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▶ 株式会社日立建機ティエラの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051602
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157855
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北條 陽大
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 敦史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕太
(57)【要約】
【課題】ブームとブームシリンダとを連結する連結ピンに対する給脂作業を行うときの作業性を高める。
【解決手段】作業装置11を構成するブーム12の下面には、一対のブームシリンダブラケット12Fが設けられ、ブームシリンダ15のロッド側取付部15Eと一対のブームシリンダブラケット12Fとの間は、ロッド側連結ピン15Fを介して回動可能に連結されている。ロッド側取付部15Eには給脂ニップル19が設けられ、給脂ニップル19の前側には、一対のブームシリンダブラケット12Fに隣接して作業灯20が配置される。ブーム12には、作業灯20の位置を変更する作業灯変位機構23が設けられ、作業灯変位機構23は、作業灯20を、バケット14に向けて光を照射させる作業位置と、給脂ニップル19との間に給脂作業用の作業スペースを確保する給脂位置とに変位させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、
前記作業装置は、前記車体に回動可能に取付けられたブームと、
前記ブームの先端に回動可能に取付けられたアームと、
前記アームの先端に回動可能に取付けられた作業具と、
一端が前記車体に取付けられると共に他端が前記ブームに取付けられ、前記ブームを前記車体に対して回動させるブームシリンダと、
前記ブームシリンダの他端を挟んで対向した状態で前記ブームの下面に設けられ、前記ブームの一部を構成する一対のブームシリンダブラケットと、
前記ブームシリンダの他端と前記一対のブームシリンダブラケットとの間を連結する連結ピンと、
前記ブームシリンダの他端に設けられた給脂ニップルと、
前記一対のブームシリンダブラケットに隣接して前記ブームの下面側に配置された作業灯と、を備えてなる建設機械において、
前記ブームに設けられ、前記作業灯の位置を変更する作業灯変位機構を備え、
前記作業灯変位機構は、前記作業灯の位置を、前記作業灯が前記ブームの下面に隣接し、前記作業具に向けて光を照射させる作業位置と、前記給脂ニップルへの給脂作業のために、前記作業位置よりも前記作業灯と前記ブームの下面との距離が長く設定される給脂位置とに変位可能に構成されたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記作業灯変位機構は、前記連結ピンに回動可能に支持され前記作業灯が取付けられた作業灯ブラケットと、前記作業灯を前記作業位置に固定する作業灯固定具とを含んで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記作業灯変位機構は、前記作業灯を前記給脂位置に変位させた状態で、前記作業灯を前記給脂ニップルに向けて光を照射する方向に回動させる作業灯回動機構を備えることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記作業灯ブラケットは、前記作業灯が前記給脂位置に変位したときに前記給脂ニップルと前記作業灯との間に形成される作業スペースを広げる方向に屈曲する屈曲部を有していることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項5】
前記作業灯は、前記作業灯が前記作業位置に変位したときに前記作業灯固定具が係合する固定用ブラケットを有し、
前記固定用ブラケットは、前記作業灯が前記給脂位置に変位した状態で前記作業灯回動機構によって前記作業灯を前記給脂ニップルに向けて光を照射する方向に回動させたときに、前記作業灯ブラケットに当接することを特徴とする請求項3に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ショベル等の建設機械に関し、特に夜間作業用の作業灯を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を代表する油圧ショベルは、自走可能な車体と、車体に設けられた作業装置とにより大略構成されている。油圧ショベルの作業装置は、車体に回動可能に連結されたブームと、ブームの先端に回動可能に連結されたアームと、アームの先端に回動可能に連結されたバケット等の作業具と、これらブーム、アーム、作業具を回動させる油圧シリンダとを含んで構成されている。
