前記情報1は、反応次数に関する情報、活性化エネルギーに関する情報、及び頻度因子に関する情報を含み、
前記情報2は、原料油中のケイ素濃度に関する情報を含み、
前記情報3は、触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、及び原料油の供給量に関する情報を含む、請求項4記載のケイ素濃度算出装置。
【請求項6】
前記演算部は、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を下式3に基づき行う、請求項4又は5に記載のケイ素濃度算出装置。
【数3】
前記式3中、SiP(t(x))は、前記反応t日経過時における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiF(t(x))は、前記反応t日経過時における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSV(t(x))は、前記反応t日経過時における液空間速度(h-1)であり、T(t(x))は、前記反応t日経過時における反応温度(K)であり、nは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数であり、Eaは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー(J・mol-1)であり、Aは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子であり、Rは、気体定数(J・mol-1・K-1)であり、SiPBは、標準化条件における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiFBは、標準化条件における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSVは、標準化条件における液空間速度(h-1)であり、Tは、標準化条件における反応温度(K)であり、(t-tx-1)≦30日であり、θ(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率であり、下式4により算出される。
【数4】
前記式4中、CSi(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、CSi∞は、前記触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(g)である。
【請求項7】
コンピュータを、請求項4又は5に記載のケイ素濃度算出装置として機能させるためのケイ素濃度算出プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記憶したコンピュータの非一時的可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、ケイ素濃度算出装置、ケイ素濃度算出プログラム、及びコンピュータの非一時的可読記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
重油の需要減少により、主な重油基材である、原油を常圧蒸留装置により処理して得られる常圧蒸留残渣油や、前記常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置により処理して得られる減圧蒸留残渣油を付加価値の高い軽質油へと効率よく変換する技術が求められている。
【0003】
重油基材を軽質油へと変換する技術として、減圧蒸留残渣油を重質油熱分解装置(以下、「コーカー装置」ともいう。)で熱分解して得られるコーカー分解留分を水素化処理(水素化脱硫)して得られる留分を利用するプロセスが知られている。前記コーカー分解留分のうち、軽質な留分(コーカー分解ナフサ)は、水素化処理後、接触改質反応装置にて処理され、高付加価値の基礎化学品を含む留分が製造される。また、重質な留分(重質コーカー分解炭化水素油)は、水素化処理後、流動接触分解装置にて処理され、ガソリン、灯油、軽油等の中間留分が製造される。
【0004】
ところで、コーカー装置では、反応ドラム内での発泡を抑制するためにケイ素系の泡消剤が使用されている。そのため、コーカー装置で熱分解して得られる留分中には泡消剤由来のケイ素化合物が混入する。このケイ素化合物は、水素化処理において使用される水素化処理触媒の被毒物質であることが知られている。また、このケイ素化合物は、接触改質反応装置に充填されている接触改質触媒の永久被毒物質であることも知られている。したがって、接触改質反応装置に供給される水素化処理されたコーカー分解ナフサには、ケイ素化合物が実質的に含まれないようにする必要がある。そのためには、水素化処理触媒がコーカー分解ナフサに含まれるケイ素化合物を実質的に全て捕集する必要がある。
【0005】
特許文献1には、ケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサの水素化処理において、コーカー分解ナフサと共に0.01~10体積%の水を水素化処理触媒に供給することにより、水素化処理触媒のシリコン捕集能が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6576121号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した通り、水素化処理触媒がコーカー分解ナフサに含まれるケイ素化合物を実質的に全て捕集できなくなったときが実質的に水素化処理触媒の寿命となる。具体的には、水素化処理反応における生成油中のケイ素濃度の実測値を測定し、前記実測値が予め定められた生成油中のケイ素濃度の設定上限値超となったときが水素化処理触媒の寿命となる。一方、前記実測値が前記設定上限値超となったときにはすでに接触改質反応装置にケイ素化合物が流入していることを意味する。したがって、水素化処理反応における生成油中のケイ素濃度を推定するための方法が望まれている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、反応を開始してから所定時間経過した際の反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度を推定することができる情報処理方法、及び前記ケイ素濃度を推定することができるケイ素濃度算出装置、コンピュータを、前記ケイ素濃度算出装置として機能させるためのケイ素濃度算出プログラム、及び前記プログラムを記憶したコンピュータの非一時的可読記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する情報取得ステップと、取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出するケイ素濃度算出ステップと、を含む、情報処理方法。
[2] 前記情報1は、反応次数に関する情報、活性化エネルギーに関する情報、及び頻度因子に関する情報を含み、前記情報2は、原料油中のケイ素濃度に関する情報を含み、前記情報3は、触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、及び原料油の供給量に関する情報を含む、[1]に記載の情報処理方法。
[3] 前記ケイ素濃度算出ステップは、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を下式1に基づき行う、[1]又は[2]に記載の情報処理方法。
【数1】
