(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051577
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/132 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B17/132
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157817
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦哉
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD32
4C160DD33
4C160DD35
4C160DD70
(57)【要約】
【課題】シリンジ等の専用の器具を使用することなく、簡単な操作によって患者に形成された穿刺部位に付与する圧迫力を調整することができる止血器具を提供する。
【解決手段】止血器具10は、患者に形成された穿刺部位pを覆うように構成された支持部材100と、支持部材に接続され、穿刺部位を圧迫するように構成されたバルーン210と、支持部材から延在し、支持部材を穿刺部pに固定するように構成された固定部材300と、バルーンを挟んで互いに対向する一対の挟持部材400と、を有し、一対の挟持部材は、第1挟持部材410と、バルーンを挟んで第1挟持部材と対向する第2挟持部材420と、を備え、第1挟持部材及び第2挟持部材は、第1挟持部材と第2挟持部材との間の距離を変更してバルーンの横幅を制御できるように、互いに近接・離間可能に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に形成された穿刺部位を覆うように構成された支持部材と、
前記支持部材に接続され、前記穿刺部位を圧迫するように構成された押圧部材と、
前記支持部材から延在し、前記支持部材を前記穿刺部位に固定するように構成された固定部材と、
前記押圧部材を挟んで互いに対向する一対の挟持部材と、を有し、
前記一対の挟持部材は、第1挟持部材と、前記押圧部材を挟んで前記第1挟持部材と対向する第2挟持部材と、を備え、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との間の距離を変更して前記押圧部材の横幅を制御できるように、互いに近接・離間可能に構成される、止血器具。
【請求項2】
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の各々は、前記支持部材において前記押圧部材が配置された内面側と反対側に位置する外面側に突出したつまみ部を有する、請求項1に記載の止血器具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材をスライド移動可能に保持する溝部と、前記溝部と略同一の方向に沿って延在するロック用溝部と、を有し、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記つまみ部と接続され、前記溝部に挿入されたアーム部と、前記ロック用溝部に対して嵌め込み可能に構成され、前記ロック用溝部に嵌め込まれた状態において前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の移動を制限するロック部と、を有する、請求項2に記載の止血器具。
【請求項4】
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の間の距離に基づいて前記押圧部材の横幅及び高さを変更するように構成されており、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の間が第1距離にあるとき、前記第1距離よりも長い第2距離にあるときと比較して、前記押圧部材の高さが大きくなるように前記押圧部材を横幅方向に圧縮する、請求項1に記載の止血器具。
【請求項5】
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の各々は、前記押圧部材の縦幅方向に沿って配置され、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材が互いに近接するのに伴って前記押圧部材を横幅方向に押圧する抑圧部を有し、
前記抑圧部は、前記押圧部材と対向する押圧面を有する、請求項4に記載の止血器具。
【請求項6】
前記第1挟持部材の前記抑圧部の前記押圧面と前記第2挟持部材の前記抑圧部の前記押圧面は、前記支持部材から離間する方向において両者の間の距離が徐々に小さくなるように傾斜している、請求項5に記載の止血器具。
【請求項7】
前記押圧面は、前記抑圧部が前記押圧部材を横幅方向に圧縮していない状態において、前記押圧部材の縦幅の70%以上の幅を有する、請求項5に記載の止血器具。
【請求項8】
前記第1挟持部材と前記第2挟持部材が最も離間した状態において、前記支持部材と前記抑圧部の前記支持部材から離間した側に位置する下端部との間の距離は、前記押圧部材が有する第1高さよりも小さい、請求項5に記載の止血器具。
【請求項9】
前記第1挟持部材の前記抑圧部及び前記第2挟持部材の前記抑圧部は、前記押圧部材を横幅方向に圧縮していない状態において、前記支持部材において前記押圧部材が配置された内面との間に隙間を形成するように構成される、請求項5に記載の止血器具。
【請求項10】
前記第1挟持部材を前記第2挟持部材に近接・離間させる動作と、前記第2挟持部材を前記第1挟持部材に近接・離間させる動作を連動させる連動機構を有する、請求項1に記載の止血器具。
【請求項11】
前記一対の挟持部材が近接・離間する横幅方向と交差する縦幅方向において前記押圧部材を間に挟んで配置され、前記一対の挟持部材が互いに近接したときに前記押圧部材の縦幅方向の最大変形量を制限するストッパー部を有する、請求項1に記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル手技の1つとして、患者の腕や手等の肢体の血管を穿刺して形成された穿刺部位を介して各種の医療用長尺体を血管内に導入し、病変部位に対する診断や治療を行う手技が知られている。例えば、特許文献1には、患者の腕に形成した穿刺部位を止血するための止血器具が開示されている。
【0003】
特許文献1の止血器具は、穿刺部位に圧迫力を付与する押圧部材と、押圧部材を患者の身体に固定する帯体と、を備える。特許文献1の止血器具は、押圧部材が空気等の流体の注入・排出に伴って拡張及び収縮可能なバルーンで構成されている。医師や看護師(以下、「術者」とする)は、押圧部材を拡張及び収縮させる際、止血器具に取り付けられたコネクタ部(空気注入口)に専用のシリンジを接続し、当該シリンジを操作することで押圧部材への流体の注入及び押圧部材からの流体の排出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
術者は、特許文献1の止血器具を使用した止血方法において、押圧部材の拡張量を調整する作業(押圧部材が付与する圧迫力を調整する作業)を行う度に、専用のシリンジをコネクタ部に接続する。そのため、術者は、専用のシリンジの携帯を余儀なくされる。また、術者は、押圧部材の拡張量の調整をシリンジの押し子の移動量に基づいて正確に制御する必要がある。そのため、特許文献1の止血器具は、拡張量の調整に要する作業負担が大きい。
【0006】
例えば、上記のような押圧部材の拡張量の調整に要する煩雑さを解消するために、押圧部材を非拡張構造の部材で構成することが考えられる。しかしながら、押圧部材を非拡張構造の部材で構成した場合、止血器具を患者の身体に取り付けて当該止血器具による止血を行っている最中に押圧部材が付与する圧迫力を簡単に調整することができない。そのため、このように構成された止血器具では、穿刺部位に対して適切な圧迫力を経時的に付与することが難しい。
【0007】
本発明は、シリンジ等の専用の器具を使用することなく、簡単な操作によって患者に形成された穿刺部位に付与する圧迫力を調整することができる止血器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)止血器具は、患者に形成された穿刺部位を覆うように構成された支持部材と、前記支持部材に接続され、前記穿刺部位を圧迫するように構成された押圧部材と、前記支持部材から延在し、前記支持部材を前記穿刺部位に固定するように構成された固定部材と、前記押圧部材を挟んで互いに対向する一対の挟持部材と、を有し、前記一対の挟持部材は、第1挟持部材と、前記押圧部材を挟んで前記第1挟持部材と対向する第2挟持部材と、を備え、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との間の距離を変更して前記押圧部材の横幅を制御できるように、互いに近接・離間可能に構成される。
【0009】
(2)前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の各々は、前記支持部材において前記押圧部材が配置された内面側と反対側に位置する外面側に突出したつまみ部を有する、上記(1)に記載の止血器具。
【0010】
(3)前記支持部材は、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材をスライド移動可能に保持する溝部と、前記溝部と略同一の方向に沿って延在するロック用溝部と、を有し、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記つまみ部と接続され、前記溝部に挿入されたアーム部と、前記ロック用溝部に対して嵌め込み可能に構成され、前記ロック用溝部に嵌め込まれた状態において前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の移動を制限するロック部と、を有する、上記(2)に記載の止血器具。
