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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051604
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】環境計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/22 20060101AFI20240404BHJP
   G01P 5/24 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01K11/22
G01P5/24 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157857
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井阪 健
(72)【発明者】
【氏名】樋江井 武彦
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 知景
(72)【発明者】
【氏名】石田 絢音
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056VS03
2F056VS04
2F056VS10
(57)【要約】
【課題】対象空間の温度分布または速度分布の予測精度を向上させる
【解決手段】環境計測装置は、対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定し、制約条件は、第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの領域における空気の流出入量、及び第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度測定値の少なくとも1つを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュを設定する設定部(42)と、
前記第1仮想メッシュ(M1)における所定の領域を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定し、
前記制約条件は、前記第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの前記領域における空気の流出入量、及び前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度測定値の少なくとも1つを含む環境計測装置。
【請求項2】
前記推定部(44)は、前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の伝搬時間、伝搬経路が通る前記第1仮想メッシュ(M1)内の経路長、及び該第1仮想メッシュ(M1)内の伝搬速度に基づいて、前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域内の空気の温度または気流を求める前記予測手法として、一般化逆行列を用いる
請求項1に記載の環境計測装置。
【請求項3】
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の前記伝搬時間と、温度分布または気流分布とを関連付けたデータを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第2仮想メッシュの温度または気流を出力する第1予測モデルを作成し、
前記第1予測モデルの出力値を前記制約条件として、該制約条件を前記教師データに加えて機械学習させた学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する第2予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして前記第2予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する
請求項1に記載の環境計測装置。
【請求項4】
前記第2仮想メッシュは、前記予測手法を用いずに、温度または気流を一意に決定可能な前記領域数のうち最大の領域数である
請求項1~3のいずれか1つに記載の環境計測装置。
【請求項5】
前記温度の測定値は、前記対象空間(S)の配置された温度センサ(30)の測定値である
請求項1~3のいずれか1つに記載の環境計測装置。
【請求項6】
