(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051544
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】活性化装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240404BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240404BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240404BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 J
H01M8/02
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157765
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA01
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC11
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA52
5H127BA59
5H127BA62
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB12
5H127BB32
5H127BB37
5H127BB42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フラッディングの防止及び、電極触媒の活性化を目的とする。
【解決手段】活性化装置(40)は、複数個のガス流路(52、84)を有する治具(42、44)を備える。複数個のガス流路は、活性化ガスが流入する入口(60、92)と、電解質膜・電極構造体(10)のアノード電極(14)又はカソード電極(16)に向いて開口した供給口(54、86)と、活性化ガスが流出する出口(62、94)とをそれぞれ有する。すなわち、複数個のガス流路は互いに独立した流路であり、互いに連通していない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を構成するアノード電極及びカソード電極の間に電解質膜が挟まれた電解質膜・電極構造体を活性化するための活性化装置において、
前記電解質膜・電極構造体の両側に配置される一対の治具を備え、
前記一対の治具の各々は、複数個のガス流路と、複数個のヒートパイプとを有し、
前記活性化装置は、
前記複数個のガス流路に活性化ガスを供給する活性化ガス供給部と、
前記複数個のヒートパイプに熱を付与する熱供給部と、
前記熱供給部から前記複数個のヒートパイプに付与される熱を制御する制御部と、
を備え、
前記複数個のガス流路の各々は、前記活性化ガスが流入する入口と、前記アノード電極又は前記カソード電極に向いて開口した供給口と、前記活性化ガスが流出する出口と、を有する、活性化装置。
【請求項2】
請求項1記載の活性化装置において、前記複数個のガス流路が互いに平行となるように並ぶ、活性化装置。
【請求項3】
請求項1記載の活性化装置において、前記複数個のガス流路内の各々に設けられた蓄熱部を有する、活性化装置。
【請求項4】
請求項3記載の活性化装置において、前記蓄熱部は、前記ガス流路を起点として該ガス流路から離間するように凹んだ1個以上の凹部である、活性化装置。
【請求項5】
請求項3記載の活性化装置において、前記蓄熱部は、前記ガス流路を起点として該ガス流路から離間するように凹んだ2個以上の凹部であり、
前記2個以上の凹部の蓄熱容量が互いに相違し、
前記2個以上の凹部は、前記ガス流路内において、前記入口から前記出口に向かって、蓄熱容量が小さい凹部から蓄熱容量が大きい凹部の順で並ぶ、活性化装置。
【請求項6】
請求項4記載の活性化装置において、前記ガス流路は、前記1個以上の凹部の凹み方向に向かって凹むように屈曲した屈曲部を有し、前記屈曲部に前記入口又は前記出口が形成される、活性化装置。
【請求項7】
請求項4記載の活性化装置において、前記ガス流路は、前記1個以上の凹部の凹み方向に向かって凹むように屈曲した第1屈曲部及び第2屈曲部を有し、前記第1屈曲部に前記入口が形成され、且つ前記第2屈曲部に前記出口が形成される、活性化装置。
【請求項8】
請求項1又は2記載の活性化装置において、前記一対の治具の各々では、前記複数個のヒートパイプのうち2個の間に、前記複数個のガス流路のうち2個以上が位置し、且つ前記2個以上のガス流路は、前記複数個のヒートパイプの延在方向に沿って直線状に並ぶ、活性化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の電解質膜・電極構造体を活性化する活性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気候変動の緩和又は影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けてCO2削減に関する研究開発が行われている。この観点から、燃料電池を搭載した燃料電池車(FCV/Fuel Cell Vehicle)が注目されている。燃料電池車は水蒸気を排出するのみであり、CO2、NOx及びSOx等を排出することがないからである。
【0003】
燃料電池は、電解質膜・電極構造体(MEA)を備える。MEAは、第1端面及び第2端面を有する固体高分子からなる電解質膜と、電解質膜の第1端面に設けられたアノード電極と、電解質膜の第2端面に設けられたカソード電極とを備える。すなわち、MEAは、アノード電極とカソード電極との間に電解質膜を挟んで構成される。MEAが1組のセパレータで挟まれることで、燃料電池の単位セルが組み立てられる。
【0004】
組み立てられた直後の単位セルでは、電解質膜の含水量が十分ではない。従って、該単位セルでは十分な発電性能が得られない。これを回避するため、初回の運転前に燃料電池に対して活性化が行われる。一般的には、複数個の単位セルを積層した燃料電池スタックが活性化される。これに対し、特許文献1において、個々の単位セルに対して活性化を行うことが開示されている。この場合、活性化された単位セルを積層して燃料電池スタックが組み立てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1組のセパレータのうち一方には、第1ガス流路が形成される。1組のセパレータのうち他方には、第2ガス流路が形成される。電解質膜・電極構造体(MEA)を活性化する過程で、第1ガス流路及び第2ガス流路に湿潤ガスが流通される場合がある。湿潤ガスがアノード電極及びカソード電極にそれぞれ接触することにより、アノード電極及びカソード電極に湿分が付与される。
【0007】
アノード電極又はカソード電極に湿分が過度に付与されると、アノード電極又はカソード電極に液膜が形成される。すなわち、いわゆるフラッディングが起こる。このような状況下では、アノード電極又はカソード電極の各々の電極触媒に湿潤ガスが浸透し難い。この場合、電極触媒の活性化の進行が妨げられる。
【0008】
また、高い電流密度で活性化を実施すると、特に第2ガス流路のガス出口の近傍において、活性化ガスの分圧が低下して水蒸気の分圧が上昇する。このため、第2ガス流路のガス出口の近傍では、フラッディングが起こり易い。これを回避するには、例えば、湿潤ガスに付与する湿分を少なくし、これにより該湿潤ガスの相対湿度を低くする。しかしながら、この場合、MEAの活性化効率が低くなる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、燃料電池を構成するアノード電極及びカソード電極の間に電解質膜が挟まれた電解質膜・電極構造体を活性化するための活性化装置において、前記電解質膜・電極構造体の両側に配置される一対の治具を備え、前記一対の治具の各々は、複数個のガス流路と、複数個のヒートパイプとを有し、前記活性化装置は、前記複数個のガス流路に活性化ガスを供給する活性化ガス供給部と、前記複数個のヒートパイプに熱を付与する熱供給部と、前記熱供給部から前記複数個のヒートパイプに付与される熱を制御する制御部と、を備え、前記複数個のガス流路の各々は、前記活性化ガスが流入する入口と、前記アノード電極又は前記カソード電極に向いて開口した供給口と、前記活性化ガスが流出する出口と、を有する、活性化装置が提供される。ここで、ガス流路は、アノード電極又はカソード電極に供給される活性化ガスが流通する流路である。
