(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005157
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】発電装置及び発電方法
(51)【国際特許分類】
H02K 7/18 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H02K7/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105224
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青柳 智英
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607DD03
5H607DD08
5H607FF21
(57)【要約】
【課題】可動部品の破損が防止可能であり、発電機で発電する電力量も増加出来て、電力量の増加により無線通信装置でより遠くまで電波を飛ばせる事が可能な発電装置と発電方法の提供。
【解決手段】発電装置を少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、発電機と、ハウジングで形成し、第1可動部品と第2可動部品を歯車とし、発電機をコアレスモータ、第2可動部品の歯数を3個以上とする。更に捩りコイルバネを備える。コアレスモータのシャフトの回転で、コイルをマグネットに対して回転して発電機で発電を行うと共に、第1中心軸の回転により捩りコイルバネの初期弾性エネルギーie1とie2により第1中心軸と第1可動部品の揺動が抑制されて、発電機での前記発電による電力とは逆方向の電力の発生が抑制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置は少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、発電機と、ハウジングとから形成され、
前記第1可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第1中心軸に回転可能に軸支されており、
前記第2可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第2中心軸に回転可能に軸支されている発電装置であって、
前記発電機がコアレスモータであると共に、前記発電機がコイルとマグネットを備え、前記発電機のシャフトに前記コイルが固定されており、
前記第2可動部品の歯数が3個以上であり、
前記発電装置が更に捩りコイルバネを備えており、
前記発電装置の外部から前記第2中心軸を介して力が前記第2可動部品に伝達され、
前記シャフトの回転により前記コイルが前記マグネットに対して回転される事で、前記発電機で電力が発生されて発電が行われる事を特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、前記第1巻回部が前記第1中心軸に巻回されており、前記第1巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が前記第1可動部品、前記第1中心軸、又は前記第2巻回部の何れかに連結されており、
前記第1巻回部の巻回形状及び前記第1巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触する事により、前記発電装置の外部から前記力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1が前記第1巻回部に付与されており、
前記第2巻回部が、前記第1巻回部と逆方向に前記第1中心軸に巻回されており、前記第2巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が前記第1可動部品、前記第1中心軸、又は前記第1巻回部の何れかに連結されており、
前記第2巻回部の巻回形状及び前記第2巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触する事により、前記発電装置の外部から前記力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2が前記第2巻回部に付与されており、
前記初期弾性エネルギーie2の絶対値が、前記初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定されており、前記第1可動部品が静止される事で初期状態に保持されており、
前記力が前記第2可動部品に伝達されて、前記第2可動部品が一定量回転され、前記第1可動部品の歯と前記第2可動部品の歯が噛み合って連動し、前記第1可動部品が一定量回転され、
前記第1可動部品の一定量の回転により前記第1巻回部が捩られ、その捩りによる弾性エネルギーie12が前記第1巻回部に蓄積され、
前記第1可動部品が一定量回転した後に、前記第1可動部品と前記第2可動部品の互いの歯の噛み合いが外れ、前記弾性エネルギーie12によって前記第1可動部品が逆方向に一定量回転されて前記第1中心軸が回転され、前記第1中心軸の回転が伝達されて前記発電機の前記シャフトが回転され、
前記第1中心軸の回転により前記第2巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触して前記自由端の動きが止められ、前記初期弾性エネルギーie1と前記初期弾性エネルギーie2により前記第1中心軸と前記第1可動部品の揺動が抑制されて、前記発電機での前記電力とは逆方向の電力の発生が抑制される請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
更に、前記第2巻回部の前記自由端が接触する接触部を備えており、
前記第1可動部品の一定量の回転により前記自由端が前記接触部に接触して前記第2巻回部が弾性変形され、弾性エネルギーie22が前記第2巻回部に蓄積され、
前記弾性エネルギーie12に加えて前記前記弾性エネルギーie22により前記第1可動部品が逆方向に一定量回転される請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記発電機で発生される前記電力の電力量が、88(mJ)以上103(mJ)以下である請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
請求項2に記載の前記発電装置を使用し、
前記発電装置の外部から前記第2中心軸を介して力を前記第2可動部品に伝達して、前記第2可動部品を一定量回転し、前記第1可動部品の歯と前記第2可動部品の歯を噛み合わせて連動させて、前記第1可動部品を一定量回転し、
前記第1可動部品の一定量の回転により前記第1巻回部を捩り、その捩りによる前記弾性エネルギーie12を前記第1巻回部に蓄積し、
前記第1可動部品が一定量回転した後に、前記第1可動部品と前記第2可動部品の互いの歯の噛み合いを外し、前記弾性エネルギーie12によって前記第1可動部品を逆方向に一定量回転させて前記第1中心軸を回転し、前記第1中心軸の回転を伝達して前記発電機の前記シャフトを回転させ、前記シャフトの回転により前記コイルが前記マグネットに対して回転する事で、前記発電機で電力を発生して発電を行い、
