(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051533
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 67/1042 20220101AFI20240404BHJP
H04L 67/2866 20220101ALI20240404BHJP
【FI】
H04L67/1042
H04L67/2866
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157751
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】芦野 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】日谷 尭
(72)【発明者】
【氏名】薬丸 美優
(57)【要約】
【課題】実際に、通信が経由した物理的な位置を推定できる情報処理装置を提供する。
【解決手段】第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、第一位置と第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する。第一位置と第二位置と複数の第三位置とに基づいて第一通信装置と第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する取得手段と、
前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する探索手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記探索手段は、前記第一位置と前記第二位置とに基づいて設定された物理的な探索範囲の制限を示す制約条件に基づいて複数の前記第三位置を経由する前記物理経路を探索する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記探索手段は、前記第一位置を基準として複数の前記第三位置を前記探索範囲において順に探索し、前記第一位置から探索済みの複数の前記第三位置を経由して最後に探索した第三位置までの各位置間の直線距離の総和を示す物理経路距離と、前記第一通信装置と前記第二通信装置との間の通信の応答時間とその前記通信経路の媒体速度とに基づいて算出した通信経路距離とを用いて、前記通信経路距離から前記物理経路距離を減じた残距離を算出し、当該残距離が、前記通信経路距離より前記物理経路距離が長いことを示す残距離の最小値を示す失敗条件未満となった場合に、前記第三位置のうちの最後に探索した分岐点を基準に前記第三位置の再探索を行う処理を繰り返す
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記探索手段は、前記通信経路距離と前記物理経路距離との差の前記通信経路距離に対する割合と、前記最後に探索した第三位置とが、所定の成功条件を示す満たす場合に、前記第一位置から探索済みの複数の前記第三位置と、前記最後に探索した第三位置と、前記第二位置との経路を前記物理経路として出力する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記探索手段は、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ前記物理経路の近傍に位置する第四位置の推定範囲を、
前記第一位置から前記第四位置までの第一推定距離と、前記第二位置から前記第四位置までの第二推定距離と、前記第一位置から前記第二位置までの第三推定距離とに基づいて推定した前記物理経路における分岐点と、
当該分岐点と前記第一推定距離、前記第二推定距離、前記第三推定距離とに基づいて推定した前記分岐点から前記第四位置までの第四推定距離と、
に基づいて推定する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記物理経路と、当該物理経路に対応する通信経路により接続する前記第一通信装置と前記第二通信装置との間の通信の応答時間とに基づいて、当該通信経路を構成する媒体の通信速度を示す媒体速度を算出する算出部と、
を備える請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記物理経路は、少なくとも一部が道路に設定された前記第三位置を経由する経路である
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記物理経路は、少なくとも一部が海底ケーブルに設定された位置に対応する空間座標を示す前記第三位置を経由する経路である
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得し、
前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する
情報処理方法。
【請求項10】
情報処理装置のコンピュータを、
第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する取得手段、
前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する探索手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信装置の保守を行うなどの場合に、対象となる通信装置の位置を特定することが必要である。特許文献1には関連技術として、物理的位置が未知である通信装置の物理位置を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、通信ネットワークで接続された2点間の通信において、通信が経由した通信経路に対応する物理的な経路を推定できる技術が望まれている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決する情報処理装置、情報処理方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の第一の態様によれば、情報処理装置は、第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する取得手段と、前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する探索手段と、を備える。
