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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051598
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ストロークセンサ及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/02 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B60T7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157850
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉本 佳啓
【テーマコード(参考)】
3D124
【Fターム(参考)】
3D124AA33
3D124BB01
3D124CC14
3D124CC52
3D124DD42
3D124DD52
3D124DD56
(57)【要約】
【課題】運転者の制動操作量を導出することに対する冗長性を確保しつつも、センサとしての部品点数の増大を抑制できるようにすること。
【解決手段】ストロークセンサ20は、運転者が制動操作を行うと、第1軸線Xに沿う方向に移動する被検出部21と、第1軸線Xに沿う方向への被検出部21の移動量を検出する第1検出子31及び第2検出子32を備えている。被検出部21は磁石22を備えている。第1軸線Xと平行な仮想的な直線であって、磁石22を通る仮想線を、第1仮想線としたとき、第1検出子31及び第2検出子32は、互いに離間して、第2軸線Yに沿う方向に配列され、第1仮想線から略等距離に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者が制動操作を行うと、第1方向に移動する被検出部と、
前記第1方向への前記被検出部の移動量を検出する検出部と、を備えたストロークセンサであって、
前記被検出部は磁石を有し、
前記検出部は、第1検出子及び第2検出子を有し、
前記第1方向に延びる仮想的な直線であって、前記磁石を通る仮想線を、第1仮想線であるとすると、
前記第1検出子及び前記第2検出子は、互いに離間して、前記第1方向と垂直な第2方向に配列され、前記第1仮想線から略等距離に配置されている
ことを特徴とするストロークセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の前記ストロークセンサから出力された信号を基に、前記運転者の制動操作量を導出する制御装置であって、
前記制動操作が行われてない状態での前記被検出部の位置を所定の基準位置とし、前記被検出部が前記基準位置に位置する場合における、前記第1検出子の検出値である第1基準検出値の大きさと前記第2検出子の検出値である第2基準検出値の大きさとを取得する取得部と、
前記第1基準検出値の大きさが前記第2基準検出値の大きさ未満である場合には前記第1検出子の検出値に基づいて前記制動操作量を導出し、前記第1基準検出値の大きさが前記第2基準検出値の大きさ以上である場合には、前記第2検出子の検出値に基づいて前記制動操作量を導出する導出部と、を備える
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロークセンサと、同ストロークセンサから出力された信号を基に運転者の制動操作量を導出する制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ストロークセンサを備えたブレーキ倍力装置が開示されている。
また、特許文献2には、2つのストロークセンサを備えた制動装置が開示されている。2つのストロークセンサのうち、第1ストロークセンサは、ブレーキペダルが運転者に操作されると回転する支点部の回転量を検出するものである。一方、第2ストロークセンサは、支点部とは異なる部材である伝動部材の変位量を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-528312号公報
