(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051555
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】防音構造体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/172 20060101AFI20240404BHJP
G10K 11/162 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G10K11/172
G10K11/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157781
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】福山 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】久米田 健太
(72)【発明者】
【氏名】中島 友則
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA02
5D061AA07
5D061AA12
5D061AA22
5D061AA26
5D061BB24
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】十分な防音性が得られ、曲面状の載置面にも容易に安定的に載置できる薄型で軽量の防音構造体を提供する。
【解決手段】防音構造体11が遮音構造部1と多孔質層10とを有する。遮音構造部1は、弾性を有する膜部2と、膜部2に立設され弾性を有する支持壁部3と、膜部2に立設されている錘部4とを有する。膜部2は支持壁部3によって複数の区画5に分けられており、複数の区画5の全てまたは一部の内部に錘部4がそれぞれ位置し、内部に錘部4が位置している区画5では、1つの区画5に1つの錘部4が配置されている。支持壁部3の高さH1は、錘部4の高さH2よりも大きい。錘部4の各々が、弾性を有するばね部4aと、ばね部4aよりも質量が大きい質量部4bとを有するばねマス共振器を構成している。多孔質層10は、支持壁部3および錘部4を挟んで膜部2と対向する位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音構造部と多孔質層とを有し、
前記遮音構造部は、弾性を有する膜部と、前記膜部に立設されており弾性を有する支持壁部と、前記膜部に立設されている錘部と、を有し、前記膜部は前記支持壁部によって複数の区画に分けられており、複数の前記区画の全ての内部に、または複数の前記区画のうちの一部の区画の内部に、前記錘部がそれぞれ位置しており、内部に前記錘部が位置している前記区画においては、1つの前記区画に1つの前記錘部が配置されており、前記支持壁部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは、前記錘部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さよりも大きく、前記錘部の各々が、弾性を有するばね部と、前記ばね部よりも質量が大きい質量部とを有するばねマス共振器を構成しており、
前記多孔質層は、前記支持壁部および前記錘部を挟んで前記膜部と対向する位置に配置されていることを特徴とする、防音構造体。
【請求項2】
前記膜部と前記支持壁部と前記ばね部はいずれも、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなる、請求項1に記載の防音構造体。
【請求項3】
前記膜部と前記支持壁部と前記ばね部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率が0.01MPa以上100MPa以下である、請求項1または2に記載の防音構造体。
【請求項4】
前記膜部と前記支持壁部と前記ばね部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.01以上0.50以下である、請求項3に記載の防音構造体。
【請求項5】
前記ばね部は、前記錘部の前記膜部に取り付けられている側に位置し、前記質量部は、前記錘部の前記膜部に取り付けられている側と反対側に位置する、請求項1または2に記載の防音構造体。
【請求項6】
前記質量部は前記ばね部よりも体積が大きい、請求項5に記載の防音構造体。
【請求項7】
前記質量部は前記ばね部よりも密度が大きい材料からなる、請求項1または2に記載の防音構造体。
【請求項8】
遮音構造部と多孔質層とを有し、
前記遮音構造部は、弾性を有する膜部と、前記膜部に立設されており弾性を有する支持壁部と、前記膜部に立設されている錘部と、を有し、前記膜部は前記支持壁部によって複数の区画に分けられており、複数の前記区画の全ての内部に、または複数の前記区画のうちの一部の区画の内部に、前記錘部がそれぞれ位置しており、内部に前記錘部が位置している前記区画においては、1つの前記区画に1つの前記錘部が配置されており、前記支持壁部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは、前記錘部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さよりも大きく、前記膜部がばね部として、前記錘部が質量部としてばねマス共振器を構成しており、
前記多孔質層は、前記支持壁部および前記錘部を挟んで前記膜部と対向する位置に配置されていることを特徴とする、防音構造体。
【請求項9】
前記膜部と前記支持壁部はいずれも、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなる、請求項8に記載の防音構造体。
【請求項10】
前記膜部と前記支持壁部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率が0.01MPa以上100MPa以下である、請求項8または9に記載の防音構造体。
【請求項11】
前記膜部と前記支持壁部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.01以上0.50以下である、請求項10に記載の防音構造体。
【請求項12】
前記多孔質層は、フェルト、発泡フォーム、およびグラスウールのうちのいずれかを含む、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項13】
前記多孔質層の厚さは、1mm以上70mm以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項14】
前記多孔質層の密度は、0.001g/cm3以上1g/cm3以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項15】
前記多孔質層の流れ抵抗は、1.0×102Ns/m-3以上1.0×107Ns/m-3以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項16】
前記多孔質層のヤング率は、0.01MPa以上1.0MPa以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項17】
前記支持壁部は、前記膜部に直交する方向に延びるとともに前記膜部に平行な第1の方向に延びる複数の第1壁部と、前記膜部に直交する方向に延びるとともに前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる複数の第2壁部と、を含む、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項18】
前記支持壁部は、個々の前記区画を画定する円形、楕円形または長円形の横断面形状を有する円筒状、あるいは、個々の前記区画を画定する多角形の横断面形状を有する角筒状である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項19】