前記式1中、SiP(t(x))は、前記反応t日経過時における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiF(t(x))は、前記反応t日経過時における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSV(t(x))は、前記反応t日経過時における液空間速度(h-1)であり、T(t(x))は、前記反応t日経過時における反応温度(K)であり、nは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数であり、Eaは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー(J・mol-1)であり、Aは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子であり、Rは、気体定数(J・mol-1・K-1)であり、SiPBは、標準化条件における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiFBは、標準化条件における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSVは、標準化条件における液空間速度(h-1)であり、Tは、標準化条件における反応温度(K)であり、(t-tx-1)≦30日であり、θ(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率であり、下式2により算出される。
【数2】
前記式2中、CSi(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、CSi∞は、前記触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(g)である。
[4] 触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出する演算部と、を含む、ケイ素濃度算出装置。
[5] 前記情報1は、反応次数に関する情報、活性化エネルギーに関する情報、及び頻度因子に関する情報を含み、前記情報2は、原料油中のケイ素濃度に関する情報を含み、前記情報3は、触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、及び原料油の供給量に関する情報を含む、[4]記載のケイ素濃度算出装置。
[6] 前記演算部は、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を下式3に基づき行う、[4]又は[5]に記載のケイ素濃度算出装置。
【数3】
前記式3中、SiP(t(x))は、前記反応t日経過時における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiF(t(x))は、前記反応t日経過時における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSV(t(x))は、前記反応t日経過時における液空間速度(h-1)であり、T(t(x))は、前記反応t日経過時における反応温度(K)であり、nは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数であり、Eaは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー(J・mol-1)であり、Aは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子であり、Rは、気体定数(J・mol-1・K-1)であり、SiPBは、標準化条件における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiFBは、標準化条件における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSVは、標準化条件における液空間速度(h-1)であり、Tは、標準化条件における反応温度(K)であり、(t-tx-1)≦30日であり、θ(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率であり、下式4により算出される。
【数4】
前記式4中、CSi(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、CSi∞は、前記触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(g)である。
[7] コンピュータを、[4]~[6]のいずれかのケイ素濃度算出装置として機能させるためのケイ素濃度算出プログラム。
[8] [7]に記載のプログラムを記憶したコンピュータの非一時的可読記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、反応を開始してから所定時間経過した際の反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度を推定することができる情報処理方法、及び前記ケイ素濃度を推定することができるケイ素濃度算出装置、コンピュータを、前記ケイ素濃度算出装置として機能させるためのケイ素濃度算出プログラム、及び前記プログラムを記憶したコンピュータの非一時的可読記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る情報処理方法のフローチャートである。
図2】一実施形態に係る情報処理方法のフローチャートである。
図3】一実施形態に係る情報処理方法のフローチャートである。
図4】一実施形態に係るケイ素濃度算出装置の構成ブロック図である。
図5】実施例1における各触媒層の反応350日経過時の触媒のケイ素堆積量の実測値と推定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0013】
≪情報処理方法≫
本実施形態の情報処理方法は、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する情報取得ステップ(図1のS1)と、取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出するケイ素濃度算出ステップ(図1のS2)と、を含む。
【0014】
以下、各ステップについて説明を行う。なお、以下に示す各ステップは、例えば、本実施形態のケイ素濃度算出装置1によって実行される。例えば、S1は取得部11によって実行され、S2は計算機本体12における演算部13によって実行される。
【0015】
<情報取得ステップ>
本実施形態の情報取得ステップは、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得するステップである。
【0016】
、tx-1は整数でも小数でもよく、0≦tx-1<tである。xは、反応を開始してからx回目に本実施形態の情報処理方法を実施したことを示し、1以上の整数である。例えば、t=0.5の場合、反応を開始してから12時間経過時を意味する。また、t、tx-1は、本実施形態の情報処理方法を実施する時からみて過去でも、現在でも、未来でもよい。例えば、本実施形態の情報処理方法を実施する時が、反応を開始してから2日経過時であり、tが4の場合、2日後(未来)におけるケイ素化合物濃度を推定することとなる。
【0017】
(情報1)
情報1は、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報である。触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報としては、触媒の反応速度定数に関する情報、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数に関する情報、触媒の活性化エネルギーに関する情報、及び触媒の頻度因子に関する情報が例として挙げられ、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数に関する情報、触媒の活性化エネルギーに関する情報、及び触媒の頻度因子に関する情報であることが好ましい。
【0018】