【0011】
(4)前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の間の距離に基づいて前記押圧部材の横幅及び高さを変更するように構成されており、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材は、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の間が第1距離にあるとき、前記第1距離よりも長い第2距離にあるときと比較して、前記押圧部材の高さが大きくなるように前記押圧部材を横幅方向に圧縮する、上記(1)~(3)のいずれかに記載の止血器具。
【0012】
(5)前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の各々は、前記押圧部材の縦幅方向に沿って配置され、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材が互いに近接するのに伴って前記押圧部材を横幅方向に押圧する抑圧部を有し、前記抑圧部は、前記押圧部材と対向する押圧面を有する、上記(1)~(4)のいずれかに記載の止血器具。
【0013】
(6)前記第1挟持部材の前記抑圧部の前記押圧面と前記第2挟持部材の前記抑圧部の前記押圧面は、前記支持部材から離間する方向において両者の間の距離が徐々に小さくなるように傾斜している、上記(5)に記載の止血器具。
【0014】
(7)前記押圧面は、前記抑圧部が前記押圧部材を横幅方向に圧縮していない状態において、前記押圧部材の縦幅の70%以上の幅を有する、上記(6)に記載の止血器具。
【0015】
(8)前記第1挟持部材と前記第2挟持部材が最も離間した状態において、前記支持部材と前記抑圧部の前記支持部材から離間した側に位置する下端部との間の距離は、前記押圧部材が有する第1高さよりも小さい、上記(1)~(7)のいずれかに記載の止血器具。
【0016】
(9)前記第1挟持部材の前記抑圧部及び前記第2挟持部材の前記抑圧部は、前記押圧部材を横幅方向に圧縮していない状態において、前記支持部材において前記押圧部材が配置された内面との間に隙間を形成するように構成されている、上記(1)~(8)のいずれかに記載の止血器具。
【0017】
(10)前記第1挟持部材を前記第2挟持部材に近接・離間させる動作と、前記第2挟持部材を前記第1挟持部材に近接・離間させる動作を連動させる連動機構を有する、上記(1)~(9)のいずれかに記載の止血器具。
【0018】
(11)前記一対の挟持部材が近接・離間する横幅方向と交差する縦幅方向において前記押圧部材を間に挟んで配置され、前記一対の挟持部材が互いに近接したときに前記押圧部材の縦幅方向の最大変形量を制限するストッパー部を有する、上記(1)~(10)のいずれかに記載の止血器具。
【発明の効果】
【0019】
上記(1)の止血器具は、押圧部材を挟んで対向する第1挟持部材と第2挟持部材を備える。術者は、第1挟持部材と第2挟持部材を互いに近接させて第1挟持部材と第2挟持部材の間の距離を小さくすることにより、押圧部材の横幅を小さくすることができる。押圧部材は、横幅が小さくなると、押圧部材の高さが大きくなる。そのため、上記の止血器具は、押圧部材の横幅が小さくなる前と比較して、押圧部材が穿刺部位に対して付与する圧迫力が大きくなる。また、術者は、第1挟持部材と第2挟持部材を互いに離間させて第1挟持部材と第2挟持部材の間の距離を大きくすることにより、押圧部材の横幅を大きくすることができる。押圧部材は、横幅が大きくなると、押圧部材の高さが小さくなる。そのため、上記の止血器具は、押圧部材の横幅が大きくなる前と比較して、押圧部材が穿刺部位に対して付与する圧迫力が小さくなる。このように、上記の止血器具は、第1挟持部材と第2挟持部材の間の距離を変更する簡単な操作によって押圧部材が穿刺部位に対して付与する圧迫力を可逆的に増減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る止血器具を示す図であって、支持部材の外面側から見た平面図である。
【
図2】実施形態に係る止血器具を示す図であって、支持部材の内面側から見た平面図である。
【
図3】支持部材の外面側から見た止血器具の一部を拡大して示す平面図である。
【
図4】支持部材の内面側から見た止血器具の一部を拡大して示す平面図である。
【
図5】
図3に示す5A-5A線に沿う断面図であって、第1挟持部材と第2挟持部材の間に第2距離が設けられた状態を示す図である。
【
図6】
図3に示す5A-5A線に沿う断面図であって、第1挟持部材と第2挟持部材の間に第1距離が設けられた状態を示す図である。
【
図7】
図3に示す7A-7A線に沿う断面図であって、第1挟持部材のロック部を支持部材のロック用溝部に嵌め込む前の状態を示す図である。
【
図8】
図3に示す7A-7A線に沿う断面図であって、第1挟持部材のロック部を支持部材のロック用溝部に嵌め込んだ状態を示す図である。
【
図9】実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。
【
図10】実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。
【
図11】
図10に示す11A-11A線に沿う断面図であって、第1挟持部材と第2挟持部材の間に第2距離が設けられた状態を示す図である。
【
図12】
図10に示す矢印11A-11A線に沿う断面図であって、第1挟持部材と第2挟持部材の間に第1距離が設けられた状態を示す図である。
【
図15】変形例2に係る止血器具を支持部材の外面側から平面図である。
【
図16】変形例2に係る止血器具を支持部材の外面側から平面図である。
【
図18】変形例4に係る止血器具を支持部材の内面側から平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
(実施形態)
図1~
図8は本実施形態に係る止血器具10を説明するための図である。
図9~
図12は止血器具10の使用例を説明するための図である。
【0023】
止血器具10は、例えば、
図9、
図10に示すように、患者の前腕部Aよりも遠位側(手指側)に位置する手Hに形成された穿刺部位p(以下、単に「穿刺部位p」とも記載する)に留置していたイントロデューサー500のシースチューブ510を抜去する際、その穿刺部位pを止血するために使用することができる。
【0024】
本実施形態では、止血器具10の止血対象として、患者の前腕部Aよりも遠位側に位置する右手Hrの甲側を走行する手掌動脈のスナッフボックスに位置する動脈B(以下、「血管B」とも称する。
図11、
図12を参照。)に形成された穿刺部位pを例示する。スナッフボックスは患者が手Hの親指を広げた際に橈骨付近に位置する手の空洞である。
【0025】
<止血器具10>
止血器具10は、概説すると、
図1、
図2、
図9、
図10、
図11、
図12に示すように、穿刺部位pを覆うように構成された支持部材100と、支持部材100に接続され、穿刺部位pを圧迫するように構成された押圧部材200と、支持部材100から延在し、支持部材100を穿刺部位pに固定するように構成された固定部材300と、押圧部材200を挟んで互いに対向する一対の挟持部材400と、を有する。
【0026】
<支持部材100>
図3、
図4、
図5、
図6に示すように、支持部材100は押圧部材200が接続された板状の部材で構成している。
【0027】
支持部材100は、複数の溝部111、112と、複数のロック用溝部121a、121b、122a、122bと、を有する。
【0028】
図5、
図6に示すように、支持部材100は、溝部111と溝部112の間に位置する支持部105を有する。支持部105の内面(支持部材100の内面100a)には押圧部材200を接続している。支持部材100の内面100aは、止血器具10を患者の右手Hrに装着した状態において、患者の右手Hrの体表面側に配置される面である(
図11、
図12を参照)。支持部材100の外面100bは内面100aと反対側に位置する面である。
【0029】
各溝部111、112は一定の幅で直線状に延びている。溝部111と溝部112は、両者の間に押圧部材200を挟んで支持部材100の平面視の左右方向に略対称に配置されている。
【0030】
第1挟持部材410は、溝部111に沿った直線状の経路に沿ってスライド可能となるように支持部材100に接続されている。
【0031】
第2挟持部材420は、溝部112に沿った直線状の経路に沿ってスライド可能となるように支持部材100に接続されている。
【0032】
図3、
図4に示すように、各ロック用溝部121a、121bは、溝部111と略同一の方向に沿って延在している。
【0033】
図7、
図8に示すように、ロック用溝部121aは、第1挟持部材410が備えるロック部417aを嵌め込むことが可能に構成されている。ロック用溝部121bは、第1挟持部材410が備えるロック部417bを嵌め込むことが可能に構成されている。
【0034】
各ロック部417a、417bの先端部(各ロック用溝部121a、121b側に位置する端部)は、例えば、各ロック用溝部121a、121b側に向けて先細るテーパー形状に形成することができる。
【0035】
ロック用溝部121aとロック用溝部121bは、両者の間に溝部111を挟んで支持部材100の平面視の上下方向に略対称に配置されている。各ロック用溝部121a、121bは溝部111と略平行に延びている。
【0036】
図3、
図4に示すように、各ロック用溝部122a、122bは、溝部112と略同一の方向に沿って延在している。
【0037】
図7、
図8に示すように、ロック用溝部122aは、第2挟持部材420が備えるロック部427aを嵌め込むことが可能に構成されている。ロック用溝部122bは、第2挟持部材420が備えるロック部427bを嵌め込むことが可能に構成されている。なお、本明細書では、ロック用溝部122aにロック部427aを嵌め込んだ状態及びロック用溝部122bにロック部427bを嵌め込んだ状態の図示は省略している。