【0003】
車体とブームとの間には、車体に対してブームを回動させるブームシリンダ(油圧シリンダ)が設けられている。ブームシリンダの一端は、車体に設けられた車体側ブラケットに連結ピンを介して回動可能に連結され、ブームシリンダの他端は、ブームの下面(腹面)に設けられたブームシリンダブラケットに連結ピンを介して回動可能に連結されている。また、ブームシリンダの一端および他端には、それぞれ給脂ニップルが設けられている。ブームシリンダの一端に設けられた給脂ニップルは、ブームシリンダと車体側ブラケットとの間を連結する連結ピンに潤滑油を給脂し、ブームシリンダの他端に設けられた給脂ニップルは、ブームシリンダの他端とブームシリンダブラケットとの間を連結する連結ピンに潤滑油を給脂する。
【0004】
一方、作業装置に夜間作業用の作業灯が取付けられた油圧ショベルが知られている。この油圧ショベルは、ブームの下面のうちブームシリンダブラケットよりも前側となる位置に、ブラケット等を介して作業灯が取付けられている。これにより、夜間作業時には、作業灯から照射される光によって作業具等を照らすことができ、作業性を高めることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-127842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、油圧ショベルの作業灯は、通常、ブームシリンダブラケットの前側に配置されている。ブームシリンダブラケットは、ブームシリンダの他端を挟んで対をなし、この一対のブームシリンダブラケット間に挟まれたブームシリンダの他端には給脂ニップルが設けられている。従って、グリースガン等を給脂ニップルに接続して給脂作業を行うときには、ブームシリンダブラケットの前側に配置された作業灯によって作業スペースが狭められ、給脂作業の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
さらに、ブームシリンダの他端に設けられた給脂ニップルは、一対のブームシリンダブラケットおよび作業灯によって周囲を囲まれている。このため、給脂ニップルの周囲が暗くなり、給脂作業を行う作業者にとって給脂ニップルの視認性が低下し、給脂作業の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ブームシリンダブラケットの前側に作業灯を配置しつつ、ブームとブームシリンダとを連結する連結ピンに対する給脂作業の作業性を高めることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置とからなり、前記作業装置は、前記車体に回動可能に取付けられたブームと、前記ブームの先端に回動可能に取付けられたアームと、前記アームの先端に回動可能に取付けられた作業具と、一端が前記車体に取付けられると共に他端が前記ブームに取付けられ、前記ブームを前記車体に対して回動させるブームシリンダと、前記ブームシリンダの他端を挟んで対向した状態で前記ブームの下面に設けられ、前記ブームの一部を構成する一対のブームシリンダブラケットと、前記ブームシリンダの他端と前記一対のブームシリンダブラケットとの間を連結する連結ピンと、前記ブームシリンダの他端に設けられた給脂ニップルと、前記一対のブームシリンダブラケットに隣接して前記ブームの下面側に配置された作業灯と、を備えてなる建設機械において、前記ブームに設けられ、前記作業灯の位置を変更する作業灯変位機構を備え、前記作業灯変位機構は、前記作業灯の位置を、前記作業灯が前記ブームの下面に隣接し、前記作業具に向けて光を照射させる作業位置と、前記給脂ニップルへの給脂作業のために、前記作業位置よりも前記作業灯と前記ブームの下面との距離が長く設定される給脂位置とに変位可能に構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブームシリンダブラケットの前側に作業灯を配置しつつ、ブームとブームシリンダとを連結する連結ピンに対する給脂作業の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態が適用された油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】ブーム、ブームシリンダブラケット、連結ピン、作業灯、作業灯変位機構等を、作業灯が作業位置にある状態で示す斜視図である。
