(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051553
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】固体冷凍装置
(51)【国際特許分類】
F25B 21/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
F25B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157778
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 允妙
(72)【発明者】
【氏名】田中 三博
(57)【要約】
【課題】固体冷媒物質が収容される熱交換ブロックを回転駆動させる固体冷凍装置において、簡単な流路構造で熱媒体の漏れを抑制する。
【解決手段】熱媒体回路(C)では、複数の熱交換ブロック(10)の内部流路(13A,13B)と、第1熱交換器(21)及び第2熱交換器(22)のそれぞれとが接続される。複数の熱交換ブロック(10)の回転は、環状に配列された複数の熱交換ブロック(10)を所定の角度範囲で往復させるスイング運動である。熱媒体回路(C)の少なくとも1箇所にねじれ吸収部(31,32,33,34)が設けられる。ねじれ吸収部(31,32,33,34)が変形することによって、スイング運動による熱媒体回路(C)のねじれを吸収する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体冷媒物質(12)と、熱媒体が当該固体冷媒物質(12)と熱交換して流れる内部流路(13A,13B)とをそれぞれ有し、環状に配列された複数の熱交換ブロック(10)と、
前記複数の熱交換ブロック(10)内の前記固体冷媒物質(12)に力場を印加する少なくとも1つの力場印加部(15)と、
前記複数の熱交換ブロック(10)によって形成された環(5)の中心を軸にして、前記複数の熱交換ブロック(10)を回転させて、前記複数の熱交換ブロック(10)と前記力場印加部(15)とを相対的に回転運動させることにより、前記複数の熱交換ブロック(10)内の前記固体冷媒物質(12)に力場変動を付与する力場変調部(16)と、
第1熱交換器(21)と、
第2熱交換器(22)と、
前記複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの前記内部流路(13A,13B)と、前記第1熱交換器(21)及び前記第2熱交換器(22)のそれぞれとが接続される熱媒体回路(C)と
を備え、
前記複数の熱交換ブロック(10)の回転は、環状に配列された前記複数の熱交換ブロック(10)を所定の角度範囲で往復させるスイング運動であり、
前記熱媒体回路(C)の少なくとも1箇所にねじれ吸収部(31,32,33,34)が設けられ、前記ねじれ吸収部(31,32,33,34)が変形することによって、前記スイング運動による前記熱媒体回路(C)のねじれを吸収する、
固体冷凍装置。
【請求項2】
請求項1の固体冷凍装置において、
前記内部流路(13A,13B)と前記第1熱交換器(21)との間の前記熱媒体回路(C)は、
前記複数の熱交換ブロック(10)のぞれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する複数の第1流路(51,53)と、
前記第1熱交換器(21)に接続する第1集約流路(61,62)と、
前記複数の第1流路(51,53)及び前記第1集約流路(61,62)にぞれぞれ接続し、前記複数の第1流路(51,53)に流れる前記熱媒体を前記第1集約流路(61,62)に集約するか、又は前記第1集約流路(61,62)に流れる前記熱媒体を前記複数の第1流路(51,53)に分配する第1流路分配部(71,72)とを備え、
前記内部流路(13A,13B)と前記第2熱交換器(22)との間の前記熱媒体回路(C)は、
前記複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する複数の第2流路(52,54)と、
前記第2熱交換器(22)に接続する第2集約流路(63,64)と、
前記複数の第2流路(52,54)及び前記第2集約流路(63,64)にぞれぞれ接続し、前記複数の第2流路(52,54)に流れる前記熱媒体を前記第2集約流路(63,64)に集約するか、又は前記第2集約流路(63,64)に流れる前記熱媒体を前記複数の第2流路(52,54)に分配する第2流路分配部(73,74)とを備え、
前記第1流路分配部(71,72)及び前記第2流路分配部(73,74)のうちの少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)は固定され、
前記少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)と接続する前記複数の第1流路(51,53)又は前記複数の第2流路(52,54)に前記ねじれ吸収部(31,32)が配置される、
固体冷凍装置。
【請求項3】
請求項1の固体冷凍装置において、
前記内部流路(13A,13B)と前記第1熱交換器(21)との間の前記熱媒体回路(C)は、
前記複数の熱交換ブロック(10)のぞれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する複数の第1流路(51,53)と、
前記第1熱交換器(21)に接続する第1集約流路(61,62)と、
前記複数の第1流路(51,53)及び前記第1集約流路(61,62)にぞれぞれ接続し、前記複数の第1流路(51,53)に流れる前記熱媒体を前記第1集約流路(61,62)に集約するか、又は前記第1集約流路(61,62)に流れる前記熱媒体を前記複数の第1流路(51,53)に分配する第1流路分配部(71,72)とを備え、
前記内部流路(13A,13B)と前記第2熱交換器(22)との間の前記熱媒体回路(C)は、
前記複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する複数の第2流路(52,54)と、
前記第2熱交換器(22)に接続する第2集約流路(63,64)と、
