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  • 特開-劣化推定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051559
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】劣化推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240404BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20240404BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240404BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240404BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
G01R31/387
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157788
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA22
2G216BA30
2G216CB27
2G216CB52
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA08
5G503EA08
5G503GD02
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】バッテリの将来の劣化を予測すること。
【解決手段】車両に搭載されるバッテリBTの劣化を推定する劣化推定装置3は、バッテリBTの使用状態を示すパラメータ及び容量維持率のデータを蓄積する蓄積部32と、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいてパラメータと容量維持率との相関関係を求めると共に、相関関係に基づいて将来の相関関係を推定する演算部31と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの劣化を推定する劣化推定装置であって、
前記バッテリの使用状態を示すパラメータ及び前記バッテリの容量維持率のデータを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて前記パラメータと前記容量維持率との相関関係を求めると共に、前記相関関係に基づいて将来の前記相関関係を推定する演算部と、
を有することを特徴とする劣化推定装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記データに基づいて求めた前記相関関係を用いたカーブフィッテイングにより将来の前記相関関係を推定する、
ことを特徴とする請求項1記載の劣化推定装置。
【請求項3】
前記パラメータは、
経過時間、前記バッテリの稼働時間、前記バッテリの電力積算量又は前記車両の走行距離である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の劣化推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの劣化を推定する劣化推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるバッテリは、劣化に伴って容量が減少すると共に内部抵抗が上昇する。これより、従来、バッテリの容量維持率(SOH)が規定値より小さくなった場合、又はバッテリの内部抵抗が大きくなった場合には、注意喚起又は交換の通知等を行う。
【0003】
特許文献1は、車載バッテリの新品時の電池容量と現在の電池容量とに基づき、車載バッテリの劣化度SOHを算出して車載バッテリを制御するバッテリ制御装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-148720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、バッテリの現状の劣化を把握することはできるものの、バッテリの将来の劣化を予測できないという課題を有する。
【0006】
本開示の目的は、バッテリの将来の劣化を予測することができる劣化推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る劣化推定装置は、車両に搭載されるバッテリの劣化を推定する劣化推定装置であって、前記バッテリの使用状態を示すパラメータ及び前記バッテリの容量維持率のデータを蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて前記パラメータと前記容量維持率との相関関係を求めると共に、前記相関関係に基づいて将来の前記相関関係を推定する演算部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バッテリの将来の劣化を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置の構成を示すブロック図
図2】本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置により求めるバッテリの容量維持率とバッテリの使用開始からの経過時間との関係を示す図
図3】バッテリの内部抵抗とバッテリの使用開始からの経過時間との関係を示す図