【特許文献2】特開2018-118700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の制動装置では、2つのストロークセンサを設けることにより、運転者の制動操作量の導出に対して冗長性を確保している。しかし、第1ストロークセンサの検出対象と第2ストロークセンサの検出対象とが互いに異なるため、第1ストロークセンサの被検出部と、第2ストロークセンサの被検出部とを別々に設ける必要がある。その結果、ストロークセンサを備える装置のコストアップや部品点数の増大を招くおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのストロークセンサは、車両の運転者が制動操作を行うと、第1方向に移動する被検出部と、前記第1方向への前記被検出部の移動量を検出する検出部と、を備えている。当該ストロークセンサにおいて、前記被検出部は磁石を有している。前記検出部は、第1検出子及び第2検出子を有している。前記第1方向に延びる仮想的な直線であって、前記磁石を通る仮想線を、第1仮想線であるとすると、前記第1検出子及び前記第2検出子は、互いに離間して、前記第1方向と垂直な第2方向に配列され、前記第1仮想線から略等距離に配置されている。
【0006】
上記ストロークセンサでは、第1検出子の検出対象と第2検出子の検出対象とが同じであるため、部品点数の増大を抑制できる。しかも、第1検出子及び第2検出子は上記第2方向に配列されているとともに、第1検出子から第1仮想線までの距離が、第2検出子から第1仮想線までの距離と略等しい。これにより、検出部に対する被検出部の位置ずれが発生していない場合には、第1検出子の検出値と第2検出子の検出値との間に乖離が生じにくい。そのため、第1検出子の検出値に基づいて制動操作量を導出した場合と、第2検出子の検出値に基づいて制動操作量を導出した場合とで、制動操作量の導出結果にずれが生じにくい。
【0007】
したがって、運転者の制動操作量を導出することに対する冗長性を確保しつつも、センサとしての部品点数の増大を抑制できる。
上記課題を解決するための制御装置は、上記のストロークセンサから出力された信号を基に、前記運転者の制動操作量を導出する装置である。当該制御装置は、前記制動操作が行われてない状態での前記被検出部の位置を所定の基準位置とし、前記被検出部が前記基準位置に位置する場合における、前記第1検出子の検出値である第1基準検出値の大きさと前記第2検出子の検出値である第2基準検出値の大きさとを取得する取得部と、前記第1基準検出値の大きさが前記第2基準検出値の大きさ未満である場合には前記第1検出子の検出値に基づいて前記制動操作量を導出し、前記第1基準検出値の大きさが前記第2基準検出値の大きさ以上である場合には、前記第2検出子の検出値に基づいて前記制動操作量を導出する導出部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のストロークセンサ及び制御装置を備えた制動装置の一部を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、同ストロークセンサを示す模式図である。
図3図3は、同ストロークセンサにおいて、検出部と被検出部との位置関係が第1軸線に沿う方向に変化した場合における2つの検出値の誤差と実ストロークとの関係を示すグラフである。
図4図4は、同ストロークセンサにおいて、検出部と被検出部との位置関係が第2軸線に沿う方向に変化した場合における2つの検出値の誤差と実ストロークとの関係を示すグラフである。
図5図5は、同ストロークセンサにおいて、検出部と被検出部との位置関係が第3軸線に沿う方向に変化した場合における2つの検出値の誤差と実ストロークとの関係を示すグラフである。
図6図6は、同ストロークセンサと同制御装置とを示すブロック図である。
図7図7は、同制御装置で実行される一連の処理を示すフローチャートである。
図8図8は、同ストロークセンサにおいて、被検出部に対して検出部が第2軸線に沿う方向に変位した様子を示す模式図である。
図9図9は、第1検出子の検出値と実ストロークとの誤差及び第2検出子の検出値と実ストロークとの誤差と、実ストロークとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ストロークセンサ及び制御装置の一実施形態を図1図9に従って説明する。
図1には、ストロークセンサ20を備える制動装置10の一部分が図示されている。制動装置10は、車両の運転者によって操作されるブレーキペダル11と、伝達部材12と、ストロークセンサ20と、制御装置51とを備えている。本明細書では、運転者がブレーキペダル11を操作することを「制動操作」という。