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュ(M1)を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の伝搬時間と、温度分布または気流分布を関連付けたデータとを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして、前記予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する環境計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象空間の温度分布または気流分布を計測する方法として、対象空間を複数の領域に分割にした仮想メッシュを生成し、仮想メッシュの各領域を通過する検出用音波の伝搬時間及び伝搬距離に基づいて、対象空間の温度および気流を求める方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/110393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮想メッシュの温度または気流の未知数の方が、仮想メッシュの各領域を通過する検出用音波の伝搬時間及び伝搬距離に基づく方程式の数よりも多い場合、所定の手法によって該仮想メッシュの温度または気流を予測することができるが、この予測値の精度は十分なものとはいえない。そこで、音波送受信部数を多くして、仮想メッシュの各領域を通過する検出用音波の伝搬時間及び伝搬距離に基づく方程式の数を増やすことで対象空間の温度分布または気流分布の測定精度は向上する。しかし、音波送受信部数を増やせば、コストがかかることに加え、対象空間によっては意匠等の制約から音波送受信部数を増やせないこと場合がある。
【0005】
本開示の目的は、対象空間の温度分布または速度分布の予測精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュを設定する設定部(42)と、
前記第1仮想メッシュ(M1)における所定の領域を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定し、
前記制約条件は、前記第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの前記領域における空気の流出入量、及び前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度の少なくとも1つを含む環境計測装置である。
【0007】
第1の態様では、第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の測定値、第1仮想メッシュ(M1)の領域の境界における空気の流出入量、または第1仮想メッシュ(M1)少なくとも1つの領域の温度を予測手法の制約条件とすることで、対象空間(S)全体の温度分布または速度分布の測定精度を向上させることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記推定部(44)は、前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の伝搬時間、伝搬経路が通る前記第1仮想メッシュ(M1)内の経路長、及び該第1仮想メッシュ(M1)内の伝搬速度に基づいて、前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域内の空気の温度または気流を求める前記予測手法として、一般化逆行列を用いる。
【0009】
第2の態様では、一般化逆行列を用いることで簡便に各領域の温度または気流を求めることができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様において、
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間と、温度分布または気流分布とを関連付けたデータを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第2仮想メッシュの温度または気流を出力する第1予測モデルを作成し、
前記第1予測モデルの出力値を前記制約条件として、該制約条件を前記教師データに加えて機械学習させた学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する第2予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして前記第2予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する。
【0011】
第3の態様では、第2仮想メッシュで機械学習させることで生成した第1予測モデルの出力を制約条件とする。第1仮想メッシュで機械学習させる際に、この制約条件を教師データに加えて、機械学習させた結果得られる第2予測モデルは、制約条件を加えない予測モデルよりも予測結果の精度を向上できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記第2仮想メッシュは、前記予測手法を用いずに、温度または気流を一意に決定可能な前記領域数のうち最大の領域数である。
【0013】
第4の態様では、例えば領域数が1(1×1)の第2仮想メッシュ(M2)よりも領域数が9(3×3)の第2仮想メッシュ(M2)のほうが、領域数が多い分情報量も多い。このように第2仮想メッシュ(M2)のうち最大の領域数のもの第2仮想メッシュとすることで予測精度を上げることができる。
【0014】