触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数に関する情報、触媒の活性化エネルギーに関する情報、及び触媒の頻度因子に関する情報は、本分野で公知の方法により求めることができる。以下一例を説明する。
【0019】
・触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数
触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数に関する情報は、下式5で表されるアレニウスの式に基づいて、本分野で公知の方法により求めることができる。
【0020】
【数5】
前記式5中、kは反応速度定数であり、Aは頻度因子であり、Eは活性化エネルギー(kJ/mol)であり、Rは気体定数:0.00831(kJ/(mol・K))であり、Tは反応温度(K)である。
【0021】
液空間速度、反応温度、水素分圧、水素/原料油比、原料中の硫黄濃度、原料中のケイ素濃度を一定の条件とし、コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応を行い、生成油中のケイ素濃度を測定する。下式6で表される反応速度式のSiに原料油中のケイ素濃度を、Siに得られた生成油中のケイ素濃度を、LHSVに液空間速度を代入する。得られた左辺の結果を縦軸に、1/LHSVを横軸にプロットする。なお、この場合、縦軸はnの関数となる。
【0022】
【数6】
【0023】
前記条件において液空間速度のみを変更して、同様の反応を行い、同様のプロットを得る。y種類の液空間速度に関して同様の操作を行い、y種類の液空間速度に由来するy個の上記プロットを得る。得られたプロットを基に原点を通るように回帰直線を引き、y=cxで表される直線を得る。yは[1/(n-1){(1/Si n-1)-(1/Si n-1)}]であり、xは1/LHSVであり、cはkとなる。excel等で相関関数を求め、相関係数が最も1に近づくnを求める。得られたnが反応次数となる。なお、nは小数点第1位のオーダーで求めればよい。
【0024】
上記yは3以上の整数である。yの数が多い方が、より精度の高いnを得ることができる。一方、yの数が多すぎると、nを得るために時間が掛かり効率的ではない。本実施形態においては、yは3~10であることが好ましく、5~8であることがより好ましい。
【0025】
nを求める上での反応温度、水素分圧、水素/原料油比、原料油中の硫黄濃度、原料油中のケイ素濃度は、実機運転条件に即した条件とすることが好ましい。
そのような反応温度としては、例えば170~390℃であり、水素分圧は、3.0~5.5MPaであり、水素/原料油比は、400~2,000[Nm/kL]であり、原料油中の硫黄濃度は、1,000~15,000質量ppmであり、原料油中のケイ素濃度は、0.1~40.0質量ppmである。
種類の液空間速度も同様に実機運転条件に即した条件とすることが好ましい。このような液空間速度としては、0.1~2.0h-1である。
【0026】
・触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー、頻度因子
前記式5で表されるアレニウスの式中の活性化エネルギーEをケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギーEaとし、両辺の自然対数を取ると、下式7で表される式となる。
【0027】
【数7】
【0028】
液空間速度、反応温度、水素分圧、水素/原料油比、原料中の硫黄濃度、原料中のケイ素濃度を一定の条件とし、コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応を行い、生成油中のケイ素濃度を測定する。前記式6で表されるケイ素化合物吸着反応速度式のSiに原料油中のケイ素濃度を、Siに得られた生成油中のケイ素濃度を、LHSVに液空間速度を、nに上述の方法で求めた反応次数を代入して、反応速度定数kを求める。得られた反応速度定数を前記式7に代入し、得られた左辺の結果(lnk)を縦軸に、1/Tを横軸にプロットする。
【0029】
前記条件において反応温度のみを変更して、同様の反応を行い、同様のプロットを得る。z種類の反応温度に関して同様の操作を行い、z種類の反応温度に由来するz個の上記プロットを得る。得られたプロットを基に回帰直線を引き、その傾きを求める。この傾きはEa/Rであるため、傾きからRを除すことによりケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギーEaを求めることができる。また、切片はlnAであることから、触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子Aを求めることができる。
【0030】
上記zは3以上の整数である。zの数が多い方が、より精度の高いEa、Aを得ることができる。一方、zの数が多すぎると、Ea、Aを得るために時間が掛かり効率的ではない。本実施形態においては、zは3~10であることが好ましく、5~8であることがより好ましい。
【0031】
Ea、Aを求める上での反応温度、水素分圧、水素/原料油比、原料油中の硫黄濃度、原料油中のケイ素濃度は、実機運転条件に即した条件とすることが好ましい。このような条件としては、nを求める部分で説明した条件が例として挙げられる。
【0032】
(情報2)
情報2は、任意の反応t日経過時における原料油に関する情報である。原料油に関する情報としては、原料油中の組成に関する情報が例として挙げられ、原料油の組成に関する情報としては、原料油中のケイ素濃度に関する情報、原料油中の硫黄濃度に関する情報が例として挙げられ、原料油中のケイ素濃度に関する情報であることが好ましい。
【0033】
原料油中のケイ素濃度に関する情報は、本分野で公知のケイ素濃度の測定方法により得ることができ、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)、蛍光X線分析法等により求めることができる。また、原料油中のケイ素濃度は、原料油を変更することにより制御することができる。原料油中のケイ素濃度に関する情報は設定値であることが好ましい。すなわち、使用を予定している原料油のケイ素濃度を使用することができる。
【0034】
原料油中の硫黄濃度に関する情報は、本分野で公知の硫黄濃度の測定方法により得ることができ、例えば、紫外蛍光法、波長分散蛍光X線法等により求めることができる。また、原料油中の硫黄濃度は、原料油を変更することにより制御することができる。原料油中の硫黄濃度に関する情報は設定値であることが好ましい。すなわち、使用を予定している原料油の硫黄濃度を使用することができる。
【0035】
(情報3)
情報3は、任意の反応t経過時における運転条件に関する情報である。運転条件に関する情報としては、触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、原料油の供給量に関する情報、水素分圧に関する情報、水素の供給量に関する情報が例として挙げられ、触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、原料油の供給量に関する情報であることが好ましい。また、運転条件には、前記t日、tx-1日等の時間の情報も含まれる。
【0036】
触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、原料油の供給量に関する情報、水素分圧に関する情報、水素の供給量に関する情報は、本分野において公知の方法により求めることができる。触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、原料油の供給量に関する情報、水素分圧に関する情報、水素の供給量に関する情報は、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応において制御することが可能である。運転条件に関する情報は設定値であることが好ましい。すなわち、予定の運転条件を使用することが好ましい。
