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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051589
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/164 20220101AFI20240404BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20240404BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20240404BHJP
   F24H 15/414 20220101ALI20240404BHJP
   F24H 15/262 20220101ALI20240404BHJP
   F24H 15/296 20220101ALI20240404BHJP
   F24H 4/02 20220101ALN20240404BHJP
【FI】
F24H15/164
F24H15/269
F24H15/375
F24H15/414
F24H15/262
F24H15/296
F24H4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157832
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】田邊 陽一
(72)【発明者】
【氏名】小田原 健雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA73
3L122BA34
3L122BA37
3L122BB03
3L122BD13
3L122DA21
3L122EA42
3L122FA05
(57)【要約】
【課題】発電部の発電電力の自家消費の拡大を図りつつ、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる制御システムを提供する。
【解決手段】制御部40は、太陽光発電部10の発電電力量予測値を取得し、発電電力量予測値では必要湯量を沸き上げるための必要電力量を賄えないと判断した場合、深夜時間帯において系統電源からの深夜電力を用いて給湯器20の運転を実行し、昼間時間帯において、太陽光発電部10の発電電力値が宅内使用電力値と同等以上の場合には(ステップS114でYES)、太陽光発電部10の発電電力を用いて給湯器20の運転を実行し(ステップS115)、発電電力値が宅内使用電力値より小さい場合には(ステップS114でNO)、給湯器20の運転を停止する(ステップS117)、或いは、給湯器20以外の電力負荷Hを省エネ運転又は停止する(ステップS119)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、
電力を用いて湯を沸き上げ可能な給湯器と、
前記給湯器の動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記発電部の発電電力量予測値を取得し、
前記発電電力量予測値では必要湯量を沸き上げるための必要電力量を賄えないと判断した場合、深夜時間帯において系統電源からの深夜電力を用いて前記給湯器の運転を実行し、
昼間時間帯において、前記発電部の発電電力値が宅内使用電力値と同等以上の場合には、前記発電部の発電電力を用いて前記給湯器の運転を実行し、前記発電電力値が前記宅内使用電力値より小さい場合には、前記給湯器の運転を停止する、或いは、前記給湯器以外の電力負荷を省エネ運転又は停止する、
制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記深夜電力を用いた前記給湯器の運転後、深夜時間帯に直近の天気予報に基づいて前記発電電力量予測値を再取得し、再取得した前記発電電力量予測値が前記必要電力量より小さい場合には、深夜電力を用いて前記給湯器の運転を実行する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、
深夜時間帯において前記給湯器による沸き上げ完了後、
沸き上げ期限時刻の所定時間前までに、前記宅内使用電力値及び前記発電電力値を再取得し、再取得した前記発電電力値が前記宅内使用電力値より小さい場合には、系統電力からの電力を用いた前記給湯器の運転を実行する、
請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記系統電源からの深夜電力を用いて、必要湯量に対して不足する湯量だけ沸き上げるように前記給湯器の運転を実行する、
