(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051590
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20240404BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240404BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/29 123
H01F17/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157834
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智之
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BA12
5E070CB12
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】ガラス層の外表面へのCu成分の移動を抑制することができるコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42がこの順に積層された積層体を含む素体10と、第1ガラス層51の内部に埋設されたコイル20と、素体10の外表面に設けられ、コイル20に電気的に接続された外部電極30と、を備え、第1ガラス層51には、Cu及びMgが共存する領域55が存在している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フェライト層、第1ガラス層及び第2フェライト層がこの順に積層された積層体を含む素体と、
前記第1ガラス層の内部に埋設されたコイルと、
前記素体の外表面に設けられ、前記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、
前記第1ガラス層には、Cu及びMgが共存する領域が存在している、コイル部品。
【請求項2】
前記Cu及びMgが共存する領域が前記第1ガラス層に点在している、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記Cu及びMgが共存する領域の最大幅が5μm以下である、請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記素体は、前記第1フェライト層の外側に第2ガラス層を、前記第2フェライト層の外側に第3ガラス層をさらに含む、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1ガラス層は、少なくともB、Si及びMgを含有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1ガラス層は、少なくともフォルステライトを含有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コイルは、少なくともAgを含有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記外部電極は、少なくともAgを含有する、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記コイルとして第1コイル及び第2コイルが前記第1ガラス層の内部に埋設されたコモンモードチョークコイルである、請求項1~8のいずれか1項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1ガラス層と、上記第1ガラス層の第1主面に形成された第1フェライト層および上記第1ガラス層の第2主面に形成された第2フェライト層とを含む素体と、上記第1ガラス層内に埋設されたコイルと、上記素体の側面に、第1フェライト層、第1ガラス層および第2フェライト層にわたって設けられた外部電極と、を備えたコイル部品であって、上記素体の側面において、該側面に垂直な方向から平面視したときに、フェライト層の領域における外部電極の幅は、ガラス層の領域における外部電極の幅よりも大きいことを特徴とするコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコイル部品のように、コイルが埋設されたガラス層の両主面に一対のフェライト層が配置された構造を有するコイル部品では、未焼成の素体を焼成する時に、フェライト層に含有されるCu成分がガラス層に拡散する。ガラス層に拡散したCu成分は、外部電極を構成する下地電極の焼き付け時にガラス層の外表面に移動して、ガラス層の外表面に析出するおそれがある。特に、外部電極を構成するめっき電極を形成する場合には、ガラス層の外表面に析出したCu成分によって、めっき電極が狙いの位置からはみ出す「めっき伸び」と呼ばれる不具合が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ガラス層の外表面へのCu成分の移動を抑制することができるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコイル部品は、第1フェライト層、第1ガラス層及び第2フェライト層がこの順に積層された積層体を含む素体と、上記第1ガラス層の内部に埋設されたコイルと、上記素体の外表面に設けられ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、上記第1ガラス層には、Cu及びMgが共存する領域が存在している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラス層の外表面へのCu成分の移動を抑制することができるコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すコイル部品(ただし、外部電極を除く)の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るコイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のコイル部品について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示す構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記載は省略し、異なる点を主に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎に逐次言及しない。