【0010】
伝達部材12にはブレーキペダル11が連結されている。また、伝達部材12は第1軸線Xに沿う方向に移動可能に構成されている。具体的には、運転者がブレーキペダル11を踏み込むと、ブレーキペダル11の回転に連動して、第1軸線Xに沿う2つの方向のうち、第1正方向X1に伝達部材12が移動する。一方、運転者がブレーキペダル11を踏み戻すと、第1軸線Xに沿う2つの方向のうち、第1正方向X1の反対方向である第1負方向X2に伝達部材12が移動する。第1軸線Xに沿う方向、すなわち第1正方向X1及び第1負方向X2が「第1方向」に対応する。
【0011】
なお、第1軸線Xと直交する2つの軸線のうち、一方を第2軸線Yといい、他方を第3軸線Zという。第3軸線Zは、第1軸線X及び第2軸線Yの双方を直交している。第2軸線Yに沿う2つの方向のうち、一方を第2正方向Y1といい、他方を第2負方向Y2という。第3軸線Zに沿う2つの方向のうち、一方を第3正方向Z1といい、他方を第3負方向Z2という。
【0012】
図1及び図2に示すように、伝達部材12は、第3軸線Zと直交する表面121と、表面121と平行な裏面122とを有している。すなわち、表面121及び裏面122の各々は、第1軸線Xと第2軸線Yとの双方と平行な平面である。運転者の制動操作によって、第1正方向X1や第1負方向X2(すなわち、第1方向)に伝達部材12が移動しても、表面121及び裏面122が第3軸線Zと直交する状態は維持される。
【0013】
<ストロークセンサ>
ストロークセンサ20は、運転者が制動操作を行う場合、初期位置からの伝達部材12の移動量であるストロークを検出する磁気式のセンサである。初期位置とは、運転者が制動操作を行っていない場合における伝達部材12の位置である。
【0014】
ストロークセンサ20は、被検出部21と検出部30とを備えている。
被検出部21は、伝達部材12の表面121に設けられている。そのため、運転者がブレーキペダル11を踏み込むと、被検出部21は伝達部材12とともに第1正方向X1に移動する。一方、運転者がブレーキペダル11を踏み戻すと、被検出部21は伝達部材12とともに第1負方向X2に移動する。
【0015】
被検出部21は、少なくとも1つの磁石22を有している。被検出部21が複数の磁石を有している場合、複数の磁石22は、伝達部材12の表面121上で第1軸線Xに沿う方向に並ぶように配置される。
【0016】
S極及びN極のうち、一方を第1極とし、他方を第2極としたとき、磁石22は、第1極が着磁された第1極領域221と第2極が着磁された第2極領域222とに区分けできる。磁石22は、第1極領域221と第2極領域222とが第3軸線Zに沿う方向に並ぶ態様で伝達部材12の表面121上に設置されている。
【0017】
なお、磁石22は、伝達部材12の第3正方向Z1の平面(表面121)に設置されている。磁石22は、伝達部材12の表面121に面接触する接触面22aと、接触面22aの反対側の平面である被検知面22bとを有している。被検知面22bは、第3軸線Zと直交しているとともに、第1軸線X及び第2軸線Yの双方と平行な平面である。
【0018】
検出部30は、第3軸線Zに沿う方向において、被検出部21を挟んで伝達部材12の反対側に配置されている。すなわち、検出部30は、被検出部21よりも第3正方向Z1に配置されている。本実施形態において、検出部30は、制御装置51が搭載されている回路基板50に設置されている。回路基板50は、制動装置10の図示しないハウジングに固定されている。
【0019】
検出部30は、磁石22の被検知面22bに対向配置されている第1検出子31と第2検出子32とを有している。第1検出子31及び第2検出子32は、第2軸線Yに沿う方向に並んでいる。すなわち、第2軸線Yに沿う方向である第2正方向Y1及び第2負方向Y2が「第2方向」に対応する。
【0020】
第1検出子31は、磁石22の第2軸線Yに沿う方向における中心よりも第2正方向Y1に配置されている。一方、第2検出子32は、磁石22の第2軸線Yに沿う方向における中心よりも第2負方向Y2に配置されている。そして、第1検出子31から被検知面22bまでの直線距離La1は、第2検出子32から被検知面22bまでの直線距離La2と同じである。すなわち、第1方向に延びる第1軸線Xと平行な仮想的な直線のうち、磁石22の第2軸線Yに沿う方向における中心を通る仮想線を第1仮想線とする。このとき、第1検出子31及び第2検出子32は、第2軸線Yに沿う方向(第2方向)に離間して配列され、且つ第1仮想線から略等距離に配置されている。
