(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051561
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】掘削用泥水、泥水処理設備、掘削設備、泥水処理方法、掘削方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/13 20060101AFI20240404BHJP
E21D 9/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
E21D9/13 C
E21D9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157792
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 昂亮
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博明
(72)【発明者】
【氏名】森 進一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC05
2D054CA03
2D054CA04
2D054CA09
2D054DA35
2D054GA67
2D054GA68
(57)【要約】
【課題】泥水シールド工法や泥水推進工法において、環境負荷を抑制しつつ、消泡剤を用いた場合と同等以上に排泥水の発泡を抑制することができる掘削用泥水、泥水処理設備、掘削設備、泥水処理方法、および掘削方法を提供する。
【解決手段】泥水シールド工法または泥水推進工法に用いる掘削用泥水であって、比重が1.15以上1.20以下である、掘削用泥水。掘削用泥水は、ファンネル粘度が32秒以上42秒以下である。掘削用泥水は、粘土と、ベントナイトと、を含む。掘削用泥水は、粘土の含有量が0.19kg/L以上0.31kg/L以下である。掘削用泥水は、ベントナイトの含有量が0.06kg/L以上0.09kg/L以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥水シールド工法または泥水推進工法に用いる掘削用泥水であって、
比重が1.15以上1.20以下である、掘削用泥水。
【請求項2】
ファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、請求項1に記載の掘削用泥水。
【請求項3】
粘土と、ベントナイトと、を含む、請求項1に記載の掘削用泥水。
【請求項4】
前記粘土の含有量が0.19kg/L以上0.31kg/L以下である、請求項3に記載の掘削用泥水。
【請求項5】
前記ベントナイトの含有量が0.06kg/L以上0.09kg/L以下である、請求項3に記載の掘削用泥水。
【請求項6】
掘削機に供給される掘削用泥水を処理する泥水処理設備であって、
水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する泥水調製槽と、
前記掘削用泥水の比重を調整する調整槽と、
前記調整槽から掘削機に前記掘削用泥水を供給する送泥水管と、
前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する排泥水管と、
前記排泥水を土砂と水に分離する土砂分離機と、
を備え、
前記掘削用泥水の比重を1.15以上1.20以下とする、泥水処理設備。
【請求項7】
前記掘削用泥水のファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、請求項6に記載の泥水処理設備。
【請求項8】
請求項6または7に記載の泥水処理設備と、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機と、を備える、掘削設備。
【請求項9】
水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する工程と、
前記掘削用泥水の比重を調整する工程と、
比重を調整した掘削用泥水を、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機に供給する工程と、
前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する工程と、
前記排泥水を土砂と水に分離する工程と、
前記排泥水から分離した水を、前記比重を調整する工程に供給する工程と、
を有し、
前記掘削用泥水の比重を1.15以上1.20以下とする、泥水処理方法。
【請求項10】
前記掘削用泥水のファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、請求項9に記載の泥水処理方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の掘削用泥水を用いて、自然地盤または改良地盤を掘削する、掘削方法。
【請求項12】
水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する工程と、