請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、
沸き上げ期限時刻までに必要湯量を沸き上げた後に、前記発電部の発電電力を用いて前記給湯器の最大貯湯量まで沸き上げ可能であると判定した場合、前記発電部の発電電力を用いた前記給湯器の運転を継続させる、
請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電部の発電電力を用いて湯を沸き上げ可能な制御システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、太陽光発電による発電電力の売電単価は下落傾向にあり、深夜電力単価よりも低い場合もある。このため、太陽光発電による発電電力を家庭内で自家消費した方が経済的に有利な場合もある。
【0003】
このような状況を受け、特許文献1には、翌日の天気予報等に基づいて、給湯器の沸き上げ運転を太陽光発電可能な昼間時間帯にシフト可能な制御システムが開示されている。これにより、太陽光発電による発電電力の自家消費の拡大を図ることができる。
【0004】
しかしながら、昼間時間帯に給湯器の沸き上げ運転を行う場合、天気予報に反して翌日の天気が悪化したり、短時間の曇天などによって太陽光発電による発電電力が十分に得られないと、給湯器の沸き上げ運転に高価な系統電力を使用してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-16678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、発電部の発電電力の自家消費の拡大を図りつつ、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる制御システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、自然エネルギーを利用して発電可能な発電部と、電力を用いて湯を沸き上げ可能な給湯器と、前記給湯器の動作を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記発電部の発電電力量予測値を取得し、前記発電電力量予測値では必要湯量を沸き上げるための必要電力量を賄えないと判断した場合、深夜時間帯において系統電源からの深夜電力を用いて前記給湯器の運転を実行し、昼間時間帯において、前記発電部の発電電力値が宅内使用電力値と同等以上の場合には、前記発電部の発電電力を用いて前記給湯器の運転を実行し、前記発電電力値が前記宅内使用電力値より小さい場合には、前記給湯器の運転を停止する、或いは、前記給湯器以外の電力負荷を省エネ運転又は停止するものである。
【0009】
請求項2においては、前記制御部は、前記深夜電力を用いた前記給湯器の運転後、深夜時間帯に直近の天気予報に基づいて前記発電電力量予測値を再取得し、再取得した前記発電電力量予測値が前記必要電力量より小さい場合には、深夜電力を用いて前記給湯器の運転を実行するものである。
【0010】
請求項3においては、前記制御部は、深夜時間帯において前記給湯器による沸き上げ完了後、沸き上げ期限時刻の所定時間前までに、前記宅内使用電力値及び前記発電電力値を再取得し、再取得した前記発電電力値が前記宅内使用電力値より小さい場合には、系統電力からの電力を用いた前記給湯器の運転を実行するものである。
【0011】
請求項4においては、前記制御部は、前記系統電源からの深夜電力を用いて、必要湯量に対して不足する湯量だけ沸き上げるように前記給湯器の運転を実行するものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、沸き上げ期限時刻までに必要湯量を沸き上げた後に、前記発電部の発電電力を用いて前記給湯器の最大貯湯量まで沸き上げ可能であると判定した場合、前記発電部の発電電力を用いた前記給湯器の運転を継続させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
請求項1においては、発電部の発電電力の自家消費の拡大を図りつつ、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる。
【0015】
請求項2においては、直近の天気予報を用いて深夜電力の利用を拡大し、系統電源からの購入電力の使用を抑制することができる。
【0016】
