(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051607
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エスカレータ装置及びエスカレータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 23/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B66B23/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157861
(22)【出願日】2022-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】西 正弘
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321CB35
(57)【要約】
【課題】管理者によって補助ステップ体を使用位置に容易に移動させることができるエスカレータ装置及びエスカレータシステムを得ることを目的とする。
【解決手段】補助ステップ体31は、収容位置と使用位置との間で主踏板23に平行な方向へステップ本体21に対して移動可能である。また、複数のステップ20が停止しているとき、複数の傾斜部ステップにおける補助ステップ体31が収容位置から使用位置にそれぞれ移動されることによって、主踏板23と補助踏板33とが交互に配置された階段が往路傾斜部に形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されており、往路傾斜部を含む循環経路に沿って移動する複数のステップ
を備え、
各前記ステップは、ステップ本体と、補助ステップ体とを有しており、
各前記ステップ本体は、主踏板を有しており、
各前記補助ステップ体は、補助踏板を有しており、かつ収容位置と使用位置との間で前記主踏板に平行な方向へ前記ステップ本体に対して移動可能であり、
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置しているとき、前記補助踏板は、前記ステップ本体の内側に収容されており、
前記複数のステップが停止しているとき、前記往路傾斜部に位置している複数の前記ステップである複数の傾斜部ステップにおける前記補助ステップ体が前記収容位置から前記使用位置にそれぞれ移動されることによって、前記主踏板と前記補助踏板とが交互に配置された階段が前記往路傾斜部に形成されるエスカレータ装置。
【請求項2】
各前記補助踏板の上面と各前記主踏板の上面との少なくともいずれか一方には、前記主踏板と前記補助踏板との境界を利用者に視認させるための着色が施されている請求項1記載のエスカレータ装置。
【請求項3】
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置していることを検出する検出器
をさらに備えている請求項1又は請求項2に記載のエスカレータ装置。
【請求項4】
各前記ステップは、
前記ステップ本体に対する前記補助ステップ体の移動を案内するガイド機構と、
前記収容位置から前記使用位置へ移動させる力を前記補助ステップ体に付与している作動ばねと、
前記作動ばねに抗して前記補助ステップ体を前記収容位置に保持する保持機構と
を有している請求項1又は請求項2に記載のエスカレータ装置。
【請求項5】
前記保持機構による前記補助ステップ体の保持状態は、専用の解除具により前記保持機構を操作することによって解除される請求項4記載のエスカレータ装置。
【請求項6】
各前記ステップは、
前記保持機構による前記補助ステップ体の保持状態を解除するアクチュエータ
をさらに有している請求項4記載のエスカレータ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエスカレータ装置、及び
前記エスカレータ装置との間で通信可能な管理装置
を備え、
前記管理装置は、前記複数の傾斜部ステップにおける前記アクチュエータを制御可能であるエスカレータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エスカレータ装置及びエスカレータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエスカレータ装置では、複数の踏段に、複数の特殊踏段が含まれている。各特殊踏段は、踏段本体と補助踏段部とを有している。各補助踏段部は、補助ローラを有している。往路には、可動レールが設けられている。可動レールは、案内位置と案内解除位置との間で変位可能になっている。補助踏段部は、可動レールを案内位置に変位させた状態で特殊踏段が往路を移動することにより、踏段本体から上方へ突出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエスカレータ装置では、重量物である補助踏段部を上方へ突出させる必要があるため、補助踏段部を突出位置に容易に移動させることができず、可動レールのような大掛かりな構成が必要である。