図3】ブーム、ブームシリンダブラケット、連結ピン、作業灯、作業灯変位機構等を、作業灯が作業位置にある状態で示す左側面図である。
図4】ブーム、ブームシリンダブラケット、連結ピン、作業灯、作業灯変位機構等を、作業灯が給脂位置にある状態で示す斜視図である。
図5】給脂位置となった作業灯、作業灯変位機構、連結ピン、ブームシリンダ、給脂ニップル等を示す斜視図である。
図6】ブーム、ブームシリンダブラケット、連結ピン、作業灯、作業灯変位機構等を、作業灯が給脂位置にある状態で示す左側面図である。
図7】作業灯、作業灯ブラケットを示す左側面図である。
図8】作業灯固定具を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に沿って詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0013】
図1において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に設けられた後述する作業装置11とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。
【0014】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4と、旋回フレーム4の左側に搭載されたキャブ5と、旋回フレーム4の後端に設けられたカウンタウエイト6とを含んで構成されている。旋回フレーム4の前部側には、キャブ5よりも前方に突出する支持ブラケット4Aが設けられ、この支持ブラケット4Aによって作業装置11が支持されている。キャブ5は、オペレータが搭乗する運転室を画成している。カウンタウエイト6は、旋回フレーム4の前側に設けられた作業装置11との重量バランスを保っている。旋回フレーム4には、原動機、油圧ポンプ、コントロールバルブ等の搭載機器、燃料タンク、作動油タンク等(いずれも図示せず)が搭載されている。
【0015】
作業装置11は、旋回フレーム4の支持ブラケット4Aに回動可能に支持されている。作業装置11は、基端が支持ブラケット4Aに連結ピン12Aを介して回動可能に取付けられたブーム12と、ブーム12の先端に連結ピン13Aを介して回動可能に取付けられたアーム13と、アーム13の先端に連結ピン14Aを介して回動可能に取付けられたバケット14(作業具)とを含んで構成されている。また、支持ブラケット4Aとブーム12との間には、ブーム12を回動させるブームシリンダ15が設けられ、ブーム12とアーム13との間には、アームを回動させるアームシリンダ16が設けられ、アーム13とバケット14との間には、バケット14を回動させるバケットシリンダ17が設けられている。
【0016】
ブーム12は、左右方向で一定の間隔をもって対向し、ブーム12の側面を構成する左右の側面板12B(左側のみ図示)と、左右の側面板12Bの上端側を閉塞し、ブーム12の上面を構成する上面板12Cと、左右の側面板12Bの下端側を閉塞し、ブーム12の下面を構成する下面板12Dとにより囲まれた断面四角形の箱状をなしている。ブーム12の長さ方向の中央部は、下面板12D側から上面板12C側に山型に屈曲した屈曲部12Eとなっている。ブーム12は、後述するブームシリンダブラケット12F、アームブラケット12Gを含んで構成されている。
【0017】
一対のブームシリンダブラケット12Fは、ブーム12の下面板12Dのうち屈曲部12Eの位置に設けられ、ブーム12の一部を構成している。一対のブームシリンダブラケット12Fは、左右方向で一定の間隔をもって対向する2枚の板体によって構成され、ブーム12の下面板12Dに溶接等の手段を用いて一体的に固定されている。また、ブーム12の上面板12Cのうち屈曲部12Eの位置には、左右方向で対向する一対のアームブラケット12G(左側のみ図示)が、溶接等の手段を用いて固定されている。
【0018】
旋回フレーム4の支持ブラケット4Aとブーム12のブームシリンダブラケット12Fとの間には、ブームシリンダ15が設けられている。ブームシリンダ15は、チューブ15Aと、チューブ15A内に摺動可能に設けられたピストン(図示せず)と、一端がチューブ15A内でピストンに固定され、他端がチューブ15Aの外部に突出したロッド15Bとを含んで構成されている。
【0019】
チューブ15Aのボトム側には、ブームシリンダ15の一端となる環状のボトム側取付部15Cが設けられている。ボトム側取付部15Cは、ボトム側連結ピン15Dを介して支持ブラケット4Aに回動可能に連結されている。一方、ロッド15Bの先端側(突出端側)には、ブームシリンダ15の他端となる環状のロッド側取付部15Eが設けられている。ロッド側取付部15Eは、ロッド側連結ピン15Fを介してブームシリンダブラケット12Fに回動可能に連結されている。
