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特開2024-51549ダイカスト品の不要部の切断方法及びダイカスト品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051549
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ダイカスト品の不要部の切断方法及びダイカスト品
(51)【国際特許分類】
   B22D 31/00 20060101AFI20240404BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20240404BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20240404BHJP
【FI】
B22D31/00 Z
B22D17/20 C
B23K26/38 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157772
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋二
(72)【発明者】
【氏名】安井 公哉
(72)【発明者】
【氏名】相良 弘幸
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168FB05
4E168FC04
4E168JA01
(57)【要約】
【課題】ダイカスト品から容易に不要部を切断できるようにする。
【解決手段】鋳造されたダイカスト品1の製品部2から不要部3を切断する方法であって、製品部2は、第一片21と、第一片21に対して山折りに折れ曲がって第一片21の第一方向101の一端部から延びる第二片22と、を有し、不要部3は、第一片21における第一方向101と直交する第二方向102の一端部と、第二片22における第二方向102の一端部のうち少なくとも一方に、第二方向に突出する突出片31,32を有し、レーザ10を山折り側から照射して不要部3を切断する切断工程を備え、切断工程は、レーザ10を第一片21と第二片22の接続部27に近づく方向に進行させて突出片31,32を切断する工程を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造されたダイカスト品の製品部から不要部を切断する方法であって、
製品部は、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、を有し、
不要部は、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部と、第二片における第二方向の一端部のうち少なくとも一方に、第二方向に突出する突出片を有し、
レーザを山折り側から照射して不要部を切断する切断工程を備え、
切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部に近づく方向に進行させて突出片を切断する工程を含む、ダイカスト品の不要部の切断方法。
【請求項2】
鋳造されたダイカスト品の製品部から不要部を切断する方法であって、
製品部は、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、を有し、
不要部は、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部と、第二片における第二方向の一端部のうち少なくとも一方に、第二方向に突出する突出片を有し、
レーザを山折り側から照射して不要部を切断する切断工程を備え、
切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部から離れる方向に進行させると共にレーザを進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射して突出片を切断する工程を含む、ダイカスト品の不要部の切断方法。
【請求項3】
鋳造されたダイカスト品の製品部から不要部を切断する方法であって、
製品部は、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の他端部から延びる第三片と、を有し、
不要部は、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部から第二方向に突出する第一突出片を有し、
レーザを山折り側から照射して不要部を切断する切断工程を備え、
切断工程は、レーザを進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射して第一突出片を切断する工程を含む、ダイカスト品の不要部の切断方法。
【請求項4】
不要部は、第二片における第二方向の一端部から第二方向に突出する第二突出片を有し、
切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部に近づく方向に進行させて第二突出片を切断する工程を含む、請求項3記載のダイカスト品の不要部の切断方法。
【請求項5】
不要部は、第二片における第二方向の一端部から第二方向に突出する第二突出片を有し、
切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部から離れる方向に進行させると共にレーザを進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射して第二突出片を切断する工程を含む、請求項3記載のダイカスト品の不要部の切断方法。
【請求項6】
不要部が切断されたダイカスト品であって、
第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、を備え、
第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部と、第二片における第二方向の一端部のうち少なくとも一方に、筋状のレーザ切断痕を有する切断面が設けられ、
レーザ切断痕は、山折り側の面から谷折り側の面に向けて他方の片から離れる方向に傾斜した筋、又は、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直な筋である、ダイカスト品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造後のダイカスト品から不要部を切断する方法、及び、不要部が切断されたダイカスト品に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造されたダイカスト品には、ランナー部等の不要部が存在する。下記特許文献1~3においては、ランナー部等の不要部は、プレス機によりトリミングされる。しかしながら、ダイカスト品の形状によっては、プレスが不可能な場合や困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63-132731号公報
【特許文献2】実開平5-88755号公報