各々の前記区画の面積は100mm2以上1000mm2以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項20】
前記膜部の面積1000cm2あたり10個以上1000個以下の前記区画が設けられている、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項21】
前記支持壁部の板厚は0.5mm以上5.0mm以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項22】
前記膜部の膜厚は0.1mm以上3.0mm以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項23】
前記膜部に直交する方向の高さが5mm以上20mm以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項24】
前記支持壁部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは5mm以上20mm以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項25】
前記錘部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは1mm以上である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項26】
前記膜部のデュロメータA硬さは50以上であり、前記支持壁部のデュロメータA硬さは1以上90以下である、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項27】
前記膜部と前記多孔質層とは互いに平行に位置している、請求項1または8に記載の防音構造体。
【請求項28】
前記多孔質層と前記遮音構造部とは互いに非固定で重なり合うように配置されている、請求項1または8に記載の防音構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅、オフィスビル、ホテル等の建物の室内においては、建物の外部の自動車、鉄道、航空機、船舶等からの屋外騒音や、建物内のその室の外部で発生する設備騒音や人声を遮断して、その室の用途に適した静謐性が要求される。また、自動車、鉄道、航空機、船舶等の乗物の内部においては、風切り音やエンジン音を遮断して、乗員に静粛で快適な空間を提供するために騒音を低減することが望まれている。そのため、建物や乗物の外部から内部への騒音や振動の伝搬、また建物や乗物の内部における室外から室内への騒音や振動の伝搬を遮断する手段、すなわち、防音性の高い部材が求められている。近年では、建物においては高層化等に伴い軽量の防音部材が求められており、また、乗物においてもエネルギー効率向上のため軽量の防音部材が求められている。乗物や建物における防音壁等を形成する防音構造体の例が、特許文献1~4に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された発明では、複数の個々のセルに分割された剛性のフレームと、フレキシブルな材料のシートと、複数の重りとを備えている音響減衰パネルにおいて、各重りは各セルにそれぞれ重りが設けられるようにフレキシブルな材料のシートに固定されており、減衰された音響は重りの質量の適切な選択により制御される。
【0004】
特許文献2に記載された発明では、弾性を有するシートと、シートを保持するとともにシートを区画部に区画する支持部とを備えている防音材において、区画部におけるシートの剛性とシートの面密度との関係が規定されている。
【0005】
特許文献3に記載された発明の遮音材は、平板状の基板部と、基板部と連結し所定の共振周波数を有する複数の共振部とを備えている構造体であって、複数の共振部のそれぞれは、錘部と、錘部を基板部と連結する連結部とを有しており、基板部に垂直な方向から見た投影図において、共振部の重心が基板部と連結部との接合領域の外側に位置するように構成されている。
【0006】
特許文献4に記載された発明の振動低減装置は、車体に装着されて車体を通じて伝達される振動を遮断する音響メタ構造を有し、車体に装着されて一定空間を一定領域に区画する十字形状のフレームと、フレームによって区画される各領域のコーナー部に構成されそれぞれの固有振動数を有するように構成されて車体からフレームを通じて伝達される振動を遮断する振動子とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-250474号公報
【特許文献2】国際公開WO2019/022245号公報
【特許文献3】特開2021-152584号公報
【特許文献4】特開2020-91481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている音響減衰パネルは、柔軟でない剛性のフレームを有しており、この剛性のフレームを介してシートに振動が伝達されるため、十分な遮音性が得られないおそれがある。また、剛性のフレームを載置する載置面が曲面状または凹凸を有する場合には、音響減衰パネルを安定して保持できない可能性がある。特に、一般的な乗物(例えば自動車)のパネルには曲面状または凹凸を有する部分が多いため、乗物用の防音材として簡便に使用することが困難である。また、剛性のフレームは質量が大きく、防音材による質量の増大が問題になる場合がある。
【0009】
特許文献2に記載されている防音材は、支持部の高さ、すなわちシートからそのシートに直交する方向に延びる高さが高く、好ましくは25mm以上である。このように高さが高い支持部によってシートを安定的に支持するために支持部は剛性を有することが好ましく、その結果、支持部を介して振動が伝達されるため十分な防音性が得られないおそれがあるとともに、乗物(例えば自動車)のパネル等の曲面状または凹凸を有する載置面に載置することが困難である。また、このように高さが高い支持部が防音材全体の大型化および重量化を招き、乗物のパネル等に載置すると、乗物の内部において防音材が大きなスペースを占めてスペース効率を低下させ、他部材の設置の妨げになることや、乗員の邪魔になることが懸念される。
【0010】
特許文献3に記載されている遮音材は、遮音効果を発揮する機能部分である共振部が支持壁等に覆われることなく露出しており、この共振部に他の部材や人体が接触すると遮音性が低下または変化するおそれがある。従って、共振部の周囲に大きな空間を設ける必要があり、スペース効率が低下する。
【0011】
特許文献4に記載されている振動低減装置は、膜部を有しておらず、複数の振動子とそれらを繋ぐフレームとからなる。従って、特許文献3の遮音材と同様に、遮音効果を発揮する機能部分である振動子が露出しており、この振動子に他の部材や人体が接触すると遮音性が低下または変化するおそれがある。また、振動低減装置の構造的な最低限の強度を確保するために、フレームが剛性を有することが求められる。その結果、フレームを介して振動が伝達されるため十分な遮音性が得られないおそれがあるとともに、乗物(例えば自動車)のパネル等の曲面状または凹凸を有する載置面に載置することが困難である。
【0012】
そこで、本発明の目的は、十分な防音性が得られるとともに、建物や機械装置や乗物(例えば自動車)のパネル等の曲面状または凹凸を有する載置面にも容易に安定的に載置することができる薄型かつ軽量の防音構造体であって、特に1000Hz以下の低周波数領域での良好な防音性を有する防音構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の防音構造体は、遮音構造部と多孔質層とを有し、前記遮音構造部は、弾性を有する膜部と、前記膜部に立設されており弾性を有する支持壁部と、前記膜部に立設されている錘部と、を有し、前記膜部は前記支持壁部によって複数の区画に分けられており、複数の前記区画の全ての内部に、または複数の前記区画のうちの一部の区画の内部に、前記錘部がそれぞれ位置しており、内部に前記錘部が位置している前記区画においては、1つの前記区画に1つの前記錘部が配置されており、前記支持壁部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは、前記錘部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さよりも大きく、前記錘部の各々が、弾性を有するばね部と、前記ばね部よりも質量が大きい質量部とを有するばねマス共振器を構成しており、前記多孔質層は、前記支持壁部および前記錘部を挟んで前記膜部と対向する位置に配置されていることを特徴とする。
