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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051588
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/135 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
A61B17/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157830
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦哉
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD32
4C160DD33
4C160DD35
4C160DD70
(57)【要約】
【課題】左右両方の手に兼用することができ、かつ注入器具の誤接続の発生を防止できる優れたユーザビリティを備える止血器具を提供する。
【解決手段】止血器具10は、第1拡張部材210及び第2拡張部材220が接続された支持部材上に位置し、第1拡張部材及び第2拡張部材の一方に選択的に流体を注入可能に構成されたコネクタ部300を有しており、コネクタ部は、第1部材310と、第1部材を気密な状態で囲むように配置された第2部材320と、を備え、第1部材は、第2部材に対して回転可能に構成されており、第1部材の回転操作により、孔部315と第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bの一方との位置を合わせることで、第1拡張部材及び第2拡張部材の一方に選択的に空気を注入できるように構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の手に形成された穿刺部位を覆うように構成された支持部材と、
前記支持部材に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第1拡張部材と、
前記第1拡張部材と異なる位置で前記支持部材に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第2拡張部材と、
前記支持部材上に位置し、前記第1拡張部材及び前記第2拡張部材の一方に選択的に流体を注入可能に構成されたコネクタ部と、
前記支持部材を前記手に固定するように構成された固定部材と、を有し、
前記コネクタ部は、第1部材と、前記第1部材を気密な状態で囲むように配置された第2部材と、を備え、
前記第1部材は、弁部材と、前記弁部材が開放した状態で前記第1部材の外部と連通する孔部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1部材の前記弁部材を外部に露出させる上部開口部と、前記第1拡張部材と連通する第1下部開口部と、前記第2拡張部材と連通する第2下部開口部と、を有し、
前記第1部材は、前記弁部材が前記上部開口部から露出するように前記第2部材の内側に位置し、かつ、前記第2部材に対して回転可能に構成され、
前記コネクタ部は、前記第1部材の回転操作により、前記孔部と前記第1下部開口部及び前記第2下部開口部の一方との位置を合わせることで、前記第1拡張部材及び前記第2拡張部材の一方に選択的に空気を注入できるように構成される、止血器具。
【請求項2】
前記コネクタ部は、前記支持部材の平面視において前記第1拡張部材と前記第2拡張部材との間に配置されている、請求項1に記載の止血器具。
【請求項3】
前記コネクタ部は、前記第2部材に対する前記第1部材の移動をガイドするガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記第1部材の外面に設けられた第1凸部又は第1凹部と、前記第2部材の内面に設けられるとともに前記第1凸部が挿入可能な第2凹部、又は前記第1凹部に挿入可能な第2凸部を有する、請求項1に記載の止血器具。
【請求項4】
前記コネクタ部は、前記弁部材が配置された位置と反対側の位置で前記第1部材を支持する弾性部材を有し、
前記弾性部材は、前記第2部材の延在方向に沿って伸縮可能に構成されている、請求項1に記載の止血器具。
【請求項5】
前記第1部材は、前記孔部が前記第1下部開口部と位置合わせした状態であること、又は前記孔部が前記第2下部開口部と位置合わせした状態であることを示す位置合わせマーカー部を有する、請求項1に記載の止血器具。
【請求項6】
前記コネクタ部は、前記孔部から前記第1下部開口部及び前記第2下部開口部へ流入させる前記空気が前記コネクタ部の外部へ漏れ出ることを防止するシール部材を有し、
前記シール部材は、前記第1部材の外面及び/又は前記第2部材の内面の少なくとも一部に配置されている、請求項1に記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル手技の1つとして、患者の腕や手の血管を穿刺して形成された穿刺部位を介して各種の医療用長尺体を血管内に導入し、病変部位に対する診断や治療を行う手技が知られている。例えば、特許文献1には、手を走行する血管(遠位橈骨動脈を含む)へのアクセスを可能にするために形成された穿刺部位を止血する止血器具が開示されている。
【0003】
特許文献1の止血器具は、患者の手に形成された穿刺部位に圧迫力を付与する拡張部材と、拡張部材を患者の身体に固定する複数の帯体と、拡張部材が接続された支持部材と、を備える。特許文献1の止血器具は、拡張部材が空気等の流体の注入・排出に伴って拡張及び収縮可能なバルーンで構成されている。医師や看護師(以下、「術者」とする)は、拡張部材を拡張及び収縮させる際、止血器具に取り付けられたコネクタ部(空気注入口)にシリンジ等の注入器具を接続する。術者は、コネクタ部に接続した注入器具を操作することにより拡張部材への流体の注入及び拡張部材からの流体の排出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0133602号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、カテーテル手技では、患者の左右両方の手のうちの一方の手を温存するなどの理由より、患者の右手に穿刺部位を形成したり、患者の左手に穿刺部位を形成したりすることがある。術者は、特許文献1に記載された止血器具を使用した止血を開始するに際し、拡張部材が接続された支持部材を左右いずれかの手に形成された穿刺部位に重ねるように配置した上で、複数の帯体を接続し、拡張部材を手に対して固定する。特許文献1に記載された止血器具では、拡張部材は支持部材上における接続位置を変更することができない。そのため、止血器具を患者の右手に形成された穿刺部位の止血と患者の左手に形成された穿刺部位の止血に兼用する場合、各穿刺部位に対して拡張部材を適切に配置することが難しい。
【0006】
例えば、上記のような課題の対策として、支持部材の異なる位置に配置された複数の拡張部材を備えるように止血器具を構成することが考えられる。止血器具に複数の拡張部材が備えられている場合、術者は、患者の右手に形成した穿刺部位を止血する際には一方の拡張部材を位置合わせして配置し、患者の左手に形成した穿刺部位を止血する際には他方の拡張部材を位置合わせして配置することができる。そのため、止血器具は左右両方の手に兼用できる。
【0007】
しかしながら、上記のように止血器具に複数の拡張部材を備えるように構成した場合、拡張部材の各々を個別に拡張させることができるようにするために、拡張部材の個数と同数のコネクタ部を止血器具に取り付ける必要がある。一つの止血器具に複数のコネクタ部を取り付けると、術者が複数の拡張部材のうちのいずれかの拡張部材を選択的に拡張させようとした際、コネクタ部に注入器具を誤接続してしまう可能性がある。また、複数のコネクタ部が支持部材から突出するように配置されていると、止血器具による止血を実施している最中に、患者の手指や周囲の物品等がコネクタ部と不用意に接触してしまう可能性も高まるため、ユーザビリティの低下を招く。