【特許文献3】特開平6-15316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ダイカスト品から容易に不要部を切断できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るダイカスト品の不要部の切断方法は、鋳造されたダイカスト品の製品部から不要部を切断する方法であって、製品部は、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、を有し、不要部は、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部と、第二片における第二方向の一端部のうち少なくとも一方に、第二方向に突出する突出片を有し、レーザを山折り側から照射して不要部を切断する切断工程を備え、切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部に近づく方向に進行させて突出片を切断する工程を含む。
【0006】
鋳造されたダイカスト品における第二片は第一片に対して折れ曲がっている。第一片あるいは第二片に不要部としての突出片が設けられている。突出片は、例えばランナー部等である。第二片が第一片に対して折れ曲がっているため、プレスによって突出片をトリミングすることは困難である。上記方法では、レーザを突出片に照射して突出片を溶融して切断する。また、レーザを谷折り側から照射するのではなく山折り側から照射することにより、レーザを突出片に容易に照射することができる。そして、レーザによって突出片を非接触で切断することができる。そのため、製品部に過度の力が作用せず、プレスのように製品部が変形したりするおそれがなく、製品部から突出片を容易に切り離して除去することができる。
【0007】
一方、レーザを突出片に照射すると、突出片の切断箇所が溶けて、レーザ照射側とは反対側に溶融金属(スパッタ)が飛び散ることになる。第一片と第二片が互いに折れ曲がっているので、溶融金属が第一片や第二片の谷折り側の面に付着するおそれがある。例えば第一片の突出片を切断する際には第二片に溶融金属が付着するおそれがあり、第二片の突出片を切断する際には第一片に溶融金属が付着するおそれがある。第一片や第二片に溶融金属が付着すると、製品不良となる場合がある。
【0008】
上記方法では、レーザで突出片を切断する際、レーザを第一片と第二片の接続部から離れる方向に進行させるのではなく、レーザを接続部に近づく方向に進行させる。レーザを第一片と第二片の接続部から離れる方向に進行させると、溶融金属がレーザの進行方向の後側である接続部側に飛びやすくなる。つまり、第一片の突出片を切断する場合には第二片に向けて溶融金属が飛びやすくなり、第二片の突出片を切断する場合には第一片に向けて溶融金属が飛びやすくなる。一方、レーザを接続部に近づく方向に進行させていくと、溶融金属は接続部とは反対側に飛びやすくなり、第一片や第二片に向かいにくくなる。そのため、第一片や第二片に溶融金属が付着しにくくなる。溶融金属が飛ぶ方向は、レーザの出力や照射時間、移動速度、照射角度等の各種の条件によって種々変化するが、レーザを接続部から離れる方向に進行させる場合に比して、レーザを接続部に近づく方向に進行させることにより、溶融金属が接続部側に飛びにくくなり、第一片や第二片に溶融金属が付着することを抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係るダイカスト品の不要部の切断方法は、鋳造されたダイカスト品の製品部から不要部を切断する方法であって、製品部は、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、を有し、不要部は、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部と、第二片における第二方向の一端部のうち少なくとも一方に、第二方向に突出する突出片を有し、レーザを山折り側から照射して不要部を切断する切断工程を備え、切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部から離れる方向に進行させると共にレーザを進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射して突出片を切断する工程を含む。
【0010】
この方法によれば、レーザで突出片を切断する際に、レーザを接続部から離れる方向に進行させる。上述のように、レーザの進行方向が接続部から離れる方向である場合には、溶融金属が接続部側に飛びやすくなる。この場合には、レーザを突出片に対して直角に照射するのではなく、レーザを傾けて照射する。即ち、レーザを突出片に対して、進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射する。このようにレーザを傾けて照射すると、突出片の切断開始側の端部において、レーザ照射側の面(山折り側の面)よりも反レーザ照射側の面(谷折り側の面)から先に溶融させることができる。そしてその後、レーザ照射側の面へと溶融部分を拡大させることができる。そのため、レーザの照射角度が直角である場合に比して、溶融金属がレーザの進行方向の後側に飛びにくくなり、第一片や第二片に溶融金属が付着しにくくなる。
【0011】
また、本発明に係るダイカスト品の不要部の切断方法は、鋳造されたダイカスト品の製品部から不要部を切断する方法であって、製品部は、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の他端部から延びる第三片と、を有し、不要部は、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部から第二方向に突出する第一突出片を有し、レーザを山折り側から照射して不要部を切断する切断工程を備え、切断工程は、レーザを進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射して第一突出片を切断する工程を含む。
【0012】
この方法によれば、第一突出片を切断する際、レーザを第一突出片に対して進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射する。これにより、溶融金属が第二片や第三片に向けて飛びにくくなり、溶融金属が第二片や第三片に付着しにくくなる。
【0013】
特に、不要部は、第二片における第二方向の一端部から第二方向に突出する第二突出片を有し、切断工程は、レーザを、第一片と第二片の接続部に近づく方向に進行させて第二突出片を切断する工程を含むことが好ましい。これにより、第二突出片を切断する際に、溶融金属が第一片に向かいにくくなって第一片に付着しにくくなる。
【0014】
また、不要部は、第二片における第二方向の一端部から第二方向に突出する第二突出片を有し、切断工程は、レーザを第一片と第二片の接続部から離れる方向に進行させると共にレーザを進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射して第二突出片を切断する工程を含むことが好ましい。これにより、第二突出片を切断する際に、溶融金属が第一片に向かいにくくなって第一片に付着しにくくなる。
【0015】
また本発明にかかるダイカスト品は、不要部が切断されたダイカスト品であって、第一片と、第一片に対して山折りに折れ曲がって第一片の第一方向の一端部から延びる第二片と、を備え、第一片における第一方向と直交する第二方向の一端部と、第二片における第二方向の一端部のうち少なくとも一方に、筋状のレーザ切断痕を有する切断面が設けられ、レーザ切断痕は、山折り側の面から谷折り側の面に向けて他方の片から離れる方向に傾斜した筋、又は、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直な筋である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、レーザにより不要部を非接触で溶融して切断することにより、ダイカスト品の形状に対する制約が少なくなり、製品部を変形させることなく、不要部を容易に切断することができる。そして、レーザの進行方向、あるいは、レーザの進行方向に対する傾きにより、溶融金属の製品部への付着を抑制することができ、製品不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態における切断方法を示す正面図、(c)は切断面を示す正面図。