【0037】
(情報4)
情報4は、反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報である。本明細書において「触媒のケイ素被覆率」とは、触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量に対する触媒1gあたりのケイ素堆積量の割合を意味する。
【0038】
触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(単位:質量%、以下、「CSi∞」ともいう)は、触媒固有の値であり、本分野で公知の方法により求めることができる。CSi∞の求め方の例としては、例えば、実機又はベンチスケールにおいて、想定する実機運転条件の反応温度、LHSV、水素分圧、水素/原料油比、原料油中のケイ素濃度、硫黄濃度で反応を行う。そして、生成油中のケイ素濃度を経時的に分析する。ケイ素化合物は触媒に堆積するため、反応当初は、「原料油中のケイ素濃度>生成油中のケイ素濃度」であるが、生成油中のケイ素濃度は徐々に高くなり、最終的に、「原料油中のケイ素濃度=生成油中のケイ素濃度」となる。「原料油中のケイ素濃度=生成油中のケイ素濃度」となった段階で反応を停止し、触媒を抜出し、触媒中のケイ素濃度を測定し、得られた値をCSi∞とする。触媒中のケイ素濃度は、誘導結合プラズマ-発光分光法(ICP-AES)又は原子吸光法(AAS)により測定することができる。
【0039】
Si∞は、触媒によっては、温度依存性を有することがある。温度依存性の有無は、以下の方法によって求めることができる。上記CSi∞の求め方の方法を異なる反応温度で実施し、それぞれのCSi∞を得る。反応温度(K)を横軸に、CSi∞を縦軸にプロットし、y=ax+bで表される式を得る。a=0の場合は、CSi∞が温度依存性を有しないと判断でき、bをCSi∞とする。a≠0の場合は、aがCSi∞の温度依存性を示す項となる。この場合、ax+bをCSi∞とする(xは反応温度)。以下bをCSi∞(0)ともいう。
【0040】
<ケイ素濃度算出ステップ>
ケイ素濃度算出ステップは、前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、反応tx日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出するステップである。
【0041】
上述したように、触媒には固有のCSi∞が存在する。したがって、原料油中の全てのケイ素化合物が触媒上に堆積すると仮定すると、理論上は、触媒層に供給した原料油中の合計のケイ素量(g)が、「CSi∞(g/1g)×触媒充填量(g)」を上回ったときに、反応器出口の生成油中に検出され、それ以後の生成油中のケイ素濃度は原料油中のケイ素濃度と等しくなるはずである。
【0042】
しかしながら、本願の発明者の検討によると、上記理論上の計算のみでは生成油中のケイ素濃度を精度高く推定できないことが判明した。この理由としては、上記理論では、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報を考慮していないことが考えられる。例えば、ケイ素化合物吸着反応は、原料油中のケイ素濃度の前記情報2、反応温度、液空間速度等の前記情報3、触媒のケイ素被覆率の前記情報4などにより影響を受ける。
【0043】
本願の発明者は、ケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報を考慮することにより、生成油中のケイ素濃度を精度高く推定可能となることを見出した。
【0044】
すなわち、前記情報1、前記情報2、前記情報3、前記情報4、及び対応する反応t日経過時の生成油中のケイ素濃度の実測値をデータセットとし、前記データセットを用いたディープラーニングなどの機械学習や、本技術分野において汎用的に使用される回帰分析等によって前記情報1、前記情報2、前記情報3、前記情報4を基に反応t日経過時の生成油中のケイ素濃度の実測値を算出可能な関数を生成することが可能である。このような関数に基づいて、反応tx日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出することができる。
【0045】
本願の発明者は、前記情報1、前記情報2、前記情報3、前記情報4、及び対応する反応t日経過時の生成油中のケイ素濃度の実測値から関数を検討した。その結果、前記情報2における原料油中の硫黄濃度は、反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。一方、前記情報2における原料油中のケイ素濃度は、反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に大きく影響を及ぼすことが判明した。さらに、前記情報3における水素分圧に関する情報、水素の供給量に関する情報は、反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。一方、前記情報3における触媒充填量に関する情報、反応温度に関する情報、原料油の供給量は、反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に大きく影響を及ぼすことが判明した。このような検討の結果、本願の発明者は、後述の式1のような関数(式)を見出した。但し、以下の関数(式)はあくまで一例であり、例えば、以下の関数(式)にさらに他の情報2(原料油中の硫黄濃度等)、情報3(水素分圧に関する情報、水素の供給量に関する情報)を付加してよい。また、以下の関数(式)では情報1として、触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数に関する情報、触媒の活性化エネルギーに関する情報、及び触媒の頻度因子に関する情報を使用しているが、例えば、情報1として、触媒の反応速度定数に関する情報を使用して別の関数(式)とすることもできる。
【0046】
本発明の一実施形態においては、ケイ素濃度算出ステップは、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を下式1に基づき行うことが好ましい。
【数8】
前記式1中、SiP(t(x))は、前記反応t日経過時における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiF(t(x))は、前記反応t日経過時における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSV(t(x))は、前記反応t日経過時における液空間速度(h-1)であり、T(t(x))は、前記反応t日経過時における反応温度(K)であり、nは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数であり、Eaは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー(J・mol-1)であり、Aは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子であり、Rは、気体定数(J・mol-1・K-1)であり、SiPBは、標準化条件における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiFBは、標準化条件における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSVは、標準化条件における液空間速度(h-1)であり、Tは、標準化条件における反応温度(K)であり、(t-tx-1)≦30日であり、θ(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率であり、下式2により算出される。
【0047】
n、Ea、Aは、前記情報1である。