【0021】
ここでいう「略等間隔」とは、第1検出子31から第1仮想線までの最短距離である第1最短距離が、第2検出子32から第1仮想線までの最短距離である第2最短距離と実質的に等しいことである。すなわち、「略等間隔」は、第1最短距離が第2最短距離と完全に一致する場合に加え、製造誤差などに起因する第1最短距離と第2最短距離とのずれが生じている場合も含んでいる。
【0022】
なお、図2には、第3軸線Zと平行な直線であって磁石22の第2軸線Yに沿う方向の中心を通過する中心線Fが一点鎖線で図示されている。図2に示すような第1軸線Xと直交するストロークセンサ20の横断面において、第1検出子31から中心線Fまでの最短距離は、第2検出子32から中心線Fまでの最短距離と等しい。
【0023】
被検出部21が第1正方向X1や第1負方向X2に移動すると、第1検出子31及び第2検出子32の周辺の磁界が変化する。第1検出子31及び第2検出子32は、こうした磁界の変化を検出し、その検出結果に応じた信号を制御装置51に出力する。
【0024】
<被検出部21と検出部30との位置関係が変化した場合>
図2図5を参照し、被検出部21と検出部30との位置関係が変化した場合について説明する。ここでいう位置関係の変化とは、ストロークセンサ20の設計上の被検出部21と検出部30との位置関係を初期関係として、当該初期関係からの位置関係の変化を示している。こうした位置関係の変化は、ストロークセンサ20の組み立て時に生じる組み立て誤差に起因する位置関係の変化、及び、制動装置10の経年変化に伴う構成部品の変形や変位に起因する位置関係の変化の双方を含んでいる。
【0025】
まずはじめに、図2を参照し、比較例のストロークセンサについて説明する。比較例のストロークセンサの検出部30Aは、図2に二点鎖線で示す第1検出子31A及び第2検出子32Aを備えている。検出部30Aにおいては、第3軸線Zに沿う方向に第1検出子31A及び第2検出子32Aが並んでいる。すなわち、検出部30Aにおける2つの検出子31A,32Aの並ぶ方向が、本実施形態における検出部30の2つの検出子31,32の並ぶ方向と相違している。
【0026】
図3は、被検出部と検出部との位置関係が第1軸線Xに沿う方向に変化した場合における第1検出子の検出値と第2検出子の検出値との誤差を示している。図3の実線は、本実施形態のストロークセンサ20における第1検出子31の検出値と第2検出子32の検出値との誤差ERaと、実ストロークとの関係を示している。図3の破線は、比較例のストロークセンサにおける第1検出子31Aの検出値と第2検出子32Aの検出値との誤差ERaAと、実ストロークとの関係を示している。実ストロークとは、被検出部21のストロークの実値である。
【0027】
比較例のストロークセンサでは、第1検出子31Aから磁石の被検出面までの直線距離が、第2検出子32Aから被検出面までの直線距離とはそもそも異なる。そのため、被検出部と検出部30Aとの位置関係が第1軸線Xに沿う方向に変化すると、実ストロークが変化した際における第1検出子31A周辺の磁界の変化態様が、実ストロークが変化した際における第2検出子32A周辺の磁界の変化態様と異なる。したがって、実ストロークが変化した際における第1検出子31Aの検出値の変化態様と第2検出子32Aの検出値の変化態様とが互いに異なる。その結果、実ストロークの変化に応じて誤差ERaAが振動する。
【0028】
これに対し、本実施形態のストロークセンサ20では、第1検出子31から磁石22の被検知面22bまでの直線距離が、第2検出子32から被検知面22bまでの直線距離と同じである。そのため、被検出部21と検出部30との位置関係が第1軸線Xに沿う方向に変化しても、実ストロークが変化した際における第1検出子31周辺の磁界の変化態様が、実ストロークが変化した際における第2検出子32周辺の磁界の変化態様とほぼ同じとなる。したがって、実ストロークが変化した際における第1検出子31の検出値の変化態様と第2検出子32の検出値の変化態様とがほぼ同じとなる。その結果、実ストロークが変化しても、誤差ERaがほぼ0(零)で保持される。
【0029】
図4は、被検出部と検出部との位置関係が第2軸線Yに沿う方向に変化した場合における第1検出子の検出値と第2検出子の検出値との誤差を示している。