【発明の効果】
【0011】
一般的な活性化装置において、複数個のガス流路は、1個の入口から分岐し、且つ1個の出口で集合する。これに対し、本発明においては、複数個のガス流路は、入口及び出口をそれぞれ有する。すなわち、複数個のガス流路は互いに独立した流路であり、互いに連通していない。
【0012】
従って、1個のガス流路は、1個の入口及び1個の出口を有する。この場合、1個のガス流路の流路長が短くなる。以上のような理由から、ガス流路を流れる活性化ガスにおいて、入口側の分圧と出口側の分圧とで差が生じ難くなる。すなわち、出口近傍において、活性化ガスの分圧が低下し水蒸気の分圧が上昇することが回避される。このため、ガス流路の出口近傍でフラッディングが起こり難くなる。その結果、アノード電極又はカソード電極の各々の電極触媒に活性化ガスが容易に浸透する。これにより、電極触媒を十分に活性化することができる。
【0013】
また、本発明においては、活性化ガスの温度を制御する手段としてヒートパイプを用いている。ヒートパイプは、熱の入出に対する応答速度が大きい。このため、ガス流路内での活性化ガスの局所的な温度(実質的な露点温度)を迅速に調整することができる。これにより、活性化ガスから発生する液水の量を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る活性化装置を含む活性化システムの概略システム図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される第1治具から活性化装置を見た平面図である。
【
図3】
図3は、第1治具におけるアノード電極を向く端面から活性化装置を見た平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示される第2治具から活性化装置を見た平面図である。
【
図6】
図6は、第2治具におけるカソード電極を向く端面から活性化装置を見た平面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る活性化装置を構成する第1治具から活性化装置を見た平面図である。
【
図8】
図8は、第1治具におけるアノード電極を向く端面から活性化装置を見た平面図である。
【
図10】
図10は、活性化装置を構成する第2治具から活性化装置を見た平面図である。
【
図11】
図11は、第2治具におけるカソード電極を向く端面から活性化装置を見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、活性化システム30の概略システム図である。活性化システム30は、第1実施形態に係る活性化装置40を含む。
【0016】
図1には、活性化装置40を構成する第1治具42と第2治具44との間に電解質膜・電極構造体10が挟まれた状態が示されている。先ず、電解質膜・電極構造体10について、
図4を参照して概略説明する。なお、以下では、電解質膜・電極構造体を「MEA」と表記することもある。
【0017】
MEA10は、固体高分子からなる電解質膜12を備える。固体高分子としては、パーフルオロスルホン酸等が例示される。電解質膜12は、アノード電極14とカソード電極16との間に挟まれる。アノード電極14は、電極触媒を含む第1電極触媒層18と、第1電極触媒層18にガスを供給するための第1ガス拡散層20とを有する。カソード電極16は、電極触媒を含む第2電極触媒層22と、第2電極触媒層22にガスを供給するための第2ガス拡散層24とを有する。
【0018】
次に、
図1~
図6を参照し、活性化システム30を構成する活性化装置40につき説明する。
図1に示すように、活性化装置40は、MEA10を挟む第1治具42と第2治具44とを有する。第1治具42は、アノード電極14における第1ガス拡散層20に隣接するように配置される。第2治具44は、カソード電極16における第2ガス拡散層24に隣接するように配置される。
【0019】
図2は、
図1に示される第1治具42から活性化装置40を見た平面図であり、
図3は、第1治具42におけるアノード電極14を向く端面から活性化装置40を見た平面図である。
図4は、
図2中のIV-IV線断面図である。
【0020】
図1~
図4に示すように、第1治具42は、2枚のベースプレート46a、46bと、複数個の第1流路部材48と、複数個の第1ヒートパイプ50とを有する。
図1~
図3に示すように、第1ヒートパイプ50は、2枚のベースプレート46a、46bの間に挟まれた状態で、所定の第1方向Xに向かって直線状に延びる。
【0021】
図3に示すように、第1実施形態では、第1流路部材48と第1ヒートパイプ50が交互に並ぶ。
図3及び
図4に示すように、第1流路部材48は、第1ヒートパイプ50と同様に第1方向Xに向かって直線状に延びる。
図4に示すように、個々の第1流路部材48の内部には、第1ガス流路52が形成される。従って、第1実施形態では、複数個の第1ヒートパイプ50のうち2個の間に、複数個の第1ガス流路52のうち1個が位置する。複数個の第1ガス流路52は互いに独立した流路であり、互いに連通していない。
【0022】
図4に示すように、第1ガス流路52は、アノード電極14を向く面に第1供給口54を有する。従って、第1ガス流路52を流通する第1湿潤ガスは、第1供給口54から第1ガス拡散層20を経て第1電極触媒層18に供給される。
【0023】
第1ガス流路52には、第1An側屈曲部56及び第2An側屈曲部58が連なる。第1An側屈曲部56には、第1湿潤ガスが流入する第1入口60が形成される。第2An側屈曲部58には、第1湿潤ガスが排出される第1出口62が形成される。第1An側屈曲部56及び第2An側屈曲部58は、第1ガス流路52に対して略90°屈曲した第2方向Yに沿って延在する。すなわち、第1An側屈曲部56及び第2An側屈曲部58は、第1ガス流路52から離間する方向に凹んだ凹部からなる。
【0024】
第1ガス流路52には、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dが連なる。この場合、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dは、それぞれ、第1ガス流路52を起点とし、且つ第1ガス流路52から離間するように凹んだ凹部からなる。すなわち、この場合、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dは、第1ガス流路52から第2方向Yに向かって延びる空間である。第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dの凹み方向は第2方向Yであり、第1An側屈曲部56及び第2An側屈曲部58の凹み方向と一致する。
【0025】
なお、第1ガス流路52に設けられる蓄熱部の個数は、図示例の4個に特に限定されない。第1ガス流路52に蓄熱部を設けることも必須ではない。
【0026】
第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dの容積は、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c、第4An側蓄熱部64dの順に大きくなる。従って、第2An側蓄熱部64bは、第1An側蓄熱部64aよりも多量の第1湿潤ガスを捕捉する。第3An側蓄熱部64cは第2An側蓄熱部64bよりも多量の第1湿潤ガスを捕捉し、第4An側蓄熱部64dは第3An側蓄熱部64cよりも多量の第1湿潤ガスを捕捉する。このように、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dは、第1入口60から第1出口62に向かって容積が大きくなるように並ぶ。