請求項3においては、天気が急変した場合であっても、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる。
【0017】
請求項4においては、系統電源からの購入電力の増大を抑制しつつ、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる。
【0018】
請求項5においては、発電部の発電電力の自家消費のさらなる拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの構成を示したブロック図。
図2】給湯器の運転制御を示したフローチャート。
図3図2の続きを示したフローチャート。
図4図3の続きを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の一実施形態に係る制御システム1について説明する。
【0021】
図1に示す制御システム1は、系統電源(不図示)からの購入電力、又は太陽光発電部10によって発電された電力(太陽光発電部10の発電電力)を用いて給湯を行うものである。制御システム1は、例えば住宅に設けられるHEMSである。制御システム1は、主として太陽光発電部10、給湯器20、スマートメータ30及び制御部40を具備する。
【0022】
太陽光発電部10は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部10は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部10は、例えば、住宅の屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部10の発電電力は、後述する制御部40を介して、住宅の電力負荷H(エアコンや照明器具など)及び後述する給湯器20に供給される。
【0023】
給湯器20は、電力を用いて湯を沸き上げる(生成する)沸き上げ運転を行うものである。給湯器20は、主としてヒートポンプ21及び貯湯槽22を具備する。
【0024】
ヒートポンプ21は、系統電源からの購入電力、又は太陽光発電部10の発電電力を用いて熱を発生させることができる。貯湯槽22は、ヒートポンプ21によって沸き上げられた湯を蓄える(貯湯する)ことができる。
【0025】
このように構成された給湯器20は、貯湯槽22に蓄えられた湯を、必要に応じて上水と混合したうえで給湯負荷(例えば、風呂など)へと供給することができる。
【0026】
スマートメータ30は、使用された電力(電力量)を計測可能なものである。スマートメータ30は、後述する制御部40と電気的に接続され、制御部40へ計測結果を送信することができる。
【0027】
制御部40は、制御システム1の各種動作を制御するものである。制御部40は、給湯器20の動作を制御することができる。また、制御部40は、外部から各種情報(天気予報など)を取得可能に構成され、取得した情報に基づいて太陽光発電部10の発電電力量を予測することができる。また、制御部40は、予測した発電電力量(発電電力量予測値)に基づいて、給湯器20の運転計画を作成することができる。制御部40は、作成した運転計画に基づいて給湯器20を運転させるリアルタイム制御を行うことができる。
【0028】
また、制御部40は、スマートメータ30の検出結果に基づいて、宅内使用電力値を判断し、給湯器20の動作を制御する。ここで、「宅内使用電力値」とは、電力負荷Hと給湯器20の使用電力(給湯器20が停止している場合は、給湯器20の運転時の想定消費電力)の合計値を意味する。なお、制御システム1がV2H(Vehicle to Home)を備えている場合、宅内使用電力値には、車両の充電電力も含まれる。
【0029】
このように構成される制御システム1において、太陽光発電部10の発電電力は、給湯器20に供給され、給湯器20の沸き上げ運転に使用される。給湯器20の沸き上げ運転に使用されてもなお余剰する発電電力は、電力負荷Hに供給され、電力負荷Hの消費電力に使用される。給湯器20の沸き上げ運転、及び電力負荷Hの稼動に使用されてもなお余剰する発電電力は、系統電源側に逆潮流され売電される。また、太陽光発電部10の発電電力が給湯器20の沸き上げ運転に必要な電力に満たない場合は、当該発電電力は電力負荷Hに供給される。
【0030】
ここで、上記したように、制御部40は、太陽光発電部10の発電電力量予測値に基づいて給湯器20の運転を計画し、運転計画に従って給湯器20のリアルタイム制御を行う。但し、運転計画に従って給湯器20を稼動させるだけでは、急な天候不良時(例えば、前日の天気予報が晴れだったにもかかわらず、当日の天気が雨である場合)に対応することができない。