【0007】
発明の第二の態様によれば、情報処理方法は、第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得し、前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する。
【0008】
発明の第三の態様によれば、プログラムは、情報処理装置のコンピュータを、第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する取得手段、前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する探索手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実際に、通信が経由した物理的な位置を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による情報処理装置と複数の通信装置とを備えた通信ネットワークを示す図である。
【
図2】本実施形態による通信装置や情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】第一実施形態による通信装置の処理手順のフローチャートである。
【
図4】第一実施形態による情報処理装置のDBに含まれるデータテーブルを説明する図である。
【
図5】第一実施形態による物理経路テーブルに記録される情報を説明する図である。
【
図6】第一実施形態による探索範囲を説明する図である。
【
図7】第一実施形態による情報処理装置の処理手順のフローチャートである。
【
図8】第一実施形態による探索処理の概要を示す第一の図である。
【
図9】第一実施形態による探索処理の概要を示す第二の図である。
【
図10】第一実施形態による出力部の出力結果の例を示す図である。
【
図11】第二実施形態による情報処理装置の処理を説明する第一の図である。
【
図12】第二実施形態による表示情報の例を示す図である。
【
図13】第三実施形態による情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図15】最小構成の情報処理装置による処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による通信ネットワークを図面を参照して説明する。
図1は本実施形態による情報処理装置と、複数の通信装置とを備えた通信ネットワーク100を示す図である。
図1が示す通信ネットワーク100は、通信装置A、通信装置Bの2つの通信装置10と、情報処理装置20とが通信ネットワークを介して接続されている。より具体的には、通信装置A、通信装置B、情報処理装置20はそれぞれが通信接続している。通信装置A、通信装置Bを総称して通信装置10と呼ぶこととする。通信装置Aは第一通信装置の一例である。通信装置Bは第二通信装置の一例である。通信ネットワーク100には通信装置Aや通信装置B以外の他の通信装置10がさらに接続されていてもよい。通信装置Aと通信装置Bなどの通信装置10は、道路、砂漠、海底、地上空間、宇宙空間等に設けられた通信路を経由して通信接続される。なお、下記の例では、通信装置Aと通信装置Bは、道路に沿った地中のケーブル配管等に敷設された通信ケーブルの通信経路により接続される場合の例を用いて説明する。通信経路には通信を中継する中継装置が接続されているが、当該中継装置を通信装置10と定義してもよい。
【0012】
通信装置A、通信装置Bは、それぞれ測定部11、応答時間算出部12、距離算出部13、DB(Database)14の機能を備える。測定部11は、応答時間(RTT)を算出するための、他の通信装置10への通信パケットの送信を行い、応答の通信パケットの受信と、それら通信パケットの送信時刻や、受信時刻の特定を行う。より具体的には、測定部11は、調査対象に対して調査パケットPを送信し、調査対象からの応答パケットRを受信する。測定部11は、調査パケットPを送信した送信時刻Tpと、応答パケットRを受信した受信時刻Trを取得する。
【0013】
応答時間算出部12は、送信時刻Tpと受信時刻Trを用い応答時間RTTを算出する。
距離算出部13は通信接続する他の通信装置10との間の通信経路に対応する通信距離(通信経路距離)を算出する。具体的には距離算出部13は、DB14から、通信装置10間の伝送媒体の信号伝達速度である媒体速度Vmを取得する。なお、通信装置Aと通信装置Bとの間の伝送媒体は既知であるとする。距離算出部13は、応答時間RTTと媒体速度Vmを用いて通信距離を算出する。
DB14は通信経路に用いられている伝送媒体に応じた通信の媒体速度Vmや、通信経路について算出された通信距離を記憶する。
【0014】
通信装置Aは通信装置Bとの間の通信経路に対応する通信距離を算出する。通信装置Bも通信装置Aとの間の通信経路に対応する通信距離を算出してよい。通信装置Aや通信装置Bは算出した通信距離を情報処理装置20へ出力する。通信装置Aや通信装置Bは応答時間RTTを情報処理装置20へ送信し、情報処理装置20がその応答時間に基づいて、通信装置Aと通信装置Bの通信経路に対応する通信距離を算出してもよい。なお、通信経路に用いられる伝送媒体は、例えば、光ファイバ、メタル等である。なお通信装置Aや通信装置Bは通信ネットワーク100に接続する任意の2つの通信装置10であってよい。
【0015】
情報処理装置20は、所定のプログラムを実行することにより、取得部21、探索部22、出力部23、DB24の各機能を発揮する。
