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  • -研磨パッド、及び研磨パッドの製造方法 図1
  • -研磨パッド、及び研磨パッドの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051595
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】研磨パッド、及び研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20240404BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 A
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157846
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158CA04
3C158CA05
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB05
3C158EB12
3C158EB19
3C158EB20
3C158EB28
3C158EB29
3C158ED10
3C158ED11
3C158ED12
5F057AA24
5F057BA11
5F057BB11
5F057CA11
5F057DA03
5F057DA08
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB07
5F057EB09
5F057EB13
5F057EB30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被研磨物に良好な平坦性を付与することができ、高いセルフドレス性及び高い研磨レートを有する研磨パッド、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂は、平均粒径が20μm以下の中空微粒子を含み、前記研磨層は、ミクロ相分離構造を有する、研磨パッド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂は、平均粒径が20μm以下の中空微粒子を含み、
前記研磨層は、ミクロ相分離構造を有する、
研磨パッド。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマを含む、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂が、2種以上の硬化剤を含む、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記硬化剤が、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンと、3官能以上のポリオールと、を含む、
請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記ミクロ相分離構造において前記中空微粒子がいずれかの相に偏在する、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
NCO当量が500以下であるプレポリマを含む、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層のショアD硬度が、30以上60以下である、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
引張モード、周波数10rad/s、20~100℃の条件での動的粘弾性測定において、70℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×108Pa以上である、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の研磨パッドを製造する方法であって、
プレポリマと中空微粒子との混合物と、硬化剤とを準備する準備工程と、
前記混合物と、硬化剤とを混合して樹脂混合物を得る混合工程と、
前記樹脂混合物を硬化して、研磨パッドを得る硬化工程と、を含む、
研磨パッドの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂混合物が水を含まない、
請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、及び研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料に対して、研磨パッドを用いた研磨加工が行われる。
【0003】
研磨加工に用いられる研磨パッドは、研磨工程前あるいは研磨工程中に、ダイヤモンド砥粒ディスク等のドレッサーを用いてその表面を目立てして用いられ、このような表面処理はドレス処理と呼ばれる。しかしながら、従来の研磨パッドでは、ドレス処理に長い時間を要したり、局所的にドレスされてムラが生じることで安定した研磨レートが得られない等の問題がある。よって、ドレス処理をしやすい研磨パッドや、研磨中に表面が摩耗し適度な表面粗さが維持され、実質的にドレス処理を必要としない研磨パッド、すなわちセルフドレス性の高い研磨パッドが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、研磨層に平均気泡径20~300μmの連続気泡を形成することでセルフドレス性を向上させた研磨パッドが開示されている。また、例えば、特許文献2には、ジャイロイド構造を有することで、ドレス性を向上させた研磨パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4237800号公報