【0008】
本発明は、左右両方の手に兼用することができ、かつ注入器具の誤接続の発生を防止できる優れたユーザビリティを備える止血器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)止血器具は、患者の手に形成された穿刺部位を覆うように構成された支持部材と、前記支持部材に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第1拡張部材と、前記第1拡張部材と異なる位置で前記支持部材に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第2拡張部材と、前記支持部材上に位置し、前記第1拡張部材及び前記第2拡張部材の一方に選択的に流体を注入可能に構成されたコネクタ部と、前記支持部材を前記手に固定するように構成された固定部材と、を有し、前記コネクタ部は、第1部材と、前記第1部材を気密な状態で囲むように配置された第2部材と、を備え、前記第1部材は、弁部材と、前記弁部材が開放した状態で前記第1部材の外部と連通する孔部と、を有し、前記第2部材は、前記第1部材の前記弁部材を外部に露出させる上部開口部と、前記第1拡張部材と連通する第1下部開口部と、前記第2拡張部材と連通する第2下部開口部と、を有し、前記第1部材は、前記弁部材が前記上部開口部から露出するように前記第2部材の内側に位置し、かつ、前記第2部材に対して回転可能に構成され、前記コネクタ部は、前記第1部材の回転操作により、前記孔部と前記第1下部開口部及び前記第2下部開口部の一方との位置を合わせることで、前記第1拡張部材及び前記第2拡張部材の一方に選択的に空気を注入できるように構成される。
【0010】
(2)前記コネクタ部は、前記支持部材の平面視において前記第1拡張部材と前記第2拡張部材との間に配置されている、上記(1)に記載の止血器具。
【0011】
(3)前記コネクタ部は、前記第2部材に対する前記第1部材の移動をガイドするガイド部を有し、前記ガイド部は、前記第1部材の外面に設けられた第1凸部又は第1凹部と、前記第2部材の内面に設けられるとともに前記第1凸部が挿入可能な第2凹部、又は前記第1凹部に挿入可能な第2凸部を有する、上記(1)又は上記(2)に記載の止血器具。
【0012】
(4)前記コネクタ部は、前記弁部材が配置された位置と反対側の位置で前記第1部材を支持する弾性部材を有し、前記弾性部材は、前記第2部材の延在方向に沿って伸縮可能に構成されている、上記(1)~上記(3)のいずれかに記載の止血器具。
【0013】
(5)前記第1部材は、前記孔部が前記第1下部開口部と位置合わせした状態であること、又は前記孔部が前記第2下部開口部と位置合わせした状態であることを示す位置合わせマーカー部を有する、上記(1)~上記(4)のいずれかに記載の止血器具。
【0014】
(6)前記コネクタ部は、前記孔部から前記第1下部開口部及び前記第2下部開口部へ流入させる前記空気が前記第1部材の外部へ漏れ出ることを防止するシール部材を有し、前記シール部材は、前記第1部材の外面及び/又は前記第2部材の内面の少なくとも一部に配置されている、上記(1)~上記(5)のいずれかに記載の止血器具。
【発明の効果】
【0015】
上記(1)の止血器具は、第1部材の孔部と第2部材の第1下部開口部を位置合わせした状態で弁部材を介して流体が注入されると、孔部及び第1下部開口部を介して第1拡張部材へ流体が注入される。また、上記の止血器具は、第1部材の孔部と第2部材の第2下部開口部を位置合わせした状態で弁部材を介して流体が注入されると、孔部及び第2下部開口部を介して第2拡張部材へ流体が注入される。そのため、上記の止血器具は、第1部材の孔部を第2部材の第1下部開口部及び第2部材の第2下部開口部の一方に位置合わせした状態で流体を注入することにより、第1拡張部材及び第2拡張部材の一方を選択的に拡張させることができる。また、上記の止血器具は、第1拡張部材又は第2拡張部材が右手に形成された穿刺部位や左手に形成された穿刺部位に選択的に配置された状態で、第1拡張部材又は第2拡張部材を拡張させることにより、左右両方の手に兼用することができる。また、上記の止血器具は、コネクタ部の第1部材の回転を操作することで第1部材の孔部と各拡張部材との間の連通状態を切り替えることができるため、第1拡張部材を拡張させるための専用のコネクタ部と第2拡張部材を拡張させるための専用のコネクタ部を備える必要がない。そのため、上記の止血器具は、当該止血器具に複数のコネクタ部が設けられているような場合に術者が注入器具を誤接続してしまうといった課題や、複数のコネクタ部が支持部材から突出するよう配置されることにより患者の手指や周囲の物品等が意図せずにコネクタ部と接触してしまうことに伴うユーザビリティの低下が生じることを防止できる。加えて、コネクタ部は、第1部材が第2部材の内側に位置するように構成されるため、第1部材は、注入器具が第1部材に接続されていない状態で、回転操作をすることが難しい。そのため、止血処置中に、患者の手指や周囲の物品等が意図せずにコネクタ部の第1部材と接触し、第1部材が第2部材に対して回転することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る止血器具を示す図であって、支持部材の外面側から見た平面図である。
図2】実施形態に係る止血器具を示す図であって、支持部材の内面側から見た平面図である。
図3】支持部材の外面側から見た止血器具の一部を拡大して示す平面図である。
図4】支持部材の内面側から見た止血器具の一部を拡大して示す平面図である。
図5図3に示す矢印5A方向から見た図である。
図6】第1拡張部材を拡張させる際の様子を示す図である。
図7】第2拡張部材を拡張させる際の様子を示す図である。
図8】コネクタ部を示す斜視図である。
図9図8に示す矢印9A-9Aに沿う部分断面図である。
図10】コネクタ部を示す斜視図である。
図11図10に示す矢印11A-11Aに沿う部分断面図である。
図12】コネクタ部を示す斜視図である。
図13図13に示す矢印13A-13Aに沿う部分断面図である。
図14】実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。
図15】実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。
図16図15に示す矢印16A-16Aに沿う部分断面図であって、第1拡張部材を拡張させた際の様子を示す図である。
図17】実施形態に係る止血器具の使用例を簡略的に示す図である。
図18図17に示す矢印18A-18Aに沿う部分断面図であって、第2拡張部材を拡張させた際の様子を示す図である。
図19】変形例に係る止血器具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
(実施形態)
図1図13は本実施形態に係る止血器具10を説明するための図である。図14図18は止血器具10の使用例を説明するための図である。
【0019】
止血器具10は、例えば、図15図16図17図18に示すように、患者の前腕部Aよりも遠位側(手指側)に位置する手Hに形成された穿刺部位p(以下、「穿刺部位p」とも称する。)に留置していたイントロデューサー700のシースチューブ710を抜去する際、その穿刺部位pを止血するために使用することができる。
【0020】
本実施形態では、穿刺部位pとして、第1穿刺部位p1と第2穿刺部位p2を例示する。第1穿刺部位p1は、患者の前腕部Aよりも遠位側に位置する右手HRの甲側を走行する手掌動脈のスナッフボックスに位置する動脈B1(以下、「血管B1」とも称する。図16を参照。)に形成された穿刺部位である。第2穿刺部位p2は、患者の前腕部Aよりも遠位側に位置する左手HLの甲側を走行する手掌動脈のスナッフボックスに位置する動脈B2(以下、「血管B2」とも称する。図18を参照。)に形成された穿刺部位である。なお、スナッフボックスは患者が手Hの親指を広げた際に橈骨付近に位置する手の空洞である。