また、例えば停電時に補助踏段部を手動で引き上げようとすると、大きな力が必要である。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、管理者によって補助ステップ体を使用位置に容易に移動させることができるエスカレータ装置及びエスカレータシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエスカレータ装置は、無端状に連結されており、往路傾斜部を含む循環経路に沿って移動する複数のステップを備え、各ステップは、ステップ本体と、補助ステップ体とを有しており、各ステップ本体は、主踏板を有しており、各補助ステップ体は、補助踏板を有しており、かつ収容位置と使用位置との間で主踏板に平行な方向へステップ本体に対して移動可能であり、各補助ステップ体が収容位置に位置しているとき、補助踏板は、ステップ本体の内側に収容されており、複数のステップが停止しているとき、往路傾斜部に位置している複数のステップである複数の傾斜部ステップにおける補助ステップ体が収容位置から使用位置にそれぞれ移動されることによって、主踏板と補助踏板とが交互に配置された階段が往路傾斜部に形成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、管理者によって補助ステップ体を使用位置に容易に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1によるエスカレータ装置を示す概略の構成図である。
【
図2】
図1の往路傾斜部に位置する3個のステップを示す側面図である。
【
図3】
図2の各補助ステップ体を使用位置に移動させた状態を示す側面図である。
【
図4】
図2のステップを矢印IVに沿って見た正面図である。
【
図7】
図6の補助ステップ体を使用位置に移動させた状態を示す断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図10】実施の形態2によるステップの要部断面図である。
【
図11】実施の形態2によるエスカレータシステムの要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエスカレータ装置を示す概略の構成図である。図において、建物における上階と下階との間には、トラス11が設置されている。
【0010】
トラス11の上階側端部には、駆動装置12、上部スプロケット13、駆動チェーン14、及び非常ブレーキ15が設けられている。トラス11の下階側端部には、下部スプロケット16が設けられている。
【0011】
駆動装置12は、上部スプロケット13を回転させる。駆動装置12の出力は、駆動チェーン14を介して、上部スプロケット13に伝達される。非常ブレーキ15は、駆動チェーン14の破断時に上部スプロケット13の回転を制動する。
【0012】
上部スプロケット13と下部スプロケット16との間には、無端状のステップチェーン17が掛けられている。ステップチェーン17は、上部スプロケット13が回転することによって、トラス11内において上階と下階との間を循環移動する。
【0013】
複数のステップ20は、ステップチェーン17によって無端状に連結されている。また、複数のステップ20は、ステップチェーン17が循環移動することによって、循環経路に沿って移動する。
【0014】
循環経路は、往路、上階反転部、帰路、及び下階反転部を有している。往路は、循環経路のうち、乗客を搬送する区間であり、下階水平部A、下曲部B、往路傾斜部C、上曲部D、及び上階水平部Eを含んでいる。
【0015】
下階水平部Aは、下階において水平な区間である。上階水平部Eは、上階において水平な区間である。往路傾斜部Cは、下階水平部Aと上階水平部Eとの間において、一定角度で傾斜している区間である。下曲部Bは、下階水平部Aと往路傾斜部Cとを繋ぐ区間である。上曲部Dは、往路傾斜部Cと上階水平部Eとを繋ぐ区間である。
【0016】
トラス11上には、一対の欄干18が立てられている。各欄干18には、無端状の移動手摺19が設けられている。各移動手摺19は、ステップ20の移動に同期して循環移動する。
【0017】
図2は、
図1の往路傾斜部Cに位置する3個のステップ20を示す側面図である。各ステップ20は、ステップ本体21と、補助ステップ体31とを有している。
【0018】
各ステップ本体21は、主フレーム22、主踏板23、主ライザ24、図示しないステップ軸、一対のステップチェーンローラ25、及び一対の追従ローラ26を有している。
【0019】
主踏板23及び主ライザ24は、主フレーム22に固定されている。ステップ20が往路に位置するとき、主踏板23は主フレーム22の上部に位置し、主踏板23の上面は水平である。ステップ20が往路に位置するとき、主ライザ24は、下側に隣接するステップ20の上方の空間に臨んでいる。
【0020】
ステップ軸は、主フレーム22の上段側端部に設けられている。上段側端部は、ステップ20が往路傾斜部Cに位置するとき、上側に隣接するステップ20に隣接する端部である。
【0021】
ステップ軸には、ステップチェーン17が接続されている。一対のステップチェーンローラ25は、ステップ軸に回転可能に設けられており、ステップ軸を中心として回転可能である。