取得部21は、ある通信経路に対応する物理経路を探索対象とした場合の、当該通信経路の始点の通信装置10(例えば通信装置A)と終点の通信装置10(例えば通信装置B)とを特定し、それら通信装置10から、測定情報、または当該通信経路の応答時間、または当該通信経路の通信距離の情報を取得する。また取得部21は当該特定した始点と終点の通信装置10の物理位置を示す位置情報と、その物理位置に応じて決定した範囲における物理経路に設定された複数の物理位置を取得する。
探索部22は、取得部21の取得した情報を用いて、特定した始点と終点の通信装置10間の通信経路に対応する物理経路を探索する。
出力部23は、特定した始点と終点の通信装置10間の通信経路に対応する物理経路の情報を出力する。
DB24は、取得部21が通信装置10から取得した情報を記憶する。またDB24は、所定の物理経路に設定された物理位置を記憶する。
【0016】
図2は、通信装置や情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図2が示すように通信装置10や情報処理装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、通信モジュール105等の各ハードウェアを備えたコンピュータである。
【0017】
次に、通信装置10の処理について説明する。
図3は、本実施形態に係る通信装置10の処理手順のフローチャートである。
【0018】
通信装置10のうちの通信装置Aの測定部11は、通信装置Bに対して調査パケットPを送信し、通信装置Bからの応答パケットRを受信する(ステップS1)。通信装置Aの測定部11は、調査パケットPを送信した送信時刻Tpと、応答パケットRを受信した受信時刻Trを取得する。通信装置Aの応答時間算出部12は、送信時刻Tpと受信時刻Trと式(1)を用いて応答時間RTTを算出する(ステップS2)。
【0019】
応答時間RTT=受信時刻Tr-送信時刻Tp ・・・(1)
【0020】
通信装置Aの距離算出部13は、DB14から、通信装置Aと通信装置Bとの間の伝送媒体の媒体速度Vmを取得する(ステップS3)。通信装置Aの距離算出部13は、取得した媒体速度Vmに設定する(ステップS4)。距離算出部13は、式(2)を用いて、通信装置Aと通信装置Bとの間の距離を算出する(ステップS5)。
【0021】
距離=(媒体速度Vm×応答時間RTT)÷2 ・・・(2)
【0022】
通信装置Aの距離算出部13は、算出された距離と、距離を算出した対象の二つの通信装置10のIDとを紐づけてDB14に格納する(ステップS6)。つまり、通信装置Aの距離算出部13は、通信装置AのID、通信装置BのID、それら通信装置10間の距離を紐づけてDB14に格納する。通信装置AはDB14に格納した通信装置10のIDとそれら通信装置10の間の通信経路に対応する距離(通信距離)を含む計算結果を情報処理装置20へ送信する(ステップS7)。通信装置Bなどの他の通信装置10も同様の処理を行ってよい。
【0023】
次に、情報処理装置20の処理について説明する。
図4は情報処理装置20のDB24に含まれるデータテーブルを説明する図である。
DB24には、物理経路テーブル、探索ポリシーテーブル、通信装置テーブル、探索テーブルなどのデータテーブルが格納されている。
【0024】
物理経路テーブルには、物理経路の種別、物理経路のID、当該IDが示す道路において1つまたは複数設定された座標などの情報が記録される。物理経路の種別は、道路、海底ケーブル、無線通信空間、などを示す。物理経路のIDは、対象となる物理経路の識別子である。物理経路が道路である場合には、道路を特定する名称や、カーブの位置などに応じて物理経路のIDが割り振られている。座標の情報は、地表の緯度経度を示す座標であってもよいし、地球の中心を原点などとした他の座標系における座標であってもよい。物理経路が道路である場合には、座標の情報は、例えばカーブに設定された当該カーブ上の異なる位置の複数の座標である。物理経路が無線通信空間である場合には、座標の情報は、無線通信装置(例えば、通信基地局や人工衛星)の座標や無線通信装置間に所定間隔で設定された空間における複数の3次元座標などであってよい。
【0025】
分岐点情報は、座標が物理経路の分岐点に位置する座標かどうかを示す情報である。例えば道路が分岐する場合、分岐点を通る第一道路と、分岐点を始点とする第二道路が存在する。この場合、分岐点の座標は第一道路の座標としても第一道路の道路IDに紐づいて物理経路テーブルに記録され、またその分岐点の座標は第二道路の座標としても第二道路の道路IDに紐づいて物理経路テーブルに記録される。分岐点の座標は、分岐点の情報であることを示すフラグなどの情報に紐づけて物理経路テーブルに記録されている。
【0026】
探索ポリシーテーブルには、探索部22が通信経路に対応する物理経路の探索処理に用いる条件が記録される。条件は、探索条件、制約条件、失敗条件、成功条件である。探索条件は、例えば道路種別を限定する条件である。一例として探索条件は道幅が所定幅以上の主要道路に該当する道路種別を示す。探索条件は、他の道路種別や、他の物理経路(海底ケーブルや無線通信空間など)の種別を示してもよい。
【0027】
制約条件は通信経路に対応する物理経路を探索する範囲を限定する条件である。一例として、通信経路の始点と終点からの円の半径(例えば5km)を示す。情報処理装置20は、この2つの円と、その円半径に共通する2本の接線の範囲を探索範囲として探索処理を行う。
【0028】
失敗条件は探索処理において情報処理装置20が順に特定した物理経路上の位置と、終点の通信装置10と位置関係に基づいて探索が失敗であることを判定するための条件である。本実施形態において失敗条件は、探索処理において情報処理装置20が順に特定した物理経路上の最終位置までの始点を基準とした物理距離(物理経路距離)を、探索処理の前に予め算出された始点と終点との通信距離から減じた差の最小値を示し、本実施形態においては失敗条件の最小値が0を示す。情報処理装置20は、探索処理において情報処理装置20が順に特定した物理経路上の最終位置までの始点を基準とした物理距離を、探索処理の前に予め算出された始点と終点との通信距離から減じた差が、最小値である0未満(マイナスの値)となる場合に失敗であると判定する。
【0029】