第5の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記温度の測定値は、前記対象空間(S)の配置された温度センサ(30)の測定値である。
【0015】
第5の態様では、温度センサが設けられた位置の領域の温度値を制約条件に加えることで、予測精度を向上できる。
【0016】
第6の態様は、
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュ(M1)を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の伝搬時間と、温度分布または気流分布を関連付けたデータとを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして、前記予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する環境計測装置である。
【0017】
第6の態様では、制約条件を加えなくても機械学習により対象空間の温度分布または気流分布を予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態の環境計測装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1仮想メッシュが設定された対象空間を上から見た図である。
図3図3は、第2仮想メッシュが設定された対象空間を上から見た図である。
図4図4は、領域内のx方向及びy方向の気流の速度を説明するための図である。
図5図5は、第4制約条件を説明するための図である。
図6図6は、対象空間の温度分布の推定方法を示すフローチャートである。
図7図7は、対象空間の気流分布の推定方法を示すフローチャートである。
図8図8は、変形例に係る環境計測装置の構成を示すブロック図である。
図9図9は、変形例に係る温度分布の推定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0020】
(1)環境計測装置
本実施形態の環境計測装置(10)は、対象空間(S)の温度分布および気流分布を計測する装置である。対象空間(S)は、例えば、ビル内のオフィスや会議室、ホテルの客室や宴会場、病院の一室、倉庫等の保管室、マンションや一戸建内の部屋である。以下の説明では、対象空間(S)を室内空間(S)と呼ぶ場合がある。本実施形態の室内空間(S)は、上からみて4つの壁面を有する四角形の空間である。室内空間(S)には、室内空間(S)を空調する空気調和装置や、換気する換気装置が設けられていてもよい。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態の環境計測装置(10)は、音波送受信部(20)、温度検出部(30)、制御部(40)及び報知部(50)を備える。環境計測装置(10)は、室内空間(S)に送信される検出用音波の伝搬時間と伝搬距離とに基づいて、室内空間(S)の温度分布及び気流分布を推定する。
【0022】
(2)音波送受信部
音波送受信部(20)は、検出用音波を送信する送信部と、検出用音波を受信する受信部とを有する。音波送受信部(20)は、室内空間(S)に4つ配置される。具体的に、室内空間(S)の4つの壁面のそれぞれに音波送受信部(20)が設けられる(図2及び図3参照)。
【0023】
本実施形態の音波送受信部(20)は、検出用音波の送信部と受信部とが一体に構成される。1つの音波送受信部(20)が検出用音波を送信する位置と受信する位置は同じである。4つの音波送受信部(20)は、互いに検出用音波を送信し受信する。すなわち、1つの音波送受信部(20)が送信した検出用音波を他の3つの音波送受信部(20)が受信する。
【0024】
1つの音波送受信部(20)から他の音波送受信部(20)まで検出音波が進む経路を伝搬経路とする。本実施形態では、室内空間(S)には6つの音波伝搬経路(L,L,…,L)が形成される(図2参照)。各伝搬経路の長さD(D,D,…,D)は、互いの音波送受信部(20)間の直線距離である。
【0025】
検出用音波を1つの音波送受信部(20)が送信してから他の音波送受信部(20)が受信するまでの時間を音波伝搬時間(ToF:Time of Flight)とする。音波伝搬時間は、検出用音波の音波伝搬経路を通る時間である。
【0026】
4つの音波送受信部(20)は、互いに検出用音波を送受信するため、1つの音波伝搬経路につき2つの音波伝搬時間(往路時間(t)と復路時間(t))を有する。ToFは、往路時間(t)と復路時間(t)との平均を意味する場合がある。本実施形態では、6つのToF(ToF,ToF,…ToF)は、伝搬経路(L,L,…,L)のそれぞれに対応する。
【0027】
(3)温度検出部
温度検出部(30)は、2つの温度センサを有する。2つの温度センサは、第1温度センサ(30a)及び第2温度センサ(30b)である。第1温度センサ(30a)と第2温度センサ(30b)とは、室内空間(S)において互いに異なる位置に設けられる。各温度センサ(30)は、検出した温度値を示す信号を制御部に送信する。
【0028】
(4)制御部