図4】本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置に蓄積される情報の一例を示す図
図5】本発明の実施の形態2に係る劣化推定装置と通信する車載装置の構成を示すブロック図
図6】本発明の実施の形態2に係る劣化推定装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示はこの実施の形態に限定されるものではない。なお、既に周知な事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成に対する重複説明等は、適宜省略する場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
<劣化推定装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置3の構成について、図1を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
劣化推定装置3は、図示しない車両に搭載され、バッテリBTの劣化を推定する。劣化推定装置3は、車両情報を収集するVCU(Vehicle Control Unit;車両制御ユニット)1及びバッテリBTのバッテリ情報を収集するBMS(Battery management system;バッテリマネジメントシステム)2と接続している。
【0013】
ここで、車両情報は、年月日、経過時間及び車両の走行距離の情報である。また、バッテリ情報は、バッテリBTの容量維持率(State of Health;SOH)、バッテリBTの電力積算量及びバッテリBTの稼働時間の情報である。また、バッテリBTの稼働時間、バッテリBTの電力積算量、経過時間及び車両の走行距離は、バッテリBTの使用状態を示すパラメータである。また、容量維持率は、バッテリBTにおいて新品時の容量に対して維持できている容量を表しており、バッテリBTの現在の容量を新品時の容量で除算することにより求められる。
【0014】
具体的には、劣化推定装置3は、演算部31と、蓄積部32と、送信部33と、を有している。
【0015】
演算部31は、VCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。演算部31は、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいて、バッテリBTの使用状態を示すパラメータと容量維持率との相関関係を求める。演算部31は、求めた相関関係に基づいて、将来のバッテリBTの使用状態を示すパラメータと容量維持率との相関関係を推定する。
【0016】
具体的には、演算部31は、経過時間、バッテリBTの稼働時間、バッテリBTの電力積算量又は車両の走行距離に対する、容量維持率の相関関係を求め、求めた相関関係に基づいて、将来の経過時間、バッテリBTの稼働時間、バッテリBTの電力積算量又は車両の走行距離に対する、容量維持率の相関関係を推定する。
【0017】
演算部31は、推定した相関関係に基づいて、容量維持率が規定値に達する時期を推定し、推定した時期に関する時期情報を送信部33に出力する。
【0018】
蓄積部32は、演算部31により書き込まれた車両情報及びバッテリ情報のデータを蓄積する。
【0019】
送信部33は、演算部31より入力される時期情報を図示しない表示装置に送信する。
【0020】
<劣化推定装置の動作>
本発明の実施の形態1に係る劣化推定装置3の動作について、図2から図4を参照しながら、詳細に説明する。図2及び図3では、バッテリBTの使用状態を示すパラメータとして経過時間を用いる場合を一例として示している。
【0021】
演算部31は、VCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。例えば、演算部31は、年月日と、容量維持率a1~a5と、稼働時間b1~b5と、走行距離c1~c5と、電力積算量d1~d5と、を対応付けた図4に示すテーブルを蓄積部32に蓄積する。なお、図4に示すテーブルでは、経過時間が対応付けられていないが、経過時間を対応付けることができる。
【0022】
次に、演算部31は、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいて、図2に実線で示す経過時間と容量維持率との相関関係を求める。図2の横軸は、新品のバッテリBTの使用開始時を「0」とした場合におけるバッテリBTの使用開始時からの経過時間である。図2に示すように容量維持率は、経過時間に略比例しながら変化する特性を有している。
【0023】
次に、演算部31は、図2に実線で示す求めた時刻t1までの経過時間と容量維持率との相関関係に基づいて、図2に破線で示す時刻t1以降の将来の経過時間と容量維持率との相関関係を推定する。
【0024】
具体的には、演算部31は、求めた経過時間と容量維持率との相関関係が直線である場合又は直線に近い場合に、図2に実線で示す相関関係のうちの複数の値を用いて線形近似により将来の相関関係を推定する。線形近似では、単純減衰であるため、y=ax+bの数式を用いる。一方、演算部31は、求めた経過時間と容量維持率との相関関係が曲線である場合には、図2に実線で示す相関関係のうちの複数の値を用いた曲線近似等のカーブフィッテイングにより将来の相関関係を推定する。曲線近似では、y=ax^2+bx+cの2次の多項式を用いる。
【0025】
例えば、演算部31は、求めた経過時間と容量維持率との相関関係により得られる直線又は曲線を外挿して将来の相関関係を推定する。
【0026】
次に、演算部31は、推定した相関関係において容量維持率が規定値に到達する時期t2を求める。容量維持率は図2に示すように緩やかに下降することにより直線に近いため、容量維持率が規定値に到達する時期を精度よく求めることができる。