前記掘削用泥水の比重を調整する工程と、
比重を調整した掘削用泥水を、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機に供給する工程と、
前記掘削機で自然地盤または改良地盤を掘削する工程と、
前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する工程と、
前記排泥水を土砂と水に分離する工程と、
前記排泥水から分離した水を、前記比重を調整する工程に供給する工程と、
を有し、
前記掘削用泥水の比重を1.15以上1.20以下とする、掘削方法。
【請求項13】
前記掘削用泥水のファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、請求項12に記載の掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削用泥水、泥水処理設備、掘削設備、泥水処理方法、および掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水シールド工法や泥水推進工法を用いて、地下に構築されたコンクリートまたは樹脂製の構造物や、セメント等を含有する改良地盤(以下、「地下に構築されたコンクリートまたは樹脂製の構造物や、セメント等を含有する改良地盤」を「構造物等」と言う。)を掘削機で掘削する場合、掘削機には掘削用泥水が供給される。掘削用泥水は、掘削機で発生する掘削土と共に排泥水として土砂分離機に回収される。土砂分離機では、排泥水が土砂と水に分離される。分離された水は、掘削用泥水の調製に用いられる。
【0003】
前記の工法では、構築物等に含まれる物質によって、排泥水が発泡しやすい。土砂分離機等では、排泥水を土砂と水に分離する際、発泡した排泥水から空気を抜く(脱泡する)ことが難しい。泡が大量に発生した場合、排泥水から分離した水は発泡したままとなり、その水(発泡水)は、掘削用泥水を貯留する槽に供給されると、その槽から溢れたり、ポンプの揚水能力が低下したりするという課題があった。このような課題を解決する方法としては、例えば、掘削機の作動中に、排泥水に消泡剤を添加する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、排泥水に消泡剤を添加するため、環境負荷が大きくなるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、泥水シールド工法や泥水推進工法において、環境負荷を抑制しつつ、消泡剤を用いた場合と同等以上に排泥水の発泡を抑制することができる掘削用泥水、泥水処理設備、掘削設備、泥水処理方法、および掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]泥水シールド工法または泥水推進工法に用いる掘削用泥水であって、
比重が1.15以上1.20以下である、掘削用泥水。
[2]ファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、[1]に記載の掘削用泥水。
[3]粘土と、ベントナイトと、を含む、[1]に記載の掘削用泥水。
[4]前記粘土の含有量が0.19kg/L以上0.31kg/L以下である、[3]に記載の掘削用泥水。
[5]前記ベントナイトの含有量が0.06kg/L以上0.09kg/L以下である、[3]または[4]に記載の掘削用泥水。
[6]掘削機に供給される掘削用泥水を処理する泥水処理設備であって、
水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する泥水調製槽と、
前記掘削用泥水の比重を調整する調整槽と、
前記調整槽から掘削機に前記掘削用泥水を供給する送泥水管と、
前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する排泥水管と、
前記排泥水を土砂と水に分離する土砂分離機と、
を備え、
前記掘削用泥水の比重を1.15以上1.20以下とする、泥水処理設備。
[7]前記掘削用泥水のファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、[6]に記載の泥水処理設備。
[8][6]または[7]に記載の泥水処理設備と、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機と、を備える、掘削設備。
[9]水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する工程と、
前記掘削用泥水の比重を調整する工程と、
比重を調整した掘削用泥水を、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機に供給する工程と、
前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する工程と、
前記排泥水を土砂と水に分離する工程と、
前記排泥水から分離した水を、前記比重を調整する工程に供給する工程と、
を有し、