【0020】
図4に示すように、ブームシリンダ15のロッド側取付部15Eには、シリンダカバー18および給脂ニップル19が設けられている。シリンダカバー18は、ブームシリンダ15の長さ方向に沿って延びる板体により構成され、ロッド側取付部15Eに固定される狭幅な固定部18Aと、ロッド15Bを前側(バケット14側)から覆う広幅なカバー本体部18Bとにより構成されている。シリンダカバー18の固定部18Aは、ボルト18Cを用いてロッド側取付部15Eに固定される。これにより、カバー本体部18Bは、ブームシリンダ15の伸縮動作に追従してロッド15Bを前側から覆い、油圧ショベル1の掘削作業時にバケット14から飛散する土砂等からロッド15Bを保護する。
【0021】
ここで、シリンダカバー18には、狭幅な固定部18Aから広幅なカバー本体部18Bに向けて傾斜する一対のストッパ部18Dが設けられている。一対のストッパ部18Dは、後述する作業灯20が図4に示す給脂位置に変位したときに、作業灯ブラケット24が当接することにより、作業灯20を給脂位置に位置決めする。
【0022】
給脂ニップル19は、ブームシリンダ15の他端となるロッド側取付部15Eに設けられている。環状のロッド側取付部15Eには、外周面から内周面に貫通する給脂孔(図示せず)が形成され、この給脂孔に給脂ニップル19が取付けられている。給脂ニップル19は、ロッド側連結ピン15Fにグリース等の潤滑油を供給(給脂)するもので、例えばグリースガン等(図示せず)を給脂ニップル19に接続することにより、ロッド側連結ピン15Fに対する給脂作業が行われる。給脂ニップル19は、一対のブームシリンダブラケット12F間で、かつ作業灯20の後側に配置されている。
【0023】
作業灯20は、一対のブームシリンダブラケット12Fの前側(バケット14側)に隣接してブーム12の下面側(下面板12D側)に設けられている。作業灯20は、夜間作業時にバケット14等を照らすことにより、作業性を高める。作業灯20は、後述する作業灯変位機構23を介して一対のブームシリンダブラケット12Fに取付けられ、作業位置と給脂位置とに変位する。
【0024】
図2および図7に示すように、作業灯20は、上部旋回体3に搭載されたバッテリ等の電源にハーネス(いずれも図示せず)を介して接続され、電力が供給されることにより光を照射する作業灯本体21と、作業灯本体21を覆う作業灯カバー22とを含んで構成されている。作業灯本体21は、キャブ5内に設けられたスイッチ(図示せず)の操作に応じて点灯、消灯される。作業灯カバー22は、例えば鋼板等を用いて枠状に形成され、底板22Aと、底板22Aの左右両端から上方に立ち上がる左側板22Bおよび右側板22Cとを有している。底板22Aの左右方向の中央部には、後述するスタッドボルト21Aが挿通されるボルト挿通孔22Dが形成されている。左側板22Bおよび右側板22Cの上端側には、後述する蝶ボルト25が挿通されるボルト挿通孔(図示せず)が、それぞれ1個ずつ形成されている。
【0025】
固定用ブラケット22Eは、左右方向に延びる板体により形成され、左側板22Bおよび右側板22Cの上端間を連結している。固定用ブラケット22Eは、左側板22Bおよび右側板22Cの内側面に溶接等の手段を用いて固定された固定部22Fと、左側板22Bおよび右側板22Cから上方に張り出す山型の張出し部22Gとを有している。これにより、張出し部22Gと固定部22Fとの間には、固定部22Fから張出し部22Gに向けて徐々に左右方向の幅寸法が減少する傾斜部22Hが形成されている。また、張出し部22Gの左右方向の中央部には、後述する保持ピン28が挿通されるピン挿通孔22Jが形成されている。
【0026】
作業灯本体21の底部にはスタッドボルト21Aが突設され、このスタッドボルト21Aは、作業灯カバー22の底板22Aに形成されたボルト挿通孔22Dに挿通される。そして、底板22Aから突出したスタッドボルト21Aにナット21Bを締結することにより、作業灯カバー22に作業灯本体21が一体的に固定されている。これにより、作業灯本体21の底部および左右両側は、作業灯カバー22によって覆われている。
【0027】