前記第1中心軸の回転により前記第2巻回部の前記自由端を前記ハウジングに接触させて前記自由端の動きを止めて、前記初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により前記第1中心軸と前記第1可動部品の揺動を抑制して、前記発電機での前記電力とは逆方向の電力の発生を抑制する事から成る発電方法。
【請求項6】
請求項3に記載の前記発電装置を使用し、
前記第1可動部品の一定量の回転により前記自由端が前記接触部に接触して前記第2巻回部が弾性変形し、弾性エネルギーie22が前記第2巻回部に蓄積し、
前記弾性エネルギーie12に加えて前記前記弾性エネルギーie22により前記第1可動部品が逆方向に一定量回転する請求項5に記載の発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置及び発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は使用されずに捨てられていた、身近な環境に存在する微弱な運動エネルギー(人力,振動,圧力,熱,太陽光等)を利用して電力を発電できる自己発電型の環境発電(エナジーハーベスティング:Energy Harvesting)が注目されている。
【0003】
この様な環境発電によって電力を発電する発電機構や発電方法として、例えば特許文献1が挙げられる。
【0004】
特許文献1記載の発電機構及び発電装置では、発電機構を少なくとも第1可動部品と、第2可動部品と、捩りコイルバネと、発電機と、ハウジングで形成している。第1可動部品と第2可動部品は歯車とし、捩りコイルバネの第1巻回部と第2巻回部を互いに逆方向に第1中心軸に巻回し、第1巻回部に初期弾性エネルギーie1を付与すると共に、第2巻回部に初期弾性エネルギーie2を付与し、ie2とie1の絶対値を等しく設定している。
【0005】
更に、発電機構の外部からの力で第2可動部品を初期状態から回転させ、第1可動部品と第2可動部品の歯部を噛み合わせて第1可動部品を回転させ、弾性エネルギーie12を第1巻回部に蓄積させる。その後、第1可動部品と第2可動部品の歯部の噛み合いを外してie12によって第1中心軸を逆方向に回転させ、その第1中心軸の回転を伝達させて発電機のシャフトを回転させ、発電機で発電を行う。
【0006】
発電された電力により、発電機構の用途に応じて、別途任意に設置可能な赤外線など無線通信装置を起動することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば
図15に示す発電機構に於いて、第2可動部品30aに於ける上側(
図15の上側)からn番目と(n-1)番目の歯間に、第1可動部品20aの歯部以外の箇所(
図15では引き出し番号20bの箇所)が噛み合い、噛み合い不良が発生していた。その結果、第1可動部品20aと第2可動部品30aの破損を招く懸念があった。なお
図15に於ける第2可動部品30aの歯数はn=3個である。この様な噛み合い不良は、第1巻回部の弾性エネルギーie12の減衰過程で、第1可動部品20aが揺動して初期状態から円弧長dだけ逆方向に回転している時に発生していた。
【0009】
本出願人が検討した結果、発電機にコアードモータを採用する事で、前記揺動が発生する事が突き止められた。即ち、発電機に於いて多くの重量を占める鉄芯の回転に伴う慣性モーメントにより、減衰過程で揺動が発電機のシャフトを介して第1可能部品20aに伝達され、第1可能部品20aに揺動が発生していた事を、
図16又は
図17に示す様な発電電圧での計測により、本出願人は突き止めた。
【0010】
更に噛み合い不良を防止しようとすると、第2可動部品30aの歯数を増加させる事が出来なかった。その結果、第2可動部品30aと噛み合う第1可動部品20aの回転角を拡大する事が出来ず、捩りコイルバネに蓄積できる弾性エネルギーie12も増加させられなかった。弾性エネルギーie12が増加させられなかった為、発電機で大きな電力を発電させる事も不可能であった。
【0011】
具体的には、
図16又は
図17、及び
図18の表に示す様に、従来の発電機構で発電される電力量の最大値は41(mJ)程度に留まっていた。この様に大きな電力量が発電出来なかった為、赤外線等の無線通信装置から送信する電波の送信回数を増やす事が出来なかった。或いは、より長距離通信が可能な無線通信装置を駆動させる事が出来なかった。従って、電波をより遠くまで飛ばす事が出来なかった。
【0012】
なお円弧長dとは、第1可動部品20aの基準ピッチ円の円周上に於ける、隣り合う歯先の中央間の円弧長である。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、可動部品(特に、第1可動部品と第2可動部品)の破損が防止可能で、発電機にコアレスモータを使用した発電装置と発電方法の提供を目的とする。
【0014】
更に第2可動部品の歯数を増加させる事で、回転角を増加出来て、捩りコイルバネに蓄積できる弾性エネルギーが増加可能となる事で、発電機で発電する電力量も増加出来て、電力量の増加により無線通信装置でより遠くまで電波を飛ばせる事が可能な発電装置と発電方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の発電装置は少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、発電機と、ハウジングとから形成され、前記第1可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第1中心軸に回転可能に軸支されており、前記第2可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第2中心軸に回転可能に軸支されている発電装置であって、前記発電機がコアレスモータであると共に、前記発電機がコイルとマグネットを備え、前記発電機のシャフトに前記コイルが固定されており、前記第2可動部品の歯数が3個以上であり、前記発電装置が更に捩りコイルバネを備えており、前記発電装置の外部から前記第2中心軸を介して力が前記第2可動部品に伝達され、前記シャフトの回転により前記コイルが前記マグネットに対して回転される事で、前記発電機で電力が発生されて発電が行われる事を特徴とする。
【0016】