【0038】
各ロック部427a、427bの各ロック用溝部122a、122b側に位置する先端部は、例えば、各ロック用溝部122a、122b側に向けて先細るテーパー形状に形成することができる。
【0039】
ロック用溝部122aとロック用溝部122bは、両者の間に溝部112を挟んで支持部材100の平面視の上下方向に略対称に配置されている。各ロック用溝部122a、122bは溝部112と略平行に延びている。
【0040】
図3、
図4に示すように、支持部材100の平面形状は、バルーン210の横幅方向に最大長さを持つ略長円形状に形成することができる。ただし、支持部材100は、止血器具10を患者の右手Hrに装着した状態(
図10を参照)において、穿刺部位pを覆うように配置することが可能な限り、特に限定されない。
【0041】
なお、支持部材100の各溝部111、112は、一定の幅で直線状に延びた形状に限定されない。各溝部111、112は、例えば、溝部111、112が延びる方向の各部に、幅が狭く形成された箇所と幅が広く形成された箇所を有するように構成することができる。このように各溝部111、112を構成した場合、幅が狭く形成された箇所で各挟持部材410、420の位置を保持することができる。そのため、止血器具10は、各挟持部材410、420を近接・離間させる際、各挟持部材410、420の移動距離を段階的に簡単に調整することが可能になる。
【0042】
支持部材100は、例えば、所定の硬さを有する材料で構成することができる。支持部材100の構成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
【0043】
<押圧部材200>
図5、
図6に示すように、押圧部材200は、所定の充填材220を充填可能に構成されたバルーン210で構成することができる。本実施形態では、押圧部材200をバルーン210で構成した例を説明する。
【0044】
バルーン210は、充填材220が充填可能な内部空間215を備える。
【0045】
図5、
図6に示すように、バルーン210は、上面210aの一部が支持部材100の支持部105に接続されている。バルーン210を支持部材100に接続する方法は、特に限定されないが、例えば、接着や融着を採用することができる。
【0046】
図1、
図2に示すように、バルーン210は、一対の挟持部材400の近接に伴う横幅方向の圧縮変形が生じていない状態(以下、「未圧縮状態」とも記載する。)において、略長円の平面形状を有するように構成することができる。また、バルーン210は、
図5に示すように、未圧縮状態において、略長円の断面形状を有するように構成することができる。以下の説明において、一対の挟持部材400の近接に伴ってバルーン210が横幅方向に圧縮変形した状態を「圧縮状態」とも記載する。
【0047】
なお、未圧縮状態及び圧縮状態のバルーン210の平面形状及び断面形状について特に制限はなく、任意の形状を採用することができる。
【0048】
バルーン210は、例えば、可撓性を備える膜状の部材で構成することができる。
【0049】
バルーン210の内部空間215に充填する充填材220としては、例えば、空気や生理食塩水等の流体を使用することができる。ただし、充填材220は、一対の挟持部材400を互いに近接・離間する操作によってバルーン210の横幅を制御することが可能であれば特に限定されない。充填材220としては、例えば、ゲルや微小な粒状の固体等を使用することもできる。
【0050】
充填材220は、止血器具10を使用した止血を開始する前にバルーン210に予め充填しておくことができる。ただし、充填材220は、止血器具10を使用した止血を開始する際にバルーン210に充填してもよい。止血を開始する際にバルーン210に充填材220を充填する場合、止血器具10にはバルーン210の内部に充填材220を充填するための構造を設けることができる。充填材220として流体を使用する場合、バルーン210の内部空間215に連通されるチューブと、チューブに接続された逆止弁を備えるコネクタ等で構成される注入機構を止血器具10に設けることができる。
【0051】
バルーン210は、止血器具10を患者の右手Hrに装着する際に、バルーン210を穿刺部位pに位置合わせするためのマーカー部218を有する。
【0052】
図5、
図6に示すように、マーカー部218は、例えば、バルーン210の下面210bに形成することができる。マーカー部218は、例えば、バルーン210の平面視において、バルーン210の縦幅方向の中心を通る仮想線とバルーン210の横幅方向の中心を通る仮想線とが交差する位置に配置することができる。マーカー部218は、例えば、バルーン210の下面210bに所定の形状及び色を印刷することで構成することができる。
【0053】
バルーン210においてマーカー部218が形成された位置と平面視において重なる位置は、透明又は半透明に形成することができる。また、支持部材100の支持部105においてマーカー部218が形成された位置と平面視において重なる位置は、透明又は半透明に形成することができる。上記のようにバルーン210の所定位置及び支持部材100の支持部105の所定位置を透明又は半透明に形成することにより、術者が支持部材100の外面100b側からマーカー部218を目視した際、マーカー部218の位置を容易に確認することが可能になる。
【0054】
図4、
図5に示すように、未圧縮状態のバルーン210は、所定の大きさの横幅W1と所定の大きさの縦幅W2を有する。バルーン210の横幅W1は、一対の挟持部材400が互いに近接・離間する方向(
図4及び
図5の左右方向)に沿う寸法である。バルーン210の縦幅W2は、横幅W1と直交する方向(
図4の上下方向)に沿う寸法である。
【0055】
図5に示すように、未圧縮状態のバルーン210は、所定の第1高さH1を有する。第1高さH1は、
図5に示す断面図の上下方向におけるバルーン210の最大寸法である。本実施形態のように、バルーン210が平坦な上面210aと平坦な下面210bを有する場合、バルーン210の第1高さH1は上面210aと下面210bの間の直線距離で定義することができる。
【0056】
バルーン210は、
図5、
図6に示すように、内部空間215が内側に区画された一つの袋状の部材で構成することができる。なお、バルーン210の具体的な構造について特に制限はない。バルーン210は、例えば、2枚のシート状の部材を接合し、当該2枚のシート状の部材の間に内部空間215が区画された構造を有していてもよい。
【0057】
バルーン210を構成する膜状の部材の材料は特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、ナイロン、ナイロンエラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)を使用することができる。
【0058】
<固定部材300>
図1、
図2、
図9、
図10に示すように、固定部材300は、支持部材100に接続された第1帯体310と、第2帯体320と、第3帯体330と、を有する。
【0059】
第1帯体310は、支持部材100側に配置された一端部が支持部材100の外面100bに接続されている。
図2に示すように、第1帯体310の内面には、第1固定部位351を配置している。
【0060】
図9、
図10に示すように、第1帯体310は、患者の右手Hrの親指と人差し指の間の指間部fbに配置することができる。
【0061】
第2帯体320は、支持部材100側に配置された一端部が支持部材100の外面100bに接続されている。第2帯体320は、支持部材100から第1帯体310が延在する方向と異なる方向に延在している。
図1に示すように、第2帯体320の外面には、第2固定部位352を配置している。
図2に示すように、第2帯体320の内面には、第3固定部位353を配置している。
【0062】
第3帯体330は、支持部材100側に配置された一端部が支持部材100の外面100bに接続されている。第3帯体330は、支持部材100から第1帯体310及び第2帯体320の各々が延在する方向と異なる方向に延在している。
図1に示すように、第3帯体330の外面には、第4固定部位354を配置している。
【0063】
図9、
図10に示すように、第2帯体320と第3帯体330は、患者の右手Hrの外周に巻き付けるように配置することができる。
【0064】
第2帯体320の内面に配置された第3固定部位353は、第3帯体330の外面に配置された第4固定部位354と接続可能である。
図9、
図10に示すように、術者は、第2帯体320と第3帯体330を患者の右手Hrに巻き付けた状態で、第3固定部位353と第4固定部位354を接続することにより、第2帯体320と第3帯体330を患者の右手Hrに固定することができる。
【0065】
第1帯体310の内面に配置された第1固定部位351は、第2帯体320の外面に配置された第2固定部位352と接続可能である。
図10に示すように、術者は、指間部fbに配置した第1帯体310の内面に配置された第1固定部位351を第2帯体320の外面に配置された第2固定部位352に接続することにより、第2帯体320及び第3帯体330とともに第1帯体310を患者の右手Hrに固定することができる。
【0066】
各帯体310、320、330の構成材料は特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等で構成することができる。
【0067】
各固定部位351、352、353、354は、例えば、面ファスナーの雄側又は雄側で構成することができる。ここでいう面ファスナーは、面的に着脱可能なファスナーであり、例えば、Magic Tape(登録商標)やVelcro(登録商標)である。なお、各固定部位351、352、353、354は、止血器具10を患者の右手Hrに配置した状態で各帯体310、320、330同士を接続することにより、支持部材100を穿刺部位pに重ねて配置した状態で固定することが可能な限り、具体的な構造は限定されない。