【0011】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明のコイル部品」と言う。
【0012】
以下の各実施形態では、本発明のコイル部品の一例として、コモンモードチョークコイルを示す。本発明のコイル部品は、コモンモードチョークコイル以外のコイル部品にも適用可能である。
【0013】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0014】
本明細書中、要素間の関係性を示す用語(例えば、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、文字通りの厳密な態様のみを意味するだけではなく、実質的に同等な範囲、例えば、数%程度の差異を含む範囲も意味する。
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るコイル部品では、素体は、第1フェライト層、第1ガラス層及び第2フェライト層がこの順に積層された積層体を含む。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すコイル部品のWT断面図である。
図3は、
図1に示すコイル部品(ただし、外部電極を除く)の分解斜視図である。
【0017】
図1に示すコイル部品1は、いわゆるコモンモードチョークコイルであり、素体10と、素体10の内部に埋設されたコイル20(
図2及び
図3参照)と、素体10の外表面に設けられ、コイル20に電気的に接続された外部電極30(
図2参照)と、を備える。
【0018】
本明細書中、長さ方向、高さ方向及び幅方向を、
図1等に示すように、各々、L、T及びWで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと高さ方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0019】
素体10は、例えば、直方体状又は略直方体状であり、長さ方向Lに相対する第1端面11a及び第2端面11bと、高さ方向Tに相対する第1主面12a及び第2主面12bと、幅方向Wに相対する第1側面13a及び第2側面13bとを有する。
【0020】
素体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていてもよい。素体10の角部は、素体10の3面が交わる部分である。素体10の稜線部は、素体10の2面が交わる部分である。
【0021】
素体10は、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42がこの順に積層された積層体を含む。
図1、
図2及び
図3に示す例では、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42は高さ方向Tに積層されている。
【0022】
言い換えると、素体10は、第1ガラス層51と、第1ガラス層51を積層方向(ここでは高さ方向T)において挟む第1フェライト層41及び第2フェライト層42とを含む。つまり、積層方向(ここでは高さ方向T)において、第1フェライト層41は、第1ガラス層51の一方主面に配置され、第2フェライト層42は、第1ガラス層51の他方主面に配置されている。
【0023】
第1ガラス層51には、Cu及びMgが共存する領域55(
図2参照)が存在している。本開示におけるCu及びMgが共存している状態とは、領域55のような領域内でCu及びMgが混ざり合って存在してもよく、その領域内でCu及びMgが分離して存在してもよい。なお、Cu及びMgが共存する領域には、Cu及びMg以外の物質が存在してもよく、存在しなくてもよい。後述のFE-WDXによる元素マッピングにてCu成分の存在領域とMg成分の存在領域とが重なり合っている、又は、同一領域内で近接していれば、『Cu及びMgが共存している』と言える。
【0024】
未焼成の素体10を焼成する時には、第1フェライト層41及び第2フェライト層42に含有されるCu成分が第1ガラス層51に拡散する。しかし、Cu及びMgが共存する領域55を第1ガラス層51に形成することによって、Cu成分が第1ガラス層51の外表面に移動することが抑制される。その結果、外部電極30を構成する下地電極の焼き付け時において、第1ガラス層51の外表面にCu成分が析出することが抑制される。したがって、外部電極30を構成するめっき電極を形成する場合であっても、めっき伸びの発生を抑制することができる。
【0025】
なお、第1ガラス層51に含有されるCu成分及びMg成分は、電界放出型の波長分散型X線分析(FE-WDX:Field Emission Wavelength-Dispersive X-ray Spectrometry)による元素マッピングから確認することができる。後述する第2ガラス層52及び第3ガラス層53の観察においても、上記の元素マッピングから確認することができる。
【0026】
Cu及びMgが共存する領域55は、第1ガラス層51に点在していることが好ましい。
図2においては、Cu及びMgが共存する領域55が第1ガラス層51に均一に点在しているが、第1ガラス層51に不均一に点在していてもよい。
【0027】
Cu及びMgが共存する領域55の大きさ、形状等は特に限定されないが、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅が5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。一方、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、例えば、0.5μm以上である。
【0028】
なお、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、上述のFE-WDXによる元素マッピングおいてCu成分及びMg成分がどちらも存在している部分の大きさから測定することができる。また、Cu及びMgが共存する領域55を観察するための断面としては、例えば
図1のような試料の長さ方向Lに、長さ方向Lの略中央部が露出する深さまで研磨を行った後、研磨により得られた断面(WT断面)を用いることが好ましい。後述する第2ガラス層52及び第3ガラス層53の観察においても、同一の断面を用いてよい。
【0029】