【0031】
また、太陽光発電部10による十分な発電電力がないと、給湯器20の沸き上げ運転も制限されて、必要な時刻に必要な湯量が確保できない場合がある。
【0032】
このような課題を解決するために、制御部40は、図2から図4までに示す給湯器20の運転制御を実行する。以下では、図2から図4までに示すフローチャートを用いて、給湯器20の運転制御について説明する。
【0033】
図2に示すステップS101からS105までの処理は、給湯器20の運転計画を作成する処理(運転計画作成処理)であり、図2から図4までに示すステップS106以降の処理は、給湯器20のリアルタイム制御を行う処理である。ステップS101からS105に示す運転計画作成処理は、実際に給湯を必要とする日の前日に実行される。また、ステップS107以降に示すリアルタイム制御は、基本的には実際に給湯を必要とする日に実行される。以下では、説明の便宜上、実際に給湯を必要とする日を「当日」、運転計画作成処理が実行される日(当日の前の日)を「前日」ということとする。図2から図4までに示す給湯器20の運転制御は、前日の深夜時間帯(例えば23時)に開始される。
【0034】
ステップS101において、制御部40は、不足湯量を取得する。ここで、「不足湯量」とは、当日の必要湯量に対して現在湯量が不足する湯量を意味し、「必要湯量」から「現在湯量」を差し引くことによって算出される。なお、「必要湯量」とは、お風呂への給湯など、住人が生活するうえで最低限必要な湯量を意味し、「現在湯量」とは、給湯器20の貯湯槽22に貯湯されている現在の湯量を意味する。必要湯量は、利用者によって適宜設定されてもよいし、湯の使用量の過去のデータに基づいて設定されてもよい。また、現在湯量は、貯湯槽22に設けられた貯湯量検出センサ(不図示)によって取得される。制御部40は、ステップS101の処理を行った後、ステップS102に移行する。
【0035】
ステップS102において、制御部40は、必要電力量を算出する。ここで、「必要電力量」とは、給湯器20が不足湯量(ステップS101)を沸き上げるのに必要な電力量を意味する。必要電力量は、ステップS101で取得した不足湯量、及び給湯器20の性能等に基づいて算出される。制御部40は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0036】
ステップS103において、制御部40は、沸き上げ期限時刻を取得する。ここで、「沸き上げ期限時刻」とは、給湯器20が不足湯量を沸き上げ完了する必要がある時刻である。沸き上げ期限時刻は、例えば入浴予定時刻(例えば当日の19時)、又は入浴予定時刻の所定時間前に設定することができる。制御部40は、ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0037】
ステップS104において、制御部40は、外部から翌日(すなわち当日)の天気予報等の情報を取得する。取得される情報は、太陽光発電部10の発電量の予測(後述するステップS105)のための情報であり、天気予報の他に例えば日射量を含んでいてもよい。制御部40は、制御部40は、ステップS104の処理を行った後、ステップS105に移行する。
【0038】
ステップS105において、制御部40は、ステップS104で取得した天気予報等から、太陽光発電部10の当日の発電量の予測値(以下、「発電電力量予測値」という)を算出する。発電電力量予測値は、当日の発電予測電力量の合計値として算出される。制御部40は、ステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
【0039】
ステップS106において、制御部40は、現在が一日の中で電気代の相対的に高い時間帯であるか否かを判定する。制御部40は、現在が電気代の高い時間帯であると判定した場合(ステップS106で「YES」)、図3に示すステップS112に移行する。一方、制御部40は、現在が電気代の高い時間帯でないと判定した場合(ステップS106で「NO」)、ステップS107に移行する。
【0040】
ここで、電気料金の契約内容によっては、一日の中で深夜時間帯(例えば、23時から7時)の方が他の時間帯に比べて電気代が安く設定されている場合がある。この場合、電気代の高い時間帯でない場合(ステップS106でNO)とは、現在が深夜時間帯であることを意味する。一方、電気代の高い時間帯である場合(ステップS106でYES)とは、現在が深夜時間帯を過ぎた時間帯(例えば、当日の朝又は昼間、以下、「昼間時間帯」という)であることを意味する。