前記複数の第2流路(52,54)及び前記第2集約流路(63,64)にぞれぞれ接続し、前記複数の第2流路(52,54)に流れる前記熱媒体を前記第2集約流路(63,64)に集約するか、又は前記第2集約流路(63,64)に流れる前記熱媒体を前記複数の第2流路(52,54)に分配する第2流路分配部(73,74)とを備え、
前記第1流路分配部(71,72)及び前記第2流路分配部(73,74)のうちの少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)は、前記複数の熱交換ブロック(10)と同期して前記スイング運動を行い、
前記少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)と接続する前記第1集約流路(61,62)又は前記第2集約流路(63,64)に前記ねじれ吸収部(33,34)が配置される、
固体冷凍装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項の固体冷凍装置において、
前記固体冷媒物質(12)は、磁気作業物質(12)であり、
前記力場印加部(15)は、前記磁気作業物質(12)に磁場を印加する磁場印加部(15)であり、
前記力場変調部(16)は、前記磁気作業物質(12)に磁場変動を付与する磁場変調部(16)である、
固体冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気熱量効果を利用して冷熱及び温熱を作り出す磁気冷凍装置が知られている。特許文献1には、磁気熱量効果を有する磁気作業物質を用いた磁気ヒートポンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の磁気ヒートポンプ装置では、磁力源に対して磁気熱量素子を回転させることにより、磁気熱量素子に印加される磁場を変調させている。このため、磁気熱量素子に接続される熱媒体の流路も回転してしまうため、流路構造が複雑になって熱媒体が漏れるリスクが高くなる。
【0005】
本開示の目的は、固体冷媒物質が収容される熱交換ブロックを回転駆動させる固体冷凍装置において、簡単な流路構造で熱媒体の漏れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、複数の熱交換ブロック(10)と、少なくとも1つの力場印加部(15)と、力場変調部(16)と、第1熱交換器(21)と、第2熱交換器(22)と、熱媒体回路(C)とを備える固体冷凍装置である。前記複数の熱交換ブロック(10)はそれぞれ、固体冷媒物質(12)と、熱媒体が当該固体冷媒物質(12)と熱交換して流れる内部流路(13A,13B)とを有する。前記複数の熱交換ブロック(10)は環状に配列される。前記力場印加部(15)は、前記複数の熱交換ブロック(10)内の前記固体冷媒物質(12)に力場を印加する。力場変調部(16)は、前記複数の熱交換ブロック(10)によって形成された環(5)の中心を軸にして、前記複数の熱交換ブロック(10)を回転させて、前記複数の熱交換ブロック(10)と前記力場印加部(15)とを相対的に回転運動させることにより、前記複数の熱交換ブロック(10)内の前記固体冷媒物質(12)に力場変動を付与する。前記熱媒体回路(C)では、前記複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの前記内部流路(13A,13B)と、前記第1熱交換器(21)及び前記第2熱交換器(22)のそれぞれとが接続される。前記複数の熱交換ブロック(10)の回転は、環状に配列された前記複数の熱交換ブロック(10)を所定の角度範囲で往復させるスイング運動である。前記熱媒体回路(C)の少なくとも1箇所にねじれ吸収部(31,32,33,34)が設けられる。前記ねじれ吸収部(31,32,33,34)が変形することによって、前記スイング運動による前記熱媒体回路(C)のねじれを吸収する。
【0007】
第1の態様では、固体冷媒物質(12)が収容される熱交換ブロック(10)のスイング運動に起因する熱媒体回路(C)のねじれを、ねじれ吸収部(31,32,33,34)の変形によって吸収することができる。このため、回転部分と固定部分との間に配置するシール機構を削減した簡単な流路構造で熱媒体の漏れを抑制することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、前記第1の態様において、前記内部流路(13A,13B)と前記第1熱交換器(21)との間の前記熱媒体回路(C)は、複数の第1流路(51,53)と、第1集約流路(61,62)と、第1流路分配部(71,72)とを備える。前記複数の第1流路(51,53)は、前記複数の熱交換ブロック(10)のぞれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する。前記第1集約流路(61,62)は、前記第1熱交換器(21)に接続する。前記第1流路分配部(71,72)は、前記複数の第1流路(51,53)及び前記第1集約流路(61,62)にぞれぞれ接続する。前記第1流路分配部(71,72)は、前記複数の第1流路(51,53)に流れる前記熱媒体を前記第1集約流路(61,62)に集約するか、又は前記第1集約流路(61,62)に流れる前記熱媒体を前記複数の第1流路(51,53)に分配する。また、前記内部流路(13A,13B)と前記第2熱交換器(22)との間の前記熱媒体回路(C)は、複数の第2流路(52,54)と、第2集約流路(63,64)と、第2流路分配部(73,74)とを備える。前記複数の第2流路(52,54)は、前記複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する。前記第2集約流路(63,64)は、前記第2熱交換器(22)に接続する。前記第2流路分配部(73,74)は、前記複数の第2流路(52,54)及び前記第2集約流路(63,64)にぞれぞれ接続する。前記第2流路分配部(73,74)は、前記複数の第2流路(52,54)に流れる前記熱媒体を前記第2集約流路(63,64)に集約するか、又は前記第2集約流路(63,64)に流れる前記熱媒体を前記複数の第2流路(52,54)に分配する。前記第1流路分配部(71,72)及び前記第2流路分配部(73,74)のうちの少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)は固定される。前記少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)と接続する前記複数の第1流路(51,53)又は前記複数の第2流路(52,54)に前記ねじれ吸収部(31,32)が配置される。