【特許文献2】特開2022-103099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、特許文献1に記載の研磨パッドによれば、研磨層の表層におけるスラリー保持性が低く、研磨レートが安定しないことが懸念される。さらに、特許文献2に記載の研磨パッドは、気泡径の制御が難しく、それにより研磨レートが安定しないことが懸念される。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、被研磨物に良好な平坦性を付与することができ、高いセルフドレス性及び高い研磨レートを有する研磨パッド、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、所定の特性を有する研磨層によって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂は、平均粒径が20μm以下の中空微粒子を含み、
前記研磨層は、ミクロ相分離構造を有する、
研磨パッド。
[2]
前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマを含む、
[1]に記載の研磨パッド。
[3]
前記ポリウレタン樹脂が、2種以上の硬化剤を含む、
[1]又は[2]記載の研磨パッド。
[4]
前記硬化剤が、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンと、3官能以上のポリオールと、を含む、
[3]に記載の研磨パッド。
[5]
前記ミクロ相分離構造において前記中空微粒子がいずれかの相に偏在する、
[1]~[4]のいずれか1項に記載の研磨パッド。
[6]
NCO当量が500以下であるプレポリマを含む、
[1]~[5]のいずれか1項に記載の研磨パッド。
[7]
前記研磨層のショアD硬度が、30以上60以下である、
[1]~[6]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[8]
引張モード、周波数10rad/s、20~100℃の条件での動的粘弾性測定において、70℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×108Pa以上である、
[1]~[7]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[9]
[1]~[8]のいずれか1つに記載の研磨パッドを製造する方法であって、
プレポリマと中空微粒子との混合物と、硬化剤とを準備する準備工程と、
前記混合物と、硬化剤とを混合して樹脂混合物を得る混合工程と、
前記樹脂混合物を硬化して、研磨パッドを得る硬化工程と、を含む、
研磨パッドの製造方法。
[10]
前記樹脂混合物が水を含まない、
[9]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被研磨物に良好な平坦性を付与することができ、高いセルフドレス性及び高い研磨レートを有する研磨パッド、並びにその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1の研磨層の表面を走査型電子顕微鏡により500倍で観察したSEM像である。
図2図2は、図1において、ミクロ相分離構造及び中空微粒子が観察された部分を破線で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
1.研磨パッド
本実施形態の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有し、上記ポリウレタン樹脂は、平均粒径が20μm以下の中空微粒子を含み、上記研磨層は、ミクロ相分離構造を有するものである。
【0014】
一般的に、研磨パッドは、研磨工程前又は研磨工程中にドレス処理をして用いるため、研磨工程に要する時間が長くなったり、局所的なドレス処理が行われた場合は、研磨層表面のムラにより安定した研磨レートが得られなかったりすることが懸念されている。よって、研磨中にパッド表面が摩耗し、適度な表面粗さが維持されるような、セルフドレス性を有する研磨パッドの開発が必要となっている。
【0015】
そこで、本発明者らは、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を形成する際に、プレポリマに平均粒径が20μm以下である中空微粒子をあらかじめ混合し、かつミクロ相分離構造を形成させると、予想外にも、中空微粒子が偏在し、研磨パッドの研磨レート及びセルフドレス性が向上することを見出した。
その要因は明らかになっていないが、ポリウレタン樹脂の重合反応において、特に硬化速度が速い箇所と、硬化速度が遅い箇所が境界を形成し別の相となることでミクロ相分離構造をなすと共に、いずれかの相に中空微粒子が偏在するものと考えられる。これによって、研磨工程において研磨パッドの凹凸構造を維持することが可能となり、高いセルフドレス性及び高い研磨レートを有すると推察される。ただし、要因は上記のものに限定されない。
【0016】
本実施形態の研磨パッドは、必要に応じて、研磨面に溝加工、エンボス加工、及び/又は、穴加工(パンチング加工)が施されていてもよく、光透過部を備えてもよい。溝加工及びエンボス加工の形状に特に限定はなく、例えば、格子型、同心円型、及び放射型等の形状が挙げられる。
【0017】
1.1.研磨層