【0027】
全ての第1入口60には、管継手66を介して第1入力マニホールド68が接続される。第1湿潤ガス供給源(
図1参照)から供給された第1湿潤ガスは、第1入力マニホールド68で分配され、個々の第1入口60及び第1An側屈曲部56を介して第1ガス流路52に流入する。全ての第1出口62には、管継手66を介して第1出力マニホールド69が接続される。個々の第1ガス流路52を流通した第1湿潤ガスは、第1出力マニホールド69で集合し、例えば、大気に排出されるか、又は、第1湿潤ガス供給源に回収される。
【0028】
第1湿潤ガスが第1ガス流路52を流通する最中、一部の第1湿潤ガスが第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dに捕捉される。第1湿潤ガスの温度は数十℃~百数十℃程度であるので、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dは、第1湿潤ガスを捕捉することで熱を蓄える。第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c、第4An側蓄熱部64dの順で容積が大きくなるので、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c、第4An側蓄熱部64dの順序で蓄熱容量が大きくなる。
【0029】
図1~
図4に示すように、第1ヒートパイプ50には、ヒータ又はペルチェ素子等からなる第1熱供給部70が接続される。第1熱供給部70は、第1ヒートパイプ50に対して熱を付与する。
【0030】
図2に示すように、個々の第1流路部材48には、第1入口60及び第1出口62の近傍に第1電気端子72及び第2電気端子74がそれぞれ設けられる。また、第1治具42には、第1接続端子76が設けられる。
【0031】
図5は、
図1に示される第2治具44から活性化装置40を見た平面図であり、
図6は、第2治具44におけるカソード電極16を向く端面から活性化装置40を見た平面図である。
図4~
図6から理解されるように、第2治具44は第1治具42と同様に構成されている。
【0032】
図1及び
図4~
図6に示すように、第2治具44は、2枚のベースプレート46c、46dと、複数個の第2流路部材80と、複数個の第2ヒートパイプ82とを有する。
図1及び
図5に示すように、第2ヒートパイプ82は、2枚のベースプレート46c、46dの間に挟まれた状態で、第1ヒートパイプ50及び第1流路部材48と同じく第1方向Xに向かって直線状に延びる。
【0033】
図5及び
図6に示すように、第1実施形態では、第2流路部材80と第2ヒートパイプ82が交互に並ぶ。
図4及び
図6に示すように、第2流路部材80及び第2ヒートパイプ82は、第1ガス流路52及び第1ヒートパイプ50と同様に第1方向Xに向かって直線状に延びる。
図6に示すように、個々の第2流路部材80の内部には第2ガス流路84が形成される。従って、第1実施形態では、複数個の第2ヒートパイプ82のうち2個の間に、複数個の第2ガス流路84のうち1個が位置する。複数個の第2ガス流路84は互いに独立した流路であり、互いに連通していない。
【0034】
図6に示すように、第2ガス流路84は、カソード電極16を向く面に第2供給口86を有する。従って、第2ガス流路84を流通する第2湿潤ガスは、第2供給口86から第2ガス拡散層24を経て第2電極触媒層22に供給される。
【0035】
第2ガス流路84には、第1Ca側屈曲部88及び第2Ca側屈曲部90が連なる。第1Ca側屈曲部88には、第2湿潤ガスを第2ガス流路84に流入するための第2入口92が形成される。第2Ca側屈曲部90には、第2湿潤ガスを第2ガス流路84から排出するための第2出口94が形成される。第1Ca側屈曲部88及び第2Ca側屈曲部90は、第2ガス流路84に対して略90°屈曲した第2方向Yに沿って延在する。すなわち、第1Ca側屈曲部88及び第2Ca側屈曲部90は、第2ガス流路84から離間する方向に凹んだ凹部からなる。
【0036】
第2ガス流路84には、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dが連なる。この場合、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dは、それぞれ、第2ガス流路84を起点とし、且つ第2ガス流路84から離間するように凹んだ凹部からなる。すなわち、この場合、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dは、第2ガス流路84から第2方向Yに向かって延びる空間である。第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dの凹み方向は第2方向Yであり、第1Ca側屈曲部88及び第2Ca側屈曲部90の凹み方向と一致する。
【0037】
なお、第2ガス流路84に設けられる蓄熱部の個数は、図示例の4個に特に限定されない。第2ガス流路84に蓄熱部を設けることも必須ではない。
【0038】
第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dの容積は、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c、第4Ca側蓄熱部96dの順に大きくなる。従って、第2Ca側蓄熱部96bは、第1Ca側蓄熱部96aよりも多量の第2湿潤ガスを捕捉する。第3Ca側蓄熱部96cは第2Ca側蓄熱部96bよりも多量の第2湿潤ガスを捕捉し、第4Ca側蓄熱部96dは第3Ca側蓄熱部96cよりも多量の第2湿潤ガスを捕捉する。このように、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dは、第2入口92から第2出口94に向かって容積が大きくなるように並ぶ。
【0039】
全ての第2入口92には、管継手66を介して第2入力マニホールド98が接続される。第2湿潤ガス供給源(
図1参照)から供給された第2湿潤ガスは、第2入力マニホールド98で分配され、個々の第2入口92及び第1Ca側屈曲部88を介して第2ガス流路84に流入する。全ての第2出口94には、管継手66を介して第2出力マニホールド100が接続される。個々の第2ガス流路84を流通した第2湿潤ガスは、第2出力マニホールド100で集合し、例えば、大気に排出されるか、又は、第2湿潤ガス供給源に回収される。
【0040】
第2湿潤ガスが第2ガス流路84を流通する最中、一部の第2湿潤ガスが第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dに捕捉される。第2湿潤ガスの温度は数十℃~百数十℃程度であるので、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dは、第2湿潤ガスを捕捉することで熱を蓄える。第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c、第4Ca側蓄熱部96dの順で容積が大きくなるので、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c、第4Ca側蓄熱部96dの順序で蓄熱容量が大きくなる。
【0041】
図1及び
図4~
図6に示すように、第2ヒートパイプ82には、ヒータ又はペルチェ素子等の第2熱供給部102が接続される。第2熱供給部102は、第2ヒートパイプ82に対して熱を付与する。
【0042】
図6に示すように、個々の第2流路部材80には、第2入口92及び第2出口94の近傍に第3電気端子104及び第4電気端子106がそれぞれ設けられる。また、第2治具44には、第2接続端子108が設けられる。