なお、ここで言う弾性とは、外部から与えられた力によって変形した固体物質が、外力を取り除いた際に元の形状に復元する性質を指し、エネルギー弾性とゴム弾性(エントロピー弾性)とを含む。ここでは、エネルギー弾性とゴム弾性(エントロピー弾性)の少なくとも一方を有する場合を「弾性を有する」と称している。
前記膜部と前記支持壁部と前記ばね部はいずれも、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなるものであってよい。
前記膜部と前記支持壁部と前記ばね部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率が0.01MPa以上100MPa以下であってよい。また、前記膜部と前記支持壁部と前記ばね部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.01以上0.50以下の弾性体からなるものであってよい。
具体的には、膜部と支持壁部とばね部の弾性は、JISK7244に準じて、動的粘弾性測定装置の引張または圧縮モードで周波数依存性を測定し、23℃基準のマスターカーブを求めることで得られる動的貯蔵弾性率(E’)で評価されるものであり、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.01MPa以上100MPa以下であるものとする。さらに、より好ましくは、前記膜部と前記支持壁部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.05MPa以上50MPa以下で、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.05以上0.45以下の弾性体からなるものであってよい。
前記ばね部は、前記錘部の前記膜部に取り付けられている側に位置し、前記質量部は、前記錘部の前記膜部に取り付けられている側と反対側に位置していてよい。
前記質量部は前記ばね部よりも体積が大きくてよい。
前記質量部は前記ばね部よりも密度が大きい材料からなるものであってよい。
本発明のもう1つの防音構造体は、遮音構造部と多孔質層とを有し、前記遮音構造部は、弾性を有する膜部と、前記膜部に立設されており弾性を有する支持壁部と、前記膜部に立設されている錘部と、を有し、前記膜部は前記支持壁部によって複数の区画に分けられており、複数の前記区画の全ての内部に、または複数の前記区画のうちの一部の区画の内部に、前記錘部がそれぞれ位置しており、内部に前記錘部が位置している前記区画においては、1つの前記区画に1つの前記錘部が配置されており、前記支持壁部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは、前記錘部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さよりも大きく、前記膜部がばね部として、前記錘部が質量部としてばねマス共振器を構成しており、前記多孔質層は、前記支持壁部および前記錘部を挟んで前記膜部と対向する位置に配置されていることを特徴とする。
前記膜部と前記支持壁部はいずれも、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなるものであってよい。
前記膜部と前記支持壁部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率が0.01MPa以上100MPa以下でであってよい。また、前記膜部と前記支持壁部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.01以上0.50以下の弾性体からなるものであってよい。より好ましくは、前記膜部と前記支持壁部はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.05MPa以上50MPa以下で、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.05以上0.45以下の弾性体からなるものであってよい。
前記多孔質層は、フェルト、発泡フォーム、およびグラスウールのうちのいずれかを含んでいてよい。
前記多孔質層の厚さは、1mm以上70mm以下であってよい。
前記多孔質層の密度は、0.001g/cm3以上1g/cm3以下であってよい。
前記多孔質層の流れ抵抗は、1.0×102Ns/m-3以上1.0×107Ns/m-3以下であってよい。
前記多孔質層のヤング率は、0.01MPa以上1.0MPa以下であってよい。
前記支持壁部は、前記膜部に直交する方向に延びるとともに前記膜部に平行な第1の方向に延びる複数の第1壁部と、前記膜部に直交する方向に延びるとともに前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる複数の第2壁部と、を含んでいてよい。
前記支持壁部は、個々の前記区画を画定する円形、楕円形または長円形の横断面形状を有する円筒状、あるいは、個々の前記区画を画定する多角形の横断面形状、具体的には正方形や正五角形や正六角形の横断面形状を有する角筒状であってよい。
各々の前記区画の面積は100mm2以上1000mm2以下であってよい。
前記膜部の面積1000cm2あたり10個以上1000個以下の前記区画が設けられていてよい。さらに、前記膜部の面積1000cm2あたり50個以上500個以下の前記区画が設けられていてよい。
前記支持壁部の板厚は0.5mm以上5.0mm以下であってよい。さらに、前記支持壁部の板厚は1.0mm以上3.0mm以下であってよい。
前記膜部の膜厚は0.1mm以上3.0mm以下であってよい。
前記膜部に直交する方向の高さが5mm以上20mm以下であってよい。
前記支持壁部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは5mm以上20mm以下であってよく、部分的に高さが異なっていてもよい。
前記錘部の、前記膜部に直交する方向に延びる高さは1mm以上であってよい。
前記膜部のデュロメータA硬さは、50以上であってよく、前記支持壁部のデュロメータA硬さは、1以上90以下であってよい。デュロメータA硬さは、JIS K 6253-3に準じて測定することで得ることができる。
前記膜部と前記多孔質層とは互いに平行に位置していてよい。
前記多孔質層と前記遮音構造部とは互いに非固定で重なり合うように配置されていてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、十分な防音性が得られるとともに、建物や機械装置や乗物(例えば自動車)のパネル等の曲面状または凹凸を有する載置面にも容易に安定的に載置することができる薄型かつ軽量の防音構造体であって、特に1000Hz以下の低周波数領域での良好な防音性を有する防音構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)は本発明の第1の実施形態の防音構造体の斜視図であり、(B)はその上下を反転したA-A線断面図である。
【
図2】(A)は
図1に示す防音構造体の1つの区画の分解斜視図であり、(B)はその分解正面図である。
【
図3】(A)は本発明の第1の実施形態の変形例の防音構造体の斜視図であり、(B)はその上下を反転したA-A線断面図である。
【
図4】(A)は本発明の第1の実施形態の他の変形例の防音構造体の断面図であり、(B)はその防音構造体の錘部の斜視図である。