SiF(t(x))は、前記情報2である。
LHSV(t(x))、T(t(x))は前記情報3である。なお、なお、LHSVは、原料油の供給量(体積/h)を触媒充填量(体積)で除すことにより求めることができる。
θ(t(x-1))は、前記情報4である。
【0048】
SiPB、SiFB、LHSV、Tは、定数(以下、標準化定数ともいう)である。標準化定数は、例えば、SiP(t(x))が実測の生成油中のケイ素濃度と同じになるSiPB、SiFB、LHSV、Tの組み合わせとして求めることができる。
【0049】
また、標準化定数は以下の方法によっても求めることができる。
想定する実機運転条件の触媒の充填構成、原料油を使用して反応を行う。この際、反応初期において生成油中にケイ素が検出できるような反応温度、LHSV、原料油中のケイ素濃度とする。具体的には、反応温度を想定する実機運転条件より低くし、LHSVを想定する実機運転条件より高くし、原料油中のケイ素濃度を実機運転条件より高くする。なお、反応初期とは例えば、反応を開始してから0.1日~1日が例として挙げられる。また、生成油中のケイ素濃度としては、例えば0.2~5.0質量ppmが例として挙げられる。反応温度としては、例えば、想定する実機運転条件の反応温度の0.8~1.2倍(℃換算)、LHSVとしては想定する実機運転条件のLHSVの0.5~2.0倍としてもよい。
上記初期における生成油中のケイ素濃度をSiPB、反応温度をT、LHSVをLHSV、原料油中のケイ素濃度をSiFBとしてもよい。
【0050】
(t-tx-1)は30日以下であることが好ましく、7日以下であることがより好ましく、1日以下であることがさらに好ましい。全反応期間をy日間とした場合、(t-tx-1)はy/43~y/42日であることが好ましく、y/186~y/163日であることがより好ましく、y/1,300~y/650日であることがさらに好ましい。(t-tx-1)は、実質的に本実施形態の情報処理方法を行う間隔を意味する。この間隔が前記上限値以下であると、前記情報4の正確性が向上し、得られるケイ素濃度の精度が向上する。
【0051】
SiF(t(x))、LHSV(t(x))、T(t(x))のいずれか一つ以上を変更する場合、その直前にケイ素濃度算出ステップ、すなわち、生成油中のケイ素濃度の算出を前記式1に基づき行うことが好ましい。すなわち、反応tx-1日経過時~反応t日経過時においてSiF(t(x))、LHSV(t(x))、T(t(x))は一定とすることが好ましい。
【0052】
【数9】
前記式2中、CSi(t(x-1))は、前記反応tx-1日経過時における前記触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、CSi∞は、前記触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(g)である。
【0053】
なお、CSi∞が温度依存性を有しない場合は、上述のCSi∞(0)を前記式2におけるCSi∞として使用する。一方、CSi∞が温度依存性を有する場合は、上述のa、Si∞を使用し、aT(t(x))+CSi∞(0)を前記式2におけるCSi∞として使用する。
【0054】
【数10】
前記式8中、CSi(t(x-2))は、反応tx-2日経過時における触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、SiF(t(x-1))は、反応tx-1日経過時における原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiP(t(x-1))は、反応tx-1日経過時における生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、F(t(x-1))は、反応tx-1日経過時における原料油の供給量(g/日)であり、Wcatは、触媒充填量(g)である。
【0055】
また、CSi(t(x-2))も同様に、前記式8により求めることができる。すなわち、前記8においてCSi(t(x-1))をCSi(t(x-2))として、求めることができる。
すなわち、反応開始時の触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であるCSi(0)の値から、前記式8を繰り返し計算することにより、CSi(t(x-1))を求めることができる。CSi(0)はフレッシュ触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、通常は0であるが、フレッシュ触媒が不純物としてケイ素を含む場合は、触媒1gあたりの前記不純物量(g)をCSi(0)とすることができる。
【0056】
(触媒層が2層以上の場合)
反応管に充填されている触媒が2種類以上(触媒層が2層以上)の場合がある。触媒の種類が異なると、前記情報1、前記情報4は異なる。また、各触媒層の触媒充填量が異なると、液空間速度(前記情報3)が異なる。
触媒が1種類(触媒層が1層)の場合でも、触媒層の位置によって反応温度(前記情報3)が異なることがある。また、触媒層の位置によって原料油中のケイ素濃度も異なる(反応器入口側の原料油中のケイ素濃度≧反応器出口側の原料油中のケイ素濃度)。
反応管に充填されている触媒が2種類以上(触媒層が2層以上)の場合、触媒層ごとに、生成油中のケイ素濃度の算出を前記1式に基づき行い、反応器の最も出口側の触媒層における生成油中のケイ素濃度を算出すればよい。
触媒層の位置によって反応温度(前記情報3)が異なる場合、実質的に同じ反応温度の触媒層ごとに、生成油中のケイ素濃度の算出を前記式1に基づき行い、反応器の最も出口側の触媒層における生成油中のケイ素濃度を算出すればよい。また、触媒層の位置によって原料油中のケイ素濃度(前記情報2)が異なるため、触媒層ごとに、生成油中のケイ素濃度の算出を前記式1に基づき行い、反応器の最も出口側の触媒層における生成油中のケイ素濃度を算出すればよい。
以下、具体的に説明する。
【0057】
具体的には、ケイ素濃度算出ステップは、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を下式9に基づき行うことが好ましい。
【数11】
前記式9中、SiP(t(x))[d]は、前記反応t日経過時におけるd層目の触媒層出口の生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiF(t(x))[d]は、前記反応t日経過時におけるd層目の触媒層入口の原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、LHSV(t(x))[d]は、前記反応t日経過時におけるd層目の触媒層の液空間速度(h-1)であり、T(t(x))[d]は、前記反応t日経過時におけるd層目の触媒層の反応温度(K)であり、nは、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応次数であり、Ea[d]は、d層目の触媒層の触媒のケイ素化合物吸着反応の活性化エネルギー(J・mol-1)であり、A[d]は、d層目の触媒層の触媒のケイ素化合物吸着反応の頻度因子であり、Rは、気体定数(J・mol-1・K-1)であり、Zは、(1/SPB n-1-1/SFB n-1)(LHSV)であり、SiPB、SiFB、LHSV、Tは、前記式1と同じであり、(t-tx-1)≦30日であり、θ(t(x-1))[d]は、前記反応tx-1日経過時におけるd層目の触媒層の触媒のケイ素被覆率であり、下式10により算出される。なお、触媒層は2層以上であり、dの値が小さい方が反応器入口側を示す。すなわち、d=1は反応器の最も入口側の触媒層を意味する。
【0058】