制御部(40)は、制御基板上に搭載されたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリデバイス(具体的には半導体メモリ)とを含む。制御部(30)は、温度検出部(30)及び報知部(50)と通信線で接続されている。制御部(40)は、測定部(41)、設定部(42)、記憶部(43)、及び推定部(44)を有する。
【0029】
測定部(41)は、1つの音波送受信部(20)が送信してから他の音波送受信部(20)受信されるまでの検出音波の各伝搬経路(L,L,…,L)の伝搬時間ToFを測定する。
【0030】
図2及び図3に示すように、設定部(34)は、第1仮想メッシュ(M1)及び第2仮想メッシュ(M2)を設定する。仮想メッシュ(M)は、室内空間(S)を上から見て複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる。具体的に、仮想メッシュは、室内空間(S)の横と縦とを複数に分割することで得られる。本実施形態の第1仮想メッシュ(M1)は、16個の領域(縦4×横4)を有する。第2仮想メッシュ(M2)は、第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない。本実施形態の第2仮想メッシュ(M2)は、1個の領域(縦1×横1)を有する。なお、以下では室内空間(S)を上からみて、室内空間(S)の横方向をx方向、縦方向をy方向と呼ぶ場合がある。
【0031】
記憶部(33)には、音波伝搬経路、音波伝搬経路の長さ、音波伝搬時間、後述の推定モデル等が記憶される。
【0032】
推定部(44)は、第1仮想メッシュ(M1)における所定の領域を通過する検出用音波の伝搬時間に基づいて、室内空間(S)の温度分布及び気流分布を推定する。推定部(44)の詳細は後述する。
【0033】
(5)報知部
報知部(50)は、室内空間(S)の温度分布及び気流分布の推定結果を出力する。報知部(50)は例えばディスプレイである。ユーザは、ディスプレイに表示された室内空間(S)の温度分布及び気流分布の推定結果を確認できる。
【0034】
(6)温度分布及び気流分布の推定
推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて第1仮想メッシュ(M1)の各領域A1~A16の温度及び気流を推定する。予測手法は、室内空間(S)の各音波伝搬経路の音波伝搬時間と、各音波伝搬経路が通る各領域内の経路長、及び該領域内の音波伝搬速度に基づいて、各領域内の空気の温度及び気流を求める。なお、気流を求める際には予め温度を予測する。本実施形態では、予測手法として一般化逆行列が用いられる。以下、本実施形態の環境計測装置(10)による室内空間(S)の温度分布を具体的に説明する。
【0035】
音波の伝搬速度Cは、vを0℃のときの音速(331.5m/s)として、所定の係数α及び温度Tにより以下の関係式で表される。
【0036】
【数1】
【0037】
各検出用音波の往復の音波伝搬時間(ToF)は、音波伝達経路の長さD及び風速vにより以下の関係式で表される。なお、図4に示すように、vxcosθは、x方向の気流の速度を表し、vsinθは、y方向の気流の速度を表す。
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
(7)温度分布の推定方法
往復の音波伝搬時間の和に基づいて、温度を求める計算式が得られる。具体的に式(1)~式(3)に基づいて、以下の関係式が成り立つ。
【0041】
【数4】
【0042】
式(4)に基づいて、各領域A1~A16の温度を求める第1仮想メッシュの行列式が作成される。具体的に、音波伝搬経路(L~L)を通る6つの検出用音波について、6つのToF(ToF1~ToF6)と、各領域A1~A16内の音波伝搬距離Dm,n(m=1,2,…,6、n=1,2,…,16)及び音速v(n=1,2,…,16)とは、以下の行列式(5)が成り立つ。
【0043】
【数5】
【0044】
(7-1)制約条件
本実施形態では、第1条件が成立するとき、以下の2つの制約条件を式(5)に加え、一般化逆行列を使用して各領域A1~A16の温度を求める。第1条件は、第1仮想メッシュの領域数をPとし、室内空間(S)に設けられる音波送受信部(20)の数をQとしたときに、次式(6)の関係を満たすときに成立する。
【0045】
【数6】
【0046】
(7-1-1)第1制約条件
第1制約条件は、第2仮想メッシュ(M2)における温度の値である。式(4)に基づいて第2仮想メッシュ(M2)の温度TAVG.が求められる。温度TAVG.は、室内空間(S)の平均温度を表す。すなわち、温度TAVG.は、第1仮想メッシュの16領域の温度の平均値を示す。温度TAVG.を表す所定の演算式を第1制約条件として行列式(5)に加える。
【0047】
(7-1-2)第2制約条件
第2制約条件は、室内空間(S)に配置された温度センサ(30)の測定値である。第2制約条件は、温度センサ(30)が配置されたメッシュの温度である。本実施形態では、温度センサは2つあるため、第2制約条件は、第1温度センサ(30a)が配置される領域の温度と、第2温度センサ(30b)が配置される領域の温度である。
【0048】