Cu及びMgが共存する領域55は、第1フェライト層41と第1ガラス層51との界面付近に存在することが好ましい。具体的には、第1フェライト層41と第1ガラス層51との界面から第1ガラス層51の厚みの1/5以内の範囲、例えば、第1フェライト層41と第1ガラス層51との界面から20μm以内の範囲に、Cu及びMgが共存する領域55が存在することが好ましい。同様に、Cu及びMgが共存する領域55は、第2フェライト層42と第1ガラス層51との界面付近に存在することが好ましい。具体的には、第2フェライト層42と第1ガラス層51との界面から第1ガラス層51の厚みの1/5以内の範囲、例えば、第2フェライト層42と第1ガラス層51との界面から20μm以内の範囲に、Cu及びMgが共存する領域55が存在することが好ましい。なお、上記以外の範囲、例えば、第1ガラス層51の厚み方向における中央付近には、Cu及びMgが共存する領域55が存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0030】
第1ガラス層51は、例えば、少なくともB、Si及びMgを含有する。第1ガラス層51は、B、Si及びMgに加えて、Kをさらに含有することが好ましい。第1ガラス層51は、これら以外の元素を含有してもよく、例えば、Al等の元素を含有してもよい。
【0031】
第1ガラス層51は、少なくともフォルステライトを含有してもよい。
【0032】
第1ガラス層51は、ガラス材料を含むことが好ましい。第1ガラス層51に含まれるガラス材料は、少なくともK、B及びSiを含有することが好ましく、KをK2Oに換算して0.5重量%以上5重量%以下、BをB2O3に換算して10重量%以上25重量%以下、SiをSiO2に換算して70重量%以上85重量%以下、AlをAl2O3に換算して0重量%以上5重量%以下含有することがより好ましい。
【0033】
第1ガラス層51は、ガラス材料に加えて、フィラーを含んでもよい。その場合、第1ガラス層51に含まれるフィラーは、フォルステライト(2MgO・SiO2)を含有することが好ましい。第1ガラス層51に含まれるフィラーは、フォルステライトに加えて、石英(SiO2)及びアルミナ(Al2O3)の少なくとも一方をさらに含有することが好ましい。特に、第1ガラス層51に含まれるフィラーは、石英、アルミナ及びフォルステライトを含有することが好ましい。
【0034】
第1ガラス層51は、ガラス材料及びフィラーを含むガラスセラミック材料から構成されることが好ましい。
【0035】
ガラスセラミック材料がフィラーとしてフォルステライトを含む場合、ガラスセラミック材料は、フォルステライトを5体積%以上15体積%以下(6重量%以上14重量%以下)の範囲で含むことが好ましい。
【0036】
ガラスセラミック材料は、全量を100重量%としたとき、BをB2O3に換算して8重量%以上12重量%以下、AlをAl2O3に換算して2重量%以上3重量%以下、SiをSiO2に換算して70重量%以上85重量%以下、KをK2Oに換算して0.5重量%以上1.5重量%以下、MgをMgOに換算して3重量%以上10重量%以下含有することが好ましい。
【0037】
第1ガラス層51の厚み(高さ方向Tの寸法)は、例えば20μm以上300μm以下、好ましくは30μm以上200μm以下である。
【0038】
第1フェライト層41及び第2フェライト層42を構成するフェライト材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1フェライト層41及び第2フェライト層42は、同じフェライト材料から構成されることが好ましい。
【0039】
フェライト材料は、例えば、主成分として、Fe、Zn、Cu及びNiを含有する。フェライト材料は、上記主成分の他に、Mn3O4、Co3O4、SnO2、Bi2O3、SiO2等の添加物をさらに含有してもよい。また、フェライト材料は、不可避不純物をさらに含有してもよい。ただし、第1フェライト層41及び第2フェライト層42のうち、少なくとも一方のフェライト層を構成するフェライト材料がCuを含有していればよく、もう一方のフェライト層を構成するフェライト材料はCuを含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0040】
第1フェライト層41及び第2フェライト層42を構成するフェライト材料は、各々、FeをFe2O3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して5mol%以上35mol%以下、CuをCuOに換算して6mol%以上12mol%以下、NiをNiOに換算して8mol%以上40mol%以下含有することが好ましい。
【0041】
第1フェライト層41の厚み(高さ方向Tの寸法)は、第2フェライト層42の厚み(高さ方向Tの寸法)と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1フェライト層41の厚みは、第1ガラス層51の厚みと同じであってもよく、第1ガラス層51の厚みより小さくてもよく、第1ガラス層51の厚みより大きくてもよい。同様に、第2フェライト層42の厚みは、第1ガラス層51の厚みと同じであってもよく、第1ガラス層51の厚みより小さくてもよく、第1ガラス層51の厚みより大きくてもよい。
【0042】
ガラス層及びフェライト層は、以下のようにして区別される。まず、必要に応じてコイル部品の周囲を樹脂で封止した上で、コイル部品を積層方向(例えば、高さ方向)に直交する第1方向(例えば、長さ方向)に研磨することにより、第1方向の略中央部で、積層方向及び第1方向に直交する第2方向(例えば、幅方向)と積層方向とに沿う断面を露出させる。次に、素体の露出断面において異なる層が存在すると推定できる領域(例えば、色調の違い等により異なる層が存在すると推定できる領域)に対して、走査型透過電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析(STEM-EDX)で組成(検出される元素の含有比率)を求める。そして、得られた組成から、各層の構成材料がガラスセラミック材料かフェライト材料かを判断することにより、ガラス層及びフェライト層を区別する。
【0043】
コイル20は、例えば、第1コイル21及び第2コイル22を含む。コイル20の数は2つに限定されず、1つのみでもよく、3つ以上でもよい。
【0044】
図2において、第1コイル21及び第2コイル22は、第1ガラス層51の内部に埋設されている。第1コイル21及び第2コイル22は、互いに絶縁されている。