作業灯変位機構23は、一対のブームシリンダブラケット12Fと作業灯20との間に位置してブーム12に設けられ、作業灯20を図2および図3に示す作業位置と、図4および図6に示す給脂位置とに変位させる。作業灯20が作業位置となったときには、作業灯20がブーム12の下面板12Dに隣接し、夜間作業時に作業灯20からバケット14等に向けて光が照射される。作業灯20が給脂位置となったときには、作業灯20とブーム12の下面板12Dとの距離が、作業灯20が作業位置にあるときよりも長く設定され、作業灯20と給脂ニップル19との間に、給脂作業用のための作業スペースSが確保される。作業灯変位機構23は、作業灯ブラケット24と、蝶ボルト25と、作業灯固定具26とを含んで構成されている。
【0028】
作業灯ブラケット24は、ブームシリンダ15のロッド側取付部15Eを挟んで左右方向で対をなしている。これら一対の作業灯ブラケット24は、基端側がロッド側連結ピン15Fに回動可能に支持され、先端側に作業灯20が取付けられる。図7に示すように、作業灯ブラケット24は、基端側に位置するベース部24Aと、ベース部24Aから延在するアーム部24Bとを有している。ベース部24Aにはピン挿通孔24Cが形成され、ピン挿通孔24Cにロッド側連結ピン15Fが挿通されることにより、作業灯ブラケット24は、ロッド側連結ピン15Fを中心として回動可能となっている。アーム部24Bの先端24Dには、作業灯カバー22の左側板22Bおよび右側板22Cのボルト挿通孔に対応するボルト挿通孔(いずれも図示せず)が形成され、アーム部24Bの先端24Dの内側面には、前記ボルト挿通孔と同心状にナット24E(図5参照)が溶接されている。
【0029】
ここで、作業灯ブラケット24のアーム部24Bは、ベース部24Aから先端24Dに向けてL字状に屈曲した屈曲部24Fを有している。この屈曲部24Fは、作業灯20を図6に示す給脂位置としたときに、ベース部24Aおよび先端24Dよりもブーム12の下面板12Dから離れる方向に突出する。これにより、作業灯20と給脂ニップル19との間に形成される作業スペースSを拡張することができる。
【0030】
蝶ボルト25は、作業灯カバー22を構成する左側板22Bおよび右側板22Cにそれぞれ1本ずつ設けられ、作業灯ブラケット24のアーム部24Bに対し、作業灯カバー22を回動可能に取付けている。即ち、蝶ボルト25は、本実施形態による作業灯回動機構を構成している。一方の蝶ボルト25は、作業灯カバー22の左側板22Bおよび作業灯ブラケット24のアーム部24Bに形成されたボルト挿通孔(いずれも図示せず)に挿通され、作業灯ブラケット24に溶接されたナット24Eに螺合している。他方の蝶ボルト25は、作業灯カバー22の右側板22Cおよび作業灯ブラケット24のアーム部24Bに形成されたボルト挿通孔(いずれも図示せず)に挿通され、作業灯ブラケット24に溶接されたナット24Eに螺合している。
【0031】
従って、蝶ボルト25をナット24Eに締込むことにより、作業灯ブラケット24に対して作業灯20を固定することができる。一方、ナット24Eに締込まれた蝶ボルト25を緩めることにより、作業灯ブラケット24に対し、蝶ボルト25を中心として作業灯20を、図3中の時計方向および反時計方向に回動させることができる。このように、作業灯20は、蝶ボルト25を用いて作業灯ブラケット24に取付けられ、作業灯ブラケット24と共にロッド側連結ピン15Fを中心として、作業位置と給脂位置との間で図3中の時計方向および反時計方向に回動変位する。
【0032】
作業灯固定具26は、ブームシリンダブラケット12Fよりも前側に位置してブーム12の下面板12Dに設けられている。作業灯固定具26は、ピン支持枠27と、保持ピン28と、圧縮ばね31とを含んで構成され、作業灯20を作業位置に固定する。
【0033】
ピン支持枠27は、鋼板材等を屈曲させることによりU字型の枠状に形成されている。図8に示すように、ピン支持枠27は、ブーム12の下面板12Dと上下方向の間隔をもって対向する下板27Aと、下板27Aの前端からブーム12の下面板12Dに向けて立ち上がる前板27Bと、下板27Aの後端からブーム12の下面板12Dに向けて立ち上がる後板27Cとにより構成されている。前板27Bおよび後板27Cの上端はブーム12の下面板12Dに溶接され、前板27Bと後板27Cとは前後方向に一定の間隔をもって対向している。また、前板27Bにはピン挿通孔27Dが設けられ、後板27Cにはピン挿通孔27Eが設けられている。
【0034】
保持ピン28は、ピン支持枠27のピン挿通孔27D,27Eに挿通され、ピン支持枠27により軸方向に移動可能に支持されている。保持ピン28の軸方向の一端28Aは、ピン支持枠27の後板27Cから後方に突出し、保持ピン28の軸方向の他端28Bは、ピン支持枠27の前板27Bから前方に突出している。保持ピン28の一端28Aは、作業灯20が作業位置に変位したときに、作業灯カバー22の固定用ブラケット22Eに形成されたピン挿通孔22Jに挿通される。保持ピン28の他端28Bには、保持ピン28と直交する貫通孔が形成され、この貫通孔にはリング28Cが取付けられている。