【0068】
(一対の挟持部材400)
図1、
図2、
図3、
図4に示すように、一対の挟持部材400は、第1挟持部材410と、バルーン210を挟んで第1挟持部材410と対向する第2挟持部材420と、を備える。
【0069】
図5、
図6に示すように、第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、第1挟持部材410と第2挟持部材420との間の距離を変更してバルーン210の横幅を制御できるように、互いに近接・離間可能に構成されている。
【0070】
第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離に基づいてバルーン210の横幅及び高さを変更することができる。
【0071】
図5には第1挟持部材410と第2挟持部材420の間に第2距離L2が形成された状態を示している。
図6には第1挟持部材410と第2挟持部材420の間に第1距離L1が形成された状態を示している。
【0072】
第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間が
図6に示す第1距離L1にあるとき、第1距離L1よりも長い
図5に示す第2距離L2にあるときと比較して、バルーン210の高さが大きくなるようにバルーン210を横幅方向に圧縮するように構成されている。
【0073】
図5に示すように、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間に第2距離L2が形成された状態では、第1挟持部材410及び第2挟持部材420はバルーン210を横幅方向に圧縮しない。そのため、バルーン210は未圧縮状態となる。バルーン210は、未圧縮状態において、所定の横幅W1と所定の第1高さH1を有する。
【0074】
図6に示すように、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに近接し、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間に第1距離L1が形成されると、第1挟持部材410及び第2挟持部材420がバルーン210を挟み込んでバルーン210を横幅方向に圧縮する。バルーン210の横幅は、バルーン210が横幅方向に圧縮されることにより、未圧縮状態の横幅W1よりも小さな横幅W1’に変化する。また、バルーン210の高さは、バルーン210が横幅方向に圧縮されることにより、未圧縮状態の第1高さH1よりも大きな第1高さH1’に変化する。
【0075】
止血器具10は、バルーン210の高さが大きくなるように変形すると、バルーン210の高さが大きくなるように変形する前と比較して、バルーン210が右手Hrの体表面により強い力で押し付けられる(
図12を参照)。そのため、止血器具10は、バルーン210の高さが大きくなる前と比較して、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を大きくすることができる。
【0076】
術者は、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を小さくする場合、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに離間させる。術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに離間させて、第1挟持部材410と第2挟持部材420がバルーン210を押圧する力を弱めることにより、バルーン210の横幅方向の圧縮変形量を小さくさせる。術者は、上記の操作を行うことにより、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を低下させることができる。このように、止血器具10を使用した止血方法では、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離を変更する簡単な操作によってバルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を調整することができる。
【0077】
図5、
図6、
図7、
図8に示すように、第1挟持部材410及び第2挟持部材420の各々は、支持部材100においてバルーン210が配置された内面100a側と反対側に位置する外面100b側に突出したつまみ部411、421を有する。
【0078】
術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離を変更する際、支持部材100の外面100b側に突出した各つまみ部411、421を手指で把持しつつ、各つまみ部411、421を互いに近接・離間するように操作することで、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接・離間させることができる。
【0079】
図5、
図6、
図7、
図8に示すように、第1挟持部材410は、つまみ部411と接続され、支持部材100の溝部111に挿入されたアーム部413と、支持部材100の各ロック用溝部121a、121bに対して嵌め込み可能に構成され、各ロック用溝部121a、121bに嵌め込まれた状態において第1挟持部材410の移動を制限するロック部417a、417bと、を有する。
【0080】
図7に示すように、各ロック部417a、417bは、各ロック用溝部121a、121bに押し込み可能な凸部で構成している。第1挟持部材410は、支持部材100の外面100b側から各ロック部417a、417bが各ロック用溝部121a、121bに挿入されている。第1挟持部材410は、各ロック部417a、417bが各ロック用溝部121a、121bに引っ掛けるように配置されることで、支持部材100に対して保持されている。
【0081】
図7には、支持部材100の各ロック用溝部121a、121bに対して各ロック部417a、417bを嵌め込む前の状態(以下、「非ロック状態」とも記載する。)を示している。第1挟持部材410の各ロック部417a、417bは、非ロック状態において、各ロック用溝部121a、121bに沿って移動可能である。また、各ロック部417a、417bに接続されたアーム部413は、非ロック状態において、溝部111に沿って移動可能である。そのため、アーム部413及び各ロック部417a、417bを備える第1挟持部材410は、非ロック状態において、溝部111に沿って移動可能となる。
【0082】
図8には、支持部材100の各ロック用溝部121a、121bに各ロック部417a、417bを嵌め込んだ状態(以下、「ロック状態」とも記載する。)を示している。第1挟持部材410の各ロック部417a、417bは、ロック状態において、各ロック用溝部121a、121bに沿った移動が制限される。また、各ロック部417a、417bに接続されたアーム部413は、ロック状態において、溝部111に沿った移動が制限される。そのため、アーム部413及び各ロック部417a、417bを備える第1挟持部材410は、ロック状態において、溝部111に沿った移動が制限される。
【0083】
図8に示すように、第1挟持部材410は、各ロック部417a、417bが各ロック用溝部121a、121b内に所定の深さ以上押し込まれると、各ロック部417a、417bと各ロック用溝部121a、121bの内面との間に生じる摩擦力により、移動が制限される。止血器具10は、各ロック部417a、417bの先端部がテーパー形状を有するため、各ロック部417a、417bを各ロック用溝部121a、121bに簡単に押し込むことができる。
【0084】
止血器具10は、
図8に示すロック状態において、各ロック部417a、417bを各ロック用溝部121a、121bから持ち上げて、各ロック部417a、417bが各ロック用溝部121a、121bに嵌め込まれた状態を解除することにより、
図7に示す非ロック状態へ切り替えることができる。
【0085】
図3、
図4、
図5、
図6に示すように、第2挟持部材420は、つまみ部421と接続され、支持部材100の溝部111に挿入されたアーム部423と、支持部材100の各ロック用溝部122a、122bに対して嵌め込み可能に構成され、各ロック用溝部122a、122bに嵌め込まれた状態において第2挟持部材420の移動を制限するロック部427a、427bと、を有する。
【0086】
第2挟持部材420のアーム部423は、第1挟持部材410のアーム部413と略同一の構成を有する。また、第2挟持部材420の各ロック部427a、427bは、第1挟持部材410の各ロック部417a、417bと略同一の構成を有する。そのため、第2挟持部材420のアーム部423及び各ロック部417a、417bの詳細な説明は省略する。
【0087】
術者は、第1挟持部材410のロック状態及び非ロック状態を切り替える際の操作と同様に、各ロック用溝部122a、122bに第2挟持部材420の各ロック部427a、427bを嵌め込む操作及び嵌め込みを解除する操作を行うことによって、第2挟持部材420のロック状態及び非ロック状態を切り替えることができる。
【0088】
図4、
図5、
図6に示すように、第1挟持部材410は、バルーン210の縦幅方向に沿って配置され、第1挟持部材410及び第2挟持部材420が互いに近接するのに伴ってバルーン210を横幅方向に押圧する抑圧部415を有する。
【0089】
図4、
図5、
図6に示すように、第2挟持部材420は、バルーン210の縦幅方向に沿って配置され、第1挟持部材410及び第2挟持部材420が互いに近接するのに伴ってバルーン210を横幅方向に押圧する抑圧部425を有する。
【0090】
第1挟持部材410の抑圧部415は、バルーン210と対向する押圧面415aを有する。第2挟持部材420の抑圧部425は、バルーン210と対向する押圧面425aを有する。