【0021】
<止血器具10>
止血器具10は、概説すると、図1図2図15図16図17図18に示すように、穿刺部位pを覆うように構成された支持部材100と、支持部材100に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第1拡張部材210と、第1拡張部材210と異なる位置で支持部材100に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第2拡張部材220と、支持部材100上に位置し、第1拡張部材210及び第2拡張部材220の一方に選択的に流体を注入可能に構成されたコネクタ部300と、支持部材100を手Hに固定するように構成された固定部材500と、を有する。
【0022】
<支持部材100>
図5図6図7に示すように、支持部材100は、第1拡張部材210及び第2拡張部材220が接続された板状の部材で構成している。
【0023】
図5図6図7に示すように、第1拡張部材210及び第2拡張部材220は、支持部材100の内面100aに接続されている。支持部材100の内面100aは、止血器具10を患者の手Hに装着した際に患者の手Hの体表面側に配置される面である(図16図18を参照)。
【0024】
図5図6図7に示すように、コネクタ部300は、コネクタ部300の上端部側の一部が支持部材100の外面100b側に配置されており、コネクタ部300の下端部側の一部が支持部材100の内面100a側に配置されている。支持部材100の外面100bは、内面100aと反対側に位置する面である。
【0025】
図3図4に示すように、支持部材100の平面形状は、例えば、角部が丸みを帯びた略台形形状に形成することができる。図5図6図7に示すように、支持部材100の幅方向(図3図4図5の左右方向)に沿う側面形状(断面形状)は、例えば、支持部材100の幅方向の略中心位置c1に向けて緩やかに凸状に湾曲した形状に形成することができる。なお、支持部材100の平面形状及び断面形状は、止血器具10を患者の手Hに装着した状態(図15図17を参照)において、穿刺部位pを覆うように配置することが可能な限り、特に限定されない。
【0026】
支持部材100は、例えば、所定の硬さを有する材料で構成することができる。支持部材100の構成材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
【0027】
<第1拡張部材210>
第1拡張部材210は、例えば、空気等の流体が注入可能な内部空間215を備える樹脂製のバルーンで構成することができる。図5には未拡張の状態の第1拡張部材210を示し、図6には拡張した状態の第1拡張部材210を示す。
【0028】
図5図6に示すように、第1拡張部材210は、例えば、膜状の部材の縁部を支持部材100に固定することで、支持部材100の内面100aとの間に流体が注入可能な内部空間215が区画されたバルーンで構成することができる。ただし、第1拡張部材210の具体的な構造について特に制限はない。第1拡張部材210は、例えば、2枚の膜状の部材同士を接合し、当該2枚の膜状の部材の間に内部空間215が区画された構造のものや、内側に内部空間215が区画された一つの袋状の部材で構成することもできる。
【0029】
図5図8に示すように、第1拡張部材210と第2部材320は、内腔を備える第1チューブ410で連結されている。第1チューブ410の一端部は、第1拡張部材210の内部空間215と常時連通している。第1チューブ410の他端部は、コネクタ部300の第2部材320の第1下部開口部324aと常時連通している。
【0030】
図6に示すように、止血器具10は、コネクタ部300の第1部材310を回転させて、第1部材310の孔部315が第2部材320の第1下部開口部324aに位置合わせされると、第1部材310の孔部315及び第1チューブ410を介して、第1拡張部材210の内部空間215と第1部材310の流路313を連通させることができる。
【0031】
第1拡張部材210は、例えば、融着や接着により支持部材100の内面100aに接続することができる。
【0032】
図3図4に示すように、第1拡張部材210は、平面視において、略台形形状を有するように構成することができる。なお、第1拡張部材210の平面形状は、穿刺部位pに対して所定の圧迫力を付与することが可能な限り、特に限定されない。また、第1拡張部材210の拡張前後における断面形状、第1拡張部材210の構成材料、支持部材100において第1拡張部材210を配置する位置等についても特に制限はない。
【0033】
図3図4図5図14図15に示すように、第1拡張部材210は、第1拡張部材210を穿刺部位pに位置合わせするためのマーカー部218を有する。マーカー部218は、例えば、第1拡張部材210の下面(手Hの体表面に向かい合わせて配置される面)に所定の形状及び色を印刷したり、マーカー部218をなすシールを貼り付けたりすることで構成できる。
【0034】
第1拡張部材210においてマーカー部218が形成された位置と平面視において重なる位置は、透明又は半透明に形成することができる。また、支持部材100においてマーカー部218が形成された位置と平面視において重なる位置は、透明又は半透明に形成することができる。上記のように第1拡張部材210の所定位置及び支持部材100の所定位置を透明又は半透明に形成することにより、図14に示すように術者が第1拡張部材210を穿刺部位pに配置する際、支持部材100の外面100b側からマーカー部218の位置を目視で容易に確認することが可能になる。
【0035】
<第2拡張部材220>
第2拡張部材220は、例えば、空気等の流体が注入可能な内部空間225を備える樹脂製のバルーンで構成することができる。図5には未拡張の状態の第2拡張部材220を示し、図7には拡張した状態の第2拡張部材220を示す。
【0036】
図5図7に示すように、第2拡張部材220は、例えば、膜状の部材の縁部を支持部材100に固定することで、支持部材100の内面100aとの間に流体が注入可能な内部空間225が区画されたバルーンで構成することができる。ただし、第2拡張部材220の具体的な構造について特に制限はない。第2拡張部材220は、例えば、2枚の膜状の部材同士を接合し、当該2枚の膜状の部材の間に内部空間225が区画された構造のものや、内側に内部空間225が区画された一つの袋状の部材で構成することもできる。また、第2拡張部材220は、第1拡張部材210と同一の構成を有していてもよいし、第1拡張部材210とは異なる構造を有していてもよい。
【0037】
図5図8に示すように、第2拡張部材220と第2部材320は、内腔を備える第2チューブ420で連結されている。第2チューブ420の一端部は、第2拡張部材220の内部空間225と常時連通している。第2チューブ420の他端部は、コネクタ部300の第2部材320の第2下部開口部324bと常時連通している。
【0038】
図7に示すように、止血器具10は、コネクタ部300の第1部材310を回転させて、第1部材310の孔部315が第2部材320の第2下部開口部324bに位置合わせされると、第1部材310の孔部315及び第2チューブ420を介して、第2拡張部材220の内部空間225と第1部材310の流路313とを連通させることができる。
【0039】
図4図5図6図7に示すように、第2拡張部材220は、支持部材100の幅方向の略中心位置c1を間に挟んで第1拡張部材210と対向する位置に配置することができる。
【0040】
第2拡張部材220は、例えば、融着や接着により支持部材100の内面100aに接続することができる。
【0041】
図3図4に示すように、第2拡張部材220は、平面視において、略台形形状を有するように構成することができる。なお、第2拡張部材220の平面形状は、穿刺部位pに対して所定の圧迫力を付与することが可能な限り、特に限定されない。また、第2拡張部材220の拡張前後における断面形状、第2拡張部材220の構成材料、支持部材100において第2拡張部材220を配置する位置等についても特に制限はない。例えば、第2拡張部材220は、第1拡張部材210と異なる平面形状及び/又は断面形状を有していてもよい。