図2】(a)及び(b)は同切断方法を示す正面図、(c)は切断面を示す正面図。
図3】(a)及び(b)は同切断方法を示す正面図、(c)は切断面を示す正面図。
図4】(a)及び(b)は同切断方法を示す正面図、(c)は切断面を示す正面図。
図5】(a)は本発明の一実施形態における切断方法の対象であるダイカスト品の鋳造後の状態を示す斜視図、(b)は不要部を切断したダイカスト品を示す斜視図。
図6】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図7】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図8】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図9】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図10】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図11】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図12】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図13】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図14】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図15】本発明の他の実施形態における切断方法の対象であるダイカスト品の鋳造後の状態を示す斜視図。
図16】同ダイカスト品から不要部を除去した状態を示す斜視図。
図17】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図18】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図19】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図20】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
図21】(a)は同切断方法を示す正面図、(b)は切断後のダイカスト品を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかるダイカスト品における不要部の切断方法と、不要部が切断されたダイカスト品について、図面を参酌しつつ説明する。ダイカスト品1は、製品部2と不要部3とからなり、切断方法は、不要部3を切断するものである。まず初めに、切断方法の基本原理について説明する。
【0019】
図1図4に切断方法を概念的に示している。切断方法は、レーザ10を不要部3としての突出片4に照射して、突出片4をレーザ10により切断する。図1図4は、突出片4をその突出方向の先端側から突出方向に見た図である。突出片4は、第一面4aと第二面4bを板面とする板状である。レーザ10は、第一面4a側から突出片4に照射する。つまり、第一面4aはレーザ照射側の面であり、第二面4bは反レーザ照射側の面である。図1等では、レーザ10を照射するためのトーチ11(ノズル)を示している。トーチ11の先端部からレーザ10が照射される。尚、トーチ11の内部にはエアが供給される。そのため、トーチ11の先端部からレーザ10と共にエアが噴射される。
【0020】
図1では、突出片4の左端部4d(進行方向の一端部)にレーザ10を照射している。図1に示している矢印Aは、レーザ10の進行方向(走査方向)を示している。図1では、紙面向かって左側から右側に向けてレーザ10が進行する。レーザ10は、突出片4の第一面4a側から突出片4に照射される。トーチ11は、進行方向に対して直角である。レーザ10は、突出片4の第一面4aに向けて直角に照射される。図1(a)のように、突出片4の左端部4dにおける第一面4aにレーザ10が直角に照射されることにより、突出片4の左端部4dは、第一面4a側から溶け始める。
【0021】
そして、図1(b)のように、突出片4の左端部4dの溶融は第一面4a側から第二面4b側へと進んでいくと共に、トーチ11を右側に向けて移動させることに伴って、突出片4の溶融部分5が右側へと拡大していく。尚、図中、溶融部分5には多数のドットを付して示している。突出片4は、第一面4a側が先に溶融し、第二面4b側が後から溶融することになる。そのため、溶融金属6(スパッタ)は、図1(b)のように、斜め左側に飛んでいくことになる。即ち、溶融金属6は、第一面4a側から第二面4b側であって且つレーザ10の進行方向に対して後側に向けて、斜めに飛んでいくことになる。尚、溶融金属6が飛んでいく角度は、レーザ10の出力や照射時間、レーザ10の移動速度等によって異なる。
【0022】
図1(c)に、突出片4が切断された後の切断面7を示している。切断面7には、レーザ10の照射及びその走査によって突出片4が溶融した痕跡がレーザ切断痕8として残る。レーザ切断痕8は、筋状であり、その筋の方向は、溶融金属6が向かう方向に近い。この例では、上述のように溶融金属6が斜め左側且つ下側に向かう。そのため、レーザ切断痕8の筋は、正面から見て左側且つ下側に傾斜している。即ち、レーザ切断痕8の筋は、第一面4aから第二面4bに向けて、レーザ10の進行方向の後側に傾斜している。
【0023】
図2は、図1とは逆に突出片4の右端部4cから左側に向けてトーチ11を移動させて突出片4を切断する場合を示している。この場合も同様に、まず、図2(a)のように右端部4cの第一面4a側から溶融し始め、その後、徐々に第二面4b側へと溶融部分5が拡大していく。それと共に、図2(b)のように、トーチ11が左側に進行していくことにより、第一面4a側においては第二面4b側よりも先に左側に溶融部分5が拡大する一方、第二面4b側は、後から遅れて溶融していくことになる。そのため、溶融金属6は、図2(b)のように、斜め右側に飛んでいくことになる。即ち、溶融金属6は、第一面4a側から第二面4b側であって且つレーザ10の進行方向に対して後側に向けて、斜めに飛んでいくことになる。
【0024】
図2(c)に、突出片4が切断された後の切断面7を示している。この例では、上述のように溶融金属6は斜め右側に向かう。そのため、レーザ切断痕8の筋は、正面から見て右側且つ下側に傾斜している。即ち、レーザ切断痕8の筋は、第一面4aから第二面4bに向けて、レーザ10の進行方向の後側に傾斜している。
【0025】
一方、レーザ10を突出片4に対して直角ではなく傾斜した方向から照射することもできる。その場合には、レーザ10を突出片4に対して直角に照射した場合とは異なる方向に溶融金属6を飛ばすことができる。
【0026】