【0041】
ステップS107において、制御部40は、必要電力量が発電電力量予測値よりも大きい(必要電力量>発電電力量予測値である)か否かを判定する。ステップS107において、制御部40は、必要電力量>発電電力量予測値であると判定した場合(ステップS107で「YES」)、ステップS108に移行する。一方、制御部40は、必要電力量>発電電力量予測値でないと判定した場合(ステップS107で「NO」)、ステップS111に移行する。
【0042】
なお、必要電力量>発電電力量予測値である場合(ステップS107でYES)とは、太陽光発電部10の当日の発電電力だけでは、不足湯量を生成するための必要電力量を賄うことができないと予測されることを示している。一方、必要電力量>発電電力量予測値でない場合(ステップS107でNO)とは、太陽光発電部10の当日の発電電力によって、不足湯量を生成するための必要電力量を賄うことができると予測されることを示している。
【0043】
ステップS108において、制御部40は、給湯器20の沸き上げ運転を開始する。このとき、深夜時間帯では太陽光発電部10は発電していないため、給湯器20は系統電源からの購入電力を用いて沸き上げ運転を行う。
【0044】
ここで、ステップS108における給湯器20の沸き上げ運転時は、電気代が相対的に低い深夜時間帯である(ステップS106でNO)ので、給湯器20の沸き上げ運転に系統電源からの購入電力(深夜電力)を用いても、昼間時間帯と比べて電気代を抑制することができる。制御部40は、ステップS108の処理を行った後、ステップS109に移行する。
【0045】
ステップS109において、制御部40は、給湯器20が沸き上げ運転を実行した状態でY分待機する。ここで、「Y分」は、給湯器20が不足湯量を沸き上げるのに必要な時間(以下、「必要沸き上げ時間」という)より短い任意の時間に設定される。制御部40は、ステップS109の処理を行った後、ステップS110に移行する。
【0046】
ステップS110において、制御部40は、残りの沸き上げに必要な発電量が確保できそうか否かを判定する。ここで、給湯器20のY分間の沸き上げ運転(ステップS108、S109)の分だけ給湯器20の現在湯量は増加するため、当日における不足湯量はその分減少する。そうすると、不足湯量を生成するための必要電力量も減少する。
【0047】
制御部40は、それでもなお必要電力量>発電電力量予測値である場合、残りの沸き上げに必要な発電量が未だ確保できそうでない、すなわち、発電電力量予測値だけでは必要電力量を賄えない(ステップS110でNO)と判断する。一方、制御部40は、必要電力量>発電電力量予測値でなくなった場合、残りの沸き上げに必要な発電量が確保できそうである、すなわち、発電電力量予測値によって必要電力量を賄える(ステップS110でYES)と判断する。
【0048】
制御部40は、残りの沸き上げに必要な発電量が確保できそうであると判定した場合(ステップS110で「YES」)、ステップS111に移行する。一方、制御部40は、残りの沸き上げに必要な発電量が確保できそうでないと判定した場合(ステップS110で「NO」)、ステップS109に処理を戻す。
【0049】
ステップS111において、制御部40は、給湯器20を停止させ、電気代の高い時間帯(当日の昼間時間帯)となるまで待機する。制御部40は、ステップS111の処理を行った後、図3に示すステップS114に移行する。
【0050】
こうして、給湯器20は、残りの沸き上げに必要な発電量が確保できそうになるまで、系統電源からの購入電力(深夜電力)を用いて沸き上げ運転を行う。このようにして、電気代の低い深夜時間帯に購入電力を用いて必要最小限だけ沸き上げ運転を行うので、電気代を抑制しつつ不足湯量の確保を図ることができる。
【0051】
なお、制御部40は、図2に示すステップS111の処理を行った後、ステップS101からステップS111までを繰り返して、再度、直近の天気予報を取得し、天気予報の変化による発電電力量予測値の低下に備えてもよい。
【0052】
ステップS114において、制御部40は、太陽光発電状況(太陽光発電部10の発電状況)を判断する。具体的には、制御部40は、宅内使用電力値(電力負荷Hと給湯器2 0の使用電力の合計値)が発電電力値よりも大きい(当該時刻の宅内使用電力値>発電電力値である)か否かを判定する。制御部40は、宅内使用電力値>発電電力値であると判定した場合(ステップS114で「YES」)、ステップS116に移行する。一方、制御部40は、宅内使用電力値>発電電力値でないと判定した場合(ステップS114で「NO」)、ステップS115に移行する。