【0043】
なお、この態様では、第1ガス流路52を流通する活性化ガス(後述する第1湿潤ガス)の流通方向と、第2ガス流路84を流通する活性化ガス(後述する第2湿潤ガス)の流通方向とは同一方向である。しかしながら、第1ガス流路52を流通する活性化ガスの流通方向と、第2ガス流路84を流通する活性化ガスの流通方向とを互いに逆方向としてもよいし、他の異なる方向としてもよい。
【0044】
図1に戻り、活性化システム30は、第1ガスライン110を備える。第1ガスライン110の一端には、水素ガス供給部112と、窒素ガス供給部114とが第1三方バルブ116を介して接続される。水素ガス供給部112は、例えば、水素ガスタンクである。窒素ガス供給部114は、例えば、窒素ガスタンクである。第1ガスライン110には第1加湿器118が設けられる。水素ガス供給部112及び第1加湿器118は第1湿潤ガス供給部であり、第1加湿器118にて湿分が付与された水素ガスは、第1活性化ガスとしての第1湿潤ガスである。
【0045】
第1ガスライン110の他端は、第1入力マニホールド68に接続される。第1ガスライン110の他端から第1入力マニホールド68に流入した第1湿潤ガス(湿潤水素ガス)は、第1治具42に形成された第1ガス流路52を流通する。
【0046】
活性化システム30は、第2ガスライン120を備える。第2ガスライン120の一端は、第1出力マニホールド69に接続される。第2ガスライン120の他端には、第1排気バルブ122を介して第1排気ライン124が設けられる。第1ガス流路52を流通した余剰の第1湿潤ガスは、第1出力マニホールド69と、第2ガスライン120と、第1排気バルブ122とを経て、第1排気ライン124から排出される。又は、第1排気ライン124に図示しない回収装置を設け、第1湿潤ガスを回収してもよい。
【0047】
活性化システム30は、第3ガスライン130を備える。第3ガスライン130の一端には、窒素ガス供給部132及び酸化剤ガス供給部134が第2三方バルブ136を介して接続される。窒素ガス供給部132は、例えば、上記と同様に窒素ガスタンクである。窒素ガスは不活性な第2ガスとして供給される。本実施形態では、第1ガスライン110に接続される窒素ガス供給部114と、第3ガスライン130に接続される窒素ガス供給部132とを別個に設けている。しかしながら、1個の窒素ガス供給部を第1ガスライン110及び第3ガスライン130の双方に接続してもよい。
【0048】
酸化剤ガス供給部134は、例えば、大気を圧縮するコンプレッサである。又は、酸化剤ガス供給部134は、酸素ガスボンベであってもよい。第3ガスライン130には、第2加湿器138が設けられる。酸化剤ガス供給部134及び第2加湿器138は、第2湿潤ガス供給部を構成する。第2加湿器138にて湿分を付与された酸化剤ガスは、第2活性化ガスとしての第2湿潤ガスである。
【0049】
第3ガスライン130の他端は、第2入力マニホールド98に接続される。第3ガスライン130の他端から第2入力マニホールド98に流入した第2湿潤ガス(湿潤酸化剤ガス)は、第2治具44に形成された第2ガス流路84を流通する。
【0050】
活性化システム30は、第4ガスライン140を備える。第4ガスライン140の一端は、第2出力マニホールド100に接続される。第4ガスライン140の他端には、第2排気バルブ142を介して第2排気ライン144が設けられる。第2ガス流路84を流通した第2湿潤ガスは、第2出力マニホールド100と、第4ガスライン140と、第2排気バルブ142とを経て、第2排気ライン144から排出される。又は、第2排気ライン144に図示しない回収装置を設け、第2湿潤ガスを回収してもよい。
【0051】
活性化システム30は、電気パラメータ検出部150と、制御部154とを有する。電気パラメータ検出部150は、例えば、入口側電圧測定器156と、出口側電圧測定器158とを有する。入口側電圧測定器156は、第1電気端子72及び第3電気端子104に対して電気的に接続される。入口側電圧測定器156は、MEA10における第1入口60及び第2入口92側の電圧を検出する。以下、入口側電圧測定器156によって求められるMEA10の局部的な電圧を、便宜的に入口側電圧と呼ぶ。出口側電圧測定器158は、第2電気端子74及び第4電気端子106に対して電気的に接続される。出口側電圧測定器158は、MEA10における第1出口62及び第2出口94側の電圧を検出する。以下、出口側電圧測定器158によって求められるMEA10の局部的な電圧を、便宜的に出口側電圧と呼ぶ。
【0052】
電気パラメータ検出部150は、抵抗測定器、電流測定器又はインピーダンス測定器であってもよい。電気パラメータ検出部150は、これらの測定器を全て有してもよい。
【0053】
活性化システム30は、圧力パラメータ検出部160をさらに有する。圧力パラメータ検出部160は、アノード差圧計162とカソード差圧計164とを含む。
【0054】
アノード差圧計162は、第1ガスライン110のガス圧と第2ガスライン120のガス圧との差圧を検出する。この差圧は、第1ガス流路52におけるアノード電極14への入口と、第1ガス流路52におけるアノード電極14からの出口との差圧に等しい。カソード差圧計164は、第3ガスライン130のガス圧と第4ガスライン140のガス圧との差圧を検出する。この差圧は、第2ガス流路84におけるカソード電極16への入口と、第2ガス流路84におけるカソード電極16からの出口との差圧に等しい。
【0055】
制御部154は、入口側電圧測定器156、出口側電圧測定器158、第1熱供給部70、第2熱供給部102、アノード差圧計162及びカソード差圧計164に対して電気的に接続されている。電気パラメータ検出部150によって測定された入口側電圧及び出口側電圧に関する情報は、情報信号として制御部154に送信される。制御部154には、アノード差圧計162及びカソード差圧計164のそれぞれによって測定されたガス差圧に関する情報信号も入力される。
【0056】
後述するように、本実施形態では発電エージングを行う。このため、MEA10には、第1接続端子76及び第2接続端子108を介して外部負荷170が電気的に接続される。
【0057】
第1実施形態に係る活性化装置40は、基本的には以上のように構成される。次に、第1実施形態に係る活性化装置40の効果について説明する。
【0058】
MEA10を活性化する場合、はじめに、作業者は、単位セルに組み上げられる前のMEA10を、第1治具42と第2治具44との間に挟む。次に、作業者は、第1入口60に第1入力マニホールド68を接続し、且つ第1出口62に第1出力マニホールド69を接続する。同様に、作業者は、第2入口92に第2入力マニホールド98を接続し、且つ第2出口94に第2出力マニホールド100を接続する。
【0059】
この状態で、作業者は、制御部154に対して「活性化を開始する」との指令信号を付与する。この指令信号に基づき、制御部154は、先ず、第1ガス流路52及び第2ガス流路84内の空気を湿潤窒素ガスに置換する。
【0060】
指令信号が付与された制御部154は、第1三方バルブ116を、窒素ガス供給部114が第1ガスライン110に連通する方向に動作させる。且つ制御部154は、第2三方バルブ136を、窒素ガス供給部132が第3ガスライン130に連通する方向に動作させる。また、制御部154は、第1排気バルブ122及び第2排気バルブ142を開く。
【0061】
窒素ガス供給部114から供給された窒素ガスは、第1加湿器118を通過して湿潤窒素ガスとなった後、第1ガスライン110を流通する。湿潤窒素ガスは、第1入力マニホールド68と、第1治具42の第1入口60及び第1An側屈曲部56とを経て、第1ガス流路52に流入する。湿潤窒素ガスが第1ガス流路52を流通する最中、湿潤窒素ガスの一部がアノード電極14の第1ガス拡散層20を経て第1電極触媒層18に到達する。これにより、アノード電極14及び電解質膜12に湿分が付与される。第1ガス流路52を流通した湿潤窒素ガスは、第2An側屈曲部58、第1出口62及び第1出力マニホールド69を経て第2ガスライン120に流入する。その後、湿潤窒素ガスは、第1排気バルブ122を通過して第1排気ライン124から排出される。