【0035】
ピン支持枠27内に配置された保持ピン28の軸方向の中間部には、保持ピン28と直交するように抜止めピン29が固定されると共に、前板27Bと抜止めピン29との間に位置して環状のばね受け板30が挿通されている。ばね受け板30の外径寸法は、前板27Bに形成されたピン挿通孔27Dの孔径より大径である。従って、保持ピン28は、抜止めピン29とばね受け板30とにより、ピン支持枠27に対して軸方向に抜止めされている。
【0036】
圧縮ばね31は、ピン支持枠27の前板27Bとばね受け板30との間に設けられている。圧縮ばね31は、保持ピン28の外周側に配置されたコイルばねからなり、圧縮ばね31の一端はばね受け板30に当接し、圧縮ばね31の他端はピン支持枠27の前板27Bに当接している。これにより、圧縮ばね31は、保持ピン28の一端を、ピン支持枠27の後板27Cから後方に突出する方向に付勢している。
【0037】
従って、作業灯20を作業位置(図2および図3の位置)に変位させた状態で、作業灯カバー22(固定用ブラケット22E)のピン挿通孔22Jに保持ピン28の一端28Aを挿通することにより、作業灯20を、一対のブームシリンダブラケット12Fの前側に隣接してバケット14に向けて光を照射させる作業位置に保持することができる。一方、圧縮ばね31のばね力に抗してリング28Cを引っ張り、保持ピン28の一端28Aを作業灯カバー22のピン挿通孔22Jから離脱させることにより、作業灯20を、ロッド側連結ピン15Fを中心として、作業灯ブラケット24と共に作業位置から給脂位置(図4および図6の位置)へと変位させ、給脂ニップル19との間に給脂作業用の作業スペースSを確保することができる。
【0038】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、キャブ5に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(ペダル)を操作することにより、油圧ショベル1は作業現場まで自走し、オペレータが作業用の操作レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置11を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0039】
油圧ショベル1が掘削作業等を行うときには、作業灯20は、図2および図3に示す作業位置を保持する。即ち、作業灯固定具26の保持ピン28が圧縮ばね31に付勢されることにより、保持ピン28の一端28Aは、ピン支持枠27の後板27Cから後方に突出する。この保持ピン28の一端28Aを、作業灯カバー22(固定用ブラケット22E)のピン挿通孔22Jに挿通することにより、作業灯20を、ブーム12の下面板12Dおよびブームシリンダブラケット12Fに隣接した作業位置に保持することができる。そして、夜間作業を行う場合には、作業位置に保持された作業灯20を点灯し、作業灯20(作業灯本体21)からバケット14に向けて光を照射する。これにより、掘削作業を行うバケット14、およびバケット14の周囲を明るく照らすことができ、夜間作業の作業性を高めることができる。
【0040】
次に、ブーム12のブームシリンダブラケット12Fとブームシリンダ15のロッド側取付部15Eとの間を連結するロッド側連結ピン15Fに対し、グリース等の潤滑油を給脂する作業について説明する。
【0041】
ロッド側連結ピン15Fに対する給脂作業は、ロッド側連結ピン15Fに取付けられた給脂ニップル19にグリースガン(図示せず)を接続することにより行われる。給脂ニップル19は、一対のブームシリンダブラケット12Fの間で、かつ作業位置に保持された作業灯20の後側に配置されている。このため、作業灯20を作業位置に保持した状態では、給脂ニップル19にグリースガンを接続することが困難となる。
【0042】
この場合には、作業灯固定具26の保持ピン28に取付けられたリング28Cを、圧縮ばね31のばね力に抗して前方に引っ張り、保持ピン28の一端28Aを、作業灯カバー22のピン挿通孔22Jから離脱させる。これにより、作業灯20は、作業灯ブラケット24と共にロッド側連結ピン15Fを中心として回動可能となり、作業位置から給脂位置へと変位させることができる。この場合、作業灯ブラケット24のアーム部24Bは、ロッド側連結ピン15Fを中心として下向きに回動するときに、ブームシリンダ15に取付けられたシリンダカバー18のストッパ部18Dに当接する。これにより、作業灯ブラケット24の回動範囲が制限され、作業灯20を給脂位置に位置決めすることができる。
【0043】