【0053】
なお、宅内使用電力値>発電電力値である場合(ステップS114でYES)とは、太陽光発電部10の発電電力(瞬時値)だけでは、宅内使用電力(瞬時値)を賄うことができない(すなわち、太陽光発電部10の発電電力では給湯器20を運転できない)ことを示している。一方、宅内使用電力値>発電電力値でない場合(ステップS114でNO)とは、太陽光発電部10の発電電力によって、宅内使用電力を賄うことができる(すなわち、太陽光発電部10の発電電力で給湯器20を運転可能である)ことを示している。
【0054】
ステップS115において、制御部40は、給湯器20の沸き上げ運転を開始する。このとき、給湯器20は、太陽光発電部10の発電電力を用いて沸き上げを行う。このようにして、太陽光発電部10の発電電力を用いて給湯器20の沸き上げ運転を行うことにより、太陽光発電部10の発電電力の自家消費の拡大を図ることができる。
【0055】
ステップS116において、制御部40は、沸き上げ期限時刻のZ分前までに沸き上げ可能か否かを判定する。ここで、「Z分」は、沸き上げ期限時刻までに必要湯量を確保するのに余裕をみて設定される値であり、任意の値に設定される。制御部40は、必要沸き上げ時間(給湯器20が不足湯量を沸き上げるのに必要な時間)に基づいて、この判定を行う。
【0056】
制御部40は、沸き上げ期限時刻のZ分前までに沸き上げ可能であると判定した場合(ステップS116で「YES」)、ステップS117に移行する。一方、制御部40は、沸き上げ期限時刻のZ分前までに沸き上げ可能でないと判定した場合(ステップS116で「NO」)、ステップS118に移行する。
【0057】
なお、沸き上げ期限時刻のZ分前までに沸き上げ可能である場合(ステップS116でYES)とは、系統電源からの購入電力を用いて現在から給湯器20の沸き上げ運転を開始した場合、沸き上げ期限時刻のZ分前までに必要湯量を確保できる(不足湯量を沸き上げ可能である)ことを示している。一方、沸き上げ期限時刻のZ分前までに沸き上げ可能でない場合(ステップS116でNO)とは、系統電源からの購入電力を用いて現在から給湯器20の沸き上げを開始しても、沸き上げ期限時刻のZ分前までに必要湯量を確保できない(不足湯量を沸き上げることができない)ことを示している。
【0058】
なお、沸き上げ期限時刻のZ分前までに沸き上げ可能であるか否かは、必要沸き上げ時間に基づいて判定されるが、当該必要沸き上げ時間は気温によって変動する。例えば、夏場においては給湯器20に供給される上水の温度が高いため、必要沸き上げ時間は比較的短い。一方、冬場においては給湯器20に供給される上水の温度が低いため、夏場と比べて必要沸き上げ時間は長くなる。このため、ステップS116の判定は、気温の違いによる沸き上げ時間の変動も考慮して行われる。
【0059】
ステップS117において、制御部40は、Y分待機する。ここで、ステップS115から移行してきた場合は、給湯器20は沸き上げ運転をY分間継続する。一方、ステップS116から移行してきた場合は、給湯器20は停止した状態でY分間待機する。制御部40は、ステップS117の処理を行った後、ステップS120に移行する。
【0060】
一方、ステップS118において、制御部40は、給湯器20の沸き上げ運転を開始し、不足湯量を沸き上げる。このとき、給湯器20は、系統電源からの購入電力を用いて沸き上げ運転を行うことができる。制御部40は、ステップS118の処理を行った後、ステップS119に移行する。
【0061】
ステップS119において、制御部40は、家電を省エネ運転させる。より詳細には、制御部40は、エアコンや照明器具等の電力負荷Hが稼動している場合、エアコンや照明器具等の電力負荷Hの消費電力を低減させる。例えば、エアコンの冷房時の設定温度を高めに設定したり、暖房時の設定温度を低めに設定したりする。これにより、系統電源からの購入電力を低減できる。或いは、制御部40は、エアコンや照明器具等の電力負荷Hの稼動を停止させてもよい。制御部40は、ステップS119の処理を行った後、ステップS120に移行する。
【0062】
ステップS120において、制御部40は、必要湯量を確保できたか否かを判定する。制御部40は、必要湯量と給湯器20の現在湯量とを比較して、この判定を行う。制御部40は、必要湯量を確保できたと判定した場合(ステップS120で「YES」)、図4に示すステップS121に移行する。一方、制御部40は、未だ必要湯量を確保できていないと判定した場合(ステップS120で「NO」)、ステップS114に処理を戻し、必要湯量が確保されるまで(ステップS120で「YES」となるまで)、ステップS114からS119までの処理を繰り返す。