比較例のストロークセンサでは、第1検出子31Aから磁石の被検出面までの直線距離が、第2検出子32Aから被検出面までの直線距離とはそもそも異なる。そのため、被検出部と検出部との位置関係が第2軸線Yに沿う方向に変化すると、実ストロークが変化した際における第1検出子31A周辺の磁界の変化態様が、実ストロークが変化した際における第2検出子32A周辺の磁界の変化態様と異なる。したがって、実ストロークが変化した際における第1検出子31Aの検出値の変化態様と第2検出子32Aの検出値の変化態様とが互いに異なる。その結果、図4に破線で示すように、実ストロークの変化に応じて誤差ERaAが振動する。
【0030】
本実施形態のストロークセンサ20であっても、被検出部21と検出部30との位置関係が第2軸線Yに沿う方向に変化すると、実ストロークが変化した際における第1検出子31周辺の磁界の変化態様が、実ストロークが変化した際における第2検出子32周辺の磁界の変化態様と異なる。したがって、実ストロークが変化した際における第1検出子31の検出値の変化態様と第2検出子32の検出値の変化態様とが互いに異なる。その結果、図4に実線で示すように、実ストロークの変化に応じて誤差ERaが振動する。
【0031】
図5は、被検出部と検出部との位置関係が第3軸線Zに沿う方向に変化した場合における第1検出子の検出値と第2検出子の検出値との誤差を示している。
比較例のストロークセンサでは、第1検出子31Aから磁石の被検出面までの直線距離が、第2検出子32Aから被検出面までの直線距離とはそもそも異なる。そのため、被検出部と検出部30Aとの位置関係が第3軸線Zに沿う方向に変化すると、実ストロークが変化した際における第1検出子31A周辺の磁界の変化態様が、実ストロークが変化した際における第2検出子32A周辺の磁界の変化態様と異なる。したがって、図5に破線で示すように、実ストロークが変化した際における第1検出子31Aの検出値の変化態様と第2検出子32Aの検出値の変化態様とが互いに異なる。その結果、実ストロークの変化に応じて誤差ERaAが振動する。
【0032】
これに対し、本実施形態のストロークセンサ20では、第1検出子31から磁石22の被検知面22bまでの直線距離が、第2検出子32Aから被検知面22bまでの直線距離と同じである。そのため、被検出部21と検出部30との位置関係が第3軸線Zに沿う方向に変化しても、実ストロークが変化した際における第1検出子31周辺の磁界の変化態様が、実ストロークが変化した際における第2検出子32周辺の磁界の変化態様とほぼ同じとなる。したがって、図5に実線で示すように、実ストロークが変化した際における第1検出子31の検出値の変化態様と第2検出子32の検出値の変化態様とがほぼ同じとなる。その結果、実ストロークが変化しても、誤差ERaがほぼ0(零)で保持される。
【0033】
<制御装置>
図6に示すように、制御装置51は処理回路52を備えている。処理回路52は実行装置53及び記憶装置54を有している。例えば、実行装置53はCPUである。記憶装置54は、実行装置53によって実行される制御プログラムが記憶されている。
【0034】
制御装置51は、実行装置53が制御プログラムを実行することにより、取得部101及び導出部102として機能する。取得部101及び導出部102は、ストロークセンサ20からの信号を基に、ストロークSTRを運転者の制動操作量として導出するための機能部である。
【0035】
<取得部>
取得部101は、被検出部21が所定の基準位置に位置する場合における、第1検出子31の検出値S1である第1基準検出値S1Bの大きさと第2検出子32の検出値S2である第2基準検出値S2Bの大きさとを取得する。基準位置とは、制動操作が行われていない状態での被検出部21の位置である。そのため、被検出部21が基準位置及びその近傍に位置する場合、ブレーキペダル11を操作する運転者が要求している制動力が未だ0(零)と見なすことができる。
【0036】
ここで、図8には、ストロークセンサ20において、第1検出子31及び第2検出子32が、被検出部21に対して第2軸線Yに沿う方向に相対的に変位した様子が図示されている。また、図9において、横軸は実ストロークである一方、縦軸はストロークの検出値と実ストロークとの誤差である。図9の破線は、第1検出子31の検出値S1から導出できるストロークと実ストロークとの誤差である第1検出誤差ERb1と、実ストロークとの関係を示している。図9の実線は、第2検出子32の検出値S2から導出できるストロークと実ストロークとの誤差である第2検出誤差ERb2と実ストロークとの関係を示している。