本発明の発電装置の一実施形態は、前記捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、前記第1巻回部が前記第1中心軸に巻回されており、前記第1巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が前記第1可動部品、前記第1中心軸、又は前記第2巻回部の何れかに連結されており、前記第1巻回部の巻回形状及び前記第1巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触する事により、前記発電装置の外部から前記力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1が前記第1巻回部に付与されており、前記第2巻回部が、前記第1巻回部と逆方向に前記第1中心軸に巻回されており、前記第2巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が前記第1可動部品、前記第1中心軸、又は前記第1巻回部の何れかに連結されており、前記第2巻回部の巻回形状及び前記第2巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触する事により、前記発電装置の外部から前記力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2が前記第2巻回部に付与されており、前記初期弾性エネルギーie2の絶対値が、前記初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定されており、前記第1可動部品が静止される事で初期状態に保持されており、前記力が前記第2可動部品に伝達されて、前記第2可動部品が一定量回転され、前記第1可動部品の歯と前記第2可動部品の歯が噛み合って連動し、前記第1可動部品が一定量回転され、前記第1可動部品の一定量の回転により前記第1巻回部が捩られ、その捩りによる弾性エネルギーie12が前記第1巻回部に蓄積され、前記第1可動部品が一定量回転した後に、前記第1可動部品と前記第2可動部品の互いの歯の噛み合いが外れ、前記弾性エネルギーie12によって前記第1可動部品が逆方向に一定量回転されて前記第1中心軸が回転され、前記第1中心軸の回転が伝達されて前記発電機の前記シャフトが回転され、前記第1中心軸の回転により前記第2巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触して前記自由端の動きが止められ、前記初期弾性エネルギーie1と前記初期弾性エネルギーie2により前記第1中心軸と前記第1可動部品の揺動が抑制されて、前記発電機での前記電力とは逆方向の電力の発生が抑制される事が好ましい。
【0017】
本発明の発電装置の他の実施形態は、更に、前記第2巻回部の前記自由端が接触する接触部を備えており、前記第1可動部品の一定量の回転により前記自由端が前記接触部に接触して前記第2巻回部が弾性変形され、弾性エネルギーie22が前記第2巻回部に蓄積され、前記弾性エネルギーie12に加えて前記前記弾性エネルギーie22により前記第1可動部品が逆方向に一定量回転される事が好ましい。
【0018】
本発明の発電装置の他の実施形態は、前記発電機で発生される前記電力の電力量が、88(mJ)以上103(mJ)以下である事が好ましい。
【0019】
また本発明の発電方法は、前記発電装置を使用し、前記発電装置の外部から前記第2中心軸を介して力を前記第2可動部品に伝達して、前記第2可動部品を一定量回転し、前記第1可動部品の歯と前記第2可動部品の歯を噛み合わせて連動させて、前記第1可動部品を一定量回転し、前記第1可動部品の一定量の回転により前記第1巻回部を捩り、その捩りによる前記弾性エネルギーie12を前記第1巻回部に蓄積し、前記第1可動部品が一定量回転した後に、前記第1可動部品と前記第2可動部品の互いの歯の噛み合いを外し、前記弾性エネルギーie12によって前記第1可動部品を逆方向に一定量回転させて前記第1中心軸を回転し、前記第1中心軸の回転を伝達して前記発電機の前記シャフトを回転させ、前記シャフトの回転により前記コイルが前記マグネットに対して回転する事で、前記発電機で電力を発生して発電を行い、前記第1中心軸の回転により前記第2巻回部の前記自由端を前記ハウジングに接触させて前記自由端の動きを止めて、前記初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により前記第1中心軸と前記第1可動部品の揺動を抑制して、前記発電機での前記電力とは逆方向の電力の発生を抑制する事から成る事を特徴とする。
【0020】
本発明の発電方法の一実施形態は前記発電装置を使用し、前記第1可動部品の一定量の回転により前記自由端が前記接触部に接触して前記第2巻回部が弾性変形し、弾性エネルギーie22が前記第2巻回部に蓄積し、前記弾性エネルギーie12に加えて前記前記弾性エネルギーie22により前記第1可動部品が逆方向に一定量回転する事が好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発電装置又は発電方法に依れば、発電後の第1中心軸と第1可動部品、及びシャフトの揺動が抑制される。従って、第2可動部品の歯数を3個以上に増加させても、揺動に伴う第1可動部品との噛み合い不良が防止され、第1可動部品と第2可動部品の破損が防止可能となる。
【0022】
更に、前記揺動に伴う第1可動部品と第2可動部品との噛み合い不良が防止されるので、第2可動部品の歯数を3個以上に増加させる事が可能となり、第1可動部品と第2可動部品の噛み合う歯数も増加可能となる。従って、第1可動部品と第2可動部品の互いの歯が噛み合うピッチ円の円弧長が拡大される為、第1可動部品と第1中心軸の回転角も拡大する事ができ、第1捩りコイルバネと第2捩りコイルバネにそれぞれ蓄積できる弾性エネルギーie12とie22も増加させる事が出来る。よって、1回の発電動作に伴う発電機での電力量を増加可能となるので、赤外線等の無線通信装置の電波をより遠くまで飛ばす事が可能となるので、本発明に係る発電装置又は発電方法が、車両の進入や通過、又は駐車の報知装置等により好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例に係る発電装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1の発電装置のハウジング及びスイッチを裏面側から見ると共に、ハウジング内の発電機構の構成を抜き出して示す部分説明図である。
【
図3】
図2の発電機構に於ける、第1可動部品と第1中心軸,捩りコイルバネ,及び仕切り板を抜粋して図示する斜視図である。
【
図4】
図2の発電機構に於ける、第2可動部品と第2中心軸を抜粋して示した側面図である。
【
図5】本発明に係る発電装置又は発電方法で使用されるコアレスモータの内部構造を模式的に示す部分断面斜視図である。
【
図6】捩りコイルバネの、第1巻回部のバネ定数の傾きと、第1巻回部に付与される初期弾性エネルギーie1の大きさ及び第1巻回部の捩じり角度に応じて第1巻回部に蓄積される弾性エネルギーie12を示すグラフである。
【
図7】捩りコイルバネの、第2巻回部のバネ定数の傾きと、第2巻回部に付与される初期弾性エネルギーie2の大きさ及び第2巻回部の捩じり角度に応じて第2巻回部に蓄積される弾性エネルギーie22を示すグラフである。
【
図9】
図3の発電機構を、図中矢印A方向から見ると共に、第2可動部品と第2中心軸を構成に加えて示した模式図である。
【
図10】
図9の状態から、第2可動部品及び第1可動部品が回転された状態を示す模式図である。
【
図11】
図10の状態から、弾性エネルギーie12によって第1可動部品が逆方向に回転された状態を示す模式図である。
【
図12】
図11の状態から、第2可動部品及び第1可動部品がそれぞれ逆方向に回転され、第2可動部品と第1可動部品の歯部が噛み合い後、第2可動部品と第1可動部品の歯部の噛み合いが外れた状態を示す模式図である。
【
図13】
図10で示す発電装置の動作直後に発電される電圧のグラフである。
【
図14】
図12で示す発電装置の動作直後に発電される電圧のグラフである。
【
図15】従来の発電機構に於ける、第1可動部品と第2可動部品の噛み合い不良の状態を示す説明図である。