【0063】
このようにして、本実施形態に係る制御システム1においては、急な天候不良(天候の急変)時においても(ステップS114でYES)、系統電源からの購入電力を用いて給湯器20の沸き上げ運転を行うことにより(ステップS118)、沸き上げ期限時刻までに必要湯量を確保することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る制御システム1においては、急な天候不良時であっても(ステップS114でYES)、直ちに系統電源からの購入電力を用いて給湯器20の沸き上げ運転を行うことはせず(ステップS116でYES,ステップS117、ステップS120でNO)、天気が回復して(天気予報が好転して)太陽光発電部10の発電電力値が宅内使用電力値より大きくなった場合には(ステップS114でNO)、太陽光発電部10の発電電力を用いて給湯器20の沸き上げ運転を行う(ステップS115)。このため、系統電源からの購入電力の使用を最小限にしつつ、太陽光発電部10の発電電力の自家消費の拡大を図ることができる。
【0065】
このようにして沸き上げ期限時刻までに必要湯量を確保した後、さらに太陽光発電部10の発電電力の自家消費の拡大を図るために、ステップS121以降の処理が実行される。
【0066】
図4に示すステップS121において、制御部40は、X時間後までの天気予報を取得する。制御部40は、現在からX時間後までの天気予報を取得し、ステップS112で取得した天気予報を更新する。制御部40は、ステップS121の処理を行った後、ステップS122に移行する。
【0067】
ステップS122において、制御部40は、天気予報から発電電力量予測値を算出する。より詳細には、制御部40は、ステップS121で更新した天気予報に基づいて、ステップS112で取得した発電電力量予測値を更新する。制御部40は、ステップS122の処理を行った後、ステップS123に移行する。
【0068】
ステップS123において、制御部40は、太陽光発電部10の発電電力を用いて、最大貯湯量まで沸き上げできそうか否かを判定する。ここで、「最大貯湯量」とは、給湯器20が貯湯槽22に貯湯可能な最大量を意味する。制御部40は、ステップS122で算出した発電量予測値や、最大貯湯量と現在湯量との差などに基づいて、この判定を行う。制御部40は、最大貯湯量まで沸き上げできそうと判定した場合(ステップS123で「YES」)、ステップS124に移行する。一方、制御部40は、最大貯湯量まで沸き上げできそうにないと判定した場合(ステップS123で「NO」)、ステップS127に移行する。
【0069】
ステップS124において、制御部40は、給湯器20の沸き上げ運転を継続させる。制御部40は、ステップS124の処理を行った後、ステップS125に移行する。
【0070】
ステップS125において、制御部40は、給湯器20が沸き上げ運転を実行した状態でY分待機する。制御部40は、ステップS125の処理を行った後、ステップS126に移行する。
【0071】
ステップS126において、制御部40は、給湯器20の貯湯槽22が最大貯湯量となったか否かを判定する。制御部40は、最大貯湯量となったと判定した場合(ステップS126で「YES」)、ステップS127に移行する。一方、制御部40は、未だ最大貯湯量となっていないと判定した場合(ステップS126で「NO」)、ステップS121に処理を戻す。
【0072】
このようにして、本実施形態に係る制御システム1においては、必要湯量を確保した後であっても(ステップS120でYES)、太陽光発電部10の発電電力が余剰している場合には(ステップS123でYES)、給湯器20を最大貯湯量となるまで沸き上げ運転させる(ステップS124からS126)。これにより、太陽光発電部10の発電電力の自家消費の拡大を図ることができる。
【0073】
ステップS127において、制御部40は、給湯器20の沸き上げ運転を停止させる。制御部40は、ステップS127の処理を行った後、図2から図4までに示す給湯器20の運転制御を終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る制御システム1においては、天候の急変時においても必要な時刻に必要な湯量を確保することができ、住人の快適な生活をサポートすることができる。さらに、系統電源からの購入電力の使用を最小限にしつつ、太陽光発電部10の発電電力の自家消費の拡大を図ることによって、住宅の電気代の抑制を図ることができ、住人に経済的な利益をもたらすことができる。また、本実施形態に係る制御システム1は、蓄電装置を備えていなくても上記効果をもたらすものであり、システムの簡素化、及びシステムの設置に係るイニシャルコストの低減を図ることができる。