【0022】
一対の追従ローラ26は、主フレーム22の下段側端部に設けられている。下段側端部は、ステップ20が往路傾斜部Cに位置するとき、下側に隣接するステップ20に隣接する端部である。
【0023】
各ステップ20において、補助ステップ体31は、ステップ本体21に対して出し入れ可能である。即ち、各ステップ20において、補助ステップ体31は、
図2に示す収容位置と、
図3に示す使用位置との間で、主踏板23に平行な方向へステップ本体21に対して移動可能である。
【0024】
各補助ステップ体31は、補助フレーム32、補助踏板33、補助ライザ34を有している。
【0025】
補助踏板33及び補助ライザ34は、補助フレーム32に固定されている。ステップ20が往路に位置するとき、補助踏板33は補助フレーム32の上部に位置し、補助踏板33の上面は水平である。即ち、各ステップ20において、補助踏板33は、主踏板23に対して平行に配置されている。
【0026】
各補助ステップ体31が収容位置に位置しているとき、補助フレーム32及び補助踏板33は、ステップ本体21の内側に収容されている。また、各補助ステップ体31が収容位置に位置しているとき、主ライザ24の外面と補助ライザ34の外面とは、連続した曲面を形成している。
【0027】
複数のステップ20が停止しているときに往路傾斜部Cに位置している複数のステップ20を傾斜部ステップと称する。複数のステップ20が停止しているとき、複数の傾斜部ステップにおける補助ステップ体31が収容位置から使用位置にそれぞれ移動されることによって、主踏板23と補助踏板33とが交互に配置された階段が往路傾斜部Cに形成される。往路傾斜部Cに形成された階段の全体において、隣り合う2つの段の段差は均等であることが望ましい。
【0028】
各傾斜部ステップにおいて、補助踏板33の上下方向位置は、当該傾斜部ステップにおける主踏板23の上下方向位置と、当該傾斜部ステップの下段側に隣接する傾斜部ステップにおける主踏板23の上下方向位置との中間である。
【0029】
各傾斜部ステップにおいて、補助踏板33が使用位置に位置しているとき、補助踏板33は、真上から見て、当該傾斜部ステップの下段側に隣接する傾斜部ステップにおける主踏板23に部分的に重なっている。
【0030】
図4は、
図2のステップ20を矢印IVに沿って見た正面図である。主ライザ24には、開口24aが設けられている。補助ステップ体31が収容位置に位置しているとき、開口24aは、補助ステップ体31によって閉じられている。補助ステップ体31を収容位置から使用位置に移動させるとき、補助ステップ体31は、開口24aを通してステップ本体21から突出する。
【0031】
ステップ20の幅方向において、補助ステップ体31の中心は、ステップ本体21の中心と一致している。ステップ20の幅方向における補助ステップ体31の寸法は、ステップ20の幅方向におけるステップ本体21の寸法よりも小さい。ステップ20の幅方向は、下階水平部Aにおけるステップ20の走行方向及び鉛直方向に直角な方向であり、
図4の左右方向である。
【0032】
図5は、
図3のステップ20を示す平面図である。主踏板23には、操作孔23aが設けられている。
【0033】
図示はしないが、補助踏板33の上面と主踏板23の上面との少なくともいずれか一方には、補助ステップ体31が使用位置に位置しているときに主踏板23と補助踏板33との境界を利用者に視認させるための着色が施されている。
【0034】
着色は、補助踏板33の上面と主踏板23の上面との少なくともいずれか一方の全面に施されても、境界部分のみに施されてもよい。また、着色は、塗料を塗布することにより施されても、着色されたプレート又はフィルムを取り付けることによって施されてもよい。
【0035】
図6は、
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7は、
図6の補助ステップ体31を使用位置に移動させた状態を示す断面図である。
図8は、
図5のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9は、
図6のIX-IX線に沿う断面図である。
【0036】
各ステップ20は、検出器41、ガイド機構42、一対の作動ばね44、及び保持機構45をさらに有している。
【0037】
検出器41は、ステップ本体21内に設けられている。また、検出器41は、補助ステップ体31が収容位置に位置していることを検出する。検出器41としては、例えばマイクロスイッチが用いられている。
【0038】
マイクロスイッチは、補助ステップ体31が収容位置に位置しているときに補助ステップ体31によって操作され、オン状態になる。また、マイクロスイッチは、補助ステップ体31が収容位置から離れると、オフ状態になる。
【0039】
ガイド機構42は、一対のリニアガイド43を有している。一対のリニアガイド43は、ステップ20の幅方向に互いに間隔をおいて、ステップ本体21に固定されている。
【0040】