【
図5】(A)は本発明の第1の実施形態のさらに他の変形例の防音構造体の断面図であり、(B)はその防音構造体の錘部の斜視図である。
【
図6】(A)は本発明の第2の実施形態の防音構造体の斜視図であり、(B)はその上下を反転したA-A線断面図である。
【
図7】(A)は本発明の第2の実施形態の変形例の防音構造体の断面図であり、(B)はその防音構造体の錘部の斜視図である。
【
図8】(A)は本発明の防音構造体の遮音構造部の1つの区画を模式的に示す平面図であり、(B)は複数の区画を模式的に示す平面図である。
【
図9】(A)は本発明の防音構造体の遮音構造部の他の例の1つの区画を模式的に示す平面図であり、(B)は複数の区画を模式的に示す平面図である。
【
図10】(A)は本発明の防音構造体の遮音構造部のさらに他の例の1つの区画を模式的に示す平面図であり、(B)は複数の区画を模式的に示す平面図である。
【
図11】(A)は本発明の防音構造体の遮音構造部のさらに他の例の1つの区画を模式的に示す平面図であり、(B)は複数の区画を模式的に示す平面図である。
【
図12】(A)は本発明の防音構造体の遮音構造部のさらに他の例の1つの区画を模式的に示す平面図であり、(B)は複数の区画を模式的に示す平面図である。
【
図13】本発明の実施例1の防音構造体が鉄板に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図14】(A)~(C)は本発明の実施例1~2および比較例1~5の遮音性を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施例2の防音構造体が鉄板に取り付けられた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1(A)は本発明の第1の実施形態の防音構造体11の斜視図であり、
図1(B)はその防音構造体11の上下を反転して
図1(A)のA-A線で切断した断面図である。防音構造体11は、遮音構造部1と多孔質層10とを有している。遮音構造部1は、弾性を有するシート状の膜部2と、膜部2から実質的に垂直に立設されている支持壁部3と、膜部2から実質的に垂直に立設されている錘部4と、を有している。多孔質層10は、通気性を有している材料からなるシート状の部材である。
【0017】
遮音構造部1の詳細な構成について説明する。遮音構造部1の膜部2は支持壁部3によって複数の区画(単位構造)5に分けられている。複数の区画5の内部に錘部4がそれぞれ位置しており、内部に錘部4が位置している区画5においては、1つの区画5内に1つの錘部4が位置している。
図2(A)は防音構造体11の1つの区画5の分解斜視図であり、
図2(B)はその分解正面図である。支持壁部3の、膜部2から、膜部2に直交する方向に延びる高さH1は、錘部4の、膜部2から、膜部2に直交する方向に延びる高さH2よりも大きい。錘部4の各々が、弾性を有するばね部4aと、ばね部4aよりも質量が大きい質量部(マス部)4bとを有するばねマス共振器を構成している。ここで言う弾性とは、外部から与えられた力によって変形した固体物質が、外力を取り除いた際に元の形状に復元する性質を指し、エネルギー弾性とゴム弾性(エントロピー弾性)とを含む。ここでは、エネルギー弾性とゴム弾性(エントロピー弾性)の少なくとも一方を有する場合を「弾性を有する」と称している。
【0018】
本実施形態の支持壁部3は、膜部2に平行な第1の方向D1に延びる複数の第1壁部3aと、第1の方向D1に直交する第2の方向D2に延びる複数の第2壁部3bと、を含む。具体的には、複数の第1壁部3aが平行に並ぶとともに、複数の第2壁部3bが平行に並んでおり、第1壁部3aと第2壁部3bとは交点において一体化している。こうして複数の第1壁部3aと複数の第2壁部3bとが格子構造を構成しており、第1壁部3aと第2壁部3bとによって仕切られる平面形状が正方形の複数の区画5がマトリクス状に並んでいる。言い替えると、支持壁部3は、個々の区画5を画定する正方形の横断面形状を有する角筒が複数並べられた構造である。支持壁部3は、ゴム、エラストマー、樹脂発泡体などの柔軟材料からなることが好ましい。ここで言う柔軟材料とは、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかである。
【0019】
本実施形態の錘部4の、膜部2に取り付けられている側の部分がばね部4aであり、膜部2に取り付けられている側と反対側の部分が、ばね部4aよりも質量が大きい質量部4bである。
図1,2に示す例では、ばね部4aと質量部4bとは同じ形状で同じ寸法を有しているが、材料が異なっている。ばね部4aは柔軟材料からなり、質量部4bは、ばね部4aを構成する材料よりも密度が大きい材料からなる。このばね部4aがばねとして機能し、質量部4bがマスとして機能するばねマス共振器が構成されている。なお、錘部4のばね部4aとともに、膜部2もばねマス共振器のばねの一部として機能する場合もある。さらに、膜部2と支持壁部3とに囲まれている空間内の空気が、ばねマス共振器のばねの一部(空気ばね)として機能する場合もある。ばね部4も柔軟材料、すなわちエネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなることが好ましい。
【0020】
本実施形態の遮音構造部1によると、膜部2の振動が、錘部4のばね部4aと質量部4bとが構成しているばねマス共振器の作用により制御される。特に、特定の周波数域(例えば、自動車におけるロードノイズの主な周波数帯である1000Hz以下の周波数)において、膜振動が大幅に低減され、その結果、膜部2からの放射音が小さくなり、高い遮音性が発揮される。
【0021】
本実施形態の遮音構造部1の区画5は、膜部2の面積1000cm2あたり10個以上1000個以下設けられることが好ましく、50個以上500個以下設けられることがより好ましい。仮に、区画5が少なすぎると、遮音構造部1全体を複数の区画5に分割してそれぞれの区画毎に遮音効果を発現させることの作用効果が乏しく、遮音構造部1全体の遮音性が低くなるおそれがある。一方、区画5が多すぎると防音構造体11全体の重量が増加するおそれがある。各区画5のそれぞれの平面形状の面積は100mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、200mm2以上800mm2以下であることがより好ましい。仮に、各区画5のそれぞれの平面形状の面積が小さすぎると、内部に錘部4を配置することが難しくなるおそれがあり、一方、面積が大きすぎると、膜部2に対する錘部4の効果が乏しく、遮音性が低くなるおそれがある。遮音構造部1全体の、膜部2に直交する方向の高さは、5mm以上20mm以下であることが好ましい。仮に遮音構造部1全体の高さが低すぎると、錘部4がばねマス共振器として十分な高さを持たなくなるおそれがあり、一方、高すぎると防音構造体11全体の重量が増加するおそれがある。
【0022】
本実施形態の防音構造体11の遮音構造部1の膜部2と支持壁部3とばね部4aはいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.01MPa以上100MPa以下で、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接(tanδ)が0.01以上0.50以下であり、好ましくは23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.05MPa以上50MPa以下で、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接(tanδ)が0.05以上0.50以下である弾性体からなる。動的貯蔵弾性率(E’)および損失正接(tanδ)は、動的粘弾性試験機を用いて、23℃基準のマスターカーブを作成することで求められる。仮に、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.01MPa未満であると、対象とする周波数帯の遮音性が悪化するおそれがあり、膜部2や支持壁部3の形状保持性も悪化するおそれがある。23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が100MPaより大きいと、遮音対象とする周波数帯の振動が悪化するおそれがあり、遮音構造部1が剛直になり設置性も悪化するおそれがある。膜部2と支持壁部3とは同じ材料で形成されていても、異なる材料で形成されていてもよい。膜部2も柔軟材料、すなわちエネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなることが好ましい。