【0062】
窒素ガス供給部132から供給された窒素ガスは、第2加湿器138を通過して湿潤窒素ガスとなった後、第3ガスライン130を流通する。湿潤窒素ガスは、第2入力マニホールド98と、第2治具44の第2入口92及び第1Ca側屈曲部88とを経て、第2ガス流路84に流入する。湿潤窒素ガスが第2ガス流路84を流通する最中、湿潤窒素ガスの一部がカソード電極16の第2ガス拡散層24を経て第2電極触媒層22に到達する。これにより、カソード電極16及び電解質膜12に湿分が付与される。第2ガス流路84を流通した湿潤窒素ガスは、第2Ca側屈曲部90、第2出口94及び第2出力マニホールド100を経て第4ガスライン140に流入する。その後、湿潤窒素ガスは、第2排気バルブ142を通過して第2排気ライン144から排出される。
【0063】
以上により、第1ガス流路52及び第2ガス流路84から空気が排出されて湿潤窒素ガスに置換される。所定時間の経過後、制御部154は、第1三方バルブ116を、水素ガス供給部112が第1ガスライン110に連通する方向に動作させる。
【0064】
水素ガス供給部112から供給された水素ガスは、第1加湿器118を通過して湿潤水素ガス(第1湿潤ガス)となった後、第1入力マニホールド68と、第1治具42の第1入口60及び第1An側屈曲部56とを経て、第1ガス流路52に流入する。第1湿潤ガスが第1ガス流路52を流通する最中、第1湿潤ガスの一部がアノード電極14の第1ガス拡散層20を経て第1電極触媒層18に到達する。従って、アノード電極14及び電解質膜12への湿分の付与が継続される。第1ガス流路52を流通した余剰の第1湿潤ガスは、第2An側屈曲部58、第1出口62及び第1出力マニホールド69を経た後、第1排気バルブ122を通過して第1排気ライン124から排出される。この第1湿潤ガスを、図示しない回収機構で回収してもよい。
【0065】
第1湿潤ガスが第1ガス流路52を流通する最中、第1湿潤ガスの別の一部が、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dに個別に進入する。第1湿潤ガスの温度が数十℃~百数十℃であるので、この進入に伴い、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dが熱をそれぞれ蓄える。上記したように、蓄熱容量は、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c、第4An側蓄熱部64dの順で大きくなる。なお、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dに進入した第1湿潤ガスは、これら蓄熱部の内部に一時的に滞留する。
【0066】
また、制御部154は、第2三方バルブ136を切り替え、窒素ガス供給部132と第3ガスライン130との連通を遮断し、且つ酸化剤ガス供給部134と第3ガスライン130とを連通させる。これにより、酸素ガスを含んだ酸化剤ガス(典型的には圧縮空気)が供給される。酸化剤ガスは、第2加湿器138を通過して湿潤酸化剤ガス(第2湿潤ガス)となった後、第2入力マニホールド98と、第2治具44の第2入口92及び第1Ca側屈曲部88とを経て、第2ガス流路84に流入する。第2湿潤ガスが第2ガス流路84を流通する最中、第2湿潤ガスの一部がカソード電極16の第2ガス拡散層24を経て第2電極触媒層22に到達する。従って、カソード電極16及び電解質膜12への湿分の付与が継続される。第2ガス流路84を流通した余剰の第2湿潤ガスは、第2Ca側屈曲部90、第2出口94及び第2出力マニホールド100を経て第4ガスライン140に流入する。その後、第2湿潤ガスは、第2排気バルブ142を通過して第2排気ライン144から排出される。
【0067】
第2湿潤ガスが第2ガス流路84を流通する最中、第2湿潤ガスの別の一部が、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dに個別に進入する。第2湿潤ガスの温度が数十℃~百数十℃であるので、この進入に伴い、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dが熱をそれぞれ蓄える。上記したように、蓄熱容量は、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c、第4Ca側蓄熱部96dの順で大きくなる。なお、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dに進入した第2湿潤ガスは、これら蓄熱部の内部に一時的に滞留する。
【0068】
この場合、アノード電極14の第1電極触媒層18では、水素が電離してプロトン及び電子が生じる。プロトンは、電解質膜12内を伝導し、カソード電極16の第2電極触媒層22に到達する。電子は、外部負荷170を経由してカソード電極16の第2電極触媒層22に到達する。該第2電極触媒層22では、酸素、プロトン及び電子が化学的に結合し、水が生成される。
【0069】
上記した電気化学反応は、発熱反応である。すなわち、MEA10が熱を帯びる。この熱が第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスに伝達されると、第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスの温度が上昇する。このとき、第1ヒートパイプ50は、第1湿潤ガスから熱を奪う。同様に、第2ヒートパイプ82は、第2湿潤ガスから熱を奪う。このように、第1ヒートパイプ50及び第2ヒートパイプ82は、通常、第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスをそれぞれ冷却する。
【0070】
本実施形態では、制御部154に対し、MEA10の入口側電圧及び出口側電圧に関する情報信号を常時送信している。MEA10内の湿度の上昇に基づいて入口側電圧と出口側電圧との電圧差が所定の上限値に到達したことを認識した制御部154は、「MEA10の加湿状態は、適正の上限である」と判断する。
【0071】
制御部154には、アノード差圧計162によって測定された差圧と、カソード差圧計164によって測定された差圧とがさらに入力される。上記したように、アノード差圧計162によって測定された差圧は、第1ガス流路52におけるアノード電極14への入口と、第1ガス流路52におけるアノード電極14からの出口との差圧に等しい。カソード差圧計164によって測定された差圧は、第2ガス流路84におけるカソード電極16への入口と、第2ガス流路84におけるカソード電極16からの出口との差圧に等しい。どちらかの差圧が所定の上限値に到達した場合にも、制御部154は、「MEA10の加湿状態は、適正の上限である」と判断する。
【0072】
上記のように判断した制御部154は、第1ヒートパイプ50及び第2ヒートパイプ82の温度を上昇させる。具体的に、制御部154は、第1熱供給部70及び第2熱供給部102の発熱量を増加させることで、第1熱供給部70から第1ヒートパイプ50に伝達される熱量と、第2熱供給部102から第2ヒートパイプ82に伝達される熱量とを増加させる。
【0073】
この制御により、第1ヒートパイプ50から第1湿潤ガスに付与される熱量が増加する。同様に、第2ヒートパイプ82から第2湿潤ガスに付与される熱量が増加する。従って、第1湿潤ガスにおける実質的な露点温度及び第2湿潤ガスにおける実質的な露点温度が高くなる。その結果、第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスにおいて、凝縮が起こり難くなる。これにより、第1ガス流路52及び第2ガス流路84内の各々の液水量が徐々に低減する。液水量が低減することに伴い、入口側電圧と出口側電圧との電圧差が小さくなる。