補助ステップ体31は、一対のリニアガイド43の間に配置されている。また、補助ステップ体31は、一対の補助ステップローラ35をさらに有している。補助ステップ体31が移動する際には、各補助ステップローラ35は、対応するリニアガイド43に沿って転がりながら移動する。
【0041】
一対の作動ばね44は、ステップ本体21と補助ステップ体31との間に設けられている。また、一対の作動ばね44は、収容位置から使用位置へ移動させる力を補助ステップ体31に付与している。
【0042】
保持機構45は、作動ばね44に抗して補助ステップ体31を収容位置に保持する。また、保持機構45は、
図9に示すように、ラッチ片46、ラッチばね47、及びフック片48を有している。
【0043】
ラッチ片46は、
図9に示す保持位置と、解除位置との間で移動可能である。保持位置は、ラッチ片46が一対のリニアガイド43のうちの一方のリニアガイド43内に挿入された位置である。解除位置は、ラッチ片46がリニアガイド43内から退出した位置である。
【0044】
補助ステップ体31が収容位置に位置し、かつラッチ片46が保持位置に位置する状態では、一対の補助ステップローラ35のうちの一方の補助ステップローラ35がラッチ片46に当たり、補助ステップ体31が収容位置に保持される。
【0045】
ラッチばね47は、ラッチ片46とステップ本体21との間に設けられている。また、ラッチばね47は、ラッチ片46を保持位置に保持する力をラッチ片46に付与している。
【0046】
フック片48は、ラッチ片46に固定されている。管理者が所持する専用の解除具51をフック片48に引っ掛けてフック片48を引き上げることにより、ラッチばね47に抗してラッチ片46を解除位置に移動させることができる。解除具51は、
図5に示した操作孔23aからステップ本体21内に挿入される。
【0047】
このように、保持機構45による補助ステップ体31の収容位置への保持状態は、解除具51により保持機構45を操作することによって解除される。
図9の状態から、ラッチ片46が解除位置に移動すると、一対の作動ばね44の復元力によって、補助ステップ体31が使用位置に移動する。このとき、補助ステップローラ35は、
図9に2点鎖線で示す位置に移動する。
【0048】
ラッチ片46は、傾斜面46aを有している。傾斜面46aは、補助ステップ体31を使用位置から収容位置に戻す際に補助ステップローラ35が当たる面である。補助ステップローラ35が傾斜面46aに当った状態で補助ステップ体31が収容位置へ向けて移動することによって、ラッチ片46が押し上げられ、補助ステップローラ35がラッチ片46を通過する。補助ステップローラ35の通過後には、ラッチ片46は、ラッチばね47によって保持位置に戻される。
【0049】
このようなエスカレータ装置では、補助ステップ体31は、収容位置と使用位置との間で主踏板23に平行な方向へステップ本体21に対して移動可能である。また、複数のステップ20が停止しているとき、複数の傾斜部ステップにおける補助ステップ体31が収容位置から使用位置にそれぞれ移動されることによって、主踏板23と補助踏板33とが交互に配置された階段が往路傾斜部Cに形成される。
【0050】
このため、重量物である各補助ステップ体31の収容位置から使用位置への移動は、上方への移動ではなく、水平方向への移動である。従って、管理者によって補助ステップ体31を使用位置に容易に移動させることができる。
【0051】
また、エスカレータ装置に電力が供給されていない状態でも、各補助ステップ体31を使用位置に容易に移動させることができる。
【0052】
また、建物内において避難が必要な場合に、エスカレータ装置を階段として利用することができる。この場合、階段としての様々な寸法を建築基準法令に定められた寸法にすることができる。
【0053】
また、各補助ステップ体31を使用位置に移動させるための大型の機構をトラス11内に設置する必要がない。
【0054】
また、補助踏板33の上面と主踏板23の上面との少なくともいずれか一方には、主踏板23と補助踏板33との境界を利用者に視認させるための着色が施されている。このため、エスカレータ装置を階段として利用する際に、利用者がスムーズに歩行できる。また、各補助ステップ体31が使用位置に位置していることを容易に視認することができ、補助ステップ体31の収納漏れを抑制することができる。
【0055】
また、各ステップ20において、補助ステップ体31が収容位置に位置していることが検出器41によって検出される。このため、各補助ステップ体31が使用位置に位置している状態において、複数のステップ20が誤って動かされることを抑制することができる。これにより、機器の破損を抑制することができる。
【0056】
また、ステップ20には、ガイド機構42と、一対の作動ばね44と、保持機構45とが設けられている。このため、保持機構45による補助ステップ体31の保持状態を解除するだけで、補助ステップ体31をさらに容易に使用位置に移動させることができる。
【0057】
また、保持機構45による補助ステップ体31の保持状態は、解除具51により保持機構45を操作することによって解除される。このため、解除具51を持たない人によって補助ステップ体31が収容位置から動かされることを抑制することができる。
【0058】
実施の形態2.