前記式9において、d=1の場合(反応器の最も入口側の触媒層の場合)、SiF(t(x))[d]は、前記式1中のSiF(t(x))である。一方、d≧2の場合、SiF(t(x))[d]は、SiP(t(x))[d-1]である。SiP(t(x))[d-1]は、前記反応t日経過時におけるd-1層目の触媒層出口の生成油中のケイ素濃度(質量ppm)である。また、SiP(t(x))[d-1]も同様に、前記式9により求めることができる。すなわち、前記式9においてSiP(t(x))[d]をSiP(t(x))[d-1]として求めることができる。すなわち、本実施形態においては、d≧2の場合、触媒層入口の原料油中のケイ素濃度として、一つ手前の触媒層出口の生成油中のケイ素濃度を使用する。
【0059】
n、Ea[d]、A[d]は、前記情報1である。
SiF(t(x))[d]は、前記情報2である。
LHSV(t(x))[d]、T(t(x))[d]は前記情報3である。なお、なお、LHSVは、原料油の供給量(体積/h)を触媒充填量(体積)で除すことにより求めることができる。
θ(t(x-1))[d]は、前記情報4である。
【0060】
SiPB、SiFB、LHSV、Tは、上述した通り、定数である。また、全触媒層について同じ値を使用する。標準化定数は、例えば、dが最も大きい値(d=d(MAX))の場合のSiP(t(x))[d(MAX)]が実測の生成油中のケイ素濃度と同じになるSiPB、SiFB、LHSV、Tの組み合わせとして求めることができる。
【0061】
また、標準化定数は以下の方法によっても求めることができる。
想定する実機運転条件の触媒の充填構成、原料油を使用して反応を行う。この際、反応初期において生成油中にケイ素が検出できるような反応温度、LHSV、原料油中のケイ素濃度とする。具体的には、反応温度を想定する実機運転条件より低くし、LHSVを想定する実機運転条件より高くし、原料油中のケイ素濃度を実機運転条件より高くする。なお、反応初期とは例えば、反応を開始してから0.1日~1日が例として挙げられる。また、生成油中のケイ素濃度としては、例えば0.2~5.0質量ppmが例として挙げられる。反応温度としては、例えば、想定する実機運転条件の反応温度の0.8~1.2倍(℃換算)、LHSVとしては想定する実機運転条件のLHSVの0.5~2.0倍、としてもよい。
上記初期における生成油中のケイ素濃度をSiPB、反応温度をT、LHSVをLHSV、原料油中のケイ素濃度をSiFBとしてもよい。なお、上述のSiP(t(x))[d]、T(t(x))[d]、LHSV(t(x))[d]、SiF(t(x))[d]は、各触媒層あたりの値であるが、標準化定数は、上記全ての触媒層あたりの値を使用する。
【0062】
(t-tx-1)は30日以下であることが好ましく、7日以下であることがより好ましく、1日以下であることがさらに好ましい。全反応期間をy日間とした場合、(t-tx-1)はy/43~y/42日であることが好ましく、y/186~y/163日であることがより好ましく、y/1,300~y/650日であることがさらに好ましい。(t-tx-1)は、実質的に本実施形態の情報処理方法を行う間隔を意味する。この間隔が前記上限値以下であると、前記情報4の正確性が向上し、得られるケイ素濃度の精度が向上する。
【0063】
SiF(t(x))[d]、LHSV(t(x))[d]、T(t(x))[d]のいずれか一つ以上を変更する場合、その直前にケイ素濃度算出ステップ、すなわち、生成油中のケイ素濃度の算出を前記式9に基づき行うことが好ましい。すなわち、反応tx-1日経過時~反応t日経過時においてSiF(t(x))[d]、LHSV(t(x))[d]、T(t(x))[d]は一定とすることが好ましい。
【0064】
【数12】
前記式10中、CSi(t(x-1))[d]は、前記反応tx-1日経過時におけるd層目の触媒層の触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、CSi∞[d]は、d層目の触媒層の触媒1gあたりの最大ケイ素堆積量(g)である。
【0065】
なお、CSi∞[d]が温度依存性を有しない場合は、上述のCSi∞(0)を前記式10におけるCSi∞として使用する。一方、CSi∞[d]が温度依存性を有する場合は、上述のa、Si∞を使用し、aT(t(x))[d]+CSi∞(0)を前記式10におけるCSi∞[d]として使用する。
【0066】
前記式10中、CSi(t(x-1))[d]は、下式11により算出される。
【0067】
【数13】
前記式11中、CSi(t(x-2))[d]は、反応tx-2日経過時におけるd層目の触媒層の触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、SiF(t(x-1))[d]は、反応tx-1日経過時におけるd層目の触媒層入口の原料油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、SiP(t(x-1))[d]は、反応tx-1日経過時におけるd層目の触媒層出口の生成油中のケイ素濃度(質量ppm)であり、F(t(x-1))は、反応tx-1日経過時における原料油の供給量(g/日)であり、Wcat[d]は、d層目の触媒層の触媒充填量(g)である。
【0068】
また、CSi(t(x-2))[d]も同様に、前記式11により求めることができる。すなわち、前記11においてCSi(t(x-1))[d]をCSi(t(x-2))[d]として、求めることができる。
すなわち、反応開始時のd層目の触媒層の触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であるCSi(0)[d]の値から、前記式11を繰り返し計算することにより、CSi(t(x-1))[d]を求めることができる。CSi(0)[d]はd層目の触媒層のフレッシュ触媒1gあたりのケイ素堆積量(g)であり、通常は0であるが、フレッシュ触媒が不純物としてケイ素を含む場合は、触媒1gあたりの前記不純物量(g)をCSi(0)[d]とすることができる。
【0069】
d層全ての触媒層について、ケイ素濃度算出ステップを、前記式9に基づき行い、dが最も大きい値(d=d(MAX))の場合のSiP(t(x))[d(MAX)]が反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度となる。
【0070】
実測のケイ素濃度SiP(obs)に対する、本実施形態の情報処理方法により求められるケイ素濃度SiP(t(x))(SiP(t(x))[d(MAX)]を含む)の割合であるSiP(t(x))/SiP(obs)は、0.70~1.30であることが好ましく、0.95~1.05であることがより好ましい。SiP(t(x))/SiP(obs)が前記範囲内である場合、精度高く生成油中のケイ素濃度を推定できていると判断することができる。
【0071】
≪情報出力ステップ≫
このようにして得られた前記ケイ素濃度に関する情報を出力する情報出力ステップ(図1のS3)をさらに有してもよい。例えば、S3は出力部14によって実行される。
【0072】
≪コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応≫
コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応について概要を説明する。
コーカー分解ナフサは、減圧蒸留残渣油をコーカー装置で熱分解して得られる初留点が30℃以上、終点が200℃以下の留分である。コーカー分解ナフサの密度は0.700~0.750g/cmである。原料油中のコーカー分解ナフサの含有量としては、例えば5体積%以上であってもよく、70体積%以上であってもよい。
なお、原料油に含まれるコーカー分解ナフサ以外の油種としては、常圧蒸留ナフサ、流動接触分解ナフサが例として挙げられる。
【0073】
コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応は、水素存在下、コーカー分解ナフサを含む原料油と水素化処理触媒とを接触処理することにより行うことができる。