【0042】
図3図4図5図17に示すように、第2拡張部材220は、第2拡張部材220を穿刺部位pに位置合わせするためのマーカー部228を有する。マーカー部228は、例えば、第2拡張部材220の下面(手Hの体表面に向かい合わせて配置される面)に所定の形状及び色を印刷したり、マーカー部218をなすシールを貼り付けたりすることで構成できる。
【0043】
なお、前述した第1拡張部材210のマーカー部218について説明した理由と同様の理由より、第2拡張部材220においてマーカー部228が形成された位置と平面視において重なる位置、及び支持部材100においてマーカー部228が形成された位置と平面視において重なる位置は、透明又は半透明に形成することができる。
【0044】
第1拡張部材210及び第2拡張部材220を構成する膜状の部材の構成材料は特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、ナイロン、ナイロンエラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)を使用することができる。
【0045】
<コネクタ部300>
図8図13は、コネクタ部300の構造及び動作を説明するための概略的な図面を示す。図8図10図12は、第1部材310の孔部315を第2部材320の第1下部開口部324aに位置合わせする前後の様子を示す斜視図である。図9図11図13は、図8図10図12に付した矢印9A-9A、矢印11A-11A、矢印13A-13Aに沿う部分断面図である。
【0046】
図8図10図12に示すように、コネクタ部300は、第1部材310と、第1部材310を気密な状態で囲むように配置された第2部材320と、を備える。
【0047】
上記の「第1部材310を気密な状態で囲む」とは、具体的には、「第1部材310の孔部315を通る流体が第1部材310と第2部材320の間の隙間から外部に漏れ出すことを遮断するように囲む」ことを意味する。
【0048】
第1部材310は、弁部材312と、弁部材312が開放した状態で第1部材310の外部と連通する孔部315と、を有する。
【0049】
弁部材312は、シリンジ等の注入器具600の先筒部を接続可能な構成を備える。弁部材312は、例えば、注入器具600の接続に伴って閉鎖した状態から開放した状態へ切り替え可能に構成された逆止弁で構成することができる。
【0050】
第1部材310は、空気が流通可能な流路313が内部に形成された本体部311を有する。弁部材312は、本体部311の上端部付近に保持されている。流路313は、本体部311の内部において、弁部材312が配置された上端部側から孔部315に向けて連続的に延在している。
【0051】
図5に示すように、止血器具10では、第1部材310の孔部315は、支持部材100の内面100a側に配置されている。
【0052】
止血器具10は、注入器具600が接続されることによって弁部材312が開放した状態になると、注入器具600の先筒部の内部と流路313とを連通させる。術者は、注入器具600の先筒部の内部と流路313が連通した状態で、注入器具600を操作することにより、流路313内への空気の注入と、流路313を介した空気の排出を行うことができる。
【0053】
図6図7に示すように、止血器具10は、注入器具600の先筒部が弁部材312に接続された状態で注入器具600を回転させる操作がなされると、注入器具600の回転に同伴して第1部材310が回転するように構成されている。
【0054】
第2部材320は、第1部材310の弁部材312を外部に露出させる上部開口部323と、第1拡張部材210と連通する第1下部開口部324aと、第2拡張部材220と連通する第2下部開口部324bと、を有する。
【0055】
図5図6図7に示すように、上部開口部323は、支持部材100の外面100b側に配置されている。
【0056】
上部開口部323は、弁部材312の一部を第2部材320の上端部側に露出させる。そのため、術者は、止血器具10を患者の手Hに装着させた状態において、支持部材100の外面100b側から弁部材312に注入器具600を簡単に接続させることができる(図16図18を参照)。
【0057】
図3図4図5に示すように、第1下部開口部324aと第2下部開口部324bは、支持部材100の略中心位置c1を挟んで対向する位置に配置している。
【0058】
図8図10図12に示すように、第1部材310は、弁部材312が上部開口部323から露出するように第2部材320の内側に位置し、かつ、第2部材320に対して回転可能に構成されている。
【0059】
図8図10図12に示すように、第2部材320の内側には、第1部材310を収容する内腔321が形成されている。第1部材310は、本体部311の一部及び弁部材312の一部が上部開口部323から露出した状態で第2部材320の内腔321に収容されている。
【0060】
図6図7に示すように、コネクタ部300は、第1部材310の回転操作により、孔部315と第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bの一方との位置を合わせることで、第1拡張部材210及び第2拡張部材220の一方に選択的に空気を注入できるように構成されている。
【0061】
図8図9には、孔部315を第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bのいずれにも位置合わせしていない状態を示している。この状態において、第1部材310の流路313と各拡張部材210、220は連通していない。そのため、止血器具10は、各拡張部材210、220を拡張させることができない状態にある。
【0062】
図12図13には、図8図9に示す状態から図6に示すように第1部材310を回転させて、孔部315を第1下部開口部324aに位置合わせした状態を示している。この状態において、流路313と第1拡張部材210は、孔部315及び第1下部開口部324aを介して連通する。止血器具10は、流路313と第1拡張部材210が連通した状態において、注入器具600から空気が注入されることにより、第1拡張部材210を拡張させる。
【0063】
なお、図示省略するが、止血器具10は、図7に示すように第1部材310を回転させて、孔部315を第2下部開口部324bに位置合わせした状態とすることにより、孔部315及び第2下部開口部324bを介して流路313と第2拡張部材220を連通させることができる。止血器具10は、流路313と第2拡張部材220が連通した状態において、注入器具600から空気が注入されることにより、第2拡張部材220を拡張させることができる。
【0064】
図3図4に示すように、コネクタ部300は、支持部材100の平面視において第1拡張部材210と第2拡張部材220との間に配置されている。
【0065】
止血器具10は、コネクタ部300の平面視の中心位置が支持部材100の幅方向の中心位置c1と重なるように、コネクタ部300が支持部材100に取り付けられている。
【0066】
図8図10図12に示すように、コネクタ部300は、第1部材310に対する第2部材320の移動をガイドするガイド部360を有する。
【0067】
ガイド部360は、第1部材310の外面に設けられた第1凸部361と、第2部材320の内面に設けられるとともに第1凸部361が挿入可能な第2凹部362a、362bと、を有する。
【0068】
第1凸部361は、孔部315よりも第1部材310の上端部側の位置に配置されている。第1凸部361は、第1部材310の外面から第2部材320の内面に向けて突出している。
【0069】
第2凹部362aは、第2部材320の延在方向に沿って配置されている。第2凹部362aは、第2部材320の内面に形成された凹状の溝部で構成されている。
【0070】
第2凹部362bは、第2部材320の周方向に沿って配置されている。第2凹部362aは、第2部材320の内面に形成された凹状の溝部で構成されている。第2凹部362aは、第2凹部362aの下端部付近で第2凹部362aと繋がっている。