【0023】
膜部2は、錘部4が取り付けられるため、硬めの弾性膜であることが好ましい。膜部2の動的貯蔵弾性率(E’)は15MPa以上であることが好ましく、厚さ(膜厚)は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm程度であることがより好ましい。仮に、膜部2の厚さが0.1mm未満であると、遮音対象とする周波数帯の振動が悪化するおそれがあり、膜部2の厚さが3.0mmより大きいと、防音構造体11全体の厚さや重量が増加するおそれがある。膜部2の材料は、JIS K6253によるデュロメータA硬さが50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましい。膜部2のデュロメータA硬さが50より小さいと、遮音対象とする周波数帯の振動が悪化するおそれがある。そして、膜部2の剛性kは、動的貯蔵弾性率E’と膜部2の断面積Aと膜部2の厚さLとから、k=E’×A/Lと表され、剛性の評価対象とする膜部2の面積が1000cm2である時に、剛性kが106N/mm以上109N/mm以下であることが好ましく、3×106N/mm以上108N/mm以下であることがより好ましい。膜部2の面積が1000cm2であるときの剛性が106N/mm未満であると、遮音対象とする周波数帯の振動が悪化するおそれがあり、109N/mmより大きいと、遮音構造部1が剛直になり設置性が悪化するおそれがある。
【0024】
膜部2の材料としては、架橋(加硫)ゴム、熱可塑性エラストマー、プラスチックが挙げられる。架橋(加硫)ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)およびエチレン-ブテン-ジエンゴム(EBDM)等のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エチレン-アクリルゴム(AEM)、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVA)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、多硫化ゴム(T)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)およびフッ化シリコーンゴム(FVMQ)などのシリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)等の各種ゴム材料を架橋(加硫)させたものが挙げられる。これらの架橋(加硫)ゴムは、単独で用いることもでき、または2種類以上の組み合わせで用いることもできる。なお、架橋(加硫)方式としては、例えば、架橋剤(加硫剤)として、有機過酸化物、フェノール樹脂、オキシム化合物、イオウ、イオウ系化合物、ポリアミン化合物を用いて、加熱により架橋(加硫)させる方法や、電子線を照射して架橋させる方法が挙げられる。なお、架橋(加硫)ゴムには、一般にゴム配合剤として使用される各種公知の配合剤(カーボンブラック、シリカ等の補強剤、炭酸カルシウムなどの充填剤、パラフィンオイル、可塑剤等の軟化剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、防カビ剤、受酸剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等)が配合されていてよい。
【0025】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、またはそれらを含む複合樹脂などが挙げられる。
【0026】
具体的には、膜部2の材料は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、熱可塑性オレフィン系エラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどであることが好ましい。
【0027】
支持壁部3は、膜部2を支持可能な範囲で柔らかい柔軟材料からなることが好ましい。支持壁部3の板厚は0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。仮に支持壁部3の板厚が0.5mm未満であると、遮音構造部1の形状保持性が悪化するおそれがあり、支持壁部3の板厚が5.0mmより大きいと、遮音対象となる周波数帯の遮音性が悪化するおそれがあり、防音構造体11全体の重量が増加するおそれがある。支持壁部3の材料は、JIS K6253によるデュロメータA硬さが1以上90以下のものであることが好ましく、10以上70以下のものであることがより好ましい。支持壁部3のデュロメータA硬さが1未満であると遮音構造部1の形状保持性が悪化するおそれがあり、90より大きいと、支持壁部3からの振動が膜部2に伝達し、遮音性能が悪化するとともに、遮音構造部1が剛直になり設置性が悪化するおそれがある。そして、支持壁部3の剛性kは、動的貯蔵弾性率E’と支持壁部3の断面積Aと支持壁部3の高さLとから、k=E’×A/Lと表され、剛性の評価対象とする支持壁部3の面積が1000cm2である時に、剛性kが10N/mm以上106N/mm以下であることが好ましく、102N/mm以上105N/mm以下であることがより好ましい。支持壁部3の面積が1000cm2である時の剛性kが10N/mm未満であると、遮音構造部1の形状保持性が悪化するおそれがあり、106N/mmより大きいと、支持壁部3からの振動が膜部2に伝達し、遮音性能が悪化するとともに、遮音構造部1が剛直になり設置性が悪化するおそれがある。
【0028】
支持壁部3の材料としては、架橋(加硫)ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂発泡体などが挙げられる。架橋(加硫)ゴム、熱可塑性エラストマーは、膜部2の材料として挙げられた材料と同じであってよい。樹脂発泡体としては、独立気泡構造でも、連続気泡構造でもよく、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVA)フォームなどが挙げられる。具体的には、支持壁部3の材料は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、熱可塑性オレフィン系エラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンフォームなどであることが好ましい。
【0029】
錘部4のばね部4aの材料は、架橋(加硫)ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂発泡体などの柔軟材料である。架橋(加硫)ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂発泡体は、支持壁部3の材料として挙げられた材料と同じであってよい。具体的には、錘部4のばね部4aの材料は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、熱可塑性オレフィン系エラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンフォームなどであることが好ましい。
【0030】