このようにして、作業灯20を、図4および図6に示す給脂位置に変位させることにより、作業灯20とブーム12の下面板12Dとの距離が、作業灯20が作業位置にあるときよりも長く設定され、作業灯20と給脂ニップル19との間に大きな作業スペースSを確保することができる。この結果、グリースガンを給脂ニップル19に接続する作業を、大きな作業スペースS内で迅速かつ的確に行うことができ、給脂作業の作業性を向上させることができる。
【0044】
しかも、作業灯ブラケット24のアーム部24Bは、ベース部24Aから先端24Dに向けてL字状に屈曲する屈曲部24Fを有し、屈曲部24Fは、作業灯20を給脂位置としたときに、ベース部24Aおよび先端24Dよりもブーム12の下面板12Dから離れる方向に突出する(図6参照)。これにより、作業灯20と給脂ニップル19との間に形成される作業スペースSを拡張することができ、給脂作業の作業性を一層向上させることができる。
【0045】
さらに、作業灯20を作業位置から給脂位置に変位させた後には、蝶ボルト25を用いて作業灯20を作業灯ブラケット24に対して回動させ、作業灯20からの光を給脂ニップル19に照射することができる。即ち、作業灯カバー22の左側板22Bおよび右側板22Cに挿通された一対の蝶ボルト25を、作業灯ブラケット24に設けられたナット24Eに対して緩める。これにより、作業灯20を作業灯ブラケット24に対し、蝶ボルト25を中心として回動させ、作業灯20を給脂ニップル19に正対させることができる。そして、図5に示すように、作業灯カバー22に設けられた固定用ブラケット22Eの傾斜部22Hが、作業灯ブラケット24のアーム部24Bに当接することにより、作業灯20を給脂ニップル19に正対させ、給脂ニップル19に向けて光を照射する位置に位置決めすることができる。
【0046】
この状態で、作業灯20を点灯することにより、作業灯20からの光が給脂ニップル19に照射され、給脂ニップル19を明るく照らすことができる。この結果、ロッド側連結ピン15Fに対する給脂作業を夜間に行う場合でも、給脂作業の作業性を向上させることができる。
【0047】
ロッド側連結ピン15Fに対する給脂作業が終了した後には、作業灯20を給脂位置から作業位置に変位させる。即ち、作業灯20および作業灯ブラケット24を、ロッド側連結ピン15Fを中心として上向きに回動させ、作業灯20を、給脂位置から作業位置へと変位させる。一方、作業灯固定具26の保持ピン28に取付けられたリング28Cを、圧縮ばね31のばね力に抗して前方に引っ張り、保持ピン28の一端28Aを、ピン支持枠27の後板27C側に移動させる。この状態で、作業灯20を作業灯ブラケット24に対し、蝶ボルト25を中心として回動させ、作業灯カバー22の固定用ブラケット22Eに設けられたピン挿通孔22Jに、保持ピン28の一端28Aを挿通する。そして、蝶ボルト25を、作業灯ブラケット24に設けられたナット24Eに対して締込むことにより、作業灯20を作業灯ブラケット24に対して固定する。
【0048】
このようにして、作業灯20を、作業灯変位機構23を用いて給脂位置から作業位置に変位させ、作業灯固定具26を用いて作業灯20を作業位置に保持することができる。これにより、作業灯20によってバケット14、およびバケット14の周囲を明るく照らすことができ、夜間作業の作業性を高めることができる。
【0049】
かくして、本実施形態による油圧ショベル1は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業装置11とからなり、作業装置11は、上部旋回体3に回動可能に取付けられたブーム12と、ブーム12の先端に回動可能に取付けられたアーム13と、アーム13の先端に回動可能に取付けられたバケット14と、一端が上部旋回体3に取付けられると共に他端がブーム12に取付けられ、ブーム12を上部旋回体3に対して回動させるブームシリンダ15と、ブームシリンダ15の他端を挟んで対向した状態でブーム12の下面に設けられ、ブーム12の一部を構成する一対のブームシリンダブラケット12Fと、ブームシリンダ15の他端と一対のブームシリンダブラケット12Fとの間を連結するロッド側連結ピン15Fと、ブームシリンダ15の他端に設けられた給脂ニップル19と、一対のブームシリンダブラケット12Fに隣接してブーム12の下面側に配置された作業灯20と、を備え、ブーム12に設けられ、作業灯20の位置を変更する作業灯変位機構23を備え、作業灯変位機構23は、作業灯20の位置を、作業灯20がブーム12の下面板12Dに隣接し、バケット14に向けて光を照射させる作業位置と、給脂ニップル19への給脂作業のために、作業位置よりも作業灯20とブーム12の下面板12Dとの距離が長く設定される給脂位置とに変位可能に構成されている。