【0037】
図8に示す例では、第1検出子31よりも第2検出子32のほうが磁石22の第2軸線Yに沿う方向における中心の近くに位置することになる。その結果、実ストロークの変化に伴う第2検出誤差ERb2の振動幅AMP2が、実ストロークの変化に伴う第1検出誤差ERb1の振動幅AMP1よりも小さい。
【0038】
図9において、第1ストロークSTR1から第2ストロークSTR2までの間は、運転者の制動操作の初期のストロークである。すなわち、ストロークが第2ストロークSTR2以下である場合、運転者が要求している制動力が0(零)であると見なすことができる。そのため、実ストロークが第1ストロークSTR1以上且つ第2ストロークSTR2以下である場合、被検出部21が所定の基準位置に位置していると見なす。したがって、実ストロークが第1ストロークSTR1以上且つ第2ストロークSTR2以下である場合の第1検出子31の検出値S1が第1基準検出値S1Bであり、実ストロークが第1ストロークSTR1以上且つ第2ストロークSTR2以下である場合の第2検出子32の検出値S2が第2基準検出値S2Bである。
【0039】
<導出部>
図6に示すように、導出部102は、第1検出子31の検出値S1及び第2検出子32の検出値S2のうちの一方を基準検出値として選択する。具体的には、導出部102は、第1基準検出値S1Bの大きさが第2基準検出値S2Bの大きさ未満である場合には第1検出子31の検出値S1を基準検出値として選択する。一方、導出部102は、第1基準検出値S1Bの大きさが第2基準検出値S2Bの大きさ以上である場合には、第2検出子32の検出値S2を基準検出値として選択する。そして、導出部102は、基準検出値を基に、ストロークSTRを制動操作量として導出する。
【0040】
図7には、基準検出値を選択するために実行装置53が実行する一連の処理の流れを説明する。図7に示す一連の処理は、実行装置53が導出部102として機能することによって実行される。
【0041】
ステップS11において、実行装置53は、運転者による制動操作が開始されたか否かを判定する。例えば、実行装置53は、第1検出子31の検出値S1が変化し始めた際に運転者が制動操作を開始したと判断できる。実行装置53は、制動操作が開始されたと判定した場合(S11:YES)、今回の処理を終了する。実行装置53は、制動操作が開始されていないと判定した場合(S11:NO)、処理をステップS13に移行する。
【0042】
ステップS13において、実行装置53は、被検出部21が基準位置に位置しているか否かを判定する。例えば、第1検出子31の検出値S1に基づいて導出できるストロークが第1ストロークSTR1以上且つ第2ストロークSTR2以下である場合は、被検出部21が基準位置に位置していると見なす。一方、検出値S1に基づいて導出できるストロークが第1ストロークSTR1未満であったり、当該ストロークが第2ストロークSTR2よりも大きかったりする場合は、被検出部21が基準位置に位置していないと見なす。実行装置53は、被検出部21が基準位置に位置していると判定した場合(S13:YES)、処理をステップS15に移行する。一方、実行装置53は、被検出部21が基準位置に位置していないと判定した場合(S13:NO)、実行装置53は、被検出部21が基準位置に位置していると判定できるまでステップS13の判定を繰り返し実行する。
【0043】
ステップS15において、実行装置53は、上述したように基準検出値を選択する。そして、実行装置53は一連の処理を終了する。
<本実施形態の作用及び効果>
(1)ストロークセンサ20では、第1検出子31の検出対象と第2検出子32の検出対象とが同じであるため、部品点数の増大を抑制できる。しかも、第1検出子31から被検知面22bまでの直線距離が、第2検出子32から被検知面22bまでの直線距離が同じであり、且つ第1検出子31及び第2検出子32は第2軸線Yに沿う方向に並んでいる。これにより、検出部30に対する被検出部21の位置ずれが発生していない場合には、第1検出子31の検出値S1と、第2検出子32の検出値S2とのずれが生じにくい。そのため、上記した比較例のストロークセンサと比較して、第1検出子31の検出値S1に基づいてストロークSTRを導出した場合と、第2検出子32の検出値S2に基づいてストロークSTRを導出した場合とでストロークの導出結果にずれが生じにくい。したがって、ストロークSTRを導出することに対する冗長性を確保しつつも、センサとしての部品点数の増大を抑制できる。