本実施形態の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する。ポリウレタン樹脂を含むことにより、ミクロ相分離構造を形成することができる。「ポリウレタン樹脂を含む研磨層」とは、研磨パッドの少なくとも1つの表面がポリウレタン樹脂を含む材料で構成されており、当該表面が、研磨工程において、被研磨物に押し当てられる面となることを意味する。なお、研磨層はポリウレタン樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【0018】
ポリウレタン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、研磨層がポリエステル系ポリウレタン樹脂、及び/又はポリエーテル系ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0019】
1.1.1.ポリウレタン樹脂のプレポリマ
本実施形態のポリウレタン樹脂はイソシアネート末端ウレタンプレポリマを含むと好ましい。イソシアネート末端ウレタンプレポリマは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる生成物である。イソシアネート末端ウレタンプレポリマを含むポリウレタン樹脂を用いることで、研磨パッドのセルフドレス性が向上する傾向にある。
【0020】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマとしては、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物;2,4-トリレンジイソシアネートとプレンツカテコールとの付加物;2,4-トリレンジイソシアネートとポリ(オキシテトラメチレン)グリコールとジエチレングリコールとの付加物;トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物;トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;及びイソシアヌル酸とヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物が挙げられる。また、これ以外の、イソシアネート末端ウレタンプレポリマや、市販されている多様なウレタンプレポリマを用いてもよい。
【0021】
本実施形態のウレタンプレポリマに用いるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、並びにポリカプロラクトンポリオール化合物が挙げられる。また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。なお、ポリオール化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上述のポリオール化合物の中でも、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、及びジエチレングリコール(DEG)のうち1種以上を用いることが好ましく、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)及びジエチレングリコール(DEG)の両方を用いることがより好ましい。
【0023】
本実施形態のウレタンプレポリマに用いるポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物として、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1、4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、及びエチリジンジイソチオシアネートが挙げられる。なお、ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上述のポリイソシアネート化合物の中でも、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、及び/又は2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)を用いることが好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)を用いることがより好ましい。
【0025】
ウレタンプレポリマのNCO当量は、例えば、100以上700以下である。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、ウレタンプレポリマのNCO当量が、100以上500以下であることが好ましく、150以上480以下であることがより好ましく、200以上460以下であることが更に好ましく、250以上460以下であることがより更に好ましい。
ここで、「NCO当量」とは、
(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)-(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
で求められる、NCO基1個当たりのウレタンプレポリマの分子量を示す数値である。
【0026】
プレポリマの使用量は特に限定されないが、例えば、混合液全体(100質量部)に対して、20質量部以上95質量部以下である。ミクロ相分離構造の形成をより容易にする観点からは、プレポリマを混合液全体(100質量部)に対して、30質量部以上90質量部以下で用いると好ましく、40質量部以上85質量部以下で用いるとより好ましく、60質量部以上80質量部以下で用いると更に好ましい。
【0027】
1.1.2.硬化剤