図3では、トーチ11を進行方向に対して直角の状態から進行方向の後側に倒すように傾斜させている。レーザ10の進行方向は左側から右側である。レーザ10は、進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射される。つまり、レーザ10は左側から右側に向けて斜めに照射される。図3(a)のように、レーザ10は、最初に突出片4の左端部4d(左側面)に照射される。より詳細には、レーザ10は、最初に突出片4の左端部4dの第一面4a側ではなく第二面4b側に照射される。従って、突出片4の左端部4dのうち第二面4b側が第一面4a側よりも先に溶融し始める。そして、図3(b)のように、レーザ10が向かって右側に移動していくことで、突出片4の左端部4dのうち第二面4b側から第一面4a側へと溶融部分5が拡大していく。その結果、溶融金属6は、レーザ10を直角に照射する場合に比してレーザ10の進行方向の後側に飛びにくくなる。図3(b)においては、理解しやすい一例として、溶融金属6が第一面4a側から第二面4b側に向けて略真っ直ぐに飛んでいく状態を示しているが、溶融金属6が飛んでいく方向は、レーザ10の出力や照射時間、レーザ10の移動速度等によって異なる。
【0027】
図3(c)に、突出片4が切断された後の切断面7を示している。この例では、理解しやすい一例として溶融金属6が第一面4a側から第二面4b側に向けて略真っ直ぐに向かう場合を示す。この場合には、レーザ切断痕8の筋は、正面から見て略垂直となる。即ち、レーザ切断痕8の筋は、第一面4aから第二面4bに向けて略垂直方向の筋となる。
【0028】
図4では、図3とは逆に、トーチ11を進行方向に対して直角の状態から進行方向の前側に倒すように傾斜させている。レーザ10の進行方向は図3と同様に左側から右側である。レーザ10は、進行方向の前側から後側に向けて斜めに照射される。図4(a)のように、レーザ10は、突出片4の左端部4dの第一面4aに照射される。従って、突出片4の左端部4dのうち第一面4a側が第二面4b側よりも先に溶融し始める。そして、レーザ10が向かって右側に移動していくことで、突出片4の溶融部分5が右側へと拡大していくと共に、突出片4の左端部4dにおける溶融は、第一面4a側から第二面4b側へと進んでいく。つまり、突出片4は、第一面4a側が第二面4b側に比べて大きく先行して溶融し、第二面4b側がかなり後から遅れて溶融することになる。そのため、溶融金属6は、図4(b)のように、斜め左側に飛んでいくことになる。この斜め左側への傾斜角度は、図1の場合とレーザ10の出力等の条件が同じ場合には、図1(b)に示したときよりも更に大きくなり、図1(b)よりも更に斜め左側に大きく傾斜して飛んでいくことになる。
【0029】
図4(c)に、突出片4が切断された後の切断面7を示している。この例では、上述のように溶融金属6が図1(b)の場合よりも更に左側に向かう。レーザ切断痕8の筋は、正面から見て、左側且つ下側に図1(c)よりも大きく傾斜している。レーザ切断痕8の筋は、第一面4aから第二面4bに向けて、レーザ10の進行方向の後側に大きく傾斜している。
【0030】
次に、ダイカスト品1の具体例を挙げて更に説明する。図5(a)に、鋳造直後のダイカスト品1の一例を模式的に示している。また、図5(b)に、ダイカスト品1から不要部3を取り除いた状態、即ち、製品部2のみを示している。尚、図5(b)において、不要部3を切断した切断面(第一切断面41、第二切断面42)には、多数のドットを付している。
【0031】
鋳造直後のダイカスト品1は、製品部2の他に不要部3を有している。製品部2の形状は任意であるが、本実施形態では、製品部2は、第一片21と、第二片22を有している。第一片21及び第二片22は板状である。
【0032】
第一片21の縦横二つの方向をそれぞれ第一方向101と第二方向102とする。第一方向101と第二方向102は互いに直交する。第一片21の板厚方向を第三方向103とする。第三方向103は、第一方向101及び第二方向102と直交する。以下、第一方向101を左右方向とし、図6等のように製品部2を第二方向102の第一端部側から見たときを基準にして左右の方向を定義する。従って、第一方向101の第一端部は右端部であり、第一方向101の第二端部は左端部である。また、第二方向102を前後方向とし、第二方向102の第一端部側を前側とする。従って、第二方向102の第一端部は前端部であり、第二方向102の第二端部は後端部である。更に、第三方向103を上下方向とし、第一片21から第二片22が延びる方向を下側とする。第三方向103の第一端部は上端部であり、第三方向103の第二端部は下端部である。
【0033】
第一片21は水平方向に延びていて、第二片22は、第一片21の右端部21aから下側に延びている。第二片22は、第一片21に対して上側から見て山折りに折れ曲がっている。本実施形態では、第二片22は第一片21に対して直角に折れ曲がっているが、その折れ曲がり角度は任意である。第一片21の右端部21aは第二片22との接続端部であり、第一片21の左端部21bは自由端部である。また、第二片22の上端部22aは第一片21との接続端部であり、第二片22の下端部22bは自由端部である。
【0034】
不要部3の形状は任意であるが、本実施形態では、不要部3は、第一突出片31と、第二突出片32を有している。各突出片31,32は、何れも板状である。突出片は、例えばランナー部等である。
【0035】
第一突出片31は、第一片21の前端部21cから前側に突出している。第二突出片32は、第二片22の前端部22cから前側に突出している。このように、第一突出片31と第二突出片32は、何れも製品部2から前側に突出しているが、少なくとも一方が後側に突出していてもよい。第一突出片31は、第一片21の前端部21cの全長のうちの一部に設けられ、第二突出片32は、第二片22の前端部22cの全長のうちの一部に設けられる。
【0036】
次に、これらの第一突出片31及び第二突出片32を切断する方法について説明する。図6図11に種々の切断方法を示している。尚、図6図11において、第一片21及び第二片22を前側から見た状態を示している。
【0037】
<切断方法その1>
図6(a)に、切断方法の一例を示している。第一突出片31を切断する場合には、トーチ11を第一突出片31に対して上側に設置する。また、第二突出片32を切断する場合には、トーチ11を第二突出片32に対して右側に設置する。このように、トーチ11は、第一片21及び第二片22のそれぞれの山折り側に設置されてレーザ10を山折り側から照射する。
【0038】
第一突出片31を切断する場合、第一突出片31をその左端部31bから右端部31aに向けて切断する。つまり、第一片21と第二片22の接続部27に向けてトーチ11を右側に移動させながら第一突出片31を切断する。トーチ11は第一突出片31に対して直角であり、進行方向に対して直角に設定されている。このようにレーザ10の進行方向(トーチ11の移動方向)を接続部27に近づく方向とすることにより、溶融金属6を斜め左側に向けて飛ばすことができる。つまり、溶融金属6を第二片22から離れる方向に飛ばすことができ、溶融金属6が第二片22に付着することを抑制することができる。尚、溶融金属6が飛ぶ角度は、レーザ10の種々の条件により異なる。
【0039】
第二突出片32を切断する場合、第二突出片32をその下端部32bから上端部32aに向けて切断する。つまり、トーチ11を第一片21に近づくように、即ち、接続部27に近づけるように上側に移動させる。トーチ11の移動方向は、下側から上側である。トーチ11は第二突出片32に対して直角であり、進行方向に対して直角に設定されている。このようにレーザ10の進行方向を接続部27に近づけていく方向とすることにより、溶融金属6を斜め下側に向けて飛ばすことができる。つまり、溶融金属6を第一片21から離れる方向に飛ばすことができ、溶融金属6が第一片21に付着することを抑制することができる。この場合も、溶融金属6が飛ぶ角度は、レーザ10の種々の条件により異なる。尚、第一突出片31と第二突出片32の切断順序は何れが先であってもよい。