【0074】
ここで、第1湿潤ガスにおける実質的な露点温度とは、第1ガス流路52の各箇所における第1湿潤ガスの局所的な露点温度である。第1湿潤ガスにおける実質的な露点温度は、第1ヒートパイプ50から第1湿潤ガスに付与される熱量によって定まる。同様に、第2湿潤ガスにおける実質的な露点温度とは、第2ガス流路84の各箇所における第2湿潤ガスの局所的な露点温度である。第2湿潤ガスにおける実質的な露点温度は、第2ヒートパイプ82から第2湿潤ガスに付与される熱量によって定まる。
【0075】
第1ガス流路52及び第2ガス流路84内の各々の液水量が過度に低減した場合、電解質膜12が乾燥する懸念がある。そこで、制御部154は、入口側電圧と出口側電圧との電圧差が所定の下限値に到達したとき、「MEA10の加湿状態は、適正の下限である」と判断する。なお、制御部154は、第1ガスライン110と第2ガスライン120との差圧が所定の下限値に達したときにも上記と同様に判断する。
【0076】
上記のように判断した制御部154は、第1ヒートパイプ50及び第2ヒートパイプ82の温度を低下させる。具体的に、制御部154は、第1熱供給部70及び第2熱供給部102の発熱量を減少させることで、第1熱供給部70から第1ヒートパイプ50に伝達される熱量と、第2熱供給部102から第2ヒートパイプ82に伝達される熱量とを減少させる。
【0077】
この制御により、第1ヒートパイプ50から第1湿潤ガスに付与される熱量が減少する。同様に、第2ヒートパイプ82から第2湿潤ガスに付与される熱量が減少する。従って、第1湿潤ガスにおける実質的な露点温度及び第2湿潤ガスにおける実質的な露点温度が低くなる。その結果、第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスにおいて、凝縮が起こり易くなる。これにより、第1ガス流路52及び第2ガス流路84内の各々の液水量が徐々に増加する。液水量が増加することに伴い、入口側電圧と出口側電圧との電圧差が大きくなる。また、第1ガスライン110と第2ガスライン120との差圧が増大する。
【0078】
第1ヒートパイプ50及び第2ヒートパイプ82は、熱付与又は熱付与停止に対する応答速度が大きい。従って、第1熱供給部70から第1ヒートパイプ50に熱が付与されたとき、第1ガス流路52内の第1湿潤ガスの温度が迅速に上昇する。同様に、第2熱供給部102から第2ヒートパイプ82に熱が付与されたとき、第2ガス流路84内の第2湿潤ガスの温度が迅速に上昇する。これとは逆に、第1熱供給部70から第1ヒートパイプ50への熱の付与が停止されたとき、第1ガス流路52内の第1湿潤ガスの温度が迅速に下降する。同様に、第2熱供給部102から第2ヒートパイプ82への熱の付与が停止されたとき、第2ガス流路84内の第2湿潤ガスの温度が迅速に下降する。
【0079】
以上のようにして、第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスの各温度が迅速に調節される。すなわち、第1湿潤ガス及び第2湿潤ガスの各々の温度を略一定に維持することができる。従って、第1ガス流路52及び第2ガス流路84の各々における液水量を適正量に保つことができるので、フラッディングが起こることが回避される。その結果、アノード電極14の第1電極触媒層18に十分な量の第1湿潤ガスが到達し、且つカソード電極16の第2電極触媒層22に十分な量の第2湿潤ガスが到達する。これにより、MEA10を十分に活性化することができる。
【0080】
しかも、第1実施形態に係る活性化装置40は、複数個の第1ガス流路52と、複数個の第2ガス流路84とを有する。従って、個々の第1ガス流路52及び個々の第2ガス流路84では、流路長が短い。このため、第1ガス流路52では、第1入口60と第1出口62との間で第1湿潤ガスの分圧に差が発生し難い。同様に、第2ガス流路84では、第2入口92と第2出口94との間で第2湿潤ガスの分圧に差が発生し難い。
【0081】
加えて、第1ガス流路52の途中には、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dが形成されている。第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c、第4An側蓄熱部64dには、これら蓄熱部内に第1湿潤ガスが進入することに伴って熱が蓄えられている。すなわち、第1湿潤ガスに対し、第1An側蓄熱部64a、第2An側蓄熱部64b、第3An側蓄熱部64c及び第4An側蓄熱部64dから熱が伝達される。しかも、これら蓄熱部の蓄熱容量は、第1出口62に近接するにつれて大きくなる。すなわち、第1湿潤ガスには、第1出口62に近接するにつれて大きな熱量が付与される。
【0082】
このように、第1実施形態では、第1湿潤ガスが第1出口62に近接するにつれて該第1湿潤ガスに大きな熱量が付与される。従って、第1出口62において、実質的な露点温度が低下することが回避される。
【0083】
同様に、第2ガス流路84を流通する第2湿潤ガスには、第1Ca側蓄熱部96a、第2Ca側蓄熱部96b、第3Ca側蓄熱部96c及び第4Ca側蓄熱部96dに蓄えられた熱が伝達される。これら蓄熱部の蓄熱容量は、第2出口94に近接するにつれて大きくなるので、第2湿潤ガスには、該第2湿潤ガスが第2出口94に近接するにつれて大きな熱量が付与される。このため、第2出口94において、実質的な露点温度が低下することも回避される。
【0084】
以上のような理由から、第1ガス流路52及び第2ガス流路84において、第1ヒートパイプ50又は第2ヒートパイプ82からの熱の付与量が急速に低減した場合であっても、特に第1出口62の近傍及び第2出口94の近傍で、実質的な露点温度が低下することがそれぞれ回避される。従って、第1ガス流路52及び第2ガス流路84においてフラッディングが起こることが抑制される。すなわち、第1実施形態によれば、フラッディングを防止することが容易である。
【0085】
この態様では、第1ガス流路52及び第2ガス流路84内に蓄熱部(ガス温度蓄熱構造体)を設け、且つ第1出口62及び第2出口94に近接するにつれて蓄熱部の蓄熱容量を大きくしている。このため、第1ガス流路52では、第1入口60から第1出口62に向かって露点温度が高くなる。第2ガス流路84では、第2入口92から第2出口94に向かって露点温度が高くなる。すなわち、第1ガス流路52及び第2ガス流路84では、活性化ガスの上流から下流となるにつれて、実質的な露点温度に正の勾配が形成される。このため、第1ガス流路52において第1湿潤ガスの実質的な露点温度が低下したとき、又は第2ガス流路84において第2湿潤ガスの実質的な露点温度が低下したとき、第1ガス流路52又は第2ガス流路84の全体にわたって凝縮水(液水)が生じることが抑制される。
【0086】
さらに、この態様においては、第1ガス流路52では第1出口62の近傍で実質的な露点温度が最も高くなり、第2ガス流路84では第2出口94の近傍で実質的な露点温度が最も高くなる。従って、第1出口62及び第2出口94では、凝縮水が生じ難い。このため、第1出口62及び第2出口94が凝縮水で閉塞されることが回避される。従って、第1ガス流路52の途中及び第2ガス流路84の途中で生じた凝縮水を、第1出口62及び第2出口94から速やかに排出することができる。
【0087】
以上のようにしてMEA10の活性化が終了した後、制御部154は、第1三方バルブ116を制御することで、水素ガス供給部112と第1ガスライン110との連通を遮断し、且つ窒素ガス供給部114と第1ガスライン110とを連通させる。また、制御部154は第2三方バルブ136を制御し、第3ガスライン130と酸化剤ガス供給部134との連通を遮断し、且つ第3ガスライン130と窒素ガス供給部132とを連通させる。
【0088】