本実施形態の研磨層は、硬化剤を含む。硬化剤としては、例えば、アミノ基含有化合物、及び水酸基含有化合物が挙げられる。また、硬化剤として1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。ミクロ相分離構造を形成しやすくし、セルフドレス性を向上させる観点からは、本実施形態のポリウレタン樹脂が2種以上の硬化剤を含むことが好ましい。
【0028】
2種以上の硬化剤を含む場合、硬化剤の組み合わせとしては、互いに相溶性が低い組み合わせ、反応性が異なる組み合わせ、及び活性水素当量が異なる組み合わせのうちのいずれか1種以上であることが好ましい。そのような態様によれば、ミクロ相分離構造が一層確実に得られる傾向にある。反応性が異なる硬化剤の組み合わせの例としては、例えば、活性水素基が異なる硬化剤の組み合わせが挙げられ、より具体的には、例えば、アミノ基含有化合物及び水酸基含有化合物の組み合わせが挙げられる。
【0029】
同一の活性水素基を有する硬化剤を2種以上用いる場合、すなわち、水酸基含有化合物を2種以上用いるか、アミノ基含有化合物を2種以上用いる場合は、かかる2種以上の硬化剤の活性水素当量の差が500以上2000以下である2つの硬化剤を含むことが好ましい。そのような態様によれば、ミクロ相分離構造が一層確実に得られる傾向にある。同様の観点から、上記2種以上の硬化剤の活性水素当量の差は、700以上1500以下であるとより好ましく、1000以上1400以下であると更に好ましい。また、同様の観点から、かかる2種以上の硬化剤は、活性水素当量が200以上500以下である硬化剤と、活性水素当量が1000以上2000以下である硬化剤とを含むとより好ましい。なお、本明細書において活性水素当量とは、硬化剤の分子量を、1分子内の活性水素基(水酸基、アミノ基等)に含まれる水素原子の総数で除した値である。
【0030】
また、同一の活性水素基を有する硬化剤を2種以上用いる場合であって、かかる2種以上の硬化剤が、活性水素当量の差が500以上2000以下である2つの硬化剤を含む場合、活性水素当量の小さい硬化剤の使用量と活性水素当量の大きい硬化剤の使用量との比は、「活性水素当量の小さい硬化剤:活性水素当量の大きい硬化剤」が、活性水素基数比で、1:1~1:15であることが好ましく、1:1~1:10であることがより好ましい。
【0031】
硬化剤の活性水素当量は、特に限定されず、例えば、50以上5000以下であってもよく、100以上4000以下であってもよく、130以上3000以下であってもよい。また、水酸基含有化合物である硬化剤のOH当量は、100以上5000以下であってもよく、200以上4000以下であってもよく、300以上3000以下であってもよい。アミノ基含有化合物である硬化剤のNH2当量は、50以上2000以下であってもよく、75以上1000以下であってもよく、100以上300以下であってもよい。
【0032】
硬化剤の使用量の合計は、プレポリマが有する官能基の数を1としたときの、硬化剤に存在する活性水素基(NH2基、及びOH基等)の当量比であるR値により規定されるのが一般的である。本実施形態の硬化剤使用量の合計は、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、R値が0.7以上1.3以下になるように調整すると好ましく、0.8以上1.2以下に調整するとより好ましい。
【0033】
研磨層が硬化剤として、アミノ基含有化合物と水酸基含有化合物とを含む場合、硬化剤の使用量の全体における水酸基含有化合物の使用量は、官能基数の比で、30%以上80%以下であると好ましい。水酸基含有化合物の使用量を上記範囲内であることにより、セルフドレス性が一層向上する傾向にある。同様の観点から、水酸基含有化合物の使用量は、35%以上75%以下であるとより好ましく、40%以上70%以下であると更に好ましく、45%以上65%以下であるとより更に好ましい。
【0034】
硬化剤であるアミノ基含有化合物としては、例えば、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[3-(イソプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルペンチルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス(3,5-ジアミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6-ジアミノ-4-メチルフェノール、トリメチルエチレンビス-4-アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド-ジ-p-アミノベンゾネートが挙げられる。
【0035】
上述のアミノ基含有化合物の中でも、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を含むことが好ましい。
【0036】
硬化剤としてのアミノ基含有化合物の使用量は、特に限定されないが、例えば、混合液全体(100質量部)に対して、2質量部以上50質量部以下である。ミクロ相分離構造の形成をより容易にする観点からは、アミノ基含有化合物を混合液全体(100質量部)に対して、5質量部以上30質量部以下で用いると好ましく、8質量部以上20質量部以下で用いるとより好ましく、10質量部以上15質量部以下で用いると更に好ましい。
【0037】
硬化剤である水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールメタン、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0038】