【0009】
第2の態様では、固定された流路分配部(71,72,73,74)と接続する第1流路(51,53)又は第2流路(52,54)にねじれ吸収部(31,32)が配置されるため、熱交換ブロック(10)のスイング運動と共に第1流路(51,53)又は第2流路(52,54)が回転しても、第1流路(51,53)又は第2流路(52,54)に生じるねじれを吸収することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、前記第1又は第2の態様において、前記内部流路(13A,13B)と前記第1熱交換器(21)との間の前記熱媒体回路(C)は、複数の第1流路(51,53)と、第1集約流路(61,62)と、第1流路分配部(71,72)とを備える。前記複数の第1流路(51,53)は、前記複数の熱交換ブロック(10)のぞれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する。前記第1集約流路(61,62)は、前記第1熱交換器(21)に接続する。前記第1流路分配部(71,72)は、前記複数の第1流路(51,53)及び前記第1集約流路(61,62)にぞれぞれ接続する。前記第1流路分配部(71,72)は、前記複数の第1流路(51,53)に流れる前記熱媒体を前記第1集約流路(61,62)に集約するか、又は前記第1集約流路(61,62)に流れる前記熱媒体を前記複数の第1流路(51,53)に分配する。また、前記内部流路(13A,13B)と前記第2熱交換器(22)との間の前記熱媒体回路(C)は、複数の第2流路(52,54)と、第2集約流路(63,64)と、第2流路分配部(73,74)とを備える。前記複数の第2流路(52,54)は、前記複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの前記内部流路(13A,13B)と接続する。前記第2集約流路(63,64)は、前記第2熱交換器(22)に接続する。前記第2流路分配部(73,74)は、前記複数の第2流路(52,54)及び前記第2集約流路(63,64)にぞれぞれ接続する。前記第2流路分配部(73,74)は、前記複数の第2流路(52,54)に流れる前記熱媒体を前記第2集約流路(63,64)に集約するか、又は前記第2集約流路(63,64)に流れる前記熱媒体を前記複数の第2流路(52,54)に分配する。前記第1流路分配部(71,72)及び前記第2流路分配部(73,74)のうちの少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)は、前記複数の熱交換ブロック(10)と同期して前記スイング運動を行う。前記少なくとも一方の流路分配部(71,72,73,74)と接続する前記第1集約流路(61,62)又は前記第2集約流路(63,64)に前記ねじれ吸収部(33,34)が配置される。
【0011】
第3の態様では、スイング運動を行う流路分配部(71,72,73,74)と接続する第1集約流路(61,62)又は第2集約流路(63,64)にねじれ吸収部(33,34)が配置される。このため、第1集約流路(61,62)及び第2集約流路(63,64)のそれぞれの一端が第1熱交換器(21)及び第2熱交換器(22)に固定されていても、第1集約流路(61,62)又は第2集約流路(63,64)に生じるねじれを吸収することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、前記第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記固体冷媒物質(12)は、磁気作業物質(12)であり、前記力場印加部(15)は、前記磁気作業物質(12)に磁場を印加する磁場印加部(15)であり、前記力場変調部(16)は、前記磁気作業物質(12)に磁場変動を付与する磁場変調部(16)である。
【0013】
第4の態様では、磁気作業物質(12)が収容される熱交換ブロック(10)を回転駆動させる固体冷凍装置において、簡単な流路構造で熱媒体の漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る磁気冷凍装置の配管系統図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る磁気冷凍モジュール及び熱交換ブロックの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る磁場印加部及び磁場変調部の概略構成の第1例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る磁場印加部及び磁場変調部の概略構成の第2例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る磁気冷凍装置における熱交換ブロックのスイング運動と磁場及び熱媒体流動の時間変化との関係の第1例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る磁気冷凍装置における熱交換ブロックのスイング運動と磁場及び熱媒体流動の時間変化との関係の第2例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る磁気冷凍装置における熱交換ブロックのスイング運動と磁場及び熱媒体流動の時間変化との関係の第3例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る磁気冷凍装置における、ねじれ吸収部の配置のバリエーションの第1例を示す配管系統図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る磁気冷凍装置における、ねじれ吸収部の配置のバリエーションの第2例を示す配管系統図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る磁気冷凍装置における、ねじれ吸収部の配置のバリエーションの第3例を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0016】