【0050】
この構成によれば、ブームシリンダブラケット12Fの前側に作業灯20を配置した状態であっても、作業灯変位機構23によって作業灯20を給脂位置に変位させることにより、作業灯20をブーム12の下面板12Dから大きく離間させ、作業灯20と給脂ニップル19との間に大きな作業スペースSを確保することができる。この結果、給脂ニップル19を通じてロッド側連結ピン15Fに給脂を行うときの作業性を高めることができる。
【0051】
実施形態では、作業灯変位機構23は、ロッド側連結ピン15Fに回動可能に支持され作業灯20が取付けられた作業灯ブラケット24と、作業灯20を作業位置に固定する作業灯固定具26とを含んで構成されている。この構成によれば、ロッド側連結ピン15Fを中心として作業灯ブラケット24を回動させることにより、作業灯20を作業位置と給脂位置とに変位させることができる。また、作業灯20が作業位置に変位したときには、作業灯固定具26を用いて作業灯20を作業位置に保持し、作業灯20からの光をバケット14に照射することができる。
【0052】
実施形態では、作業灯変位機構23は、作業灯20を給脂位置に変位させた状態で、作業灯20を給脂ニップル19に向けて光を照射する方向に回動させる蝶ボルト25を備えている。この構成によれば、作業灯20を作業位置から給脂位置に変位させた後に、蝶ボルト25を中心として作業灯20を作業灯ブラケット24に対して回動させることができる。これにより、作業灯20を給脂ニップル19に正対させることができ、作業灯20からの光を給脂ニップル19に照射することができる。
【0053】
実施形態では、作業灯ブラケット24は、作業灯20が給脂位置に変位したときに給脂ニップル19と作業灯20との間に形成される作業スペースSを広げる方向に屈曲する屈曲部24Fを有している。この構成によれば、作業灯20と給脂ニップル19との間に形成される作業スペースSを拡張することができ、給脂作業の作業性を一層向上させることができる。
【0054】
実施形態では、作業灯20は、作業灯20が作業位置に変位したときに作業灯固定具26が係合する固定用ブラケット22Eを有し、固定用ブラケット22Eは、作業灯20が給脂位置に変位した状態で、蝶ボルト25を中心として作業灯20を給脂ニップル19に向けて光を照射する方向に回動させたときに、作業灯ブラケット24に当接する。この構成によれば、作業灯20が作業位置に変位した状態では、固定用ブラケット22Eに作業灯固定具26が係合することにより、作業灯20を作業位置に保持することができる。一方、作業灯20が給脂位置に変位した状態では、蝶ボルト25を中心として作業灯を回動させ、固定用ブラケット22Eが作業灯ブラケット24に当接することにより、作業灯20を、給脂ニップル19に光を照射する方向に位置決めすることができる。
【0055】
なお、実施形態では、作業灯変位機構23を構成する作業灯ブラケット24が、ロッド側連結ピン15Fを中心として回動することにより、作業灯ブラケット24に取付けられた作業灯20が、作業位置と給脂位置とに回動変位する場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばスライド機構等を用いることにより、作業灯を作業位置と給脂位置との間で直線的に変位させる構成としてもよい。
【0056】
また、実施形態では、ブームシリンダ15のチューブ15Aに設けられたボトム側取付部15Cを、旋回フレーム4の支持ブラケット4Aに連結し、ブームシリンダ15のロッド15Bに設けられたロッド側取付部15Eを、ブームシリンダブラケット12Fに連結した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブームシリンダのボトム側取付部をブームシリンダブラケットに連結し、ブームシリンダのロッド側取付部を旋回フレームの支持ブラケットに連結する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
11 作業装置
12 ブーム
12F ブームシリンダブラケット
13 アーム
14 バケット(作業具)
15 ブームシリンダ
15C ボトム側取付部(一端)
15E ロッド側取付部(他端)
15F ロッド側連結ピン(連結ピン)
19 給脂ニップル
20 作業灯
22 作業灯カバー
22E 固定用ブラケット
23 作業灯変位機構
24 作業灯ブラケット
24F 屈曲部
25 蝶ボルト(作業灯回動機構)
26 作業灯固定具
S 作業スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8