硬化剤としての水酸基含有化合物の使用量は、特に限定されないが、例えば、混合液全体(100質量部)に対して、2質量部以上50質量部以下である。ミクロ相分離構造の形成をより容易にする観点からは、水酸基含有化合物を混合液全体(100質量部)に対して、5質量部以上40質量部以下で用いると好ましく、8質量部以上30質量部以下で用いるとより好ましく、10質量部以上20質量部以下で用いると更に好ましい。
【0039】
硬化剤の合計使用量は、特に限定されないが、例えば、混合液全体(100質量部)に対して、5質量部以上80質量部以下である。ミクロ相分離構造の形成をより容易にする観点からは、硬化剤を混合液全体(100質量部)に対して、10質量部以上60質量部以下で用いると好ましく、15質量部以上40質量部以下で用いるとより好ましく、20質量部以上30質量部以下で用いると更に好ましい。
【0040】
上述の水酸基含有化合物の中でも、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、3官能以上のポリオールを含むことが好ましい。同様の観点から、ポリプロピレングリコールを含むとより好ましく、3官能以上のポリプロピレングリコールを含むと更に好ましい。
【0041】
本実施形態の研磨層は、硬化剤として、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)及び3官能以上のポリオールを含むと好ましく、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)及び3官能以上のポリプロピレングリコールを含むとより好ましい。上記の硬化剤を含むことで、研磨パッドのセルフドレス性が一層向上する傾向にある。
【0042】
1.1.3.中空微粒子
本実施形態の研磨層は、発泡成分として中空微粒子を含む。中空微粒子を用いると、気泡の粒径を均一に制御することが容易となり、さらに、ミクロ相分離構造が形成されれば、セルフドレス性及び研磨レートが一層向上する。
【0043】
中空微粒子は、特に限定されないが、ポリマからなる外殻と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微粒子、当該未発泡の加熱膨張性微粒子を加熱膨張させた粒子、又はそれらの組み合わせが挙げられる。上記ポリマ外殻としては、例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、内包される低沸点の炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル、又はこれらのうち2種以上の組み合わせが挙げられる。なお、中空微粒子としては、従来公知の方法により製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。
【0044】
本実施形態に用いる中空微粒子の平均粒径は20μm以下である。平均粒径が20μm以下であると、研磨層の気泡が均一になり研磨レートが一層安定する傾向にある。同様の観点から、中空微粒子の平均粒径は、1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であるとより好ましく、6μm以上10μm以下であると更に好ましい。
【0045】
本明細書において平均粒径とは、光散乱法により測定された粒度分布における粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径(累積平均粒子径(50%径)や、D50とも呼ぶ)をいう。
【0046】
中空微粒子の使用量は、ウレタンプレポリマ100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上20質量部以下で用いてもよい。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、中空微粒子を、ウレタンプレポリマ100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下で含むことが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下で含むことがより好ましく、2質量部以上4質量部以下で含むことが更に好ましい。
【0047】
1.1.4.その他の成分
研磨層は、上述したポリウレタン樹脂のプレポリマ、硬化剤、及び中空微粒子以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、希釈材、触媒、フィラー、染料、顔料、中実微粒子、難燃剤、親水化剤、疎水化剤、耐光剤、酸化防止剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0048】
1.1.5.ミクロ相分離構造
研磨層はミクロ相分離構造を有する。研磨層にミクロ相分離構造を有することで、研磨パッドのセルフドレス性及び/又は研磨レートが向上する。
【0049】
本実施形態の研磨層において、中空微粒子はミクロ相分離構造の一部の相に偏在する傾向にある。中空微粒子による均一な気泡が偏在することで、研磨中の削れ量が維持され、セルフドレス性が向上する傾向にある。本明細書において、「中空微粒子が偏在する」とは、ミクロ相分離構造において2つの相が観察される場合には、気泡のうち6割以上が1つの相において観察されることを意味する。気泡のうち、好ましくは7割以上、より好ましくは8割以上、更に好ましくは9割以上が1つの相において観察されてもよい。また、本明細書において、「中空微粒子が偏在する」とは、ミクロ相分離構造において3つ以上の相が観察される場合には、気泡のうち5割以上が1つの相において観察されることを意味する。気泡のうち、好ましくは6割以上、更に好ましくは7割以上が1つの相において観察されてもよい。例えば、図2においては、中空微粒子により形成される気泡のほとんどが第1相に偏在するといえる。