前記掘削用泥水の比重を1.15以上1.20以下とする、泥水処理方法。
[10]前記掘削用泥水のファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、[9]に記載の泥水処理方法。
[11][1]~[5]のいずれかに記載の掘削用泥水を用いて、自然地盤または改良地盤を掘削する、掘削方法。
[12]水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する工程と、
前記掘削用泥水の比重を調整する工程と、
比重を調整した掘削用泥水を、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機に供給する工程と、
前記掘削機で自然地盤または改良地盤を掘削する工程と、
前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する工程と、
前記排泥水を土砂と水に分離する工程と、
前記排泥水から分離した水を、前記比重を調整する工程に供給する工程と、
を有し、
前記掘削用泥水の比重を1.15以上1.20以下とする、掘削方法。
[13]前記掘削用泥水のファンネル粘度が32秒以上42秒以下である、[12]に記載の掘削方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、泥水シールド工法や泥水推進工法において、環境負荷を抑制しつつ、消泡剤を用いた場合と同等以上に排泥水の発泡を抑制することができる掘削用泥水、泥水処理設備、掘削設備、泥水処理方法、および掘削方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る泥水処理設備、および泥水処理設備を備えた掘削設備を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の掘削用泥水、泥水処理設備、掘削設備、泥水処理方法、および掘削方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[掘削用泥水]
本発明の一実施形態に係る掘削用泥水は、泥水シールド工法または泥水推進工法に用いる掘削用泥水であって、比重が1.15以上1.20以下である。掘削用泥水の比重は、1.10以上1.20以下が好ましい。掘削用泥水の比重が前記下限値未満では、掘削機の切羽面に不透水性の泥膜が形成されず泥水圧が有効に作用しない。掘削用泥水の比重が前記上限値を超えると、掘削用泥水を用いて自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機へ掘削用泥水を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりして、施工性が低下する。
【0012】
掘削用泥水の比重は、JIS Z 8804:2012「液体の密度及び比重の測定方法」に準拠して測定することができる。
【0013】
本実施形態の掘削用泥水は、ファンネル粘度が、32秒以上42秒以下が好ましく、32秒以上38秒以下がより好ましい。掘削用泥水のファンネル粘度が前記下限値以上であると、掘削機へ掘削用泥水を送るための圧送ポンプへの負荷が少なく効率的に泥水を循環できる。掘削用泥水のファンネル粘度が前記上限値以下であると、掘削用泥水を用いて自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機へ掘削用泥水を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりすることを抑制し、施工性が低下することを抑制できる。
【0014】
掘削用泥水のファンネル粘度は、ファンネル粘度計を用いて、以下の方法により測定することができる。
ファンネル粘度計は、泥水用の簡易型流下式粘度計であり、採取容器と、ファンネル本体とを有する。ファンネル本体は、逆円錐形の本体部と、円錐の先端から伸びる管状部とからなる漏斗である。
ファンネル本体を、その管状部が鉛直方向の下方となるように配置する。
採取容器に掘削用泥水を500mL入れる。
ファンネル本体の管状部の流出口を指で塞いだ状態で、ファンネル本体の上方から、ファンネル本体内に、採取容器内の掘削用泥水を500mL注ぎ込む。
上記流出口を塞いでいる指を離し、上記流出口から泥水が流出する時間(秒)を測定し、その時間をファンネル粘度とする。
【0015】
本実施形態の掘削用泥水は、粘土と、ベントナイトと、を含むことが好ましい。
掘削用泥水に含まれる水としては、地下水、水道水、掘削機で自然地盤または改良地盤を掘削した際に発生する掘削土を含む排泥水から分離した水(再生水)等を用いることができる。
【0016】
粘土としては、粘土径鉱物より採掘し、乾燥・粉砕の工程を経て微粉末化された土木用粘土等を用いることができる。
【0017】
ベントナイトとしては、ナトリウム型ベントナイト、カルシウム型ベントナイト、活性化ベントナイト等を用いることができる。
【0018】