質量部4bの材料は特に限定しないが、樹脂または金属等からなり、質量部4bはばね部4aよりも質量が大きく、例えば0.1g以上2.0g以下の質量を有している。質量部4bは、ばね部4aの質量の2倍以上の質量を有することが好ましい。仮に、質量部4bの重量がばね部4aの質量の2倍未満であると、錘部4を、遮音対象とする周波数域で十分に共振させることができず、遮音性が悪化するおそれがある。
【0031】
ばね部4aのばね定数(剛性)は、質量部4bの質量に基づいて、共振周波数が主な遮音対象とする周波数と一致するように決定される。一例としては、質量部4bの質量が1.0gであって、主な遮音対象とする周波数が1000Hz以下である場合には、ばね部4aのばね定数は1N/mm以上50N/mm以下である。
【0032】
このような構成であると、膜部2、支持壁部3、錘部4のいずれも比較的軽量であり、膜部2に直交する方向の寸法が比較的小さい。このように本実施形態の防音構造体11の遮音構造部1は軽量かつ薄型でありながら、前述した通り特定の周波数域(例えば1000Hz以下)において高い遮音性が得られる。そして、柔軟材料からなる支持壁部3を、平面状の載置面にも、曲面状や凹凸を有する載置面にも、接着等により固定しなくても、容易かつ安定的に設置することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、前述した構成の遮音構造部1に加えて多孔質層10が設けられている。多孔質層10は、支持壁部3および錘部4を挟んで膜部2と対向する位置に配置されており、膜部2と実質的に平行に位置している。多孔質層10と遮音構造部1とは互いに重なり合うように配置されているが、互いに固定されていない(非固定の)構成であると、振動が伝達しにくいため好ましい。ただし、多孔質層10が、支持壁部3の膜部2に取り付けられている側と反対側の端面に固定されていてもよい。多孔質層10の厚さH3は、遮音構造部1の支持壁部の高さH1よりも小さくても大きくてもよい。
【0034】
多孔質層10の材料としては、吸音性を有する多孔質材料である、フェルト、発泡フォーム、グラスウール等が挙げられる。多孔質層10の厚さは、1mm以上70mm以下であることが好ましく、2mm以上30mm以下であることがより好ましく、3mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。
本発明におけるフェルトとは、例えば、天然繊維、化学繊維、又はそれらが混合されている多孔質材料から成り、圧縮してシート状にしたものが挙げられる。圧縮する事でヤング率や流れ抵抗値等を調整する事が可能である。
天然繊維としては、例えば、綿および麻等の植物繊維、羊毛および絹等の動物繊維が挙げられる。化学繊維としては、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンテレフタラート繊維、およびアクリル繊維等が挙げられる。上述した繊維の太さに制限は無く、極細繊維および太繊維が含まれていても良い。繊維の径と同様に、繊維の断面形状についても特に制限は無く、断面形状が中実型、中空型、さらにW型やH型といった異形断面型であっても良い。
本発明における発泡フォームとは、プラスチック中に気泡を分散させ、多孔質にしたものを指す。発泡フォームは独立気泡構造でも、連続気泡構造でも良い。また、フェルトと同様に、発泡フォームを圧縮する事でヤング率や流れ抵抗値等を調整する事ができる。発泡フォームとしては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、エチレン-酢酸ビニルゴム(EVA)フォームなどが挙げられる。
【0035】
多孔質層10の密度は、0.001g/cm3以上1g/cm3以下であることが好ましく、0.01g/cm3以上0.5g/cm3以下であることがより好ましく、0.01g/cm3以上0.3g/cm3以下であることがさらに好ましい。
【0036】
多孔質層10の流れ抵抗は、1.0×102Ns/m-3以上1.0×107Ns/m-3以下であることが好ましく、1.0×103Ns/m-3以上1.0×106Ns/m-3以下であることがより好ましく、1.0×103Ns/m-3以上1.0×105Ns/m-3以下であることがさらに好ましい。
【0037】
多孔質層10のヤング率は、0.01MPa以上1.0MPa以下であることが好ましく、0.01MPa以上0.7MPa以下であることがより好ましく、0.01MPa以上0.4MPa以下であることがさらに好ましい。多孔質層10のヤング率が1.0MPaを超える場合、共振周波数fが高周波になってしまうため、十分な遮音性を得ることができない。一方で、多孔質層10のヤング率が0.001MPaを下回ると、ばね部分が柔らかすぎて自立性が確保できない。
【0038】
このような構成であるため、前述した遮音構造部1の遮音効果に加えて、多孔質層10の防音効果が生じ、さらに、遮音構造部1が錘として機能し、多孔質層10がばねとして機能することにより、ばねマス共振系として働き、その結果、振動を減衰し高い防音性が得られる。また、遮音構造部1の支持壁部3の両端面が膜部2と多孔質層10とに当接して支えられることにより、支持壁部3の制振効果が高く、防音性が向上する。そして、防音構造体11が載置されるパネル(例えば後述する鉄板8(
図13)等)と膜部2とによって構成される二重壁構造の壁同士の間の間隔(H1+H3)が、多孔質層10が介在する分だけ大きくなること(いわゆる嵩高効果)により、二重壁構造の遮音性がさらに向上する。本実施形態の防音構造体11は、遮音構造部1のみならず多孔質層10を備えていることにより、これらの効果が複合的に作用して、非常に優れた防音効果を発揮することができる。
【0039】
図3(A)は本発明の第1の実施形態の変形例の防音構造体11の斜視図であり、
図3(B)はその防音構造体11の上下を反転して
図3(A)のA-A線で切断した断面図である。
図4(A)は他の変形例の防音構造体11の断面図、
図4(B)はその防音構造体11の遮音構造部1の錘部4の斜視図である。
図5(A)はさらに他の変形例の防音構造体11の断面図、
図5(B)はその防音構造体11の遮音構造部1の錘部4の斜視図である。これらの変形例では、錘部4のばね部4aと質量部4bとが異なる形状および異なる寸法を有している。それら以外の構成は、前述した構成(
図1~2参照)と同様であるので説明を省略する。
図3に示す変形例では、ばね部4aは小径の円柱状であり、質量部4bは大径の円柱状である。
図4に示す変形例では、ばね部4aは細長い円柱状であり、質量部4bは球状であり、円柱状のばね部4aの横断面形状の直径は、球状の質量部4bの直径よりも小さい。
図5に示す変形例では、ばね部4aは円錐台形であり、質量部4bは円柱状であり、円錐台形のばね部4aの最小部分の直径は、円柱状の質量部4bの直径と実質的に一致している。
図3,4に示す変形例では、ばね部4aよりも質量部4bの方が大きな体積を有する。そのため、ばね部4aと質量部4bとが同じ材料で形成されていても、質量部4bはばね部4aよりも質量が大きく、ばねマス共振器を構成することができる。ただし、この変形例において、ばね部4aと質量部4bとが異なる材料で形成されていて、質量部4bはばね部よりも質量が大きい構成であってもよい。一方、
図5に示す変形例では、質量部4bよりもばね部4aの方が大きな体積を有する。この場合、質量部4bはばね部4aよりも密度が大きい材料で形成されていて、質量部4bはばね部よりも質量が大きくなっていて、ばねマス共振器を構成することができる。
図5に示す変形例のように、ばね部4aが、膜部2から離れる方向に向かって先細の円錐台形であると、膜部2とばね部4aとが一体成形される場合の金型からの離型性が良好である。
【0040】
本実施形態では、錘部4のばね部4aと質量部4bとで、材料と体積のいずれか一方または両方を異ならせることで、ばね部4aよりも質量部4bの質量を大きくして、ばねマス共振器を構成し、十分な遮音効果を得ている。すなわち、十分な遮音効果を発揮できるばねマス共振器を構成できるように、ばね部4aと質量部4bの材料、形状および寸法を決定している。このように十分な遮音効果を発揮できるばねマス共振器が構成される程度にばね部4aよりも質量部4bの質量を大きくできる限り、ばね部4aと質量部4bの材料、形状および寸法を自由に選択できる。ただし、ばね部4aはばねとして機能するために、柔軟材料から形成される必要がある。