【0040】
図6(b)に、第一突出片31と第二突出片32が切断された後のダイカスト品1を示している。第一片21の前端部21cには、第一突出片31が切断されることにより形成された第一切断面41が設けられる。第二片22の前端部22cには、第二突出片32が切断されることにより形成された第二切断面42が設けられる。第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て左側且つ下側に傾斜している。つまり、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面(レーザ照射側の面)から谷折り側の面(反レーザ照射側の面)に向けて、第二片22から離れる方向に傾斜している。また、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て左側且つ下側に傾斜している。つまり、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第一片21から離れる方向に傾斜している。尚、筋の傾斜角度は、レーザ10の種々の条件により異なる。
【0041】
<切断方法その2>
図7(a)に、切断方法の一例を示している。第一突出片31の切断方法は図6(a)に示したものと同様である。第二突出片32の切断方法が図6(a)とは異なる。即ち、図6(a)の場合とは逆に、第二突出片32をその上端部32aから下端部32bに向けて切断する。つまり、トーチ11を第一片21から離れるように、即ち、接続部27から離れるように下側に移動させる。トーチ11の移動方向は、上側から下側である。トーチ11は第二突出片32に対して直角ではなく、進行方向の後側である上側に倒すように傾斜させる。つまり、トーチ11を上側に所定角度倒して、レーザ10を進行方向の後側である上側から、進行方向の前側である下側に向けて斜めに傾斜させて第二突出片32に照射する。これにより、溶融金属6を第二片22に対して略直角に、即ち、左側に向けて略真っ直ぐに飛ばすことができる。そのため、溶融金属6が第一片21に付着しにくくなる。尚、溶融金属6が飛ぶ方向はレーザ10の条件によって異なるが、ここでは左側に向けて略真っ直ぐに飛ぶ場合を示している。また、例えば、第一突出片31を切断した後に、続けて、第二突出片32を一筆書きのように切断することができる。
【0042】
図7(b)に、第一突出片31と第二突出片32が切断された後のダイカスト品1を示している。第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、図6(b)と同様である。一方、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、図6(b)とは異なり、正面から見て、第二片22に対して略垂直であって右側から左側に向けて延びている。つまり、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直な筋である。
【0043】
<切断方法その3>
図8(a)に、切断方法の一例を示している。第二突出片32の切断方法は図7(a)に示したものと同様である。第一突出片31の切断方法が図7(a)とは異なる。即ち、図7(a)の場合とは逆に、第一突出片31をその右端部31aから左端部31bに向けて切断する。つまり、トーチ11を第二片22から離れるように、即ち、接続部27から離れるように左側に移動させる。トーチ11の移動方向は、右側から左側である。トーチ11は第一突出片31に対して直角ではなく、進行方向の後側である右側に倒すように傾斜させる。つまり、トーチ11を右側に所定角度倒して、レーザ10を進行方向の後側である右側から、進行方向の前側である左側に向けて斜めに傾斜させて第一突出片31に照射する。これにより、溶融金属6を下側に向けて略真っ直ぐに飛ばすことができる。そのため、溶融金属6が第二片22に付着しにくくなる。尚、溶融金属6が飛ぶ方向はレーザ10の条件によって異なるが、ここでは下側に向けて略真っ直ぐに飛ぶ場合を示している。
【0044】
図8(b)に、第一突出片31と第二突出片32が切断された後のダイカスト品1を示している。第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、図7(b)と同様である。一方、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、図7(b)とは異なり、正面から見て、第一片21に対して略垂直であって上側から下側に向けて延びている。つまり、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直な筋である。
【0045】
<切断方法その4>
図9(a)に、切断方法の一例を示している。トーチ11の進行方向は、図6(a)の場合と同様であって、第一突出片31を切断する場合には右側であり、第二突出片32を切断する場合は上側である。即ち、第一突出片31と第二突出片32の何れを切断する場合においても、トーチ11の進行方向は接続部27に近づく方向である。図6(a)と異なるのは、トーチ11の角度である。トーチ11を進行方向の前側に倒すように傾斜させている。尚、レーザ10の出力や移動速度等の他の条件は、図6(a)と同じである。このように照射角度を設定すると、第一突出片31を切断する場合には、溶融金属6を図6(a)よりも更に左側に向けて飛ばすことができ、第二突出片32を切断する場合には、溶融金属6を図6(a)よりも更に下側に向けて飛ばすことができる。従って、溶融金属6が第一片21や第二片22に付着することをより一層抑制することができる。
【0046】
図9(b)に、第一突出片31と第二突出片32が切断された後のダイカスト品1を示している。第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、左側且つ下側に図6(b)の場合よりも大きく傾斜している。つまり、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第二片22から離れる方向に大きく傾斜している。また、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、左側且つ下側に図6(b)の場合よりも大きく傾斜している。つまり、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第一片21から離れる方向に大きく傾斜している。
【0047】
<切断方法その5>
図10(a)に、切断方法の一例を示している。トーチ11の進行方向は、図6(a)の場合と同様であって、第一突出片31を切断する場合には右側であり、第二突出片32を切断する場合は上側である。即ち、第一突出片31と第二突出片32の何れを切断する場合においても、トーチ11の進行方向は接続部27に近づく方向である。図6(a)と異なるのは、トーチ11の角度である。トーチ11を進行方向の後側に倒すように傾斜させている。レーザ10を進行方向の後側から前側に向けて照射する。尚、レーザ10の出力や移動速度等の他の条件は、図6(a)と同じである。このように照射角度を設定すると、第一突出片31を切断する場合には、溶融金属6を例えば下側に向けて飛ばすことができ、第二突出片32を切断する場合には例えば左側に向けて飛ばすことができる。この場合においても、溶融金属6が第一片21や第二片22に付着することを抑制できる。