例えば、第1温度センサ(30a)が、領域Aに配置され、第2温度センサ(30b)が、領域A16に配置されるとする(図2参照)。第1温度センサ(30a)の検出温度が20℃であり、第2温度センサ(30b)の検出温度が21℃とする。このとき、領域Aの温度を20℃とする所定の演算式と、領域A16の温度を21℃とする所定の演算式とを第2制約条件として行列式(5)に加える。
【0049】
このように、推定部(44)は、第1制約条件及び第2制約条件を行列式(5)に加えて、一般化逆行列を用いることにより各領域A1~A16の温度を求める。こにより、推定部(44)は室内空間(S)の温度分布を推定する。
【0050】
(8)気流分布の推定方法
予め各領域の温度を式(5)より求めておく。往路の音波伝搬時間と復路の音波伝搬時間の差に基づいて、気流を求める計算式が得られる。具体的に式(1)~式(3)に基づいて以下の関係式が成り立つ。
【0051】
【数7】
【0052】
式(7)に基づいて、各領域A1~A16の気流を求める第1仮想メッシュ(M1)の行列式が作成される。具体的に、伝搬経路(L~L)を通る6つの検出用音波について、6つのToF(ToF1~ToF6)と、各領域A1~A16内の伝搬距離Dm,ncosθ、Dm,nsinθ(m=1,2,…,6、n=1,2,…,16)及び音速vxn、vyn(m=1,2,…,16)とは、以下の行列式(8)が成り立つ。
【0053】
【数8】
【0054】
(8-1)制約条件
本実施形態では、第2条件が成立するとき、以下の2つの制約条件を式(8)に加え、一般化逆行列を使用して各領域A1~A16の風速を求める。第2条件は、第1仮想メッシュのメッシュ数をPとし、室内空間(S)に設けられる音波送受信部(20)の数をQとしたときに、次式(9)の関係を満たすときに成立する。
【0055】
【数9】
【0056】
(8-1-1)第3制約条件
第3制約条件は、第2仮想メッシュ(M2)におけるx方向及びy方向の風速の値である。式(7)に基づいて、第2仮想メッシュ(M2)のx方向の風速vAVG.x、及びy方向の風速vAVG.yが求められる。風速vAVG.x及び風速vAVG.yはそれぞれ室内空間(S)のx方向及びy方向の平均風速を表す。すなわち、風速vAVG.xは、第1仮想メッシュ(M1)の16領域のx方向の風速の平均値を示し、風速vAVG.yは、第1仮想メッシュ(M1)の16領域のy方向の風速の平均値を示す。風速vAVG.x及び風速vAVG.yを表す所定の演算式を第3制約条件として行列式(8)に加える。
【0057】
(8-1-2)第4制約条件
第4制約条件は、第1仮想メッシュ(M1)における少なくとも1つの領域における空気の流出入量である。具体的に、仮想メッシュ(M)のうち1つの領域に流入する空気量と流出する空気量とは等しい。例えば、図5に示すように、中央の領域R(i,j)のx方向の風速をv(i,j)xとし、y方向の風速をv(i,j)としたときに、中央の領域R(i,j)に左右方向及び上下方向から流出入する空気は等しいため式(10)の関係式が成り立つ。
【0058】
【数10】
【0059】
本実施形態において、上記中央の領域R(i,j)に相当する領域は、領域A、A、A10、A11の少なくとも1つである。本実施形態では、この4つの領域のうち少なくとも1つが選択される。選択されたメッシュについて式(10)を第4制約条件として行列式(8)に加える。
【0060】
このように、推定部(44)は、第3制約条件及び第4制約条件を行列式(8)に加えて、一般化逆行列を用いることにより各領域A1~A16のx方向及びy方向の風速を求める。このことで、推定部(44)は、室内空間(S)の気流分布を推定する。
【0061】
(9)室内空間の温度分布および気流分布の推定のフロー
次に制御部(40)が行う室内空間(S)の温度分布及び気流分布を推定するフローについて図6及び図7を用いて説明する。音波送受信部(20)及び温度センサ(30)の配置は予め決定され配置されているとする。気流分布を推定するには予め温度分布が推定される。
【0062】
(9-1)温度分布の推定方法のフロー
ステップS11では、制御部(40)は、室内空間(S)に対して第1仮想メッシュ(M1)を設定する。本実施形態では、室内空間(S)を上から見て、16個(4×4)の領域に分割される。
【0063】
ステップS12では、制御部(40)は、各領域A1~A16の温度を求める第1仮想メッシュ(M1)の行列式を作成する(式(5)参照)。
【0064】
ステップS13では、制御部(40)は、第1条件が成立するか否か判定する。第1条件が成立すると判定された場合(ステップS13のYES)、ステップS14が実行される。第1条件が成立しないと判定された場合(ステップS13のNO)、ステップS16が実行される。
【0065】
ステップS14では、制御部(40)は、第1制約条件を設定する。具体的に、室内空間(S)に対して第2仮想メッシュ(M2)が設定される。本実施形態では、第仮想メッシュは、室内空間を上から見て1個(1×1)の領域である。第2仮想メッシュ(M2)の温度を第1制約条件とする。設定された第1制約条件は、ステップS12の行列式に加えられる。
【0066】