(実施形態)
本実施形態の磁気冷凍装置(1)は、磁気熱量効果を利用して熱媒体の温度を調節する固体冷凍装置であって、例えば空気調和装置に適用される。この場合、磁気冷凍装置(1)は、空調対象の空間の空気の温度を調節する。空調対象の空間は、例えば室内空間である。
【0017】
<磁気冷凍装置の構成>
図1に示すように、磁気冷凍装置(1)は、主として、複数の熱交換ブロック(10)と、第1熱交換器(21)と、第2熱交換器(22)と、熱媒体回路(C)とを備える。熱媒体回路(C)には、例えば冷媒、水、ブラインなどの熱媒体が充填される。熱媒体回路(C)では、充填された熱媒体が搬送される。熱媒体回路(C)の詳細については後述する。
【0018】
複数の熱交換ブロック(10)はそれぞれ、固体冷媒物質である磁気作業物質(12)と、熱媒体が磁気作業物質(12)と熱交換して流れる内部流路(13A,13B)とを収容部(11)の内部に有する。収容部(11)は、中空状のケースないしカラムである。収容部(11)の内部には、磁気作業物質(12)が充填される。
【0019】
磁気作業物質(12)は、磁場が印加される、あるいは印加された磁場が強くなることにより、発熱する。磁気作業物質(12)は、磁場が除去される、あるいは印加された磁場が弱くなると吸熱する。磁気作業物質(12)の材料としては、例えば、Gd5(Ge0.5Si0.5)4、La(Fe1-xSix)13、La(Fe1-xCoxSiy)13、La(Fe1-xSix)13Hy、Mn(As0.9Sb0.1)等を用いることができる。
【0020】
磁気作業物質(12)は、熱量効果が最大となるキュリー温度が異なる複数の物質から構成されてもよい。この場合、当該複数の物質は、内部流路(13A,13B)に沿ってキュリー温度の高低順(つまりカスケード状)に配置される。
【0021】
図2に示すように、複数(本例では4つ)の熱交換ブロック(10)は、環状に配列されて磁気冷凍モジュール(5)を構成する。磁気冷凍モジュール(5)には、
図3に示すように、磁気冷凍装置(1)の構成要素として、力場印加部である磁場印加部(15)と、力場変調部である磁場変調部(16)とが設けられる。磁場印加部(15)は、熱交換ブロック(10)内の磁気作業物質(12)に磁場を印加する磁石である。磁場変調部(16)は、環状の磁気冷凍モジュール(5)の中心(中央開口)に回転軸を有する回転機構である。磁場変調部(16)は、複数の熱交換ブロック(10)(つまり磁気冷凍モジュール(5))を回転させて、複数の熱交換ブロック(10)と磁場印加部(15)とを相対的に回転運動させることにより、複数の熱交換ブロック(10)内の磁気作業物質(12)に磁場変動を付与する。
【0022】
尚、以下の説明おいて、「軸方向」とは、磁場変調部(16)の回転軸の延びる方向のことであり、「径方向」とは、当該回転軸と直交する方向のことであり、「周方向」とは、当該回転軸を中心とする円の円周方向のことである。
【0023】
磁場印加部(15)は、
図3に示すように、熱交換ブロック(10)に対し軸方向に磁場を印加してもよいし、或いは、
図4に示すように、熱交換ブロック(10)に対し径方向に磁場を印加してもよい。磁場印加部(15)は、軸方向又は径方向において、1つ又は複数の熱交換ブロック(10)とオーバーラップする。磁場印加部(15)の配置数は、熱交換ブロック(10)の配置数等に応じて、1つ又は複数に設定される。磁場印加部(15)の配置数は、磁気回路の極数に等しい。熱交換ブロック(10)及び磁場印加部(15)は、同軸の周方向にそれぞれ均等配置されてもよい。
【0024】
本実施形態において、複数の熱交換ブロック(10)の回転は、環状に配列された複数の熱交換ブロック(10)、つまり磁気冷凍モジュール(5)を所定の角度範囲で往復させるスイング運動である。スイング運動では、軸方向から見て、時計回りの回転と、反時計回りの回転とが繰り返される。スイング運動の詳細については後述する。
【0025】
第1熱交換器(21)は、磁気作業物質(12)により加熱された熱媒体と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器であってもよい。或いは、第1熱交換器(21)は、磁気作業物質(12)により加熱された熱媒体と、図示を省略する利用ユニット(例えば、エアハンドリングユニット)を流れる二次冷媒とを熱交換させてもよい。
【0026】
第2熱交換器(22)は、磁気作業物質(12)により冷却された熱媒体と室外空気とを熱交換させる室外熱交換器であってもよい。或いは、第2熱交換器(22)は、磁気作業物質(12)により冷却された熱媒体と、図示を省略する熱源ユニット(例えばクーリングタワー)を流れる二次冷媒とを熱交換させてもよい。
【0027】
<熱媒体回路>
熱媒体回路(C)では、複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの内部流路(13A,13B)と、第1熱交換器(21)及び第2熱交換器(22)のそれぞれとが接続される。
【0028】
熱媒体回路(C)は、各熱交換ブロック(10)の内部流路(13A,13B)と第1熱交換器(21)との間に、複数の第1流路(51,53)と、第1集約流路(61,62)と、第1流路分配部(71,72)とを備える。複数の第1流路(51,53)は、各熱交換ブロック(10)の内部流路(13A,13B)と接続する。第1集約流路(61,62)は、第1熱交換器(21)に接続する。第1流路分配部(71,72)は、複数の第1流路(51,53)及び第1集約流路(61,62)にぞれぞれ接続する。第1流路分配部(71,72)は、複数の第1流路(51,53)に流れる熱媒体を第1集約流路(61,62)に集約するか、又は第1集約流路(61,62)に流れる熱媒体を複数の第1流路(51,53)に分配する。