【0041】
[第2の実施形態]
図6(A)は本発明の第2の実施形態の防音構造体11の斜視図であり、
図6(B)はその防音構造体11の上下を反転して
図6(A)のA-A線で切断した断面図である。この防音構造体11の遮音構造部6は、ばね部と質量部とに分かれていない単一構造の錘部7を有している。本実施形態では、錘部7全体が質量部として機能し、膜部2がばね部として機能するばねマス共振器が構成されている。一例としては、錘部7の質量は0.1g~2.0g程度である。錘部7の材料は限定されず、例えば合成樹脂または金属から形成されている。それ以外の構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。本実施形態の防音構造体11の遮音構造部6でも、錘部7と膜部2とが構成しているばねマス共振器の作用により膜振動が制御され、特定の周波数域(例えば1000Hz以下)において、膜振動が大幅に低減され、高い遮音性が発揮される。なお、膜部2とともに、膜部2と支持壁部3とに囲まれている空間内の空気が、ばねマス共振器のばねの一部(空気ばね)として機能する場合もある。
【0042】
本実施形態の膜部2と支持壁部3はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率が0.01MPa以上100MPa以下であることが好ましく、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接が0.01以上0.50以下であることが好ましい。さらに、本実施形態の膜部2と支持壁部3はいずれも、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける動的貯蔵弾性率(E’)が0.05MPa以上50MPa以下で、23℃で周波数1Hz~1000Hzにおける損失正接(tanδ)が0.05以上0.50以下であることがより好ましい。
【0043】
また、本実施形態の支持壁部3は、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなる。同様に、本実施形態の膜部2も、エネルギー弾性を有しておらずゴム弾性を有する材料と、ゴム弾性を有しておらずエネルギー弾性を有する材料と、ゴム弾性とエネルギー弾性の両方を有する材料とのうちのいずれかからなる。
【0044】
図7(A)は本発明の第2の実施形態の変形例の防音構造体11の断面図、
図7(B)はその防音構造体11の遮音構造部6の錘部7の斜視図である。この変形例では、錘部7は膜部2から離れる方向に向かって先細の円錐台形である。この構成では、膜部2と錘部7とが一体成形される場合の金型からの離型性が良好である。本実施形態では錘部7の形状は任意に決定可能であり、特に限定されない。
【0045】
第1~2の実施形態のいずれにおいても、膜部2と支持壁部3とを、前述した材料の射出成形、圧縮成形、プレス成型、押出成形、トランスファー成形、注型等による一体成形や二色成形により形成可能である。さらに、錘部4,7も、膜部2および支持壁部3とともに、前述した材料の一体成形や二色成形やインサート成形等によって形成できる場合もある。ただし、膜部2と支持壁部3と錘部4,7とをそれぞれ別々に形成した後で、接着や熱融着により互いに接合することによって遮音構造部1,6を組み立てるようにしても構わない。
【0046】
以上説明した遮音構造部1,6の構成では、
図8に示すように、支持壁部3が、膜部2に平行な第1の方向D1に延びる複数の第1壁部3aと、第1の方向D1に直交する第2の方向D2に延びる複数の第2壁部3bと、を含んでおり、各区画5の平面形状は正方形である。言い替えると、支持壁部3は、個々の区画5を画定する正方形の横断面形状を有する角筒状であり、角筒状の支持壁部3が多数並べて配置され、隣接する区画5の支持壁部3が一体化している構成である。しかし、このような構成に限定されない。例えば、
図9に示すように、各区画5の平面形状が三角形であって、支持壁部3は、個々の区画5を画定する三角形の横断面形状を有する角筒状であってもよい。また、
図10に示すように、各区画5の平面形状が五角形であって、支持壁部3は、個々の区画5を画定する五角形の横断面形状を有する角筒状であってもよい。
図11に示すように、各区画5の平面形状が六角形であって、支持壁部3は、個々の区画5を画定する六角形の横断面形状を有する角筒状で、いわゆるハニカム構造を構成するものであってもよい。さらに、
図12に示すように、各区画5の平面形状が円形であって、支持壁部3は、個々の区画5を画定する円形の横断面形状を有する円筒状であってもよい。
図10,12に示す構成の場合には、区画5同士の間に隙間が生じるので、隙間が小さくなるように支持壁部3の形状および寸法を決定することが好ましい。
図8,9,11に示す構成の場合には、区画5同士の間に隙間が生じない。さらに、各区画5は、図示されていない様々な形状、例えば、長方形、平行四辺形、台形、七角形以上の多角形、楕円形、長円形等であってもよく、不規則な形状であってもよい。支持壁部3は、各区画5の平面形状に合わせた形状および寸法に形成される。なお、これらの構成における多孔質層10は、前述した構成(
図1~7参照)と同様であってよいため、
図8~12における図示を省略し、説明も省略する。
【0047】
本発明の防音構造体11は、非常に薄く軽量であり、曲面や凹凸を有する面の上に載置することも容易であるため、乗物、特に自動車のパネル上に載置されて使用されてもよい。自動車等のパネルは基本的に通気性のない板であり、一例として、金属板(鉄板、鋼板、アルミニウム板)、樹脂板などが挙げられる。防音構造体11が載置されるパネルが金属板である場合には、その厚さは0.5mm~2.0mmの範囲であることが好ましく、樹脂板である場合には、その厚さは0.5mm~20mmの範囲であることが好ましい。防音構造体11を自動車のパネル上に載置する場合には、防音構造体11の多孔質層10がパネル上に載置されることが好ましい。すなわち、防音構造体11が載置される部材(パネル等)と遮音構造部1との間に多孔質層10が介在することが好ましい。また、多孔質層10とパネルとは接着されていても接着されていなくても構わないが、振動を伝わりにくくするために、多孔質層10がパネルに接着されずにパネル上に載置されて使用されることが好ましい。
【0048】
本発明の防音構造体11を自動車に設置する部位としては、エンジンコンパートメントにおけるエンジンヘッドカバー、エンジンボディカバー、フードインシュレーター、ダッシュ前インシュレーター、エアボックスの壁、エアインテークのクリーナー、ダストサイドダクト、アンダーカバーなどや、キャビンにおけるダッシュインシュレーター、ダッシュパネル、フロアカーペット(フロアサイレンサー)、スペーサー、ドアのドアトリム、ドアトリムの内部、インストパネル、インストセンターボックス、インストアッパーボックス、エアコンの筐体、ルーフのトリム、ルーフトリムの内部、サンバイザー、後席向けエアコンダクト、電池搭載車両における電池冷却システムの冷却ダクト、冷却ファン、センターコンソールのトリム、コンソールの内部、パーセルトリム、パーセルパネル、シートのヘッドレスト、フロントシートのシートバック、リアシートのシートバックなどや、トランクにおけるトランクサイドのトリム、トリムの内部、ドラフターカバーなどが挙げられる。また、本発明の防音構造体11は、自動車の骨格内やパネル間にも設置可能であり、さらには、車外に位置するフロア下のアンダーカバー、フェンダープロテクター、バックドア、ホイールカバー、サスペンションの空力カバーなどにも設置可能である。
【実施例0049】
本発明の具体的な実施例と比較例について以下に説明する。
[実施例1]
本発明の実施例1の防音構造体11は、