【
図16】従来の発電機構で発電される電圧のグラフである。
【
図18】本発明の実施例に係る発電装置、又は従来の発電機構に於ける、最大電圧(V)、最大電流(mA)、最大電力(mW)、電力量(mJ)の比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施の形態の第一の特徴は、発電装置が少なくとも、第1可動部品と、第2可動部品と、発電機と、ハウジングとから形成され、前記第1可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第1中心軸に回転可能に軸支されており、前記第2可動部品が、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯が形成された歯車であり、第2中心軸に回転可能に軸支されている発電装置であって、前記発電機がコアレスモータであると共に、前記発電機がコイルとマグネットを備え、前記発電機のシャフトに前記コイルが固定されており、前記第2可動部品の歯数が3個以上であり、前記発電装置が更に捩りコイルバネを備えており、前記発電装置の外部から前記第2中心軸を介して力が前記第2可動部品に伝達され、前記シャフトの回転により前記コイルが前記マグネットに対して回転される事で、前記発電機で電力が発生されて発電が行われる事とした。
【0025】
第二の特徴は、前記捩りコイルバネが、少なくとも第1巻回部と第2巻回部を有し、前記第1巻回部が前記第1中心軸に巻回されており、前記第1巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が前記第1可動部品、前記第1中心軸、又は前記第2巻回部の何れかに連結されており、前記第1巻回部の巻回形状及び前記第1巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触する事により、前記発電装置の外部から前記力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1が前記第1巻回部に付与されており、前記第2巻回部が、前記第1巻回部と逆方向に前記第1中心軸に巻回されており、前記第2巻回部の一方の端部が自由端で、他方の端部が前記第1可動部品、前記第1中心軸、又は前記第1巻回部の何れかに連結されており、前記第2巻回部の巻回形状及び前記第2巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触する事により、前記発電装置の外部から前記力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2が前記第2巻回部に付与されており、前記初期弾性エネルギーie2の絶対値が、前記初期弾性エネルギーie1の絶対値と等しく設定されており、前記第1可動部品が静止される事で初期状態に保持されており、前記力が前記第2可動部品に伝達されて、前記第2可動部品が一定量回転され、前記第1可動部品の歯と前記第2可動部品の歯が噛み合って連動し、前記第1可動部品が一定量回転され、前記第1可動部品の一定量の回転により前記第1巻回部が捩られ、その捩りによる弾性エネルギーie12が前記第1巻回部に蓄積され、前記第1可動部品が一定量回転した後に、前記第1可動部品と前記第2可動部品の互いの歯の噛み合いが外れ、前記弾性エネルギーie12によって前記第1可動部品が逆方向に一定量回転されて前記第1中心軸が回転され、前記第1中心軸の回転が伝達されて前記発電機の前記シャフトが回転され、前記第1中心軸の回転により前記第2巻回部の前記自由端が前記ハウジングに接触して前記自由端の動きが止められ、前記初期弾性エネルギーie1と前記初期弾性エネルギーie2により前記第1中心軸と前記第1可動部品の揺動が抑制されて、前記発電機での前記電力とは逆方向の電力の発生が抑制される発電装置とした。
【0026】
第三の特徴は、更に、前記第2巻回部の前記自由端が接触する接触部を備えており、前記第1可動部品の一定量の回転により前記自由端が前記接触部に接触して前記第2巻回部が弾性変形され、弾性エネルギーie22が前記第2巻回部に蓄積され、前記弾性エネルギーie12に加えて前記前記弾性エネルギーie22により前記第1可動部品が逆方向に一定量回転される発電装置とした。
【0027】
第四の特徴は、前記発電機で発生される前記電力の電力量が、88(mJ)以上103(mJ)以下である発電装置とした。
【0028】
第五の特徴は、発電方法が前記発電装置を使用し、前記発電装置の外部から前記第2中心軸を介して力を前記第2可動部品に伝達して、前記第2可動部品を一定量回転し、前記第1可動部品の歯と前記第2可動部品の歯を噛み合わせて連動させて、前記第1可動部品を一定量回転し、前記第1可動部品の一定量の回転により前記第1巻回部を捩り、その捩りによる前記弾性エネルギーie12を前記第1巻回部に蓄積し、前記第1可動部品が一定量回転した後に、前記第1可動部品と前記第2可動部品の互いの歯の噛み合いを外し、前記弾性エネルギーie12によって前記第1可動部品を逆方向に一定量回転させて前記第1中心軸を回転し、前記第1中心軸の回転を伝達して前記発電機の前記シャフトを回転させ、前記シャフトの回転により前記コイルが前記マグネットに対して回転する事で、前記発電機で電力を発生して発電を行い、前記第1中心軸の回転により前記第2巻回部の前記自由端を前記ハウジングに接触させて前記自由端の動きを止めて、前記初期弾性エネルギーie1と初期弾性エネルギーie2により前記第1中心軸と前記第1可動部品の揺動を抑制して、前記発電機での前記電力とは逆方向の電力の発生を抑制する事から成る事とした。
【0029】
第六の特徴は、前記発電装置を使用し、前記第1可動部品の一定量の回転により前記自由端が前記接触部に接触して前記第2巻回部が弾性変形し、弾性エネルギーie22が前記第2巻回部に蓄積し、前記弾性エネルギーie12に加えて前記前記弾性エネルギーie22により前記第1可動部品が逆方向に一定量回転する発電方法とした。
【0030】
なお本発明において、第1可動部品と第2可動部品の回転量における「一定量」は同一とは限らず、各回転方向に応じて「一定量」が異なる場合や、各部品の寸法の差異によって生じる回転角の差異も含むものとする。
【0031】
以上の発電機構又は発電方法は、車両の進入や通過、又は駐車の報知装置等に使用することが出来る。
【0032】
なお本発明では、捩りコイルバネの第1巻回部又は第2巻回部に付与若しくは蓄積されるトルク(N・mm)を「弾性エネルギー」(mJ)と表記して、説明する。よって、
図6又は
図7の縦軸も「トルク(N・mm)」では無く「弾性エネルギー(mJ)」と表記する。
【0033】
以下に本発明に係る実施例を説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例0034】
以下、
図1~
図14を参照して本発明に係る実施例の発電装置1、及びその発電装置1による発電方法を説明する。
図1又は
図2に示す様に、発電装置1は少なくとも、発電機構12と、スイッチ9を備える。更に発電装置1は少なくとも、第1可動部品2aと、第2可動部品3aと、発電機5と、ハウジング6とから形成されている。更に
図2に示す様に、発電機構12は捩りコイルバネ4を備えている。
【0035】
図1に示すハウジング6の内部には、