【0029】
詳しくは、各熱交換ブロック(10)の内部流路(13A,13B)は、第2熱交換器(22)から第1熱交換器(21)に熱媒体が流れる第1内部流路(13A)と、第1熱交換器(21)から第2熱交換器(22)に熱媒体が流れる第2内部流路(13B)とを含む。複数の第1流路(51,53)は、第1内部流路(13A)の流出部と接続する第1流出路(51)と、第2内部流路(13B)の流入部と接続する第1流入路(53)とを含む。第1集約流路(61,62)は、第1熱交換器(21)の流入部に接続する第1集約流入路(61)と、第1熱交換器(21)の流出部に接続する第1集約流出路(62)とを含む。第1流路分配部(71,72)は、複数の第1流出路(51)及び第1集約流入路(61)にぞれぞれ接続する第1多方切換弁(71)と、複数の第1流入路(53)及び第1集約流出路(62)にぞれぞれ接続する第2多方切換弁(72)とを含む。第1多方切換弁(71)は、複数の第1流出路(51)に流れる熱媒体を第1集約流入路(61)に集約する。第2多方切換弁(72)は、第1集約流出路(62)に流れる熱媒体を複数の第1流入路(53)に分配する。第1多方切換弁(71)及び第2多方切換弁(72)は、例えば回転バルブ型多方切換弁であってもよい。第1多方切換弁(71)及び第2多方切換弁(72)は、一体に構成されてもよい。
【0030】
また、熱媒体回路(C)は、各熱交換ブロック(10)の内部流路(13A,13B)と第2熱交換器(22)との間に、複数の第2流路(52,54)と、第2集約流路(63,64)と、第2流路分配部(73,74)とを備える。複数の第2流路(52,54)は、各熱交換ブロック(10)の内部流路(13A,13B)と接続する。第2集約流路(63,64)は、第2熱交換器(22)に接続する。第2流路分配部(73,74)は、複数の第2流路(52,54)及び第2集約流路(63,64)にぞれぞれ接続する。第2流路分配部(73,74)は、複数の第2流路(52,54)に流れる熱媒体を第2集約流路(63,64)に集約するか、又は第2集約流路(63,64)に流れる熱媒体を複数の第2流路(52,54)に分配する。
【0031】
詳しくは、複数の第2流路(52,54)は、第1内部流路(13A)の流入部と接続する第2流入路(52)と、第2内部流路(13B)の流出部と接続する第2流出路(54)とを含む。第2集約流路(63,64)は、第2熱交換器(22)の流入部に接続する第2集約流入路(63)と、第2熱交換器(22)の流出部に接続する第2集約流出路(64)とを含む。第2流路分配部(73,74)は、複数の第2流出路(54)及び第2集約流入路(63)にぞれぞれ接続する第1逆止弁(73)と、複数の第2流入路(52)及び第2集約流出路(64)にぞれぞれ接続する第2逆止弁(74)とを含む。第1逆止弁(73)は、複数の第2流出路(54)に流れる熱媒体を第2集約流入路(63)に集約する。第2逆止弁(74)は、第2集約流出路(64)に流れる熱媒体を複数の第2流入路(52)に分配する。第1逆止弁(73)及び第2逆止弁(74)は、ヘッダ構造を有してもよい。第1逆止弁(73)及び第2逆止弁(74)は、一体に構成されてもよい。
【0032】
尚、第1流路(51,53)及び第2流路(52,54)は、例えば
図2に示すように、環状の磁気冷凍モジュール(5)の内周面で各熱交換ブロック(10)に接続されてもよい。
【0033】
また、磁気冷凍モジュール(5)と各熱交換器(21,22)との間で熱媒体を搬送するポンプ(23)は、例えば
図1に示すように、第1集約流入路(61)に設けてもよい。
【0034】
<磁気冷凍装置の運転動作>
図1に示す磁気冷凍システム(1)では、第1流路分配部(多方切換弁)(71,72)により、熱媒体を流す第1流路(51,53)を選択すると共に、当該流路制御動作に対応させて、磁場変調部(16)により各熱交換ブロック(10)の磁気作業物質(12)に磁場を印加したり除去したりする。これにより、例えば、第1熱交換器(21)では、磁気作業物質(12)により加熱された熱媒体と室内空気とを熱交換させることができると共に、第2熱交換器(22)では、磁気作業物質(12)により冷却された熱媒体と室外空気とを熱交換させることができる。すなわち、磁気冷凍システム(1)は、多方切換弁(71,72)及び磁場変調部(16)の動作を制御する制御部を備える。制御部は、例えば、マイクロコンピュータと、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリデバイス(具体的には半導体メモリ)とを用いて構成される。制御部は、多方切換弁(71,72)及び磁場変調部(16)のそれぞれと通信回線を介して接続される。
【0035】
以下、
図1を参照しながら、磁気冷凍システム(1)の運転動作について説明する。尚、
図1では、熱媒体の流れを矢印で示している。
【0036】
まず、第2熱交換器(22)から第2集約流出路(64)に流れ出た熱媒体は、第2逆止弁(74)により第2流入路(52)に分配され、励磁されている熱交換ブロック(10)の第1内部流路(13A)に選択的に流入し、発熱状態の磁気作業物質(12)と熱交換して加熱された後、第1流出路(51)から流れ出る。
【0037】
励磁されている熱交換ブロック(10)から第1流出路(51)に流れ出た熱媒体は、第1多方切換弁(71)により第1集約流入路(61)に集約され、ポンプ(23)を経て、第1熱交換器(21)に流入する。この熱媒体は、例えばクーリングタワー等の熱源ユニット(図示省略)を流れる二次冷媒と熱交換し、その後、第1熱交換器(21)から第1集約流出路(62)に流出する。
【0038】
第1熱交換器(21)から第1集約流出路(62)に流れ出た熱媒体は、第2多方切換弁(72)の制御により、消磁されている熱交換ブロック(10)の第2内部流路(13B)に選択的に流入し、吸熱状態の磁気作業物質(12)と熱交換して冷却された後、第2流出路(54)から流出する。
【0039】