成功条件は探索処理において情報処理装置20が順に特定した物理経路上の位置と、終点の通信装置10と位置関係に基づいて探索が成功であることを判定するための条件である。本実施形態において1つ目の成功条件は、探索処理の対象の物理経路に対応する通信経路の始点と終点の通信装置10の通信距離と、探索処理において情報処理装置20が順に特定した物理経路上の位置までの始点からの物理距離との差の、通信距離に対する割合を示す。本実施形態においては1つ目の成功条件が示す割合は1%を示す。また本実施形態において2つ目の成功条件は、探索処理において情報処理装置20が順に特定した物理経路上の位置と、終点の通信装置の位置との距離を示す。本実施形態において当該2つ目の成功条件が示す距離は1kmである。情報処理装置20は、1つ目の成功条件と、2つ目の成功条件とを用いて、通信距離と物理距離との差の、通信距離に対する割合が1%以内であり、かつ特定した物理経路上の位置と、終点の通信装置の位置との距離が1km以内である場合であって、失敗条件に当てはまらない場合に、探索処理が成功したと判定する。
【0030】
通信装置テーブルには、通信ネットワーク100を構成する複数の通信装置10のIDに紐づけて、通信装置10の物理位置や、情報処理装置20がそれら通信装置10から取得した情報が紐づいて記録される。情報処理装置20が通信装置10から取得した情報とは、通信装置10が計算、計測した情報であってよい。例えば他の通信装置10との通信において計測した送信時刻、受信時刻、応答時間、通信距離などの情報である。探索テーブルには、探索部22の探索処理において一時的に記憶する情報が格納される。
【0031】
図5は物理経路テーブルに記録される情報を説明する図である。
図5では地図内の道路のIDとそのIDが示す道路に設定された複数の物理位置とを示している。
図5において表示される地図内の各道路は、cv-1、cv-2、cv-3、cv-4、cv-5、cv-6,cv-7、cv-8などの各道路IDで示す道路範囲に区分けされる。各道路IDが示す道路範囲には、複数の物理位置が設定されており、例えばcv-2が示す道路範囲にはp20~p26までの7つの位置が設定される。また同様にcv-7が示す道路範囲にはp71~p74までの4つの位置が設定される。また同様にcv-4が示す道路範囲にはp31~p33までの3つの位置が設定される。これらの物理位置は実際に計測または算出された座標の値である。他の道路IDについての説明は省略する。
【0032】
一例としてcv-2の道路範囲におけるp20の物理位置は、cv-1の道路範囲におけるp11の物理位置に一致する。このように道路IDが示す道路範囲における2つの端の位置は、他の道路の端の位置に対応する場合があり、この場合、同じ位置の情報が、各道路範囲を示す道路IDに紐づけて物理経路テーブルに記録される。複数の道路範囲が示す道路IDに共通して紐づけられている情報の物理位置を、分岐点と呼ぶこととする。物理経路テーブルには各物理位置が分岐点かどうかを示すフラグの値が予め道路IDに紐づいて記録されているものとする。
【0033】
図6は探索範囲を説明する図である。
通信経路に対応する物理経路を探索対象とした場合の、当該通信経路の始点の通信装置10を
図6中にSで示し、当該通信経路の終点の通信装置10を
図6中にGで示す。情報処理装置20は、一例として、制約条件に基づいて設定した、通信装置Sの半径5kmの第一の円と、通信装置Gの半径5kmの第二の円と、第一の円および第二の円に共通して接する2つの直線とで囲まれる範囲を、探索範囲Aと特定する。
【0034】
図7は、本実施形態に係る情報処理装置20の処理手順のフローチャートである。
次に情報処理装置20の処理を、順を追って説明する。
情報処理装置20の取得部21は、通信装置10から取得した相手側の通信装置10との通信距離を、その通信距離の送信元の通信装置10のIDに紐づけて通信装置テーブルに記録する。また取得部21は、通信装置10から取得した他の情報を当該通信装置10のIDに紐づけて通信装置テーブルに記録する。一例として、取得部21は、通信装置Aと通信装置Bとの通信に基づいて算出した通信距離、通信装置Aが通信装置Bと通信した際の送信時刻Tpと受信時刻Trとそれらの時刻や媒体速度Vmに基づいて算出した応答時間RTTを取得し、通信装置AのIDに紐づけて通信装置テーブルに記録する。
【0035】
また取得部21は、ユーザからの探索処理の開始信号を取得する。この開始信号においては、物理経路を探索するための対応する通信経路の始点と終点である通信装置Aと通信装置Bの情報が含まれる。取得部21は、開始信号を取得すると、通信経路の始点と終点である通信装置Aと通信装置Bの情報を探索部22へ出力して処理の開始を指示する。
【0036】
なお探索部22は、物理経路を探索するための対応する通信経路の始点と終点である通信装置Aと通信装置Bとの間の通信距離や、その間の通信における応答時間を取得できていない場合には、通信装置Aから取得した、通信装置Aが通信装置Bと通信した際の送信時刻Tpと受信時刻Trや媒体速度Vmとを用いてその通信距離を算出してよい。つまり探索部22は、通信装置10の応答時間算出部12や距離算出部13の処理機能を備えていてもよい。
【0037】
探索部22は、処理の開始の指示を受けると、通信装置Aと通信装置Bの物理位置をDB24の通信装置テーブルから取得する。探索部22は探索条件、制約条件、失敗条件、成功条件を取得する(ステップS201)。探索部22は、探索した物理経路を、通信装置A,B間の通信距離から減じた差を示す初期の探索の残距離kの値として、通信装置Aと通信装置Bの間の通信距離の値を設定する(ステップS202)。
【0038】
探索部22は、通信経路の始点Sである通信装置Aの物理位置を最初の探索候補点として設定し、本探索処理において未だ特定されていない物理位置であって探索条件が示す物理経路の種別に紐づく物理位置のうち、設定した探索候補点に最も近い物理位置となる、次の探索候補点がDB24の物理経路テーブル内にあるかを判定する(ステップS203)。探索部22は、当該ステップS203の処理の条件に合致する探索候補点が無い場合には、ステップS209の処理へ移行する。探索部22は、当該ステップS203の処理の条件に合致する探索候補点がある場合にはその探索候補点を特定する(ステップS204)。