【0071】
図8図9図10図11に示すように、止血器具10は、孔部315が各下部開口部324a、324bに位置合わせされていない状態において、第2凹部362aに第1凸部361が位置する。第1部材310は、第2凹部362aに第1凸部361が位置する状態において、第2凹部362aの延在方向、つまり第2部材320の延在方向に沿ってのみ移動可能である。そのため、止血器具10は、第2凹部362aに第1凸部361が位置する状態において、第1部材310の移動方向を第2部材320の延在方向に沿う上下方向のみに規制することができる。
【0072】
図10図11図12図13に示すように、止血器具10は、第1凸部361が第2凹部362aの下端部付近まで移動すると、第1凸部361を第2凹部362bに沿って移動させることが可能になる。術者は、第1凸部361が第2凹部362bに位置する状態で、第2凹部362bに沿って第1凸部361を移動させることにより、第1凸部361が設けられた第1部材310を第2部材320に対して回転させることができる。
【0073】
第2凹部362bは、例えば、第2部材320の周方向の一部のみに沿って配置することができる。第2凹部362bを第2部材320の周方向の一部のみに沿って配置することにより、図11に示すように孔部315を各下部開口部324a、324bに位置合わせする際、孔部315が各下部開口部324a、324bに位置合わせされた状態から第1部材310がさらに回転することを規制できる。術者は、第1凸部361が第2凹部362bの端部に突き当たったことを手指の感覚等で認識することにより、孔部315が各下部開口部324a、324bに位置合わせされたことを目視で確認することなく容易に把握することができる。
【0074】
なお、ガイド部360は、孔部315が各下部開口部324a、324bに位置合わせされた状態において第1部材310を第2部材320に対して固定するロック機構を備えていてもよい。
【0075】
ガイド部360は、例えば、第1部材310の外面に設けられた第1凹部と、第2部材320の内面に設けられるとともに第1凹部に挿入可能な第2凸部とで構成することもできる。つまり、ガイド部は、前述した第1凸部361と第2凹部362a、362bの機構を第1部材310側と第2部材320側で入れ替えた構成を備えていてもよい。ガイド部360は、上記のように構成された場合においても第1部材310の上下方向の移動及び回転をガイドする機能を発揮することができる。
【0076】
なお、第1部材310は、例えば、弁部材312が配置された上端部側の部分が孔部315が配置された下端部側の部分よりも断面積(外径)が小さく形成されていてもよい。止血器具10は、このように第1部材310が構成されている場合、第1部材310の外面と第2部材320の内面が接触する面積が小さくなる。そのため、止血器具10は、第1部材310をスムーズに回転させることができる。
【0077】
図8図10図12に示すように、コネクタ部300は、弁部材312が配置された位置と反対側の位置(第1部材310の下端部側の位置)で第1部材310を支持する弾性部材350を有する。
【0078】
弾性部材350は、第2部材320の延在方向に沿って伸縮可能に構成されている。
【0079】
図8に示すように、弾性部材350は、支持部材100の内面100a側に配置されている。弾性部材350は、第2部材320の下端面と接続されている。
【0080】
図8に示すように、止血器具10は、第1部材310に対して第1部材310を弾性部材350側に向けて押し下げるような力が加えられていない状態では、弾性部材350が圧縮されていない非圧縮状態を維持する。止血器具10は、弾性部材350が非圧縮状態において、第1部材310の弁部材312を第2部材320の上部開口部323から露出した状態に維持する。
【0081】
図10に示すように、止血器具10は、第1部材310に対して第1部材310を弾性部材350側に向けて押し下げるような力が加えられると、弾性部材350が第2部材320の延在方向に収縮する。それにより、止血器具10は、弾性部材350によって支持された第1部材310が第2部材320の延在方向に沿って第2部材320の内腔321に押し込こまれる。止血器具10は、第1部材310が第2部材320の内腔321に押し込まれると、第2部材320の延在方向において、第1部材310の孔部315と第2部材320の各下部開口部324a、324bが位置合わせされる。術者は、第2部材320の延在方向において、第1部材310の孔部315と第2部材320の各下部開口部324a、324bが位置合わせされた状態で、第1部材310を回転させることにより、孔部315を第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bの一方に選択的に位置合わせすることができる。
【0082】
なお、止血器具10は、注入器具600の先筒部が弁部材312に接続される際、弾性部材350が第1部材310により患者の手Hの体表面側に押し下げるため、弾性部材350が患者の手Hの体表面に接触する。この際、弾性部材350が緩衝部材として機能するため、注入器具600の先筒部を弁部材312に接続する際、患者が感じる痛みを軽減することができる。また、上記のように弾性部材350が緩衝部材として機能するため、注入器具600の先筒部を弁部材312に接続する際に生じた衝撃によって支持部材100が位置ズレすることを防止できる。
【0083】
弾性部材350は、例えば、所定の弾性を備える樹脂材料等で構成することができる。ただし、弾性部材350の具体的な構造や材質は特に限定されない。
【0084】
図3図8図10図12に示すように、第1部材310は、孔部315が第1下部開口部324aと位置合わせした状態であること、又は孔部315が第2下部開口部324bと位置合わせした状態であることを示す位置合わせマーカー部317を有する。
【0085】
位置合わせマーカー部317は、例えば、第1部材310において上部開口部323から露出した任意の部分に配置することができる。止血器具10では、位置合わせマーカー部317は、上部開口部323から露出した第1部材310の本体部311の上面部に配置している。
【0086】
位置合わせマーカー部317は、第1部材310の周方向において孔部315が配置された位置と対応した位置に配置している。位置合わせマーカー部317は、例えば、第1部材310の平面視における中心から外側に向けて先細る三角形状や矢印形状で構成することができる。
【0087】
位置合わせマーカー部317は、例えば、第1部材310の上端面に印刷したり、位置合わせマーカー部317をなすシールを貼り付けたりすることで構成できる。
【0088】
なお、位置合わせマーカー部317は、例えば、第1部材310及び第2部材320を含むコネクタ部300の上面全体に形成された矢印状のマーカー等で構成することもできる。
【0089】
図8図10図12に示すように、コネクタ部300は、孔部315から第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bへ流入させる空気がコネクタ部300の外部へ漏れ出ることを防止するシール部材370を有する。
【0090】
シール部材370は、第1部材310の外面及び第2部材320の内面の少なくとも一部に配置することができる。シール部材370は、第1部材310の外面に配置されたゴム製のシール部材で構成している。シール部材370は孔部315の周囲を囲むように配置している。
【0091】
図12に示すように、シール部材370は、孔部315が第1下部開口部324a又は第2下部開口部324bに位置合わせされると、第2部材320の内面と当接する。孔部315と第1下部開口部324a又は第2下部開口部324bは、両者の周囲がシール部材370によって囲まれた状態で互いに連通する。そのため、第1部材310は、第1部材310の流路313を通って孔部315から各下部開口部324a、324bへ流入する空気が孔部315の周囲へ漏れ出し、さらに第1部材310と第2部材320の間を通ってコネクタ部300の外部へ漏れ出すことをより確実に防止できる。