次に、
図10は、実施の形態2によるステップ20の要部断面図であり、
図6のIX-IX線に沿う断面に相当する断面を示している。実施の形態2の各ステップ20は、アクチュエータ49をさらに有している。アクチュエータ49としては、例えば電磁コイルを有するアクチュエータを用いることができる。
【0059】
アクチュエータ49は、フック片48を引き上げることによって、ラッチばね47に抗してラッチ片46を解除位置に移動させる。即ち、アクチュエータ49は、保持機構45による補助ステップ体31の保持状態を解除する。
【0060】
図11は、実施の形態2によるエスカレータシステムの要部を示すブロック図である。実施の形態1では省略したが、エスカレータ装置は、エスカレータ制御装置61をさらに有している。エスカレータ制御装置61は、複数のステップ20の移動を制御する。各検出器41からの信号は、エスカレータ制御装置61に送信される。各アクチュエータ49は、エスカレータ制御装置61によって制御される。
【0061】
エスカレータシステムは、エスカレータ装置と、管理装置62とを有している。管理装置62は、エスカレータ装置に対して遠隔に設けられている。管理装置62は、エスカレータ制御装置61との間で通信可能である。また、管理装置62は、エスカレータ制御装置61を介して、又は直接、複数の傾斜部ステップにおけるアクチュエータ49をそれぞれ制御可能である。
【0062】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0063】
このようなエスカレータシステムでは、エスカレータ装置に電力が供給されている場合に、管理装置62からの指令によって、複数の傾斜部ステップにおける補助ステップ体31を使用位置に移動させることができる。このため、遠隔の管理者によっても、各補助ステップ体31を使用位置に容易に移動させることができる。
【0064】
なお、各ステップ20における作動ばね44の数は、1つ又は3つ以上であってもよい。
【0065】
また、実施の形態1、2では、一対の作動ばね44によって各補助ステップ体31が使用位置に移動されるが、各補助ステップ体31が手動によって使用位置に引き出される構造であってもよい。
【0066】
また、複数の補助ステップ体31を使用位置から収容位置に戻す場合、補助ステップ体31を個別に収容位置に押し込んでもよい。但し、複数のステップ20を移動させることにより、補助ステップ体31が順次自動的に押し込まれるような構成としてもよい。
【0067】
そのような構成としては、補助ライザ34の下端が主踏板23のクリート部分と噛み合い、ステップ20が下階水平部A又は上階水平部Eに移動する際に、主踏板23のクリート部分によって補助ステップ体31が収容位置まで押し込まれる構成が挙げられる。また、他の構成として、上曲部Dにおけるトラス11内に設置された歯車が補助ステップ体31に噛み合い、補助ステップ体31が収容位置まで押し込まれる構成が挙げられる。
【0068】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0069】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0070】
(付記1)
無端状に連結されており、往路傾斜部を含む循環経路に沿って移動する複数のステップ
を備え、
各前記ステップは、ステップ本体と、補助ステップ体とを有しており、
各前記ステップ本体は、主踏板を有しており、
各前記補助ステップ体は、補助踏板を有しており、かつ収容位置と使用位置との間で前記主踏板に平行な方向へ前記ステップ本体に対して移動可能であり、
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置しているとき、前記補助踏板は、前記ステップ本体の内側に収容されており、
前記複数のステップが停止しているとき、前記往路傾斜部に位置している複数の前記ステップである複数の傾斜部ステップにおける前記補助ステップ体が前記収容位置から前記使用位置にそれぞれ移動されることによって、前記主踏板と前記補助踏板とが交互に配置された階段が前記往路傾斜部に形成されるエスカレータ装置。
(付記2)
各前記補助踏板の上面と各前記主踏板の上面との少なくともいずれか一方には、前記主踏板と前記補助踏板との境界を利用者に視認させるための着色が施されている付記1記載のエスカレータ装置。
(付記3)
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置していることを検出する検出器
をさらに備えている付記1又は付記2に記載のエスカレータ装置。
(付記4)
各前記ステップは、
前記ステップ本体に対する前記補助ステップ体の移動を案内するガイド機構と、
前記収容位置から前記使用位置へ移動させる力を前記補助ステップ体に付与している作動ばねと、