【0039】
探索部22は、探索候補点を特定した場合、当該探索候補点が制約条件に真かを判定する(ステップS205)。つまり探索部22は、探索候補点の物理位置の座標が、制約条件が示す半径5kmの値に基づいて、通信装置Aの物理位置を中心とする半径5kmの第一の円と、通信装置Bの物理位置を中心とする半径5kmの第二の円と、第一の円および第二の円に共通して接する2つの直線とで囲まれる探索範囲内に含まれるかを判定する。
【0040】
探索部22は探索候補点が制約条件に真である場合、当該探索候補点が分岐点かを判定する(ステップS206)。探索候補点の物理位置に分岐点を示すフラグが紐づいて物理経路テーブルに記録されている場合、当該探索候補点は分岐点であると判定できる。探索部22は、探索候補点が分岐点である場合、当該探索候補点を分岐点情報として一時記憶する(ステップS207)。分岐点情報として一時記憶することにより、当該分岐点の探索候補点を基点とする他の物理経路の探索を後に行うことができる。
【0041】
探索部22は、探索候補点が分岐点でない場合、また分岐点情報とした登録した場合、次に、当該探索候補点が失敗条件に真かを判定する(ステップS208)。つまり探索部22は、始点Sから探索候補点までの物理距離を、始点S(通信装置A)から終点G(通信装置B)までの通信距離から減じた値が0より小さいかを判定する。始点Sから探索候補点までの物理距離を、始点S(通信装置A)から終点G(通信装置B)までの通信距離から減じた値が0より小さい場合には、失敗条件に真である。始点Sから探索候補点までの物理距離を、始点S(通信装置A)から終点G(通信装置B)までの通信距離から減じた値が0より小さい場合とは、物理距離が通信距離を超えていることを示す。物理距離が通信距離を超えた場合には失敗と見做す。始点Sから探索候補点までの物理距離を、始点S(通信装置A)から終点G(通信装置B)までの通信距離から減じた値が0以上の場合とは、物理距離が通信距離を超えていないことを示す。
【0042】
始点Sから探索候補点までの物理距離を、始点S(通信装置A)から終点G(通信装置B)までの通信距離から減じた値が0より小さく、これにより、探索候補点が失敗条件に真と判定された場合、探索部22は、この探索候補点より前に特定した探索候補点の中に、分岐点として一時記憶した探索候補点があるかを判定する(ステップS209)。探索部22は、前に特定した探索候補点の中に、分岐点として一時記憶した探索候補点が無い場合には探索処理を終了する。
【0043】
探索部22は、前に特定した探索候補点の中に、分岐点として一時記憶した探索候補点がある場合には、その分岐点のうち最も新しく特定した探索候補点を再特定する(ステップS210)。探索部22は、始点Sから再特定した探索候補点までの物理距離を、始点Sである通信装置Aと終点Gである通信装置B間の通信距離から減じた差を、探索の残距離kとして新たに設定する。探索部22は、再特定した探索候補点を基準とした新たな探索処理をしていない他の物理経路の探索処理を開始するため、ステップS203に戻り、再特定した探索候補点に最も近い物理位置であって、本探索処理において未だ特定されていない物理位置を、次の探索候補点として特定する。そして、ステップS204からの処理を繰り返す。
【0044】
探索候補点が失敗条件に偽と判定できた場合、探索部22は、探索候補点の物理位置と、終点Gの通信装置Bの物理位置との関係に基づいて、探索候補点が成功条件に真かを判定する(ステップS212)。具体的には探索部22は、始点Sから終点Gまでの通信距離と、始点Sから現時点で特定している探索候補点までの物理距離との差が、通信距離の1%以内であり、かつ探索候補点の物理位置と、終点Gの通信装置Bの物理位置との距離が1km以内である場合、探索候補点が成功情報に真であると判定できる。出力部23は、探索候補点が成功情報に真である場合、その探索候補点までに特定した各探索候補点を含む物理経路の情報(道路ID、座標など)や、それら探索候補点を地図上でプロットして表示した表示情報を所定の出力先に出力する(ステップS213)。
【0045】
探索部22は、他の探索経路が無いかを判定するためにステップS209に戻り、分岐点があるかを判定する。
【0046】
探索部22は、探索候補点が成功情報に偽である場合、当該探索候補点を物理経路の情報として記憶する。探索部22は、物理経路の情報として記憶した各探索候補点を通る物理距離を、始点Sである通信装置Aと終点Gである通信装置B間の通信距離から減じて、その値を新たな残距離kとして設定する(ステップS214)。そして、探索部22は、最後に物理経路の情報として記憶した探索候補点を基点として、ステップS203からの処理を繰り返す。
【0047】
上述のステップS203からステップS214の処理を繰り返すことにより、始点Sの通信装置Aから、終点Gに近い探索候補点であって、物理距離が通信距離より短く、制約条件に基づく探索範囲において特定できる探索候補点を特定して、始点Sから終点Gの通信装置10間の通信経路に対応する物理経路を推定することができる。
【0048】
上述の情報処理装置20の処理は、第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、第一位置と第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得し、第一位置と第二位置と複数の第三位置とに基づいて第一通信装置と第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する処理の一例である。
【0049】
また上述の情報処理装置20の処理は、上記第一位置を基準として複数の第三位置(探索候補点)を探索範囲において順に探索し、第一位置から探索済みの複数の第三位置を経由して最後に探索した第三位置までの各位置間の直線距離の総和を示す物理経路距離と、第一通信装置と第二通信装置との間の通信の応答時間とその通信経路の媒体速度とに基づいて算出した通信経路距離とを用いて、通信経路距離から物理経路距離を減じた残距離を算出している。そして上述の情報処理装置20の処理は、当該残距離が、通信経路距離より物理経路距離が長いことを示す残距離の最小値を示す失敗条件の値未満となった場合に、第三位置(探索候補点)のうちの最後に探索した分岐点を示す第三位置を基準に第三位置の再探索を行う処理を繰り返す処理の一例である。