消磁されている熱交換ブロック(10)から第2流出路(54)に流れ出た熱媒体は、第1逆止弁(73)により、第2集約流入路(63)に集約され、第2熱交換器(17)に流入する。この熱媒体は、例えばエアハンドリングユニット等の利用ユニット(図示省略)を流れる二次冷媒と熱交換し、その後、第2熱交換器(22)から第2集約流出路(64)に流出する。
【0040】
磁気冷凍システム(1)では、磁場変調部(16)により励磁したり消磁したりする熱交換ブロック(10)を選択的に変えながら、以上に説明した熱媒体の流れ制御が繰り返し行われる。
【0041】
尚、本実施可能では、高温側熱交換器となる第1熱交換器(21)と複数の熱交換ブロック(10)との間に、第1流路分配部(71,72)として、運転時に発熱する第1多方切換弁(71)及び第2多方切換弁(72)を配置し、効率の低下を抑制している。
【0042】
<スイング運動>
以下、
図5を参照しながら、磁場変調部(16)による熱交換ブロック(10)(磁気冷凍モジュール(5))の回転(スイング運動)について説明する。尚、
図5は、
図2に示すように4つの熱交換ブロック(10)の環状配列により磁気冷凍モジュール(5)が構成され、且つ、
図3に示すように2つの磁場印加部(15)(2極の磁気回路)が熱交換ブロック(10)に対し軸方向に磁場を印加する場合を例示する。各磁場印加部(15)は、熱交換ブロック(10)の1つに相当する面積に対し磁場印加を行う。
【0043】
図5の状態(a)~(e)に示すように、各熱交換ブロック(10)は周方向に往復運動(スイング運動)を行う。
図5の状態(b)、(c)の矢印は、状態(a)からの熱交換ブロック(10)の回転角(変位角)を示し、
図5の状態(d)、(e)の矢印は、状態(c)からの熱交換ブロック(10)の回転角(変位角)を示す。スイング運動の最大変位角は、時計回り、反時計回りのそれぞれについて、熱交換ブロック(10)の1つに相当する90°である。これにより、4つの熱交換ブロック(10)のうちの半数ずつが並列動作する。
図5には、状態(b)~(e)でドットを付した熱交換ブロック(10)について、スイング運動における磁場及び熱媒体流動の時間変化を合わせて示している。
図5の状態(b)、(d)、つまり、1つの熱交換ブロック(10)の一部が励磁される状態では熱媒体の搬送を停止してもよい。
図5に示すスイング運動では、スイング運動の1往復と、AMR(Active Magnetic Refrigerator)サイクルとが一致する。
【0044】
本実施形態において、熱交換ブロック(10)及び磁場印加部(15)の配置数は特に限定されない。例えば
図6に示すように、12個の熱交換ブロック(10)に対して、6個の磁場印加部(15)(6極の磁気回路)を配置してもよい。各磁場印加部(15)は、熱交換ブロック(10)の1つに相当する面積に対し磁場印加を行う。
【0045】
図6の状態(a)~(e)に示すように、各熱交換ブロック(10)は周方向に往復運動(スイング運動)を行う。
図6の状態(b)、(c)の矢印は、状態(a)からの熱交換ブロック(10)の回転角(変位角)を示し、
図6の状態(d)、(e)の矢印は、状態(c)からの熱交換ブロック(10)の回転角(変位角)を示す。スイング運動の最大変位角は、時計回り、反時計回りのそれぞれについて、熱交換ブロック(10)の1つに相当する30°である。これにより、12個の熱交換ブロック(10)のうちの半数ずつが並列動作する。
図6には、状態(b)~(e)でドットを付した熱交換ブロック(10)について、スイング運動における磁場及び熱媒体流動の時間変化を合わせて示している。
図6の状態(b)、(d)、つまり、1つの熱交換ブロック(10)の一部が励磁される状態では熱媒体の搬送を停止してもよい。
図6に示すスイング運動では、スイング運動の1往復と、AMRサイクルとが一致する。
【0046】
図6に示すスイング運動では、
図5に示すスイング運動と比べて、最大変位角が小さいので、磁場及び熱媒体流動の切り替えの高周波化、つまり出力の増大が容易になる。
【0047】
尚、
図6と同様の熱交換ブロック(10)及び磁場印加部(15)の配置構成において、
図7の状態(a)~(l)に示すように、スイング運動の最大変位角を時計回り、反時計回りのそれぞれについて、熱交換ブロック(10)の3つに相当する90°としてもよい。
図7の状態(b)~(g)の矢印は、状態(a)からの熱交換ブロック(10)の回転角(変位角)を示し、
図7の状態(h)~(l)の矢印は、状態(g)からの熱交換ブロック(10)の回転角(変位角)である。
【0048】
図7に示すスイング運動でも、12個の熱交換ブロック(10)のうちの半数ずつが並列動作する。
図7には、状態(a)~(l)でドットを付した熱交換ブロック(10)について、スイング運動における磁場及び熱媒体流動の時間変化を合わせて示している。
図7の状態(b)、(d)、(f)、(h)、(j)、(l)つまり、1つの熱交換ブロック(10)の一部が励磁される状態では熱媒体の搬送を停止してもよい。
図7に示すスイング運動では、スイング運動の1往復の間に、3回のAMRサイクルが行われる。
【0049】
図7に示すスイング運動では、
図6に示すスイング運動と比べて、スイング運動の1往復に対するAMRサイクル数が増えるので、磁場及び熱媒体流動の切り替えのさらなる高周波化、つまり出力のさらなる増大が可能になる。
【0050】
<ねじれ吸収部>
本実施形態では、熱交換ブロック(10)に磁場変調を付与するために、前述のように、熱交換ブロック(10)(磁気冷凍モジュール(5))を回転(スイング運動)させる。このため、熱交換ブロック(10)(内部流路(13A,13B))に接続される第1流路(51,53)及び第2流路(52,54)も熱交換ブロック(10)と共に回転する。
【0051】
従って、第1流路(51,53)と接続する第1流路分配部(多方切換弁)(71,72)を固定配置とする場合、各熱交換ブロック(10)と接続する第1流路(51,53)には、スイング運動に起因するねじれが生じてしまう。
【0052】
そこで、本実施形態では、
図1に示すように、第1流路(51,53)にねじれ吸収部(31)を設ける。ねじれ吸収部(31)が変形することによって、スイング運動に起因する第1流路(51,53)のねじれが吸収される。
【0053】