ステップS15では、制御部(40)は、第2制約条件を設定する。具体的に、第1温度センサ(30a)及び第2温度センサ(30b)が配置された領域の温度を第2制約条件とする。設定された第2制約条件は、ステップS12の行列式に加えられる。
【0067】
ステップS16では、制御部(40)は、一般化逆行列を用いて行列式を計算することで、各領域の温度を算出する。
【0068】
ステップS17では、制御部(40)は、ステップS16で算出した各メッシュの温度に基づいて室内空間(S)の温度分布をディスプレイに出力する。
【0069】
(9-2)気流分布の推定方法のフロー
ステップS21は、上記ステップS11と同じであるため説明を省略する。
【0070】
ステップS22では、制御部(40)は、各領域A1~A16の風速を求める仮想メッシュの行列式を作成する(式(8)参照)。
【0071】
ステップS23では、制御部(40)は、第2条件が成立するか否か判定する。第2条件が成立すると判定された場合(ステップS23のYES)、ステップS24が実行される。第1条件が成立しないと判定された場合(ステップS23のNO)、ステップS26が実行される。
【0072】
ステップS24では、制御部(40)は、第3制約条件を設定する。具体的に、室内空間(S)に対して1×1の第2仮想メッシュ(M2)が設定される。第2仮想メッシュ(M2)のx方向の風速とy方向の風速とを第3制約条件とする。設定された第3制約条件は、ステップS22の行列式に加えられる。
【0073】
ステップS25では、制御部(40)は、第4制約条件を設定する。具体的に、第1仮想メッシュ(M1)のうち選択された領域の空気の流出入量が等しくなることを第4制約条件とする(式(10)参照)。設定された第4制約条件は、ステップS22の行列式に加えられる。
【0074】
ステップS26では、制御部(40)は、一般化逆行列を用いて行列式を計算することで、各メッシュのx方向およびy方向の風速を算出する。
【0075】
ステップS27では、制御部(40)は、ステップS26で算出した各メッシュの気流に基づいて室内空間(S)の気流分布をディスプレイに出力する。
【0076】
(10)特徴
(10-1)特徴1
本実施形態の環境計測装置(10)の推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定する。制約条件は、第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの領域における空気の流出入量、及び第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度測定値の少なくとも1つを含む。
【0077】
本実施形態では、所定の手法に制約条件を加えることで、対象空間(S)全体の温度分布または気流分布の測定精度を向上させることができる。
【0078】
(10-2)特徴2
本実施形態の環境計測装置(10)では、所定の予測手法として一般化逆行列を用いる。一般化逆行列を用いることで、仮想メッシュの温度または気流の未知数の方が、仮想メッシュの各領域を通過する検出用音波の伝搬時間及び伝搬距離に基づく方程式の数よりも多い場合でも各領域の温度及び気流を求めることができる。
【0079】
(10-3)特徴3
本実施形態の環境計測装置(10)では、制約条件である温度の測定値は、室内空間(S)の配置された温度センサ(30)の測定値である。第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの領域の温度の実測値を制約条件とすることができる。
【0080】
(11)変形例
変形例の環境計測装置(10)について、上記実施形態の環境計測装置(10)と異なる構成を以下説明する。
【0081】
図8に示すように、環境計測装置(10)は、学習部(45)、第1予測モデル(U1)及び第2予測モデル(U2)を備える。学習部(45)は、室内空間(S)の各音波伝搬経路の音波伝搬時間と、温度分布及び気流分布とを関連付けたデータを教師データとして機械学習によって学習する。
【0082】
図9を用いて、温度分布の学習について具体的に説明する。学習部(45)は、シミュレーションにより室内空間(S)の複数の温度分布パターン(パターン1~パターンN)のそれぞれに対応する伝搬時間ToFと音速vとを第1教師データとして機械学習する。ここでの音速vは、第2仮想メッシュ(1×1)における音速である。1つの温度パターンについて、6個のToF(ToF~ToF)とそれに対応する音速vとを関連付け、N通り学習する。このような学習データを用いて学習部(45)に「教師あり学習」させることで、学習結果として、第1予測モデル(U1)が生成される。
【0083】
学習部(45)は、上記第1教師データに第1予測モデル(U1)の出力値を加えた学習データを第2教師データとして機械学習する。学習部(45)は、室内空間(S)の複数の温度分布パターン(パターン1~パターンN)のそれぞれに対応する第1予測モデル(U1)の出力値と伝搬時間ToFと音速vとを教師データとして機械学習する。ここでの音速vは、第1仮想メッシュ(4×4)における音速である。1つの温度パターンについて、6個のToF(ToF~ToF)及び7つ目のデータとして加えられた第1予測モデルの出力値と、それに対応する音速v(v~v16)とを関連付けて、N通り学習する。このような学習データを用いて学習部(45)に「教師あり学習」させることで、学習結果として、第2予測モデル(U2)が生成される。