【0050】
図8は探索処理の概要を示す第一の図である。
図9は探索処理の概要を示す第二の図である。
上述した情報処理装置20の探索部22の処理を
図8、
図9を用いて説明する。
探索部22は、始点Sから始点Gの間の複数の物理位置のうち、始点Sを基準とする探索処理E1を行う。この探索処理E1において、探索部22は、探索条件に真となる始点Sに最も近い物理位置が、制約条件に真となり、失敗条件、成功条件が偽となる物理位置p1を探索候補点と特定する。
図9E1で示すように、探索部22は、始点Sと、探索候補点p1と、探索候補点p1における残距離kと、を紐づけて探索テーブルに記録する。また探索部22は、
図9E1で示すように、始点Sの次の候補点p1を最初の分岐点の情報として探索テーブルに記録する。当該分岐点の情報は、上述のステップS209の処理において用いる。
【0051】
また探索部22は、探索候補点p1を基準として探索処理E2を行い同様に、過去に選択されていない物理位置のうち探索条件に真となる探索候補点p1に最も近い物理位置p7が、制約条件に偽となる場合、探索候補点p7を物理経路の情報から除外して、分岐点となる探索候補点p1に戻り、探索候補点p1を基準とする探索処理E3を行う。つまり探索部22は、
図9E2で示すように、探索部22は、基準とした探索候補点p1と、次の探索候補点p7と、探索候補点p7における残距離kとを紐づけた情報を、探索テーブルに記録せずに、次の探索処理E3を行う。
【0052】
また探索部22は、探索候補点p1を基準として探索処理E3を行い同様に、過去に選択されていない物理位置のうち探索条件に真となる探索候補点p1に最も近い物理位置p2が、制約条件に真となり、失敗条件、成功条件が偽となる場合、その物理位置p2を探索候補点と特定する。
図9E3で示すように、探索部22は、探索候補点p1と、探索候補点p2と、探索候補点p2における残距離kと、を紐づけて探索テーブルに記録する。また探索部22は、
図9E3で示すように、前回記録した分岐点としての探索候補点p1の次の物理経路上の分岐点として、探索候補点p2の情報を、探索テーブルに記録する。
【0053】
また探索部22は、探索候補点p2を基準として探索処理E4を行い同様に、過去に選択されていない物理位置のうち探索条件に真となる探索候補点p2に最も近い物理位置p3が、制約条件に真となり、失敗条件、成功条件が偽となる場合、その物理位置p3を探索候補点と特定する。ここで、始点Sから探索候補点p3までの物理距離を、始点Sから終点Gまでの通信距離から減じた差が0より小さい値である場合、失敗条件の最小値0未満となり失敗条件は真であるため、探索候補点p3を物理経路の情報から除外して、分岐点となる探索候補点p2に戻り、探索候補点p2を基準とする探索処理E5を行う。つまり探索部22は、
図9E4で示すように、基準とした探索候補点p2と、次の探索候補点p3と、探索候補点p3における残距離kとを紐づけた情報を、探索テーブルに記録せずに、次の探索処理E5を行う。
【0054】
探索部22は、探索候補点p2を基準として探索処理E5を行い同様に、探索条件に真となる探索候補点p2に最も近い物理位置のうち過去に選択されていない物理位置p4が、制約条件に真となり、失敗条件、成功条件が偽となる場合、その物理位置p4を探索候補点と特定する。始点Sから探索候補点p4までの物理距離を、始点Sから終点Gまでの通信距離から減じた差(残距離k)が0以上(物理距離<通信距離)場合、残距離kは失敗条件の最小値0以上の値であるため失敗条件は偽となる。この場合、探索候補点p4は、探索部22は、
図9E5で示すように、探索候補点p2と、探索候補点p4と、探索候補点p4における残距離kと、を紐づけて探索テーブルに記録する。また探索部22は、
図9E5で示すように、前回記録した分岐点としての探索候補点p2の次の物理経路上の分岐点として、探索候補点p4の情報を、探索テーブルに記録する。
【0055】
探索部22は、探索候補点p4について成功条件を判定した場合に真となると、その探索候補点p4と、終点Gの情報と、残距離k(0)とを紐づけて、
図9E6で示すように、探索テーブルに記録する。探索テーブルに記録した、物理位置の順番(S→p1→p2→p4→G)が、物理経路となる。
【0056】
図10は出力部の出力結果の例を示す図である。
出力部23は、例えば
図10に示すように、地図上に、始点Sとなる通信装置の位置、終点Gとなる通信装置の位置、それら通信装置間の通信経路に対応する推定できる物理的な位置を表す物理経路を重畳して出力する。
【0057】
情報処理装置20は、上述の探索処理により、物理位置の最終的な探索候補点が成功条件を満たす複数の物理経路を探索できた場合、それら複数の物理経路の情報を出力するようにしてもよい。それら複数の物理経路は、1つの地図上に重ねて表示されてよい。
【0058】
<第二実施形態>
次に第二実施形態による通信ネットワークを図面を参照して説明する。
第二実施形態においては情報処理装置20の探索部22が、物理経路の算出できた2つの通信装置10の間に、位置が不明な第三の通信装置10が存在する場合に、その第三の通信装置10の位置を推定する機能(目標範囲推定機能)を備える場合の例について説明する。
【0059】
図11は第二実施形態による情報処理装置の処理を説明する第一の図である。
物理経路を推定した通信装置Aと通信装置Bの間に、第三の通信装置Cが存在している可能性が有るが位置が不明であるとする。情報処理装置20は、当該通信装置Cの通信アドレスを記憶している。この場合、情報処理装置20の管理者は、情報処理装置20を用いて通信装置Cが存在する推定範囲の探索を指示することができる。
【0060】