【0092】
なお、シール部材370は、第1下部開口部324a又は第2下部開口部324bへ流入させる空気が第1部材310の外部へ漏れ出ることを防止し得る限り、具体的な材料や構造等について特に制限はない。例えば、シール部材370は、シリコーンなどで構成することができる。また、シール部材370は、例えば、第2部材320の各下部開口部324a、324bの周囲を覆うように配置したり、第1部材310の第1凸部361の上部側の位置に配置して、第2部材320の上部開口部323側へ空気が漏れ出ることを防止するように構成したりしてもよい。
【0093】
<固定部材500>
図1図2に示すように、固定部材500は、支持部材100に接続された第1帯体510と、第2帯体520と、第3帯体530と、を有する。
【0094】
第1帯体510は、支持部材100側に配置された一端部が支持部材100の外面100bに接続されている。図2に示すように、第1帯体510の内面には、第1固定部位551を配置している。
【0095】
図14図15に示すように、第1帯体510は、止血器具10を患者の右手HRに装着する場合、右手HRの親指と人差し指の間の指間部fb1に配置することができる。また、図17に示すように、第1帯体510は、止血器具10を患者の左手HLに装着する場合、左手HLの親指と人差し指の間の指間部fb2に配置することができる。
【0096】
第2帯体520は、支持部材100側に配置された一端部が支持部材100の外面100bに接続されている。第2帯体520は、支持部材100から第1帯体510が延在する方向と異なる方向に延在している。図1に示すように、第2帯体520の外面には、第2固定部位552を配置している。図2に示すように、第2帯体520の内面には、第3固定部位553を配置している。
【0097】
第3帯体530は、支持部材100側に配置された一端部が支持部材100の外面100bに接続されている。第3帯体530は、支持部材100から第1帯体510及び第2帯体520の各々が延在する方向と異なる方向に延在している。図1に示すように、第3帯体530の外面には、第4固定部位554を配置している。
【0098】
図14図15に示すように、第2帯体520と第3帯体530は、止血器具10を患者の右手HRに装着する場合、患者の右手HRの外周に巻き付けるように配置することができる。また、図17に示すように、第2帯体520と第3帯体530は、止血器具10を患者の左手HLに装着する場合、患者の左手HLの外周に巻き付けるように配置することができる。
【0099】
第2帯体520の内面に配置された第3固定部位553は、第3帯体530の外面に配置された第4固定部位554と接続可能である。図15図17に示すように、術者は、第2帯体520と第3帯体530を患者の右手HR又は左手HLに巻き付けた状態で、第3固定部位553と第4固定部位554を接続することにより、第2帯体520と第3帯体530を患者の右手HR又は左手HLに固定することができる。
【0100】
第1帯体510の内面に配置された第1固定部位551は、第2帯体520の外面に配置された第2固定部位552と接続可能である。図15図17に示すように、術者は、右手HRの指間部fb1又は左手HLの指間部fb2に配置した第1帯体510の内面に配置された第1固定部位551を第2帯体520の外面に配置された第2固定部位552に接続することにより、第2帯体520及び第3帯体530とともに第1帯体510を患者の右手HR又は左手HLに固定することができる。
【0101】
各帯体510、520、530の構成材料は特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等で構成することができる。
【0102】
各固定部位551、552、553、554は、例えば、面ファスナーの雄側又は雄側で構成することができる。ここでいう面ファスナーは、面的に着脱可能なファスナーであり、例えば、Magic Tape(登録商標)やVelcro(登録商標)である。なお、各固定部位551、552、553、554は、止血器具10を患者の手Hに配置した状態で各帯体510、520、530同士を接続することにより、支持部材100を穿刺部位pに重ねて配置した状態で固定することが可能な限り、具体的な構造は限定されない。
【0103】
<止血器具10の使用例>
次に、図14図18を参照して、止血器具10の使用例を説明する。
【0104】
使用例では、図14図15図16に示すように患者の右手HRに形成した第1穿刺部位p1を第1拡張部材210によって止血する際の止血器具10の使用手順と、図17図18に示すように患者の左手HLに形成した第2穿刺部位p2を第2拡張部材220によって止血する際の止血器具10の使用手順を例示する。
【0105】
図14には、患者の右手HRに形成された第1穿刺部位p1にイントロデューサー700のシースチューブ710を挿入して各種の手技を実施し終えた状態を示している。
【0106】
術者は、第1穿刺部位p1の止血を開始するに際し、第1穿刺部位p1を覆うように支持部材100を配置する。術者は、第1拡張部材210に配置されたマーカー部218の位置を目視で確認しつつ、マーカー部218を第1穿刺部位p1に配置することにより、第1拡張部材210を第1穿刺部位p1に適切に配置することができる。
【0107】
術者は、図15に示すように、第1帯体510、第2帯体520、第3帯体530を患者の右手HRに固定する。
【0108】
術者は、各帯体510、520、530を患者の右手HRに固定した状態で、第1部材310の弁部材312に注入器具600の先筒部を接続する。術者は、第1部材310の弁部材312に注入器具600の先筒部を接続した状態で、注入器具600を支持部材100側に押し込む操作や回転させる操作を行うことにより(図10図12を参照)、第1部材310の孔部315を第2部材320の第1下部開口部324aに位置合わせする。
【0109】
図16に示すように、術者は、第1部材310の孔部315を第2部材320の第1下部開口部324aに位置合わせした状態で注入器具600を操作して、注入器具600から第1部材310の流路313内へ空気を注入する。止血器具10は、注入器具600から第1部材310の流路313内へ注入した空気を、孔部315、第1下部開口部324a、第1チューブ410を介して第1拡張部材210の内部空間215に注入する。止血器具10は、第1拡張部材210が拡張すると、第1拡張部材210が第1穿刺部位p1に対して圧迫力を付与する。
【0110】
術者は、第1拡張部材210が第1穿刺部位p1に対して付与する圧迫力を小さくする場合、注入器具600を操作して、第1拡張部材210の内部空間215に注入された空気を第1チューブ410、第1下部開口部324a、孔部315、及び流路313を介してコネクタ部300の外部へ排出することができる。
【0111】
以上の手順により、術者は、第1拡張部材210を使用して患者の右手HRに形成された第1穿刺部位p1を止血することができる。
【0112】
図17図18に示すように、術者は、第2拡張部材220を使用して患者の左手HLに形成された第2穿刺部位p2を止血する場合、第2拡張部材220を第2穿刺部位p2に配置する。また、術者は、第1帯体510、第2帯体520、第3帯体530を患者の左手HLに固定する。
【0113】
術者は、図7図18に示すように、第1部材310の弁部材312に注入器具600の先筒部を接続した状態で、注入器具600を支持部材100側に押し込む操作や回転させる操作を行うことにより、第1部材310の孔部315を第2部材320の第2下部開口部324bに位置合わせする。
【0114】
術者は、第1部材310の孔部315を第2部材320の第2下部開口部324bに位置合わせした状態で注入器具600を操作して、注入器具600から第1部材310の流路313内へ空気を注入する。止血器具10は、注入器具600から第1部材310の流路313内へ注入した空気を、孔部315、第2下部開口部324b、第2チューブ420を介して第2拡張部材220の内部空間225に注入する。止血器具10は、第2拡張部材220が拡張すると、第2拡張部材220が第2穿刺部位p2に対して圧迫力を付与する。