【0045】
第1コイル21及び第2コイル22は、素体10の積層方向(ここでは高さ方向T)に順に設けられて、コモンモードチョークコイルを構成する。
【0046】
第1コイル21及び第2コイル22を含むコイル20は、例えば、Ag、Cu等の導電性材料から構成される。コイル20を構成する導電性材料は、好ましくはAgである。このように、コイル20は、少なくともAgを含有することが好ましい。
【0047】
第1コイル21及び第2コイル22は、
図3に示すように、積層方向(ここでは高さ方向T)から見て同一方向に螺旋状に巻き回されたスパイラルパターンを有する。第1コイル21及び第2コイル22を含むコイル20は、外部電極30のいずれか1つに電気的に接続されている。
【0048】
具体的には、第1コイル21の螺旋状の外周側の一端は、素体10の外表面に引き出されている。第1コイル21の螺旋状の中心側の他端は、第1ガラス層51の内部に設けられた第1ビア導体61を介して第1引き出し導体71の一端に接続され、第1引き出し導体71の他端は、素体10の外表面に引き出される。
【0049】
同様に、同様に、第2コイル22の螺旋状の外周側の一端は、素体10の外表面に引き出されている。第2コイル22の螺旋状の中心側の他端は、第1ガラス層51の内部に設けられた第2ビア導体62を介して第2引き出し導体72の一端に接続され、第2引き出し導体72の他端は、素体10の外表面に引き出される。
【0050】
外部電極30は、例えば、第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34を含む。外部電極30の数は4つ(すなわち2対)に限定されず、コイル20の数に応じて変化する。したがって、外部電極30の数は、2つ(すなわち1対)でもよく、3つ以上、例えば6つ(すなわち3対)以上でもよい。
【0051】
外部電極30は、コイル20に電気的に接続されている。
図2及び
図3において、第1コイル21は、その一端において素体10の外表面に引き出されて第1外部電極31に接続され、かつ、他端において素体10の外表面に引き出された第1引き出し導体71を介して第2外部電極32に接続される。同様に、第2コイル22は、その一端において素体10の外表面に引き出されて第3外部電極33に接続され、かつ、他端において素体10の外表面に引き出された第2引き出し導体72を介して第4外部電極34に接続される。
【0052】
外部電極30は、各々、素体10の外表面に、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42にわたって存在する。
図1において、第1外部電極31及び第3外部電極33は、素体10の第1側面13aに設けられており、第2外部電極32及び第4外部電極34は、素体10の第2側面13bに設けられている。第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34は、
図1に示すようにU字型(コ字型)に素体10の第1主面12a及び第2主面12bにまで延在してもよい。
【0053】
図1に示すように、素体10の一の外表面に複数の外部電極30が互いに隣り合って存在してもよい。
図1に示す例では、素体10の第1側面13aに第1外部電極31及び第3外部電極33が互いに隣り合って存在し、素体10の第2側面13bに第2外部電極32及び第4外部電極34が互いに隣り合って存在している。
【0054】
外部電極30は、例えば、下地電極と、下地電極の上に設けられためっき電極とを含む。めっき電極は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。外部電極30は、少なくともAgを含有することが好ましい。
【0055】
外部電極30が下地電極及びめっき電極を含む場合、下地電極は、Ag又はCuを含む下地電極であることが好ましく、Agを含む下地電極であることがより好ましい。めっき電極は、Niめっき電極及びSnめっき電極のいずれか一方又は両方であることが好ましく、Niめっき電極及びSnめっき電極の両方であることが好ましい。特に、外部電極30は、Agを含む下地電極と、その上に設けられたNiめっき電極と、さらにその上に設けられたSnめっき電極とを含むことが好ましい。
【0056】
コイル部品1は、例えば、以下の方法により製造される。
【0057】
<ガラスセラミック材料を作製する工程>
例えば、K2O、B2O3、SiO2及びAl2O3を所定の比率になるように秤量し、白金製のるつぼ内等で混合する。
【0058】
次に、得られた混合物を熱処理することにより、溶融させる。熱処理温度については、例えば、1500℃以上1600℃以下とする。
【0059】
その後、得られた溶融物を急冷することにより、ガラス材料を作製する。
【0060】
ガラス材料は、少なくともK、B及びSiを含有することが好ましく、KをK2Oに換算して0.5重量%以上5重量%以下、BをB2O3に換算して10重量%以上25重量%以下、SiをSiO2に換算して70重量%以上85重量%以下、AlをAl2O3に換算して0重量%以上5重量%以下含有することがより好ましい。
【0061】
次に、ガラス材料を粉砕することにより、ガラス粉末を準備する。ガラス粉末のメジアン径D50については、例えば、1μm以上3μm以下とする。また、フィラーとして、例えば、石英粉末、アルミナ粉末及びフォルステライト粉末を準備する。石英粉末及びアルミナ粉末のメジアン径D50については、例えば、0.5μm以上2.0μm以下とする。フォルステライト粉末のメジアン径D90については、例えば、10μm以下とする。ここで、ガラス粉末、石英粉末及び、アルミナ粉末のメジアン径D50は、体積基準の累積確率が50%となるときの粒径であり、フォルステライト粉末のメジアン径D90は、体積基準の累積確率が90%となるときの粒径である。
【0062】
そして、ガラス粉末に、フィラーとしての石英粉末、アルミナ粉末及びフォルステライト粉末を添加することにより、ガラスセラミック材料(非磁性材料)を作製する。
【0063】
<ガラスセラミックシートを作製する工程>
得られたガラスセラミック材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合することにより、ガラスセラミックスラリーを作製する。
【0064】