【0091】
第1挟持部材410は、第1挟持部材410が第2挟持部材420に近接するように移動すると、抑圧部415の押圧面415aをバルーン210の側面に面接触させる。また、第2挟持部材420は、第2挟持部材420が第1挟持部材410に近接するように移動すると、抑圧部425の押圧面425aをバルーン210の側面に面接触させる。止血器具10は、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに近接すると、バルーン210の横幅方向の両側から各押圧面415a、425aをバルーン210に対して面接触させた状態でバルーン210を押圧して、バルーン210を未圧縮状態から圧縮状態へ変形させる。
【0092】
図4に示すように、第1挟持部材410の抑圧部415の押圧面415aは、抑圧部415がバルーン210を圧縮していない未圧縮状態において、バルーン210の縦幅W2の70%以上の幅W3を有する。また、第2挟持部材420の抑圧部425の押圧面425aは、抑圧部425がバルーン210を圧縮していない未圧縮状態において、バルーン210の縦幅W2の70%以上の幅W4を有する。なお、各押圧面415a、415bの幅W3、W4は、
図4に示す平面視において、バルーン210の横幅方向と直交する方向(
図4の上下方向)の寸法である。
【0093】
第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、各押圧面415a、425aの各幅W3、W4がバルーン210の縦幅W2の70%以上の大きさで形成されているため、第1挟持部材410及び第2挟持部材420がバルーン210を押圧する際、各押圧面415a、425bがバルーン210の縦幅方向の比較的長い範囲に渡って接触する。そのため、第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、各押圧面415a、425aによってバルーン210を横幅方向に押圧する際、バルーン210の縦幅方向の両端部付近の部分(
図4に示す上側及び下側の両端部付近の部分)が各押圧面415a、425aの間からはみ出して、バルーン210が平面視においてひょうたんのような形状に変形してしまうことを抑制できる。それにより、止血器具10は、バルーン210の縦幅方向の中心付近に向けてバルーン210を圧縮させることができる。そのため、バルーン210は、バルーン210の縦幅方向の中心付近がバルーン210の高さ方向に突出するように変形する。その結果、止血器具10は、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を高めることができる。
【0094】
図5に示すように、第1挟持部材410と第2挟持部材420が最も離間した状態において、支持部材100と各抑圧部415、425の支持部材100から離間した側に位置する下端部416、426との間の距離L3は、バルーン210が有する第1高さH1よりも小さい。
【0095】
止血器具10は、上記距離L3がバルーン210の第1高さH1よりも小さいため、
図11に示すようにバルーン210が穿刺部位pに配置される際、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触することを防止できる。そのため、止血器具10は、バルーン210が非圧縮状態の際、各抑圧部415、425によって阻害されることなく、バルーン210を穿刺部位pに配置することができる。したがって、止血器具10は、術者が穿刺部位pへの圧迫力を小さくするためにバルーン210を圧迫状態から非圧迫状態に徐々に移行させる際、各抑圧部415、425によって阻害されることなく、バルーン210による穿刺部位pへの圧迫力を維持することができる。同様に、止血器具10は、上記距離L3がバルーン210の第1高さH1よりも小さいため、
図12に示すようにバルーン210が穿刺部位pに対して圧迫力を付与する際、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触することを防止できる。そのため、止血器具10は、バルーン210が圧縮状態の際、各抑圧部415、425によって阻害されることなく、バルーン210を穿刺部位pに配置することができる。加えて、止血器具10は、バルーン210が圧縮状態となった際、各抑圧部415、425によって阻害されることなく、バルーン210から穿刺部位pに対して好適に圧迫力を付与することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、
図6に示すロック状態において、支持部材100の内面100aと各下端部416、426との間に形成される距離L3’が圧縮状態のバルーン210の第1高さH1’よりも小さくなるように構成されている。したがって、止血器具10は、各挟持部材410、420がロック状態であり、かつバルーン210が圧縮状態にあるときにおいても、各抑圧部415、425の間に配置されたバルーン210が穿刺部位pに対して好適に圧迫力を付与することができる。
【0097】
図5、
図6、
図7、
図8に示すように、各抑圧部415、425の下端部416、426は、下方側(支持部材100から離間する側)に向けて湾曲した断面形状に形成することができる。各抑圧部415、425の下端部416、426が湾曲した断面形状を有することにより、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面に接触した場合においても患者に痛み等を生じさせることを防止できる。
【0098】
各抑圧部415、425の各押圧面415a、415bは、
図5、
図6に示す断面の上下方向において、直線形状を有するように構成することができる。このように各押圧面415a、415bの断面形状を形成することにより、各押圧面415a、415bがバルーン210に接触した際の接触面積を大きくすることができる。それにより、各押圧面415a、415bからバルーン210に対して効果的に押圧力を付与することができる。
【0099】
<止血器具の使用例>
次に、
図9~
図12を参照して、止血器具10の使用例を説明する。使用例では、
図9に示すように、患者の右手Hrに形成した穿刺部位pを止血する際の止血器具10の使用手順を説明する。
【0100】
図9には、患者の右手Hrに形成された穿刺部位pにイントロデューサー500のシースチューブ510を挿入して各種の手技を実施し終えた状態を示している。
【0101】
術者は、穿刺部位pを止血するに際し、穿刺部位pを覆うように支持部材100を配置する。この際、術者は、バルーン210に配置されたマーカー部218の位置を目視で確認しつつ、マーカー部218を穿刺部位pに配置することにより、バルーン210を穿刺部位pに適切に配置することができる。
【0102】
術者は、
図10に示すように、第1帯体310、第2帯体320、第3帯体330を患者の右手Hrに固定する。
【0103】
なお、術者は、止血器具10を患者の右手Hrに装着する際、バルーン210を未圧縮状態で準備してもよいし、圧縮状態で準備してもよい。本使用例では、
図12に示すように、止血器具10を患者の右手Hrに装着する際には圧縮状態でバルーン210を準備し、その後、穿刺部位pの止血状態に応じて各挟持部材410、420を離間させることで、経時的にバルーン210を減圧する。
図12に示すように、術者がバルーン210を穿刺部位pに配置した状態で各帯体310、320、330を固定すると、バルーン210が穿刺部位pに圧迫力を付与する。
【0104】
術者は、圧縮状態のバルーン210が穿刺部位pに対して圧迫力を付与した状態を維持する場合、各ロック部417a、417b、427a、427bを各ロック用溝部121a、121b、122a、122bに嵌め込むことによってロック状態に切り替える。術者は、ロック状態に切り替えることにより、各挟持部材410、420が移動することを制限する。術者は、ロック状態に切り替えることにより、バルーン210の横幅方向の圧縮変形量が不用意に変化することを防止できる。
【0105】
術者は、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を小さくする場合、各ロック部417a、417b、427a、427bによるロックを解除する。術者は、ロックを解除した状態で第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに離間させる。
図11に示すように、止血器具10は、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに離間して第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離が大きくなると、バルーン210の横幅方向の圧縮変形量が小さくなる。バルーン210は、バルーン210の横幅方向の圧縮変形量が小さくなるのに伴ってバルーン210の高さが小さくなるように変形する。それにより、バルーン210は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離が大きくなる前と比較して、穿刺部位pに対して付与する圧迫力を小さくする。
【0106】
術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接・離間させる際、支持部材100の外面100b側に突出した各つまみ部411、421を手指で把持することができる。術者は、各つまみ部411、421を手指で把持しつつ、各つまみ部411、421を互いに近接・離間させることにより、各つまみ部411、421とともに第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接・離間させることができる。止血器具10は、各つまみ部411、421が支持部材100の外面100b側に突出して配置されているため、術者が各つまみ部411、421を容易に把持及び操作することができる。