【0050】
本実施形態の研磨パッドは、研磨層以外の層を有してもよい。例えば、研磨面と反対側の面に、支持層として不織布、プラスチックシート、ゴム、スポンジ等と貼り合わせて用いてもよい。また、研磨層以外の層と研磨層との間、及び研磨層以外の層において研磨層と接していない面において、接着剤を含む層を設けてもよい。
【0051】
2.研磨パッドの製造方法
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、上述の研磨パッドを製造する方法であって、プレポリマと中空微粒子との混合物と、硬化剤とを準備する準備工程と、混合物と硬化剤とを混合して樹脂混合物を得る混合工程と、樹脂混合物を硬化して研磨パッドを得る硬化工程と、を含む。このような方法によれば、簡便に本実施形態の研磨パッドを製造することができる。以下、研磨パッドの製造方法の各工程を詳述する。
【0052】
2.1.準備工程
本実施形態の準備工程では、プレポリマと中空微粒子との混合物と、硬化剤とを準備する。プレポリマと中空微粒子との混合物をあらかじめ準備することで、ミクロ相分離構造における中空微粒子の位置制御が容易になる傾向にある。また、プレポリマ、中空微粒子、及び硬化剤としては、上述した化合物を用いればよい。
【0053】
2.2.混合工程
本実施形態の混合工程では、準備工程における混合物と、硬化剤とを混合して樹脂混合物を得る。混合工程は、例えば、上記混合物と、硬化剤とを温度調整可能なジャケット付き混合機に投入し、30℃以上130℃以下において撹拌すればよい。この際、必要に応じて撹拌機付きジャケットが付属しているタンクに混合液を受けて熟成させてもよい。撹拌時間は混合機の歯数や回転数、クリアランス等によって適宜調整すればよく、例えば、0.1秒以上120秒以下である。
【0054】
上記の樹脂混合物は、水を含まないことが好ましい。これによって、樹脂混合物において、水による発泡を防ぎ、より均一な気泡を形成することが容易になる。また、樹脂混合物が水を含まないとは、樹脂混合物の原料として水を用いないことを意味する。よって、その結果として得られる樹脂混合物内には、例えば、樹脂混合物の総量に対して水が0.01質量%以下で含まれていてもよく、0.001質量%以下で含まれていてもよく、0.0001質量%以下で含まれていてもよい。
【0055】
2.3.硬化工程
本実施形態の硬化工程では、上記の樹脂混合物を硬化させて研磨パッドを得る。硬化方法としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化、光硬化等があげられる。本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点からは、硬化方法として熱硬化を用いると好ましい。
【0056】
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、必要に応じて、その他の工程を有してもよい。例えば、硬化工程の前に樹脂混合物中の揮発成分の一部を揮発除去する工程を有していてもよい。また、例えば、硬化工程の後に、所望の凹凸パターンを有する断面を得るために、得られた研磨パッドの表面の一部を切削する工程を有してもよい。
【0057】
3.研磨加工物の製造方法
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、研磨スラリーの存在下、上記の研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し、研磨加工物を得る研磨工程を有する。研磨工程は、一次研磨(粗研磨)であってもよく、仕上げ研磨であってもよく、それら両方の研磨を兼ねるものであってもよい。
【0058】
本実施形態の研磨加工物の製造方法においては、研磨スラリーの供給と共に、保持定盤で被研磨物を研磨パッド側に押圧しながら、保持定盤と研磨用定盤とを相対的に回転させることで、被研磨物の加工面が研磨パッドで化学機械研磨により研磨加工される。保持定盤と研磨用定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転してもよく、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0059】
研磨スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤、酸成分、アルカリ成分等の化学成分、添加剤、並びに砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al23、及びCeO2)等を含んでいてもよい。
【0060】
また、被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料が挙げられる。
【0061】
4.研磨パッドの物性
4.1.ショアD硬度
本実施形態の研磨層のショアD硬度は、30以上60以下であることが好ましい。研磨層のショアD硬度が上記範囲内であることにより、被研磨物に良好な平坦性を付与しつつ、スクラッチの発生が適度に抑制される傾向にある。同様の観点から、研磨層のショアD硬度は、32以上55以下であることがより好ましく、35以上50以下であることが更に好ましく、40以上45以下であることがより更に好ましい。なお、ショアD硬度の測定は、日本産業規格(JIS K 7311:1995)に従い、D型硬度計を用いて求めることができる。
【0062】
4.2.動的粘弾性測定