次に、ガラスセラミックスラリーを、ドクターブレード法等の方法で所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、ガラスセラミックシートを作製する。ガラスセラミックシートの厚みについては、例えば、20μm以上30μm以下とする。ガラスセラミックシートの形状については、例えば、矩形状とする。
【0065】
<フェライト材料を作製する工程>
例えば、Fe2O3、ZnO、CuO及びNiOを所定の比率になるように秤量する。この際、Mn3O4、Co3O4、SnO2、Bi2O3、SiO2等の添加物を添加してもよい。
【0066】
次に、これらの秤量物と、純水と、分散剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕する。
【0067】
そして、得られた粉砕物を乾燥させた後、仮焼する。仮焼温度については、例えば、700℃以上800℃以下とする。仮焼時間については、例えば、2時間以上3時間以下とする。
【0068】
このようにして、粉末状のフェライト材料(磁性材料)を作製する。
【0069】
フェライト材料は、FeをFe2O3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して5mol%以上35mol%以下、CuをCuOに換算して6mol%以上12mol%以下、NiをNiOに換算して8mol%以上40mol%以下含有することが好ましい。
【0070】
<フェライトシートを作製する工程>
得られた粉末状のフェライト材料と、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、等を、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合した後、粉砕することにより、フェライトスラリーを作製する。
【0071】
次に、フェライトスラリーを、ドクターブレード法等の方法で所定の厚みのシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、フェライトシートを作製する。フェライトシートの形状については、例えば、矩形状とする。
【0072】
<導体パターンを形成する工程>
Agペースト等の導電性ペーストを、スクリーン印刷法等の方法で所定のガラスセラミックシートに塗工することにより、
図3に示す第1コイル21及び第2コイル22に相当するコイル導体用導体パターンと、
図3に示す第1ビア導体61及び第2ビア導体62に相当するビア導体用導体パターンと、
図3に示す第1引き出し導体71及び第2引き出し導体72に相当する引き出し導体用導体パターンとを形成する。ビア導体用導体パターンを形成する際には、ガラスセラミックシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことでビアホールを予め形成しておき、そのビアホールに導電性ペーストを充填する。
【0073】
<積層体ブロックを作製する工程>
例えば、導体パターンが形成された各々のガラスセラミックシートを、
図3に示すガラスセラミックシート51a、51b、51c及び51dの順番で、積層方向(ここでは高さ方向T)に積層する。この際、
図3に示すように、得られた積層体の、積層方向(ここでは高さ方向T)における一方の主面上に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシート51eを積層する。さらに、
図3には示していないが、得られた積層体の、積層方向(ここでは高さ方向T)における他方の主面上に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを積層してもよい。導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートの枚数は特に限定されない。
【0074】
次に、得られたガラスセラミックシートの積層体の、積層方向(ここでは高さ方向T)における両方の主面上に、フェライトシートを所定の枚数積層する。この際、ガラスセラミックシートの積層体の一方の主面上に第1フェライトシートを積層し、他方の主面上に第2フェライトシートを積層する。例えば、
図3に示すように、ガラスセラミックシートの積層体の一方の主面上に第1フェライトシート41a及び41bを積層し、他方の主面上に第2フェライトシート42a及び42bを積層する。
【0075】
そして、得られたガラスセラミックシート及びフェライトシートの積層体を、温間等方圧プレス(WIP)処理等で圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0076】
<素体及びコイルを作製する工程>
まず、積層体ブロックをダイサー等で所定の大きさに切断することにより、個片化されたチップを作製する。
【0077】
次に、個片化されたチップを焼成する。焼成雰囲気は、低酸素雰囲気であることが好ましい。その場合、焼成雰囲気の酸素濃度は、5体積%以下であることが好ましい。一方、フェライト材料の焼結性を確保する観点から、焼成雰囲気の酸素濃度は、0.1体積%以上であることが好ましい。焼成温度については、例えば、860℃以上、920℃以下とする。焼成時間については、例えば、1時間以上、2時間以下とする。
【0078】
このようにして、例えば、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42がこの順に積層された積層体を含む素体10と、第1ガラス層51の内部に埋設された第1コイル21及び第2コイル22を含むコイル20とが作製される。
【0079】
素体10に対しては、例えば、素体10をメディアとともに回転バレル機に入れて、素体10にバレル研磨を施すことにより、角部及び稜線部に丸みを付けてもよい。
【0080】
<外部電極を形成する工程>
例えば、Ag及びガラスフリットを含むペースト等の導電性ペーストを、素体10の第1側面13aに2箇所、素体10の第2側面13bに2箇所の合計4箇所に少なくとも塗工する。
【0081】
次に、得られた各塗膜を焼き付けることにより、素体10の外表面に下地電極を形成する。
【0082】
そして、電解めっき等により、各々の下地電極の表面に、めっき電極、例えば、Niめっき電極とSnめっき電極とを順に形成する。
【0083】
このようにして、下地電極及びめっき電極を含む外部電極30が素体10の外表面に形成される。
【0084】
以上により、コイル部品1が製造される。