管理者は、通信装置Cが存在する推定範囲の探索を指示する際に、近傍にあることが推定される通信装置A、Bの情報と、通信装置Cの情報とを情報処理装置20に入力して通信装置Cの推定範囲の探索を指示する。情報処理装置20の探索部22は、DB24から通信装置CのIPアドレスを取得する。探索部22は当該通信装置CのIPアドレスを含む探索要求を通信装置Aと通信装置Bに送信する。
【0061】
通信装置Aの測定部11は、通信装置Cに対して調査パケットPを送信し、通信装置Cからの応答パケットRを受信する。通信装置Aの測定部11は、調査パケットPを送信した送信時刻Tpと、応答パケットRを受信した受信時刻Trを取得する。通信装置Aの応答時間算出部12は、送信時刻Tpと受信時刻Trと上記式(1)を用いて応答時間RTTを算出する(ステップS2)。また通信装置Aの距離算出部13は、DB14から、通信装置Aと通信装置Cとの間の伝送媒体の媒体速度Vmを取得する。通信装置Aと通信装置Cとの間の伝送媒体の媒体速度Vmは既知であるとする。通信装置Aの距離算出部13は、取得した媒体速度Vmに設定する。距離算出部13は、上記式(2)を用いて、通信装置Aと通信装置Cとの間の通信距離ACを算出する。
【0062】
通信装置Bも通信装置Aと同様に、通信装置Bと通信装置Cの間の通信距離BCを算出する。通信装置Aは、通信装置Aと通信装置Cの通信距離ACを情報処理装置20へ送信する。通信装置Bは、通信装置Bと通信装置Cの通信距離BCを情報処理装置20へ送信する。なお、通信距離ACと通信距離BCは、第一実施形態で述べたように情報処理装置20が、通信装置Aや通信装置Bが測定した、送信時刻Tpと受信時刻Trとによる応答時間RTTや媒体速度Vmを用いて算出してもよい。
【0063】
今、通信装置Aと通信装置Bの間の通信距離または物理距離が100kmであるとする。通信装置Aと通信装置Bの間の通信距離または物理距離は第一実施形態の処理により計算済み、または既知の与えられた値であるとする。そして通信装置Aと通信装置Cの通信距離ACが40km、通信装置Bと通信装置Cの間の通信距離BCが80kmであるとする。
【0064】
情報処理装置20の探索部22は、通信装置Aと通信装置Bの間の通信距離AB(または物理距離AB)、通信距離AC40km、通信距離BC80kmを用いて、分岐点Jの位置を推定する。具体的には探索部22は、通信距離ACと通信距離BCとを加算した120kmが、通信距離AB100kmよりも長いため、その長い分の20kmの半分の10kmを算出し、当該10kmを通信距離ACから減じた位置(J)、または当該10kmを通信距離BCから減じた位置(J)を分岐点Jの位置と推定する。より具体的には探索部22は、通信装置Aから分岐点Jまでの距離を式(3)により求める。つまり通信装置Aから分岐点Jまでの距離AJは30kmと算出できる。この場合、式(4)より通信装置Bから分岐点Jまでの距離BJは70kmと算出できる。
【0065】
AC-{(AC+BC)-AB}÷2=30km ・・・(3)
【0066】
上述したように、式(3)は、通信距離ACと通信距離BCとを加算した120kmが、通信距離AB100kmよりも長いため、その長い分の20kmの半分の10kmを算出し、当該10kmを通信距離ACから減じた位置(分岐点J)を計算している。または式(3)の代わりに式(3’)を用いてもよい。
【0067】
(|AC|-|BC|+|AB|)÷2=30km ・・・(3’)
【0068】
BJ=AB-AJ=70km ・・・(4)
【0069】
また通信距離ACが40kmと推定済みの為、分岐点Jから探索対象の通信装置Cまでの距離は式(5)より10kmと推定することができる。
【0070】
JC=AC-AJ=10km ・・・(5)
【0071】
従って、通信装置Cの推定範囲は、分岐点Jから10kmの円の範囲と推定することができる。なお探索部22は、通信距離ACと通信距離BCの合計の距離が、通信装置距離ABよりも短い場合には、通信装置Aと通信装置Bの間の通信距離ABの算出結果の信頼性が低い可能性が有ることを示す情報を、出力先の装置へ出力してもよい。
【0072】
図12は第二実施形態による表示情報の例を示す図である。
出力部は、通信装置Aと通信装置Bの位置と、第一実施形態と同様に推定した通信装置Aと通信装置Bの間の物理経路を、地図上に重畳した表示情報を出力先に出力すると共に、その表示情報に、通信距離AJ=30kmの位置の分岐点Jと、分岐点Jを中心とする10kmの通信装置Cの推定範囲をさらに重畳して表示することができる。
【0073】
第三実施形態の処理は、探索部22が、第一位置(上記の通信装置A)と第二位置(上記の通信装置B)とを繋ぐ物理経路の近傍に位置する第四位置(上記の通信装置C)の推定範囲を求める処理の一例である。この場合、探索部22は、第一位置から第四位置までの第一推定距離(上記の通信距離AC)と、第二位置から第四位置までの第二推定距離(上記の通信距離BC)と、第一位置から第二位置までの第三推定距離(上記の通信距離AB)とに基づいて推定した物理経路における分岐点(上記の分岐点J)と、当該分岐点Jと第一推定距離、第二推定距離、第三推定距離とに基づいて推定した分岐点から第四位置(上記の通信装置C)までの第四推定距離(上記の通信距離JC)と、に基づいて推定する処理の一例である。
【0074】
<第三実施形態>
図13は第三実施形態による情報処理装置の機能ブロック図である。
第三実施形態による情報処理装置20は、さらに算出部25の機能を備える。算出部25は、予め通信経路に対応する物理距離が既知の所定の通信装置10間の通信ケーブルの媒体速度Vmを算出する。
【0075】
例えば情報処理装置20は、通信装置Aと通信装置Bの指定と、それら通信装置10間の通信ケーブルの媒体速度Vmの算出指示を受け付ける。すると算出部25は、第一実施形態で算出された通信装置Aと通信装置Bの間の通信経路に対応する既知の物理経路の情報を取得する。算出部25は、物理経路における物理座標に基づいて、当該物理経路の距離を算出する。また算出部25は通信装置Aと通信装置Bの間の通信の応答時間RTT(秒)をDB24の通信装置テーブルから取得する。算出部25は、式(6)により媒体速度を算出する。出力部23は、媒体速度の情報を所定の表示装置などの出力先に出力してよい。