【0048】
<切断方法その6>
図11(a)に、切断方法の一例を示している。第一突出片31の切断方法は図6(a)に示したものと同様である。第二突出片32の切断方法が図6(a)とは異なる。即ち、図6(a)の場合とは逆に、第二突出片32をその上端部32aから下端部32bに向けて切断する。つまり、トーチ11を接続部27から離れるように下側に移動させる。トーチ11の移動方向は、上側から下側である。トーチ11は第二突出片32に対して直角である。このように、トーチ11の角度を第二突出片32に対して直角に設定し、且つ、トーチ11を接続部27から離れるように移動させると、溶融金属6は左側且つ上側に向けて飛びやすくなる。つまり、溶融金属6は第一片21に向かいやすくなり、第一片21に溶融金属6が付着しやすくなる。
【0049】
図11(b)に、第一突出片31と第二突出片32が切断された後のダイカスト品1を示している。第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、図6(b)と同様である。一方、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、図6(b)とは異なり、正面から見て、左側且つ上側に傾斜している。つまり、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第一片21に近づく方向に傾斜している。
【0050】
<切断方法その7>
図12(a)に、切断方法の一例を示している。第二突出片32の切断方法は図11(a)に示したものと同様である。第一突出片31の切断方法が図11(a)とは異なる。即ち、図11(a)の場合とは逆に、第一突出片31をその右端部31aから左端部31bに向けて切断する。つまり、トーチ11を接続部27から離れるように移動させる。また、トーチ11の角度は第一突出片31に対して直角である。このように、第一突出片31を切断する場合と第二突出片32を切断する場合の何れの場合においても、トーチ11の進行方向は接続部27から離れる方向であり、また、トーチ11の角度は各突出片31、32に対して直角である。第一突出片31を切断する際には、溶融金属6は第二片22に向かいやすくなって第二片22に付着しやすくなる。第二突出片32を切断する際には、溶融金属6は第一片21に向かいやすくなって第一片21に付着しやすくなる。
【0051】
図12(b)に、第一突出片31と第二突出片32が切断された後のダイカスト品1を示している。第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、図11(b)と同様である。一方、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、図11(b)とは異なり、正面から見て、右側且つ下側に傾斜している。つまり、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第二片22に近づく方向に傾斜している。
【0052】
尚、上記説明では、第一片21と第二片22の双方に突出片が存在していたが、第一片21と第二片22のうちの一方のみに突出片が存在している場合においても同様である。例えば、図13図14のように、第一片21に第一突出片31が設けられ、第二片22には突出片が設けられていない場合であっても同様である。図13(a)に示すように、トーチ11を第一突出片31に対して直角に設定すると共に接続部27に向けて移動させて第一突出片31を切断することができる。その場合、図13(b)に示すように、第一切断面41には、例えば正面から見て左側且つ下側に傾斜したレーザ切断痕8の筋が残る。
【0053】
また、図14(a)に示すように、トーチ11を接続部27から離れる方向に移動させつつ進行方向の後側に倒すように傾斜させて第一突出片31を切断することができる。その場合、図14(b)に示すように、第一切断面41には、正面から見て、第一片21に対して略垂直なレーザ切断痕8の筋が残る。尚、図13図14では、第一片21のみに突出片が設けられている場合を例示したが、逆に、第二片22のみに突出片が設けられている場合も同様である。また、第一片21の後端部21dや第二片22の後端部22dに突出片が設けられていてもよく、それらの突出片についても、上述のような切断方法で切断できる。例えば、第一片21の前端部21cに第一突出片31が設けられ、第二片22の後端部22dに第二突出片32が設けられていてもよい。
【0054】
次に、ダイカスト品1の他の具体例を挙げる。図15に、鋳造直後のダイカスト品1の他の例を模式的に示している。また、図16には、ダイカスト品1から不要部3を取り除いた状態を示している。図16は、製品部2のみを示しており、図16において、不要部3を切断した切断面(第一切断面41、第二切断面42、第三切断面43、第四切断面44、第五切断面45、第六切断面46)には多数のドットを付している。
【0055】
本実施形態では、製品部2は、第一片21と、第二片22と、第三片23と、第四片24と、第五片25と、第六片26とを有している。第一片21から第六片26は板状である。
【0056】
第一片21と第二片22は図5の場合と同様である。第三片23は、第一片21の左端部21bから下側に延びている。即ち、第二片22と第三片23は、第一片21から同じ側に延びている。第三片23は、第一片21に対して上側から見て山折りに折れ曲がっている。第一片21に対して、第二片22と第三片23は、何れも同じ側に折れ曲がっている。第二片22と第三片23は、互いに対向している。本実施形態において、第二片22はと第三片23は、互いに平行であるが、平行でなくてもよい。第二片22と第三片23は、第一片21に対して直交しているが、傾斜していてもよく、第一片21に対するそれぞれの折れ曲がり角度は任意である。
【0057】
第一片21の右端部21aは第二片22との接続端部であり、第一片21の左端部21bは第三片23との接続端部である。第二片22の上端部22aは第一片21との接続端部であり、第二片22の下端部22bは自由端部である。第三片23の上端部23aは第一片21との接続端部であり、第三片23の下端部23bは自由端部である。第一片21の後端部21d、第二片22の後端部、及び、第三片23の後端部は、それぞれ第4片24、第五片25、及び、第六片26との接続端部である。
【0058】
第四片24は、第一片21の後端部21dから上側に延びている。第四片24は、第一片21に対して、上側から見て谷折りに折れ曲がっている。本実施形態では、第四片24は第一片21に対して直角に折れ曲がっているが、その折れ曲がり角度は任意である。
【0059】
第五片25は、第四片24の右端部24aから後側に延びている。第五片25は、第四片24に対して前側から見て山折りに折れ曲がっている。本実施形態では、第五片25は第四片24に対して直角に折れ曲がっているが、その折れ曲がり角度は任意である。第五片25は、第二片22の後側に連続していて、第二片22と第五片25は、面一である。
【0060】
第六片26は、第四片24の左端部24bから後側に延びている。第五片25と第六片26は、第四片24から同じ側に延びている。第六片26は、第四片24に対して前側から見て山折りに折れ曲がっている。第四片24に対して、第五片25と第六片26は、何れも同じ側に折れ曲がっている。第五片25と第六片26は、互いに対向している。本実施形態において、第五片25はと第六片26は、互いに平行であるが、平行でなくてもよい。第五片25と第六片26は、第四片24に対して直交しているが、傾斜していてもよく、第四片24に対するそれぞれの折れ曲がり角度は任意である。第六片26は、第三片23の後側に連続していて、第三片23と第六片26は、面一である。