【0085】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るコイル部品では、素体は、第1フェライト層の外側に第2ガラス層を、第2フェライト層の外側に第3ガラス層をさらに含む。本発明の第2実施形態は、素体が第2ガラス層及び第3ガラス層を含む点で本発明の第1実施形態と相違する。そのため、第1実施形態と相違する構成のみを以下にて説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は第1実施形態と共通の構成を表すため、その説明は省略する。
【0086】
図4は、本発明の第2実施形態に係るコイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図5は、
図4に示すコイル部品のWT断面図である。
【0087】
図4に示すコイル部品2は、素体10Aと、素体10Aの内部に埋設されたコイル20(
図5参照)と、素体10Aの外表面に設けられ、コイル20に電気的に接続された外部電極30(
図5参照)と、を備える。
【0088】
素体10Aは、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42がこの順に積層された積層体を含む。
図4及び
図5に示す例では、第1フェライト層41、第1ガラス層51及び第2フェライト層42は高さ方向Tに積層されている。
【0089】
言い換えると、素体10Aは、第1ガラス層51と、第1ガラス層51を積層方向(ここでは高さ方向T)において挟む第1フェライト層41及び第2フェライト層42とを含む。つまり、積層方向(ここでは高さ方向T)において、第1フェライト層41は、第1ガラス層51の一方主面に配置され、第2フェライト層42は、第1ガラス層51の他方主面に配置されている。
【0090】
第1ガラス層51には、Cu及びMgが共存する領域55(
図5参照)が存在している。
【0091】
Cu及びMgが共存する領域55は、第1ガラス層51に点在していることが好ましい。
図5においては、Cu及びMgが共存する領域55が第1ガラス層51に均一に点在しているが、第1ガラス層51に不均一に点在していてもよい。
【0092】
Cu及びMgが共存する領域55の大きさ、形状等は特に限定されないが、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅が5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。一方、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、例えば、0.5μm以上である。
【0093】
Cu及びMgが共存する領域55は、第1フェライト層41と第1ガラス層51との界面付近に存在することが好ましい。具体的には、第1フェライト層41と第1ガラス層51との界面から第1ガラス層51の厚みの1/5以内の範囲、例えば、第1フェライト層41と第1ガラス層51との界面から20μm以内の範囲に、Cu及びMgが共存する領域55が存在することが好ましい。同様に、Cu及びMgが共存する領域55は、第2フェライト層42と第1ガラス層51との界面付近に存在することが好ましい。具体的には、第2フェライト層42と第1ガラス層51との界面から第1ガラス層51の厚みの1/5以内の範囲、例えば、第2フェライト層42と第1ガラス層51との界面から20μm以内の範囲に、Cu及びMgが共存する領域55が存在することが好ましい。なお、上記以外の範囲、例えば、第1ガラス層51の厚み方向における中央付近には、Cu及びMgが共存する領域55が存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0094】
素体10Aは、第1フェライト層41の外側に第2ガラス層52を、第2フェライト層42の外側に第3ガラス層53をさらに含む。
【0095】
言い換えると、素体10Aは、第2ガラス層52、第1フェライト層41、第1ガラス層51、第2フェライト層42及び第3ガラス層53がこの順に積層された積層体を含む。
【0096】
第1ガラス層51に加えて、第2ガラス層52及び第3ガラス層53の少なくとも一方に、Cu及びMgが共存する領域55(
図5参照)が存在してもよいが、存在しなくてもよい。Cu及びMgが共存する領域55は、第1ガラス層51のみに存在してもよく、第1ガラス層51及び第2ガラス層52に存在してもよく、第1ガラス層51及び第3ガラス層53に存在してもよく、第1ガラス層51、第2ガラス層52及び第3ガラス層53に存在してもよい。
【0097】
Cu及びMgが共存する領域55が第2ガラス層52に存在する場合、Cu及びMgが共存する領域55は、第2ガラス層52に点在していることが好ましい。
図5においては、Cu及びMgが共存する領域55が第2ガラス層52に均一に点在しているが、第2ガラス層52に不均一に点在していてもよい。
【0098】
Cu及びMgが共存する領域55が第2ガラス層52に存在する場合、Cu及びMgが共存する領域55の大きさ、形状等は特に限定されないが、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅が5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。一方、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、例えば、0.5μm以上である。Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、第1ガラス層51と第2ガラス層52とで同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0099】
Cu及びMgが共存する領域55が第2ガラス層52に存在する場合、Cu及びMgが共存する領域55は、第1フェライト層41と第2ガラス層52との界面付近に存在することが好ましい。具体的には、第1フェライト層41と第2ガラス層52との界面から第2ガラス層52の厚みの1/5以内の範囲、例えば、第1フェライト層41と第2ガラス層52との界面から20μm以内の範囲に、Cu及びMgが共存する領域55が存在することが好ましい。なお、上記以外の範囲、例えば、第2ガラス層52の厚み方向における中央付近には、Cu及びMgが共存する領域55が存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0100】