【0115】
以上の手順により、術者は、第2拡張部材220を使用して患者の右手HRに形成された第2穿刺部位p2を止血することができる。
【0116】
止血器具10は、支持部材100の幅方向の異なる位置に配置された複数の拡張部材210、220を備える。そのため、患者の右手HRに形成された第1穿刺部位p1を止血する場合、第1拡張部材210を使用して適切に止血を行うことができる。また、止血器具10は、患者の左手HLに形成された第2穿刺部位p2を止血する場合、第2拡張部材220を使用して適切に止血を行うことができる。
【0117】
術者は、止血器具10を使用した止血を開始する際、各拡張部材210、220のうち穿刺部位pの止血に使用されない方の拡張部材に所定量の空気を注入して拡張させてもよい。例えば、拡張部材が二つのシート状の部材を接合させた構造のバルーンで構成されている場合、止血に使用されない拡張部材を構成するシート状の部材のエッジ部が皮膚に喰い込む等して、患者が痛みを感じる可能性がある。具体的には、二つのシート状の部材で各拡張部材210、220を構成する場合、シート状の部材同士の接合は融着で行われることが想定されるが、その場合、各拡張部材210、220において融着された箇所は他の部位と比較して硬くなるため、そのような箇所が皮膚に接触することによって患者が痛みを感じることがある。そのような場合、上記のように止血を開始する前に穿刺部位pの止血に使用されない方の拡張部材を適度に拡張させておくことにより、シート状の部材のエッジ部の接触によって患者が痛みを感じてしまうことを防止できる。また、1枚の素材で各拡張部材を構成した場合(例えば、図5図6図7に示すように、シート状の部材の縁部を支持部材に固定する場合)においても、素材の厚みが厚い場合には、素材の硬度も部分的に大きくなるため、各拡張部材のエッジが皮膚に接触することによって患者が痛みや不快感を感じることが考えられる。特に、未拡張状態の拡張部材は、患者の手Hに装着する段階では折り畳まれた状態にある場合があるため、折り畳まれて重ねられることによって部分的に硬くなった箇所が皮膚に押し付けられた際に患者に痛みを感じさせる可能性がある。そのため、上記のように止血を開始する前に穿刺部位pの止血に使用されない方の拡張部材を適度に拡張させておくことにより、シート状の部材のエッジ部や未拡張状態の拡張部材の折り畳まれた箇所が患者の皮膚に接触して患者が痛みを感じてしまうことを防止できる。また、止血器具10の各拡張部材210、220以外の部材、例えば支持部材100は、支持部材100の幅方向の両端部のうち、穿刺部位pの止血に使用されない方の拡張部材側の端部は、皮膚近傍に配置される。そのため、止血器具10は、支持部材100の幅方向の両端部のうち、穿刺部位pの止血に使用されない方の拡張部材側の端部が皮膚と接触して患者が痛みを感じる可能性もある。そのような場合においても、上記のように止血を開始する前に穿刺部位pの止血に使用されない方の拡張部材を適度に拡張させておくことにより、支持部材100の幅方向の端部の接触によって患者が痛みを感じてしまうことを防止できる。
【0118】
止血器具10は、各拡張部材210、220の拡張及び収縮を操作するための機構として一つのコネクタ部300を備える。そのため、止血器具10を患者の右手HRに形成した第1穿刺部位p1及び患者の左手HLに形成した第2穿刺部位p2の止血に使用する場合においても、一つのコネクタ部300に対して注入器具600を適切かつ簡単に接続することができる。そのため、止血器具10は、注入器具600を誤ったコネクタ部に接続してしまう誤接続が生じることを未然に防止できる。また、止血器具10は、コネクタ部300が一つだけ取り付けられた構造を有するため、止血器具10を患者の右手HRや左手HLに装着した状態において、コネクタ部300が患者の手指に不用意に触れたり、周囲の物品と接触したりすることを防止できる。
【0119】
止血器具10のコネクタ部300は、第1部材310が第2部材320の内側に位置するように構成される。そのため、術者は、第1部材310に注入器具600を接続した状態で、注入器具600を支持部材100側に押し込む操作や回転させる操作を行う必要がある。したがって、止血器具10は、止血処置中に患者の手指や周囲の物品等が意図せずに第1部材310と接触し、第1部材310が第2部材320に対して回転することを防止できる。
【0120】
以上、本実形態に係る止血器具10は、患者の手Hに形成された穿刺部位pを覆うように構成された支持部材100と、支持部材100に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第1拡張部材210と、第1拡張部材210と異なる位置で支持部材100に接続され、流体の注入により拡張可能に構成された第2拡張部材220と、支持部材100上に位置し、第1拡張部材210及び第2拡張部材220の一方に選択的に流体を注入可能に構成されたコネクタ部300と、支持部材100を手Hに固定するように構成された固定部材500と、を有する。コネクタ部300は、第1部材310と、第1部材310を気密な状態で囲むように配置された第2部材320と、を備える。第1部材310は、弁部材312と、弁部材312が開放した状態で第1部材310の外部と連通する孔部315と、を有する。第2部材320は、第1部材310の弁部材312を外部に露出させる上部開口部323と、第1拡張部材210と連通する第1下部開口部324aと、第2拡張部材220と連通する第2下部開口部324bと、を有する。第1部材310は、弁部材312が上部開口部323から露出するように第2部材320の内側に位置し、かつ、第2部材320に対して回転可能に構成されている。コネクタ部300は、第1部材310の回転操作により、孔部315と第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bの一方との位置を合わせることで、第1拡張部材210及び第2拡張部材220の一方に選択的に空気を注入できるように構成されている。
【0121】
上記のように構成された止血器具10は、第1部材310の孔部315と第2部材320の第1下部開口部324aが位置合わせされた状態で弁部材312を介して空気が注入されると、孔部315及び第1下部開口部324aを介して第1拡張部材210へ空気が注入される。また、上記の止血器具10は、第1部材310の孔部315と第2部材320の第2下部開口部324bが位置合わせされた状態で弁部材312を介して空気が注入されると、孔部315及び第2下部開口部324bを介して第2拡張部材220へ空気が注入される。止血器具10は、上記のように第1部材310の孔部315が第2部材320の第1下部開口部324a及び第2部材320の第2下部開口部324bの一方に位置合わせされた状態で空気が注入されることにより、第1拡張部材210及び第2拡張部材220の一方を選択的に拡張させることができる。また、術者は、第1拡張部材210又は第2拡張部材220を右手HRに形成された第1穿刺部位p1や左手HLに形成された第2穿刺部位p2に選択的に配置した状態で、第1拡張部材210又は第2拡張部材220を拡張させることにより、左右いずれかの手Hに形成された各穿刺部位p1、p2を止血することができる。そのため、止血器具10は、左右両方の手Hに兼用することができる。また、止血器具10は、コネクタ部300の第1部材310の回転を操作することで第1部材310の孔部315と各拡張部材210、220との間の連通状態を切り替えることができるため、第1拡張部材210を拡張させるための専用のコネクタ部と第2拡張部材220を拡張させるための専用のコネクタ部を備える必要がない。そのため、止血器具10は、当該止血器具10に複数のコネクタ部が設けられているような場合に術者が注入器具600を誤ったコネクタ部に誤接続してしまうといった課題や、複数のコネクタ部が支持部材100から突出するよう配置されることにより患者の手指や周囲の物品等が意図せずにコネクタ部300と接触してしまうことに伴うユーザビリティの低下が生じることを防止できる。加えて、コネクタ部300は、第1部材310が第2部材320の内側に位置するように構成されるため、第1部材310は、注入器具600が第1部材310に接続されていない状態で、回転操作をすることが難しい。そのため、止血処置中に、患者の手指や周囲の物品等が意図せずにコネクタ部300の第1部材310と接触し、第1部材310が第2部材320に対して回転することを防止できる。