【0061】
第四片24の右端部24aは第五片25との接続端部であり、第四片24の左端部24bは第六片26との接続端部である。第五片25の前端部は第四片24との接続端部であり、第五片25の後端部は自由端部である。第六片26の前端部は第四片24との接続端部であり、第六片26の後端部は自由端部である。
【0062】
本実施形態では、不要部3は、第一突出片31と、第二突出片32と、第三突出片33と、第四突出片34と、第五突出片35と、第六突出片36とを有している。各突出片は、何れも板状である。突出片は、例えばランナー部等である。
【0063】
第一突出片31と第二突出片32については図5の場合と同様である。第三突出片33は、第三片23の前端部23cから前側に突出している。第一突出片31と第二突出片32と第三突出片33は、何れも前側に突出している。第一突出片31は、第一片21の前端部21cの全長のうちの一部に設けられ、第二突出片32は、第二片22の前端部22cの全長のうちの一部に設けられ、第三突出片33は、第三片23の前端部23cの全長のうちの一部に設けられる。
【0064】
第四突出片34は、第四片24の上端部24cから上側に突出している。第五突出片35は、第五片25の上端部25cから上側に突出している。第六突出片36は、第六片26の上端部26cから上側に突出している。このように、第四突出片34と第五突出片35と第六突出片36は、何れも上側に突出している。第四突出片34は、第四片24の上端部24cの全長のうちの一部に設けられ、第五突出片35は、第五片25の上端部25cの全長のうちの一部に設けられ、第六突出片36は、第六片26の上端部26cの全長のうちの一部に設けられる。
【0065】
これらの第一突出片31から第六突出片36をレーザ10により切断除去する。尚、代表的に、第一突出片31から第三突出片33を切断する場合について説明するが、第四突出片34から第六突出片36を切断する場合についても同様である。第一突出片31が切断されることにより第一切断面41が形成され、第二突出片32が切断されることにより第二切断面42が形成され、第三突出片33が切断されることにより第三切断面43が形成され、第四突出片34が切断されることにより第四切断面44が形成され、第五突出片35が切断されることにより第五切断面45が形成され、第六突出片36が切断されることにより第六切断面46が形成される。
【0066】
図17図21に切断方法を例示している。尚、図17図21において、第一片21乃至第三片23を前側から見た状態を示しているが、第四片24乃至第六片26の図示は省略している。図17(a)に、切断方法の一例を示している。トーチ11は、第一突出片31を切断する場合には、第一突出片31に対して上側に設置し、第二突出片32を切断する場合には、第二突出片32に対して右側に設置し、第三突出片33を切断する場合には、第三突出片33に対して左側に設置する。つまり、トーチ11は、第一片21、第二片22、第三片23のそれぞれの山折り側に設置し、レーザ10を山折り側から各突出片に向けて照射する。
【0067】
第一突出片31を切断する場合、第一突出片31をその左端部31bから右端部31aに向けて切断する。つまり、トーチ11を右側に移動させながら第一突出片31を切断する。この場合、トーチ11は第一突出片31に対して直角ではなく、進行方向の後側である左側に倒すように傾斜させる。つまり、トーチ11を左側に所定角度倒して、レーザ10を進行方向の後側である左側から、進行方向の前側である右側に向けて斜めに傾斜させて第一突出片31に照射する。このように、レーザ10を第一突出片31に進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射することにより、溶融金属6を下側に略真っ直ぐに飛ばすことができる。つまり、第一片21に対して略直交した方向(略法線方向)に溶融金属6を飛ばすことができる。そのため、溶融金属6が第二片22や第三片23に付着することを抑制することができる。
【0068】
第二突出片32を切断する場合、第二突出片32をその下端部32bから上端部32aに向けて切断する。つまり、トーチ11を第一片21に近づくように移動させる。トーチ11の移動方向は、下側から上側である。この場合、トーチ11は第二突出片32に対して直角であり、進行方向に対して直角に設定されている。このようにレーザ10の進行方向を第一片21と第二片22との接続部27に近づけていく方向とすることにより、溶融金属6を斜め下側に向けて飛ばすことができる。つまり、溶融金属6を第一片21から離れる方向に飛ばすことができ、溶融金属6が第一片21に付着することを抑制することができる。
【0069】
第三突出片33を切断する場合も同様であって、第三突出片33をその下端部33bから上端部33aに向けて切断する。つまり、トーチ11を第一片21に近づくように移動させる。トーチ11の移動方向、即ち、レーザ10の進行方向は、下側から上側である。この場合も、トーチ11は第三突出片33に対して直角であり、進行方向に対して直角に設定されている。このようにレーザ10の進行方向を第一片21と第三片23との接続部27に近づけていく方向とすることにより、溶融金属6を斜め下側に向けて飛ばすことができる。つまり、溶融金属6を第一片21から離れる方向に飛ばすことができ、溶融金属6が第一片21に付着することを抑制することができる。尚、この場合には、第三突出片33を切断した後に、続けて、第一突出片31を一筆書きのように切断することができる。
【0070】
図17(b)に、第一突出片31と第二突出片32と第三突出片33が切断された後のダイカスト品1を示している。第一片21の前端部21cには、第一突出片31が切断されることにより第一切断面41が形成され、第二片22の前端部22cには、第二突出片32が切断されることにより第二切断面42が形成され、第三片23の前端部23cには、第三突出片33が切断されることにより第三切断面43が形成される。
【0071】
第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、第一片21に対して略垂直であって上側から下側に向けて延びている。つまり、第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直な筋である。第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て左側且つ下側に傾斜している。つまり、第二切断面42におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第一片21から離れる方向に傾斜している。第三切断面43におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て右側且つ下側に傾斜している。つまり、第三切断面43におけるレーザ切断痕8の筋は、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて、第一片21から離れる方向に傾斜している。
【0072】