第2ガラス層52は、ガラス材料及びフィラーを含むガラスセラミック材料から構成されることが好ましい。第2ガラス層52を構成するガラスセラミック材料は、第1ガラス層51を構成するガラスセラミック材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0101】
第2ガラス層52の厚み(高さ方向Tの寸法)は、第1ガラス層51の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0102】
Cu及びMgが共存する領域55が第3ガラス層53に存在する場合、Cu及びMgが共存する領域55は、第3ガラス層53に点在していることが好ましい。
図5においては、Cu及びMgが共存する領域55が第3ガラス層53に均一に点在しているが、第3ガラス層53に不均一に点在していてもよい。
【0103】
Cu及びMgが共存する領域55が第3ガラス層53に存在する場合、Cu及びMgが共存する領域55の大きさ、形状等は特に限定されないが、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅が5μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。一方、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、例えば、0.5μm以上である。Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、第1ガラス層51と第3ガラス層53とで同じであってもよく、異なっていてもよい。また、Cu及びMgが共存する領域55の最大幅は、第2ガラス層52と第3ガラス層53とで同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
Cu及びMgが共存する領域55が第3ガラス層53に存在する場合、Cu及びMgが共存する領域55は、第2フェライト層42と第3ガラス層53との界面付近に存在することが好ましい。具体的には、第2フェライト層42と第3ガラス層53との界面から第3ガラス層53の厚みの1/5以内の範囲、例えば、第2フェライト層42と第3ガラス層53との界面から20μm以内の範囲に、Cu及びMgが共存する領域55が存在することが好ましい。なお、上記以外の範囲、例えば、第3ガラス層53の厚み方向における中央付近には、Cu及びMgが共存する領域55が存在してもよいし、存在しなくてもよい。
【0105】
第3ガラス層53は、ガラス材料及びフィラーを含むガラスセラミック材料から構成されることが好ましい。第3ガラス層53を構成するガラスセラミック材料は、第1ガラス層51を構成するガラスセラミック材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第3ガラス層53を構成するガラスセラミック材料は、第2ガラス層52を構成するガラスセラミック材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0106】
第3ガラス層53の厚み(高さ方向Tの寸法)は、第1ガラス層51の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第3ガラス層53の厚みは、第2ガラス層52の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0107】
外部電極30は、各々、素体10の外表面に、第2ガラス層52、第1フェライト層41、第1ガラス層51、第2フェライト層42及び第3ガラス層53にわたって存在する。
図4において、第1外部電極31及び第3外部電極33は、素体10Aの第1側面13aに設けられており、第2外部電極32及び第4外部電極34は、素体10Aの第2側面13bに設けられている。第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34は、
図4に示すようにU字型(コ字型)に素体10Aの第1主面12a及び第2主面12bにまで延在してもよい。
【0108】
コイル部品2は、例えば、<積層体ブロックを作製する工程>を以下のように行うこと以外、コイル部品1と同様にして製造される。
【0109】
<積層体ブロックを作製する工程>
まず、導体パターンが形成された各々のガラスセラミックシートを積層方向(ここでは高さ方向T)に積層する。この際、得られた積層体の、積層方向(ここでは、高さ方向)における一方の主面上に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを積層する。さらに、得られた積層体の、積層方向(ここでは高さ方向T)における他方の主面上に、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを積層してもよい。導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートの枚数は特に限定されない。
【0110】
次に、得られたガラスセラミックシートの積層体の、積層方向(ここでは高さ方向T)における両方の主面上に、フェライトシートを所定の枚数積層する。この際、ガラスセラミックシートの積層体の一方の主面上に第1フェライトシートを積層し、他方の主面上に第2フェライトシートを積層する。
【0111】
続いて、第1フェライトシートの積層部分及び第2フェライトシートの積層部分に対して、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを、積層方向(ここでは高さ方向T)に所定の枚数積層する。
【0112】
そして、得られたガラスセラミックシート及びフェライトシートの積層体を、温間等方圧プレス処理等で圧着することにより、積層体ブロックを作製する。
【0113】
その後、<素体及びコイルを作製する工程>において、個片化されたチップを作製した後、個片化されたチップを焼成する。
【0114】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0115】
<1>
第1フェライト層、第1ガラス層及び第2フェライト層がこの順に積層された積層体を含む素体と、
上記第1ガラス層の内部に埋設されたコイルと、
上記素体の外表面に設けられ、上記コイルに電気的に接続された外部電極と、を備え、
上記第1ガラス層には、Cu及びMgが共存する領域が存在している、コイル部品。
【0116】
<2>