【0107】
以上、本実形態に係る止血器具10は、患者に形成された穿刺部位pを覆うように構成された支持部材100と、支持部材100に接続され、穿刺部位pを圧迫するように構成されたバルーン210と、支持部材100から延在し、支持部材100を穿刺部位pに固定するように構成された固定部材300と、バルーン210を挟んで互いに対向する一対の挟持部材400と、を有する。一対の挟持部材400は、第1挟持部材410と、バルーン210を挟んで第1挟持部材410と対向する第2挟持部材420と、を備える。第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、第1挟持部材410と第2挟持部材420との間の距離を変更してバルーン210の横幅を制御できるように、互いに近接・離間可能に構成される。
【0108】
止血器具10は、バルーン210を挟んで対向する第1挟持部材410と第2挟持部材420を備える。術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接させて第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離を小さくすることにより、バルーン210の横幅を小さくすることができる。バルーン210は、横幅が小さくなると、バルーン210の高さが大きくなる。そのため、上記の止血器具10は、バルーン210の横幅が小さくなる前と比較して、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力が大きくなる。また、術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに離間させて第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離を大きくすることにより、バルーン210の横幅を大きくすることができる。バルーン210は、横幅が大きくなると、バルーン210の高さが小さくなる。そのため、上記の止血器具10は、バルーン210の横幅が大きくなる前と比較して、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力が小さくなる。このように、止血器具10は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離を変更する簡単な操作によってバルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を可逆的に増減させることができる。
【0109】
また、第1挟持部材410及び第2挟持部材420の各々は、支持部材100においてバルーン210が配置された内面100a側と反対側に位置する外面100b側に突出したつまみ部411、421を有する。
【0110】
上記のように構成された止血器具10は、術者が第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離を変更する際、支持部材100の外面100b側に突出した各つまみ部411、421を手指で把持しつつ、各つまみ部411、421を互いに近接・離間させることができる。止血器具10は、各つまみ部411、421が支持部材100の外面100b側に突出して配置されているため、術者が各つまみ部411、421を容易に把持及び操作することができる。
【0111】
また、支持部材100は、第1挟持部材410及び第2挟持部材420をスライド移動可能に保持する溝部111、112と、溝部111、112と略同一の方向に沿って延在するロック用溝部121a、121b、122a、122bと、を有する。第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、つまみ部411、421と接続され、溝部111、112に挿入されたアーム部413、423と、ロック用溝部121a、121b、122a、122bに対して嵌め込み可能に構成され、ロック用溝部121a、121b、122a、122bに嵌め込まれた状態において第1挟持部材410及び第2挟持部材420の移動を制限するロック部417a、417b、427a、427bと、を有する。
【0112】
上記のように構成された止血器具10は、各ロック用溝部121a、121b、122a、122bに対してロック部417a、417b、427a、427bを嵌め込む簡単な操作によって各挟持部材410、420の移動を制限するロック状態に切り替えることができる。また、止血器具10は、各ロック用溝部121a、121b、122a、122bに対する各ロック部417a、417b、427a、427bの嵌め込みを解除する簡単な操作によって各挟持部材410、420が移動可能な非ロック状態に切り替えることができる。
【0113】
また、第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離に基づいてバルーン210の横幅及び高さを変更するように構成されている。第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間が第1距離L1にあるとき、第1距離L1よりも長い第2距離L2にあるときと比較して、バルーン210の高さが大きくなるようにバルーン210を横幅方向に圧縮する。
【0114】
上記のように構成された止血器具10は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離が小さくなるように第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接させることで、バルーン210の高さが大きくなるようにバルーン210を横幅方向に圧縮することができる。止血器具10は、第1挟持部材410と第2挟持部材420の近接に伴ってバルーン210が高さ方向に拡張しつつ横幅方向に圧縮することで、バルーン210の高さが大きくなる前と比較してバルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力が大きくなるように調整することができる。
【0115】
また、第1挟持部材410及び第2挟持部材420の各々は、バルーン210の縦幅方向に沿って配置され、第1挟持部材410及び第2挟持部材420が互いに近接するのに伴ってバルーン210を横幅方向に押圧する抑圧部415、425を有する。各抑圧部415、425は、バルーン210と対向する押圧面415a、425aを有する。
【0116】
上記のように構成された止血器具10は、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに近接した際、抑圧部415の押圧面415aと抑圧部425の押圧面425aがバルーン210に面接触しつつ、バルーン210を横幅方向に圧縮する。そのため、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接させることにより、バルーン210を効率的に横幅方向に圧縮することができる。
【0117】
また、押圧面415a、425aは、抑圧部415、425がバルーン210を横幅方向に圧縮していない状態において、バルーン210の縦幅の70%以上の幅を有する。
【0118】
上記のように構成された止血器具10は、押圧面415a、425aの幅がバルーン210の縦幅の70%以上の大きさで形成されているため、バルーン210の縦幅方向の比較的長い範囲に渡って押圧面415a、425aによりバルーン210を横幅方向に沿って圧縮することができる。それにより、第1挟持部材410及び第2挟持部材420は、各押圧面415a、425aがバルーン210に接触した際、バルーン210の縦幅方向の両端部付近の部分が各押圧面415a、425aの間からはみ出して、バルーン210がひょうたんのような形状に変形してしまうことを抑制できる。それにより、止血器具10は、バルーン210の縦幅方向の中心付近に向けてバルーン210を圧縮させることができる。バルーン210は、バルーン210の縦幅方向の中心付近が高さ方向に突出するように変形する。そのため、止血器具10は、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を高めることができる。
【0119】
また、第1挟持部材410と第2挟持部材420が最も離間した状態において、支持部材100と抑圧部415、425の支持部材100から離間した側に位置する下端部416、426との間の距離L3はバルーン210が有する第1高さH1よりも小さい。
【0120】
上記のように構成された止血器具10は、上記距離L3がバルーン210の第1高さH1よりも小さいため、バルーン210が穿刺部位pに配置される際、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触することを防止できる。そのため、止血器具10は、バルーン210が非圧縮状態の際、各抑圧部415、425によって阻害されることなく、バルーン210を穿刺部位pに配置することができる。同様に、止血器具10は、上記距離L3がバルーン210の第1高さH1よりも小さいため、バルーン210が穿刺部位pに対して圧迫力を付与する際、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触することを防止できる。そのため、止血器具10は、各抑圧部415、425の間に配置されたバルーン210から穿刺部位pに対して好適に圧迫力を付与することができる。
【0121】
次に、本発明に係る止血器具の変形例を説明する。変形例の説明では前述した実施形態の説明において既に説明した部材や止血器具の使用手順等についての説明は適宜省略する。また、各変形例において特に説明の無い内容は、前述した実施形態と同一のものとすることができる。
【0122】
(変形例1)
図13、
図14は変形例1に係る止血器具の断面図を示す。
図13、