図1~2に示す第1の実施形態と同じ構造である。本実施例の遮音構造部1の膜部2は、JIS K6253によるデュロメータA硬さが70で、膜厚が0.5mmのEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)からなる。本実施例の支持壁部3は、JIS K6253によるデュロメータA硬さが30で、板厚が1.6mmで、膜部2に直交する方向の高さH1が10mmのEPDMからなる。ただし、最も外側に位置する支持壁部3のみは、板厚が半分の0.8mmである。複数の支持壁部3(第1壁部3aおよび第2壁部3b)によって画定される区画5は25mm×25mmの正方形状であり、膜部2の200mm×200mmの正方形の領域(評価面)に49個の区画5が存在する。ただし、図面にはこの領域の一部のみを模式的に示している。錘部4は直径が6mmで高さH2(膜部2に直交する方向の寸法)が6mmの円柱状である。この錘部4のうち、膜部2に取り付けられている側の部分であるばね部4aは、高さが3mmであり、JIS K6253によるデュロメータA硬さが10のシリコーンゴムからなる。錘部4の、膜部2に取り付けられている側と反対側の部分である質量部4bも高さが3mmであり、剛性を有するステンレス(SUS304)からなる。錘部4の質量は約0.8gであり、錘部4の設置面に垂直な方向に対して、周波数600Hz~650Hzにピークを示す共振を有する。遮音構造部1全体の高さは10.5mmであり、1つの区画5における膜部2、支持壁部3、錘部4を含む遮音構造部1全体の面密度は、2.8kg/m
2である。本実施例の多孔質層10は、厚さH3が7mmのフェルトからなり、その面密度は0.5kg/m
2である。より詳細には、多孔質層10を構成するフェルトは、再生繊維とPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維とからなり、その流れ抵抗測定値は3.1×10
4Ns/m
4である。
【0050】
図13に示すように、防音構造体11を、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に、多孔質層10が鉄板8に接するように載置して、鉄板8の防音構造体11を載置した側と反対側の面を入射音側として遮音性を測定した。具体的には、JIS A1441-1に示されているインテンシティ法に準じ、音源室が残響室であり受音室が半無響室である試験設備室を用い、1/3オクターブバンド分析による1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(A),14(C)に示している。音響透過損失が大きいほど遮音性が高い。
【0051】
[実施例2]
図15に示す本発明の実施例2の防音構造体11は、実施例1と同じ遮音構造部1(膜部2、支持壁部3、錘部4)を有しており、多孔質層10は、厚さH3が4mmのポリウレタンフォームからなり、その面密度は0.2kg/m
2である。より詳細には、多孔質層10を構成するポリウレタンフォームは、カームフレックスF2(商品名:株式会社イノアックコーポレーション製品)であり、その流れ抵抗測定値は2.1×10
4Ns/m
4である。この防音構造体11を、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に、多孔質層10が鉄板8に接するように載置して、実施例1と同様の方法で1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(A),14(C)に示している。
【0052】
[比較例1]
比較例1として、
図16に示すように、実施例1と同じ遮音構造部1(膜部2、支持壁部3、錘部4)のみを有しており、多孔質層10を持たない防音構造体を作製した。この防音構造体を、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に、支持壁部3の、膜部2に取り付けられている側と反対側の端面が鉄板8に接するように載置して、実施例1と同様の方法で1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(A),14(B)に示している。
【0053】
[比較例2]
比較例2として、
図17に示すように、実施例1と同じ遮音構造部1(膜部2、支持壁部3、錘部4)を有しており、多孔質層10の代わりに非通気材層12を有する防音構造体13を作製した。非通気材層12は、JIS K6253によるデュロメータA硬さが70で、厚さが0.5mmのEPDMからなり、その面密度は0.6kg/m
2である。この防音構造体13を、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に、非通気材層12が鉄板8に接するように載置して、実施例1と同様の方法で1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(B)に示している。
【0054】
[比較例3]
比較例3として、
図18に示すように、JIS K6253によるデュロメータA硬さが65で膜厚が3mmのEPDMからなる膜部2のみを、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に載置した。そして、実施例1と同様の方法で1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(C)に示している。本比較例では、支持壁部3、錘部4、多孔質層10は設けられていない。
【0055】
[比較例4]
比較例4として、
図19に示すように、JIS K6253によるデュロメータA硬さが65で膜厚が3mmのEPDMからなる膜部2と、実施例1と同様な多孔質層10(厚さH3が7mm、面密度が0.5kg/m
2、流れ抵抗測定値が3.1×10
4Ns/m
4のフェルト)とを、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に積層した。そして、実施例1と同様の方法で1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(C)に示している。本比較例では、支持壁部3と錘部4は設けられていない。
【0056】
[比較例5]
比較例5として、
図20に示すように、JIS K6253によるデュロメータA硬さが65で膜厚が3mmのEPDMからなる膜部2と、実施例2と同様な多孔質層10(厚さH3が4mm、面密度が0.2kg/m
2、流れ抵抗測定値が2.1×10
4Ns/m
4のポリウレタンフォーム)とを、厚さ0.8mmで面密度が6.02kg/m
2である鉄板8上に積層した。そして、実施例1と同様の方法で1/3オクターブバンド中心周波数[Hz]に対する音響透過損失(透過損失)[dB]を求めた。その結果を
図14(C)に示している。本比較例では、支持壁部3と錘部4は設けられていない。
【0057】
[結果]
前述した本発明の実施例1~2と比較例1~5を対比した結果を説明する。
図14(A)~14(C)を参照すると、本発明の防音構造体11によって、広い周波数範囲にわたって良好な防音効果が得られることが判る。これは、前述した通り、実施例1,2の防音構造体11は遮音構造部1と多孔質層10とを備えているため、遮音構造部1の遮音効果に加えて、多孔質層10の防音効果と、支持壁部3の制振効果と、鉄板8と膜部2とからなる二重壁構造の、多孔質層10による嵩高効果とが複合的に作用して非常に優れた防音効果を発揮できるからである。
【0058】
図14(B),14(C)を参照すると、膜部2と支持壁部3と錘部4からなる遮音構造部1を有することにより、特にロードノイズに相当する1000Hz以下の低い周波数において良好な防音性が得られることが判る。さらに、
図14(A),14(B)を参照すると、この遮音構造部1に加えて多孔質層10を有することにより、より大きい防音性が得られることが判る。そして、この多孔質層10の代わりに非通気材層12を配置してもさほど大きい防音性は得られず、遮音構造部1と多孔質層10(例えば流れ抵抗測定値が2×10
4Ns/m
4~4×10
4Ns/m
4程度の層)との組み合わせにより、格別に優れた防音効果が実現することが判る。