水素化処理触媒は、特に限定されるものではなく、本分野において公知の水素化処理触媒を使用することができる。触媒の担体として、種々のものが使用でき、例えばシリカ、アルミナ、ボリア、マグネシア、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニア、シリカ-ボリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-チタニア、アルミナ-ボリア、アルミナ-クロミア、チタニア-ジルコニア、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-ジルコニアなど、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの無機酸化物のうち、好ましいものとしては、アルミナ、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ボリア、アルミナ-ジルコニアが挙げられ、特に好ましくは、アルミナが挙げられ、アルミナの中でもγアルミナが特に好ましい。これらの無機酸化物は、1種単体で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
前記担体に活性成分として含有させる金属は、周期表第6族金属及び第8~10族金属の中から選ばれる少なくとも1種類以上の金属であり、好ましくはモリブデン、タングステン、コバルト及びニッケルの金属である。これらの金属は、金属状態又は金属酸化物、金属硫化物の何れの形態でも有効であり、また、イオン交換などにより金属が触媒担体と結合した形態で存在してもよい。この金属成分の含有量は、通常、触媒基準かつ酸化物換算で、約1~25質量%の範囲内である。金属含有量が1質量%より少ないと、活性点として働く金属の絶対量が少ないために、脱硫活性を始めとする水素化処理活性(以下、簡単に水素化処理活性と言う)が発現せず、逆に担持される金属の含有量が25質量%より多すぎると、金属の凝集が起こり活性点の数が減少し、その結果、水素化処理活性が却って低下するからである。更に、必要に応じて、元素周期律表第6族金属及び第8族金属からなる活性金属に加えて、リン、ホウ素、亜鉛、ジルコニア等を含ませることができる。本発明方法を適用するに当たり、触媒層の形態には制約はなく、例えば固定床、移動床、流動床等の触媒層の反応器に適用できる。
水素化処理触媒の比表面積は、150~420m/gであることが好ましく、170~400m/gであることがより好ましく、190~380m/gであることがさらに好ましい。
【0075】
コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応における条件としては、一般に反応温度が170~390℃、好ましくは200~360℃であり、水素分圧が3.0~5.5MPa、好ましくは3.5~5.0MPaであり、LHSVが0.1~15.0hr-1、好ましくは0.5~3.5hr-1であり、水素/原料油比が400~2,000[Nm/kL]、好ましくは600~1,800[Nm/kL]である。
【0076】
コーカー分解ナフサを含む原料油中の硫黄濃度は、通常1,000~15,000質量ppmである。また、生成油中の硫黄濃度は、通常0.1~0.5質量ppm以下である。コーカー分解ナフサを含む原料油中のケイ素濃度は、通常0.1~40.0質量ppmである。
【0077】
≪ケイ素濃度算出装置≫
本実施形態のケイ素濃度算出装置は、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記情報1、前記情報2、前記情報3、及び前記情報4に基づき、前記反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を算出する演算部と、を含む。本実施形態のケイ素濃度算出装置は、算出されたケイ素濃度を示す情報を出力する出力部を有していてもよい。
【0078】
本実施形態のケイ素濃度算出装置1は、パーソナルコンピューターやサーバー装置や専用装置等の情報処理装置を用いて構成される。ケイ素濃度算出装置1は、1台又は複数台の情報処理装置を用いて構成されてもよい。例えば、ケイ素濃度算出装置1は、クラスタマシンとして構築されてもよいし、クラウドとして構築されてもよいし、どのような態様で構築されてもよい。ケイ素濃度算出装置1は、例えば、図4に示されるように取得部11と、取得部からの情報を処理する計算機本体12とを有する。ケイ素濃度算出装置1は、計算機本体12において処理された情報を外部に出力する出力部14を有していてもよい。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0079】
取得部11は、反応のオペレーターによって所定の情報が入力され、この入力により取得した情報を計算機本体12に送信するものである。本実施形態の取得部11が取得する情報は、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、前記触媒のケイ素化合物吸着反応の反応速度に関する情報1と、任意の反応t日経過時における前記原料油に関する情報2及び運転条件に関する情報3と、前記反応t日経過時より前の別の任意の反応tx-1日経過時における前記触媒のケイ素被覆率に関する情報4である。前記情報1、前記情報2、前記情報3、前記情報4としては上述した通りである。例えば、取得部11は、上述した情報取得ステップを実行する。取得部11は、前記情報1、前記情報2、前記情報3、前記情報4を取得すればよく、その取得方法には特に限定されない。
【0080】
本実施形態では、取得部11は単一のキーボードによって構成されている。取得部11の具体的構成は、限定されず、本実施形態ではキーボードであるが、タッチパネル等であってもよい。なお、各種情報を取得する取得部が別々に構成され、それぞれが独立して計算機本体12に接続されてもよい。また、取得部11は、反応器の制御等に用いられる計算機等から有線又は無線により前記の各情報を直接取得するように構成されてもよい。
【0081】
計算機本体12は、例えば、種々の情報を処理可能な、いわゆるコンピュータである。
計算機本体12は、演算部13を備える。例えば、この計算機本体12には、所定のプログラムが組み込まれ、このプログラムの実行によって機能的に演算部13が構成される。
具体的には、この演算部13において、前記取得部11で取得した情報1、情報2、情報3、情報4に基づき、反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度を算出する。例えば、演算部13は、上述したケイ素濃度算出ステップを実行する。演算部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサ及び不揮発性又は揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))を備えてもよい。例えば、演算部13は、MCUなどのマイクロコントローラであってもよい。
【0082】
演算部13は、上記のように求めた前記t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を出力部14に出力してもよい。
【0083】
出力部14は、計算機本体12(詳しくは、演算部13)が出力した計算結果(ケイ素濃度)を受信し、受信した計算結果を外部に出力するものである。本実施形態の出力部14は、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、PDP等の表示部によって構成されているが、これに限定されず、プリンタ等の印刷部や、他の装置(例えば、コーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応の制御等に用いられる計算機等)等へ出力するように構成されてもよい。また、出力部14は、これらを組み合わせたものでもよい。例えば、出力部14は、上述した情報出力ステップを実行する。
【0084】