図14は前述した実施形態の
図5、
図6に対応した断面図である。
図13では未圧縮状態のバルーン210Aを示しており、
図14では圧縮状態のバルーン210Aを示している。
【0123】
図13に示すように、変形例1に係る止血器具は、未圧縮状態において、バルーン210Aが上面210a側から下面210b側に向けて徐々に断面積が大きくなり、高さ方向の略中心から下面210bに向けて断面積が徐々に小さくなる「ドロップ形状」の断面を有する。バルーン210Aは上記のようにドロップ形状の断面を有するため、バルーン210A内に充填材220が充填された状態において、バルーン210Aの下面210b側が垂れ下がるように変形する。それにより、バルーン210Aの上面210a付近に位置する部分の断面積がバルーン210Aの下面210b付近に位置する部分の断面積と比較してさらに小さくなり、上面210a付近がくびれた形状の断面を呈する。
【0124】
図14に示すように、各抑圧部415、425の各押圧面415a、425aは、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに近接した際、断面積の小さいバルーン210Aの上面210a側に位置する一部のみに対して接触する。変形例1に係る止血器具は、各押圧面415a、425aが断面積の小さいバルーン210Aの上面210a側に位置する一部のみに対して接触するため、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに近接する際、支持部材100の内面100a(支持部105の内面)と各挟持部材410、420との間にバルーン210Aが挟み込まれることを防止できる。したがって、術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接させる際、第1挟持部材410と第2挟持部材420を円滑に移動させることができる。それにより、変形例1に係る止血器具は、術者が各挟持部材410、420の位置を可変させる際、各挟持部材410、420との間にバルーン210Aが挟み込まれることによって術者がストレスを感じることを防止できる。
【0125】
また、バルーン210Aは、
図14に示す圧縮状態に変形した際、バルーン210Aの下面210b付近に位置する部分(最下部)がバルーン210Aの高さ方向の中心付近に位置する部分と比較して断面積が小さくなる。そのため、バルーン210Aは、下面210b付近から穿刺部位pに対して局所的に圧迫力を付与することができる。それにより、バルーン210Aは、穿刺部位pに付与する圧迫力を効果的に高めることができる。さらに、バルーン210Aがドロップ形状に形成されているため、バルーン210Aが圧縮状態に変形した際に、バルーン210の下面210b側の面積が上面210aよりも大きくなるため、下面210b側にバルーン210が立ち上がりやすくなり、バルーン210Aが穿刺部位pに対してより強い圧迫力を付与することができる。
【0126】
【0127】
変形例2に係る止血器具は、第1挟持部材410を第2挟持部材420に近接・離間させる動作と第2挟持部材420を第1挟持部材410に近接・離間させる動作を連動させる連動機構430を有する。
【0128】
連動機構430は、回転駆動部440と、第1挟持部材410に接続された第1駆動部451と、第2挟持部材420に接続された第2駆動部452と、を有する。
【0129】
回転駆動部440は、支持部材100の支持部105に配置されている。回転駆動部440は、
図15中の矢印R-R’で示すように時計回り及び反時計回りに回転可能に構成されている。回転駆動部440の外周部分にはギア部441が設けられている。
【0130】
第1駆動部451は、回転駆動部440のギア部441と噛み合うギア部451aを有する。第2駆動部452は、回転駆動部440のギア部441と噛み合うギア部452aを有する。
【0131】
図16に示すように、術者が回転駆動部440を矢印Rで示すように時計周りに回転させると、回転駆動部440の回転に連動して第1駆動部451と第2駆動部452が互いに近接する方向に移動する。第1駆動部451と第2駆動部452が互いに近接する方向に移動すると、第1駆動部451に接続された第1挟持部材410と第2駆動部452に接続された第2挟持部材420が互いに近接する。術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接させることによりバルーン210を圧縮状態に変形させることができる。術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに離間させる場合、回転駆動部440を反時計回りに回転させる。術者が回転駆動部440を反時計回りに回転させると、第1駆動部451及び第2駆動部452が互いに離間する。第1駆動部451及び第2駆動部452が互いに離間すると、第1挟持部材410と第2挟持部材420が互いに離間する。この操作により、術者は、バルーン210を圧縮状態から未圧縮状態へ変形させることができる。
【0132】
以上のように、変形例2に係る止血器具は、第1挟持部材410を第2挟持部材420に近接・離間させる動作と第2挟持部材420を第1挟持部材410に近接・離間させる動作を連動させる連動機構430を有する。術者は、連動機構430を操作することで、第1挟持部材410の近接・離間と第2挟持部材420の近接・離間を連動させることができる。そのため、術者は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接・離間させる作業をより一層簡単かつ円滑に行うことができる。加えて、変形例2に係る止血器具は、第1挟持部材410の近接・離間と第2挟持部材420の近接・離間が連動するため、第1挟持部材410及び第2挟持部材420を移動させる際、誤操作等でバルーン210が穿刺部位pから位置ずれすることも抑制できる。
【0133】
なお、連動機構の構造は、
図15、
図16に図示した形態のみに限定されることはない。連動機構は、例えば、回転駆動部440を備えていなくてもよい。このように連動機構を構成する場合、連動機構は、直線状に移動可能な第1駆動部と、第1駆動部と接続され、第1駆動部の移動に連動して移動可能な第2駆動部と、を備えるように構成することができる。第1駆動部には接近・離間方向に沿って配置された複数の第1凹凸部を設け、第2駆動部には接近・離間方向に沿って配置され、かつ複数の第1凹凸部に係合可能な複数の第2凹凸部を設けることができる。このように構成された止血器具は、第1凹凸部と第2凹凸部が係合した状態で第1駆動部及び第2駆動部の一方を他方に対して近接・離間させる操作を行うと、その操作に連動させて他方の駆動部を近接・離間する方向に移動させることができる。
【0134】
(変形例3)
図17は変形例3に係る止血器具の断面図を示す。
図17は前述した実施形態の
図6に対応した断面図である。
図17では圧縮状態のバルーン210を示している。
【0135】
変形例3に係る止血器具は、第1挟持部材410Aの抑圧部415の押圧面415bと第2挟持部材420Aの抑圧部425の押圧面425bが、支持部材100(支持部材100の内面100a)から離間する方向(バルーン210の下面210bに向かう方向)において、両者の間の距離が徐々に小さくなるように傾斜している。
【0136】
変形例3に係る止血器具は、第1挟持部材410Aと第2挟持部材420Aが近接した際、各押圧面415a、415bが
図17の断面図の左右方向の中心部側に向けてバルーン210Aを横幅方向に圧縮する。そのため、バルーン210は、圧縮状態において、上記中心部付近が支持部材100から離間する方向(
図17の下方向)に変形する。それにより、バルーン210は、バルーン210の下面210b付近から穿刺部位pに対して局所的に圧迫力を付与することができる。したがって、バルーン210は、穿刺部位pに付与する圧迫力を効果的に高めることができる。
【0137】
図17に示すように、変形例3に係る止血器具は、圧縮状態において、バルーン210の断面形状が上面210a側から下面210b側に向けて断面積が徐々に小さくなるテーパー形状を有する。変形例3に係る止血器具は、バルーン210が上記のような断面形状で形成されているため、
図17に示すようにバルーン210が圧縮状態に変形した際、バルーン210の下面210bが穿刺部位p付近に対して狭い範囲で接触する。そのため、変形例3に係る止血器具は、バルーン210が穿刺部位pに対して局所的に圧迫力を付与することができる。それにより、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を効果的に高めることができる。
【0138】
(変形例4)
図18は変形例4に係る止血器具の平面図を示す。
図18は前述した実施形態の
図4に対応した平面図である。
図18は支持部材100の外面100b側から見た平面図である。
図18では圧縮状態のバルーン210を示している。
【0139】
変形例4に係る止血器具は、
図18に示すように、一対の挟持部材400が近接・離間する横幅方向(図中の左右方向)と交差する縦幅方向(図中の上下方向)においてバルーン210を間に挟んで配置され、一対の挟持部材400が互いに近接したときにバルーン210の縦幅方向の最大変形量を制限するストッパー部131、132を有する。
【0140】
ストッパー部131は、バルーン210を挟んでストッパー部132と対向するように配置されている。各ストッパー部131、132は、バルーン210よりも硬質な材料で構成されている。
【0141】
変形例4に係る止血器具は、各ストッパー部131、132を有することにより、バルーン210が圧縮状態に変形した際、バルーン210が過度に縦幅方向に広がるように変形することを抑制できる。術者は、バルーン210が過度に縦幅方向に広がるように変形することを抑制することにより、バルーン210が圧縮状態に変形する際に、バルーン210が変形する方向をバルーン210の高さ方向(