【0076】
媒体速度Vm=物理経路の距離(km)÷(応答時間RTT÷2)
【0077】
第三実施形態によれば、通信装置10間の物理距離に基づいて、通信ケーブルの媒体を用いた通信の速度(媒体速度)を算出することができる。
【0078】
<第四実施形態>
図14は情報処理装置の最小構成を示す図である。
図15は最小構成の情報処理装置による処理フローを示す図である。
情報処理装置20は、少なくとも取得手段31、探索手段32を備える。
取得手段31は、第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、第一位置と第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する(ステップS301)。
探索手段32は、第一位置と第二位置と複数の第三位置とに基づいて第一通信装置と第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する(ステップS302)。
【0079】
上述の通信装置10や情報処理装置20は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
【0080】
上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0081】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0082】
(付記1)
第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する取得手段と、
前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する探索手段と、
を備える情報処理装置。
【0083】
(付記2)
前記探索手段は、前記第一位置と前記第二位置とに基づいて設定された物理的な探索範囲の制限を示す制約条件に基づいて複数の前記第三位置を経由する前記物理経路を探索する
付記1に記載の情報処理装置。
【0084】
(付記3)
前記探索手段は、前記第一位置を基準として複数の前記第三位置を前記探索範囲において順に探索し、前記第一位置から探索済みの複数の前記第三位置を経由して最後に探索した第三位置までの各位置間の直線距離の総和を示す物理経路距離と、前記第一通信装置と前記第二通信装置との間の通信の応答時間とその前記通信経路の媒体速度とに基づいて算出した通信経路距離とを用いて、前記通信経路距離から前記物理経路距離を減じた残距離を算出し、当該残距離が、前記通信経路距離より前記物理経路距離が長いことを示す残距離の最小値を示す失敗条件未満となった場合に、前記第三位置のうちの最後に探索した分岐点を基準に前記第三位置の再探索を行う処理を繰り返す
付記2に記載の情報処理装置。
【0085】
(付記4)
前記探索手段は、前記通信経路距離と前記物理経路距離との差の前記通信経路距離に対する割合と、前記最後に探索した第三位置とが、所定の成功条件を示す満たす場合に、前記第一位置から探索済みの複数の前記第三位置と、前記最後に探索した第三位置と、前記第二位置との経路を前記物理経路として出力する
付記3に記載の情報処理装置。
【0086】
(付記5)
前記探索手段は、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ前記物理経路の近傍に位置する第四位置の推定範囲を、
前記第一位置から前記第四位置までの第一推定距離と、前記第二位置から前記第四位置までの第二推定距離と、前記第一位置から前記第二位置までの第三推定距離とに基づいて推定した前記物理経路における分岐点と、
当該分岐点と前記第一推定距離、前記第二推定距離、前記第三推定距離とに基づいて推定した前記分岐点から前記第四位置までの第四推定距離と、
に基づいて推定する
付記1から付記4の何れか一つに記載の情報処理装置。
【0087】
(付記6)
前記物理経路と、当該物理経路に対応する通信経路により接続する前記第一通信装置と前記第二通信装置との間の通信の応答時間とに基づいて、当該通信経路を構成する媒体の通信速度を示す媒体速度を算出する算出部と、
を備える付記1に記載の情報処理装置。
【0088】
(付記7)
前記物理経路は、少なくとも一部が道路に設定された前記第三位置を経由する経路である
付記1から付記6の何れか一つに記載の情報処理装置。
【0089】
(付記8)
前記物理経路は、少なくとも一部が海底ケーブルに設定された位置に対応する空間座標を示す前記第三位置を経由する経路である
付記1から付記6の何れか一つに記載の情報処理装置。
【0090】
(付記9)
前記物理経路は、少なくとも一部が対抗する無線通信装置の間に設定された位置に対応する空間座標を示す前記第三位置を経由する経路である
付記1から付記6の何れか一項に記載の情報処理装置。
【0091】
(付記10)
前記無線通信装置は人工衛星である付記9に記載の情報処理装置。
【0092】
(付記11)
第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得し、
前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する
情報処理方法。
【0093】
(付記12)
情報処理装置のコンピュータを、
第一通信装置の物理位置を示す第一位置と、第二通信装置の物理位置を示す第二位置と、前記第一位置と前記第二位置とを繋ぐ経路に設定された複数の物理位置を示す第三位置とを取得する取得手段、
前記第一位置と前記第二位置と複数の前記第三位置とに基づいて前記第一通信装置と前記第二通信装置の通信経路に対応する物理経路を探索する探索手段、
として機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0094】
10・・・通信装置
20・・・情報処理装置
11・・・測定部
12・・・応答時間算出部
13・・・距離算出部
14、24・・・DB
21・・・取得部(取得手段)
22・・・探索部(探索手段)
23・・・出力部
25・・・算出部