前記作動ばねに抗して前記補助ステップ体を前記収容位置に保持する保持機構と
を有している付記1から付記3までのいずれか1項に記載のエスカレータ装置。
(付記5)
前記保持機構による前記補助ステップ体の保持状態は、専用の解除具により前記保持機構を操作することによって解除される付記4記載のエスカレータ装置。
(付記6)
各前記ステップは、
前記保持機構による前記補助ステップ体の保持状態を解除するアクチュエータ
をさらに有している付記4又は付記5に記載のエスカレータ装置。
(付記7)
付記6に記載のエスカレータ装置、及び
前記エスカレータ装置との間で通信可能な管理装置
を備え、
前記管理装置は、前記複数の傾斜部ステップにおける前記アクチュエータを制御可能であるエスカレータシステム。
【符号の説明】
【0071】
20 ステップ、21 ステップ本体、23 主踏板、31 補助ステップ体、33 補助踏板、41 検出器、42 ガイド機構、44 作動ばね、45 保持機構、49 アクチュエータ、51 解除具、62 管理装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されており、往路傾斜部を含む循環経路に沿って移動する複数のステップ
を備え、
各前記ステップは、ステップ本体と、補助ステップ体とを有しており、
各前記ステップ本体は、主踏板と、主ライザとを有しており、
各前記補助ステップ体は、補助踏板と、補助ライザとを有しており、かつ収容位置と使用位置との間で前記主踏板に平行な方向へ前記ステップ本体に対して移動可能であり、
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置しているとき、前記補助踏板は、前記ステップ本体の内側に収容されており、
前記複数のステップが停止しているとき、前記往路傾斜部に位置している複数の前記ステップである複数の傾斜部ステップにおける前記補助ステップ体が前記収容位置から前記使用位置にそれぞれ移動されることによって、前記主踏板と前記補助踏板とが交互に配置された階段が前記往路傾斜部に形成され、
前記主ライザには、開口が設けられており、
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置しているとき、前記開口は、前記補助ステップ体によって閉じられており、
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置しているとき、前記主ライザの外面と前記補助ライザの外面とは、連続した曲面を形成しているエスカレータ装置。
【請求項2】
各前記補助踏板の上面と各前記主踏板の上面との少なくともいずれか一方には、前記主踏板と前記補助踏板との境界を利用者に視認させるための着色が施されている請求項1記載のエスカレータ装置。
【請求項3】
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置していることを検出する検出器
をさらに備えている請求項1又は請求項2に記載のエスカレータ装置。
【請求項4】
無端状に連結されており、往路傾斜部を含む循環経路に沿って移動する複数のステップ
を備え、
各前記ステップは、ステップ本体と、補助ステップ体とを有しており、
各前記ステップ本体は、主踏板を有しており、
各前記補助ステップ体は、補助踏板を有しており、かつ収容位置と使用位置との間で前記主踏板に平行な方向へ前記ステップ本体に対して移動可能であり、
各前記補助ステップ体が前記収容位置に位置しているとき、前記補助踏板は、前記ステップ本体の内側に収容されており、
前記複数のステップが停止しているとき、前記往路傾斜部に位置している複数の前記ステップである複数の傾斜部ステップにおける前記補助ステップ体が前記収容位置から前記使用位置にそれぞれ移動されることによって、前記主踏板と前記補助踏板とが交互に配置された階段が前記往路傾斜部に形成され、
各前記ステップは、
前記ステップ本体に対する前記補助ステップ体の移動を案内するガイド機構と、
前記収容位置から前記使用位置へ移動させる力を前記補助ステップ体に付与している作動ばねと、
前記作動ばねに抗して前記補助ステップ体を前記収容位置に保持する保持機構と
を有しているエスカレータ装置。
【請求項5】
前記保持機構による前記補助ステップ体の保持状態は、専用の解除具により前記保持機構を操作することによって解除される請求項4記載のエスカレータ装置。
【請求項6】
各前記ステップは、
前記保持機構による前記補助ステップ体の保持状態を解除するアクチュエータ
をさらに有している請求項4記載のエスカレータ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエスカレータ装置、及び
前記エスカレータ装置との間で通信可能な管理装置
を備え、
前記管理装置は、前記複数の傾斜部ステップにおける前記アクチュエータを制御可能であるエスカレータシステム。