図2の様に少なくとも第1可動部品2aと第2可動部品3aと捩りコイルバネ4と発電機5が収められている。また、第2中心軸3bの他端側(即ち、第2可動部品3aが軸支されている一端側の反対端側)は、ハウジング6に設けた孔を通って、ハウジング6の外部へと突出され、
図2に示す様にスイッチ9に直接又は間接的に連結されている。
【0036】
第1可動部品2aは、カム形状の伝動車の外形周囲における少なくとも一部に、複数の歯が形成された歯車であり、第1中心軸2bを中心に回転可能に軸支されている。第1中心軸2bはハウジング6内部で両端が軸支されている。更に、第1可動部品2aの基準ピッチ円の円周上での、隣り合う歯先の中央間の円弧長は、
図9に示す様にdに設定されている。
【0037】
また
図4に示す様に第2可動部品3aも、カム形状の伝動車の外形周囲における少なくとも一部に、複数(3個以上)の歯が形成された歯車であり、第2中心軸3bを中心に回転可能に軸支されている。
図4では一実施例として、歯数が3個の第2可動部品3aを図示している。
【0038】
第1可動部品2a及び第2可動部品3aの歯形は、本実施例では共にインボリュート歯形である。インボリュート歯形とすることにより、互いの歯車の中心距離(第1中心軸2bの中心と、第2中心軸3bの中心との間の直線間隔)が若干変化しても噛み合いが正しく保たれると共に、容易に作製でき、滑りも少ないため好ましい。なお2a又は3aの歯形を、インボリュート歯形に換えて、サイクロイド歯形に形成することも可能である。
【0039】
捩りコイルバネ4は、少なくとも第1巻回部と第2巻回部の2つの巻回部を有するバネとする。発電装置1では、第1巻回部と第2巻回部が個別に形成された2つの捩りコイルバネ(第1捩りコイルバネ4aと第2捩りコイルバネ4b)が設けられている。
【0040】
図2又は
図3に示すように、第1捩りコイルバネ4aの巻回部(第1巻回部)は第1中心軸2bに巻回されており、第1巻回部の一方の端部が自由端4a1である。一方、他方の端部は、第1可動部品2a、第1中心軸2b、又は第2巻回部の何れかに連結するものとし、本実施例の発電装置1では第1可動部品2aに連結されている。
【0041】
更に第1巻回部の自由端4a1は、ハウジング6を構成する仕切り板6aの側面に接触している。この接触及び第1巻回部の巻回形状により、発電機構12の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie1(mJ)が第1巻回部(即ち、第1捩りコイルバネ4a)に付与されている。
【0042】
一方、
図2又は
図3に示すように、第2捩りコイルバネ4bの巻回部(第2巻回部)は、第1巻回部とは逆方向に第1中心軸2bに巻回されており、第2巻回部の一方の端部は自由端4b1である。また他方の端部は、第1可動部品2a、第1中心軸2b、又は第1巻回部の何れかに連結するものとし、本実施例の発電装置1では第1可動部品2aに連結されている。
【0043】
更に第2巻回部の自由端4b1は、ハウジング6を構成する仕切り板6aの側面に接触している。この接触及び第2巻回部の巻回形状により、発電機構12の外部から力が伝達されない状態で初期弾性エネルギーie2(mJ)が第2巻回部(即ち、第2捩りコイルバネ4b)に付与されている。
【0044】
図6と
図7に示す様に、初期弾性エネルギーie2(mJ)の絶対値は、初期弾性エネルギーie1(mJ)の絶対値と等しく設定されている。従って
図6と
図7を合成すると、
図8に示す様にie1とie2は相殺されて均衡状態となる。このie2の絶対値とie1の絶対値の均衡が保たれた状態で、第1可動部品2aが静止され初期状態に保持されている。
【0045】
更に
図3に示す様に、仕切り板6aの一面には、第1中心軸2b及び2つの巻回部の回転に伴う自由端(4a1又は4b1)の移動で、自由端(4a1又は4b1)が接触する接触部6bが一体に備えられている。なお
図2では、接触部6bの図示は省略している。
【0046】
また
図2に示す様に、第1中心軸2bの軸方向と、発電機5のシャフト5aの軸方向を、互いに平行に構成すると共に、第1中心軸2bに於ける第1可動部品2aの軸支側と反対側に、平歯車7を軸支している。一方、シャフト5aの端部にも平歯車8が軸支されている。従って、第1中心軸2bと発電機5のシャフト5aが、2つの平歯車7及び8で連結されている。なお
図2では、第1可動部品2a,第2可動部品3a,平歯車7,及び平歯車8の歯形の図示は省略している。
【0047】
発電装置1では、第1巻回部と第2巻回部のそれぞれの他方の端部を、第1可動部品2aに連結しているが、他方の端部同士を互いに接続することで、第1巻回部と第2巻回部を有する1つの捩りコイルバネを、捩りコイルバネ4の代わりに用いても良い。
【0048】
発電機5は
図5に示す様に、少なくともコイル5bとマグネット5cを備えたコアレスモータであり、発電機5のシャフト5aにコイル5bが固定されている型式のものである。従ってシャフト5aの回転に伴い、コイル5bがマグネット5cに対して回転する型式のものである。
【0049】
ハウジング6は、内部空間を有する部品であり、内部空間には発電機5を固定する為の仕切り板6a等が設けられている。この仕切り板6aもハウジング6の構成部品となる。以下、必要に応じて仕切り板6aも含めてハウジング6と表記する。なおハウジング6は、一体成形された一つの部品でも良いし、幾つかの側面部品や底面部品等からなる組合せ品に変更しても良い。
【0050】
第1可動部品2a、第2可動部品3a、平歯車7、8、ハウジング6、及び接触部6bの材料はそれぞれ任意に選択可能であり、例えばプラスチックや、無潤滑で摺動可能な樹脂、ステンレス、鋼などを用いれば良い。
【0051】
スイッチ9は、後述する2つの固定部品(10,10)に依って軸を両持ち軸支された部品であり、その軸を支点として揺動し、その揺動毎に時計方向及び反時計方向に回転し、左右両端が上下するシーソー式のスイッチである。スイッチ9の軸とは、第2中心軸3bか、又は第2中心軸3bに連結されている軸とする。スイッチ9には車両の車輪が接触するため、車両が乗り上げる時や、車両が通過する時の衝撃を緩和させる為に、スイッチ9は収縮変形可能で弾性力を有するゴム製が好ましい。
【0052】
固定部品10はゴム製の台であり、2つの固定部品(10,10)で1つのスイッチ9の軸を両持ち軸支している。固定部品10は、車両の車輪が接触する踏み台用の部品である。従って、車両がスイッチ9へ乗り上げる時や、車両が通過する時の衝撃を緩和させる為に、収縮変形可能で弾性力を有するゴム製が好ましい。更に固定部品10には、前記乗り上げ時や通過時の接触を円滑に移行する2つの斜面が前後に設けられていると共に、路面等の設置面にボルトで固定するボルト止め部10aが2箇所設けられている。また、前記乗り上げ時や通過時の車輪や足等の滑り止め用の凹凸を、固定部品10の表面に設けても良い。
【0053】
ハウジング6も、固定部品10と同様なゴム製が好ましく、路面等の設置面に固定する固定部を設けても良い。
【0054】
次に、発電装置1の動作に関して説明する。シーソー式のスイッチ9に、発電機構12の外部からの人力または使用用途毎の発電対象物からの押圧力と云った力が加わって、スイッチ9と接触する事でスイッチ9が動き(揺動)、そのスイッチ9の動き(揺動)により第2中心軸3bが回転される。
【0055】