【0027】
そして、送信部33は、演算部31により求めた時期t2の時期情報を図示しない表示装置に送信して表示させる。これにより、ユーザはバッテリBTの点検又は交換時期を把握することができると共に、バッテリBTの残存価値を査定することができる。
【0028】
上記の動作において、バッテリBTの使用状態を示すパラメータとして車両の走行距離を用いる場合には、演算部31は、バッテリBTの使用を開始してからの車両の走行距離を、規定値に到達する時期として求める。
【0029】
因みに、バッテリBTの内部抵抗は、電気の入出力値の大きさに影響する因子であり、材料の変化に敏感な特性を有し、劣化が進むにつれて急激に増加する。従って、バッテリBTの使用状態を示すパラメータとバッテリBTの内部抵抗との相関関係は、曲率の大きな曲線となって外挿誤差が大きくなる。例えば、経過時間とバッテリBTの内部抵抗との相関関係として図3に実線で示す曲線を用いて、図3に破線で示す時刻t11以降の将来の経過時間とバッテリBTの内部抵抗との相関関係を推定した場合には、内部抵抗が規定値に達する時期が時刻t12から時刻t13までの間になるため、誤差が大きくなる。
【0030】
このように、本実施の形態によれば、バッテリBTの使用状態を示すパラメータ及び容量維持率のデータを蓄積する蓄積部32と、蓄積部32に蓄積されているデータに基づいてバッテリBTの使用状態を示すパラメータと容量維持率との相関関係を求めると共に、求めた相関関係に基づいて将来の相関関係を推定する演算部31と、を有することにより、バッテリBTの容量維持率が規定値に達する時期を予測することができる。
【0031】
(実施の形態2)
<劣化推定装置の構成>
本発明の実施の形態2に係る劣化推定装置6の構成について、図5及び図6を参照しながら、詳細に説明する。
【0032】
なお、図5及び図6において図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0033】
劣化推定装置6は、車載装置4と無線回線又は有線回転によって接続しており、バッテリBTの劣化を推定する。ここで、車載装置4は、図示しない車両に搭載され、VCU1と、BMS2と、送信部5と、を備えている。送信部5は、VCU1より入力される車両情報及びBMS2より入力されるバッテリ情報のデータを劣化推定装置6に送信する。
【0034】
劣化推定装置6は、車載装置4が搭載されている車両の外部に設けられ、受信部7と、演算部31と、蓄積部32と、送信部33と、を有している。
【0035】
受信部7は、車載装置4の送信部5よる送信されたデータを受信して演算部31に出力する。
【0036】
演算部31は、受信部7より入力される車両情報及びバッテリ情報のデータを蓄積部32に蓄積させる。
【0037】
なお、劣化推定装置6の動作は劣化推定装置3の動作と同一動作であるので、その説明を省略する。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1の効果と同一の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施の形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は、車両に搭載されるバッテリの劣化を推定する劣化推定装置に好適である。
【符号の説明】
【0041】
1 VCU
2 BMS
3 劣化推定装置
4 車載装置
5 送信部
6 劣化推定装置
7 受信部
31 演算部
32 蓄積部
33 送信部
BT バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリの劣化を推定する劣化推定装置であって、
前記バッテリの使用状態を示すパラメータ及び前記バッテリの容量維持率のデータを蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて、前記バッテリの使用開始時から所定時刻までの経過時間と前記容量維持率との相関関係を求め、求めた前記相関関係が直線である場合、線形近似により将来の前記相関関係を推定する一方、求めた前記相関関係が曲線である場合、カーブフィッテイングにより将来の前記相関関係を推定し、推定した前記将来の相関関係において前記容量維持率が規定値に到達する時期を求める演算部と、
求めた前記時期の情報を表示装置に送信して前記時期を前記表示装置に表示させる送信部と、
を有することを特徴とする劣化推定装置。
【請求項2】
前記パラメータは、
前記経過時間、前記バッテリの稼働時間、前記バッテリの電力積算量又は前記車両の走行距離である、
ことを特徴とする請求項1記載の劣化推定装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明に係る劣化推定装置は、車両に搭載されるバッテリの劣化を推定する劣化推定装置であって、前記バッテリの使用状態を示すパラメータ及び前記バッテリの容量維持率のデータを蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に蓄積されている前記データに基づいて、前記バッテリの使用開始時から所定時刻までの経過時間と前記容量維持率との相関関係を求め、求めた前記相関関係が直線である場合、線形近似により将来の前記相関関係を推定する一方、求めた前記相関関係が曲線である場合、カーブフィッテイングにより将来の前記相関関係を推定し、推定した前記将来の相関関係において前記容量維持率が規定値に到達する時期を求める演算部と、求めた前記時期の情報を表示装置に送信して前記時期を前記表示装置に表示させる送信部と、を有する。