本実施形態の研磨パッドは、引張モード、周波数10rad/s、20~100℃の条件での動的粘弾性測定において、70℃における貯蔵弾性率E’が、1.0×108Pa以上であると好ましい。貯蔵弾性率E’が上記範囲内であることにより、耐熱性に優れる傾向にある。同様の観点から、貯蔵弾性率E’は、1.0×108Pa以上3.0×108Pa以下であることがより好ましく、1.0×108Pa以上2.0×108Pa以下であることが更に好ましい。
【0063】
動的粘弾性測定における測定モードとして、引張モード、曲げモード、及び圧縮モード等が知られている。本実施形態の動的粘弾性測定は、従来公知の方法に従って行うことができる。引張モードの場合は、例えば、後述する実施例における測定方法に従って行ってもよい。
【0064】
4.3.圧縮率
研磨パッドの圧縮率は、特に限定されないが、好ましくは0.1%以上5.0%以下であり、より好ましくは0.3%以上3.0%以下である。なお、研磨パッドの圧縮率は、日本産業規格(JIS L 1021-6:2007)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることができる。具体的には、無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終圧力を30秒間かけた後の厚さt1を測定することにより、以下の式から算出することができる。なお、初荷重は100g/cm2、最終圧力は1120g/cm2である。
圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0
【0065】
4.4.圧縮弾性率
研磨パッドの圧縮弾性率は、特に限定されないが、好ましくは70%以上100%以下であり、より好ましくは75%以上95%以下である。なお、研磨パッドの圧縮弾性率は、日本産業規格(JIS L 1021-6:2007)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることができる。具体的には、無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終圧力を30秒間かけた後の厚さt1を測定し、更に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態)とした後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定することにより、以下の式から算出することができる。なお、初荷重は100g/cm2、最終圧力は1120g/cm2である。
圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1)
【実施例0066】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態をより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
1.研磨パッドの作製及び評価
[実施例1]
2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)を主成分とするNCO当量460のウレタンプレポリマを用意した。
このウレタンプレポリマ100質量部に、中空微粒子(製品名「461DU20」、Expancel社製)3.5質量部を添加した混合物を準備した。さらに、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)(NH2当量134)17質量部、及び3官能のポリプロピレングリコール(PPG)(OH当量325)17質量部を加えて樹脂混合物を得た。なお、用いた中空微粒子の平均粒径は8μmである。
【0068】
得られた樹脂混合物を、50℃に予熱した型枠に注型して、15分間、1次硬化させた。形成されたブロック状の成形物を型枠から抜き出し、オーブンにて8時間、120℃で、2次硬化し、ウレタン樹脂ブロックを得た。得られたウレタン樹脂ブロックを25℃になるまで放冷した後、スライス処理を施し、厚さ1.3mmの樹脂シートを得た。樹脂シートから切り出したサンプルの体積と質量から密度を算出した結果を表1に示す。また、実施例1に該当する研磨パッドのSEM像の一例を図1に示す。
[実施例2]
実施例1のウレタンプレポリマのNCO当量を460から440に、MOCAの使用量を17質量部から13.6質量部に、3官能のPPGの使用量を17質量部から20.4質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを作製し、実施例2の樹脂シートを得た。樹脂シートから切り出したサンプルの体積と質量から密度を算出した結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1のMOCAの使用量を17質量部から22.8質量部に、3官能のPPGの使用量を17質量部から11.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂シートを作製し、比較例1の樹脂シートを得た。樹脂シートから切り出したサンプルの体積と質量から密度を算出した結果を表1に示す。
【0069】
[貯蔵弾性率E’の測定]
得られた樹脂シートについて、下記条件に基づき引張モードの動的粘弾性測定を行った。温度23℃(±2℃)、相対湿度50%(±5%)の恒温恒湿槽中で樹脂シートを40時間保持した乾燥状態のものをサンプルとして用い、通常の大気雰囲気下(乾燥状態)で引張モードによる動的粘弾性測定を行った。引張モードの測定条件を以下に示す。この測定により得られる各樹脂シートの貯蔵弾性率E’を表1に示す。
・測定装置:RSA3(TAインスツルメント社製)
・サンプル:縦4cm×横0.5cm×厚み0.125cm
・試験長:1cm
・サンプルの前処理:温度23℃、相対湿度50%で40時間保持