この状態で、窒素ガス供給部114から第1ガス流路52に窒素ガスが供給され、且つ窒素ガス供給部132から第2ガス流路84に窒素ガスが供給される。窒素ガスは湿潤窒素ガスとなり、アノード電極14及びカソード電極16に供給される。湿潤窒素ガスは、第2ガスライン120及び第4ガスライン140を経て第1排気バルブ122及び第2排気バルブ142からそれぞれ排出される。以上により、第1ガス流路52及び第2ガス流路84が湿潤窒素ガスで置換される。
【0089】
第1治具42は、例えば、ベースプレート46a、46bの間に第1ヒートパイプ50を挟み、且つベースプレート46b上に第1流路部材48を置いてロールボンド加工を施すことで作製される。第2治具44も同様に、ベースプレート46c、46dの間に第2ヒートパイプ82を挟み、且つベースプレート46d上に第2流路部材80を置いてロールボンド加工を施すことで作製される。
【0090】
第1流路部材48及び第2流路部材80を用いることに代替し、ベースプレート46a、46bの間に第1ガス流路52を形成し、且つベースプレート46c、46dの間に第2ガス流路84を形成することも可能である。
【0091】
次に、
図7~
図11を参照し、第2実施形態に係る活性化装置200について説明する。なお、
図1~
図6に示される構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0092】
図7は、活性化装置200を構成する第1治具202から活性化装置200を見た平面図であり、
図8は、第1治具202におけるアノード電極14を向く端面から活性化装置200を見た平面図である。
図9は、
図7中のIX-IX線断面図である。
図10は、活性化装置200を構成する第2治具204から活性化装置200を見た平面図であり、
図11は、第2治具204におけるカソード電極16を向く端面から活性化装置200を見た平面図である。
【0093】
図9に示すように、活性化装置200は、MEA10を挟む第1治具202と第2治具204とを有する。第1治具202は、アノード電極14における第1ガス拡散層20に隣接するように配置される。第2治具204は、カソード電極16における第2ガス拡散層24に隣接するように配置される。
【0094】
図8及び
図9に示すように、第2実施形態では、2個の第1ヒートパイプ50の間に複数個(第2実施形態では3個)の第1流路部材210が配置される。3個の第1流路部材210は、第1ヒートパイプ50の延在方向である第1方向Xに沿って直線状に並ぶ。
図9に示すように、個々の第1流路部材210の内部には、第1ガス流路212が形成される。従って、第2実施形態では、複数個の第1ヒートパイプ50のうち2個の間に、複数個(2個以上)の第1ガス流路212が位置する。
【0095】
図8に示すように、第1ガス流路212は、アノード電極14を向く面に第1供給口214を有する。従って、第1ガス流路212を流通する第1湿潤ガスは、第1供給口214から第1ガス拡散層20を経て第1電極触媒層18に供給される。
【0096】
第1ガス流路212には、第1An側屈曲部56及び第2An側屈曲部58が連なる。第1An側屈曲部56には、第1湿潤ガスが流入する第1入口60が形成される。第2An側屈曲部58には、第1湿潤ガスを排出する第1出口62が形成される。第1An側屈曲部56及び第2An側屈曲部58は、第1ガス流路212から離間する方向に凹んだ凹部からなる第1屈曲部及び第2屈曲部としてそれぞれ形成される。
【0097】
全ての第1入口60には、管継手66を介して第1入力マニホールド216が接続される。第1湿潤ガス供給源から供給された第1湿潤ガスは、第1入力マニホールド216で分配され、個々の第1入口60及び第1An側屈曲部56を介して第1流路部材210に流入する。全ての第1出口62には、管継手66を介して第1出力マニホールド218が接続される。個々の第1ガス流路212を流通した第1湿潤ガスは、第1出力マニホールド218で集合し、例えば、大気に排出されるか、又は、第1湿潤ガス供給源(
図1参照)に回収される。
【0098】
図9及び
図11に示すように、第2実施形態では、2個の第2ヒートパイプ82の間に複数個(第2実施形態では3個)の第2流路部材220が配置される。3個の第2流路部材220は、第2ヒートパイプ82の延在方向である第1方向Xに沿って直線状に並ぶ。
図9に示すように、個々の第2流路部材220の内部には、第2ガス流路222が形成される。従って、第2実施形態では、複数個の第2ヒートパイプ82のうち2個の間に、複数個(2個以上)の第2ガス流路222が位置する。
【0099】
図9に示すように、第2ガス流路222は、カソード電極16を向く面に第2供給口224を有する。従って、第2ガス流路222を流通する第2湿潤ガスは、第2供給口224から第2ガス拡散層24を経て第2電極触媒層22に供給される。
【0100】
第2ガス流路222には、第1Ca側屈曲部88及び第2Ca側屈曲部90が連なる。第1Ca側屈曲部88には、第2湿潤ガスが流入する第2入口92が形成される。第2Ca側屈曲部90には、第2湿潤ガスを排出する第2出口94が形成される。第1Ca側屈曲部88及び第2Ca側屈曲部90は、第2ガス流路222から離間する方向に凹んだ凹部からなる第1屈曲部及び第2屈曲部としてそれぞれ形成される。
【0101】
なお、この態様では、第1ガス流路212を流通する第1湿潤ガスの流通方向と、第2ガス流路222を流通する第2湿潤ガスの流通方向とは同一方向である。しかしながら、第1ガス流路212を流通する第1湿潤ガスの流通方向と、第2ガス流路222を流通する第2湿潤ガスの流通方向とを互いに逆方向としてもよいし、他の異なる方向としてもよい。
【0102】
全ての第2入口92には、管継手66を介して第2入力マニホールド226が接続される。第2湿潤ガス供給源から供給された第2湿潤ガスは、第2入力マニホールド226で分配され、個々の第2入口92及び第1Ca側屈曲部88を介して第2ガス流路222に流入する。全ての第2出口94には、管継手66を介して第2出力マニホールド228が接続される。個々の第2ガス流路222を流通した第1湿潤ガスは、第2出力マニホールド228で集合し、例えば、大気に排出されるか、又は、第2湿潤ガス供給源に回収される。
【0103】
第2実施形態に係る活性化装置200では、個々の第1ガス流路212及び個々の第2ガス流路222の流路長が、第1実施形態に係る活性化装置40における個々の第1ガス流路52及び個々の第2ガス流路84の流路長よりもそれぞれ短い。このため、個々の第1ガス流路212において、第1入口60と第1出口62との間で第1湿潤ガスの分圧に差が一層発生し難い。同様に、個々の第2ガス流路222では、第2入口92と第2出口94との間で第2湿潤ガスの分圧に差が一層発生し難い。
【0104】
従って、第1ガス流路212及び第2ガス流路222においてフラッディングが起こることが一層困難である。すなわち、第2実施形態によれば、フラッディングが発生することを回避することが一層容易である。
【0105】
第2実施形態においても、第1ガス流路212又は第2ガス流路222の少なくとも一方に蓄熱部を設けてもよい。
【0106】
第1治具202及び第2治具204は、第1治具42及び第2治具44と同様にロールボンド加工等によって作製することが可能である。第1流路部材210及び第2流路部材220を用いることに代替し、ベースプレート46a、46bの間に第1ガス流路212を形成し、且つベースプレート46c、46dの間に第2ガス流路222を形成することもできる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態は、燃料電池を構成するアノード電極(14)及びカソード電極(16)の間に電解質膜(12)が挟まれた電解質膜・電極構造体(10)を活性化するための活性化装置(40)において、前記電解質膜・電極構造体の両側に配置される一対の治具(42、44)を備え、前記一対の治具の各々は、複数個のガス流路(52、84)と、複数個のヒートパイプ(50、82)とを有し、前記活性化装置は、前記複数個のガス流路に活性化ガスを供給する活性化ガス供給部(112、134)と、前記複数個のヒートパイプに熱を付与する熱供給部(70、102)と、前記熱供給部から前記複数個のヒートパイプに付与される熱を制御する制御部(154)と、を備え、前記複数個のガス流路の各々は、前記活性化ガスが流入する入口(60、92)と、前記アノード電極又は前記カソード電極に向いて開口した供給口(54、86)と、前記活性化ガスが流出する出口(62、94)と、を有する、活性化装置を開示する。