また、第2流路(52,54)と接続する第2流路分配部(逆止弁)(73,74)は、第2流路(52,54)(熱交換ブロック(10))と共に回転可能に構成してもよい。この場合、第2流路分配部(73,74)に第2集約流路(63,64)の一端が接続される一方、固定配置された第2熱交換器(22)に第2集約流路(63,64)の他端が接続されるため、第2集約流路(63,64)には、スイング運動に起因するねじれが生じてしまう。
【0054】
そこで、本実施形態では、
図1に示すように、第2集約流路(63,64)にねじれ吸収部(33)を設ける。ねじれ吸収部(33)が変形することによって、スイング運動に起因する第2集約流路(63,64)のねじれが吸収される。
【0055】
尚、第2流路分配部(73,74)は、固定配置としてもよい。この場合、各熱交換ブロック(10)と接続する第2流路(52,54)に、スイング運動に起因するねじれが生じてしまうので、第2集約流路(63,64)のねじれ吸収部(33)(
図1参照)に代えて、
図8に示すように、第2流路(52,54)にねじれ吸収部(32)を設ける。ねじれ吸収部(32)が変形することによって、スイング運動に起因する第2流路(52,54)のねじれが吸収される。
【0056】
或いは、
図8に示す構成において、第1流路(51,53)と接続する第1流路分配部(71,72)を、第1流路(51,53)(熱交換ブロック(10))と共に回転可能に構成してもよい。この場合、第1流路分配部(71,72)に第1集約流路(61,62)の一端が接続される一方、固定配置された第1熱交換器(21)に第1集約流路(61,62)の他端が接続される。このため、第1集約流路(61,62)には、スイング運動に起因するねじれが生じてしまうので、第1流路(51,53)のねじれ吸収部(31)(
図8参照)に代えて、
図9に示すように、第1集約流路(61,62)にねじれ吸収部(34)を設ける。ねじれ吸収部(34)が変形することによって、スイング運動に起因する第1集約流路(61,62)のねじれが吸収される。
【0057】
或いは、第1流路分配部(71,72)及び第2流路分配部(73,74)の両方を、第1流路(51,53)及び第2流路(52,54)(熱交換ブロック(10))と共に回転可能に構成してもよい。この場合、第1流路(51,53)及び第2流路(52,54)にはねじれ吸収部を設けずに、
図10に示すように、第1集約流路(61,62)にねじれ吸収部(34)を設けると共に第2集約流路(63,64)にねじれ吸収部(33)を設ける。ねじれ吸収部(34)及びねじれ吸収部(33)が変形することによって、スイング運動に起因する第1集約流路(61,62)及び第2集約流路(63,64)のねじれが吸収される。
【0058】
以上に説明した本実施形態のねじれ吸収部(31,32,33,34)は、熱媒体回路(C)に生じるねじれを吸収できるように変形可能であれば、構造や材質等は特に限定されない。ねじれ吸収部(31,32,33,34)の構造、材質等に応じて、熱交換ブロック(10)のスイング運動の最大変位角を設定してもよい。
【0059】
具体的には、ねじれが生じる第1流路(51,53)若しくは第2流路(52,54)又は第1集約流路(61,62)若しくは第2集約流路(63,64)の少なくとも一部分に、ねじれ吸収部(31,32,33,34)として、例えばビニールチューブやフレキシブル配管などの柔軟素材の配管を用いてもよい。この場合、ねじれが生じる流路の全体を柔軟素材の配管で構成してもよいし、又は、ねじれが生じる流路の一部に柔軟素材の配管を用い、残りの流路部分には金属配管を用いてもよい。或いは、ねじれが生じる流路を構成する金属配管の途中に、ねじれ吸収部(31,32,33,34)として、例えば蛇腹構造を有するゴムなどの素材で構成された伸縮継手を設けてもよい。
【0060】
<実施形態の特徴>
以上に説明したように、本実施形態において、磁気冷凍装置(1)は、複数の熱交換ブロック(10)と、少なくとも1つの磁場印加部(15)と、磁場変調部(16)と、第1熱交換器(21)と、第2熱交換器(22)と、熱媒体回路(C)とを備える。複数の熱交換ブロック(10)はそれぞれ、磁気作業物質(12)と、熱媒体が当該磁気作業物質(12)と熱交換して流れる内部流路(13A,13B)とを有する。複数の熱交換ブロック(10)は環状に配列される。磁場印加部(15)は、複数の熱交換ブロック(10)内の磁気作業物質(12)に磁場を印加する。磁場変調部(16)は、複数の熱交換ブロック(10)によって形成された環状の磁気冷凍モジュール(5)の中心を軸にして、複数の熱交換ブロック(10)を回転させて、複数の熱交換ブロック(10)と磁場印加部(15)とを相対的に回転運動させることにより、複数の熱交換ブロック(10)内の磁気作業物質(12)に磁場変動を付与する。熱媒体回路(C)では、複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの内部流路(13A,13B)と、第1熱交換器(21)及び第2熱交換器(22)のそれぞれとが接続される。複数の熱交換ブロック(10)の回転は、環状に配列された複数の熱交換ブロック(10)を所定の角度範囲で往復させるスイング運動である。
【0061】
本実施形態の磁気冷凍装置(1)では、熱媒体回路(C)にねじれ吸収部(31,32,33,34)が設けられ、ねじれ吸収部(31,32,33,34)が変形することによって、スイング運動に起因する熱媒体回路(C)のねじれを吸収する。このため、回転部分と固定部分との間に配置するシール機構を削減した簡単な流路構造で熱媒体の漏れを抑制することができる。
【0062】