・試験モード:引張
・周波数:1.6Hz(10rad/sec)
・温度範囲:20~100℃
・昇温速度:1.5℃/min
・歪範囲:0.10%
・初荷重:120g
・測定間隔:2point/℃
【0070】
[相分離構造]
得られた樹脂シートを走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果、ミクロ相分離構造を有するものを〇とし、有しないものを×として表1に示す。
【0071】
[セルフドレス性]
得られた樹脂シートを用いて、以下の方法により摩擦摩耗試験を行い、得られる各樹脂シートの削れ量から、セルフドレス性を評価した。
樹脂シートを圧子に固定させて保持し、研磨紙が固定された回転盤の上に乗せ、一定荷重をかけながら水を流した湿式条件下で回転盤を一定時間回転させた。試験条件は、以下の通りである。
・摩擦摩耗試験機;製品名「IMC-154D型」、株式会社井元製作所製
・研磨速度(回転数):40rpm
・荷重:300gf/cm2
・下定盤側研磨紙:#120サンドペーパー
・水量:100ml/min
・試験時間:10min
実施例1、2、及び比較例1の樹脂シートから測定された削れ量はそれぞれ0.080、0.149、及び0.056であった。削れ量が0.060以上である樹脂シートは、研磨層としてセルフドレス性に優れるものとして〇とし、削れ量が0.060未満である樹脂シートは、セルフドレス性が十分でないものとして×として表1に示す。
【0072】
[研磨レート]
得られた樹脂シートを用いて、以下の方法により研磨加工を行い、研磨レートの測定及び評価を行った。
研磨試験前後のCu膜基板について、基板上の直径方向で測定を実施し、それらの箇所における研磨試験前後の厚みを測定した。測定した厚みに基づいて、研磨試験前の厚みの平均値及び研磨試験後の厚みの平均値を算出し、これらの平均値の差をとることにより研磨された厚みの平均値を算出した。そして、得られた研磨された厚みの平均値を研磨時間で除することにより研磨レート(単位:Å/min)を算出した。なお、厚み測定は、4探針シート抵抗測定装置(KLAテンコール社製、商品名「RS-200」、測定:DBSモード)にて測定した。
(研磨条件)
・使用研磨機:F-REX300X(荏原製作所社製)
・Disk:A188(3M社製)
・研磨剤温度:20℃
・研磨定盤回転数:70rpm
・研磨ヘッド回転数:71rpm
・研磨圧力:2.5psi
・研磨スラリー:Planar社 スラリー
・研磨スラリー流量:200ml/min
・研磨時間:60秒
・被研磨物(金属膜):Cu膜基板(直径300mmの円盤状)
・パッドブレーク:30N 30分
・コンディショニング:Ex-situ、30N、4スキャン
【0073】
2.評価結果
上述の測定方法により測定された各実施例と比較例の物性値及び評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示す結果から、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有し、平均粒径が20μm以下の中空微粒子を含み、研磨層がミクロ相分離構造を有する研磨パッドは、そうでないものに比べ、高いセルフドレス性及び高い研磨レートを有することがわかる。
【0076】
[参考例]
参考例として、発泡成分として水を用いた研磨パッドを以下のようにして作製した。
【0077】
2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)を主成分とするNCO当量407のウレタンプレポリマを用意した。このウレタンプレポリマ61.83質量部に、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)(NH2当量134)15.18質量部、及びポリプロピレングリコール(OH当量1345)5.65質量部を混合した。これに、シリコーン系整泡剤(製品名「SH193」、東レ・ダウコーニング社製)0.15質量部、触媒(製品名「トヨキャットET」、東ソー株式会社製)0.03質量部、発泡剤としての水0.16質量部、及び砥粒としての炭酸カルシウムフィラー17質量部をさらに添加することにより、樹脂シートの前駆体となる樹脂混合物を得た。
【0078】
得られた樹脂混合物を、50℃に予熱した型枠に注型して、15分間、1次硬化させた。形成されたブロック状の成形物を型枠から抜き出し、オーブンにて8時間、120℃で、2次硬化し、ウレタン樹脂ブロックを得た。得られたウレタン樹脂ブロックを25℃になるまで放冷した後、スライス処理を施し、厚さ2.0mmの樹脂シートを得た。得られた参考例の樹脂シートを、上述と同様の評価方法により評価した結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表1及び表2に記載の結果から、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有し、ポリウレタン樹脂は平均粒径が20μm以下の中空微粒子を含み、研磨層がミクロ相分離構造を有する研磨パッドは、高いセルフドレス性及び高い研磨レートを有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の研磨パッドは、レンズ、平行平面板、及び反射ミラーのような光学材料、半導体ウェハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、金属、並びにセラミック等の材料の研磨(とりわけ化学機械研磨(CMP))に用いられる研磨パッドとして、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2