その第2中心軸3bの回転により、発電装置1の外部から第2中心軸3bを介して力が第2可動部品3aに伝達され、第2可動部品3aが一定量(
図9及び
図10では、反時計方向に回転して可動する。従って、第2可動部品3aは発電装置1内ではスイッチ部分として機能し、スイッチング動作により可動する部品である。
【0056】
第2可動部品3aの回転が第1可動部品2aに伝達される前段階では、第1可動部品2aは
図6及び
図7のグラフに示すように、ie2とie1とが釣り合う位置に保持されている。次に第2可動部品3aが回転すると、第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合って連動が開始される。
【0057】
第2可動部品3aに力が伝達され続け、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合わされている間は、第1可動部品2aは回転し続ける。よって、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れるまで、第1可動部品2aは一定量回転される(本実施例の場合、
図9及び
図10で時計方向の回転となる)。
【0058】
第1可動部品2aの一定量の回転に伴い、第1中心軸2bと前記第1巻回部も、第1可動部品2aと連動して一定量回転する。しかし、第1巻回部の自由端4a1はハウジング6の側面に初期状態で接触している為、動きが止められている。一方、第1巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって第1巻回部は捩られる事となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部の噛み合いに伴う捩りにより、弾性エネルギーie12(mJ)が第1巻回部に蓄積される。弾性エネルギーie12(mJ)は、
図6に示される様に、第1可動部品2aの回転角度(即ち、第1巻回部の捩じり角度(°))に比例して増加する。
【0059】
一方、前記第2巻回部も、第1可動部品2aの一定量の回転に伴い、第1可動部品2aと連動して一定量回転する。その回転に伴い、
図10に示す様に自由端4b1が仕切り板6aから離れて接触部6bに接触し、自由端4b1の回転移動が止められる。一方、第2巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。
【0060】
よって第2巻回部は弾性変形される事となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部の噛み合いに伴う弾性変形により、弾性エネルギーie22(mJ)が第2巻回部に蓄積される。
【0061】
第2巻回部の弾性変形は、第2巻回部の巻回方向とは逆方向の回転により発生される。即ち前記弾性変形は、第2巻回部の巻回形状を解く変形である。
図7に示す様に、第1可動部品2aの回転角度(即ち、第2巻回部の捩じり角度(°))に対して、+100°まではie2の絶対値は一次的に減少して行き、+100°の時点で0(mJ)となる。+100°まではie2の一次的な減少のみでie2は残存している為、自由端4b1は仕切り板6aにie2により押し付けられて接触された状態を保持する。
【0062】
前記捩じり角度が+100°になるとie2は0(mJ)となり、以後捩り角度の増加に伴って自由端4b1は仕切り板6aから離れ、第1中心軸2bの回転に伴って回転して接触部6bに接触する。一方、第2巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部の噛み合いに伴う弾性変形により、
図7に示される様に前記捩じり角度が+100°を超えてからは、第1可動部品2aの回転角度(即ち、第2巻回部の捩じり角度(°))に比例して弾性エネルギーie22(mJ)が発生すると共に増加する。
【0063】
なお、
図3及び
図9乃至
図12では、分かり易さを優先して仕切り板6aの面と接触部6b間の隙間を大きめに図示しているが、この隙間は自由端4b1が入る最低限の寸法に設定可能である。この様な寸法に設定する事で、自由端4b1の仕切り板6aからの離間と接触部6bへの接触を連続して発生させる事が可能となり、
図7の様なグラフが実現される。
【0064】
第1巻回部の捩り及び第2巻回部の弾性変形は、第2可動部品3aに力が伝達され続けて第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合わされている間は保持される。従って、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる直前における、第1巻回部の弾性エネルギーie12及び第2巻回部の弾性エネルギーie22が最大量となる(
図6及び
図7では捩り角度が240°の時である)。
【0065】
第1可動部品2aが一定量(
図6及び
図7では240°)回転した後に、
図10に示すように第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる。すると、第1巻回部の捩りと第2巻回部の弾性変形による変形保持が外れ、第1巻回部及び第2巻回部の変形が解放される。前記変形が解放されると、ハウジング6側面(仕切り板6a)に接触して止められていた第1巻回部の自由端4a1と、接触部6bに接触して止められていた第2巻回部の自由端4b1をそれぞれ支点にして、ie12に加えてie22により第1可動部品2aが逆方向に一定量回転する。本実施例では反時計方向への回転となる(
図10から
図11の順に参照)。即ち、ie12とie22が第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転に変換される。
【0066】
第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転に伴い、第1中心軸2bも一定量だけ逆方向に回転すると共に平歯車7も連動して回転し、更に平歯車8を介してシャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される。なお、平歯車7と8の歯数比により、第1可動部品2aと第1中心軸2bの回転量に於ける「一定量」と、発電機5のシャフト5aの回転量に於ける「一定量」は、それぞれ異なる。シャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される事で、発電機5内部でシャフト5aに連結されたコイル5bがマグネット5cに対して回転される。
【0067】
シャフト5aの回転によりコイル5bがマグネット5cに対して回転される事で、発電機5内部で電力が発生されて発電が行われる。その電力により、発電装置1の用途に応じてハウジング6に別途設けた、図示しない赤外線など無線通信装置を起動させる事が可能となる。無線通信装置が起動され無線信号が発信されて、例えば車両の進入や通過、又は駐車の報知が可能となる。なお防塵の為に、別途シート等を発電装置1に掛けても良い。
【0068】