【0044】
(2)検出部30と被検出部21との位置関係が第1軸線Xに沿う方向に変化した場合であっても、第1検出子31の検出値S1と第2検出子32の検出値S2との乖離が生じにくい。また、検出部30と被検出部21との位置関係が第3軸線Zに沿う方向に変化した場合であっても、第1検出子31の検出値S1と第2検出子32の検出値S2との乖離が生じにくい。したがって、ストロークセンサ20は、比較例のストロークセンサと比較し、検出部30と被検出部21との位置関係の変化に対して検出精度の変化を抑制できる構成であると云える。
【0045】
(3)制御装置51は、第1検出子31の検出値S1と第2検出子32の検出値S2とのうち、実ストロークが変化した際の振幅幅が小さい方の検出値を、基準検出値として特定する。そして、制御装置51は、基準検出値に基づいてストロークSTRを導出する。これにより、被検出部21と検出部30との位置関係が変化したことに起因するストロークSTRの導出精度の低下を抑制できる。
【0046】
一般に、ストロークセンサの検出対象とストロークセンサとの位置関係が変わると、ストロークセンサの検出精度が変わる。
ここで、従来技術のように検出対象が異なる2つのストロークセンサを制動装置が備えている場合を考える。制動装置の経年変化などによって、第1ストロークセンサとその検出対象との位置関係、及び第2ストロークセンサとその検出対象との位置関係がそれぞれ変化することがある。この場合、第1ストロークセンサとその検出対象との位置関係のずれ量と、第2ストロークセンサとその検出対象との位置関係のずれ量とが一致することはない。そのため、第1ストロークセンサとその検出対象との位置関係、及び第2ストロークセンサとその検出対象との位置関係のうち少なくとも一方が変化した場合、当該位置関係の変化に起因する検出精度の変化を補正することは困難である。
【0047】
この点、本実施形態では、第1検出子31の検出対象は第2検出子32の検出対象と同じである。そのため、第1検出子31と被検出部21との位置関係及び第2検出子32と被検出部21との位置関係が変化した場合であっても、当該位置関係の変化に起因する検出精度の変化を補正しやすい。
【0048】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・ストロークセンサは、第2軸線Yに沿う方向に沿って配置される複数の検出子を備える構成であれば、3つ以上の検出子を備えて構成であってもよい。
・上記実施形態では、第1検出子31の検出値S1と第2検出子32の検出値S2とのうち、基準検出値として特定した値のみに基づいてストロークSTRを導出しているが、これに限らない。例えば、制御装置51は、2つの検出値S1,S2を重み付け平均した値に基づいてストロークSTRを導出してもよい。この場合、2つの検出値S1,S2のうち、基準検出値の重み付け係数を、基準検出値ではないほうの検出値の重み付け係数よりも大きくするとよい。
【0050】
・制御装置51の処理回路52は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0051】
なお、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」又は「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」又は「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【0052】
<他の技術的思想>
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を付記として記載する。
(付記1)前記磁石における前記第2軸線に沿う方向の中心を挟むように、前記第1検出子と前記第2検出子とがそれぞれ配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
20…ストロークセンサ
21…被検出部
22…磁石
22b…被検知面(平面の一例)
30…検出部
31…第1検出子
32…第2検出子
51…制御装置
52…処理回路
53…実行装置
54…記憶装置
101…取得部
102…導出部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9