上記Cu及びMgが共存する領域が上記第1ガラス層に点在している、<1>に記載のコイル部品。
【0117】
<3>
上記Cu及びMgが共存する領域の最大幅が5μm以下である、<1>又は<2>に記載のコイル部品。
【0118】
<4>
上記素体は、上記第1フェライト層の外側に第2ガラス層を、上記第2フェライト層の外側に第3ガラス層をさらに含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0119】
<5>
上記第1ガラス層は、少なくともB、Si及びMgを含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0120】
<6>
上記第1ガラス層は、少なくともフォルステライトを含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0121】
<7>
上記コイルは、少なくともAgを含有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0122】
<8>
上記外部電極は、少なくともAgを含有する、<1>~<7>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【0123】
<9>
上記コイルとして第1コイル及び第2コイルが上記第1ガラス層の内部に埋設されたコモンモードチョークコイルである、<1>~<8>のいずれか1つに記載のコイル部品。
【実施例0124】
以下、本発明のコイル部品をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0125】
[実施例1]
K及びAlを含有するホウケイ酸ガラス粉末、アルミナ粉末、石英粉末及びフォルステライト粉末を準備した。ホウケイ酸ガラス粉末を77.5体積%、アルミナ粉末を1.5体積%、石英粉末を11体積%、フォルステライト粉末を10体積%の割合で秤量し、上述の<ガラスセラミック材料を作製する工程>及び<ガラスセラミックシートを作製する工程>に記載された方法でガラスセラミックシートを作製した。
【0126】
Fe2O3粉末、NiO粉末、ZnO粉末及びCuO粉末を所定の割合で秤量し、上述の<フェライト材料を作製する工程>及び<フェライトシートを作製する工程>に記載された方法でフェライトシートを作製した。
【0127】
上述の<導体パターンを形成する工程>に記載された方法で所定のガラスセラミックシートに導体パターンを印刷した後、
図3と同様に、ガラスセラミックシート、その上下に第1フェライトシートと第2フェライトシートとを積層し、上述の<積層体ブロックを作製する工程>及び<素体及びコイルを作製する工程>に記載された手順で未焼成の積層体(チップ)を作製した。
【0128】
未焼成の積層体を焼成炉にて910℃で2時間焼成し、焼成済みの積層体を作製した。焼成時、酸素濃度を0.1体積%の雰囲気に調整した。
【0129】
焼成済みの積層体に対して、外部電極を形成する箇所にAgとガラスとを含んだ導電性ペーストを塗布し、810℃で1分間保持することで下地電極を形成した。次に、電解めっきにより、下地電極の上にNiめっき電極及びSnめっき電極を順次形成することで、下地電極及びめっき電極を含む外部電極を形成した。
【0130】
以上により、実施例1の試料であるコイル部品を作製した。
【0131】
[比較例1]
フォルステライト粉末の含有量を0体積%とし、ホウケイ酸ガラス粉末を86.1体積%、アルミナ粉末を1.7体積%、石英粉末を12.2体積%としてガラスセラミックシートを作製したこと、及び、焼成時の雰囲気を大気としたこと以外は実施例1と同じ方法により、比較例1の試料であるコイル部品を作製した。
【0132】
[比較例2]
焼成時の雰囲気を大気としたこと以外は実施例1と同じ方法により、比較例2の試料であるコイル部品を作製した。
【0133】
実施例1、比較例1及び比較例2の試料とも、コイル部品の寸法は、長さ方向L=0.65mm、幅方向W=0.50mm、高さ方向T=0.30mmである。
【0134】
[評価1]
下地電極を形成した後、めっき電極を形成する前の段階における実施例1、比較例1及び比較例2の試料について、試料の長さ方向Lが垂直になるように立てて、試料の周囲を樹脂で固めた。その後、研磨機を用いて、試料の長さ方向Lに、長さ方向Lの略中央部が露出する深さまで研磨を行った。
【0135】
研磨により得られた断面(WT断面)において、電界放出型の波長分散型X線分析(FE-WDX)によるCu及びMgのマッピングを行った。FE-WDXは、日本電子製のJXA-8530Fを用いて行った。分析条件を以下に示す。
加速電圧:15.0kV
照射電流:5×10-8A
ピクセル数(画素数):256×256
ピクセルサイズ:0.4(1000倍)
Dwell Time(1つの画素での取り込み時間):40ms
分析深さ:1μm~2μm
【0136】
Cu及びMgのマッピング分析結果より、比較例1及び比較例2の試料では、フェライト層とガラス層との界面近傍のチップ表面部分においてCuの偏析が確認された。また、ガラス層にCu及びMgが共存する領域は確認されなかった。
【0137】
一方、実施例1の試料では、ガラス層にCu及びMgが共存する領域が確認された。Cu及びMgが共存する領域は、最大幅が5μm以下の領域であった。
【0138】
[評価2]
めっき電極を形成した後の実施例1、比較例1及び比較例2の試料について、外部電極の近傍をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス社製VHX-6000)を用いて観察した。
【0139】
比較例1及び比較例2の試料では、長さ30μmを超えるめっき伸びが確認された。
【0140】
一方、実施例1の試料では、長さ30μmを超えるめっき伸びは確認されなかった。
【0141】
比較例1及び比較例2の試料では、未焼成の積層体を焼成する時にフェライト層からCu成分がガラス層へ拡散した後、拡散したCu成分が下地電極の焼き付け時に積層体の表面へ移動した結果、積層体の表面部分にCuの偏析が生じたと考えられる。
【0142】
一方、実施例1の試料では、未焼成の積層体を焼成する時にガラス層へ拡散したCu成分がMgと共存する領域を形成したことで、Cu成分が下地電極の焼き付け時に積層体の表面に移動することを抑制していると考えられる。
【0143】
実施例1ではガラス層中のMgはフォルステライトに起因して添加されていたが、それに限られず、例えばガラス材料の原料としてMgOが添加されてもよい。