本実施形態の掘削用泥水は、粘土の含有量(掘削用泥水の1L当たりに含まれる量)が、0.19kg/L以上0.31kg/L以下が好ましく、0.22kg/L以上0.23kg/L以下がより好ましい。粘土の含有量が前記下限値以上であると、掘削機へ掘削用泥水を送るための圧送ポンプへの負荷が少なく効率的に泥水を循環できる。粘土の含有量が前記上限値以下であると、掘削用泥水を用いて自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機へ掘削用泥水を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりすることを抑制し、施工性が低下することを抑制できる。
【0019】
本実施形態の掘削用泥水は、ベントナイトの含有量(掘削用泥水の1L当たりに含まれる量)が、0.06kg/L以上0.09kg/L以下が好ましく、0.06kg/L以上0.07kg/L以下がより好ましい。ベントナイトの含有量が前記下限値以上であると、掘削機の切羽面に不透水性の泥膜が形成され、泥水圧を有効に作用させることができる。ベントナイトの含有量が前記上限値以下であると、掘削用泥水を用いて自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機へ掘削用泥水を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりすることを抑制し、施工性が低下することを抑制できる。
【0020】
本実施形態の掘削用泥水は、比重が1.15以上1.20以下であるため、泥水シールド工法や泥水推進工法において、発泡を抑制するための消泡剤を用いた場合と同等以上に掘削用泥水の発泡を抑制することができる。具体的には、環境温度が低い場合(例えば、環境温度が0℃の場合)には、消泡剤を用いた場合よりも掘削用泥水の発泡を抑制することができ、環境温度が常温付近の場合(例えば、環境温度が20℃の場合)には、消泡剤を用いた場合と同等に掘削用泥水の発泡を抑制することができる。また、本実施形態の掘削用泥水は、発泡を抑制するための消泡剤を含まないため、環境負荷を抑制することができる。
【0021】
[掘削用泥水の製造方法]
本実施形態の掘削用泥水の製造方法は、水に、粘土とベントナイトを配合して、水、粘土およびベントナイトの配合物を撹拌、混合する工程を有する。
【0022】
上記配合物を撹拌する方法は、特に限定されず、例えば、撹拌翼を用いた撹拌方法、マグネチックスターラーを用いた撹拌方法等を用いることができる。
【0023】
本実施形態の掘削用泥水の製造方法では、上記混合物における粘土およびベントナイトの含有量を、上記掘削用泥水における粘土およびベントナイトの含有量と同様にすることが好ましい。このようにすることにより、比重およびファンネル粘度が上記の範囲内の掘削用泥水が得られる。
【0024】
[泥水処理設備、掘削設備]
図1は、本発明の一実施形態に係る泥水処理設備、および泥水処理設備を備えた掘削設備を示す模式図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の掘削設備1は、泥水処理設備10と、掘削機20と、を備える。
本実施形態の泥水処理設備10は、泥水調製槽11と、調整槽12と、土砂分離機13と、送泥水管14と、排泥水管15と、を備える。本実施形態の泥水処理設備10は、調整槽12内の掘削用泥水100の比重を測定する比重測定器16を備えていることが好ましい。
【0026】
泥水調製槽11は、水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水100を調製する。
掘削用泥水100は、上述の実施形態の掘削用泥水である。
【0027】
調整槽12は、送泥水管14に掘削用泥水100を流す前に、掘削用泥水100の比重を調整する。調整槽12は、撹拌手段として槽内に撹拌翼17を備える。基本的に、泥水調製槽11にて、掘削用泥水100は、その比重が上記の範囲内となるように配合される。しかしながら、土砂分離機13で排泥水から分離された水が調整槽12に供給された場合、調整槽12の掘削用泥水100の比重が上記の範囲から外れることがある。その場合、調整槽12にて、掘削用泥水100の比重を上記の範囲内となるように調整する。これにより、掘削機20に供給される掘削用泥水100の比重は、常に上記の範囲内に維持される。掘削用泥水100の比重を調整するには、掘削用泥水100に粘土やベントナイトを加える。
【0028】
土砂分離機13は、掘削機20で発生する掘削土を含む排泥水を土砂と水に分離する。
【0029】
送泥水管14は、調整槽12から掘削機20に掘削用泥水100を供給する。
排泥水管15は、掘削機20で発生する掘削土を含む排泥水を、掘削機20から回収して土砂分離機13に供給する。
【0030】
泥水調製槽11と調整槽12は、配管18で接続されている。調整槽12と土砂分離機13は、配管19で接続されている。
【0031】
掘削機20としては、特に限定されず、泥水シールド工法または泥水推進工法で一般的に用いられる掘削機が挙げられる。
【0032】
本実施形態の掘削設備1および泥水処理設備10の動作について説明する。