【0108】
一般的に、複数個のガス流路(アノード側流路及びカソード側流路)は、1個の入口から分岐し、且つ1個の出口で集合する。これに対し、本実施形態では、複数個のガス流路は、入口及び出口をそれぞれ有する。すなわち、複数個のガス流路は互いに独立した流路であり、互いに連通していない。
【0109】
従って、1個のガス流路は、1個の入口及び1個の出口を有する。この場合、1個のガス流路の流路長が短くなる。以上のような理由から、ガス流路を流れる活性化ガスにおいて、入口側の分圧と出口側の分圧とで差が生じ難くなる。すなわち、出口近傍において、活性化ガスの分圧が低下し水蒸気の分圧が上昇することが回避される。このため、ガス流路の出口近傍でフラッディングが起こり難くなる。その結果、アノード電極又はカソード電極の各々の電極触媒に活性化ガスが容易に浸透する。これにより、電極触媒を十分に活性化することができる。
【0110】
本実施形態は、前記複数個のガス流路が互いに平行となるように並ぶ、活性化装置を開示する。
【0111】
この構成では、アノード電極又はカソード電極の電極面に対し、活性化ガスを略均一に配分することが可能である。従って、活性化ガスの分圧と、水蒸気の分圧とを適切に制御することができる。これにより、フラッディングを回避しながら、電極面を略均一に加湿することができる。
【0112】
本実施形態は、前記複数個のガス流路内の各々に設けられた蓄熱部(64a~64d、96a~96d)を有する、活性化装置を開示する。
【0113】
ヒートパイプは、熱付与又は熱付与停止に対する応答速度が大きい。従って、活性化装置のガス流路を流通する活性化ガスの温度をヒートパイプで制御した場合、活性化ガスの局所的な温度(実質的な露点温度)が略均一となると推測される。この場合において、ヒートパイプから活性化ガスに付与される熱量が急速に低下したとき、ガス流路内における活性化ガスの実質的な露点温度が一斉に低下して、ガス流路の全体にわたって凝縮水が発生することがあり得る。この現象に起因して、熱の入出に対するヒートパイプの応答速度が大きいにも拘わらず、フラッディングが起こることが想定される。特に、トラック等の大型車両に搭載される燃料電池スタックでは、MEAが大型化する。このようなMEAを活性化する場合、活性化装置におけるガス流路の流路長が比較的長くなる。流路長が長いガス流路において凝縮水が発生すると、その発生量が多いのでフラッディングが発生し易くなる懸念がある。
【0114】
これに対し、蓄熱部を設けた態様においては、ガス流路を流通する活性化ガスに対し、蓄熱部の熱が伝達される。この熱伝達に伴い、活性化ガスの実質的な露点温度が上昇する。その結果、ガス流路内で水蒸気が凝縮することが一層抑制される。従って、フラッディングを防止することが一層容易である。
【0115】
本実施形態は、前記蓄熱部は、前記ガス流路を起点として該ガス流路から離間するように凹んだ1個以上の凹部である、活性化装置を開示する。
【0116】
この場合、凹部に活性化ガスが進入する。活性化ガスは数十℃~百数十℃であるので、蓄熱部が熱を蓄える。このように、この構成によれば、蓄熱部を構成することが容易である。
【0117】
本実施形態は、前記蓄熱部は、前記ガス流路を起点として該ガス流路から離間するように凹んだ2個以上の凹部であり、前記2個以上の凹部の蓄熱容量が互いに相違し、前記2個以上の凹部は、前記ガス流路内において、前記入口から前記出口に向かって、蓄熱容量が小さい凹部から蓄熱容量が大きい凹部の順で並ぶ、活性化装置を開示する。
【0118】
この場合、ガス流路の上流から下流となるにつれて実質的な露点温度が高くなる。すなわち、実質的な露点温度に正の温度勾配が形成される。このため、ガス流路の入口から出口に向かうに従って、活性化ガスから凝縮水が発生し難くなる。このような理由から、ガス流路の全体にわたって一斉に凝縮水が発生することが回避される。しかも、ガス流路の出口近傍で実質的な露点温度を高くすることができるので、ガス流路の出口において凝縮水の発生が抑制される。従って、ガス流路の出口が凝縮水で閉塞されることが回避される。このため、ガス流路の途中で活性化ガスから凝縮水が発生する状況であっても、該凝縮水を速やかに出口から排出することができる。
【0119】
特に、発電エージングでは、活性化の進行に伴って、カソード電極において水が生成される。このため、フラッディングは、カソード電極を向くガス流路の出口近傍で発生し易い。しかしながら、上記の構成においては、ガス流路を流通して出口近傍に到達した活性化ガスに対し、出口近傍に位置する蓄熱部から大きな熱量を付与することが可能である。このため、出口近傍で活性化ガスの実質的な露点温度が低下することを回避することができる。これにより、フラッディングが発生することが一層抑制される。
【0120】
本実施形態は、前記ガス流路は、前記1個以上の凹部の凹み方向に向かって凹むように屈曲した屈曲部(56、58、88、90)を有し、前記屈曲部に前記入口又は前記出口が形成される、活性化装置を開示する。
【0121】
この構成によれば、入口又は出口が、凹部(蓄熱部)と同一方向に凹んでいる。換言すれば、この場合、入口又は出口と、蓄熱部とが同一方向を向く。このため、治具が大型化することが回避される。すなわち、治具の小型化を図ることができる。
【0122】
本実施形態は、前記ガス流路は、前記1個以上の凹部の凹み方向に向かって凹むように屈曲した第1屈曲部(56、88)及び第2屈曲部(58、90)を有し、前記第1屈曲部に前記入口が形成され、且つ前記第2屈曲部に前記出口が形成される、活性化装置を開示する。
【0123】
この構成によれば、入口及び出口が、凹部(蓄熱部)と同一方向に凹んでいる。換言すれば、この場合、入口及び出口と、蓄熱部とが同一方向を向く。このため、治具が大型化することが一層回避される。すなわち、治具の一層の小型化を図ることができる。
【0124】
本実施形態は、前記一対の治具の各々では、前記複数個のヒートパイプのうち2個の間に、前記複数個のガス流路(212、222)のうち2個以上が位置し、且つ前記2個以上のガス流路は、前記複数個のヒートパイプの延在方向に沿って直線状に並ぶ、活性化装置を開示する。
【0125】
この構成によれば、ガス流路の流路長が一層短くなる。従って、ガス流路を流れる活性化ガスにおいて、入口側の分圧と出口側の分圧とで差が一層生じ難くなる。従って、ガス流路の出口近傍でフラッディングが一層起こり難くなる。このため、電極触媒を活性化することが一層容易である。
【0126】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0127】
10…電解質膜・電極構造体 12…電解質膜
14…アノード電極 16…カソード電極
18…第1電極触媒層 20…第1ガス拡散層
22…第2電極触媒層 24…第2ガス拡散層
30…活性化システム 40、200…活性化装置
42、202…第1治具 44、204…第2治具
46a~46d…ベースプレート 48、210…第1流路部材
50…第1ヒートパイプ 52、212…第1ガス流路
54、214…第1供給口 56…第1An側屈曲部
58…第2An側屈曲部 60…第1入口
62…第1出口 64a~64d…An側蓄熱部
70…第1熱供給部 80、220…第2流路部材
82…第2ヒートパイプ 84、222…第2ガス流路
86、224…第2供給口 88…第1Ca側屈曲部
90…第2Ca側屈曲部 92…第2入口
94…第2出口 96a~96d…Ca側蓄熱部
102…第2熱供給部 112…水素ガス供給部
114、132…窒素ガス供給部 118…第1加湿器
134…酸化剤ガス供給部 138…第2加湿器
150…電気パラメータ検出部 160…圧力パラメータ検出部
170…外部負荷