また、本実施形態においては、コンピュータをケイ素濃度算出装置として機能させるためのケイ素濃度算出プログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータの非一時的可読記録媒体が提供される。コンピュータの非一時的可読記録媒体としては、例えば、磁気テープ(デジタルデータストレージ(DSS)など)、磁気ディスク(ハードディスクドライブ(HDD)、フレキシブルディスク(FD)など)、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、ブルーレイディスク(BD)など)、光磁気ディスク(MO)、フラッシュメモリ(SSD(Solid State Drive)、メモリーカード、USBメモリなど)が挙げられる。
【0085】
<情報処理方法及びケイ素濃度算出装置の活用方法>
本実施形態の情報処理方法及びケイ素濃度算出装置によると、触媒を充填した固定床流通式反応器にケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油及び水素を流通させて行う水素化処理反応に関して、反応を開始してから所定時間経過した際の生成油中のケイ素濃度を推定することができる。本実施形態の情報処理方法及びケイ素濃度算出装置によると、ケイ素濃度の推定値の経時的なプロットを得ることができる。前記プロットと、生成油中のケイ素濃度の設定上限値等との関係から、以下のような活用法が考えられる。
【0086】
第1の活用方法としては、触媒を交換するのに必要な運転時間(日数)を推定することである。このような情報処理方法は、図2のS3-1及びS4又はS3-1及びS4-1で表される。図2のS3-1及びS4-1で示される情報処理方法は、ケイ素濃度算出ステップ(図1のS2)で算出されたケイ素濃度に関する情報と、生成油中のケイ素濃度の設定上限値を比較するステップ(図2のS3-1)と、前記ケイ素濃度に関する情報が前記ケイ素濃度の設定上限値超である場合、反応t日経過時を触媒寿命に関する情報として出力する情報出力ステップ(図2のS4-1)を含む。図2のS3-1及びS4で示される情報処理方法は、ケイ素濃度算出ステップ(図1のS2)で算出されたケイ素濃度に関する情報と、生成油中のケイ素濃度の設定上限値を比較するステップ(図2のS3-1)と、前記ケイ素濃度に関する情報が前記ケイ素濃度の設定上限値以下である場合、算出したケイ素濃度に関する情報を出力する情報出力ステップ(図2のS4)を含む。
なお、以上の各ステップは、例えば、本実施形態のケイ素濃度算出装置1によって実行される。例えば、S3-1は計算機本体12における演算部13によって実行され、S4、S4-1は出力部14によって実行される。なお、生成油中のケイ素濃度の設定上限値は予め計算機本体12における演算部13に記憶させておいてもよい。生成油中のケイ素濃度の設定上限値としては例えば0.1質量ppmが例として挙げられる。
【0087】
第2の活用方法としては、所定の運転時間を達成するための反応条件(処理量(LHSV)等)を推定することである。このような情報処理方法は、図3のS1A~S2Aで表される。図3のS1A、S2Aで示される情報処理方法は、任意の反応t日経過時における目的とする反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度に関する情報を取得する情報取得ステップ(図3のS1A)と、取得した目的とするケイ素濃度に関する情報に基づき、情報1、情報2、情報3、情報4を算出する反応条件算出ステップ(図2のS2A)と、を含む。このようにして得られた情報1、情報2、情報3、情報4を出力する情報出力ステップ(図3のS3A)をさらに有してもよい。具体的には、例えば、前記式1を使用する場合、前記式1のSiP(t(x))に目的とするケイ素濃度に関する情報を代入して、前記式1の等式が成り立つような、SP(t(x))、LHSV(t(x))、T(t(x))、θ(t(x-1))の組み合わせを求めればよい。θ(t(x-1))を調整するために反応tx-1日経過以前の原料油中のケイ素濃度、液空間速度、反応温度を調整してもよい。
なお、以上の各ステップは、例えば、本実施形態の反応温度算出装置1によって実行される。例えば、S1Aは取得部11によって実行され、S2Aは計算機本体12における演算部13によって実行され、S3Aは出力部14によって実行される。なお、目的とする反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度は予め計算機本体12における演算部13に記憶させておいてもよい。
【実施例0088】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
[実施例1]
ケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理触媒について、Si∞を上述の方法により求めた。その結果、Si∞は温度依存性を示さず、10(g/1gの触媒)であった。また、n、Ea、Aを上述の方法により求めた。その結果、nは1.2、Eaは70.0(kJ/mol)、Aは0.15であった。さらに、SiPB、SiFB、LHSV、Tを上述の方法により求めた。その結果、SiPBは0.2(質量ppm)、SiFBは30(質量ppm)、LHSVは2.5(h-1)、Tは260℃であった。
【0090】
上述のパラメータを求める際に使用したのと同じ原料油、触媒を用いて、実機で反応を行った。具体的には、固定床流通式反応器に前記触媒を60.0g充填した。前記固定床流通式反応器にコーカー分解ナフサを50体積%含む原料油及び水素を流通させて水素化処理反応を行った。反応全期間に渡って、反応条件としては原料油中のケイ素濃度を5.0(質量ppm)、LHSVを1.46(h-1)、原料油の供給量を87.6(g/h)、反応温度を320℃とした。ケイ素濃度算出ステップとして、生成油中のケイ素濃度に関する情報の算出を前記式9に基づき行った。触媒層を均等に45層に分け、各層について前記式9に基づきSiP(t(x))[d]を算出して、SiP(t(x))[45]を反応t日経過時における反応器出口から排出される生成油中のケイ素濃度として算出した。反応開始から330~350日経過時の生成油中のケイ素濃度の推定値(SiP(t(x))[45])と実測値を表1に示す。反応開始から350日経過時に反応を停止した。停止後、各層の触媒を抜出し、触媒のケイ素堆積量を測定した。350日経過時における触媒のケイ素堆積量の推定値と実測値を図1に示す。
【0091】
【表1】
表1に示された通り、350日経過時までは反応器出口からは実質的にケイ素は検出されなかった。また、図1に示された通り、触媒のケイ素堆積量の推定値と実測値はよく一致した。具体的には、実測の触媒1gあたりのケイ素堆積量CSi(t(x-1))[d](obs)に対する、本実施形態の情報処理方法により求められる実測の触媒1gあたりのケイ素堆積量CSi(t(x-1))[d]の割合であるCSi(t(x-1))[d]/CSi(t(x-1))[d](obs)は、0.98~1.18であった(d=10、20、30、40)。上述した通り、触媒のケイ素堆積量であるCSi(t(x-1))[d]は、前記式11等により算出される。前記式11には、SiP(t(x-1)[d])が含まれるため、CSi(t(x-1))[d]は、SiP(t(x-1)[d])に依存する。すなわち、CSi(t(x-1))[d]の精度が高いということは、SiP(t(x-1)[d])の精度も高いことを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る情報処理方法は、ケイ素化合物を含むコーカー分解ナフサを含む原料油の水素化処理反応に関して、反応を開始してから所定時間経過した際の生成油中のケイ素濃度を推定することができるため有用である。
【符号の説明】
【0093】
1・・・ケイ素濃度算出装置
11・・・取得部
12・・・計算機本体
13・・・演算部
14・・・出力部
図1
図2
図3
図4
図5