泥水調製槽11では、水に、所定量の粘土とベントナイトを配合して、上述の実施形態と同様の掘削用泥水100を調製する。
泥水調製槽11で配合した掘削用泥水100は、配管18を通って調整槽12に供給される。
【0033】
初回の掘削用泥水100の配合では、調整槽12に供給された掘削用泥水100が送泥水管14を通って掘削機20に供給される。
土砂分離機13で、掘削機20で発生する掘削土を含む排泥水から分離された水が調整槽12に供給された場合、調整槽12にて、掘削用泥水100の比重を上記の範囲内となるように調整する。その後、掘削用泥水100は送泥水管14を通って掘削機20に供給される。
【0034】
掘削機20は、調整槽12から供給された掘削用泥水100を用いて、構造物等を掘削する。掘削機20が構造物等を掘削すると、掘削土が発生する。発生した掘削土は、掘削に用いた掘削用泥水100と、掘削によって湧き出した地下水と混ざり合って排泥水となる。この掘削土を含む排泥水は、掘削機20から排泥水管15を通って土砂分離機13に回収される。
【0035】
土砂分離機13では、回収された排泥水を土砂と水に分離する。土砂分離機13で分離された水は、配管19を通って調整槽12に戻り、掘削用泥水100として循環利用される。余剰の掘削用泥水100は、調整槽12から排出され、排水処理設備に送られる。
【0036】
本実施形態の掘削設備1は、本実施形態の泥水処理設備10の調整槽12から掘削機20に、上述の実施形態の掘削用泥水100が供給されるため、発泡を抑制するための消泡剤を用いた場合と同等以上に掘削用泥水100の発泡を抑制することができる。また、掘削用泥水100が消泡剤を含まないため、環境負荷を抑制することができる。さらに、掘削機20に供給する掘削用泥水100の比重を常に所定の範囲に維持することができるため、掘削用泥水100が発泡して、掘削機20の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機20へ掘削用泥水100を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりすることを抑制でき、施工性が向上する。
【0037】
[泥水処理方法]
本発明の一実施形態に係る泥水処理方法は、水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を調製する工程(以下、「工程A1」と言う。)と、前記掘削用泥水の比重を調整する工程(以下、「工程A2」と言う。)と、比重を調整した掘削用泥水を、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機に供給する工程(以下、「工程A3」と言う。)と、前記掘削機で発生する掘削土を伴う排泥水を前記掘削機から回収する工程(以下、「工程A4」と言う。)と、前記排泥水を土砂と水に分離する工程(以下、「工程A5」と言う。)と、前記排泥水から分離した水を、前記比重を調整する工程に供給する工程(以下、「工程A6」と言う。)と、を有し、前記掘削用泥水として、上述の実施形態の掘削用泥水を用いる。
【0038】
図1を参照して、本実施形態の泥水処理方法を説明する。
工程A1では、泥水調製槽11で、水に、粘土とベントナイトを配合して、上述の実施形態の掘削用泥水と同様の掘削用泥水100を調製する。
【0039】
工程A2では、調整槽12で、工程A3に供給する前に、工程A1で配合した掘削用泥水100の比重を所定の範囲内に調整する。工程A2では、上述のように、掘削機20に供給される掘削用泥水100の比重は、常に上記の範囲内に維持される。
【0040】
工程A3では、工程A2で比重を調整した掘削用泥水を、送泥水管14を通して、調整槽12から掘削機20に供給する。
【0041】
工程A4では、掘削機20で発生する掘削土を伴う排泥水を、掘削機20から土砂分離機13へ回収する。
【0042】
工程A5では、土砂分離機13で排泥水を土砂と水に分離する。
【0043】
工程A6では、排泥水から分離した水を、配管19を通って土砂分離機13から調整槽12に戻し、工程A2に供給する。
【0044】
本実施形態の泥水処理方法は、掘削機20に、上述の実施形態の掘削用泥水100が供給されるため、発泡を抑制するための消泡剤を用いた場合と同等以上に掘削用泥水100の発泡を抑制することができる。また、掘削用泥水100が消泡剤を含まないため、環境負荷を抑制することができる。さらに、掘削機20に供給する掘削用泥水100の比重を常に所定の範囲に維持することができるため、掘削用泥水100が発泡して、掘削機20の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機20へ掘削用泥水100を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりすることを抑制でき、施工性が向上する。
【0045】
[掘削方法]