【0084】
推定部(44)は、実際の6つのToFを入力データとして第2予測モデルに入力することで、室内空間(S)の温度分布を推定する。変形例1の制約条件は、第1予測モデル(U1)の出力値である。この出力値を制約条件として教師データとして加えることで、室内空間(S)の温度分布の予測精度を向上できる。変形例1の気流分布の推定方法は、上記温度分布の推定方法と同じであるため説明を省略する。
【0085】
(12)その他の実施形態
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0086】
上記実施形態及び変形例において、第2仮想メッシュ(M2)は、1つの領域(1×1)を有する仮想メッシュでなくてもよい。第2仮想メッシュ(M2)は、所定の予測手法を用いずに、温度または気流を一意に決定可能な領域数のうち最大の領域数であればよい。例えば、第2仮想メッシュ(M2)は、全領域に検出用音波の伝搬経路が通る最大の領域数を有していればよい。
【0087】
上記変形例は、制約条件を用いなくてもよい。即ち、推定部(44)は、室内空間(S)の検出用音波の伝搬経路の伝搬時間と、温度分布及び気流分布を関連付けたデータとを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、第1仮想メッシュの温度または気流を出力する予測モデルを作成する。推定部(44)は、室内空間(S)の伝搬経路の伝搬時間を入力データとして、予測モデルを用いることで、室内空間(S)の温度分布及び気流分布を推定してもよい。
【0088】
具体的に、学習部(45)は、室内空間(S)の複数の温度分布パターン(パターン1~パターンN)のそれぞれに対応する伝搬時間ToFと音速vとを第1教師データとして機械学習する。ここでの音速vは、第1仮想メッシュ(4×4)における音速である。1つの温度パターンについて、6個のToF(ToF~ToF)とそれに対応する音速v(v~v16)とを関連付け、N通り学習する。このような学習データを用いて学習部(45)に「教師あり学習」させることで、学習結果として、予測モデルが生成される。
【0089】
上記実施形態において、制約条件は1つであってもよい。温度分布を推定する場合、制約条件は、第1制約条件または第2制約条件であってよい。気流分布を推定する場合、制約条件は、第3制約条件または第4制約条件であってもよい。
【0090】
気流分布を推定するときの制約条件として、以下の3次元気流分布の条件を満たしたときに加えるとしてもよい。
【0091】
【数11】
【0092】
上記変形例において、制約条件は、1×1の仮想メッシュの出力値に限られない。例えば、学習部(45)は、1×1の仮想メッシュの出力値を教師データとして加えることで2×2の仮想メッシュについて機械学習する。この学習結果から生成された2×2の仮想メッシュの推定モデルの出力値を制約条件としてもよい。このように、1×1の仮想メッシュの出力値に加え、2×2の仮想メッシュの出力値を制約条件とする。このように第1仮想メッシュよりも領域数の少ない複数の低次メッシュについて、1×1の仮想メッシュ、2×2の仮想メッシュ、…と順に段階的に機械学習及び推定モデルを生成することで、より高次の仮想メッシュでの温度分布及び気流分布の推定精度が向上する。
【0093】
測定部(41)は、制御部(40)内になくてもよく、音波送受信部(20)に設けられてもよいし、他の機器と独立した装置であってもよい。
【0094】
環境計測装置(10)は、室内空間(S)の温度分布または気流分布を推定するものであってよい。
【0095】
上記変形例の制御部(40)は、第1予測モデル(U1)及び第2予測モデル(U2)を予め有していてもよいし、その都度学習により生成されるものであってもよい。
【0096】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本開示は、環境計測装置について有用である。
【符号の説明】
【0098】
10 環境計測装置
20 音波送受信部
42 設定部
44 推定部
M1 第1仮想メッシュ
M2 第2仮想メッシュ
S 対象空間(室内空間)
U1 第1予測モデル
U2 第2予測モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュを設定する設定部(42)と、
前記第1仮想メッシュ(M1)における所定の領域を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定し、
前記制約条件は、前記第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの前記領域における空気の流出入量、及び前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度測定値の少なくとも1つを含み、かつ、前記第1仮想メッシュの領域数Pと、前記対象空間(S)に設けられる前記音波送受信部(20)の数Qとの関係に基づく所定の条件が成立したときに、前記予測手法に加えられる環境計測装置。