シャフト5aの回転量及び速度は、第1可動部品2aの逆方向の回転量(即ちie12及びie22の合計の最大値と、平歯車7と8の歯数比に応じて変わる。第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部が噛み合うピッチ円の円弧長に伴って、ie12は及びie22は任意の一定量で設定可能である。一方で、平歯車7と8の歯数比も任意の一定量に設定可能である。従って、発電機構12毎の仕様に応じて、シャフト5aの回転量も任意の一定量で設定する事が出来る為、発電機5による電力量も、第2可動部品3aに伝わる外部からの力の速度に関係無く一定値に設定可能となる。
【0069】
第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転後に、弾性エネルギーie12及びie22は減衰される。同時に、第1中心軸2bの逆方向の回転に伴って、第2巻回部の自由端4b1もその回転に伴って移動して接触部6bから離れ、第2巻回部の自由端4b1がハウジング6の側面(仕切り板6a)に接触して自由端4b1の動きが止められる(
図10から
図11参照)。
【0070】
すると、ハウジング6側面(仕切り板6a)に接触して止められた第2巻回部の自由端4b1及びこの時点で既にハウジング6側面(仕切り板6a)に接触している第1巻回部の自由端4a1を支点にしてie1とie2により、ie1とie2とが相殺されて均衡状態となる回転位置に第1中心軸2bと第1可動部品2aが保持される。この第1中心軸2bの回転により、第1可動部品2aは初期状態(即ち、第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合う前の状態)に復帰される。
【0071】
本発明では、発電機5にコアレスモータを採用している。従ってシャフト5aの回転時に、鉄芯やマグネット5cよりも比較的軽量なコイル5bのみを回転させて発電を行う事が可能となる。従って回転に伴うシャフト5aの慣性モーメントを減少させる事が出来るので、平歯車8及び7を介しての、第1中心軸2bと第1可動部品2aの発電後の揺動をie1とie2により抑制する事が可能となる。
【0072】
第1中心軸2bと第1可動部品2aの発電後の揺動が抑制されると、平歯車7及び8を介したシャフト5aの揺動も抑制されるので、発電機5での前記電力とは逆方向の電力の発生も抑制される。
【0073】
図10で示す発電装置の動作直後に発電される電圧のグラフを、
図13に示す。
図13から明らかな様に、プラス側の電圧が発電された後、逆方向の電圧の発生が抑制され、シャフト5aの揺動に伴う発電が抑制されている事が分かる。
【0074】
以上、本発明に係る発電装置1又は発電装置1による発電方法に依れば、発電後の第1中心軸2bと第1可動部品2a、及びシャフト5aの揺動が抑制される。従って、第2可動部品3aの歯数を3個以上に増加させても、揺動に伴う第1可動部品2aとの噛み合い不良が防止され、第1可動部品2aと第2可動部品3aの破損が防止可能となる。
【0075】
更に、前記揺動に伴う第1可動部品2aと第2可動部品3aとの噛み合い不良が防止されるので、第2可動部品3aの歯数を3個以上に増加させる事が可能となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの噛み合う歯数も増加可能となる。従って、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合うピッチ円の円弧長が拡大される為、第1可動部品2aと第1中心軸2bの回転角も拡大する事ができ、第1捩りコイルバネ4aと第2捩りコイルバネにそれぞれ蓄積できる弾性エネルギーie12とie22も増加させる事が出来る。
【0076】
よって、1回の発電動作に伴う発電機5での電力量を増加させる事が可能となるので、赤外線等の無線通信装置から送信する電波の送信回数を増やすか、より長距離通信が可能な無線通信装置を駆動させる事が出来る。従って、赤外線等の無線通信装置の電波をより遠くまで飛ばす事が可能となるので、発電装1又はその発電装置1を使用した発電方法が、車両の進入や通過、又は駐車の報知装置等により好適となる。
【0077】
また
図13より、本発明に係る発電装置1又は発電装置1による発電方法に依れば、最大電圧を発電してから、第1中心軸2bと第1可動部品2aの発電後の揺動が抑制されると共に、前記揺動の抑制による逆方向の電圧の発生も抑制可能となる。従って、車両が高速でスイッチ9上を通過しても、第1可動部品2aと第2可動部品3aの噛み合い不良による発電動作不良を起こす事が解消され、より前記報知装置等に好適である。
【0078】
一方、
図16に示す従来の発電機構では、最大電圧発電後に揺動が発生していた。従って、
図13と
図16の比較から、高速で通過又は進入する車両の報知装置として、本発明に係る発電装置1又は発電装置1による発電方法が望ましい事が分かる。
【0079】
図18の表及び
図13より、発電機5で発電可能となる最大電圧(V)は、従来の発電機構の15.6(V)から、実施例では27.2(V)と174%の変化率になった。また最大電流も120(mA)から154(mA)に増加し128%の変化率となった。従って、最大電力は1872(mW)から5691(mW)となり304%の変化率に、電力量は41(mJ)から103(mJ)となり252%の変化率となり、電力量の増加が確認された。
【0080】
なお、第1捩りコイルバネ4a及び第2捩りコイルバネ4bの安全率を考慮したバネ設計を行うと、発電可能な電力量は88(mJ)となり、従来の発電機構からの変化率は215%に抑えられたが、無線通信装置の電波をより遠くまで飛ばす点に於いては、充分な電力量の増加が確認された。従って、本実施形態の発電機5で発生される電力の電力量は、88(mJ)以上103(mJ)以下の範囲内の何れかとする。
【0081】
また、本実施例の別形態として、接触部6bを設けなくても良い。その形態の場合、発電装置1での発電は、前記ie12のみで行う事となる。従って、電力量の増加という点では前記ie22を加える事が出来る、本実施例の形態がより望ましい。
【0082】
更に
図11の状態から、シーソー式のスイッチ9に車輪や足等が触れると、第2可動部品3aは逆方向への回転(即ち、
図11から
図12に於ける時計方向の回転)を始める。
【0083】
第2可動部品3aが一定量逆方向に回転する際に、第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が再び噛み合って互いに連動し、第1可動部品2aが逆方向に一定量回転される(本実施例では反時計方向の回転となる。
図11及び
図12参照。)。第1可動部品2aの逆方向の回転量は、第2可動部品3aの逆方向の一定量の回転量に依る。
【0084】
第1可動部品2aの一定量の逆方向の回転により、第1中心軸2bと前記第2巻回部も、第1可動部品2aと連動して一定量回転する。しかし、第2巻回部の自由端4b1はハウジング6の側面(仕切り板6a)に初期状態で接触している為、動きが止められている。一方、第2巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって第2巻回部は捩られる事となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部の噛み合いに伴う捩りにより、弾性エネルギーie22(mJ)が第2巻回部に蓄積される。弾性エネルギーie22(mJ)は、
図7に示される様に、第1可動部品2aの回転角度(即ち、第2巻回部の捩じり角度(°))に比例して、絶対値が増加する。
【0085】