【0075】
以上の如く、本実施形態に係る制御システム1は、
太陽光を利用して発電可能な太陽光発電部10(発電部)と、
電力を用いて湯を沸き上げ可能な給湯器20と、
前記給湯器20の動作を制御する制御部40と、
を具備し、
前記制御部40は、
前記太陽光発電部10の発電電力量予測値を取得し(図2のステップS105)、
前記発電電力量予測値では必要湯量を沸き上げるための必要電力量を賄えないと判断した場合(ステップS107でYES)、深夜時間帯において系統電源からの深夜電力を用いて前記給湯器20の運転を実行し(ステップS108)、
昼間時間帯において、前記太陽光発電部10の発電電力値が宅内使用電力値(電力負荷Hと給湯器20の使用電力の合計値)と同等以上の場合には(図3のステップS114でYES)、前記太陽光発電部10の発電電力を用いて前記給湯器20の運転を実行し(ステップS115)、前記発電電力値が前記宅内使用電力値より小さい場合には(ステップS114でNO)、前記給湯器20の運転を停止する(ステップS117)、或いは、前記給湯器20以外の電力負荷Hを省エネ運転又は停止する(ステップS119)ものである。
【0076】
このような構成により、太陽光発電部10の発電電力の自家消費の拡大を図りつつ、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる。
【0077】
また、前記制御部40は、
前記深夜電力を用いた前記給湯器20の運転後、深夜時間帯に直近の天気予報に基づいて前記発電電力量予測値を再取得し(図2のステップS104)、再取得した前記発電電力量予測値が前記必要電力量より小さい場合には(ステップS107でYES)、深夜電力を用いて前記給湯器20の運転を実行する(ステップS108)ものである。
【0078】
このような構成により、直近の天気予報を用いて深夜電力の利用を拡大し、系統電源からの購入電力の使用を抑制することができる。
【0079】
また、前記制御部40は、
深夜時間帯において前記給湯器による沸き上げ完了後、
沸き上げ期限時刻の所定時間(Z分+必要沸き上げ時間)前までに、前記宅内使用電力値及び前記発電電力値を再取得し、再取得した前記発電電力値が前記宅内使用電力値より小さい場合には(ステップS114でYES)、系統電力からの電力を用いた前記給湯器20の運転を実行する(ステップS118)ものである。
【0080】
このような構成により、直近の天気予報を用いて深夜電力の利用を拡大し、系統電源からの購入電力の使用を抑制することができる。
【0081】
また、前記制御部40は、
前記系統電源からの深夜電力を用いて、必要湯量に対して不足する湯量だけ沸き上げるように前記給湯器20の運転を実行する(ステップS107からS110)ものである。
【0082】
このような構成により、系統電源からの購入電力の増大を抑制しつつ、必要な時刻に必要な湯量を確保することができる。
【0083】
また、前記制御部40は、
沸き上げ期限時刻までに必要湯量を沸き上げた後に(図3のステップS120でYES)、前記太陽光発電部10の発電電力を用いて前記給湯器20の最大貯湯量まで沸き上げ可能であると判定した場合(図3のステップS123)、前記太陽光発電部10の発電電力を用いた前記給湯器20の運転を継続させるものである。
【0084】
このような構成により、太陽光発電部10の発電電力の自家消費のさらなる拡大を図ることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、本実施形態において、制御システム1は、住宅に設けられるものとしたが、任意の場所に設けることができ、例えば、工場やマンション、事務所、病院等の任意の場所や建物に設けられてもよい。
【0087】
また、本実施形態において発電部は、太陽光を利用して発電する太陽光発電部10であるものとしたが、他の自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであってもよい。
【0088】
また、住宅の電力負荷Hに蓄熱空調機器が含まれ、太陽光発電部10の余剰電力を蓄熱空調機器で利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 制御システム
10 太陽光発電部
20 給湯器
40 制御部
図1
図2
図3
図4