【0122】
また、コネクタ部300は、支持部材100の平面視において第1拡張部材210と第2拡張部材220との間に配置されている。
【0123】
止血器具10は、上記のようにコネクタ部300が支持部材100の平面視において第1拡張部材210と第2拡張部材220との間に配置されているため、各拡張部材210、220を穿刺部位pに配置する際、コネクタ部300によって穿刺部位pが目視で確認できなくなることを防止できる。そのため、術者は、各拡張部材210、220を穿刺部位pに適切に配置することができる。
【0124】
また、コネクタ部300は、第2部材320に対する第1部材310の移動をガイドするガイド部360を有する。ガイド部360は、第1部材310の外面に設けられた第1凸部361と、第2部材320の内面に設けられるとともに第1凸部361が挿入可能な第2凹部362a、362bと、を有する。
【0125】
止血器具10は、コネクタ部300が上記のように構成されたガイド部360を有するため、第2部材320に対して第1部材310を回転させたり、第2部材320の延在方向に沿って第1部材310を移動させたりする際に、ガイド部360によって第1部材310の移動をガイドすることができる。そのため、術者は、コネクタ部300の内部が外部から目視で確認できないように構成されている場合においても、第1部材310の移動を簡単に操作することができる。
【0126】
また、コネクタ部300は、弁部材312が配置された位置と反対側の位置で第1部材310を支持する弾性部材350を有する。弾性部材350は、第2部材320の延在方向に沿って伸縮可能に構成されている。
【0127】
止血器具10は、コネクタ部300が上記のように構成された弾性部材350を有するため、注入器具600の先筒部を弁部材312に接続する際に、弾性部材350が患者の手Hの体表面に接触し、弾性部材350が緩衝部材として機能する。そのため、止血器具10は、注入器具600の先筒部を弁部材312に接続する際、患者が感じる痛みを軽減することができる。また、止血器具10は、上記のように弾性部材350が緩衝部材として機能するため、注入器具600の先筒部を弁部材312に接続する際に生じた衝撃によって支持部材100が位置ズレすることを防止できる。
【0128】
また、第1部材310は、孔部315が第1下部開口部324aと位置合わせした状態であること、又は孔部315が第2下部開口部324bと位置合わせした状態であることを示す位置合わせマーカー部317を有する。
【0129】
止血器具10は、第1部材310が上記のような位置合わせマーカー部317を有するため、術者が第1部材310を目視することによって孔部315と各下部開口部324a、324bが位置合わせされた状態にあるか否かを簡単に把握することができる。
【0130】
また、コネクタ部300は、孔部315から第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bへ流入させる空気がコネクタ部300の外部へ漏れ出ることを防止するシール部材370を有する。シール部材370は、第1部材310の外面及び/又は第2部材320の内面に配置されている。
【0131】
止血器具10は、コネクタ部300が上記のようなシール部材370を有するため、孔部315及び各下部開口部324a、324bを介して空気を各拡張部材210、220へ注入する際、空気が第1部材310の外部へ漏れ出し、さらに第1部材310と第2部材320の間を通ってコネクタ部300の外部へ漏れ出すことをより確実に防止できる。
【0132】
次に、本発明に係る止血器具の変形例を説明する。変形例の説明では前述した実施形態の説明において既に説明した部材や止血器具の使用手順等についての説明は適宜省略する。また、各変形例において特に説明の無い内容は、前述した実施形態と同一のものとすることができる。
【0133】
(変形例)
図19は変形例に係る止血器具の側面図を示す。図19は前述した実施形態の図6に対応した図である。図19では、第1拡張部材210を拡張させた状態を示す。
【0134】
変形例に係る止血器具では、コネクタ部300A全体が支持部材100の外面100b側に配置されている。
【0135】
第2部材320の内部には、第1部材310と、第1部材310を支持する弾性部材350と、第1拡張部材210の内部空間215と第2部材320の第1下部開口部324aとを連通する第1チューブ410Aと、第2拡張部材220の内部空間225と第2部材320の第2下部開口部324bとを連通する第2チューブ420Aが埋設されている。第1チューブ410Aの一部及び第2チューブ420Aの一部は、支持部材100の内部を厚み方向に貫通するように延在している。
【0136】
第1下部開口部324a及び第2下部開口部324bは、孔部315と位置合わせ可能となるように第2部材320において第1部材310の外周面と向かい合わせて配置される側面(内側の側面)に配置している。
【0137】
なお、変形例に係る止血器具は、第1チューブ及び第2チューブをコネクタ部の内部に埋設せずに、コネクタ部の外部に配置してもよい。このように構成する場合、第1チューブ及び第2チューブは、支持部材の外面側から支持部材の内面側に向けて延在するように配置することができる。
【0138】
変形例に係る止血器具は、前述した実施形態と同様に、第1部材310を回転させて、第1部材310の孔部315を第2部材320の第1下部開口部324a及び第2部材320の第2下部開口部324bの一方に対して選択的に位置合わせすることにより、第1拡張部材210及び第2拡張部材220を選択的に拡張させることができる。
【0139】
コネクタ部及び各チューブの配置は、実施形態及び変形例で説明した構成のものに限定されない。例えば、コネクタ部は、第1部材の孔部を支持部材の外面側に配置されるようにし、第1部材の孔部よりもコネクタ部の下端部側に位置する構造部分(例えば、弾性部材)を、支持部材を貫通させつつ、支持部材の外面側から内面側に渡って配置するように構成してもよい。このように構成した場合、第1チューブ及び第2チューブは、コネクタ部の外部に導出させて、支持部材の外面側から支持部材の内面側に向けて延在するように配置することができる。
【0140】
以上、実施形態及び変形例を通じて本発明に係る止血器具を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0141】
10 止血器具
100 支持部材
100a 支持部材の内面
100b 支持部材の外面
210 第1拡張部材
220 第2拡張部材
300 コネクタ部
310 第1部材
311 第1部材の本体部
312 弁部材
313 流路
315 孔部
317 位置合わせマーカー部
320 第2部材
321 第2部材の内腔
323 上部開口部
324a 第1下部開口部
324b 第2下部開口部
350 弾性部材
360 ガイド部
361 第1凸部
362a 第2凹部
362b 第2凹部
370 シール部材
410 第1チューブ
410A 第1チューブ
420 第2チューブ
420A 第2チューブ
500 固定部材
510 第1帯体
520 第2帯体
530 第3帯体
600 注入器具
700 イントロデューサー
A 前腕部
B1 血管(動脈)
B2 血管(動脈)
H 手
HL 左手
HR 右手
p 穿刺部位
p1 第1穿刺部位
p2 第2穿刺部位
図1
図2
図3
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