本発明の一実施形態に係る掘削方法は、水に、粘土とベントナイトを配合して掘削用泥水を配合する工程(以下、「工程B1」と言う。)と、前記掘削用泥水の比重を調整する工程(以下、「工程B2」と言う。)と、比重を調整した掘削用泥水を、自然地盤または改良地盤を掘削する掘削機に供給する工程(以下、「工程B3」と言う。)と、前記掘削機で自然地盤または改良地盤を掘削する工程(以下、「工程B4」と言う。)と、前記掘削機で発生する掘削土を含む排泥水を前記掘削機から回収する工程(以下、「工程B5」と言う。)と、前記排泥水を土砂と水に分離する工程(以下、「工程B6」と言う。)と、前記排泥水から分離した水を、前記比重を調整する工程に供給する工程(以下、「工程B7」と言う。)と、を有し、前記掘削用泥水として、上述の実施形態の掘削用泥水を用いる。
【0046】
図1を参照して、本実施形態の掘削方法を説明する。
工程B1では、泥水調製槽11で、水に、粘土とベントナイトを配合して、上述の実施形態の掘削用泥水と同様の掘削用泥水100を配合する。
【0047】
工程B2では、調整槽12で、工程A3に供給する前に、工程A1で配合した掘削用泥水100の比重を所定の範囲内に調整する。
【0048】
工程B3では、工程A2で比重を調整した掘削用泥水100を、送泥水管14を通して、調整槽12から掘削機20に供給する。
【0049】
工程B4では、掘削用泥水100を自然地盤または改良地盤の掘削面に供給しながら、掘削機20で自然地盤または改良地盤を掘削する。
【0050】
工程B5では、掘削機20で発生する掘削土を伴う排泥水を、掘削機20から土砂分離機13へ回収する。
【0051】
工程B6では、土砂分離機13で排泥水を土砂と水に分離する。
【0052】
工程B7では、排泥水から分離した水を、配管19を通って土砂分離機13から調整槽12に戻し、工程A2に供給する。
【0053】
本実施形態の掘削方法は、掘削機20に、上述の実施形態の掘削用泥水100が供給されるため、発泡を抑制するための消泡剤を用いた場合と同等以上に掘削用泥水100の発泡を抑制することができる。また、掘削用泥水100が消泡剤を含まないため、環境負荷を抑制することができる。さらに、掘削機20に供給する掘削用泥水100の比重を常に所定の範囲に維持することができるため、掘削用泥水100が発泡して、掘削機20の切羽への負荷が大きくなったり、掘削機20へ掘削用泥水100を送るための圧送ポンプへの負荷が大きくなったりすることを抑制でき、施工性が向上する。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<測定方法>
[掘削用泥水の比重の測定方法]
上記の方法で掘削用泥水の比重を測定した。
【0056】
[掘削用泥水のファンネル粘度の測定方法]
上記の方法で掘削用泥水のファンネル粘度を測定した。
【0057】
[掘削用泥水の液面に占める泡量の測定方法]
ポリ容器に入れた掘削用泥水に、樹脂粉(ガラス長繊維強化硬質ウレタン発泡樹脂を研削して粉状にしたもの。粒径50μm~200μm、繊維長20μm~200μm、ガラス繊維体積含有率10%~20%。)を加えた。掘削用泥水に対する樹脂粉の添加量(掘削用泥水の1L当たりに対する添加量)を、0.2kg/Lとした。
樹脂粉を加えた掘削用泥水を、撹拌機により、回転数800rpmで2分間、撹拌した後、静置した。撹拌を終了してから1分経過した後、掘削用泥水の液面に占める泡の割合(面積率)を目視で確認した。この割合を、掘削用泥水の液面に占める泡量(%)とした。環境温度が20℃の場合と5℃の場合について、前記泡量を測定した。
【0058】
[掘削用泥水の判定]
掘削用泥水の液面に占める泡量が20%以下の場合を「◎」、掘削用泥水の液面に占める泡量が20%を超えて50%以下の場合を「○」、掘削用泥水の液面に占める泡量が50%を超える場合を「×」と評価した。
【0059】
[実施例1~4、比較例1]
ポリ容器内に水を注ぎ込み、その水に、粘土とベントナイトを配合して、掘削用泥水を調製した。粘土の含有量(掘削用泥水の1L当たりに含まれる量)とベントナイトの含有量(掘削用泥水の1L当たりに含まれる量)を表1に示すよう量にした。
実施例1~4および比較例1の掘削用泥水について、上記の測定と判定を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2、3]
表1に示すように、掘削用泥水に自己乳化型の消泡剤を添加したこと以外は、実施例1~4および比較例1と同様にして、掘削用泥水を調製した。
比較例2、3の掘削用泥水について、上記の測定と判定を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1に示す結果から、実施例1~4では、掘削用泥水の比重が1.15~1.20であるため、自己乳化型の消泡剤を添加した場合、比較例2、3と同等に泥水の泡を抑制する効果が得られた。
また、自己乳化型の消泡剤を用いた比較例2、3では、環境温度が5℃の場合には、環境温度が20℃の場合よりも泥水の泡を抑制する効果が低下した。これに対して、掘削用泥水の比重が1.15~1.20である実施例1~4では、環境温度が5℃の場合にも、環境温度が20℃の場合と同等の泥水の泡を抑制する効果が得られた。
自己乳化型の消泡剤は、水に添加すると分散して白濁することで消泡効果を発揮するものの、低温環境下(曇点以下の温度)では分散しにくいことから消泡効果が小さくなる。