図12の下方向)に誘導することができる。そのため、変形例4に係る止血器具は、バルーン210を圧縮状態に変形させた際、バルーン210を穿刺部位pに向けて突出するように変形させることができる。それにより、変形例4に係る止血器具は、バルーン210が穿刺部位pに対して付与する圧迫力を効果的に高めることができる。
【0142】
図18に示すように、変形例4に係る止血器具は、各挟持部材410B、420Bが備える各抑圧部415、425の押圧面415c、425cがバルーン210の横幅方向に位置する側面と対応した面形状を有するように構成されている。この変形例では、各抑圧部415、425の押圧面415c、425cは、バルーン210の横幅方向へ向けて突出する湾曲形状の側面に沿った凹状の面形状を有する。変形例4に係る止血器具のように、各抑圧部415、425の押圧面415c、425cをバルーン210の横幅方向に位置する側面と対応した面形状で形成することにより、バルーン210を圧縮状態に変形させる際、バルーン210の側面と押圧面415c、425cの接触面積を大きくすることができる。そのため、変形例4に係る止血器具は、バルーン210を横幅方向に沿って効果的に圧縮させることができる。
【0143】
(変形例5)
図19、
図20は変形例5に係る止血器具の断面図を示す。
図19、
図20は前述した実施形態の
図5、
図6に対応した断面図である。
図19では未圧縮状態のバルーン210を示している。
図20では圧縮状態のバルーン210を示している。
【0144】
変形例5に係る止血器具は、
図19、
図20に示すように、第1挟持部材410Cの抑圧部415及び第2挟持部材420Cの抑圧部425が、バルーン210を圧縮していない状態において、支持部材100のバルーン210が配置された内面100a(支持部105の内面)との間に隙間g1、g2を形成するように構成されている。
【0145】
図19に示すように、バルーン210が未圧縮状態において、抑圧部415の押圧面415aは、隙間g1を空けて支持部材100の内面100aから離間した位置に配置されている。また、バルーン210が未圧縮の状態において、抑圧部425の押圧面425aは、隙間g2を空けて支持部材100の内面100aから離間した位置に配置されている。
【0146】
図20に示すように、変形例5に係る止血器具は、第1挟持部材410と第2挟持部材420を互いに近接させた際、各抑圧部415、425によってバルーン210を横幅方向に圧縮しつつ、バルーン210の一部を各隙間g1、g2内に逃がすことができる。そのため、支持部材100の内面100a(支持部105の内面)と各挟持部材410C、420Cとの間でバルーン210が挟み込まれることを防止できる。したがって、術者は、第1挟持部材410Cと第2挟持部材420Cを互いに近接させる際、第1挟持部材410Cと第2挟持部材420Cを円滑に移動させることができる。
【0147】
(変形例6)
図21、
図22は変形例6に係る止血器具の断面図を示す。
図21、
図22は前述した実施形態の
図5、
図6に対応した断面図である。
図21では未圧縮状態のバルーン210Bを示す。
図22では圧縮状態のバルーン210Bを示す。
【0148】
図21、
図22に示すように、変形例6に係る止血器具は、各挟持部材410、420を保持する溝部111、112の構成が前述した実施形態と相違する。
【0149】
支持部材100は、
図21、
図22に示すように、支持部材100の横幅方向の両端部側(
図21、
図22の左右方向の端部側)から支持部材100の横幅方向の中心側に向けて下方側に凸形状をなす断面形状で構成されている。これにより、各溝部111A、112Aは、支持部材100の横幅方向の端部側(各帯体320、330が接続された端部側)から、支持部材100の横幅方向の中心側に向けて、バルーン210の最下端部に位置する凸部219との間の高さ方向の距離が徐々に小さくなるように傾斜している。
【0150】
変形例6に係る止血器具は、各溝部111A、112Aの支持部材100の横幅方向の端部が、各溝部111A、112Aの支持部材100の横幅方向の中心側の位置と比較し、バルーン210の凸部219との間により大きな高さ方向の距離を形成するように構成される。つまり、支持部材100は、支持部材100の中央付近から周縁側に向けてバルーン210から離れる方向に湾曲している。そのため、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触することを防止できる。特に
図21に示すように、バルーン210が未圧縮状態で、第1挟持部材410と第2挟持部材420の間の距離が最も広いときには、バルーン210Bが高さ方向に突出した形状に変形していない状態にあるため、各抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触し易くなる。しかしながら、変形例6に係る止血器具は、各溝部111A、112Aが上記のように支持部材100の横幅方向の中心側に向けて傾斜するように延びているため、第1挟持部材410と第2挟持部材420が最も離間した状態において、抑圧部415、425の下端部416、426が患者の右手Hrの体表面と接触することを好適に防止することができる。同様に、止血器具は、バルーン210Bが圧縮状態となった際も、各抑圧部415、425によって阻害されることなく、バルーン210Bから穿刺部位pに対して好適に圧迫力を付与することができる。
【0151】
図21、
図22に示すように、変形例6に係る止血器具のバルーン210Bは、バルーン210Bの横幅方向の略中心に形成された凸部219を有する。凸部219は、バルーン210Bの他の部位よりも支持部材100の内面100aから最も離間した位置に配置されている。変形例6に係る止血器具は、バルーン210Bが上記のような凸部219を有する断面形状で形成されているため、
図22に示すようにバルーン210Bが圧縮状態に変形した際、バルーン210Bの凸部219から穿刺部位p付近に対して局所的に圧迫力を付与することができる。そのため、変形例6に係る止血器具は、バルーン210Bが穿刺部位pに対して付与する圧迫力を高めることができる。
【0152】
(他の変形例)
押圧部材がバルーンで構成されている場合、バルーンの側面(各挟持部材と対向する面)の肉厚をバルーンの他の部位よりも大きく形成することができる。バルーンの側面の肉厚を大きくすると、バルーンの側面は、バルーンの他の部位よりも変形し難くなる。このようにバルーンを構成すると、バルーンが圧縮状態となった際、バルーンの側面が横幅方向に逃げるように変形することを防止できる。止血器具は、バルーンの側面が横幅方向に逃げるように変形することを防止することで、バルーンの下面や最下端部を患者の右手Hrの体表面に対して狭い範囲で局所的に接触させることができる。そのため、バルーンが穿刺部位pに対して付与する圧迫力を効果的に高めることができる。
【0153】
以上、実施形態及び変形例を通じて本発明に係る止血器具を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0154】
実施形態及び各変形例では、押圧部材をバルーンで構成した例を説明した。ただし、押圧部材は、一対の挟持部材の近接・離間によって横幅を制御可能である限り、具体的な構造は限定されない。押圧部材は、例えば、一対の挟持部材が互いに近接することによって横幅が小さく変形し、一対の挟持部材が互いに離間することによって横幅が大きく変形することができる弾性部材等で構成する事も可能である。
【0155】
実施形態では、右手に形成された穿刺部位を止血するための止血器具を例示した。ただし、止血器具は、左手に形成された穿刺部位を止血可能に構成することも可能である。また、止血器具は、患者の手以外の部位に形成された穿刺部位(例えば、手首や下肢を含む肢体に形成された穿刺部位)を止血する手技に使用することも可能である。
【0156】
実施形態及び各変形例で説明した構成は、一対の挟持部材を使用した押圧部材の横幅方向の変形を制御可能な限り、任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0157】
10 止血器具
100 支持部材
100a 支持部材の内面
100b 支持部材の外面
105 支持部
111 溝部
112 溝部
121a ロック用溝部
121b ロック用溝部
122a ロック用溝部
122b ロック用溝部
131 ストッパー部
132 ストッパー部
200 押圧部材
210 バルーン
210A バルーン
210B バルーン
210a バルーンの上面
210b バルーンの下面
215 内部空間
216 下端部
218 マーカー部
219 凸部
220 充填材
300 固定部材
310 第1帯体
320 第2帯体
330 第3帯体
400 一対の挟持部材
410 第1挟持部材
410A 第1挟持部材
410B 第1挟持部材
410C 第1挟持部材
411 つまみ部
413 アーム部
415 抑圧部
415a 押圧面
416 抑圧部の下端部
417a ロック部
417b ロック部
420 第2挟持部材
420A 第2挟持部材
420B 第2挟持部材
420C 第2挟持部材
421 つまみ部
423 アーム部
425 抑圧部
425a 押圧面
426 抑圧部の下端部
427a ロック部
427b ロック部
430 連動機構
440 回転駆動部
451 第1駆動部
452 第2駆動部
500 イントロデューサー
510 シースチューブ
H1 未圧縮状態の押圧部材の第1高さ
H1´ 圧縮状態の押圧部材の第1高さ
L1 第1距離
L2 第2距離
L3 未圧縮状態における支持部材と抑圧部の下端部との間の距離
L3´ 圧縮状態における支持部材と抑圧部の下端部との間の距離
W1 未圧縮状態の押圧部材の横幅
W1´ 圧縮状態の押圧部材の横幅
W2 未圧縮状態の押圧部材の縦幅
W3 押圧面の幅
W4 押圧面の幅
g1 隙間
g2 隙間
A 前腕部
B 動脈(血管)
H 手
Hr 右手
fb 指間部
p 穿刺部位