【請求項2】
前記推定部(44)は、前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の伝搬時間、伝搬経路が通る前記第1仮想メッシュ(M1)内の経路長、及び該第1仮想メッシュ(M1)内の伝搬速度に基づいて、前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域内の空気の温度または気流を求める前記予測手法として、一般化逆行列を用いる
請求項1に記載の環境計測装置。
【請求項3】
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の前記伝搬時間と、温度分布または気流分布とを関連付けたデータを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第2仮想メッシュの温度または気流を出力する第1予測モデルを作成し、
前記第1予測モデルの出力値を前記制約条件として、該制約条件を前記教師データに加えて機械学習させた学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する第2予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして前記第2予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する
請求項1に記載の環境計測装置。
【請求項4】
前記第2仮想メッシュは、前記予測手法を用いずに、温度または気流を一意に決定可能な前記領域数のうち最大の領域数である
請求項1~3のいずれか1つに記載の環境計測装置。
【請求項5】
前記温度の測定値は、前記対象空間(S)の配置された温度センサ(30)の測定値である
請求項1~3のいずれか1つに記載の環境計測装置。
【請求項6】
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュ(M1)を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の伝搬時間と、温度分布または気流分布を関連付けたデータとを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして、前記予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する環境計測装置。
【請求項7】
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュを設定する設定部(42)と、
前記第1仮想メッシュ(M1)における所定の領域を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定し、
前記制約条件は、前記第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの前記領域における空気の流出入量、及び前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度測定値の少なくとも1つを含み、
前記推定部(44)は、
前記対象空間(S)の前記検出用音波の伝搬経路の前記伝搬時間と、温度分布または気流分布とを関連付けたデータを教師データとする機械学習による学習結果に基づいて、前記第2仮想メッシュの温度または気流を出力する第1予測モデルを作成し、
前記第1予測モデルの出力値を前記制約条件として、該制約条件を前記教師データに加えて機械学習させた学習結果に基づいて、前記第1仮想メッシュの温度または気流を出力する第2予測モデルを作成し、
前記対象空間(S)の前記伝搬経路の前記伝搬時間を入力データとして前記第2予測モデルを用いることで、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する
環境計測装置。
【請求項8】
対象空間(S)に向かって検出用音波を送信し、該検出用音波を受信する音波送受信部(20)と、
前記対象空間(S)を複数の領域に分割し、該分割された複数領域からなる第1仮想メッシュを設定する設定部(42)と、
前記第1仮想メッシュ(M1)における所定の領域を通過する前記検出用音波の伝搬時間に基づいて、前記対象空間(S)の温度分布または気流分布を推定する推定部(44)とを備え、
前記推定部(44)は、所定の予測手法と該予測手法に加える制約条件とを用いて前記第1仮想メッシュ(M1)の各領域の温度または気流を推定し、
前記制約条件は、前記第1仮想メッシュ(M1)よりも領域数が少ない第2仮想メッシュ(M2)における温度または気流の値、前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの前記領域における空気の流出入量、及び前記第1仮想メッシュ(M1)の少なくとも1つの温度測定値の少なくとも1つを含み、
前記第2仮想メッシュは、前記予測手法を用いずに、温度または気流を一意に決定可能な前記領域数のうち最大の領域数である
環境計測装置。