図18(a)のようにしてもよい。第二突出片32と第三突出片33の切断については図17(a)と同様である。第一突出片31を切断する場合の方向が図17(a)とは逆であって、第一突出片31をその右端部31aから左端部31bに向けて切断する。つまり、トーチ11の進行方向は左側である。この場合、トーチ11は第一突出片31に対して、進行方向の後側である右側に倒すように傾斜させる。つまり、トーチ11を右側に所定角度倒して、レーザ10を進行方向の後側である右側から、進行方向の前側である左側に向けて斜めに傾斜させて第一突出片31に照射する。これにより、第一突出片31の切断時において、溶融金属6を、図17(a)と同様に、下側に略真っ直ぐに飛ばすことができ、溶融金属6の第二片22や第三片23への付着を抑制することができる。尚、この場合には、第二突出片32を切断した後に、続けて、第一突出片31を一筆書きのように切断することができる。
【0073】
図18(b)に、第一突出片31と第二突出片32と第三突出片33が切断された後のダイカスト品1を示している。第一切断面41、第二切断面42及び第三切断面43におけるそれぞれのレーザ切断痕8の筋は、図17(b)に示したものと同様である。
【0074】
図19(a)のようにしてもよい。第一突出片31の切断については図17(a)の場合と同様である。図19(a)においては、第二突出片32と第三突出片33を切断する際に、トーチ11を図17(a)と同様に上側に移動させる。但し、トーチ11を、進行方向の前側である上側に倒すように傾斜させている。このようにトーチ11を進行方向の前側に倒すことで、レーザ10を第二突出片32や第三突出片33に対して、進行方向の前側から後側に向けて斜めに照射することができる。レーザ10を第二突出片32や第三突出片33に、進行方向の前側から後側に向けて斜めに照射することにより、溶融金属6を、図17に示した場合よりも更に下側に向けて斜めに飛ばすことができ、溶融金属6の第一片21への付着をより一層抑制することができる。
【0075】
図19(b)に、第一突出片31と第二突出片32と第三突出片33が切断された後のダイカスト品1を示している。第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、図17(b)に示したものと同様である。一方、第二切断面42及び第三切断面43における各レーザ切断痕8の筋は、図17(b)に示したものよりも更に下側に向けて大きく傾斜している。
【0076】
図20(a)のようにしてもよい。第一突出片31の切断については図17(a)の場合と同様である。図20(a)においては、第二突出片32と第三突出片33を切断する際に、トーチ11を図17(a)とは逆に下側に移動させる。即ち、第二突出片32と第三突出片33を切断する際に、トーチ11を各接続部27から離れる方向に移動させる。そして、トーチ11を、進行方向の後側である上側に倒すように傾斜させる。このようにトーチ11を進行方向の後側に倒すことで、レーザ10を第二突出片32や第三突出片33に対して、進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射することができる。レーザ10を第二突出片32や第三突出片33に、進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射することにより、溶融金属6を、第一片21に近づかないように略水平に飛ばすことができる。つまり、溶融金属6を第二片22や第三片23に対して略直交した方向に飛ばすことができる。これにより、溶融金属6の第一片21への付着を抑制することができる。
【0077】
図20(b)に、第一突出片31と第二突出片32と第三突出片33が切断された後のダイカスト品1を示している。第一切断面41におけるレーザ切断痕8の筋は、図17(b)に示したものと同様である。一方、第二切断面42と第三切断面43におけるレーザ切断痕8の筋は、それぞれ第二片22と第三片23に対して略垂直となる。つまり、第二切断面42と第三切断面43におけるレーザ切断痕8の筋は、それぞれ正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直に延びる筋である。このように、図20(b)の場合には、全てのレーザ切断痕8の筋が、正面から見て、山折り側の面から谷折り側の面に向けて略垂直に延びる筋となる。
【0078】
図21(a)のようにしてもよい。第一突出片31の切断については図17(a)の場合と同様である。また、第二突出片32と第三突出片33を切断する際のトーチ11の移動方向も図17(a)の場合と同様である。図17(a)の場合と異なるのは、第二突出片32と第三突出片33を切断する際におけるトーチ11の角度である。即ち、第二突出片32と第三突出片33を切断する際において、トーチ11を進行方向の後側である下側に倒すように傾斜させる。このようにトーチ11を進行方向の後側に倒すことで、レーザ10を第二突出片32や第三突出片33に対して、進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射することができる。レーザ10を第二突出片32や第三突出片33に、進行方向の後側から前側に向けて斜めに照射することにより、溶融金属6を、第一片21に近づかないように略水平に飛ばすことができる。つまり、溶融金属6を第二片22や第三片23に対して略直交した方向に飛ばすことができる。これにより、溶融金属6の第一片21への付着を抑制することができる。
【0079】
図21(b)に、第一突出片31と第二突出片32と第三突出片33が切断された後のダイカスト品1を示している。レーザ切断痕8の筋は、図20(b)に示したものと同様である。
【0080】
尚、図15では、第一片21、第二片22、第三片23の全てに突出片が設けられていたが、これらの三つの片のうち例えば一つの片のみに突出片が設けられたり二つの片のみに突出片が設けられたりしてもよい。第四片24、第五片25、第六片26についても同様である。また、第一片21に対して第四片24が上側から見て谷折りに折れ曲がっている形状(上側に折れ曲がっている形状)であったが、逆に第一片21に対して第四片24が上側から見て山折りに折れ曲がっている形状(下側に折れ曲がっている形状)であってもよい。また、第四片24乃至第六片26が省略された形状であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 ダイカスト品
2 製品部
3 不要部
4 突出片
4a 第一面
4b 第二面
4c 右端部
4d 左端部
5 溶融部分
6 溶融金属
7 切断面
8 レーザ切断痕
10 レーザ
11 トーチ
21 第一片
21a 右端部(第一方向の一端部)
21b 左端部(第一方向の他端部)
21c 前端部(第二方向の一端部)
21d 後端部(第二方向の他端部)
22 第二片
22a 上端部
22b 下端部
22c 前端部
23 第三片
23a 上端部
23b 下端部
23c 前端部
24 第四片
24a 右端部
24b 左端部
24c 上端部
25 第五片
25c 上端部
26 第六片
26c 上端部
27 接続部
31 第一突出片
31a 右端部
31b 左端部
32 第二突出片
32a 上端部
32b 下端部
33 第三突出片
33a 上端部
33b 下端部
34 第四突出片
35 第五突出片
36 第六突出片
41 第一切断面
42 第二切断面
43 第三切断面
44 第四切断面
45 第五切断面
46 第六切断面
101 第一方向
102 第二方向
103 第三方向
図1
図2
図3
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図5
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