一方、前記第1巻回部も、第1可動部品2aの一定量の回転に伴い、第1可動部品2aと連動して一定量回転する。その回転に伴い、
図12に示す様に自由端4a1が仕切り板6aから離れて接触部6bに接触し、自由端4a1の回転移動が止められる。一方、第1巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。
【0086】
よって第1巻回部は弾性変形される事となり、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部の噛み合いに伴う弾性変形により、弾性エネルギーie21(mJ)が第1巻回部に蓄積される。
【0087】
第1巻回部の弾性変形は、第1巻回部の巻回方向とは逆方向の回転により発生される。即ち前記弾性変形は、第1巻回部の巻回形状を解く変形である。
図6に示す様に、ie1が第1可動部品2aの回転角度(即ち、第1巻回部の捩じり角度(°))に対して、-100°までは一次的に減少して行き、-100°の時点で0(mJ)となる。-100°まではie1の一次的な減少のみでie1は残存している為、自由端4a1は仕切り板6aにie1により押し付けられて接触された状態を保持する。
【0088】
前記捩じり角度が絶対値で-100°になるとie1は0(mJ)となり、以後捩り角度の絶対値の増加に伴って自由端4a1は仕切り板6aから離れ、第1中心軸2bの回転に伴って回転して接触部6bに接触する。一方、第1巻回部の他端側は、第1可動部品2aに連結されている為、第1可動部品2aの一定量の回転に伴って回転移動していく。よって、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯部の噛み合いに伴う弾性変形により、
図6に示される様に前記捩じり角度が絶対値で-100°を超えてからは、第1可動部品2aの回転角度(即ち、第1巻回部の捩じり角度(°))に比例して弾性エネルギーie12(mJ)が発生すると共に増加する。
【0089】
なお、
図3及び
図9乃至
図12では、分かり易さを優先して仕切り板6aの面と接触部6b間の隙間を大きめに図示しているが、この隙間は自由端4a1が入る最低限の寸法に設定可能である。この様な寸法に設定する事で、自由端4a1の仕切り板6aからの離間と接触部6bへの接触を連続して発生させる事が可能となり、
図6の様なグラフが実現される。
【0090】
第2巻回部の捩り及び第1巻回部の弾性変形は、第2可動部品3aに力が伝達され続けて第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯が噛み合わされている間は保持される。従って、第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる直前における、第2巻回部の弾性エネルギーie22及び第1巻回部の弾性エネルギーie12が最大量となる。(
図6及び
図7では捩り角度が-240°の時である)。
【0091】
第1可動部品2aが一定量(
図6及び
図7では-240°)回転した後に、
図12に示すように第1可動部品2aと第2可動部品3aの互いの歯の噛み合いが外れる。すると、第2巻回部の捩りと第1巻回部の弾性変形による変形保持が外れ、第2巻回部及び第1巻回部の変形が解放される。前記変形が解放されると、ハウジング6側面(仕切り板6a)に接触して止められていた第2巻回部の自由端4b1と、接触部6bに接触して止められていた第1巻回部の自由端4a1をそれぞれ支点にして、ie12に加えてie22により第1可動部品2aが一定量回転する。本実施例では時計方向への回転となる(
図12の次に
図9を参照)。即ち、ie12とie22が第1可動部品2aの一定量の回転に変換される。
【0092】
第1可動部品2aの一定量の回転に伴い、第1中心軸2bも一定量だけ回転すると共に平歯車7も連動して回転し、更に平歯車8を介してシャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される。シャフト5aが一定量及び一定の速度で回転される事で、発電機5内部でシャフト5aに連結されたコイル5bがマグネット5cに対して回転される。
【0093】
シャフト5aの回転によりコイル5bがマグネット5cに対して回転される事で、発電機5内部で電力が発生されて発電が行われる。
【0094】
第1可動部品2aの一定量の回転後に弾性エネルギーie22及びie12は減衰される。同時に、第1中心軸2bの回転に伴って、第1巻回部の自由端4a1もその回転に伴って移動して接触部6bから離れ、第1巻回部の自由端4a1がハウジング6の側面(仕切り板6a)に接触して自由端4a1の動きが止められる(
図12から
図9参照)。
【0095】
すると、ハウジング6側面(仕切り板6a)に接触して止められた第1巻回部の自由端4a1及びこの時点で既にハウジング6側面(仕切り板6a)に接触している第2巻回部の自由端4b1を支点にしてie1とie2により、ie1とie2とが相殺されて均衡状態となる回転位置に第1中心軸2bと第1可動部品2aが保持される。この第1中心軸2bの回転により、第1可動部品2aは初期状態(即ち、第1可動部品2aの歯と第2可動部品3aの歯が噛み合う前の状態)に復帰される。
【0096】
前記の通り、発電機5にコアレスモータを採用している為シャフト5aの回転時に、鉄芯やマグネット5cよりも比較的軽量なコイル5bのみを回転させて発電を行う事が可能となる。従って回転に伴うシャフト5aの慣性モーメントを減少させる事が出来るので、平歯車8及び7を介しての、第1中心軸2bと第1可動部品2aの発電後の揺動をie1とie2により抑制する事が可能となる。
【0097】
第1中心軸2bと第1可動部品2aの発電後の揺動が抑制されると、平歯車7及び8を介したシャフト5aの揺動も抑制されるので、発電機5での前記電力とは逆方向の電力の発生も抑制される。
【0098】
図12で示す発電装置の動作直後に発電される電圧のグラフを、
図14に示す。
図14から明らかな様に、
図13とは逆方向であるマイナス側の電圧が発電された後、そのマイナス側の電圧とは逆方向の電圧の発生が抑制され、シャフト5aの揺動に伴う発電が抑制されている事が分かる。
【0099】
また
図14より、本発明に係る発電装置1又は発電装置1による発電方法に依れば、最大電圧を発電してから、第1中心軸2bと第1可動部品2aの発電後の揺動が抑制されると共に、前記揺動の抑制による逆方向の電圧の発生も抑制可能となる。従って、車両が高速でスイッチ9上を通過しても、第1可動部品2aと第2可動部品3aの噛み合い不良による発電動作不良を起こす事が解消され、より前記報知装置等に好適である。
【0100】
一方、
図17に示す従来の発電機構では、最大電圧発電後の揺動が発生していた。従って、
図14と
図17の比較から、高速で通過又は進入する車両の報知装置として、本発明に係る発電装置1又は発電装置1による発電方法が望ましい事が分かる。
【0101】
なお仕切り板6aには、第1可動部品2aの回転動作を妨げない様な逃げ部を形成しても良い。
【0102】
なお本実施例で説明したように、第1可動部品2aと第2可動部品3aの回転量に於ける「一定量」は同一とは限らない。本実施例のように各部品の各回転方向に応じて「一定量」は異なる場合がある。また、各部品(2a、3a)の寸法の差異によって回転角にも差異が生じる。