本実施形態の磁気冷凍装置(1)において、内部流路(13A,13B)と第1熱交換器(21)との間の熱媒体回路(C)は、複数の第1流路(51,53)と、第1集約流路(61,62)と、第1流路分配部(71,72)とを備えてもよい。複数の第1流路(51,53)は、複数の熱交換ブロック(10)のぞれぞれの内部流路(13A,13B)と接続する。第1集約流路(61,62)は、第1熱交換器(21)に接続する。第1流路分配部(71,72)は、複数の第1流路(51,53)及び第1集約流路(61,62)にぞれぞれ接続する。第1流路分配部(71,72)は、複数の第1流路(51,53)に流れる熱媒体を第1集約流路(61,62)に集約するか、又は第1集約流路(61,62)に流れる熱媒体を複数の第1流路(51,53)に分配する。また、内部流路(13A,13B)と第2熱交換器(22)との間の熱媒体回路(C)は、複数の第2流路(52,54)と、第2集約流路(63,64)と、第2流路分配部(73,74)とを備えてもよい。複数の第2流路(52,54)は、複数の熱交換ブロック(10)のそれぞれの内部流路(13A,13B)と接続する。第2集約流路(63,64)は、第2熱交換器(22)に接続する。第2流路分配部(73,74)は、複数の第2流路(52,54)及び第2集約流路(63,64)にぞれぞれ接続する。第2流路分配部(73,74)は、複数の第2流路(52,54)に流れる熱媒体を第2集約流路(63,64)に集約するか、又は第2集約流路(63,64)に流れる熱媒体を複数の第2流路(52,54)に分配する。
【0063】
以上に説明した熱媒体回路(C)の構成において、第1流路分配部(71,72)及び第2流路分配部(73,74)のうちの少なくとも一方が固定される場合、固定される流路分配部(71,72,73,74)と接続する複数の第1流路(51,53)又は複数の第2流路(52,54)にねじれ吸収部(31,32)が配置されてもよい。これにより、熱交換ブロック(10)のスイング運動と共に第1流路(51,53)又は第2流路(52,54)が回転しても、第1流路(51,53)又は第2流路(52,54)に生じるねじれを吸収することができる。また、固定される流路分配部(71,72,73,74)として、可動シール機構を持たない弁を用いることができるので、製造コストを低減できる。
【0064】
或いは、以上に説明した熱媒体回路(C)の構成において、第1流路分配部(71,72)及び第2流路分配部(73,74)のうちの少なくとも一方が、複数の熱交換ブロック(10)と同期してスイング運動を行う場合、スイング運動を行う流路分配部(71,72,73,74)と接続する第1集約流路(61,62)又は第2集約流路(63,64)にねじれ吸収部(33,34)が配置されてもよい。これにより、第1集約流路(61,62)及び第2集約流路(63,64)のそれぞれの一端が第1熱交換器(21)及び第2熱交換器(22)に固定されていても、第1集約流路(61,62)又は第2集約流路(63,64)に生じるねじれを吸収することができる。また、スイング運動を行う流路分配部(71,72,73,74)として、可動シール機構を持たない弁を用いることができるので、製造コストを低減できる。
【0065】
(その他の実施形態)
前記実施形態(変形例を含む。以下同じ。)では、
図1、
図8~
図10に示す熱媒体回路(C)にねじれ吸収部(31,32,33,34)を設けたが、熱媒体回路の構成が特に限定されないことは言うまでもない。すなわち、熱交換ブロックの回転(スイング運動)と共に回転する部分(つまり回転部分)と、熱交換器と共に固定される部分(つまり固定部分)とを含む熱媒体回路であれば、熱媒体回路の少なくとも1箇所に前記実施形態と同様のねじれ吸収部を設けることにより、シール機構を削減した簡単な流路構造で熱媒体の漏れを抑制できる。
【0066】
また、前記実施形態では、ねじれが生じる全ての流路にねじれ吸収部(31,32,33,34)を配置したが、ねじれが生じる流路の一部については、可動シール機構を配置してもよい。例えば、熱交換ブロックと、熱交換ブロックと接続する各流路と、流路分配部とが同軸でスイング運動する場合に、流路分配部と集約流路との間に可動シール機構を配置してもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、固体冷凍装置である磁気冷凍装置について例示してきたが、固体冷凍装置は、磁気作業物質(12)に磁気熱量効果を誘発する磁気冷凍以外の他の方式を用いたものであってもよい。尚、本開示において、固体冷媒物質には、柔軟結晶などの液体と固体の中間の性質を有するものも含む。
【0068】
他の方式の固体冷凍装置としては、例えば、1)固体冷媒物質に電気熱量効果を誘発する方式、2)固体冷媒物質に圧力熱量効果を誘発する方式、3)固体冷媒物質に弾性熱量効果を誘発する方式のものが挙げられる。
【0069】
1)の方式の固体冷凍装置では、力場印加部(以下、誘発部ともいう)が固体冷媒物質に電場変動を付与する。これにより、固体冷媒物質が強誘電体から常誘電体へ相転移するなどして、固体冷媒物質が発熱又は吸熱する。
【0070】
2)の方式の固体冷凍装置では、誘発部が固体冷媒物質に圧力変動を付与することによって、固体冷媒物質が相転移して発熱又は吸熱する。
【0071】
3)の方式の固体冷凍装置では、誘発部が固体冷媒物質に応力変動を付与することによって、固体冷媒物質が相転移して発熱又は吸熱する。
【0072】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。また、以上に述べた「第1」、「第2」、・・・という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上に説明したように、本開示は、固体冷凍装置、特に磁気冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 磁気冷凍装置(固体冷凍装置)
5 磁気冷凍モジュール(環)
10 熱交換ブロック
12 磁気作業物質(固体冷媒物質)
13A 第1内部流路(内部流路)
13B 第2内部流路(内部流路)
15 磁場印加部(力場印加部)
16 磁場変調部(力場変調部)
21 第1熱交換器
22 第2熱交換器
31,32,33,34 ねじれ吸収部
51 第1流出路(第1流路)
52 第2流入路(第2流路)
53 第1流入路(第1流路)
54 第2流出路(第2流路)
61 第1集約流入路(第1集約流路)
62 第1集約流出路(第1集約流路)
63 第2集約流入路(第2集約流路)
64 第2集約流出路(第2集約流路)
71 第1多方切換弁(第1流路分配部)
72 第2多方切換弁(第1流路分配部)
73 第1逆止弁(第2流路分配部)
74 第2逆止弁(第2流路分配部)
C 熱媒体回路